社会人3年目、26歳、男です。
まず最初に言っておくと、俺はモテない。身長は172で、顔は……まぁ、強いて言えば阿部寛を3段階ぐらい劣化させて、さらに目を小さくした感じ。会社の同期には「雰囲気だけは悪くない」と言われたことがあるけど、それ裏を返せば顔面は終わってるってことだよな。
で、なんでこんな話を書いてるかというと、マジで信じられないことが起きたからです。
俺は去年の10月に転勤で東京から福岡に来た。博多駅から地下鉄で3駅、薬院の近くの築浅1Kに住んでる。家賃6万2千円。会社の家賃補助が3万出るからまぁ助かってる。
問題は、隣の部屋の住人だった。
引っ越してきた日に廊下で鉢合わせた。ショートボブで、目がでかくて、永野芽郁をもうちょい大人っぽくした感じの子。身長は158ぐらいかな。白いTシャツにデニムのショートパンツっていうラフな格好だったんだけど、脚がすらっとしてて、あと胸が……Tシャツ越しでもわかるぐらい主張してた。たぶんEかFはある。
(うわ、隣こんな子なの……)
「あ、お隣さんですか? 私202号室の小坂です。よろしくお願いしまーす」
めちゃくちゃ明るい。人懐っこい笑顔で、ぺこりと頭を下げてきた。
「あ、201の長谷川です。よろしく」
「小坂さん」は西南学院大学の3年生で、21歳だった。福岡出身で、実家は久留米らしい。
最初の1ヶ月はほとんど接点がなかった。たまにゴミ出しのタイミングが被ったり、コンビニから帰ってきた時に挨拶するぐらい。
転機は11月の半ばだった。
俺の仕事は医療機器メーカーの営業で、福岡を拠点に九州全域を回る。出張がアホみたいに多くて、週の半分は家にいない。で、困ったのが郵便物。不在届が溜まりまくって、再配達を頼んでも受け取れない。
ある日、廊下で小坂さんに会った時に愚痴ったら、
「あー、それ大変ですね。よかったらスペアキー預かりましょうか? 荷物届いたら玄関に入れときますよ」
「いや、さすがにそれは……」
「私べつに気にしませんよ? 実家でもご近所さんの荷物預かったりしてたし」
(いや、気にするのは俺の方なんだよな……)
とは思ったけど、実際マジで困ってたから、結局スペアキーを渡した。
これが全ての始まりだった。
最初は本当に荷物を受け取ってくれるだけだった。出張から帰ると、玄関にAmazonの段ボールがきちんと並べてあって、「受け取りました!」ってLINEが来る。ちなみにLINEは荷物の連絡用に交換した。
ところが12月に入ったあたりから、様子が変わった。
出張から帰って部屋に入ると、キッチンのコンロに鍋が置いてある。蓋を開けたら、カレーだった。
(……は?)
LINEを見ると、
「作りすぎちゃったのでカレー置いときました! よかったら食べてください」
食べた。
めちゃくちゃ美味かった。
スパイスがちゃんと効いてて、具材もゴロゴロしてて、コンビニ弁当ばっか食ってる俺には衝撃的だった。
お礼のLINEを送ったら、「気に入ってもらえてよかったです!」って返ってきた。絵文字3つ付き。
次の出張から帰ったら、今度は肉じゃがだった。
その次は豚汁。
その次はグラタン。
毎回「作りすぎちゃって」って言うんだけど、いやおかしいだろ。毎回作りすぎるか普通。しかも一人暮らしの女子大生が。
(……これ、どういうことなんだ?)
俺は正直、意味がわからなかった。
好意なのか? いや、でも年下の女子大生が5つ上の冴えない営業マンに好意を持つ理由がない。ただのお節介? 久留米の田舎育ちだからご近所付き合いが濃いだけ?
