どうも、タケルです。25歳、都内で経理やってる普通のサラリーマンです。
顔面偏差値は48くらい。よく言えば「雰囲気イケメン」、悪く言えば「雰囲気だけ」。身長172、体重63、服はユニクロとGUのローテ。彼女いない歴2年半。まあ要するに、どこにでもいるフツメンです。
で、そんな俺に3ヶ月前、ちょっとした事故が起きた。
仕事帰り、環七の荻窪あたりで赤信号待ちしてたら、左からチャリが突っ込んできた。ガシャンって音がして、車から降りたら女の子が道路に転がってた。
正確に言うと「女の子」ってトシじゃない。21歳。でも第一印象は完全に「女の子」だった。ショートボブで、今田美桜をもうちょい庶民的にした感じ。身長は155くらい。細いけどちゃんと出るとこ出てる体型で、事故ってなきゃ普通にナンパしたいレベルだった。
(いや、事故ってる場合じゃないだろ)
彼女は膝を抱えてうずくまってて、スカートから血がにじんでた。
「大丈夫?動ける?」
「すみません、すみません…信号、見てなくて…」
泣きそうな顔で謝ってくる。いや俺の車もバンパーへこんでるけど、それよりこの子の足のほうがやばいだろ。
救急車呼んで、警察来て、事故処理。車はまあ、そろそろ買い替え考えてた12万キロのフィットだから正直どうでもよかった。それより、担架で運ばれてくときに彼女が俺の袖つかんで「本当にごめんなさい…」って言ってきたのが、なんか引っかかった。
2日後、相手の母親がうちまで菓子折り持って謝りに来た。話を聞くと、娘さんは右膝の靱帯を損傷して、全治2ヶ月。手術はしないけど、しばらく入院だと。
母親は40代前半くらいで、シングルで娘を育ててるらしい。看護師で夜勤も多いから、なかなか見舞いに行けないと申し訳なさそうにしてた。
(この母親も苦労してんだな…)
なんとなく、見舞いに行っていいか聞いた。自分でもなんで聞いたのかわからない。ぶつかってきたのは向こうなのに。母親は「娘も喜ぶと思います」と深々と頭を下げた。
翌週の土曜、荻窪の病院に行った。3階の個室。カーテンの向こうにいたのは、髪をピンで留めた彼女だった。名前は楓。
「あ…車の人…」
「車の人て。タケルです、一応名前ある」
「あ、すみません。楓です…この前は本当に…」
「もういいって。車のことは保険で処理するし。それより足、どう?」
「動かすと痛いけど、だいぶマシになりました。あの、なんでお見舞いに…?」
「暇だから」
「…え?」
「土曜やることないんだよ、マジで」
楓がぷっと吹き出した。笑うと目が三日月みたいになるタイプで、(あ、こいつ笑顔やばいな)と思った。
その日は1時間くらい話した。楓は杉並区の生まれで、今は阿佐ヶ谷のアパートに母親と二人暮らし。専門学校を出てネイルサロンで働いてたけど、サロンが潰れて、事故のときは新しいバイト先に向かう途中だったらしい。
「バイト初日に事故って、そのまま入院。人生詰んでますよね」
「まあ、車にぶつかるくらいだからな」
「それは言わないでください…」
帰り際に買ってきたシュークリームを渡したら、「え、いいんですか」って目をキラキラさせてた。21にもなってシュークリームでこの反応かよ、と思ったけど、なんか嬉しかった。
それから毎週土曜、見舞いに通うようになった。
3回目くらいから敬語が崩れてきて、4回目には普通にタメ口になってた。
「タケルさん、今日なに持ってきてくれた?」
「ローソンのバスチー」
「うわ、好き。あ、バスチーが」
「わかってるよ」
毎回2時間くらい話してた。楓は見た目よりずっとよく喋る子で、バイト先の店長の愚痴とか、入院中に読んだマンガの話とか、隣のベッドのおばちゃんがイビキうるさいとか、そういうどうでもいい話をずっとしてた。
俺もなぜか楓の前だと喋れた。会社の先輩がExcelの関数も使えないくせに偉そうにしてくる話とか、一人暮らしの部屋で育ててるサボテンに名前つけてる話とか。
「え、なんて名前?」
「…ゴンザレス」
「あはは!なんでゴンザレス!」
楓がベッドの上で腹抱えて笑ってて、看護師さんに「静かにしてくださいね」って注意された。二人でしゅんとなって、目が合ってまた吹き出す、みたいな。
(なんだこれ。中学生かよ)
5回目の見舞いのとき、異変が起きた。
病室に着いたら、知らない男がベッドの横に立ってた。20代後半くらい、チャラい感じの茶髪。楓は明らかに困った顔をしてた。
「…楓?」
「あ、タケルさん!」
男がこっちを見た。
「誰?」
「えっと…友達」
「ふーん。俺、元カレなんだけど」
(え、元カレ?)
