終電逃して隣の部屋の女子大生にカギを預けてたのが全部おかしくなった始まりだった話

社会人3年目、26歳のときの話。

誰かに聞いてほしくなったので書きます。文章は下手だけど実話です。

俺は当時、埼玉の南浦和にある築30年の木造アパートに住んでました。家賃4万8千円、風呂トイレ別ってだけが取り柄の、壁の薄い6畳一間。駅から徒歩12分。まぁ、手取り21万の独身男にはちょうどいいレベルの物件です。

引っ越してきたのは入社1年目の秋で、それから2年間、隣の201号室はずっと空室だった。壁が薄いからむしろありがたいぐらいに思ってた。

それが変わったのが、その年の4月。

ある土曜日の朝、階段でダンボールを運んでる女の子とすれ違った。小柄で、髪はショートボブの黒髪。第一印象は、なんていうか……永野芽郁をちょっとだけ大人っぽくした感じ。身長は155くらいかな。顔は整ってるんだけど、化粧っ気がなくて、Tシャツにジャージみたいな格好だったから、最初は高校生かと思った。

(隣に誰か入るのか…静かな人だといいけど)

引っ越し業者じゃなくて自力で荷物運んでるっぽかったので、一応声かけた。

「あ、引っ越しですか?重かったら手伝いますよ」

「えっ、いいんですか?すみません、あとダンボール3つだけなんですけど…」

結局30分くらい手伝って、そのお礼にペットボトルのお茶をもらった。彼女は隣の201号室に入る大学3年生で、実家は群馬の前橋。それまで大学の近くに住んでたけど、もっと安い物件を探してここに来たらしい。

名前は聞いたけど、ここでは仮に「なっちゃん」としておく。

最初の1ヶ月は、ほぼ挨拶だけの関係だった。「おはようございます」「お疲れ様です」みたいな。ただ、壁が薄いから生活音は筒抜けで、夜中に彼女がYouTubeで何か見て笑ってる声とか、朝のドライヤーの音とか、妙に生活リズムが近いことだけは分かってた。

(隣に女の子が住んでるっていう事実だけで、こんなに落ち着かないもんなのか…)

変化があったのは、ゴールデンウィーク明け。

仕事から帰ってきたら、アパートの階段の下でなっちゃんがしゃがんでた。

「どうしたの?」

「あの…鍵、なくしちゃって…」

「マジで?大家さんには連絡した?」

「したんですけど、明日じゃないと来れないって言われて…」

泣きそうな顔してたので、とりあえず俺の部屋で大家が来るまで待てばいいよ、と言った。今思うと、独身男の部屋に女子大生を上げるって普通に危ない判断なんだけど、あの時はそういう下心とか一切なくて、純粋に困ってる隣人を助ける感覚だった。

…いや、一切なかったは嘘か。ちょっとはあった。ちょっとだけ。

結局その日はコンビニで買った弁当を2つ広げて、俺の部屋で一緒に晩飯を食べた。なっちゃんは思ってたより全然よく喋る子で、バイト先のカフェの愚痴とか、ゼミの教授がヤバいとか、前橋の実家の猫の話とか、2時間くらい止まらなかった。

「あの、今日ほんとにありがとうございます。お礼に今度ご飯作りますね」

「いいよいいよ、気にしないで」

「あと…もしよかったら、スペアキー預かってもらえませんか?また締め出されたら困るんで…」

(え、俺に?)

正直ちょっと驚いた。知り合って1ヶ月の男に鍵を預けるって、警戒心なさすぎじゃないかと思ったけど、本人はケロッとしてた。

「いいけど…俺、男だよ?大丈夫なの?」

「あはは、何言ってんですか。引っ越しの時も手伝ってくれたし、信用してますよ」

こうして、俺のキーケースになっちゃんの部屋の合鍵がぶら下がることになった。

それからが、じわじわとおかしくなっていった。

「お礼のご飯」はその週末に実行された。なっちゃんが俺の部屋に来て、狭いキッチンで肉じゃがと味噌汁を作ってくれた。6畳一間に女の子の作る料理の匂いが充満するの、独身男にとっては精神的にかなりくるものがある。

「味、大丈夫ですか?」

「いや普通にうまい。てか、めちゃくちゃうまい」

「よかった〜。実家でお母さんに仕込まれたんで、料理だけは自信あるんです」

これが一回で終わればよかったんだけど、なぜか週に1回のペースで「ご飯作りに行っていいですか?」が続くようになった。最初は敬語だったのが、6月に入る頃にはタメ口になってた。

「ね、今日ハンバーグにしていい?」

「好きにしてくれ」

「やった。あ、ビール買ってきたんだけど飲む?」

なっちゃんは20歳を過ぎてて、酒はそこそこ好きらしかった。缶ビール2本くらいで顔が赤くなるタイプ。

(これ、なんなんだろうな…)