考えても答えが出ないので、とりあえず毎回ちゃんとお礼を言って、たまにお菓子やアイスを差し入れした。
年が明けて1月。
仕事始めの週末、珍しく金曜の夜に家にいた。風呂上がりにビールを飲んでたら、インターホンが鳴った。
「長谷川さーん、おでん作ったんですけど食べませんかー?」
ドアを開けたら、小坂さんが土鍋を両手で抱えて立ってた。パーカーにスウェットパンツ、すっぴん。なのに普通にかわいい。
「あ、ありがとう。入る?」
「いいんですか? じゃあお邪魔しまーす」
こうして、初めて小坂さんがうちの部屋に上がった。
1Kの狭い部屋にローテーブルを挟んで向かい合って座る。距離が近い。パーカーの首元から鎖骨がちらっと見えて、目のやり場に困った。
おでんをつまみながらビールを飲んだ。小坂さんはレモンサワーの缶を持ってきてた。
「長谷川さんって出張多いですよね。大変じゃないですか?」
「まぁ慣れたけど……飯がな。コンビニ飯ばっかで胃がやられる」
「だから作ってるんですよ、私」
「……え?」
「長谷川さん、コンビニの袋ばっかゴミに出してるじゃないですか。見てて心配になっちゃって」
「ゴミ見てたの……」
「見てたっていうか、ゴミ出しの時に目に入るだけですよ! べ、別にチェックしてるわけじゃないですからね?」
顔が赤い。レモンサワーのせいなのか、それ以外の理由なのか、この時の俺には判断できなかった。
話してるうちに、いろんなことがわかった。小坂さんーー名前はゆいって言うらしいーーは管理栄養士を目指してて、料理は実習も兼ねてよく作るんだって。
「だからホントに作りすぎるんですよ。一人分のレシピって逆にむずいんです」
「まぁ、それはわかるけど……毎回俺のとこに持ってくるのは?」
「他に渡す人いないし……」
言いながら目を逸らした。
(いや、友達とかいるだろ普通に……)
でも突っ込めなかった。突っ込んだら何かが壊れそうな気がして。
この日から、金曜の夜に小坂さんがうちに来るのが定番になった。
鍋をしたり、お好み焼きを焼いたり。回を重ねるごとに距離が縮んでいく感じがあった。
2月のある金曜日。その日は仕事でかなり嫌なことがあった。
大口の取引先に出入り禁止を食らったのだ。前任者のミスの尻拭いで俺が頭を下げに行ったのに、先方の部長に「お前の会社とはもうやらん」って言われた。上司に報告したら「お前の対応が悪かったんじゃないのか」と言われた。
最悪だった。
薬院のドラッグストアで缶ビールの6本パックと、ストロングゼロのロング缶を3本買って帰った。一人でやけ酒するつもりだった。
部屋に着いてビールを開けた。1本目。2本目。3本目が空いたあたりでインターホンが鳴った。
「長谷川さん、今日は……って、うわ、もう飲んでるんですか?」
「あー……ちょっと色々あってさ」
小坂さんは俺の顔を見て何か察したらしく、何も言わずに中に入ってきた。手にはタッパーに入ったポトフ。
「とりあえずこれ、あっためますね」
小坂さんが俺のキッチンで当たり前のようにポトフを温めてる間に、俺はストロングゼロに手を出した。
ポトフを食べながら、俺はぽつぽつと愚痴を言った。小坂さんはレモンサワーを飲みながら黙って聞いてくれた。
「それ、長谷川さんのせいじゃないじゃないですか」
「まぁそうなんだけど……でも結果的に俺が担当してる間に切られたわけだから」
「前の人のミスなんでしょ? 長谷川さんは悪くないです」
きっぱり言い切ってくれたのが、なんか沁みた。
ストロングゼロ2本目を空けたあたりから記憶があやしい。
気がついたら、俺はベッドに横になってた。
隣に小坂さんがいた。
「……は?」
「あ、起きました?」
暗い部屋の中で、小坂さんが俺のすぐ横に座ってた。ベッドの縁に腰掛けて、俺の額に濡れタオルを載せてくれてたらしい。
「え、俺なに……なんかした?」
「なんか途中からぐだぐだになっちゃって。吐きそうだったから横にしたんですよ」
「まじか……ごめん」
「いいですよべつに。慣れてるし」
「慣れてる?」
「お父さんがよく飲みすぎるんです。だから介抱は得意なんですよ」
笑ってる。こんな状況で笑えるの、すごいな。
俺はまだ酔ってた。頭がぼーっとして、判断力がゼロになってる自覚はあった。