空気が一瞬で重くなった。楓が小さい声で「もう帰ってって言ったでしょ」と言ったけど、男は動かない。俺はどうすればいいかわからなくて、とりあえず入口に突っ立ってた。
「楓、退院したらまた会おうぜ。なあ」
「だから関係ないって。もう別れたじゃん」
「俺はまだ好きだけど?」
楓がちらっと俺を見た。すがるような目。電車で痴漢に遭ってる子がこういう目をするんだろうな、と思った。
「あの、面会時間そろそろ終わりますけど」
嘘だけど。
男は舌打ちして出ていった。ドアが閉まった瞬間、楓がふーっと息を吐いた。
「ごめん…見苦しいとこ見せて」
「いや、別に。元カレ?」
「半年前に別れたのに、たまに連絡してくるの。病院にまで来るとは思わなかった」
「ストーカーじゃん」
「…ちょっとそうかも」
楓が少し震えてた。俺はなんか、自分でもびっくりするくらいムカついてた。
「次来たら俺に連絡して。すぐ来るから」
「…なんで?」
「暇だから」
「…また暇って言う」
楓が笑った。けど目が潤んでた。
その日から、土曜だけじゃなくて仕事帰りにも寄るようになった。平日の夜、スーツのまま病室に行って、コンビニのスイーツを置いて、30分だけ話して帰る。
楓は毎回「来てくれたの?」って嬉しそうにするから、俺もなんか嬉しくなって、気づいたら毎日通ってた。
(いや、俺なにやってんだ)
自分でもわかってなかった。いや、うっすらわかってたのかもしれない。でも認めるのが怖かった。事故の加害者と被害者だぞ。しかも4つ下。こんなの、ただの同情だろと自分に言い聞かせてた。
でも楓の笑い方とか、俺が持ってくお菓子を「これ好き!」って喜ぶ顔とか、「タケルさんと話すと元気出る」ってぽそっと言ったときの横顔とか、全部覚えてる時点でもう手遅れだった。
退院が近づいたある日。楓が唐突に言った。
「ねえ、タケルさんって彼女いないの?」
「いない。2年半いない」
「なんで?優しいのに」
「優しいだけじゃモテないんだよ」
「…私はモテると思うけど」
「はいはい」
「はいは一回」
沈黙。楓がシーツの端をいじりながら、小さい声で言った。
「退院したらさ…もう会えなくなる?」
「え?」
「お見舞いに来る理由なくなるじゃん。私の足が治ったら、タケルさんが来る理由って…」
(あ、こいつ…そういうこと気にしてたのか)
俺は頭をガシガシ掻いた。恥ずかしかった。でも今言わなかったら一生言えない気がした。
「楓」
「…なに」
「見舞いに来てたの、途中から暇だからじゃない」
「…」
「楓に会いたかったから来てた。毎日」
楓がこっちを見た。目がまん丸になってて、3秒くらい固まってた。
「…それ、どういう意味?」
「そのままの意味」
「ちゃんと言ってよ…」
「…好きだよ。たぶん、3回目くらいから」
楓の目から涙がぼろぼろ出た。泣くとは思わなくて焦った。
「私…私のほうが先だし…」
「え?」
「最初にお見舞い来てくれたとき。シュークリーム持って。あのときからずっと好きだった」
(マジかよ…シュークリームで?)
