こんにちは。地方のIT企業で社内SEをやってる、28歳の男です。
名前は伏せますけど、宮城県の仙台市在住。身長172センチ、体重は65キロぐらい。顔面偏差値は自己採点で48ぐらい。つまりフツメン以下です。大学は東北学院で、そのまま地元のIT企業に就職しました。趣味はランニングと、あと地味にプラモデル。休日は広瀬川沿いを走ってるか、部屋でガンプラ組んでるかのどっちか。
こんな俺に、なぜか二人の女性が同時にいた時期がありまして。
いや、言い訳させてほしいんですけど、最初から二股しようと思ってたわけじゃないんですよ。本当に。
一人目は会社の先輩の聡子さん。32歳。同じ部署の主任で、面倒見のいい姉御肌。顔は篠原涼子を少しだけ丸くした感じで、身長163センチ、Eカップ。服装はいつもシンプルなんだけど、たまに胸元が開いたニットを着てくる日があって、そのたびに俺は画面に集中するフリをして心の中で般若心経を唱えてました。
二人目は大学時代の後輩の美咲。25歳。今は別の会社で営業をやってて、たまたまSNSで再会した。橋本環奈を少し大人っぽくした系統の顔で、身長155センチ、Cカップ。愛嬌があって、笑うと目がなくなるタイプ。
聡子さんとは、去年の忘年会がきっかけだった。
二次会で国分町のバーに流れて、気づいたら二人きりになってて。酔った聡子さんが急に静かになって、グラスの縁をなぞりながら言ったんですよ。
「ねえ、私のこと、どう思ってる?」
「え、どうって…尊敬してますけど」
「尊敬、ね」
その「ね」の言い方がなんか寂しそうで。
「私さ、もう32なんだよね。周りはどんどん結婚していくし、この前親にも言われたの。『あんた早くしなさいよ』って」
「聡子さんモテるじゃないですか。選び放題でしょ」
「選び放題の人は、こんなとこで後輩と二人で飲んでないよ」
(…マジか)
その夜、聡子さんのマンションに行きました。いや、タクシーの中で聡子さんが「うち寄ってく?」って聞いてきて、断る理由がなかった。嘘です、断る理由はいくらでもあったけど、断る気がなかった。
聡子さんの部屋は、想像してたよりずっと生活感があって。流しにマグカップが二つ残ってたり、ソファにブランケットがぐしゃっと置いてあったり。なんかそれを見て、この人も一人で暮らしてるんだなって、当たり前のことを思った。
「コーヒーでいい?あ、もう遅いからカフェインレスにするね」
「あ、はい。すみません」
「なんで謝るの」
「いや、なんか…先輩の家にいるのが不思議で」
聡子さんがコーヒーを淹れてる間、俺はソファに座って落ち着かない感じでいた。そしたら聡子さんがマグカップを二つ持ってきて、隣に座った。近い。いつもの職場の距離感じゃない。
「ねえ」
「はい」
「さっきの、尊敬してますって答え、ちょっと傷ついたんだけど」
「え、あ、すみません…そういうつもりじゃ…」
「じゃあどういうつもり?」
(いや、追い詰めないでくれ…)
聡子さんがこっちを見てた。バーの薄暗い照明じゃなくて、自分の部屋の明かりの下で見る聡子さんは、なんかすごく無防備で。化粧も少し崩れてて、目がちょっと潤んでて。
「…好きです。たぶん、結構前から」
言っちゃった。言っちゃったよ。
「たぶん、って何」
「いや…確実に好きです」
聡子さんが笑った。目尻にちょっとだけ涙が溜まってて、それを指で拭った。
「遅いよ、バカ」
キスは聡子さんからだった。コーヒーの匂いがした。
ソファで何回かキスして、聡子さんが俺のネクタイを緩めてきた。指先が少し震えてた。
「聡子さん…」
「さん付け、今日はやめて」
「…聡子」
「ん」
立ち上がって、聡子の手を引いて寝室に向かった。ベッドに座った聡子が自分でブラウスのボタンを外し始めて、俺はそれを見てる間に、自分が本当にここにいていいのかわからなくなった。
(4つ上の先輩だぞ。月曜からどうすんだよ)
でも聡子が下着姿になって、腕で胸を隠しながらこっちを見た瞬間、そんなことはどうでもよくなった。
「…見ないでよ、恥ずかしい」
「見るに決まってるだろ」
