社会人3年目、25歳の話です。
俺のスペックを先に言っておくと、身長174cm、顔は「まあ雰囲気イケメン?」って言われることがたまにある程度の、どこにでもいるフツメンです。大学までバスケやってたから体型だけはそこそこ維持してるけど、モテるかって言われたら全然モテない。職場の飲み会では大体カウンターの端っこで一人でハイボール飲んでるタイプ。彼女いない歴は当時で1年半くらいだったかな。
で、その日は金曜の夜で、大学の同期と新宿で飲んでました。3軒目のバーを出たのが午前1時過ぎ。同期は歌舞伎町方面に消えていって、俺は一人で新宿駅に向かったんだけど、当然もう終電なんてとっくにない。
(やっちまったな…)
タクシーで帰ると世田谷の自分のアパートまで5000円はかかる。金曜の深夜の新宿なんてタクシー乗り場は地獄みたいに並んでるし。しょうがないから始発まで時間潰すか、と思って、西口のマクドナルドに向かって歩いてたんです。
そしたら、大ガード手前の交差点のところで、酔っ払いに絡まれてる女の人がいて。
ワンピースにスニーカーっていう格好で、身長は165cmくらいあったと思う。髪はミディアムの暗めの茶色。横顔のラインが綺麗で、酔っ払いのおっさんに「ねえちゃん一杯だけ」とか言われて、明らかに困ってるのに笑顔で断ろうとしてる感じが、なんか見覚えがあった。
あの笑い方。困ってるのに相手を傷つけないように笑うやつ。
(え、まさか。柿崎…?)
名前が出てきた自分にびっくりした。高校のバスケ部の、女子の方のチーム。練習試合で混合チームを組んだとき、一回だけペアになった子。柿崎。正直、それ以降ちゃんと話したことすらなかったのに、なんで顔覚えてるんだろう。
酔っ払いがしつこくて、腕を掴もうとしてたので、さすがに放っておけなくて近づきました。
「あ、ごめん遅くなった。待った?」
知り合いのフリして横に立つ作戦。我ながら安直だけど、酔っ払い相手にはこれが一番早い。
女の人がこっちを見て、一瞬きょとんとして、でもすぐに察してくれた。
「うん、めっちゃ待ったんだけど」
酔っ払いのおっさんは舌打ちして去っていきました。
「ありがとうございます、助かりました…って、え?」
こっちの顔をまじまじと見てくる。街灯の下で、目がちょっと潤んでるのがわかった。泣きそうだったのかもしれない。
「もしかして…榎本?榎本くん?」
当たり。柿崎だった。
「やっぱ柿崎じゃん。いやマジか、こんなとこで会う?」
「えー!うそ、やばい、めっちゃ久しぶり。何年ぶり?」
「高校卒業してからだから…7年?」
「7年…そんな経つんだ。てか、よく私のことわかったね」
いや、それ俺もびっくりしてんだよ。7年前に練習試合で一回組んだだけの相手の顔を、なんで俺は深夜の新宿で瞬時に認識できてんの?って。
「いや、なんか、笑い方が全然変わってなくて」
「笑い方?そんなの覚えてるの?」
(しまった。これキモいやつだ)
「あー、いや、たまたまっていうか。で、終電逃した感じ?」
「うん…友達と飲んでて、気づいたら。榎本くんも?」
「同じく。マクドナルドで始発まで粘ろうと思ってたとこ」
「あ、私もそうしようと思ってた。一緒に行っていい?」
断る理由がないのでマクドナルドに向かいました。
改めて見ると、柿崎は高校のときよりだいぶ雰囲気変わってた。当時はショートカットでいつもジャージ姿だったのが、髪は伸ばしてゆるく巻いてるし、薄い化粧がめちゃくちゃ似合ってた。誰に似てるかって言ったら、今泉佑唯をもう少し大人っぽくした感じ。目がくりっとしてて、でも口元に少しだけ生意気さが残ってる。スタイルは…ワンピースの上からでもわかるくらい胸があって、(高校のときこんなだったっけ…)って、見ちゃいけないと思いながらチラチラ見てしまった。
マクドナルドの2階の窓際に座って、コーヒーを頼んで、近況報告が始まりました。
「私いま表参道の広告代理店で働いてるんだけど、もう毎日しんどい」
