去年の10月に会社の辞令で横浜から町田に飛ばされた、27歳の独身サラリーマンです。
町田って横浜から近いじゃんと思うかもしれないけど、知り合いゼロの土地で一人暮らしって想像以上に寂しい。会社では課長補佐なんて中途半端な肩書きをもらって、部下もいなければ上にも頼れない。まぁ典型的な社畜ですよ。顔は星野源をもうちょい地味にした感じって言われます。身長172。彼女いない歴1年半。
で、転勤先の町田で会社が用意してくれたのが、鶴川駅から徒歩8分くらいの築浅の1Kマンション。家賃補助が出るとはいえ、部屋に洗濯機置き場がないのが唯一の難点だった。
だから毎週日曜の夜、マンションから50メートルくらいのところにあるコインランドリーに通うのが習慣になった。
21時過ぎのコインランドリーって基本誰もいない。蛍光灯がジジジって鳴ってるなかでスマホいじりながら洗濯が終わるのを待つ。それが俺の日曜の夜のルーティンだった。
転勤して3週目くらいの日曜日。いつものように洗濯物を抱えてコインランドリーに入ったら、先客がいた。
パーカーにショートパンツ、サンダル履き。髪はゆるく結んだポニーテール。背は160あるかないかくらいで、橋本環奈をもう少しだけ大人っぽくしたような顔立ち。スタイルは華奢だけど胸のあたりだけパーカーが不自然に膨らんでて、たぶんEカップはある。
(え、こんな時間にこんな子がコインランドリー?)
目が合った。
「あ、隣の人だ」
いきなり言われて面食らった。
「え?隣?」
「304号室ですよね? わたし305です」
マジか。隣の部屋の住人だったのか。引っ越しの挨拶とかしてなかったから全然知らなかった。
「あー、すみません。引っ越しの時ご挨拶もしないで」
「いえいえ、わたしもしてないんで。おあいこですよ」
にへっと笑う顔がめちゃくちゃ可愛くて、ちょっとドキッとした。
聞けば、和光大学の3年生で21歳。名前は聞いたけどここでは伏せる。バイトは近くのスタバで週3回。日曜の夜にコインランドリーを使うのは俺と同じ習慣らしい。
「じゃあ毎週会いますねw」
「だね。よろしく」
それが始まりだった。
翌週の日曜も、やっぱり彼女はコインランドリーにいた。
「あ、304さんだ。おつかれさまですー」
「おつかれ。今日も遅いね」
「レポートやってたら気づいたらこの時間で」
洗濯機が回ってるあいだ、プラスチックの椅子に並んで座って他愛もない話をした。大学の授業がどうとか、町田のおすすめの飯屋がどうとか。
彼女は話すとき少し前のめりになる癖があって、パーカーの胸元がそのたびにちらっと見えそうになる。見ないようにしてたけど、正直かなりキツかった。
3週目。彼女が洗濯物を入れた袋を持って入ってきたとき、袋の口から淡いピンクのブラがはみ出してるのが見えた。
(見てない見てない見てない)
必死に視線を逸らしたけど、彼女はまったく気にしてない様子で袋ごとドラムに突っ込んでた。
「あ、304さん。今度の日曜、もしよかったら一緒にご飯行きません?」
「え、俺と?」
「304さん以外に誰がいるんですかw ここ二人しかいないですよw」
「いや、まぁそうだけど」
(6つ下の女子大生からご飯の誘い? 何かの間違いでは?)