聡子のブラを外した。Eカップは伊達じゃなくて、制服じゃわからなかった柔らかさがあった。
「あっ…ちょっと、いきなり…」
「ごめん、我慢できない」
胸に顔を埋めたら、聡子が俺の頭を抱えるように手を回してきた。乳首を舌で転がすと、聡子が小さく息を吐いた。
「んっ…やだ、そんなに吸わないで…」
嫌がってる割に、聡子の手は俺の頭をしっかり押さえてた。下着を脱がせて直接触れると、もうかなり濡れてた。
「聡子…入れていい?」
「…ゴム、あるよ。引き出しの中」
(用意してあったのか…)って思ったけど、聞かないでおいた。
ゴムを付けて、正常位でゆっくり入れた。聡子が俺の背中に爪を立てて、顔をそむけた。
「あ…っ、久しぶりだから…ゆっくりしてね…」
「うん…大丈夫?」
「うん…動いて…いいよ…」
腰を動かすと、聡子が声を殺そうとして唇を噛んでた。でもだんだん我慢できなくなってきたのか、甘い声が漏れ始めた。
「あっ…あっ…やば…声出ちゃう…」
「出していいよ」
「だって隣の部屋に…んっ…聞こえたら…」
「知らないよ、そんなの」
聡子の脚が俺の腰に絡みついてきた。奥まで突くたびに、聡子の中がきゅっと締まる。
(やば…気持ちよすぎる…)
「ねえ…もっと強く…して…」
さっきまで「ゆっくり」って言ってたのに。でもその変化がたまらなかった。ペースを上げると、聡子が両手でシーツを掴んだ。
「聡子…俺もそろそろ…」
「中はダメだからね…っ、ちゃんと付けてるよね…?」
「付けてる…っ」
最後は聡子が自分から腰を押し付けてきて、俺はそのまま果てた。聡子も一緒にイったみたいで、全身をびくっと震わせて、しばらく動けなかった。
終わった後、聡子が俺の胸に頭を乗せて言った。
「これ、一回きりじゃないよね?」
「…当たり前だろ」
「ふふ、よかった」
それが去年の12月の話。
で、美咲と再会したのは今年の2月。
仙台駅前のスタバで、偶然隣の席に座った女の子が美咲だった。大学の軽音サークルで一緒だった後輩で、3年ぶりぐらい。
「え、先輩じゃないですか!うわ、懐かしい!」
「美咲?マジで?全然変わってないな」
「先輩こそ!あ、でもちょっと痩せました?」
「ランニング始めたからかな」
「えー、かっこいい!今度一緒に走りたいです!」
美咲は相変わらず人懐っこくて、30分で昔のノリに戻った。LINE交換して、その週末にはもう一緒にランニングしてた。広瀬川沿いの、俺がいつも走ってるコース。
最初は本当にただの先輩後輩だったんだ。美咲には彼氏がいるって聞いてたし、俺には聡子がいるし。でも美咲が走りながら「実は最近別れたんです」って言い出して、話を聞いてるうちに、なんか変な空気になっていった。
3月の終わり、花見の帰りに美咲を家まで送って、玄関先で。
「先輩、今日楽しかったです」
「おう、また行こうぜ」
「…先輩って、彼女いるんですか?」
(…来た)
「え、なんで?」
「なんでって…気になるからに決まってるじゃないですか」
美咲が上目遣いで見てきた。街灯の下で、桜の花びらが風で飛んできて美咲の髪にくっついた。
(ここで正直に言えば、全部違ったんだろうな)
でも俺は言えなかった。
「…いないよ」
最低だって自分でもわかってた。
美咲とは、その翌週に俺の部屋で初めて関係を持った。美咲は聡子とは全然違って、すごく素直で。されるがままというか、こっちがリードしないと何も進まないタイプだった。
「先輩…恥ずかしいです…電気消してもらっていいですか…」
「やだ。美咲のこと見たいし」
「えっ…そういうこと言うの反則ですよ…」
美咲は顔を真っ赤にして枕で顔を隠した。その仕草がかわいすぎて、どうにかなりそうだった。
美咲との行為は、聡子とは全然違った。聡子が大人の余裕というか、リードしてくれる感じなのに対して、美咲はもう全部が初々しくて。声を我慢しようとして、でも我慢しきれなくて、目に涙が溜まってくる感じ。
「せ、先輩…やさしくしてくださいね…」
「わかってるよ」
美咲の中はすごく狭くて、入れるのにも時間がかかった。ゆっくり腰を動かすと、美咲が俺のシャツをぎゅっと掴んできた。