「うわ、広告代理店か。忙しそう」
「榎本くんは?」
「俺は新橋のIT企業。地味にコード書いてる」
「えー、バスケ部のエースがプログラマー?意外すぎない?」
「エースじゃないから。6番目くらいのやつだから」
「そうだっけ?私の中では結構うまかった印象なんだけど」
「それ、練習試合で組んだときの話?」
「そう。あのとき榎本くんめっちゃ的確にパス出してくれて、私3本もシュート決めたの覚えてる」
覚えてんのかよ。
俺もあの試合のこと覚えてた。柿崎のカットインが速くて、パス出すの楽しかったんだよな。でもそれをそのまま言うのは、なんか照れくさかった。
「へぇ、3本も決めたんだ」
「覚えてないの?」
「いや覚えてるけど」
「じゃあなんで今とぼけたの」
「…なんでだろうな」
柿崎が笑った。あの、困ったときと同じ笑い方。でも今度は困ってるんじゃなくて、楽しそうだった。
話は止まらなくなって、部活の先輩が今どうしてるとか、文化祭のときの話とか、あのとき体育館のモップがけ当番サボった鈴木の話とか。高校時代にろくに話したこともなかったのに、共通の記憶ってこんなにあるんだなって思った。
コーヒー2杯目を頼んだあたりで、柿崎が少し声のトーンを落として言った。
「ねぇ、榎本くんって今彼女いる?」
「いない。1年半くらい」
「そうなんだ」
「柿崎は?彼氏」
「…3ヶ月前に別れた」
「あー、そうなんだ」
「3年付き合ってたんだけどね。なんか最後の方、一緒にいるのがしんどくなっちゃって」
「それはきつかったな」
「うん。でもなんか今日こうやって全然違う人と喋ってると、あ、私ちゃんと笑えるんだって思えて」
その言い方が、なんかすごく正直で、胸に刺さった。
午前3時を過ぎたあたりで、マクドナルドの店内がだんだん静かになってきた。酔っ払いの集団が減って、俺たちみたいな終電組がぽつぽつ残ってる感じ。
柿崎がスマホを見て、ため息をついた。
「始発まであと2時間かぁ…」
「眠い?」
「ちょっとね。てか、ずっとここにいるのもなんかアレだし…」
「…」
「…ねぇ、カラオケとか行く?個室だし、横になれるし」
(カラオケ。深夜3時に。二人で。個室。)
冷静に考えたらそれはカラオケじゃなくて密室に二人きりになるってことなんだけど、柿崎の表情はあくまで「始発までの時間潰し」って顔だったので、深読みしたら負けだと思った。
「いいよ、行こうか」
歌舞伎町の端の方にあるカラオケに入って、フリータイムで部屋を取った。狭い部屋に革のソファが2つ向かい合ってるやつ。柿崎は靴を脱いでソファに足を上げて、リモコンをいじり始めた。
「何歌う?」
「いや俺歌下手だから聞き専で」
「えー、つまんないなー。じゃあ私から歌うね」
柿崎がYUIの「CHE.R.RY」を入れた。
(2000年代のチョイスかよ…)
でも、声がめちゃくちゃ良かった。ちょっとハスキーがかってて、でもサビで伸びる感じが、なんていうか、ずっと聴いてたくなる声だった。
「うまいじゃん」
「えへへ、高校のとき合唱コンクールでソロやったの覚えてない?」
「知らなかった。俺たちクラス違ったし」
「あ、そっか。なんか、もっと接点あった気がしてたけど、冷静に考えたら練習試合の一回だけだったんだよね、私たち」
「そうだよ。たった一回」
「なのに、なんで覚えてるんだろうね、お互い」
その問いに、俺は答えられなかった。答えたら何かが変わってしまう気がした。
2曲目、3曲目と柿崎が歌って、俺もしぶしぶ1曲歌って(ミスチルのSign。無難すぎるチョイス)、ドリンクバーのメロンソーダがぬるくなった頃、柿崎が歌うのをやめて、こっちのソファに移ってきた。
「ねぇ、ちょっと寒くない?エアコン効きすぎじゃない?」
確かに室温は低かった。でも柿崎が隣に座ったのは、多分エアコンのせいだけじゃない。
(これ、俺が鈍いだけか?それとも本当にただ寒いだけなのか?)
