これ書いていいのかちょっと迷ったんだけど、もう時効かなと思って投稿します。大学3年の冬の話。
俺は都内の私大に通う、まあ絵に描いたような金欠大学生だった。親からの仕送りは月5万。家賃が4万8千円。つまり生活費が月2千円。いや無理だろ。
バイトは居酒屋を週4で入ってたんだけど、その居酒屋が11月に潰れた。店長が最後の給料も払わずに飛んだ。まじでふざけんなよ。
次のバイトが見つかるまでの繋ぎで貯金を切り崩してたんだけど、そもそも貯金が8万しかなかったから、12月の家賃を払った時点で残高が724円になった。通帳の数字見て笑った。笑うしかなかった。
1月の家賃は当然払えなくて、管理会社から届いた督促のハガキを見て見ぬふりしてた。2月も。3月も。
(いよいよやばいな…)
新しいバイトは面接に3つ落ちた。コンビニすら落ちた。多分、面接のときの俺の顔が死んでたんだと思う。そりゃそうだよ、2日に1回しかメシ食ってなかったんだから。
で、3月の半ば。バイト探しアプリを死んだ魚の目でスクロールしてたら、変な求人を見つけた。
「家事代行スタッフ募集。週5勤務。住居提供あり(個室)。食事付き。月額報酬8万円」
住居提供。食事付き。この2つのワードが、飢えた俺の目にぶっ刺さった。
普通に考えたら怪しい。住み込みで家事って、どこのお屋敷だよ。でも724円の男に「普通」の判断力なんて残ってない。
すぐ応募した。翌日に面接の連絡が来た。場所は中目黒。
(中目黒て。俺が住んでいい街じゃないだろ…)
面接当日、駅から徒歩8分のマンションに着いた。外観はまあまあ綺麗な8階建て。オートロックを通されて、エレベーターで6階へ。
チャイムを押すと、ドアが開いた。
一瞬、間違えたかと思った。
立ってたのは、橋本環奈を大人にして、もうちょっと鋭くしたみたいな女の人だった。身長は163cmぐらい。黒髪のボブ。化粧っ気はほとんどないのに、目鼻立ちのバランスがおかしい。おかしいっていうのは、整いすぎてるって意味で。
で、その人が着てたのが、ヨレッヨレのユニクロのスウェット。裾にケチャップみたいなシミがついてた。
「あ、家事代行の…どうぞ」
声は低めで、落ち着いてた。でも目の下のクマがすごかった。3日ぐらい寝てない人の顔。
通されたリビングを見て、俺は固まった。
ゴミ屋敷、とまでは言わない。でも相当やばかった。テーブルの上にはコンビニ弁当の空容器が積み上がってて、床には書類と本が地層みたいに積もってて、シンクには洗い物がタワーになってた。キッチンの排水溝からかすかに異臭がした。
(この顔面偏差値の人がこの部屋に住んでんの…?)
「散らかっててごめんなさい。…見ての通りです」
彼女は苦笑いして、テーブルの上のコンビニ容器をガサッと横にどけて、俺に座る場所を作ってくれた。
名前は水谷さん。27歳。税理士。独立して2年目で、確定申告の時期は毎年死にそうになるらしい。今がまさにその時期で、事務所(といっても自宅の一室)にこもりっきりで、生活が完全に崩壊したと。
「料理と掃除と洗濯、あと買い物。基本それだけ。6畳の部屋が一つ空いてるから、そこを使ってもらえれば」
「あの、俺でいいんですか。料理とかほぼ素人なんですけど」
「コンビニ弁当よりマシなもの作ってくれたら、それでいい」
ハードル低すぎないか。
「正直に言うと、応募してくれたの、あなただけなんです」
まあそうだろうな、とは思った。「住み込み家事代行」なんて募集、普通の人は避ける。来るのは俺みたいなどうしようもないやつだけだ。
「いつから来られますか」
「明日からでも」
即答した。水谷さんが少し驚いた顔をして、それから初めてちゃんと笑った。
「助かります」
こうして俺は、中目黒の1LDKに転がり込んだ。元の部屋は管理会社に電話して、敷金で相殺してもらう形で退去した。荷物はリュック一つ。服が3セットと、充電器と、ボロボロの財布。724円入り。
最初の1週間は地獄だった。地獄っていうのは仕事がキツいとかじゃなくて、あの部屋を人間が住める状態に戻すのが。