でも断る理由もなかったので、次の日曜に町田駅の近くの焼き鳥屋で飯を食うことになった。
日曜日。町田駅の改札前で待ち合わせ。
彼女は白いブラウスにデニムのミニスカートという格好で現れた。普段のパーカー姿とは全然違って、ちゃんとメイクもしてて、正直かなりドキドキした。ブラウスの下から透けてるブラの色がうっすら分かって、(やめろ見るな俺)と脳内で自分を殴った。
焼き鳥屋は「いぐち」っていう鶴川街道沿いの店で、カウンター8席だけの小さい店。彼女がバイト先の先輩に教えてもらったらしい。
「304さんって彼女いないんですか?」
「いないよ。1年半くらい」
「えー、もったいない。優しそうなのに」
「優しそう"なのに"って、優しいだけじゃモテないんだよ」
「そうなんですか? わたしは優しい人好きですけど」
酒が入ると彼女は少し大胆になった。カウンターの距離感もあって、肩がぶつかるくらい近い。
「ねぇ、304さんって呼ぶのそろそろやめていいですか?」
「どうぞ。吉岡です」
「吉岡さん。よしおかさん。うん、いい名前」
「普通の名前だよ」
「わたし的にはポイント高いです」
なんのポイントだよ、と思ったけど聞かなかった。
会計のとき俺が全部払おうとしたら、彼女が「割り勘にしてください、じゃないと次誘えなくなるから」と言った。
(次、あるんだ…)
その日から、日曜のコインランドリーのあとに近所で飯を食うのが定番になった。焼き鳥屋だったり、駅前のサイゼだったり、コンビニの肉まんを公園で食べたり。
5回目のご飯のとき、彼女がぽつりと言った。
「吉岡さんって、わたしのこと女として見てます?」
焼酎のお湯割りを危うく噴き出すところだった。
「……なんで急にそんなこと聞くの」
「だって吉岡さん、わたしと話すとき絶対に目から下を見ないんですよ。不自然なくらい」
(バレてた)
「そりゃ……見たら失礼じゃん」
「失礼って、何が見えるんですかw」
「いや、その……」
「見ていいですよ、別に。わたしは吉岡さんのこと嫌いじゃないんで」
嫌いじゃない。その言葉が妙に引っかかった。好き、じゃなくて、嫌いじゃない。21歳の女子大生が27歳のおっさんに言う「嫌いじゃない」って、どこまで本気なんだろう。
たぶんこの時点で俺は、彼女のことをかなり意識してた。でも6つ年下で、しかも隣の部屋。何かあったら気まずいどころの騒ぎじゃない。だから俺は意識的にブレーキを踏んでた。
12月に入って、急に寒くなった。
その日のコインランドリーは暖房が壊れてて、息が白くなるくらい冷えてた。彼女は薄手のパーカー一枚で来てて、明らかに震えてる。
「寒いなら部屋戻ってなよ。終わったらライン送るから」
「やだ。吉岡さんと喋りたいから来てるんですよ、わたし」
「……」
「洗濯なんてぶっちゃけ平日でもできるし」
え、それって……。
「あ、今の聞かなかったことにしてください」
彼女が珍しく赤くなって、乾燥機のほうに顔を背けた。
(いやいやいや、聞かなかったことにできるわけないだろ)
俺は自分のダウンジャケットを脱いで、彼女の肩にかけた。
「え……いいんですか?」
「風邪引かれたら困るし」
「……吉岡さんの匂いがする」
「柔軟剤の匂いだよ」
「ちがう。吉岡さんの匂い」
そう言って、ジャケットに顔を埋めた彼女の横顔を見て、俺の心臓がバクバクいってるのが自分でも分かった。
でも、ここで動いちゃいけないと思った。俺は27の社会人で、彼女は21の学生。立場が違う。
その翌週の日曜、事件が起きた。
コインランドリーに行ったら、彼女が泣いてた。
「おい、どうした」
「……バイト先の店長に告白されて」
「は?」
「断ったんですけど、そしたらシフト減らすって言われて……」
「それパワハラじゃん。というか最悪じゃん」
「でもバイト辞めたら家賃払えなくなるし……」
彼女の目が真っ赤で、鼻も赤くて、泣き顔なのにそれでも可愛くて、俺は自分がどれだけこの子のことを好きになってたか思い知った。
「明日、俺が店に行く」
「え?」
「客として行って、店長と話す。別に何するわけでもないけど、お前に彼氏面できる男がいるって分からせるだけでいい」
「彼氏……面?」
「いや、面っていうか……その……」
しまった。自分で何を言ってるんだ。
「……じゃあ、彼氏になってくれます?」
「は?」
「面じゃなくて、本物の」
蛍光灯がジジジと鳴ってる。乾燥機がゴウンゴウン回ってる。そんな生活感しかないコインランドリーで、21歳の橋本環奈似の女子大生に告白された。
「……年齢差、気にならないの」
「6個差でしょ? 親は10個差ですけど」
「隣の部屋だよ? 別れたら地獄だよ?」
「別れなきゃいいじゃないですか」
「そういう問題じゃ……」
「吉岡さん。わたし、引っ越してきた日から吉岡さんのこと見てました。朝ちゃんとゴミ出してるところとか、エレベーターでわたしが乗るの待っててくれるところとか。コインランドリーも、最初は偶然だったけど、2回目からはわざと同じ時間に来てます」
(2回目から……?)