柿崎の肩が俺の腕に触れた。触れてるっていうか、もたれかかってきてる。酒が残ってるのかもしれない。でも柿崎の目は全然酔ってなくて、まっすぐこっちを見てた。
「ねぇ、さっきの質問の答え、まだ聞いてないんだけど」
「どの質問」
「なんで覚えてるのか、って」
「…わかんない。本当にわかんないんだよ」
「私はわかるよ」
「え?」
「私が覚えてる理由は、わかる。あのとき、榎本くんが私の動き見てパス出してくれたの、すごく嬉しかったの。ちゃんと見てくれてるんだって思って。バスケでそう思ったの、あの一回だけだった」
そんなの、卑怯だろ。7年前のたった一回のパスをそんなふうに覚えてるとか。
「…俺も、柿崎のカットインが速くて、パス出すの楽しかったの覚えてる」
「…本当?」
「本当」
沈黙が落ちた。カラオケのスピーカーから、入れっぱなしの曲の前奏が流れ始めたけど、誰も歌わない。
柿崎が俺の腕をぎゅっと掴んだ。爪が少し食い込むくらい。
「…キスしていい?」
俺の心臓、爆発するかと思った。
(え?今?ここで?マジで?)
返事する前に、柿崎の唇が触れてきた。柔らかくて、メロンソーダの甘い味がした。
ほんの2秒くらいで離れて、柿崎が耳まで真っ赤になってるのが、薄暗いカラオケの部屋でもわかった。
「…ごめん、急に」
「謝んなよ」
今度は俺から。柿崎の頬に手を添えて、唇を重ねた。さっきより長く、深く。舌が触れたとき、柿崎が小さく声を漏らした。
「ん…」
離れたとき、お互い息が上がってた。
「…榎本くん、キス上手いね」
「そんなこと言われたの初めてだわ」
「嘘。絶対モテるでしょ」
「モテないから1年半彼女いないんだって」
「…じゃあ今日は、私がいるから」
その言い方に、全部持っていかれた。
もう一度キスした。今度は止まらなくなった。柿崎の舌が俺の口の中に入ってきて、それを吸うと「ん…」って甘い声が出て、そのたびに理性が削れていく感じがした。
柿崎の背中に手を回した。ワンピースの上から触る腰のラインが細くて、でもその上の胸の膨らみとの落差がすごくて、頭がおかしくなりそうだった。
「…触っていいよ」
小さな声でそう言われて、ワンピースの上から胸に手を置いた。Dカップくらいあったと思う。柔らかくて、手のひらに収まりきらない。柿崎が息を詰めた。
(いいのか、これ。7年ぶりに再会して、数時間しか経ってないのに)
でも止まれなかった。柿崎も止める気がないのは、俺の首に腕を回してきたことでわかった。
「…柿崎、ここじゃ…」
「…うん、わかってる」
柿崎がスマホを取り出して、何か検索し始めた。
「…ここから歩いて3分のとこにホテルある」
(この子、今調べたのか)
「…行く?」
「…榎本くんが行きたいなら」
「俺が行きたいかどうか聞いてんの?」
「…うん」
「行きたい」
「…私も」
カラオケを出て、靖国通りの裏手にあるホテルまで歩いた。歩いてる間、柿崎は俺の腕にしがみつくように歩いてた。酔ってるからじゃなくて、緊張してたんだと思う。俺も心臓がうるさすぎて、自分の足音が聞こえなかった。
フロントで受付を済ませて、エレベーターに乗って、部屋のドアを閉めた瞬間、柿崎が後ろから抱きついてきた。
「…緊張する」
「俺もめちゃくちゃ緊張してる」