なのに口が勝手に動いた。
「なぁ、小坂さん」
「はい?」
「なんで俺にこんなに良くしてくれんの」
「……え」
「カレーもさ、肉じゃがも、おでんも……毎週金曜来てくれるのも。なんで?」
沈黙。
部屋の中に、冷蔵庫の低い唸りだけが響いてた。
「……長谷川さんはさ」
小坂さんの声が、さっきまでと明らかにトーンが違った。
「引っ越してきた日に、覚えてます? 廊下で会った時」
「覚えてるよ」
「あの時、段ボール何個も抱えてたじゃないですか。で、私を見て、会釈したあとに、自分の部屋に入ろうとして」
「うん」
「鍵落としたの、覚えてます?」
覚えてない。
「私が拾って渡したんですよ。そしたら長谷川さん、荷物で手が塞がってて受け取れなくて、私が鍵穴に差して回したんです」
「……全然覚えてない」
「でしょうね。長谷川さん、その時に言ったんですよ。『ありがとう、助かった。今度なんかお礼させて』って」
「言いそうではある」
「その時のさ……笑顔が、すごく優しかったんです。疲れてるのに、ちゃんとこっち見て笑ってくれて」
「……」
「それで、なんか……好きになっちゃったんですよね」
時間が止まった。
いや、止まったのは俺の思考だけで、時計の秒針はちゃんと動いてたし、冷蔵庫もブーンって唸ってた。
「……え、まって」
「だからカレー作ったのも、荷物預かるって言ったのも、金曜に来てるのも、全部……好きだからです」
小坂さんが俺を真っ直ぐ見てた。暗い部屋でも、目が潤んでるのがわかった。
「いやでも俺……5つも上だし、顔もべつに……」
「年とか関係ないです。顔も、私はかっこいいと思ってます」
「いやいやいや」
「否定しないでください」
強い口調だった。泣きそうな顔で、でも目は逸らさない。
酔った頭でもわかった。この子は本気だ。
(でも、いいのか? 酔ってるし、勢いで変な返事したら……)
そう思った瞬間、小坂さんが俺の手を握った。
小さくて、温かい手だった。
「長谷川さん。私のこと、迷惑ですか?」
「迷惑なわけないだろ……」
「じゃあ……」
「……ちょっと待って。俺、今めちゃくちゃ酔ってるから」
「知ってます」
「だから、こういう大事なことは……」
「酔ってるから聞けたんです。シラフの長谷川さんに言う勇気、私にはないので」
それを言われたら、もう何も返せなかった。
正直に言う。
俺は小坂さんのことを意識してなかったわけがない。毎週金曜に手料理持ってきてくれる可愛い女子大生を意識しない男がいたら、そいつは仏像だ。
でも、「まさか自分に好意を持つわけがない」と思い込んでた。だって俺だぞ。阿部寛の劣化コピーだぞ。永野芽郁似の女子大生が好きになる要素がどこにあるんだよ。
……あったらしい。鍵を拾った時の笑顔に。
自分では何とも思ってない瞬間に、相手の心を動かしてたなんて、そんな少女漫画みたいなこと現実にあるのかよ。
「……俺も、小坂さんのこと」
「ゆい」
「え?」
「ゆいって呼んでください」
「……ゆいさ」
「さん、いりません」
「……ゆい」
「はい」
「俺も、ゆいのこと……好きだと思う」
「思うじゃなくて」
「好きです」
「……っ」
ゆいが泣いた。
声を出さずに、ぽろぽろ涙を流してた。
「ずっと……言いたかった……」
俺はベッドに横になったまま、泣いてるゆいの頭を引き寄せて、不器用に抱きしめた。シャンプーのいい匂いがした。ダヴだと思う。たぶん。
どっちからキスしたのかは覚えてない。
気がついたら唇が触れてた。酒の味がした。お互い。
「ん……」
柔らかかった。唇も、抱きしめた体も。
パーカー越しに背中をさすると、ゆいが少し震えた。
「……寒い?」
「ちがいます……緊張してるんです」
2回目のキスは、さっきより長かった。舌が触れて、ゆいが小さく声を漏らした。
「んっ……」
パーカーのジッパーに手をかけた。途中で止まった。
「……いいの?」
「……聞かないでください。恥ずかしいから」
ジッパーを下ろすと、中はキャミソール1枚だった。ブラはしてなかった。
(……ノーブラで来たのか)
いや、部屋着だからそういうこともあるか。深く考えるな俺。
でも、もしかして最初から覚悟してきた?
