高校で俺にだけ無視を決め込んでた委員長と社会人になって終電逃した夜に再会した

社会人3年目、25歳の時の話です。

俺は都内のIT企業で働いてて、まあぶっちゃけ中の下くらいの顔面偏差値。身長172で体型は普通。特にモテるわけでもなく、彼女なし歴1年半。金曜の夜に後輩と新橋で飲んで、終電を見事に逃した。

タクシー乗り場の列がエグくて、30分は待つなこれ、と思いながらスマホいじってた。

6月の蒸し暑い夜で、ワイシャツの第二ボタンまで開けて、缶ハイボール片手にぼーっとしてたら、列の3人前にいる女が振り返ってこっちを見てる気がした。

黒髪のセミロングで、白いブラウスにネイビーのタイトスカート。横顔が妙に整ってる。なんか見覚えがある、と思って目を凝らしたけど、酔ってるし気のせいだろうと。

そしたら向こうから歩いてきた。

「あの、もしかして...北高の田中くん?」

(は?)

声を聞いた瞬間、一気に記憶が蘇った。

委員長だ。高校3年間、同じクラスだった瀬川。

橋本環奈をもう少し大人っぽくした感じの顔で、身長160くらい。高校の時から男子の間では「学年トップ3」に入る存在だった。成績優秀、生徒会役員、先生からの信頼も厚い。

ただし、俺に対してだけ異常に冷たかった。

話しかけても目を合わせない。グループワークで同じ班になっても俺にだけ業務連絡みたいな口調。文化祭の準備で俺が机を運んでたら、わざわざ別の男子に「手伝って」と頼む始末。

最初は気のせいかと思ったけど、3年間ずっとだったから気のせいじゃない。

友達の山本に聞いても「え、瀬川?普通に話してくれるけど?」って言うし。完全に俺だけピンポイントで避けられてた。

正直、高1の最初に見た時は一目惚れに近かった。だからこそ余計にキツかった。好きになりかけた相手に露骨に避けられるって、結構トラウマになる。

そんな女が、今、俺の前で笑ってる。

「...瀬川?」

「やっぱり!うわ、久しぶり!」

いや、テンション高すぎないか? 俺のこと嫌いだったよな?

「久しぶり。元気そうだな」

「田中くん、全然変わんないね。あ、ちょっと大人っぽくなったかも」

社交辞令にしても距離感がバグってる。高校の時、お前俺に挨拶すら返さなかっただろ。

タクシーの列はなかなか進まない。瀬川は元の位置に戻らず、俺の横に並んだ。

「ねえ、タクシーこの調子だとめっちゃかかるよね。田中くんどこ住み?」

「三軒茶屋」

「え、うそ。私、駒沢大学」

田園都市線で一駅隣じゃねえか。

「じゃあタクシー割り勘しない?方向一緒だし」

正直、断る理由がなかった。酔ってたし、早く帰りたかったし。でも心のどこかで(こいつ何企んでんだ?)と思ってた。高校3年間の冷遇が染みついてるから、素直に受け取れない。

タクシーに乗り込むと、瀬川は助手席じゃなくて俺の隣の後部座席に座った。

車内が狭いから太ももが当たる。タイトスカートから伸びる脚が白くて、目のやり場に困った。

「田中くんさ、今何の仕事してるの?」

「IT。システム開発」

「へー、すごい!私は化粧品メーカーの営業」

「あー、だから化粧うまいんだ」

「それ褒めてる?笑」

普通に会話が成立してることに混乱した。高校の時、こんなやり取り一度もなかった。プリントを渡す時ですら目を逸らされてたのに。

「なあ、瀬川」

「ん?」

「高校の時、俺のこと嫌いだっただろ」

瀬川の表情が固まった。タクシーの中が一瞬シンとなった。

「...覚えてるよね、そりゃ」

「3年間無視されたら忘れねえよ」

「...ごめん」

小さい声だった。さっきまでのテンションが嘘みたいに、瀬川は俯いた。

「嫌いじゃなかった。嫌いじゃなかったの、ほんとに」

「じゃあなんで俺にだけあんな態度とってたんだよ」

瀬川がバッグの取っ手をぎゅっと握った。

「...高1の時、田中くんが体育祭で私の荷物持ってくれたことあったじゃん」

覚えてる。瀬川が大量の道具を運んでて、見かねて手伝っただけだ。

「あの後、三上に呼び出されて」

三上。学年のヤンキーグループのトップ。瀬川と付き合ってるって噂があった。

「『田中に近づくな、あいつお前のこと狙ってる』って。それで、田中くんと話してるとこ見られたら、三上が田中くんに何するかわかんないから...」

(...マジかよ)