「…元カレとは3年付き合ってたけど、こんなにドキドキしたことなかった」
(それを今言うか)
振り返って、柿崎を正面から抱きしめた。細い体なのに、胸の部分だけ柔らかく押し返してくる。心臓の音がお互いに聞こえてたと思う。
キスした。深夜のカラオケとは違う、もう後戻りしないキス。柿崎の舌が絡んできて、唾液の音が静かな部屋に響いた。
ワンピースのファスナーを背中から下ろした。するっと肩から落ちて、黒いブラとショーツ姿の柿崎がいた。
(マジかよ…)
ジャージ姿しか知らなかった同級生の、大人になった体。ウエストが引き締まってて、でも胸と尻にはしっかり肉がついてて、同一人物だと思えなかった。
「…そんなに見ないでよ、恥ずかしい」
「ごめん、高校のとき想像もしなかったから」
「何それ。当時は女として見てなかったってこと?」
「そういうわけじゃ…いや、正直ジャージ姿しか知らなかったから」
「…じゃあ今は?」
「今は、やばい」
「…ばか」
ベッドに座った柿崎の横に座って、ブラのホックを外した。白い胸が零れて、薄いピンクの乳首が見えた。形が綺麗で、しばらく見つめてしまった。
「…触ってよ」
両手で包むように触れた。柔らかくて、でも張りがあって。乳首を親指でなぞると、柿崎が小さく震えた。
「あ…」
その声に反応して、もう少し強く触った。乳首が硬くなっていくのが指先でわかる。
「…んっ、そこ弱い…」
口に含んだ。舌先で転がすと、柿崎の手が俺の頭を掴んだ。
「あっ…やば、そうされると…っ」
(俺は今、7年前に一度パスを出しただけの相手の乳首を舐めている。人生って何が起こるかわからない)
そんなことを考えながらも、手はショーツの方に伸びていた。太ももの内側を撫でると、柿崎が足を少し開いた。ショーツの上から触ると、もう濡れてるのがわかった。
「…濡れてる」
「…言わないでよ、そういうの。カラオケの時からずっとだから…」
(カラオケの時から?)
ショーツをずらして直接触れた。指が滑るくらい濡れていて、クリに触れた瞬間、柿崎の腰がびくっと跳ねた。
「ひっ…」
「…そこ、ゆっくりして…」
言われた通り、ゆっくり円を描くように触った。柿崎が俺の肩に額を押し付けて、荒い息を吐いてる。
「はぁ…んっ…あ、そこ…いい…」
中指を入れると、きつく締まってきた。中を探るように動かすと、浅いところに少しざらっとした場所があって、そこを押すと。
「あっ…!やばっ…そこ、すごい…っ」
柿崎の爪が俺の背中に食い込んだ。2本目の指を入れて、同時にクリを親指で擦った。
「あっ、あっ、ちょっと…もう…」
「いっ…いく…っ」
柿崎の中がぎゅうっと締まって、体がびくびくと何度も震えた。俺の肩に顔を埋めたまま、しばらく動けないでいた。
「はぁ…はぁ…」
「…大丈夫?」
「…大丈夫じゃない。指だけでイかされたの初めて…」
(初めて?3年付き合ってた元カレは何してたんだ)
…とは言わなかった。さすがに。
柿崎が顔を上げて、潤んだ目で俺を見た。
「…榎本くんのも触りたい」
俺のベルトを外して、ズボンとボクサーを下ろしてきた。とっくにガチガチになってた息子が飛び出して、柿崎が目を見開いた。
「…おっきい」
「普通だと思うけど」
「元カレより全然大きいんだけど…」
(その比較やめてくれ。プレッシャーすごいから)