ゴミ袋17個出した。17。マジで。冷蔵庫の奥から、いつのかわからない豆腐が出てきた時は声が出た。もう豆腐じゃなかった。生命体だった。
でも水谷さんは俺の仕事に毎日感謝してくれた。
「うわ、キッチンってこんな広かったんだ」
排水溝を掃除した日に、本気で驚いてた。いや元からこの広さだろ。
料理は最初、焼きそばとか野菜炒めとか、クックパッド見ながら作れるやつしかできなかった。でも水谷さんは毎回「おいしい」って言って完食してくれた。
「コンビニ弁当が続くと、温かいごはんってだけで泣きそうになるんだよね」
「泣かないでくださいよ、ただの焼きそばですよ」
「ただの焼きそばが一番おいしいんだよ」
そう言って笑う水谷さんの横顔を見て、(この人やばいな)と思った。「やばい」の意味が自分でもよくわかってなかった。
生活のリズムはこうだった。朝7時に起きて朝飯を作る。水谷さんは8時頃にぼんやりした顔で仕事部屋から出てくる。一緒に飯を食って、水谷さんは仕事部屋に消える。俺は掃除と洗濯をして、昼飯を作って、買い物に行って、大学の課題をやって、夕飯を作る。水谷さんが出てくるのは大体21時過ぎ。それから一緒に夕飯を食べる。
夕飯の時間が、一番長かった。
水谷さんは普段は寡黙なんだけど、飯を食いながらだと結構しゃべった。仕事の愚痴とか、クライアントの変なおじさんの話とか。
「今日ね、80代のおじいちゃんが領収書を靴の箱に入れて持ってきたの。3年分」
「3年分の領収書を靴の箱に?」
「しかもナイキの箱。エアフォース1の。おじいちゃんがエアフォース1履いてると思うとちょっと面白くない?」
こういう、どうでもいい話を楽しそうにする人だった。
2週間が過ぎた頃、俺は水谷さんの生活がちょっとずつ変わってきてるのに気づいた。朝ちゃんと起きるようになったし、スウェットじゃなくて普通の服を着るようになったし、目の下のクマも薄くなった。
ある夜、水谷さんが夕飯のあとにソファでテレビを見てた。俺はキッチンで皿を洗ってた。
「ねえ、大学3年ってことは就活?」
「一応。でもまだ何も動けてないっす」
「焦らなくていいと思うよ。私なんて大学出てから税理士試験受かるまで3年かかったし」
「3年って、めちゃくちゃ大変じゃないですか」
「大変だったよ。バイトしながらだったから。実家が裕福じゃなくて」
初めて水谷さんが自分の過去の話をした。聞いてると、俺と似てた。金がない中で踏ん張って、なんとかここまで来た人だった。
(あ、だから俺を雇ったのか)
金がないやつの気持ちがわかるから、724円の男を拾ってくれたのかもしれない。そう思ったら、なんか胸のあたりがぎゅっとなった。
3月の終わり。確定申告の期限が過ぎて、水谷さんの仕事が落ち着いた。
その日、水谷さんが珍しく昼間にリビングにいた。ソファに座って、ぼーっと窓の外を見てた。
「ねえ、今日ちょっと外出ない?打ち上げ」
「打ち上げ?」
「確定申告、終わったから。一人で打ち上げするの寂しいから」
中目黒の駅前の居酒屋に行った。水谷さんは生ビールを3杯飲んで、顔が真っ赤になった。
「いやー終わった。終わったよ。生きてる。私生きてる」
「生きてますね」
「あのね、正直に言うと、あなたが来る前、本当にやばかった」
「部屋の状態見たらわかりますよ」
「部屋だけじゃなくて。精神的に。ごはんも食べないで仕事して、誰とも喋らない日が続いて、このまま消えてもいいかなって思った日もあった」
笑いながら言ってたけど、目が笑ってなかった。
「…」
「だから、ありがとう。大げさじゃなくて、助けてもらったの、私の方」
俺は何も言えなかった。ビールのジョッキの結露が指を伝って、テーブルに丸い跡をつけた。
帰り道、水谷さんが少し千鳥足で、俺は隣を歩いた。目黒川沿いの道は街灯が少なくて暗かった。桜はまだつぼみだった。
「あのさ」
「はい」
「確定申告の時期終わったから、もう家事代行は必要なくなるんだけど」
心臓が止まるかと思った。
「あ、そうっすよね。俺、部屋探さないと」
「違う。最後まで聞いて」
水谷さんが立ち止まった。俺も止まった。
「家事代行じゃなくて、普通に一緒に住まない?」