「卒業式の日、ほんとは話しかけたかった。でも三上がずっとそばにいて...私が田中くんの方見たら、三上が睨んできて...」

瀬川の目が赤くなってた。タクシーの窓から入る街灯の光で、涙が光ってるのが見えた。

「ずっと謝りたかった。でも連絡先も知らないし、共通の友達もいないし...」

俺は黙って聞いてた。

正直、信じていいのかわからなかった。7年も前の話だし、後付けで理由なんていくらでも作れる。でも瀬川の声は震えてたし、バッグを掴む手は白くなるほど力が入ってた。

タクシーが三軒茶屋に着いた。

「俺、ここだから」

財布を出そうとしたら、瀬川が全額払った。

「これくらいさせて。ほんとにごめん」

タクシーを降りて、そのまま帰ればよかった。でも俺の口は勝手に動いてた。

「...少し話すか。コンビニでなんか買ってく?」

瀬川がこっちを見た。街灯の下で、涙の跡が残った顔が高校の時と重なった。

「...いいの?」

「駒沢までタクシーもったいないだろ。歩いて帰れる距離だし。少しくらいなら」

自分でも何言ってるのかわからなかった。嫌いだった女を家に上げようとしてる。いや、嫌いじゃなかった。避けられて傷ついたから、嫌いだと思い込もうとしてただけだ。

コンビニでビールとつまみを買って、俺のアパートに向かった。築30年の1Kで、決して広くはない。

「わ、片付いてるね」

「元々物が少ないだけ」

瀬川はローテーブルの前に正座して、缶ビールを開けた。スカートのせいで正座がきつそうで、途中で横座りに変えてた。

しばらく高校の同級生の近況を話した。山本が結婚したとか、担任の佐藤先生が教頭になったとか。瀬川はよく笑った。高校の時には見たことない笑顔だった。

「三上とはいつ別れたの?」

「高3の冬。大学が別になるって言ったら、向こうからフラれた」

「へえ」

「正直、ホッとした。あの人、束縛がひどくて。スマホも勝手に見るし、男の連絡先全部消させられたし」

「よくそんなのと付き合ってたな」

「最初は優しかったんだよ...って、これ言う女って全員同じこと言うよね笑」

自虐気味に笑う瀬川を見て、少しだけ心が緩んだ。

「ねえ、田中くんは...私のこと、嫌い?」

ストレートに聞いてきた。瀬川はビールの缶を両手で持って、俺の目を見てた。

「嫌いだったら家に上げてない」

「...そっか」

「ただ、正直まだよくわかんない。7年ぶりに会って、いきなり全部チャラにはできない」

「うん、わかる。当たり前だよね」

瀬川が立ち上がって、トイレを借りた。戻ってきた時、ブラウスの第一ボタンが開いてた。さっきまで閉まってたのは覚えてる。暑かっただけかもしれないけど、鎖骨のラインが見えて、視線が吸い込まれそうになった。

(いや、やめろ。冷静になれ)

「ねえ、高校の時の体育祭のこと覚えてるって言ったけど...他にも覚えてることある?」

「は?いきなりなんだよ」

「いいから、なんかある?」

「...修学旅行で班が一緒だった時、お前だけ俺に話しかけなかった」

「うん」

「文化祭で俺がクラスの出し物の看板描いてたら、瀬川が来て『他の人に頼むから』って言って追い出された」

「...うん」

「あと、高2の冬にたまたま駅で会った時、俺が手を振ったら走って逃げた」

瀬川がうつむいた。肩が震えてた。

「全部...全部、三上に見られてたから...田中くんのこと、守りたかっただけなのに、結局傷つけてた...」

泣いてた。声を殺して、膝の上に涙がぽたぽた落ちてた。

正直、心臓がうるさかった。この7年間、俺の中で「俺を嫌ってた女」として分類されてた瀬川が、目の前で俺のために泣いてる。脳の処理が追いつかない。

気づいたら手を伸ばしてた。瀬川の頭を、ぽんと一回だけ叩いた。

「...もういいよ」

「よくない...よくないよ...」

「事情は分かった。お前のせいじゃない」

瀬川が顔を上げた。目が真っ赤で、化粧が少し崩れてて、それでも高校の時より綺麗になってた。橋本環奈を大人にしたような顔が、涙で濡れてると反則だろ。

「田中くん...」

距離が近い。いつの間にか瀬川がこっち側に寄ってきてた。酒の匂いと、甘い香水の匂いが混ざってた。

(ダメだろ、これは。泣いてる女に手を出すとか最低だ)

