こんにちは。32歳、都内でシステムエンジニアやってる者です。
この話、誰かに聞いてほしくてずっとウズウズしてたんですけど、リアルで話せる相手がいないのでここに書かせてもらいます。
まず俺のスペックから。身長172cm、体重は聞かないでくれ。顔面偏差値は友達曰く「普通の中の普通」。大学時代に一回だけ彼女がいたけど半年で振られて、それ以降ずっと彼女なし。要するにモテない。32にもなって童貞ではないけど経験人数は片手で余る。そんな感じの、まあどこにでもいるやつです。
きっかけは去年の秋、親父が腰のヘルニアで入院したことだった。
うちの祖父は82歳で、川崎の登戸にある介護施設に入ってる。元々は月に2回くらい親父が面会に行ってたんだけど、親父が入院してる間は誰かが代わりに行かなきゃいけない。お袋は膝が悪くて車の運転ができないし、姉貴は名古屋に嫁いでるし。
(またこのパターンか…)
日曜の朝、お袋から電話がかかってきた。
「悟くん、今日おじいちゃんのところ行ってくれない?」
ってお袋の声で起こされた。ちなみに俺の名前は悟じゃないです。仮名ね。
「え、今日?今日ちょっと…」
「お願い。お父さんまだ退院できないし、今週誰も行けてないの」
特に予定なんてなかった。Steamのセールで買ったゲームを消化しようと思ってただけ。断る理由がない自分が情けない。
「…わかった。昼過ぎに行くよ」
「ありがとう!あ、おじいちゃんの肌着と、羊羹持っていってあげて。冷蔵庫の上に紙袋入れてあるから」
溝の口の自分のアパートから実家に寄って荷物を受け取り、そこから登戸方面へ車を走らせた。第三京浜からだと30分くらいで着く。
施設の名前は伏せるけど、多摩川のすぐ近くにあるわりと新しめの特養だった。駐車場に車を停めて、正面玄関から入る。
受付で名前を書こうとしたとき、カウンターの向こう側に見慣れない人がいた。
「こんにちは、面会ですか?」
顔を上げた瞬間、ちょっとだけ時間が止まった。
(いや、止まってねーよ。止まったのは俺の思考回路だけだ)
その人は、なんていうか、有村架純をもう少し大人っぽくした感じの顔立ちだった。丸みのある輪郭に、ちょっとたれ目気味の二重。身長は160cmあるかないかくらいで、白いポロシャツの上にカーディガンを羽織ってて、髪は肩につくくらいのボブ。年齢は…俺より上かな、という印象。
名札には「水野」と書いてあった。
「あ、はい。3階の田中に面会で…息子の代わりに孫が来ました」
「田中さんのお孫さんですか!ここにお名前と続柄をお願いします」
笑顔がまぶしい。介護施設の受付にこんな人いるもんなのか。
(いやいや、何考えてんだ俺。祖父の面会に来てんだぞ)
記帳を済ませて3階に上がった。祖父は相変わらずベッドの上でテレビを見てて、俺の顔を見ると「おう、来たか」とだけ言った。肌着と羊羹を渡して、近況を聞いて、テレビの話を少しして。正直、30分もすると話題が尽きる。
帰りに1階に降りると、さっきの水野さんがカウンターから出てきて声をかけてきた。
「お疲れ様です。よかったらコーヒー飲んでいきませんか?ちょうど淹れたところなんです」
「え、いいんですか?」
「面会のご家族にはお出ししてるんですよ。ロビーのソファでどうぞ」
紙コップのコーヒーだったけど、ちゃんとドリップで淹れたやつだった。ロビーのソファに座って飲んでると、水野さんも休憩なのか隣に座ってきた。