俺はベッドに腰かけて、楓の頭をぽんぽんした。楓が俺のシャツを掴んで、顔をうずめてきた。消毒液の匂いがする病室で、こんな甘い時間が流れていいのかよ、と思った。
「退院したら…うち来て」
「…いいの?」
「お母さん、その日夜勤だから」
心臓がうるさかった。
退院の日、俺は車で迎えに行った。新しく買った車。中古だけど。楓は松葉杖をつきながら出てきて、「車変わってる」と笑った。
「前のはお前が壊したからな」
「うっ…」
「冗談だって」
阿佐ヶ谷のアパートまで送った。1Kの小さい部屋。母親は予定通り夜勤でいない。楓が松葉杖で器用にお茶を入れてくれて、小さいテーブルに向かい合って座った。
テレビをつけたけど、二人とも画面を見てなかった。
「ねえ」
「ん?」
「キス…していい?」
俺から答える前に楓が近づいてきた。松葉杖が倒れる音がした。唇が触れた。柔らかくて、ちょっとリップクリームの味がした。
「ん…」
離れて、目が合って、また重ねた。今度は長かった。楓が俺の首に手を回してきて、舌が触れた。
(やばい。これ止まれなくなるやつだ)
でも止まれなかった。キスしながらベッドに移動して、楓を横たえた。足に気をつけながら。
「足、大丈夫?」
「…うん。右だけだから、左で支えられる」
Tシャツの裾に手を入れた。楓がびくって震えた。
「怖い?」
「怖くない。でも…ちょっと恥ずかしい」
「俺も恥ずかしいよ。2年半ぶりだし」
「…ぷっ。そこ正直に言う?」
Tシャツを脱がすと、白いブラが見えた。入院中にロッカーで見えたのとたぶん同じやつ。普通の、飾り気のない綿のブラ。でもそれがなんかリアルで、余計にドキドキした。
背中に手を回してホックを外した。手が震えてたと思う。
楓のおっぱいは思ってたよりちゃんとあった。CかDくらい。服着てるとわからないけど、形が綺麗で、ちょっとツンと上向いてた。
「…綺麗だな」
「やめて恥ずかしいって…」
手のひらで包むように触ると、楓が小さく声を漏らした。柔らかくて、体温が伝わってきて、(あ、俺いまこの子に触ってるんだ)と実感が追いついてきた。
乳首に唇をつけると、楓の手が俺の髪を掴んだ。
「あっ…そこ、弱い…」
「こっちも?」
「んっ…両方やめて…感じちゃう…」
やめてって言いながら頭を押さえてくるから、やめる気配はゼロだった。
スウェットを下ろした。楓の右膝にはまだ包帯が巻いてあって、そこだけ現実に引き戻される感じがした。
「痛くない?」
「平気…タケルさん、優しすぎ」
「優しいだけだって言ったろ」
「それがいいの」
下着越しに触れると、もう濡れてた。指を滑らせると楓が腰を揺らした。
「あ…やっ…そこ…」
「ここ?」
「ん…上のほう…」
クリに指を当てると、楓が息を呑んだ。反応がわかりやすくて、(この子、感度いいな)と思った。
下着をずらして直接触ると、ぬるっとした感触が指に伝わった。
「あっ…んっ…やば…」
「気持ちいい?」
「…うん。タケルさんに触られると…全然違う…」
全然違うって何と比べてんだよ、と一瞬思ったけど、今はそういうの気にする場面じゃない。
指を入れると、中が熱かった。きゅっと締まって、楓が俺のTシャツを掴む力が強くなった。
「あっ…あっ…だめ、そこ…いい…」
ゆっくり動かしながら、親指でクリも刺激した。楓の声がだんだん大きくなって、足がぴんと伸びた。右足が伸びたときに「いたっ」って小さく言ったけど、止めないでって首を振った。
「や…いく…いっちゃう…タケルさん…っ」
楓が俺の腕にしがみついて、体をびくびく震わせた。脈打つような感覚が指に伝わってきて、(あ、いったんだな)とわかった。
荒い息の楓が、潤んだ目で俺を見上げた。
「…タケルさんも…してほしい」
ズボンのファスナーを下ろしてくれた。楓の細い指が俺のものに触れたとき、声が出そうになった。
「…おっきい」
「お世辞はいいから」
「お世辞じゃないし…」
楓が両手で包むように握って、ゆっくり動かし始めた。手つきはぎこちなかったけど、それが逆にリアルで、変に興奮した。
「…やばい、それ気持ちいい」
「ほんと?よかった…これでいい?」
先端を親指でくるくる触ってくるから、腰が浮きそうになった。
「楓…入れたい」
「…うん」
「ゴム…」
「あ、ない…」
「コンビニ行ってくる」
「えっ…今から?」
「ファミマ30秒だろ」
パンツ一丁でズボンだけ履いて、マジでダッシュでファミマ行った。レジのおばちゃんの「袋いりますか?」が人生で一番長い3秒に感じた。
部屋に戻ると楓がベッドの上で体育座りしてて、目が合って二人で笑った。
「速すぎ…」
「待たせたくなかったから」
「…そういうとこ」
ゴムをつけて、楓の上に覆いかぶさった。右足に体重がかからないように、左側に重心をずらす。