「ん…っ、あ…先輩…」
「痛い?」
「痛くないです…気持ちいい、です…」
聡子のときは大人の情事という感じだったけど、美咲とは初恋のやり直しみたいな気分だった。どっちが本当の自分なのか、正直よくわからなかった。
そうやって3ヶ月ぐらい、俺は二人と同時に付き合ってた。聡子には「今日は残業」、美咲には「今日は先輩と飲み」。スマホの通知は常にサイレントモード。LINEの名前は「S主任」と「M後輩」に変えて管理してた。
(俺、最低だな…)
何回もそう思ったけど、どっちも切れなかった。聡子の大人の優しさも、美咲の無邪気な甘え方も、両方必要だった。…いや、必要って言い方はおかしいな。両方好きだったんだと思う。たぶん。
で、6月。お盆には早いけど、親父の還暦祝いで実家に帰ることになった。実家は仙台市内だから泊まりじゃなくてもいいんだけど、母さんが「たまにはゆっくりしていきなさいよ」って言うから、土日で泊まることにした。
問題はここからで。
母さんに「彼女いるなら連れてきなさいよ」って言われて、つい「今度紹介するよ」って言っちゃったんですよ。で、聡子に「実家に来てくれないか」って頼んだ。聡子は「えっ、ご両親に?」って驚いてたけど、嬉しそうだった。
「いいの?私、4つも上だけど…」
「そんなの関係ないよ。聡子のこと、紹介したいんだ」
「…うん。行く。ちゃんとした格好していくね」
この時点では、まだ美咲には実家の話はしてなかった。美咲には「週末は実家に帰る」とだけ伝えてた。
土曜の朝、聡子と待ち合わせて実家に向かった。実家は泉区の住宅街にある普通の一軒家で、門をくぐると母さんが玄関先に立ってた。
「はじめまして、篠原聡子です。息子さんにはいつもお世話になっております」
母さんは聡子を見て、一瞬だけ目を見開いた。たぶん年齢のことを考えたんだと思う。でもすぐに笑顔になって。
「まあまあ、綺麗な人ねえ。上がって上がって」
居間に通されて、お茶を出されて。親父も奥から出てきて、聡子に挨拶した。聡子は緊張しながらもしっかり受け答えしてて、俺はちょっと誇らしかった。
「しっかりした人だなあ。うちの息子にはもったいないぐらいだ」
「そんなことないです。彼にはいつも助けてもらってます」
(聡子、さすがだな…)
そう思って安心してた矢先。
玄関のチャイムが鳴った。
母さんが出ていって、しばらくしたら戻ってきた。その後ろに、見覚えのありすぎる人が立ってた。
「こんにちは、お邪魔します…って、え?」
美咲だった。
(…は?)
「み、美咲?なんで…」
「え、先輩?なんでって…お母さんに呼ばれたんですけど…」
母さんがにこにこしながら言った。
「あら、だって美咲ちゃん、前にお母さん同士のランチで会った時に、うちの子と付き合ってるって聞いたのよ?だから一緒に呼んだの」
(母さん…何してくれてんの…)
聡子が俺を見た。静かな目だった。怒ってるとかじゃなくて、ただ状況を理解しようとしてる目。
美咲も俺を見た。こっちは目が大きく見開かれてて、今にも泣きそうだった。
居間の空気が、仙台の1月並みに凍った。
「…ねえ、どういうこと?」
「聡子、あの、これは…」
「先輩…彼女、いないって言ってたじゃないですか…」
「彼女いないって言ったの?私がいるのに?」
親父がお茶をすすりながら小声で「やっちまったな」って言った。母さんは口に手を当てて固まってた。
「ごめん…本当にごめん。二人とも…」
「謝る相手の順番、間違ってない?」
聡子の声は静かだった。怒鳴られるより怖かった。
「私…帰ります…」
美咲が立ち上がろうとした。
「待って」
聡子が美咲を止めた。
「帰る前に、ちゃんと話そう。この人に逃げさせたらダメだから」
「この人」って俺のことです。
そこから2時間ぐらい、俺は二人と母さんと親父の前で、全部洗いざらい話した。聡子との馴れ初め、美咲との再会、二股してた期間、嘘の内容。全部。
美咲は途中で泣いた。聡子は泣かなかった。その代わり、時々窓の外を見てた。
話し終わった後、沈黙があった。長い沈黙。時計の秒針の音がやたら響いた。