「田中さん、最近よくお話しされるようになったんですよ。お孫さんが来てくれるの楽しみにしてるんじゃないですか」
「そうですかね…あんまりしゃべらないんで、何考えてるかわかんなくて」
「それがいいんですよ。黙って隣にいてくれるだけで安心する方もいらっしゃるので」
なんか、すごく優しい言い方だった。施設の職員としてのセリフなんだろうけど、言い方に温度がある感じ。
「水野さんはここ長いんですか?」
「3年目です。その前は横浜の施設にいたんですけど、こっちのほうが雰囲気がよくて」
あとで知ったことだけど、水野さんは当時34歳。俺より2つ上だった。介護福祉士の資格を持ってて、受付だけじゃなくて現場にも入ることがあるらしい。
この日はコーヒーを飲み終わって「ごちそうさまでした」と言って帰った。それだけ。
でも、次の週も面会に行った。
親父はまだ入院してたし、行く理由はあった。でも正直に言うと、水野さんに会えるかなって思ってた自分がいた。いや、そんな下心じゃなくて…(いや、下心だわこれ)
2回目も帰りにコーヒーを出してもらった。今度はちょっとだけ長く話した。
「お孫さん、毎週来てくださるんですね。お忙しくないですか?」
「いや全然。土日はだいたい暇なんで…あ、暇っていうか、えっと」
「あはは、正直でいいですね」
「すみません、なんかダメな大人みたいな発言を…」
「全然。私も休みの日はだいたい家でNetflix観てますよ」
「何観てるんですか?」
「最近は韓国ドラマばっかり。おすすめありますよ、今度教えますね」
(今度。今度って言ったぞ。次も会える前提で話してくれてる)
…と、勝手に舞い上がる32歳独身男。キモいのは自覚してる。
3回目、4回目と通ううちに、コーヒーの時間がどんどん長くなっていった。水野さんは聞き上手で、俺の仕事の愚痴とか、祖父の昔話とか、くだらない話を笑って聞いてくれた。
5回目の面会のとき、事件が起きた。
祖父の部屋に行ったら、同室のおじいさんの家族が来ていて、ちょっとしたトラブルになってた。同室の方のご家族が「部屋が寒い」とスタッフに強めに言ってて、祖父のベッドの窓側のカーテンを勝手に閉めたりしてた。
俺は特に何も言えなかった。こういうとき、親父だったらうまく対処するんだろうけど、俺にはその度胸がない。
モヤモヤしたまま1階に降りると、水野さんが俺の顔を見て「あ、何かありましたか?」とすぐ気づいた。
事情を説明したら、水野さんは「ちょっと待っててください」と言って3階に上がっていった。10分くらいで戻ってきて、
「大丈夫ですよ。カーテンは元に戻しましたし、室温の件もスタッフに共有しました。田中さんが居心地悪くならないように気をつけますね」
「ありがとうございます…すみません、俺が何も言えなくて」
「ご家族同士のことって難しいんですよ。気にしないでください」
この人、ほんとにいい人だなと思った。仕事だからやってるんだろうけど、それだけじゃない何かがある気がした。
その日のコーヒータイムで、初めてプライベートな話を聞いた。
「水野さんって、彼氏とかいるんですか?」
唐突すぎたと思う。自分でもびっくりした。口が勝手に動いた。
水野さんは一瞬だけ目を見開いて、それからふっと笑った。
「いないですよ。もう何年もいません」
「え、嘘でしょ。水野さんモテそうなのに」
「モテないですよ笑。この仕事、出会いないし、休みの日は引きこもりだし」
「仲間じゃないですか」
「ほんとですね笑」
