こんにちは。今28歳の会社員です。
これは俺が22歳、大学4年の秋に起きた話。今でもたまに、あの夜のことを思い出すと心臓がぎゅってなる。
まず俺のスペックから言っておくと、身長172センチ、体重62キロ、顔面偏差値は自分で言うのもアレだけど48ぐらい。フツメンって言いたいところだけど、多分それすら盛ってる。大学は都内の中堅私大で、就活も大して上手くいかず、11月になってようやく地元・静岡の中小メーカーから内定をもらったぐらいの、まあ平凡な男です。
彼女? いたことはある。高校のとき3ヶ月だけ。それ以来ずっといない。つまり大学4年間は完全にソロ。サークルの飲み会で隣に座った女の子に話しかける度胸すらない、そういうタイプ。
で、従姉の話をします。
俺には6つ上の従姉がいて、名前は――まあここでは「ねえちゃん」でいい。ガキの頃からずっとそう呼んでた。親父の姉の娘で、静岡の実家同士が車で20分ぐらいの距離。でも、ねえちゃんは高校卒業してすぐ東京に出たから、会うのは盆と正月ぐらいだった。
ねえちゃんは、はっきり言ってめちゃくちゃ綺麗だった。顔は今田美桜に似てる。目がでかくて、鼻筋が通ってて、笑うと目がなくなるタイプ。身長は163センチぐらいで、スタイルもよかった。胸は多分E寄りのDぐらい。いや、従姉の胸のサイズを推測してる時点でどうかしてるのは自覚してる。
ただ、恋愛感情があったかって言われると、正直微妙だった。年に一回しか会わないし、6つも上だし、何より従姉だし。ガキの頃は「ねえちゃん」って呼んでまとわりついてた記憶はあるけど、中学ぐらいからはお盆に親戚の家で顔合わせて「元気?」「うん」で終わる、そんな距離感。
だから、あの電話が来たとき、俺はマジで驚いた。
10月の金曜日、夜の11時過ぎ。布団に入ってYouTube見てたら、知らない番号から着信があった。普通なら出ないけど、なんとなく出た。
「はい」
「……っ、あ、もしもし……?」
泣いてた。明らかに泣いてた。声がぐちゃぐちゃで、最初誰かわからなかった。
「えっと、どちらさまですか」
「わた、し……。ねえちゃんだよ……ごめんね、急に……」
(ねえちゃん?)
マジでびっくりした。そもそもねえちゃんの携帯番号なんて知らなかったし、向こうだって俺の番号知ってるわけがない。あとで聞いたら、うちの母親に聞いたらしい。
「え、どうしたの、大丈夫?」
「ごめん……誰かと話したくて……でも友達に言えなくて……」
「何があったの」
「彼氏に……浮気されてた。3年付き合ってて……同棲してて……」
そこから30分ぐらい、ねえちゃんはずっと泣きながら話してた。彼氏の職場の後輩と半年ぐらい前から関係があったこと。ねえちゃんが先に家を出て、今はウィークリーマンションにいること。荷物もほとんど持ち出せてないこと。
俺は正直、何を言えばいいかわからなかった。恋愛経験3ヶ月の男に何がわかるんだって話で。ただ「うん」「うん」って相槌打つことしかできなかった。
「ごめんね、こんな話して……。でもなんか、あんたの声聞いたら安心した……」
「いや、全然。いつでも電話していいよ」
自分で言っておいてなんだけど、(いつでも電話していいよって、俺何様だよ……)って思った。
でも、ねえちゃんは本当に電話してきた。次の日も、その次の日も。最初は泣いてたけど、3日目ぐらいから普通に話せるようになって、4日目には笑ってた。
「あんたさ、昔お盆にスイカの種飛ばし大会やろうって言って、おばあちゃんの白い服にベチャってやったの覚えてる?」