最初に口を開いたのは、意外にも親父だった。
「悠太。お前は二人とも好きなんだな?」
「…はい」
「どっちかを選べと言われたら?」
「…選べません」
「だろうな。お前の顔見りゃわかる」
親父はため息をついて、それから聡子と美咲を見た。
「篠原さん、美咲ちゃん。うちの息子が本当に申し訳ないことをした。親として謝らせてほしい」
親父が頭を下げた。母さんも。俺も一緒に頭を下げた。
「…頭を上げてください。悪いのはこの人なんですから」
また「この人」って言われた。
「私も…頭上げてください。お母さんたちは悪くないです…」
その後、聡子が「少し外の空気吸ってくる」って出ていった。俺が追いかけようとしたら、美咲が俺の袖を掴んだ。
「先輩…聡子さんって、先輩の会社の人ですよね」
「…うん」
「先に付き合ってたのは、聡子さんのほう?」
「…うん」
美咲が俺の袖を離して、膝の上で拳を握った。
「最低ですよ、先輩」
「わかってる」
「でも…嫌いになれないのが、もっと最低です」
美咲が泣きながら笑って、俺はどうしていいかわからなかった。
10分ぐらいして、聡子が戻ってきた。少し目が赤かった。やっぱり泣いてたんだと思う。
「美咲ちゃん、ちょっと二人で話せる?」
「え、あ、はい…」
二人が別の部屋に消えた。俺は居間に取り残されて、親父と母さんに挟まれた。
「お前、覚悟はあるのか」
「覚悟って…」
「二人にちゃんと向き合う覚悟だよ。逃げるなよ」
母さんが静かに言った。いつもふわふわしてる母さんが、こういう時だけ怖い。
30分ぐらい経って、二人が戻ってきた。聡子の表情が少し柔らかくなってた。美咲は相変わらず目が真っ赤だったけど、さっきよりは落ち着いて見えた。
「話し合ったの。結論から言うと、今すぐどうこうは決められない」
「…うん」
「でも、一つだけ決まったことがある。あなたには、もう嘘をつかせない」
「先輩。私たち二人がいること、お互い知った上で、これからどうするか考えます」
(…え?)
「別に三人で付き合おうとか、そういうおめでたい話じゃないから。ただ、どっちかが知らない状態で傷つくのは、もう嫌なの。それは美咲ちゃんも同じ気持ちだって」
「はい…騙されてるのが一番つらかったので…」
その夜。聡子は「今日は泊まれない」って帰ろうとしたけど、母さんが「もう遅いから泊まっていきなさい。美咲ちゃんも」って強引に引き留めた。
客間に布団を二組敷いて、聡子と美咲は同じ部屋に泊まることになった。俺は自分の部屋。当然一人。
夜中の2時ぐらいに、トイレに起きたら、廊下で聡子と出くわした。
「…眠れないの?」
「うん。聡子は?」
「同じ」
暗い廊下で二人、立ったまま。
「ねえ…私のこと、本当に好き?」
「好きだよ。嘘じゃない」
「美咲ちゃんのことも?」
「…うん」
「正直に言ってくれて、ありがとう。でもね、すっごくムカつく」
聡子が俺のTシャツの襟を掴んで引き寄せた。唇が触れた。怒りと寂しさが混ざったようなキスだった。
「今夜だけは、私だけのものにさせて」
聡子の手が俺のズボンの中に入ってきた。廊下で。実家で。
「ちょ、ここ実家だって…」
「知ってる。だから静かにして」
聡子が膝をついた。暗い廊下で、聡子の口が俺を包んだ。温かくて、少しだけ怒ってるのがわかる強さだった。
「っ…聡子…」
「んっ…しーっ…」
声を殺すのに必死だった。聡子の舌が先端を舐め上げて、そのまま深くくわえ込んできた。片手で根元を握って、もう片方の手が俺の腰を掴んでる。
(実家の廊下で…こんなの…頭おかしくなる…)
聡子が口を離して、立ち上がった。俺の手を取って、自分の部屋…じゃなくて、客間に連れていこうとした。
「待って、美咲が寝てるだろ」
「お風呂場」
聡子に引っ張られて、風呂場に入った。脱衣所のドアを閉めて、鍵をかけた。聡子が自分からパジャマを脱いだ。月明かりが小さな窓から差し込んで、聡子の白い肌が浮かび上がった。
「ゴムは…持ってきてないよね」
「…ない」
「…今日、安全な日だから。いいよ」
(え…生で…?)