帰りの車の中で、ハンドルを握りながらニヤニヤしてる自分がいた。35歳の頃の岡村隆史みたいな顔してたと思う。
(でもこれ、勘違いしたら痛いやつだよな…。向こうは仕事で親切にしてくれてるだけかもしれないし)
6回目の面会は、12月の第2週だった。もう親父は退院してたけど、「おじいちゃん悟くんが来るの楽しみにしてるみたいだから、続けて行ってあげて」とお袋に言われて。
(いや、俺も行きたいんだけどね。祖父に会いたいのと、水野さんに会いたいのと、比率はちょっと言えないけど)
その日、コーヒーを飲みながら水野さんが言った。
「来週、私お休みなんですよ」
「え…じゃあ来週来ても水野さんいないってことですか」
「あ、寂しいですか?笑」
「いや…まあ…コーヒー誰が淹れてくれるのかなと…」
(苦しい。苦しすぎる言い訳だ)
「じゃあ、もしよかったらなんですけど…」
水野さんがちょっとだけ声のトーンを落とした。
「来週の日曜、登戸の駅前にいいコーヒー屋さんがあるんです。よかったら一緒に行きませんか?」
心臓が跳ねた。比喩じゃなくて、物理的に。胸のあたりがドクンってなった。
「行きます」
即答だった。食い気味に答えた。ちょっと引かれたかもしれない。
「よかった笑。じゃあLINE交換しましょう」
施設のロビーでLINEを交換するという、なかなかシュールな絵面だった。
翌週の日曜、登戸駅の改札前で待ち合わせた。水野さんは施設で見るのと全然違う格好をしていた。ベージュのニットワンピースにショートブーツ、髪は少し巻いてて、薄くメイクもしてた。
(やばい、めっちゃかわいい)
「お待たせしました!私服だとなんか変な感じですね笑」
「いや、全然…すごい似合ってます」
「ありがとうございます。じゃあ行きましょう」
連れて行ってもらったのは、駅から5分くらい歩いた住宅街の中にある小さなカフェだった。自家焙煎の豆を使ってて、水野さんの行きつけらしい。
向かい合って座って、コーヒーを頼んで、話した。施設では聞けなかったような話を。
水野さんの名前は美咲(仮名)。横浜の出身で、専門学校を出てからずっと介護の仕事をしてる。26のときに3年付き合った彼氏に振られて、それ以来ずっと一人。実家にも帰りづらい事情があるらしくて、登戸で一人暮らしをしてる。
「なんか私の話ばっかりになっちゃいましたね」
「いや、もっと聞きたいです」
「…そういうこと言うの、ずるいですよ」
少しだけ頬が赤くなったのを、俺は見逃さなかった。(見逃さなかったぞ。俺は鈍いけど、さすがにこれは気づく)
カフェを出たあと、多摩川沿いを少し歩いた。12月の川沿いは寒かったけど、隣を歩いてるのが嬉しくて、寒さはあんまり気にならなかった。
「ねえ、来週も面会来ます?」
「行きますよ。毎週行きます」
「じゃあ、おいしいコーヒー淹れて待ってますね」
(これ、脈あるのか?ないのか?ある…よな?いや、わからん)
面会を重ねるたびに、帰りのコーヒータイムはどんどん私的な空間になっていった。他のスタッフがいないときを見計らって、水野さんはロビーの端っこのソファに座るようになった。距離が近い。太ももが触れそうな距離。
でも俺は動けなかった。ここは彼女の職場だ。俺が変な空気を作ったら、水野さんが困る。そう思うと、手も出せないし告白もできない。
年が明けて1月、寒さがピークの頃だった。
その日、面会を終えて1階に降りると、水野さんの様子がいつもと違った。目が赤い。泣いてた?