友達、なのか? 年の離れた兄妹みたいな関係、なのか? 正直よく分からなかった。ただ、毎週金曜日になると「明日行っていい?」ってLINEが来るのを、俺は楽しみにしてた。それだけは確かだった。

7月のある金曜日。

会社の飲み会があって、同期に連れられて大宮の居酒屋を3軒ハシゴした。終電はとっくに過ぎてて、タクシーで帰ってきたのが深夜2時過ぎ。かなり酔ってた。記憶はあるけど足元がふらつくレベル。

アパートの階段を上がって、自分の部屋の前に立った。

ポケットを探る。財布はある。スマホもある。

…鍵がない。

(嘘だろ)

酔った頭でパニックになりながら、もう一回ポケットを全部ひっくり返した。ない。カバンの中も探した。ない。たぶん居酒屋のどこかに忘れてきたんだと思う。

真夏の深夜2時、南浦和の築30年アパートの廊下で、26歳の男が途方に暮れている図。笑えない。

ふと、隣の201号室のドアが目に入った。

(……いやいやいや。こんな時間に起こすわけにいかないだろ)

でも他に選択肢がなかった。ネカフェに行く金もタクシーで使い切ってた。大家に電話?深夜2時に?殺される。

3分くらい迷って、ドアをノックした。軽く、2回。

反応がない。

もう1回。

ガチャ、とドアが開いた。

「……んー……誰ぇ……?」

寝ぼけ眼のなっちゃんが立ってた。キャミソールに短パンという格好で、髪はぐしゃぐしゃ。正直この時の姿が一番やばかった。華奢な鎖骨が丸見えで、キャミソールから透ける肌の白さが、暗い廊下の照明の下でやけに目に焼きついた。

「ごめん、鍵なくした……」

「…………はぁ?」

「飲み会で、たぶんどっかに落とした…朝まで玄関前にいるから、気にしないで…」

「はあ?何言ってんの、入りなよ」

半ば強引に引っ張り込まれた。

なっちゃんの部屋に入るのは初めてだった。間取りは俺の部屋と左右対称で同じなのに、全然違う空間に見えた。小さいテーブルの上に花が一輪、壁にポストカードが何枚か。あと、やっぱりいい匂いがする。柔軟剤なのかシャンプーなのか分からないけど、女の子の部屋の匂い。

「酔ってるの?」

「……まあ、結構」

「水飲んで。あと顔洗ってきな」

言われるまま洗面所で顔を洗って、コップに注がれた水を飲んだ。少しだけ酔いが醒めた。少しだけ。

リビングに戻ると、なっちゃんが布団を敷いてくれていた。

「ここで寝ていいよ。私はベッドで寝るから」

「ありがとう…マジで申し訳ない…」

「鍵預けてる立場としては、こういう時こそ恩返しでしょ」

そう言ってニコッと笑って、なっちゃんはベッドに戻っていった。

布団に横になった。天井を見つめる。酔ってるのにやたら頭は冴えてる。隣のベッドからなっちゃんの寝息が聞こえる。

(寝れるわけないだろ……)

好きな女の子の部屋で、3メートルも離れてないところに彼女が寝てる。

……あ、今「好きな女の子」って思った。

(俺、なっちゃんのこと好きなのか……?)

ここに来て初めて自覚した。遅い。遅すぎる。毎週末の飯が楽しみで、LINEの通知を気にして、部屋に来ると柔軟剤の匂いがしばらく残るのを嗅いで、そういうの全部「隣人だから」で済ませてた自分がアホだった。

30分くらい悶々としてたと思う。

ベッドのほうから、かさかさ、と音がした。

「……起きてる?」

「……うん」

沈黙が5秒くらい。

「……私も寝れない」

「……そっか」

また沈黙。

「ねえ、なんで鍵なくしたの」

「飲みすぎた。3軒行った」

「バカじゃん」

「バカだよ」

「……ねえ」

「ん?」

「こっち来ていい?」

心臓が止まるかと思った。

「え……?」

暗闘の中で布団がめくられて、なっちゃんが俺の隣に入ってきた。キャミソール越しに体温が伝わってくる。柔軟剤の匂いが一気に近くなった。

「なんか、一人で寝てるの見てたら気になっちゃって…」

「いや、それは……」

「迷惑?」

「迷惑なわけないだろ…」

横を向くと、暗がりの中でなっちゃんの顔がすぐそこにあった。目が慣れてきて、こっちを見上げてるのが分かった。

「あのさ…俺、まだ酔ってるから、変なことしちゃうかもしれないけど…」

「変なことって?」

「……キス、とか」

自分で言っておいて、心臓がうるさすぎて自分の声が聞こえなかった。

なっちゃんが何も言わなかった。3秒か、5秒か。

そしたら、小さい手が俺のTシャツの裾を掴んだ。

「……酔ってるせいにしていいから」

その一言で、もう駄目だった。

顔を近づけて、唇に触れた。柔らかくて、少し乾いてて、でも温かかった。一回触れただけで離そうとしたら、なっちゃんのほうから追いかけてきた。

「ん……」

2回目のキスは最初より深くて、気がついたら舌が触れてた。なっちゃんが小さく息を吸う音が耳に響いて、頭がくらくらした。酔いのせいなのかキスのせいなのか、もう分からなかった。