いや、考えるな。
キャミソールの上から胸に触れた。柔らかくて大きくて、手に収まりきらない。
「あっ……」
ゆいが目を閉じて、唇を噛んだ。
キャミソールをたくし上げると、薄暗い部屋でも白い肌が映えた。形の綺麗な胸が目の前に現れて、俺は一瞬思考が止まった。
「……すげぇ」
「やだ、そんなまじまじ見ないでください……」
両手で顔を覆うゆいの胸に顔を埋めた。柔らかい。あったかい。いい匂いがする。
舌先で先っぽを転がすと、ゆいの体がびくってなった。
「やっ……そこ、弱い……」
反対側の胸を手で揉みながら、舌を動かし続ける。ゆいの呼吸がどんどん荒くなっていく。
「長谷川さん……」
「呼び方」
「……けんちゃん」
けんちゃん。俺の名前は健太郎だから、まぁそうなるか。
なんかすごい破壊力だった。年下の女子大生に「けんちゃん」って呼ばれるの、こんなに来るとは思わなかった。
スウェットパンツに手を入れた。下着の上から触れると、もう濡れてた。
「あ……わかんないで……」
「わかるよ、めっちゃ濡れてる」
「言わないでぇ……」
下着をずらして直接触れた。ぬるっとした感触。指を滑らせると、ゆいが声を殺しながら腰を揺らした。
「んんっ……けんちゃん……上手……」
「いや、そんなことは……」
「あっ、そこ……もっと……」
クリを中心に円を描くように動かすと、ゆいの反応が明らかに変わった。太ももが閉じてきて、俺の手を挟む。
「だめ……っ、いっちゃ……」
「いっていいよ」
「あっ、あっ……んっ!」
ゆいの体が弓なりになって、数秒間硬直した。太ももの間で俺の手がぎゅっと締め付けられる。
「はぁ……はぁ……」
余韻で震えてるゆいの頬にキスした。
「……けんちゃんも、させて」
ゆいが俺のスウェットのゴムに手をかけた。もう限界まで硬くなってたのは言うまでもない。
取り出されると、ゆいが目を見開いた。
「……おっきい」
「そうでもないよ」
「いや、おっきいです……」
両手で包むように握って、ゆっくり上下に動かし始めた。
「っ……」
「気持ちいいですか?」
「うん……すごい」
ゆいの手は温かくて、力加減が絶妙だった。先っぽを親指で撫でるように触れてきて、腰が浮きそうになる。
「ねぇ……入れて、ほしい」
小さな声で言われた。
酔ってたけど、ここだけは確認した。
「ゴム……」
「……持ってきてます」
ゆいがスウェットのポケットからコンドームを取り出した。
(やっぱり覚悟してきてたのか……)
ゆいが仰向けになって、脚を開いた。恥ずかしそうに片腕で目を覆ってる。
ゴムを着けて、先端を当てた。ゆいの体がこわばる。
「……初めて?」
「……2回目です。1回は高校の時に」
正直、ちょっとだけ安心した。完全な初めてだったらこの酔った状態でしていいのか余計に悩んだと思う。
ゆっくり入れていく。
「あ……っ」
きつい。ゆいが俺の肩を掴んで、爪が食い込む。
「痛い?」
「大丈夫……ゆっくり……」
奥まで入った時、ゆいが長い息を吐いた。
「……あったかい」
「動くよ」
ゆっくり腰を動かし始めた。ゆいが声を漏らすたびに、理性がどんどん削られていく。
(これ夢じゃないよな。隣の部屋の子と、こんな……)
「んっ……けんちゃ……もっと……」
腰の動きを速くすると、ゆいの声が大きくなった。
「やっ……声出ちゃ……壁薄い……」
「隣、お前の部屋だから」