「水野さん?大丈夫ですか?」
「あ、すみません…ちょっと…」
「何かあったんですか?」
「…お昼に、ご家族からクレームがあって。私の対応がまずかったみたいで」
詳しくは言わなかったけど、かなりきつく言われたらしい。水野さんは笑顔で「大丈夫です」と言ったけど、声が震えてた。
「コーヒー飲みに行きませんか。外で」
「え…でも、私まだ勤務中…」
「何時に終わります?」
「…5時です」
「駐車場で待ってます」
我ながら、こんなセリフが出てくるとは思わなかった。たぶん水野さんも驚いてた。
駐車場の車の中で2時間近く待った。ラジオを聴きながら。冬の日暮れは早くて、5時にはもう真っ暗だった。
水野さんが私服に着替えて出てきた。ダウンジャケットにジーンズ、マフラーをぐるぐる巻きにして、息が白い。
「待っててくれたんですか…」
「約束したんで」
「…ありがとうございます」
前に行ったカフェに入って、ホットココアを頼んだ。水野さんは何も言わずにしばらくカップを両手で包んでた。
「介護の仕事って、感謝されることもあるけど、理不尽なことも多くて。わかってるんですけど、たまにきつくて」
「俺には何もできないですけど…聞くことはできます」
「それだけで十分です」
水野さんが泣いた。声を出さずに、静かに涙を流してた。俺はどうしていいかわからなくて、ただテーブルの上にあった水野さんの手に、自分の手を重ねた。
水野さんは手を引かなかった。
それどころか、指を絡めてきた。
(え、これ、どういう…)
心臓がバクバクしてた。カフェの店内BGMがジャズだったのは覚えてる。ビル・エヴァンスの「Waltz for Debby」が流れてた。なんでそんなことを覚えてるかって言うと、あの曲を聴くたびにこの瞬間を思い出すからだ。
「私…ずるいですよね」
「え?」
「あなたのこと、最初から気になってたんです。おじいさんの面会に来る若い男の人って珍しくて。それで話しかけたくてコーヒー出して…仕事を口実にして近づいて」
(コーヒー、面会の家族みんなに出してるんじゃなかったのか…?)
「…もしかして、コーヒー俺にだけ出してました?」
水野さんが小さくうなずいた。
「マジかよ…」
「ごめんなさい…」
「いや、謝らないでください。俺も…俺も水野さんに会いたくて毎週通ってたんで」
言ってしまった。言ってしまったぞ。
水野さんが顔を上げた。目が潤んでて、鼻の頭が赤くて、でも口元は笑ってた。
「…ほんとですか?」
「ほんとです」
「嬉しい…」
「水野さん…いや、美咲さん。俺と付き合ってくれませんか」
「…はい」
カフェで告白するとか、映画みたいなことしてんな俺、と思ったけど、嬉しさのほうが勝ってた。32年間の人生で一番緊張した瞬間だったかもしれない。
カフェを出て、美咲さんのアパートまで送っていくことになった。登戸駅から歩いて10分くらいのところにある、築20年くらいのマンションの2階。
「あの…よかったら、上がっていきますか?お茶くらいなら出せるので」
(お茶。お茶ね。うん。お茶を飲みに行くんだ俺は)
正直、心臓がおかしくなりそうだった。でも断る理由なんてない。
「お邪魔します」
1Kの部屋は綺麗に片付いてた。本棚に介護関係の本がびっしり並んでて、テレビの横に小さい観葉植物が置いてあった。一人暮らしの女の人の部屋に入るのなんて何年ぶりだろう。
ソファに座ると、美咲さんがマグカップにほうじ茶を入れてくれた。隣に座って、しばらく黙ってテレビを見てた。なんかの旅番組が流れてたと思う。
「緊張してます?」
「めちゃくちゃしてます」
「私もです笑」
「美咲さんのほうが落ち着いて見えるんですけど」
「全然。心臓やばいですよ今」
美咲さんが俺の肩にもたれてきた。髪からシャンプーのいい匂いがした。ボタニストだったと思う。
「…キスしていいですか」
「…はい」
唇が触れた瞬間、頭の中が真っ白になった。美咲さんの唇は柔らかくて、ほうじ茶の匂いがした。最初はそっと、ただ重ねるだけ。美咲さんの手が俺のシャツの裾を掴んでた。