「やめろよ……あれガチで怒られたんだから」
「あはは、おばあちゃんの顔真っ赤だったよね」
電話の時間はだんだん長くなっていった。1時間、2時間。気づいたら3時間話してることもあった。
正直に言うと、俺はこの時点でちょっとおかしくなり始めてた。ねえちゃんの声が聞きたい、っていう気持ちが芽生えてきてた。でもそれが恋愛感情なのか、単に人に頼られる嬉しさなのか、自分でもわからなかった。
(従姉だぞ。6つ上だぞ。何考えてんだ俺)
って、毎晩自分にツッコミ入れてた。
転機は2週間後。ねえちゃんから「荷物を取りに行きたいんだけど、一人じゃ怖いから付き添ってくれない?」って頼まれた。元カレが留守の時間帯に行くから大丈夫、と。
場所は中野のマンション。俺は吉祥寺のアパートに住んでたから、電車で15分ぐらい。
待ち合わせは中野駅の北口。改札出たら、ねえちゃんが立ってた。
……息が止まった。
お盆に会うときはいつもTシャツにジーンズみたいなラフな格好だったのに、その日のねえちゃんは黒のタートルネックにベージュのロングスカートで、髪も巻いてて、なんていうか、「都会の大人の女」だった。
(やばい、こんな綺麗だったっけ)
「あ、来てくれた。ありがとね」
笑顔が眩しかった。今田美桜が目の前に立ってるのかと思った。いや、今田美桜より綺麗かもしれない。(それは言いすぎか)
元カレのマンションでの荷物回収は30分ぐらいで終わった。ダンボール3箱分。ねえちゃんは「これだけでいい」って言って、服とか本とか最低限のものだけ詰めてた。
マンションを出たとき、ねえちゃんが急に立ち止まった。
「……3年も住んでたのにさ、持ち出すものこれだけなんだね」
目が赤くなってた。泣きそうなのを堪えてる顔。
「メシ食おう。腹減った」
咄嗟にそう言った。気の利いたことは何も浮かばなかった。でもねえちゃんは少し笑って「うん」って言ってくれた。
中野のサンモール商店街を歩いて、適当な居酒屋に入った。「三代目鳥メロ」だったと思う。平日の昼間だったから空いてた。
ビールで乾杯して、唐揚げとか枝豆とか頼んで、最初は元カレの話を聞いてた。でも途中から話題が変わって、お互いの大学時代の話とか、就活の話とか、くだらない話で盛り上がった。
「てかあんた、彼女いないの?」
「いないよ。高校以来ずっと」
「うそ、もったいない。あんた優しいのに」
「優しいだけじゃモテないんだよ。知らなかった?」
「あはは、確かに。でも私は好きだけどな、あんたのそういうとこ」
(好き、って今言った?)
心臓がバクバクした。でも、これは「従姉として好き」って意味だろうなって自分に言い聞かせた。っていうか、そう思わないとやってられなかった。
ビール3杯飲んだあたりで、ねえちゃんが「ウィークリーマンション寒いんだよね」ってぼそっと言った。
「暖房ないの?」
「あるけど、なんか……一人でいるのが寒いっていうか」
「……うち来る?」
言ってから後悔した。(何言ってんだ俺。従姉を家に呼んでどうする)
でもねえちゃんは「いいの?」って、すごく嬉しそうな顔をした。
吉祥寺の1Kのアパートに二人で向かった。6畳一間、風呂トイレ別、家賃6万2千円。男子大学生の部屋としては普通だけど、人を呼ぶような部屋じゃない。
「わ、思ったより綺麗じゃん」
「来るってわかってたら……いや、わかってたから片付けたんだけど」
「あはは、正直でよろしい」
ねえちゃんはコートを脱いで、ベッドに腰掛けた。タートルネックの上からでもわかる胸の存在感に、思わず目を逸らした。