つまり俺が「毎週偶然会うなぁ」と思ってた2ヶ月間、全部彼女の計画だったってことか。
「お前……策士かよ……」
「策士って言わないでくださいw 必死だったんですよw」
泣きながら笑う彼女を見て、もう無理だった。ブレーキとか立場とか年齢差とか、全部どうでもよくなった。
「……分かった。よろしく」
「え、それだけ? もうちょっとなんかないんですか?」
「好きだよ。かなり前から」
「……っ」
彼女が俺の胸に飛び込んできた。パーカー越しに柔らかいものが当たる感触がして、柔軟剤と彼女自身の甘い匂いが混ざって、コインランドリーの蛍光灯の下で俺たちは抱き合った。
めちゃくちゃ格好悪い場所での告白だったけど、あの瞬間は今でも鮮明に覚えてる。
翌日。約束通り、仕事帰りに彼女のバイト先のスタバに行った。
鶴川駅前の店舗で、19時頃。彼女がカウンターに立ってた。
「いらっしゃいませ。ご注文は?」
営業スマイルが板についてるけど、俺を見る目だけちょっと違う。嬉しそうな、照れてるような。
「アイスのスターバックスラテ、トールで」
奥から30代前半くらいの男が出てきた。ヒョロっとした体型で、やたら作り笑いが多い。たぶんこいつが店長だろう。
彼女がラテを作ってるあいだ、俺はカウンター越しに普通に雑談した。「今日寒いね」「うん、帰ったらご飯作るから待ってて」みたいな、カップルっぽい会話を意図的に。
店長の顔がみるみる曇っていくのが分かった。
帰り際、彼女が小走りで出口まで来て、
「ありがとうございます。店長、さっきからずっと黙ってますw」
「そりゃまぁ、効果あったんじゃないの」
「吉岡さん、やるときはやるんですねw」
「彼氏面じゃなくて彼氏だからな」
彼女がぱっと笑って、「じゃあ23時にランドリーで」と言った。
日曜じゃないのにランドリーで会うのは初めてだった。
23時。コインランドリーに行くと、彼女がいた。洗濯物は持ってない。
「洗濯は?」
「ないですw 吉岡さんに会いたかっただけ」
「……部屋来る?」
「いいんですか?」
「隣だし」
「それ口説き文句としてどうなんですかw」
笑いながらふたりでマンションに戻って、俺の304号室に入った。
1Kの狭い部屋。テーブルもソファもなくて、あるのはベッドとこたつだけ。
「こたつ! やった!」
彼女がこたつに潜り込む。足がぶつかる。
「狭いだろ、一人用だから」
「いいじゃないですか。密着できて」
テレビもつけずに、こたつに入ったまま向かい合って話してた。バイトの話、大学の話、俺の仕事の愚痴。どうでもいい話ばっかりなのに、なんでこんなに楽しいんだろう。
「ねぇ、吉岡さん」
「ん?」
「わたしのこと、可愛いって思います?」
「思うよ。めちゃくちゃ」
「……じゃあ、なんでずっとそっちにいるんですか」
彼女がこたつの中で俺の足を自分の足で挟んできた。素足の感触が伝わってきて、ぞくっとした。
「……いいの?」
「ここまで来て何言ってるんですか」
俺はこたつを回り込んで、彼女の隣に座った。すぐ近くに彼女の顔がある。橋本環奈に似てるって言ったけど、こんなに近くで見ると、もっと好みだった。睫毛が長くて、唇が少し開いてて、潤んだ目で俺を見上げてる。
「キスしていい?」
「……はい」
最初は軽く唇を合わせただけだった。彼女の唇が柔らかくて、リップクリームの甘い味がした。
離れようとしたら、彼女が俺のシャツの裾を掴んで離さない。
「もう一回……」
2回目は長かった。舌が触れて、彼女が小さく「ん」と声を漏らして、頭の中が真っ白になった。
気がついたら彼女をこたつから引っ張り出して、ベッドの上にいた。どうやってそこまで移動したか正直あんまり覚えてない。
彼女のパーカーに手をかけたとき、彼女が少しだけ体を硬くした。
「嫌だったら言って。やめるから」
「嫌じゃないです……ただ、その……経験少ないんで」
「少ないって、どのくらい」
「……1回だけ。高3のとき付き合ってた人と。でもあんまりよくなくて、すぐ別れちゃって」
「……そっか」
「だから……優しくしてほしいです」
その言葉で、俺の中で何かが切れた。理性じゃなくて、ブレーキ。
パーカーをゆっくり脱がすと、下は薄いピンクのブラだった。コインランドリーで袋からはみ出してたやつと同じ色。あのとき見てないフリしてたけど、やっぱり見てたんだよな。
「……見ないでください、恥ずかしい」