一回離して、見つめ合った。
「…もう一回」
今度はもう少し深くキスした。舌が触れて、美咲さんが小さく「ん」と声を漏らした。その声で、頭の中のブレーカーが一個落ちた感じがした。
気がついたら美咲さんをソファに押し倒してて、でもハッとして体を起こした。
「ごめん…急に…」
「…大丈夫です。私も…したいです」
「え」
「ベッド…行きましょう」
美咲さんに手を引かれて、6畳の寝室に移動した。セミダブルのベッドの上にふたりで座った。
ニットワンピースの裾に手をかけると、美咲さんが自分で脱いだ。白いブラとショーツ。華奢な体に、思ったよりしっかりした胸があった。
「きれい…」
「やめてください恥ずかしい…」
美咲さんが腕で体を隠そうとするのを、そっと外した。後ろに手を回してブラを外すと、形のいい胸が現れた。Cカップくらいだろうか、大きくはないけど柔らかくて、指で触れると美咲さんが身じろぎした。
「あ…」
「感じる?」
「…触られるの久しぶりすぎて…」
キスしながら胸を揉んだ。乳首が硬くなっていくのが指で分かった。美咲さんの息が荒くなって、俺の背中に爪が食い込んだ。
「下も触っていい?」
「…うん」
ショーツの上から触ると、もう濡れてた。指を滑らせると美咲さんが太ももをぎゅっと閉じた。
「ん…っ…」
ショーツをゆっくり下ろして、直接触った。指先にぬるっとした感触。クリに触れると、美咲さんの体がびくっと跳ねた。
「あ…っ、そこ…」
「ここ?」
「うん…やば…っ」
ゆっくり円を描くように刺激しながら、キスを続けた。美咲さんの声が少しずつ大きくなっていく。俺の肩を掴む手に力が入って、爪が立てられてる。たぶん痕になってた。
「待って…このままだと私だけ…あなたも…」
美咲さんが俺のベルトに手を伸ばしてきた。震えてる手でジーンズのボタンを外して、下着の上から触ってきた。
「…大きくなってる」
「そりゃ…なるよ」
美咲さんが下着の中に手を入れてきた。細くて冷たい指が俺のものを握った瞬間、声が出そうになった。
「っ…」
「気持ちいい…?」
「うん…やばい」
ゆっくり上下に動かす手つきがぎこちなくて、でもそのぎこちなさがリアルで余計に興奮した。
「美咲さん…入れたい」
「…うん」
「ゴム…持ってないんだけど…」
「…私も、ない」
どうする。どうするんだ俺。
「コンビニ行ってくる」
「…待って」
美咲さんが俺の腕を掴んだ。
「あの…言わなきゃいけないことがあって」
(え、彼氏いるとか?実は既婚とか?やめてくれ頼むから)
「私…経験、ないんです」
「…え?」
「34歳で処女とか引きますよね…前の彼氏ともそこまではいかなくて…」
正直、驚いた。めちゃくちゃ驚いた。あれだけかわいい人が34歳まで経験ないって、信じられなかった。でも美咲さんの表情は真剣だった。恥ずかしそうに、でも逃げずに俺を見てた。
「引かないよ。全然引かない」
「ほんとに…?」
「うん。むしろ、俺でいいのかなって…」
「あなたがいいんです」
その言葉で、もう何も考えられなくなった。
「じゃあ…ゴムなしでも…外に出すから」
「…お願いします」
美咲さんが仰向けになって、脚を開いた。膝が震えてた。俺も正直、手が震えてた。
先端を当てて、ゆっくり押し込んだ。
「あ…痛…っ」
「大丈夫?止める?」
「大丈夫…続けて…」
少しずつ、本当に少しずつ入れていった。美咲さんの中はきつくて、熱かった。額に汗が浮いてた。
「ん…っ…」
全部入ったとき、美咲さんが目をつむって深く息を吐いた。
「痛い?」
「…少し。でも大丈夫。動いて…」
ゆっくり腰を動かした。最初は美咲さんの表情を見ながら、痛くないか確認しながら。でもだんだん美咲さんの声が変わってきた。
「あ…あぁ…っ」
痛みから快感に変わっていくのが、声でわかった。美咲さんの手が俺の背中に回って、引き寄せてきた。
「気持ちいい…?」