「……あ、そっか」
一瞬の間のあと、二人で同時に笑った。こんな状況なのに。
笑ったら力が抜けたのか、ゆいの中がきゅっと締まって、やばい感覚が一気に来た。
「ゆい……そろそろ……」
「うん……いいよ……」
ゆいの体を抱きしめて、最後に深く突いた。
「っ……!」
頭が真っ白になった。全身の力が腰に集中して、それが一気に放出される感覚。ゴム越しでもわかるぐらい出てた。
「あ……っ、すごい、びくびくしてる……」
そのまま抱き合って、しばらく動けなかった。ゆいの心臓の音が聞こえるぐらい密着してた。
「……ゆい」
「ん?」
「付き合ってくれ」
「……もう付き合ってるつもりでしたけど」
「いや、ちゃんと言わせて。付き合ってください」
「……はい」
ゆいがまた泣いた。今度は笑いながら。
少し休んで、ゆいがシャワーを浴びに自分の部屋に戻ろうとした。
「うちで浴びればいいじゃん」
「え、だって……」
「隣じゃん。着替え取ってくればいい」
ゆいが着替えを取りに自分の部屋に戻って、すぐ帰ってきた。所要時間30秒。隣の部屋の便利さを初めて心から実感した。
ゆいがシャワーを浴びてる間、俺はベッドに寝転がって天井を見てた。
(まじで何が起きたんだ今日……)
朝、取引先に切られて最悪の気分だった。夜、隣の女子大生に告白されてセックスした。人生のジェットコースターにしても振れ幅がおかしい。
ゆいが風呂から出てきた。俺のバスタオルを巻いて、髪を拭きながら。
「ねぇ、けんちゃん」
「ん?」
「……もう1回、してもいい?」
タオルが床に落ちた。偶然か故意かはわからない。
2回目は、さっきより余裕があった。酔いも少し醒めてて、ゆいの体をちゃんと見れた。
本当に綺麗だった。肌が白くて、腰がきゅっとくびれてて、胸が本当にでかい。Eカップあるって言ってた。やっぱりな。
今度は後ろから抱きしめるようにして入れた。ゆいが枕に顔を埋めて声を殺してたけど、途中から我慢できなくなったらしく、枕から顔を上げた。
「あっ……そこ……奥……すき……」
1回目とは反応が全然違った。もう恥じらいが半分ぐらい飛んでて、腰を自分から押し付けてくる。
「ゆい……可愛い」
「やだ……そういうの……弱い……」
耳元で囁くと全身が震えるのがわかったから、何度も「可愛い」「好き」って言った。そのたびにゆいの中が締まって、こっちも限界が近づく。
「けんちゃん……一緒に……」
「うん……いくよ……」
ゆいの手を握って、最後は正面から抱き合って果てた。
終わったあと、ゆいが俺の胸に頭を乗せて言った。
「ねぇ、明日の朝ごはん何がいい?」
「……カレー」
「朝からカレー?」
「ゆいのカレーが一番最初に好きになったから」
「……それ、ずるい」
ゆいが俺の胸をぽんと叩いた。さっきまで泣いてたのに、もう笑ってた。
今、あれから5ヶ月が経った。
ゆいは相変わらず隣の部屋に住んでて、相変わらず毎日俺の部屋に来る。もはや合鍵じゃなくて自分の部屋みたいに出入りしてる。
来年の春にゆいが卒業したら、一緒に住もうって話になってる。隣同士だからもう実質一緒に住んでるようなもんだけど。
あの日、鍵を拾ってくれた時の笑顔で好きになったって言われたけど、俺からすると、毎週金曜にカレーを持ってきてくれたゆいに、いつの間にか救われてたんだと思う。
自分じゃ気づけなかっただけで。