(見るな。従姉の胸を見るな)
テレビをつけて、缶ビールを2本出して、適当に飲んでた。ねえちゃんは酔うとよく喋る人で、仕事の愚痴とか、友達の恋愛相談の話とか、ずっと話してた。俺はほとんど聞き役。でもそれが心地よかった。
時計を見たら夜の10時を過ぎてた。
「そろそろ帰る?終電あるうちに」
「…………泊まっちゃダメ?」
静かな声だった。さっきまでの明るいトーンとは全然違う、小さくて、震えてるような声。
「え」
「一人で寝るの……もう嫌なの。ここ2週間ずっと、夜になると涙止まらなくて……」
俺は何も言えなかった。ねえちゃんの目は真っ赤で、また泣きそうになってた。
「……いいよ。ベッド使って。俺は床で寝るから」
「ありがとう……」
ねえちゃんは俺のTシャツとスウェットを借りて着替えた。洗面所で顔を洗って戻ってきたねえちゃんは、化粧が落ちてもやっぱり綺麗で、(ずるいだろ)って思った。
俺は寝袋を出して床に転がった。電気を消して「おやすみ」って言って、目を閉じた。
……寝れるわけがない。
従姉が俺のベッドで寝てる。俺のTシャツ着て。しかも1メートルも離れてない場所で。
(落ち着け。従姉だぞ。親戚だぞ。法律的にはセーフだけどそういう問題じゃねえだろ)
30分ぐらい経ったとき、ベッドの上からすすり泣きが聞こえた。
「……っ……」
小さく、でも確実に泣いてた。布団で声を殺そうとしてるのがわかった。
「ねえちゃん」
「ごめ……起こしちゃった……」
「起きてた」
寝袋から出て、ベッドの横に座った。暗闇の中で、ねえちゃんの肩が小刻みに震えてるのが見えた。
「……手、握ろうか」
我ながらダサいと思った。でも他に何もできなかった。
ねえちゃんは布団の中から手を出して、俺の手を握った。小さくて、冷たくて、でも力強く握ってきた。
そのまましばらく、何も言わずに手を握ってた。
「ねえ……隣に来て」
「……え」
「お願い。何もしなくていいから。隣にいて」
シングルベッドに二人で横になった。狭かった。ねえちゃんの体温が伝わってきて、シャンプーの匂いがして、俺のTシャツを着てるのに全然違う匂いがして。
(これは本当にまずい)
心臓の音がうるさすぎて、絶対ねえちゃんにも聞こえてると思った。
「……心臓、すごい音してる」
「……聞こえてんのかよ」
「あはは……私もだよ」
ねえちゃんが顔を上げた。暗闘の中で目が合った。
その瞬間の、ねえちゃんの表情を、俺は多分一生忘れない。泣いたあとの赤い目で、でも笑おうとしてて、でも笑いきれてなくて。
「ねえ。……私のこと、従姉としか見れない?」
頭が真っ白になった。
「……え」
「ずるい質問してるのわかってる。あんたが困るのもわかってる。でも……聞きたかった」
「俺は……」
言葉が出なかった。正直に言えば、もうとっくに従姉としてだけ見れなくなってた。毎晩電話してるうちに、声を聞くだけで胸が苦しくなるようになってた。でもそれを認めたら、もう戻れない気がした。
「……ごめん、忘れて。私おかしいよね、振られたばっかで従弟に……」
ねえちゃんが体を離そうとした。
気づいたら、ねえちゃんの腕を掴んでた。
「忘れない」
「え……」
「従姉としか見れないかって聞いたけど、……もう無理。とっくに無理。毎晩電話切るたびに会いたいって思ってた。でも従姉だし、6個も上だし、俺なんか相手にされるわけないって……」
(やばい、全部言っちゃった。酔ってるのか俺は。いや2時間前にビール飲んだきりだから酔ってない。素面で従姉に告白してる)