柿崎の手が伸びてきて、握られた。細い指が巻きつくと、それだけで声が出そうになった。
ゆっくり上下に動かし始めて、先端を親指で擦ってくる。
「っ…」
「気持ちいい?」
「やばい…上手い…」
「嘘、全然自信ないんだけど」
自信ないのにこの手つきは何なんだよ。強すぎず弱すぎず、先端と裏筋を交互に攻めてくる。
でも、このまま手で出したくなかった。
「…待って。入れたい」
「…うん」
「ゴム買ってくる、フロントに…」
「あ、私持ってる」
柿崎がバッグからコンドームを出した。
「…持ち歩いてるの?」
「ちがっ…元カレと付き合ってた時のが残ってただけで…まだ期限切れてないし…」
(いや、期限の問題じゃなくて)
でも正直ありがたかった。深夜にフロントに買いに行く気まずさを回避できたので。
ゴムを着けて、柿崎の上に覆いかぶさった。足の間に入ると、柿崎が少し緊張した顔になった。
「…優しくしてね」
「するよ」
先端を当てた。濡れてるから入り口はすぐ見つかった。ゆっくり腰を進めると、じわっと中に入っていく感覚。
「ん…あ…」
きつかった。柿崎の中が俺を締め付けてくる。
「…おっきい…ちょっと待って…」
「痛い?」
「痛くない…けど、すごい…いっぱいで…」
根元まで入れて、動かずに待った。柿崎の目が潤んでて、でも痛みじゃなくて別の何かで潤んでるのがわかった。
「…なんか、不思議。7年前のバスケの相手が今、中にいるって思うと」
「今それ言うの反則だろ…」
笑ったら、中がきゅっと締まって、二人とも「あ…」って声が出た。
ゆっくり動き始めた。引いて、押し込む。柿崎が俺の首に腕を回して、顔を近づけてきた。キスしながら腰を動かすと、柿崎の喘ぎが俺の口の中に溶けてくる。
「ん…んっ…あ、いい…そこ…」
奥に当たるたびに柿崎の体が跳ねる。でも逃げないで、むしろ腰を押し付けてくる。
(信じられない。これ現実か?深夜のマクドナルドでコーヒー飲んでた2時間前が嘘みたいだ)
ペースを上げた。ぱちゅっ…と音が鳴るたびに柿崎が声を上げる。
「あっ…あっ…榎本くん…榎本くん…っ」
名前を呼ばれるのがこんなに興奮するとは思わなかった。苗字なのに、今この瞬間は誰よりも近い名前に聞こえた。
「やばっ…またイきそう…っ」
「俺も…近い…」
「一緒にイって…お願い…っ」
腰を速くした。柿崎の中がどんどんきつくなって、もう限界だった。
「あっ…イく…っ!」
柿崎の体が弓なりに反って、中がぎゅうっと締まった瞬間、俺も出た。ゴムの中に、頭が真っ白になるくらい出した。
「はぁ…はぁ…」
「…すごい…こんなに気持ちよかったの初めて…」
「…俺も」
抜いた後も、しばらく抱き合ったまま動けなかった。柿崎の心臓がどくどく鳴ってるのが伝わってきて、俺のと同じリズムだった。
5分くらいそうしてたら、柿崎がもぞもぞ動き始めた。
「…ねえ」
「ん?」
「…もう1回、したい」
2回目は柿崎が上だった。俺の上に跨がって、自分で腰を動かし始めた。
1回目と全然違った。柿崎の動きに余裕が出て、自分の気持ちいい角度を探してるのがわかった。腰をぐりぐり回すように動かして、時々深く沈み込む。
「んっ…あ…ここ…いい…」
俺は下から柿崎の胸を揉みながら見上げてた。薄暗い部屋の天井の間接照明に照らされて、柿崎の体が汗で光ってる。