頭ではそう思ってるのに、体が動かない。

瀬川の唇が近づいてきた。目を閉じてた。睫毛が長くて、涙の粒がまだ残ってた。

俺は避けなかった。

唇が触れた。柔らかくて、少し塩の味がした。涙の味だ。

数秒で離れて、瀬川が慌てた顔をした。

「ご、ごめん...酔ってて...」

「酔ってたら何してもいいのか」

「ちがっ...ちがうの、ずっと...」

言いかけて止まった。瀬川の目が泳いでる。

「ずっと、なに」

「...ずっと、好きだった」

(...は?)

「高1の時、体育祭で荷物持ってくれた時から。田中くんだけが、委員長じゃなくて私として見てくれてた。他の男子はみんな顔しか見てないのに、田中くんは『重そうだな』って。それだけで好きになった」

頭がおかしくなりそうだった。7年間嫌われてたと思ってた相手に、好きだったと言われてる。高校の3年間、避けられるたびに胸がチクチクしてたのは、俺も瀬川のことが気になってたからだ。認めたくなかっただけで。

「...なんでもっと早く言わなかったんだよ」

「言えるわけないでしょ...三上がいるのに...田中くんが殴られたりしたら、私...」

また涙が溢れた。俺は今度は頭をぽんと叩くだけじゃなく、引き寄せた。瀬川の顔が俺の胸に埋まった。

「っ...田中くん...」

「泣くな。鼻水つくだろ」

「つかないよ...バカ...」

肩を掴んで少し離して、顔を見た。化粧が崩れて、目は赤くて、鼻もちょっと赤い。それなのにかわいいと思ってしまった自分に呆れた。

2回目のキスは、俺からした。

さっきよりも深くて、瀬川の口が少し開いて、舌が触れた。ビールの味がした。瀬川の手が俺のワイシャツを掴んだ。

「ん...」

息が荒くなってるのが自分でもわかった。瀬川を押し倒すように体勢が変わって、ローテーブルの缶ビールが倒れそうになった。

「...ベッド、行くか」

自分で言っておいてなんだけど、信じられなかった。高校の時、目も合わせてくれなかった女を、自分のベッドに誘ってる。

瀬川が小さく頷いた。

ベッドに座らせて、正面からキスした。瀬川の手が震えてた。

「緊張してる?」

「...してない、って言ったら嘘になる」

「嫌だったら言え。すぐやめるから」

「嫌じゃない...嫌じゃないから...」

ブラウスのボタンを一つずつ外していった。白いブラジャーが見えた。高校の時は制服の上からでもわかるくらい胸があったけど、今はさらに成長してる感じがした。

「...結構あるな」

「え...やだ、見ないで...」

「見ないでって、これから何すると思ってんの」

「...バカ」

ブラを外すと、形のいい胸が出てきた。Eくらいはある。白い肌に薄いピンクの乳首が上を向いてて、思わず息を呑んだ。

触ると、瀬川がビクッと体を震わせた。

「あっ...」

柔らかい。揉むと指の間から溢れるような感触で、乳首を親指で転がすと瀬川が唇を噛んだ。

「声、我慢しなくていいよ」

「だって...恥ずかしい...」

「隣の部屋、空き部屋だから大丈夫」

嘘だけど。隣には40代のサラリーマンが住んでる。でもまあ、金曜の深夜だし。

乳首に口をつけて吸うと、瀬川が声を漏らした。

「んっ...あ...田中くん...」

「田中くん」って呼ばれるのが妙にくすぐったい。高校の時は名前すら呼んでくれなかったのに。

スカートのファスナーを下ろして、脱がした。黒いレースのショーツで、委員長のイメージと全然違った。

「意外と攻めた下着つけてんな」

「今日たまたまで...!別に気合入れてたわけじゃ...」

太ももの内側に手を滑らせると、もうショーツが湿ってた。

「たまたまの割には濡れてるけど」

「っ...意地悪...」

ショーツをずらして指で触れると、瀬川が腰を浮かせた。想像以上に反応がいい。

「感じやすいんだな」

「自分でもわかんない...こんなの初めて...」

指を一本入れると、きつくて熱かった。中がぎゅっと締まって、指を押し出そうとしてくる。