「…え?」
「家賃は折半でいい。あなたがいると生活がまともになるから。あと…」
水谷さんが目を逸らした。街灯の薄い光が、横顔の輪郭だけを拾ってた。
「一人だと夜が怖いの。また元に戻りそうで」
「水谷さん…」
「ごめん、酔ってるから変なこと言ってるかも。忘れて」
「忘れないっすよ。住みます。てか出てけって言われても出ていかないっす、もう」
なんでそんなこと言ったのか自分でもわからない。ただ、この人を一人にしちゃいけないって、腹の底から思った。
水谷さんが振り向いた。目がちょっと潤んでた。
「…ほんと?」
「ほんとです」
それからの日々は、少しずつ変わっていった。
俺が「仕事」として家事をやってた頃と、表面上はほとんど同じ。朝飯を作って、一緒に食べて、水谷さんは仕事部屋に入る。でも、なんか空気が違った。水谷さんが仕事部屋から出てくる回数が増えた。
「コーヒー淹れてくれない?」
「はいはい」
「あ、あとクッキーも」
「クッキーは買ってないっすよ」
「じゃあ何かお菓子」
別にお菓子が食べたいわけじゃないんだろうなって、なんとなくわかってた。ただリビングに出てくる口実が欲しいだけ。
(でも、それ言ったら多分怒るよな)
4月に入って、俺の大学が始まった。水谷さんの仕事もぼちぼち通常ペースに戻って、前みたいに引きこもらなくなった。
ある土曜の夜。水谷さんが「映画観よう」って言い出して、リビングでNetflixをつけた。ソファに二人で座って、ポップコーンを食べながら。
途中で水谷さんが寝落ちした。頭が俺の肩にもたれかかってきた。
起こそうかと思ったけど、やめた。水谷さんの髪からシャンプーの匂いがした。前は風呂に入る余裕もなかったこの人が、ちゃんと毎日髪を洗って、ちゃんと寝て、ちゃんと生きてる。それがなんか嬉しかった。
(…俺、この人のこと好きなのかもしれない)
気づいた瞬間、血の気が引いた。
4つ上の、雇い主みたいな人を。しかも同居してる人を。好きになるとか、どう考えてもまずい。
翌日から俺は水谷さんと距離を取ろうとした。でも同じ家に住んでるから無理だった。当たり前だろ。
夕飯の時間、水谷さんが異変に気づいた。
「なんか今日、喋んないね」
「そうっすか?普通ですけど」
「嘘。目が合わないもん」
鋭いんだよな、この人。
「…いや、ちょっと考え事してて」
「何の?」
「就活のこととか」
嘘です。
「ふーん」
信じてなさそうだった。
その週末、水谷さんの事務所に男が来た。背が高くて、スーツが似合ってて、声がでかかった。水谷さんと親しげに話してた。
(彼氏?)
リビングにいたらいけない気がして、自分の部屋に引っ込んだ。薄い壁越しに、水谷さんの笑い声が聞こえた。普段の控えめな笑い方じゃなくて、はしゃいでるみたいな声。
1時間ぐらいで男は帰った。
夕飯の準備をしてたら、水谷さんがキッチンに来た。
「さっきの人、弟なんだけど」
「え?いや、別に聞いてないっすけど」
「聞いてないのに顔がこわばってたけど」
「…」
「弟が就職で東京に出てきたから、挨拶に来たの。似てないでしょ、全然」
「いや、まあ、似てないっすね」
水谷さんがじっと俺を見てた。俺は包丁でキャベツを刻むのに集中するフリをした。
「ねえ」
「はい」
「なんで気にしたの」
キャベツを刻む手が止まった。
「気にしてないっすよ」
「嘘つかないで」
水谷さんの声が、いつもより少し低かった。
「…」
「私はちゃんと聞きたい。あなたの口から」
俺は包丁を置いた。まな板の上のキャベツが半分だけ刻まれた状態で放置された。
「…好きなんだと思います。水谷さんのこと」
言ってしまった。
「でも、わかってます。俺なんか金もないし、年下だし、居候みたいなもんだし。こんなこと言っちゃいけないのは」
「誰がそんなこと言った?」
「え?」
水谷さんが一歩近づいた。キッチンの蛍光灯の白い光が、水谷さんの顔をまっすぐ照らしてた。
「私が、あなたに出ていかないでって言った意味、本当にわかってない?」
「…」
「鈍すぎるんだよ、あなたは」
水谷さんが俺のシャツの裾を掴んだ。指が少し震えてた。