先端を当てると、楓が息を止めた。
「いくよ」
「…うん」
ゆっくり入れた。じわっと広がる感覚と、楓の吐息が同時に来て、頭がぼうっとした。
「あ…っ…」
「痛い?」
「ん…ちょっとだけ。でも大丈夫…もっと入れて」
奥まで入れると、楓が俺の背中に爪を立てた。中が熱くて、きつくて、2年半のブランクが全部溶けるみたいだった。
(やばい。これ、すぐイきそう)
必死で耐えながらゆっくり動いた。楓が小さく声を漏らすたびに、理性が削れていく感じがした。
「あっ…ん…気持ちいい…」
「楓…きつい…」
「ごめ…力入っちゃう…」
「謝んなくていい…それがいいんだよ」
腰を動かすたびにベッドが軋んだ。楓が俺の首に腕を回して、耳元で「好き」って言った。あの声は一生忘れない。
「楓…もう…」
「いいよ…出して…」
腰を押し付けて、ゴムの中に全部出した。体中の力が抜けて、楓の上に崩れ落ちそうになったのを腕で支えた。
「…すごい、びくびくしてる」
「…2年半分だからな」
「あはは…」
しばらく抱き合ったまま動けなかった。楓の心臓の音が聞こえた。速かった。俺のも速かった。
30分くらいして、二人でシャワーを浴びた。楓の右足が濡れないようにビニール袋を巻いて。
「なにこれ不格好…」
「しょうがないだろ」
狭いユニットバスで、向かい合って体を洗い合った。楓の肌が湯気で上気してて、さっきとは違う色気があった。
背中を流してたら楓が振り向いて、また唇が重なった。シャワーの水が二人の顔を伝って、目を開けたら楓がすぐそこで笑ってた。
「ねえ」
「ん」
「…もう一回、したい」
さっきより余裕があった。今度は横向きで、楓の後ろから抱きしめるようにした。右足を上にして負担がかからない体勢。
「あ…この角度…深い…」
「痛くない?」
「ん…痛くない。すごい奥まで…」
さっきは必死だったけど、二回目は楓の反応をちゃんと見れた。どこが気持ちいいか、どう動くと声が漏れるか。耳の後ろにキスすると「そこだめ…」って体を震わせるのを発見した。
「タケルさん…んっ…好き…」
「俺も。楓のこと…ずっと考えてた」
「病院にいるときから…?」
「たぶん、お菓子持ってく前の夜から。何持ってったら喜ぶかなって、コンビニ3軒回ったの、知らないだろ」
「…なにそれ。かわいい」
「かわいいは男に言うなよ…」
楓が笑って、その震えが中に伝わって、俺は思わず腰を押し付けた。
「あっ…ん…それ…いい…」
さっきより甘い声だった。遠慮がなくなって、本音が出てる感じがした。楓の手が俺の腕を掴んで、「もっと」って小さく言った。
ペースを上げると、楓が声を抑えられなくなった。
「あ…あっ…やば…もう…」
「いきそう?」
「うん…タケルさんと一緒がいい…」
「…俺も、もう限界」
楓の手を握って、最後に深く押し込んだ。楓が声にならない声を出して体を硬直させたのと、俺がイったのがほぼ同時だった。
「はぁ…はぁ…」
しばらく繋がったまま動けなかった。楓が俺の手をきゅっと握ったまま離さなくて、(ああ、この子のこと、本気で好きだわ)って今更ながら思った。今更すぎるだろ。
抜いてから楓が寝返りを打って、俺の胸に顔をうずめてきた。
「ねえ、タケルさん」
「ん」
「事故ってよかった」
「…それは言うなよ。お前の足まだ治ってないだろ」
「でもタケルさんに会えた」
「…もっと普通の出会い方がよかったけどな」
「私、タケルさんの車にぶつかんなかったら、今頃まだ一人でコンビニ弁当食べてるよ」
「今日もコンビニのバスチー食っただろ」
「それとこれは違うの!」
楓がぷくっと頬を膨らませて、それが可愛くてキスした。
窓の外がうっすら白くなり始めてた。時計を見たら4時半。
「…もう朝じゃん」
「お母さん、7時に帰ってくるから…あと2時間ちょっと」
「帰ったほうがいい?」
「…いてほしい。ギリギリまで」
「わかった」
目覚ましを6時半にセットして、楓を抱きしめたまま目を閉じた。
薄明かりの中で、楓が何か言った。半分寝ぼけてたけど、「ゴンザレスに会いたい」って言ったのだけ聞こえた。
(サボテンかよ)
笑いながら眠った。
あれから2ヶ月経った。楓の膝はリハビリ中だけど、もう松葉杖なしで歩ける。新しいバイトも見つかった。阿佐ヶ谷のタリーズ。
俺は相変わらず経理をやってて、相変わらずフツメンで、相変わらずユニクロを着てる。変わったのは、金曜の夜に楓の部屋に泊まることと、ゴンザレスの隣にもうひとつサボテンが増えたこと。楓が「ゴンザレスJr.」と名付けた。
俺の一週間は、もう楓なしでは回らない。事故がなきゃ出会わなかった。それはわかってる。でも今はただ、隣にいるこいつの寝顔を見て、(バンパーくらい安いもんだったな)と思ってる。