「あっ...あっ...ダメ...そこ...」

クリに親指を当てながら中を探ると、少し奥の方にざらっとした場所がある。そこを擦ると瀬川の声が一段上がった。

「やっ...そこダメっ...変な感じする...」

ぐちゅ、と音が鳴った。指が抜けないくらい締まってきて、瀬川の太ももが閉じようとする。

「脚、閉じるな」

「無理...無理っ...あっ...イっちゃ...」

瀬川の体がびくっと跳ねて、俺の指を締め上げた。目を閉じて、唇を半開きにして、しばらく動かなかった。

「...イった?」

「...ばか...いきなりそんなの聞かないでよ...」

顔が真っ赤だった。高校の時の、教室で誰よりもクールだった委員長の面影はどこにもない。目の前にいるのは、耳まで赤くなった普通の女だった。

(この顔を、高校の時の俺に見せてやりたいわ)

瀬川が体を起こして、俺のベルトに手を伸ばした。

「田中くんも...脱いで...」

手が震えてて、ベルトのバックルがうまく外せてない。見かねて自分で外した。

ズボンとパンツを脱いで、もう勃ってるのが丸見えになった。瀬川が目を逸らした。

「...おっきい」

「お世辞はいいから」

「お世辞じゃないよ...」

恐る恐る手を伸ばしてきて、握った。手がひんやりしてて、ぞくっとした。ぎこちない手つきで上下に動かしてくる。

「もうちょい強くていい」

「こう...?」

力加減がわかってない感じ。経験が少ないのか、それとも緊張してるのか。でも瀬川の手で触られてるという事実だけで、普段の3倍は気持ちいい。

「ゴム...あったかな」

ベッドサイドの引き出しを漁った。去年買ったやつがまだ残ってた。使う予定がないまま期限が迫ってたやつ。人生何があるかわからない。

ゴムを着けて、瀬川の上に覆いかぶさった。脚の間に身体を入れると、濡れた感触が先端に当たった。

「入れるぞ」

「...うん」

ゆっくり腰を進めた。瀬川の中は狭くて、押し返してくる。途中で止まりそうになったけど、瀬川が俺の背中に手を回して引き寄せてきた。

「...っ...あ...」

奥まで入った瞬間、瀬川が息を飲んだ。中が脈打つみたいに締まったり緩んだりしてて、じっとしてるだけでもヤバい。

「痛くない?」

「痛くない...動いて...」

ゆっくり腰を動かし始めた。瀬川が声を殺そうとして、でも漏れる。ぐちゅ、ぐちゅ、と水音がして、瀬川がさらに顔を赤くした。

「あっ...ん...田中くん...」

「名前で呼んでいいよ」

「...え?」

「高校の時、一回も名前で呼ばれなかったから」

瀬川の目がうるっとした。また泣きそうな顔。

「...拓也...」

名前で呼ばれた瞬間、頭の中が真っ白になった。7年間、この声で名前を呼ばれたかった。それを自覚した瞬間、腰が勝手に速くなった。

「あっ...あっ...拓也っ...速い...」

「悪い...止まんない...」

瀬川の中がどんどんきつくなって、俺を離さないみたいに絡みついてくる。瀬川の爪が俺の背中に食い込んだ。

「やっ...また来る...イっちゃう...」

「俺も...もう...」

「拓也っ...一緒に...」

瀬川の体がぎゅっと弓なりになって、中が痙攣するみたいに締まった。その圧に負けて、俺もイった。ゴムの中にどくどくと出ながら、瀬川を抱きしめてた。

しばらくそのまま動けなかった。瀬川の心臓の音が、俺の胸に伝わってきた。

「...はぁ...すごかった...」

「...うん」

ゴムを外して、ティッシュで処理した。瀬川はシーツを胸元まで引き上げて、横を向いてた。

「なに隠してんだよ。全部見たのに」

「見たのと見られるのは違うの...」

なんだそれ。

瀬川が寝返りを打ってこっちを向いた。髪がぐちゃぐちゃで、化粧は完全に落ちてて、目はまだ少し赤い。でも笑ってた。

「ねえ、もう一回...していい?」

「お前から言うのかよ」

「だって...7年分の好きを取り戻したいから」

(こいつ、こういう台詞をさらっと言うタイプだったのか)