「うん…なにこれ…全然違う…」
「何と?」
「自分でするのと…全然…っ」
その言葉に、頭の中がぐわんとなった。
(いかん、興奮しすぎてる。早く出そう。やばい)
「美咲さん…俺もう…」
「え、もう…?」
「ごめん…気持ちよすぎて…」
抜こうとしたら、美咲さんが腰に脚を回してきた。
「…中がいい」
「え、でも…」
「大丈夫…今日安全日だから。お願い…抜かないで…」
「っ…」
美咲さんの中で出した。びくびくと体が痙攣して、頭が真っ白になった。
「あ…っ…」
「あっ…あったかい…」
しばらく動けなかった。美咲さんの上で荒い息をついてたら、頭を撫でられた。
「…気持ちよかった?」
「うん…ごめん、すぐ出ちゃって…」
「笑。いいですよ、初めてだったし…私」
「…もう一回、していい?」
「え…もうできるの?」
「なんか…抜きたくない」
美咲さんが笑った。さっきまで泣いてた人と同じ人とは思えない、幸せそうな笑顔だった。
2回目はさっきより長く持った。美咲さんの体の力が抜けて、さっきよりずっと気持ちよさそうな声を出してた。
「あ…そこ…っ、いい…」
奥に当たる角度を見つけたら、美咲さんが急にシーツを掴んだ。
「やば…っ、何これ…っ」
「ここ?」
「うん…っ、そこ…もっと…」
腰を押し付けるように動くと、美咲さんの声がどんどん大きくなった。
「あ…あっ…だめ…なんか来る…っ」
「いっていいよ」
「あっ…あぁっ…!」
美咲さんの体がぐっと反って、中がきゅうっと締まった。初めてイったんだと思う。本人も信じられないみたいな顔をしてた。
「え…今の…何…」
「イったんだよ」
「…初めてイった…」
その言葉で俺も限界が来て、2回目も中に出してしまった。
ベッドの上で二人並んで天井を見てた。美咲さんの横顔を見たら、目の端に涙が光ってた。
「…泣いてる?痛かった?」
「違うの…嬉しくて」
「…」
「ずっと…こういうの、自分には縁がないと思ってたから」
「俺もだよ」
「施設であなたを見たとき、おじいさんに優しく話しかけてるのを見て、いい人だなって思ったの。それで毎回コーヒー出して…断られるかと思って毎回ドキドキしてた」
「断るわけないだろ…かわいい人にコーヒー出されて断る男がいたらそいつは病気だ」
「笑。ばか」
美咲さんが寝返りを打って、俺の胸に顔を埋めた。
「…明日から、職場であなたの顔見るの恥ずかしいな」
「俺のほうが恥ずかしいわ。受付で顔真っ赤になるかもしれない」
「笑。それはそれで見たい」
結局その夜はそのまま泊まった。美咲さんの腕の中で目を閉じたら、あっという間に朝が来た。
朝起きたら美咲さんがキッチンに立ってて、卵焼きとお味噌汁を作ってくれてた。1Kの小さなキッチンで、フライパンを持つ後ろ姿を見てたら、なんか泣きそうになった。
(32歳独身男、朝ごはんを作ってもらって泣きそうになる。我ながら情けないけど、ほんとに嬉しかったんだ)
「はい、どうぞ。大したものじゃないですけど」
「ありがとう。いただきます」
「…ねえ」
「ん?」
「来週も、おじいさんの面会、来てくれますか」
「もちろん。てか、面会じゃなくても会いに行っていい?」
「…来てください」
あれから半年経った。俺は今でも毎週日曜に登戸の施設に通ってる。祖父の面会と、美咲さんに会うために。親父が「お前最近やけに面会熱心だな」って不思議がってるけど、理由はまだ言ってない。
美咲さんとはあれから正式に付き合ってて、月に2~3回は泊まりに行ってる。あのぎこちなかった最初の夜が嘘みたいに、今は美咲さんのほうから求めてくることもある。
(人生、どこで何があるか分からんもんだな)
祖父の面会がなければ出会えなかった。親父のヘルニアがなければ施設に通うこともなかった。偶然が重なって今がある。
登戸のあのカフェは、今でも二人でよく行く。ビル・エヴァンスがかかると、美咲さんがこっそり俺の手を握ってくる。
そのたびに、あの冬の夜を思い出す。