(こんな綺麗な人と、俺)
柿崎が前に倒れ込んできて、耳元で囁いた。
「…ねぇ、今度はゴムなしでしたい…」
「え…それは…」
「大丈夫、今安全な時期だから…中には出さなくていいから…直接感じたい…」
(理性。理性を保て俺。保て…)
保てなかった。
ゴムを外して、もう一度柿崎の中に入った。生で感じる柿崎の中は、ゴム越しとは比べものにならなかった。温かくて、濡れてて、ぬるっと全体を包み込んでくる。
「あ…っ…全然違う…中、直接あたってる…」
「わかる…私もわかる…すごい…」
今度は俺が上で、柿崎の足を肩に乗せた。深い角度で突くと、奥に当たるたびに柿崎が破裂しそうな声を上げた。
「あっ!んっ!だめ…そこ…奥…っ」
腰が止まらない。柿崎が自分の胸を掴んで、乳首を自分で触り始めた。
(さっきは恥ずかしがってたのに…)
その姿を見てたら、もう出そうだった。
「やばい…出る…抜く…」
「待って…もうちょっと…一緒にイきたい…っ」
「無理…もう…っ」
「んっ…あっ…いくっ…!」
柿崎がイった瞬間に引き抜いて、柿崎のお腹の上に出した。どくどくと出るのが自分でもわかった。
「はぁ…はぁ…」
柿崎がお腹の上の白い液体を見て、ぼんやり笑った。
「…すごい量…」
「…ごめん」
「謝んなって、さっき私に言ったでしょ」
ティッシュで拭いて、二人でベッドに倒れ込んだ。窓の外がうっすら明るくなり始めてた。
「…ねぇ、これ、今日だけ?」
「…どういう意味」
「今日だけの関係で終わりなのか、それとも…って話」
「…俺は、終わりにしたくない」
柿崎がこっちを向いた。目が赤くなってた。
「…ほんとに?酔った勢いとか、雰囲気に流されたとかじゃなくて?」
「酔った勢いだったら、笑い方なんか覚えてないだろ」
柿崎が泣いた。声を出さずに、ぽろぽろ涙を流した。
「…ずるい。そんなこと言うの、ずるい」
「柿崎こそ、7年前のパスの話するの卑怯だったぞ」
「…あはは、おあいこだね」
涙を拭いて、柿崎が笑った。あの笑い方じゃなくて、本当に嬉しそうな、くしゃっとした笑顔。
始発の時間はとっくに過ぎてた。チェックアウトして、新宿駅まで二人で歩いた。朝の7時の新宿は、夜とは別の街みたいに静かだった。
改札の前で、連絡先を交換した。
「…じゃあ、また」
「また」
柿崎が山手線のホームに消えていくのを見送って、俺は反対方向の電車に乗った。
座席に座って、スマホを見たら、もうLINEが来てた。
「今日、ありがとう。痴漢のおじさんから助けてくれた時から、ずっとドキドキしてた。7年前のパスの話、嘘じゃないよ。あの一回で好きになってたの、多分。今日やっとわかった」
(…マジかよ)
俺は、7年前に一度パスを出しただけの相手に、7年間好きでいてもらってた。そんで俺の方も、理由もわからず顔を覚えてた。
なんだよそれ。
返信を打った。「俺も柿崎のカットインが忘れられなかった理由、今日わかった」
…我ながらキモいなと思ったけど、送った。
既読がついて、3秒で返事が来た。
「来週、ご飯行こう。今度は終電逃さないように」
あの夜から、柿崎は俺の彼女になりました。新宿のあのマクドナルドは、今でも二人で時々行きます。
以上です。長々と読んでくれてありがとうございました。