2回目は瀬川が上になった。慣れてない感じで、膝をついて腰を落としてくる。

「ん...こう?」

「もうちょい前」

「あっ...入った...」

自分で腰を動かし始めたけど、リズムがバラバラで、それがかえってよかった。完璧じゃないからリアルだし、瀬川が一生懸命な顔してるのが可愛かった。

「はぁ...あっ...拓也...気持ちいい?」

「うん...めちゃくちゃ」

1回目より余裕があるぶん、瀬川の体をちゃんと見れた。揺れる胸とか、くびれとか、腰を動かすたびに見える繋がってるところとか。

瀬川の腰が止まった。

「ごめ...脚つった...」

「...マジかよ」

笑ってしまった。瀬川も恥ずかしそうに笑った。

体勢を変えて、後ろから入れ直した。瀬川が枕に顔を埋めて、声を殺そうとしてる。

「声、出していいって」

「だって...こんな声...自分で聞いたことない...」

奥を突くたびに、瀬川の声が高くなって、枕を掴む手に力が入る。

2回目は長く持った。瀬川が先にイって、中が震えるのを感じながら、俺もそのまま果てた。

終わった後、2人でベッドに転がって、天井を見てた。エアコンの音だけが聞こえる。窓の外がうっすら明るくなり始めてた。

「...ねえ」

「ん」

「私、高校の時のこと、一生後悔してた。田中くんの...拓也のこと、守るためだって自分に言い聞かせてたけど、ほんとは、自分が怖かっただけかもしれない」

「...」

「三上と別れた後、何回も連絡しようと思った。でも、あれだけ冷たくしておいて今さら何言っても言い訳にしかならないって...」

「まあ、そうかもな」

「...ひどい」

「でも、今日会えたじゃん」

瀬川がこっちを向いた。

「終電逃してよかったわ」

瀬川がまた泣いた。今度は声を出して。うるさいから抱き寄せたら、俺の胸に顔を押し付けて、さらに泣いた。

「泣きすぎだろ、お前」

「だって...だってぇ...」

「鼻水つけんなよ」

「つけないってぇ...」

朝の6時前だった。瀬川はいつの間にか俺の腕の中で寝てた。寝顔がやたら穏やかで、高校の時の冷たい表情が嘘みたいだった。

俺は瀬川の髪をぼんやり撫でながら、考えてた。

7年前、瀬川が俺を避けてたのは、俺を守るためだった。それを知った今、じゃあ俺のこの7年間のモヤモヤはどこに向ければいいんだろう。

でも、腕の中で寝てる瀬川の体温を感じてたら、そんなことはどうでもよくなった。

結局、俺が先に起きて朝飯を作った。目玉焼きとウインナーと味噌汁という、独身男の限界朝食。

匂いで起きた瀬川が、俺のシャツを着てキッチンに来た。シャツの裾から脚が見えてて、朝から心臓に悪い。

「おはよ...いい匂い」

「おはよ。たいしたもんないけど」

「十分だよ。...ねえ、拓也」

「ん?」

「連絡先...教えて?...今度は、逃げないから」

瀬川が少し不安そうな目でこっちを見てた。

俺はスマホを差し出した。

「駒沢だったら、飯くらいいつでも行けるだろ」

瀬川が泣き笑いみたいな顔をした。

あの夜から、瀬川とは週に3回は会うようになった。7年のブランクを埋めるみたいに、あいつはよく喋り、よく笑い、よく泣いた。

付き合おうと正式に言ったのは、再会から2週間後のことだ。

駒沢公園を散歩してる時に、俺から言った。瀬川はまた泣いた。ほんとによく泣く女だ。

でも、高校3年間分の無視の代わりに、俺だけに向けた笑顔を毎日もらえるなら、まあ悪くない取引だと思ってる。


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