ねえちゃんの目から涙が零れた。でもさっきまでの泣き方とは全然違った。
「ばか……もっと早く言ってよ……」
ねえちゃんが俺の胸に顔を埋めた。俺はねえちゃんの頭を撫でた。髪の毛が柔らかくて、いい匂いがした。
そのまま顔を上げたねえちゃんと、目が合って。
どっちからともなく、唇が触れた。
最初は本当に軽く。ふわっと触れただけ。でもそれだけで頭の中がぐちゃぐちゃになった。
「……っ」
「ん……もう一回……」
今度はちゃんとキスした。唇を重ねて、ねえちゃんの舌が俺の唇を舐めて、そのまま舌を絡めた。
(従姉とキスしてる。俺は今、従姉とキスしてる)
頭の中で警報が鳴りっぱなしだった。でも体は止まらなかった。ねえちゃんの体を抱き寄せると、柔らかい胸が俺の胸に押し付けられて、Tシャツ越しでもわかるその大きさに理性がぶっ飛んだ。
「ん……んっ……」
キスしながら、ねえちゃんの腰に手を回した。スウェットの上からでもわかる、くびれ。
「ねえちゃん……俺……」
「ねえちゃんって呼ぶの……今日はやめて……」
「え、じゃあ……なんて」
「……名前で呼んで。私の名前、知ってるでしょ」
当たり前だ。従姉の名前ぐらい知ってる。でも、生まれてから一度もその名前で呼んだことがなかった。ずっと「ねえちゃん」だった。
名前を呼んだ。ここには書けないけど、呼んだ瞬間にねえちゃんの顔がくしゃって歪んで、また泣いた。
「……もう一回」
もう一回呼んだ。そしたらねえちゃんが俺の首に腕を回して、今までで一番深いキスをしてきた。
Tシャツの裾から手を入れた。ねえちゃんの肌は驚くほど滑らかで、触れるだけで指先が震えた。お腹から脇腹をなぞって、そのまま上へ。ブラはしてなかった。
(ノーブラだったのかよ……)
掌に収まりきらない柔らかさ。指の間からこぼれるような弾力。先端が固くなってるのが触ってわかった。
「あ……ん……触って……もっと……」
俺のTシャツを捲り上げた。暗がりの中でも、ねえちゃんの胸は綺麗だった。形が良くて、先端がうっすらピンクで。口に含むと、ねえちゃんの背中がびくって反った。
「んっ……やば……そこ弱い……」
舌先で転がすと、ねえちゃんの息が荒くなった。乳首を吸いながら、もう片方の手でスウェットのウエストに指をかける。ねえちゃんは自分から腰を浮かせてくれた。
ショーツ越しに触れると、もう濡れてた。布地が湿ってるのが指先でわかった。
「すごい……濡れてる」
「言わないでよ……恥ずかしい……」
ショーツをずらして、直接触れた。ぬるっとした感触と、ねえちゃんの声が同時に耳に入ってきて、頭がクラクラした。
「あっ……ん……そこ……」
クリを指の腹で円を描くように触ると、ねえちゃんの太ももが震えた。中指をゆっくり入れると、きゅって締まってきた。
「指……もう一本……」
2本入れて、中を探るように動かした。ねえちゃんの手が俺の腕を掴んで、爪が食い込むぐらい強く握ってきた。
「やば……いく……いっちゃう……」
体をびくびく震わせて、ねえちゃんはいった。俺の指を締め付けたまま、しばらく動けないでいた。
「はぁ……はぁ……」
落ち着いたねえちゃんが、俺のスウェットに手を伸ばしてきた。とっくにガチガチになってたのは、密着してたから絶対バレてた。
「……大きいじゃん」
「普通だよ……多分」
「ふふ、かわいい」
ねえちゃんが俺のスウェットとパンツを下ろして、直接握った。
「っ……」