「一人が怖いって言ったのは本当。でも、別に誰でもよかったわけじゃない」
俺の心臓がうるさかった。自分の鼓動がキッチン中に聞こえてるんじゃないかと思った。
「水谷さん…」
「香帆って呼んで。水谷さんはやめて」
「…香帆さん」
「さん、もいらない」
「香帆」
名前を呼んだ瞬間、水谷さん――香帆が、俺の胸に額を押し当てた。
「やっと言った」
小さい声だった。震えてた。
俺は香帆の背中に手を回した。思ってたよりずっと細かった。毎日料理作ってたのに、全然太ってくれてなかった。
「もっと食えよ…」
「今それ言う?」
香帆が顔を上げて笑った。目が潤んでたけど、笑ってた。
俺からキスした。自分でもびっくりするぐらい自然に。唇が触れた瞬間、香帆が小さく息を吸い込んだ。
「ん…」
離れようとしたら、香帆が俺の首の後ろに手を回して、離れさせなかった。
もう一回、今度はもっと深くキスした。香帆の唇は柔らかくて、ほんのり酒の匂いがした。夕飯前に缶ビール1本飲んでたやつだ。
「…部屋、行こ」
香帆がそう言って、俺の手を引いた。香帆の寝室に入るのは初めてだった。シングルベッドとデスクと、本棚。意外と片付いてた。俺が毎日掃除してたからだけど。
ベッドに座った香帆が、自分でスウェットの上を脱いだ。中はタンクトップだった。鎖骨が綺麗だった。
「…」
「そんな顔して固まらないでよ」
「いや、だって」
「だって何」
「綺麗すぎて頭バグってる」
「…ばか」
香帆が顔を赤くして俯いた。税理士って理性的で冷静な職業のイメージだったけど、今の香帆はただの女の子だった。
俺はベッドに膝をついて、香帆にキスした。タンクトップの上から胸に触れると、想像してたよりずっと柔らかかった。Cカップぐらいだと思ってたけど、触ってみたらもうちょっとあった。
「あっ…」
「脱がしていい?」
「…うん」
タンクトップを脱がして、背中に手を回してブラを外した。薄いピンクの、シンプルなやつだった。
(やべぇ…)
白い肌に、形の綺麗な胸。現実感がなかった。2ヶ月前まで724円で生きてた男が、こんな綺麗な人の裸を見てるなんて。
「じっと見ないで…恥ずかしい…」
「ごめん、でも無理。見たい」
香帆の胸に顔を埋めた。柔らかくて温かくて、いい匂いがした。乳首を舌で転がすと、香帆が声を漏らした。
「んっ…そこ…弱い…」
右手で反対側の胸を揉みながら、左の乳首を吸った。香帆の手が俺の髪を掴んだ。
「あっ…ん…もう…」
香帆のズボンを脱がした。下着は上と同じ薄いピンク。太ももが白くて、思わず内側を撫でたら、香帆がびくっとした。
「触っていい?」
「…うん…」
下着の上からそっと触れた。もう濡れてた。
「…すごい」
「言わないで…自分でもびっくりしてる…」
下着をずらして、直接触った。香帆が目をきつく閉じた。クリトリスを指先でなぞると、腰がぴくっと跳ねた。
「んぁっ…やっ…」
「気持ちいい?」
「…うん…久しぶりすぎて…やばい…」
指を一本入れた。中が熱くて、きゅっと締まった。ゆっくり動かすと、香帆が枕を掴んで顔を横に向けた。
「あっ…あっ…だめ…そこ…」
もう一本追加して、Gスポットを探るように指を曲げた。
「んんっ…ちょっ…まって…」
待てなかった。クリを親指で刺激しながら、中をかき回した。
「あっ…あああ…いく…いっちゃう…」
香帆の体がぶるっと震えて、俺の指をきゅっと締めつけた。
「はぁ…はぁ…」
「大丈夫?」
「大丈夫じゃない…こんなすぐイくと思わなかった…」
顔を手で覆って恥ずかしがってる香帆がかわいすぎて、頭がおかしくなりそうだった。
「…ねえ」
手をどけて、潤んだ目で俺を見た。
「して」
「ゴムないけど…」
「引き出し。上から2番目」
開けたら、コンドームが入ってた。
「買っておいたの。…いつかこうなるかもって」
「いつから…」
「あなたが来て1週間ぐらい」
つまり、あのゴミ屋敷時代から。
(マジかよ…)
ゴムを着けて、香帆の上に覆いかぶさった。
「入れるよ」
「うん…」
先っぽを当てて、ゆっくり押し入れた。中が熱くて、吸いつくような感触だった。