聡子を洗面台に座らせて、脚を開かせた。触れると、もうすごく濡れてた。
「廊下であれしてる時から…もうこんなになってたの…恥ずかしい…」
「入れるよ…」
「うん…来て…」
生で入れた瞬間、二人とも息が止まった。ゴム越しとは全然違う。聡子の中の熱が直接伝わってきて、頭がくらくらした。
「あっ…っ…生、やばい…こんなの初めて…っ」
「聡子…きつい…気持ちいい…」
声を出さないように、聡子の首筋に顔を埋めて腰を動かした。聡子は俺の背中を爪で引っ掻いて、必死に声を噛み殺してた。
「ん…っ、んんっ…やだ…もう…っ…」
「何がやだ…」
「こんなの…されたら…もう離れらんない…っ」
聡子の目が潤んでた。快感なのか、感情なのか、たぶん両方。俺は聡子の額にキスして、ペースを上げた。
洗面台がギシギシ鳴って、ちょっと焦った。でも止まれなかった。
「聡子…出そう…」
「中に出して…いいから…」
「マジで…?」
「マジで…っ。私を選んでよ…今だけでいいから…っ」
その言葉で全部持っていかれた。聡子の奥で果てた。聡子も同時にイったみたいで、俺の肩に歯を立てて、全身をぶるっと震わせた。
「はぁ…はぁ…」
「…聡子…」
「…バカ。こんなことしたって、何も解決しないのに」
「うん…ごめん…」
「謝んないでよ。余計惨めになるから」
聡子が俺の胸に額をくっつけて、しばらくそのままだった。聡子の肩が微かに震えてた。
体を拭いて服を着て、それぞれの部屋に戻った。廊下ですれ違いざまに、聡子が小さく言った。
「明日の朝、ちゃんと話そうね」
「…うん」
翌朝。母さんの朝ごはんを4人で食べた。卵焼きと味噌汁と焼き鮭。普通の朝食だった。でも空気は全然普通じゃなかった。
食後、居間で4人が向かい合った。親父と母さんは台所に引っ込んでくれた。
「美咲ちゃん、昨夜はよく眠れた?」
「いえ…ほとんど寝てないです。聡子さんは…」
「私も。ちょっと目が覚めちゃって」
(…あの時のこと、バレてないよな…?)
「あの…聡子さん。昨日話してくれたこと、すごく考えました。私、先輩のことを好きな気持ちは変わりません。でも聡子さんを傷つけてまでっていうのは…」
「傷ついてるのはお互い様だよ。悪いのはこの人なんだから」
三回目の「この人」。もう慣れた。
「私は32で、正直、時間に余裕はない。でもだからって焦って判断するのも違うと思う。美咲ちゃんはまだ25でしょ?」
「はい…」
「だったら、3ヶ月。3ヶ月だけ時間をちょうだい。その間、この人は二人とも会える。でも隠し事なし。全部オープンにする。3ヶ月後に、三人でもう一回話し合う。それでどう?」
「…はい。それでお願いします」
「俺は…」
「あなたに選択権はありません」
正論すぎて何も言えなかった。
帰り際、母さんが玄関先で聡子に何か渡してた。小さな紙袋。後で聡子に聞いたら「手作りのお漬物と、お母さんの電話番号」だった。
美咲には親父が「また来なさい」って言ってた。美咲は泣きそうな顔で「ありがとうございます」って頭を下げてた。
帰りの車の中で、聡子が助手席から言った。
「あんたのお母さん、全部わかってて呼んだのかもね」
「え?」
「二人いるの、薄々気づいてたんじゃない?だから同じ日に呼んで、ぶつけさせた」
(…母さんに限って…いや、母さんならやりかねないか…)
「でもね、おかげで嘘はなくなった。それだけは感謝してる」
3ヶ月後にどうなったかは、またいつか書きます。
一つだけ言えるのは、俺は結局どっちも選べなくて、でも二人のほうから答えを出してくれた。その答えは、俺が想像してたどのパターンとも違ってた。
…続き、気になります?笑
まあ、こんな話を投稿してる時点で、最悪の結末にはなってないってことだけは言っておきます。仙台は今日も暑いです。広瀬川沿い、走ってきます。