腕を回して抱き寄せた。細い。びっくりするくらい細かった。キャミソールの上から背中に触れると、肩甲骨の形がはっきり分かった。

「……怖い」

「やめる?」

「ううん……怖いけど、やめないで」

(これ、本当にいいのか?隣人だぞ?酔ってるぞ俺?明日からどうするんだ?)

頭の中でぐるぐる回ってた。でも、なっちゃんが俺のシャツを掴む力がどんどん強くなってて、離せなかった。

キャミソールの肩紐がずれて、鎖骨から肩にかけてのラインが露わになった。そこにキスをしたら、なっちゃんがびくって震えた。

「あ……そこ、くすぐったい……」

「ごめん」

「謝んないでよ……」

キャミソールを脱がせた。暗がりでもわかる白い肌。胸はBカップくらいで大きくはないけど、形がきれいで、先端がうっすらピンクだった。

「……きれいだな」

「やめて…暗いからよく見えないでしょ」

「見えてるよ」

「っ……」

胸に触れると、小さく声が出た。乳首を親指でなぞると、さっきまでとは違う種類の震えが伝わってきた。

「ん……あ……」

舌先で舐めると、なっちゃんが俺の頭を押さえつけるように手を置いた。

「感じてる?」

「……うるさい」

左手を短パンの上から太ももに滑らせた。内腿に触れた瞬間、足がきゅっと閉じた。

「嫌だったら言って」

「嫌じゃ……ない。けど……恥ずかしい……」

短パンの中に手を入れた。下着越しに触れると、もう湿ってた。

「あ……っ、やば……」

「濡れてる…」

「言わないでっ……」

下着を少しずらして直接触れた。ぬるっとした感触が指に伝わって、なっちゃんの腰がびくんと跳ねた。

「んっ……そこ……あ、ダメ……」

クリトリスに指が当たると、声が一段上がった。小さい声で「あ、あ」と繰り返しながら、俺のシャツを掴む手がぎゅっと強くなる。

「ねえ……もう、入れて……」

「え、でも…ゴム持ってない…隣の部屋に…」

「……引き出し。一番上」

見ると、枕元のサイドテーブルの引き出しにコンドームが入ってた。

(……え?なんで?)

その疑問が顔に出てたんだと思う。

「……先週買った。もしかしたらって思って」

「先週……?」

「笑わないでよ……先週、うちの部屋に来た時、帰り際にすごい寂しそうな顔してたから……。もしかしたら、いつかこうなるかもって……」

先週。俺の部屋でなっちゃんが飯を作ってくれた日だ。確かにあの日、帰り際になっちゃんが「じゃあまたね」って言った時、ものすごく帰ってほしくなかったのを覚えてる。それが顔に出てたのか。

(俺が鈍かっただけで、なっちゃんはずっと気づいてたのか……)