冷たいかと思ったけど、ねえちゃんの手は温かかった。ゆっくり上下に動かされて、先端を親指で撫でられて、気持ちよくて声が出そうになった。
「ねえ……入れて」
「え、ゴムないけど……」
「ピル飲んでる。大丈夫」
(いや大丈夫じゃないだろ。相手は従姉だぞ)
でも体はもう止まらなかった。っていうか、もうとっくに止まれないとこまで来てた。
ねえちゃんが脚を開いて、俺を受け入れる体勢になった。先端を当てると、熱くて濡れてて、自分のものが吸い込まれていくのがわかった。
「あ……ん……」
ゆっくり入れていった。中が熱くて、締め付けてきて、俺は全身に鳥肌が立った。
「やば……」
「動いて……ゆっくりでいいから……」
腰を動かした。ゆっくり、奥まで押し込んで、引いて、また押し込む。その度にねえちゃんが声を漏らして、その声が耳に入るたびに理性が削れていった。
「あっ……あっ……気持ちいい……」
「俺も……やばい……」
正直、経験が少なすぎてテクニックなんてものはゼロだった。でもねえちゃんは「そのまま……そのままでいい……」って言ってくれて、俺はとにかく気持ちいいと思うまま動いた。
ねえちゃんが俺の背中に爪を立てた。多分跡が残ったと思う。
「もっと……もっと奥……」
腰の角度を変えて、深く突いた。ねえちゃんの声が大きくなって、アパートの壁の薄さが一瞬頭をよぎったけど、もうどうでもよかった。
「いく……また、いく……」
ねえちゃんの中がきゅうって締まって、全身が震えた。その締め付けで俺も限界がきた。
「俺も……出る……」
「中に……いいよ……」
脚で俺の腰を挟まれた。もう抜けなかった。っていうか、抜く気もなかった。
奥に押し付けたまま、全部出した。頭の中が真っ白になって、体中の力が抜けて、ねえちゃんの上に崩れ落ちた。
「はぁ……はぁ……」
「……ごめん、重い」
「いい……このままでいて」
ねえちゃんが俺の頭を撫でてくれた。汗だくの額を、優しく。
しばらくそのまま動けなかった。繋がったまま、二人でぼーっとしてた。
「ねえ……」
「ん」
「私たち、どうなるんだろうね」
「……わかんない。でも、後悔はしてない」
「……私も」
抜いた後、ティッシュで拭いて、二人でシングルベッドに収まった。狭くて寝返りも打てなかったけど、ねえちゃんの体温がずっとあったかくて、いつのまにか眠ってた。
朝起きたら、ねえちゃんが先に起きて台所に立ってた。俺のTシャツ一枚で、素足で、フライパンで何か焼いてた。
「あ、起きた?目玉焼きしかないけど」
「……いい匂い」
「焦がしバター醤油ね。昔おばあちゃんがよく作ってくれたやつ」
朝ごはんを二人で食べた。6畳一間の小さなテーブルで、目玉焼きとトーストとインスタントの味噌汁。
なんか、泣きそうになった。
こんな朝がずっと続いたらいいのにって思って、でもこの関係がどれだけ歪なのかもわかってて、その矛盾がしんどかった。
「あのさ」
「うん」
「私、今日ウィークリーマンション引き払おうと思うんだけど」
「え?実家帰るの?」
「……ここじゃ、ダメかな」
目玉焼きを食べる手が止まった。
「ここって……うち?」
「迷惑?」
「いや……6畳だけど」
「狭くてもいい。一人がいやなの」
こうして、俺と6歳上の従姉の同棲が始まった。吉祥寺の1Kで。
最初は「親にバレたらどうしよう」ってびくびくしてた。正月の集まりどうすんだよ、とか。でもねえちゃんは「大丈夫、従兄妹同士は法律で結婚できるから」って妙に落ち着いてた。
(そういう問題じゃないんだけどな……)