「散々見ていいって言ってたのに」
「あれはその……服の上の話で……」
ブラを外すと、想像以上だった。形が綺麗で、華奢な体に対して明らかに大きい。
「Eカップ?」
「なんで分かるんですか……Fです……」
(Fかよ)
パーカーで隠れてたから分からなかったけど、かなりのサイズだった。触ると柔らかくて、指が沈み込む。彼女が小さく息を吐いた。
「ん……っ」
乳首に触れると、彼女の体がびくっと跳ねた。
「そこ……敏感なんです……」
「ここ?」
「んぁっ……意地悪しないでください……」
意地悪してるつもりはなかったけど、反応が良すぎてつい触り続けてしまう。
彼女のショートパンツを脱がすと、パンツも薄いピンクだった。上下お揃い。
「もしかして今日、最初からこうなるつもりだった?」
「……そうだったらどうするんですか」
「いや、嬉しいけど」
「下着揃えてきて恥ずかしいとか言ってるのバカみたいですよねw」
「バカみたいじゃないよ。可愛いよ」
「……そういうの反則です」
パンツの上から触ると、もう湿ってた。指を滑らせると彼女が腰をびくっと動かす。
パンツをずらして直接触れる。指が濡れた。
「あ……っ、そこ……」
「気持ちいい?」
「わかんない……でも止めないでほしい……」
クリを親指で擦りながら、中指をゆっくり入れていく。
「ん……っ、ぁ……」
彼女が俺のTシャツを握りしめてる。爪が食い込むくらいの力で。
「吉岡さん……キスして……」
キスしながら指を動かし続けた。彼女の息が荒くなって、腰が小刻みに動き出す。
「あっ……やば……なんか来る……」
「いっていいよ」
「っ……ぁあっ……!」
体をぎゅっと丸めて、俺の肩に顔を埋めた。びくびくと痙攣してるのが伝わってくる。
しばらく荒い息をしてから、彼女が顔を上げた。
「……こんなの初めてです」
「え、イったの初めて?」
「人にされてイったのは……」
(それって普段は自分で……いや聞くな聞くな)
「吉岡さんも……脱いでください」
俺がTシャツを脱ぐと、彼女が俺の腹筋あたりを指でなぞった。
「筋肉ないですねw」
「うるさいよw デスクワークだから」
「でも好きです、こういう体」
ズボンとパンツを下ろすと、もう完全に硬くなってた。
「……おっきい」
「お世辞でも嬉しいよ」
「お世辞じゃないですってw」
彼女がおそるおそる手を伸ばしてきて、握った。小さい手で包み込むように。
「こう……ですか?」
「うん……もうちょい強くても大丈夫」
「これでいいですか?」
「あぁ……いい……」
ぎこちないけど、彼女の手は柔らかくて温かくて、それだけでかなりヤバかった。
「ねぇ……わたしの胸でしたいですか?」
「え?」
「友達が、Fカップなら絶対やってあげたほうがいいって言ってて」
「友達に何の相談してんだよw」
「だって初めてだから色々調べちゃうじゃないですかw」
おもむろに彼女が体を起こして、俺のものを胸で挟んだ。柔らかい肉に包まれる感覚が凄くて、思わず声が出た。
「っ……」
「気持ちいいですか?」
「やばい……めちゃくちゃ気持ちいい……」
「えへへ。やった」
嬉しそうに笑いながら胸を上下に動かしてくる。先端が谷間から顔を出すたびに、彼女がちろっと舌で舐めてきた。
「おい、それは……っ」
「これも調べましたw」
「どこで調べたんだよw」
「Twitterですw」
こんな会話しながらパイズリされてる状況が面白すぎるんだけど、感覚的にはマジでヤバくて、早くも限界が近い。
「待って、このままだと出る」
「出していいですよ?」
「いや、その……中がいい」
我ながらとんでもないことを言ってると思ったけど、本音だった。
「……わたしも、そっちがいいです」
彼女が仰向けになって、脚を開いた。ベッドの上で、部屋の暖房の温風が彼女の肌を撫でてる。
「ゴムつけるね」
ベッドの横の引き出しからゴムを取り出す。いつ買ったんだろうこれ。転勤の荷物に紛れてたやつか。使う日が来るとは思ってなかった。
装着して、彼女の入り口にあてがう。
「入れるよ」
「……はい」
ゆっくり入れていく。彼女がきゅっと目を瞑った。
「ん……っ」
「痛い?」
「大丈夫です……前よりぜんぜん大丈夫……」
奥まで入れると、彼女が大きく息を吐いた。中がきゅっと締まる感覚があって、俺も声が出そうになる。
「動くよ」
「はい……」