なんか、情けないのと嬉しいのと申し訳ないのがごちゃまぜになって、泣きそうになった。泣かなかったけど。

ゴムをつけて、なっちゃんの上に覆いかぶさった。

「……いくよ」

「うん……」

先端を当てて、ゆっくり入れていった。中は温かくて、きつくて、思わず声が出た。

「……っ」

「ん……あ……っ……」

なっちゃんの眉間にしわが寄ってるのが見えて、途中で止まった。

「痛い?」

「ちょっとだけ……大丈夫、動いて……」

ゆっくり腰を動かした。なっちゃんが俺の背中に腕を回してきた。爪が食い込むのが分かった。

「あ……ん……もうちょっと……奥……」

「ここ?」

「あっ……そこ……いい……」

奥に当たるたびに、なっちゃんの声が甘くなった。さっきまで「怖い」って言ってた子と同じ人間とは思えない。

「なっちゃん……」

「名前……呼んで……もっと……」

「なっちゃん、なっちゃん……」

名前を呼ぶたびに中がきゅっと締まるのが分かった。まずいと思った。このままだとすぐにいってしまう。

「やばい……もう……」

「いいよ……出して……」

腰を密着させたまま、達した。ゴム越しでも、出してる瞬間にお互いの体が震えてるのが分かった。

「はぁ……はぁ……」

「……気持ちよかった?」

「……うん。ごめん、早くて」

「ふふ、いいよ。私も……気持ちよかったから……」

しばらく抱き合ったまま横になってた。エアコンの音だけが聞こえる部屋で、なっちゃんの呼吸が整っていくのを感じてた。

「ねえ」

「ん?」

「もう一回……していい?」

今度はなっちゃんが上に乗ってきた。さっきより大胆で、自分で腰を動かし始めた。

「ん……あ……これ……自分で動くの……全然ちがう……」

暗闘の中で、なっちゃんが目を閉じて眉をひそめてるのが見えた。気持ちいいのか苦しいのか分からない顔。でも腰は止まらなかった。

俺は下から胸に手を伸ばして、乳首を転がした。

「あっ……それ……同時にやられると……っ」

「ダメ?」

「ダメじゃない……けど……あ、あ、やばい……」

なっちゃんの動きが速くなって、声が切れ切れになった。

「あっ……いく……いっちゃう……っ」

体がガクガク震えて、そのまま俺の上に崩れ落ちてきた。中がぎゅうっと締まって、それで俺も一緒にいった。

「っ……」

2回目は1回目より長くて、頭の中が真っ白になった。

なっちゃんが俺の胸に顔をうずめたまま、荒い息をしてる。汗で濡れた前髪が額に張り付いてて、それがなんか、すごくよかった。

しばらくそうしてて、なっちゃんが口を開いた。

「ねえ……これ、酔ってるからじゃないよね?」

「……もう醒めてる。とっくに」

「ほんと?」

「ほんと。たぶん、水飲んだ時点で醒めてた」

なっちゃんが顔を上げて、じっと俺を見た。

「……じゃあ、全部シラフでやったんだ」

「……そういうことになるな」

「最低」

「うん」

「……最低。でも、よかった」

そう言って、また俺の胸に顔をうずめた。

朝の5時くらいに目が覚めた。窓からうっすら光が差してて、となりでなっちゃんが丸まって寝てた。裸のまま、俺のタオルケットにくるまって。

キッチンで水を飲みながら、考えた。

これからどうするんだ。隣人だぞ。毎日顔を合わせるんだぞ。気まずくならないのか。いや、もう気まずいとかそういう次元じゃない。

なっちゃんが起きてきた。俺のTシャツを勝手に着て。

「……おはよ」

「おはよ」

「コーヒー飲む?」

自分の部屋なのに俺に聞く感じが、なんかおかしくて笑ってしまった。

「飲む」

コーヒーを淹れてくれてる背中を見ながら、やっぱり思った。この子のこと好きだ。昨日の夜からじゃなくて、たぶんずっと前から。

「なっちゃん」

「ん?」

「付き合ってほしい」

なっちゃんがカップを持ったまま固まった。

「……順番おかしくない?」

「おかしいよ。全部おかしい。でも、ちゃんと言いたかった」

なっちゃんがカップをテーブルに置いて、俺の正面に座った。

「私さ、最初からそのつもりだったんだよ」

「え?」

「鍵預けたの、なくしたからじゃないよ。口実。あの日、ポケットに入ってた」

「……は?」

「引っ越してきた日に手伝ってくれたでしょ。あの時から、この人いいなって思ってた。でも隣だし、変に意識されたくなくて。鍵預けたら、つながりができるかなって」

(……全部、計算だったのか?)

いや、計算って言うと聞こえが悪いけど、要するになっちゃんはずっと俺に好意があって、俺だけが気づいてなかったってことだ。毎週末の飯も、缶ビールも、全部。

「俺、ほんと鈍いな……」

「うん、ほんと鈍い。何回サイン出したか分かる?」

「……ごめん」

「いいよ。で、返事は?」

「え、だから付き合ってほしいって……」

「私が聞いてるのは、こっちにいつ引っ越してくるかってこと」

「……え?」

「間取り一緒なんだから、荷物運ぶの簡単でしょ。隣同士で家賃二重に払うのバカらしくない?」

このとき、俺がどんな顔してたのか自分では分からない。ただ、なっちゃんが「あはは、冗談だよ」って言い足したから、たぶん相当間抜けな顔だったんだと思う。

冗談だったのかもしれないし、半分本気だったのかもしれない。

結論だけ言うと、俺となっちゃんはあの朝から付き合い始めた。しばらくは隣同士のまま、壁ドンドンって叩いたら「起きてるよー」って返事が来る生活が続いた。

半年後、なっちゃんの部屋の契約更新のタイミングで、俺の202号室に転がり込んできた。6畳一間に二人はさすがに狭かったけど、あの布団で寝た夜よりは広い。

鍵はひとつになった。


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