でも、あの日からねえちゃんが俺の部屋にいる生活は、俺の想像をはるかに超えて幸せだった。
ねえちゃんは料理が上手かった。6畳のキッチンスペースで器用にパスタとか肉じゃがとか作ってくれた。俺が大学から帰ると「おかえり」って言ってくれて、ご飯ができてて。
夜は狭いベッドで体を重ねた。2回目からは、俺もちょっとだけ余裕が出てきて、ねえちゃんの体を丁寧に触れるようになった。ねえちゃんは首筋が弱くて、耳の後ろを舐めると声が大きくなった。
「あんたさ、だんだん上手くなってない?」
「ねえちゃんが先生だし」
「やめてよ先生って……教えてないし」
「反応見て覚えてるだけ」
「それが一番やばいやつだから……」
ねえちゃんは俺の上に跨がるのが好きだった。騎乗位で腰を振りながら、俺の手を自分の胸に導いて、目を閉じて気持ちよさそうな顔をする。その顔を下から見上げるのが俺は好きだった。
ただ、問題はあった。
12月に入って、正月の親戚の集まりの話が出た。うちの母親から「今年も来るでしょ?」って電話があって、俺は適当に返事したけど、ねえちゃんの顔は曇ってた。
「正月……どうしよう」
「普通に行くしかないんじゃない。別々に」
「……そうだよね」
その夜、ねえちゃんは珍しく俺に背を向けて寝てた。
(ダメだ。このまま隠してたら、いつか壊れる)
俺は正月に実家に帰った。ねえちゃんも、別の日にねえちゃんの実家に帰ってた。親戚の集まりでは顔を合わせたけど、「元気?」「うん」って、昔みたいなやり取りしかしなかった。
ねえちゃんの目が寂しそうだったのを、俺だけが気づいてた。(いや、気づいてたのは俺だけじゃなかったかもしれない)
年明け、東京に戻ってきた夜。
「ねえ、私たちさ……このまま隠し続けるの?」
「……」
「私、もう28だよ。あんたは22でしょ。このままずるずる付き合って、結婚できなくて、って未来見えちゃうんだけど」
「結婚……」
「従兄妹同士でもできるって、前に言ったじゃん。民法734条。4親等以上は婚姻できる」
「法律の話じゃなくて……」
「わかってるよ。家族がどう思うかでしょ」
沈黙が重かった。
「……俺が、言うよ。うちの親に」
「え……」
「俺から言う。4月から地元に戻るし、その前に全部ちゃんとする」
ねえちゃんが泣いた。嬉しくて泣いてるのか、怖くて泣いてるのか、多分どっちもだった。
親に話したのは2月の頭。静岡に帰って、居間でおふくろと親父の前に座って、全部話した。
おふくろは黙ってた。親父は「お前の人生だからな」とだけ言った。反対はされなかった。でも賛成もされなかった。しばらく考えさせてくれ、と。
ねえちゃんの両親に伝わったのはその週末で、ねえちゃんのお母さん——つまり親父の姉——から親父に電話があったらしい。内容は聞いてない。でもその夜、親父がビール飲みながら「姉さんが、あの子が幸せならそれでいいって言ってたぞ」と言ったとき、肩の力が全部抜けた。
その話をねえちゃんに電話で伝えたとき、ねえちゃんは20分ぐらい泣き続けて、何も喋れなくなってた。
今、あれから6年経った。俺は28歳、ねえちゃんは34歳。
去年、静岡の沼津で入籍した。婚姻届の証人欄には、俺の親父とねえちゃんのお母さん——つまり姉弟——が並んで名前を書いた。
ねえちゃんのことは、もう「ねえちゃん」とは呼んでない。名前で呼んでる。ただ、たまにふざけて「ねえちゃん」って呼ぶと、「やめてよ」って怒るふりして笑う。その笑顔が今田美桜そっくりで、俺は毎回ちょっとだけ、22歳のあの秋の夜に戻る。
あの夜、電話に出てよかった。