ゆっくり腰を動かし始める。彼女の中は濡れてて熱くて、ゴム越しでもかなり気持ちいい。
「あ……ん……っ」
「大丈夫?」
「うん……気持ちいい……もうちょい速くしても……」
ペースを上げる。彼女が俺の背中に手を回してきた。爪が肌に食い込む。
「あっ……あっ……吉岡さん……」
「名前で呼んでいいよ」
「……っ、たくみ、さん……」
下の名前を呼ばれた瞬間、ぞくっと背中を電流が走った。
「もう一回……」
「たくみさん……たくみさんっ……」
ダメだ。名前呼びが想像以上に効く。
彼女の脚が俺の腰に巻きついてきた。密着度が上がって、彼女の胸が潰れるくらい体を重ねる。
「ん……っ、奥……当たって……」
「ここ?」
「そこっ……あっ……」
彼女の声が大きくなって、壁薄いから隣に聞こえるんじゃないかと一瞬思ったけど、隣は彼女の部屋だから問題ないことに気づいて笑いそうになった。
「なんで笑ってるんですかw」
「いや、隣の部屋に声聞こえたらやばいなと思って。でも隣お前の部屋じゃん」
「あはは、確かにw でも今それ言います?w」
笑いながらもお互い止まらなくて、彼女が再び真剣な顔になる。
「たくみさん……好き……」
「俺も……」
体位を変えて、彼女を後ろから抱きしめるようにして横向きになった。片手で胸を揉みながら、もう片方の手で彼女の手を握る。恋人繋ぎ。
「この体勢……近い……」
「嫌?」
「ぜんぜん嫌じゃない……もっとくっつきたい……」
耳元で囁くように彼女が言う。息が耳にかかって、それだけでゾクゾクする。
後ろからゆっくり突きながら、彼女の耳たぶを甘噛みした。
「ひゃっ……耳だめです……っ」
「ダメなところばっかりじゃん」
「吉岡さんが……たくみさんが悪いんです……」
腰の動きを速めると、彼女が繋いだ手をぎゅっと握り返してきた。
「あっ……また来る……イっちゃう……」
「一緒にイこう」
「うんっ……」
彼女の中がきゅうっと締まって、体がびくびく震えた。同時に俺も限界が来て、ゴムの中に出した。頭の中が真っ白になるくらいの快感だった。
「はぁ……はぁ……」
「……すごかった」
「うん……こんなの初めて……」
しばらくそのまま抱き合ってた。彼女の背中が汗ばんでて、それが妙にエロくて、ちょっとだけ復活しそうになったけど、さすがに自重した。
しばらくして、彼女がくるっとこっちを向いた。
「ねぇ、たくみさん」
「ん」
「明日の朝ごはん、わたしが作ってもいいですか?」
「うちの冷蔵庫、ビールと納豆しかないけど」
「自分の部屋から卵とご飯持ってきますw 隣だからw」
「隣で良かったな、ほんとに」
「でしょ? わたしが最初に言ったじゃないですか」
「何を」
「毎週会いますねって。あれ、予言だったんですよ」
「予言っていうか、お前が仕組んでたんだろ」
「えへへ」
彼女が俺の腕の中で笑って、そのまま目を閉じた。
隣の部屋にいるはずの彼女が、俺のベッドで眠ってる。コインランドリーの蛍光灯の下で始まった関係が、こうなるとは正直思ってなかった。
でも、まぁ、悪くない。
305号室の住人が304号室で寝てるっていう、考えてみたら頭おかしい状況。でもこの子の寝顔を見てたら、この街に来てよかったって心から思えた。
翌朝、彼女は本当に隣の部屋から卵とご飯を持ってきて朝食を作ってくれた。狭いキッチンでふたり並んで立つと肩がぶつかる距離で、彼女が卵焼きを焼いてるのを後ろから眺めてた。
「見てないで味噌汁くらい作ってくださいよw」
「はいはい」
そのあと彼女はバイトの店長に関しては、ちゃんとエリアマネージャーに相談して、店長のほうが異動になった。俺が介入するまでもなかったけど、まぁ彼氏面した日は無駄じゃなかったと思いたい。
あれから半年以上経った今も、俺たちは304と305の住人のまま付き合ってる。彼女が就活を始めて忙しくなってきたけど、日曜の夜にコインランドリーで会うルーティンは変わってない。洗濯物を回しながら、プラスチックの椅子に並んで座って、他愛もない話をする。あの蛍光灯のジジジって音が、今では妙に落ち着く。
ちなみに来月、彼女の部屋の更新のタイミングで、俺の部屋に引っ越してくる予定。1Kにふたりはさすがにキツいから、もう少し広い部屋を探すことになるんだけど、条件はひとつだけ。
「近くにコインランドリーがあること」
彼女がそう言って笑ったとき、俺はたぶん、この先も一緒にいるんだろうなと思った。