「あぁっ…おっきい…」
「痛い?」
「ん…大丈夫…全部入れて…」
奥まで入れた瞬間、二人とも声が出た。繋がってる感覚が鮮明すぎて、頭が真っ白になった。
「やば…動くよ」
ゆっくり腰を動かした。香帆がシーツを掴んで、唇を噛んでた。
「ん…ああ…気持ちいい…」
「こっち向いて。顔見たい」
香帆が俺の方を向いた。目が潤んでて、頬が上気してて、唇が半開きで。こんな顔を俺に見せてくれるのかと思ったら、情けないけど泣きそうになった。
「キスして…」
キスしながら腰を動かした。香帆の中が、動くたびにきゅっと締まった。
「あっ…んっ…すき…」
「…俺も」
ペースを上げた。ベッドがギシギシ鳴った。安物のシングルベッドだから、壊れるんじゃないかと一瞬心配したけど、もうどうでもよかった。
「あっあっ…そこ…いい…」
香帆が俺の背中に爪を立てた。痛かったけど、それがまた興奮した。
「やば…もう…」
「いいよ…一緒に…」
腰を密着させて、奥まで突いた。
「あああっ…」
香帆の中がぎゅうっと締まって、俺も限界だった。ゴムの中に全部出した。頭の中が真っ白になる感覚が、5秒ぐらい続いた。
「はぁ…はぁ…」
「…はぁ…」
しばらく二人とも動けなかった。俺が香帆の上に覆いかぶさったまま、荒い息をしてた。
「重い…」
「あ、ごめん」
横に転がった。天井が回って見えた。
香帆が寝返りを打って、俺の胸に頭を乗せてきた。
「ね」
「ん?」
「今の、家事代行の業務に含まれますか」
「含まれません」
「じゃあ何?」
「…彼氏の仕事?」
「ふふ。じゃあ彼氏ってことでいいの?」
「いいに決まってるだろ」
香帆がぎゅっと抱きついてきた。腕の中の体温が、嘘みたいに温かかった。
「…もう一回、したい」
2回目は香帆が上だった。俺の上にまたがって、自分で腰を動かした。さっきより大胆で、声も大きかった。
「あっ…ん…すごい…奥に当たる…」
「香帆…」
「名前…呼んで…もっと…」
「香帆、香帆…」
名前を呼ぶたびに中がきゅっと締まった。本人は気づいてるのかわからないけど、呼ぶたびに反応するのがたまらなかった。
「あっ…やばっ…またイきそ…」
「いいよ、イけ」
「んっ…ああ…っ」
香帆が体を震わせて倒れ込んできた。その勢いで俺も出した。2回目は1回目より長く、じわっと広がるような気持ちよさだった。
そのあと、二人でシャワーを浴びた。狭いユニットバスに二人で入るのは無理があったけど、香帆が「一人で立てない」って言うから仕方なく。多分嘘だったけど。
シャワーから出て、香帆のベッドに二人で転がった。シングルだから狭い。でも狭い方が密着できて、今はそれがよかった。
「ねえ、一つ聞いていい?」
「うん」
「最初に面接来た時、部屋見て引かなかった?」
「引いたよ。めちゃくちゃ引いた。豆腐が生命体になってたし」
「それ忘れて…」
「でも、引いたけど帰ろうとは思わなかった」
「なんで?」
「724円だったから」
「何それ」
「俺の全財産」
香帆が吹き出した。
「724円の男と、ゴミ屋敷の女って、最悪のマッチングじゃない?」
「最高のマッチングだったろ、結果的に」
香帆が何か言おうとして、やめて、代わりにキスしてきた。おでこに。
「おやすみ」
「おやすみ」
翌朝、俺が先に起きて、いつも通り朝飯を作った。トーストと目玉焼きとウインナーとサラダ。
香帆が寝室から出てきた。俺のシャツを着てた。
「おはよう」
「おはよう。…それ俺のシャツ」
「知ってる」
何食わぬ顔で席について、コーヒーを飲んだ。
俺はトーストにバターを塗りながら、(ああ、これが日常になるのか)と思った。
724円から始まった同居生活が、こうなるとは誰が予想しただろう。少なくとも俺は予想してなかった。
でも今、目の前で俺のシャツ着てコーヒー飲んでるこの人と、明日もその先もここで暮らしていくんだと思うと、なんか泣きそうになった。泣かなかったけど。
あ、ちなみに俺のシャツ、ユニクロのMサイズです。香帆には少し大きくて、肩が片方落ちてた。それがまたよかった。そういうとこだよ、まじで。