台風直撃の夜に会社で二人きりになった主任が、俺の前でだけ敬語をやめた理由がわからない

これは去年の秋の話です。

俺は当時25歳で、都内の中堅メーカーの営業部に配属されて3年目でした。スペックは身長172、体重64、顔面偏差値は自分で言うのもアレですけど48くらい。要するにどこにでもいるフツメンです。合コンに行っても「いい人だよね」で終わるタイプ。(それ褒めてないよな)

で、俺の部署には主任の水城さんという人がいまして。

水城さんは29歳で、入社7年目。身長163くらいで、顔は今田美桜をもう少しだけ大人っぽくした感じ。Fカップあるらしいってのは同期の女子から聞いた話で、確かにブラウスの上からでもわかるくらいしっかりしてて、営業部の男連中は水城さんが書庫に入るたびにチラチラ見てた。腰のラインがスーツの上からでもきれいに出てて、ヒールで歩く姿がやたら様になる人だった。

ただ、水城さんは仕事に関してはめちゃくちゃ厳しくて、俺は何回怒られたかわからない。見積もりの数字が一桁ずれてただけで「江藤くん、これお客様に出すつもり?」って冷たい目で言われたことは今でもトラウマです。あ、俺の名字は江藤です。下の名前は翔太。

(水城さんに褒められたこと、マジで一回もないな…)

って常々思ってました。

そんな水城さんと俺の関係が変わったのは、去年の10月のことです。

その日、台風21号が関東に直撃するっていう予報が出てて、うちの会社は午後3時に早期退社の指示が出ました。品川のオフィスビルの7階、営業2課のフロアはバタバタと人が帰り始めて、俺も帰ろうとしたんですけど、ひとつ問題がありまして。

翌日の朝イチで出さなきゃいけないプレゼン資料が、まだ半分しかできてなかった。

得意先の川崎にある精密機器メーカー向けの提案書で、水城さんがチェック入れてくれることになってたやつ。これ明日出せなかったら、案件ごと他社に持ってかれる可能性があった。

(帰りたい。でも帰ったら明日終わる。でも台風来てるし…)

って廊下でウロウロしてたら、後ろから声かけられて。

「江藤くん、まだいたの?」

振り向くと水城さんが立ってて、いつものタイトスカートのスーツ姿で、片手にマグカップ持ってた。

「あ、水城さん。いや、明日の中島精機の資料がまだ途中で…」

「ああ、あれね。私もチェックしなきゃいけないから、残ろうと思ってたの」

「え、でも台風…」

「電車止まったらタクシーで帰ればいいでしょ。仕事は待ってくれないから」

さすが水城さんだなと思った。この人はこういう人なんです。プライベートより仕事を優先するのが当たり前みたいな顔してる。

結局、フロアに残ったのは俺と水城さんの二人だけになった。

外の風がだんだん強くなってきて、窓ガラスがビリビリ震え始めた頃、俺はひたすらPowerPointと格闘してた。水城さんは3つ離れたデスクで自分の業務をやりながら、俺が一区切りつくのを待ってくれてる感じだった。

7時を過ぎた頃、ニュースを確認したら在来線は全部止まってて、品川駅も閉鎖。新幹線すら運転見合わせ。タクシーは配車アプリ開いても「周辺に車両がありません」の表示。

「水城さん、電車全部止まってます…タクシーも捕まらないっぽいです」

水城さんがスマホを確認して、少しだけ眉をひそめた。

「本当だ。まあ、こうなるかなとは思ってた」

「え、思ってたんですか」

「台風の進路見てたら、夜中まで無理でしょ。ビル自体は開いてるから、ここで朝まで過ごすしかないかもね」

その言い方があまりにも淡々としてて、逆にちょっと笑いそうになった。この人ほんとにブレないな、と。

資料は8時半頃にやっと形になって、水城さんに見てもらった。

「うん、悪くない。ここのコスト比較のグラフ、単位揃えて。あと結論のスライド、もう一押し欲しいかな」

「わかりました」

「でも、前よりだいぶ良くなったね、資料作り」

「……え?」

思わず顔を上げた。水城さんが俺を褒めた。3年目にして初めてかもしれない。

「何その顔。別に褒めたわけじゃないから。事実を言っただけ」

(いや、それ褒めてるだろ普通に…)

修正を終わらせて、最終チェックしてもらって、資料が完成したのが9時半。外はもう暴風雨で、窓の外が真っ白になるくらいの雨が叩きつけてた。

「お腹空かない?」

「めちゃくちゃ空いてます」

「1階の自販機、まだ動いてるかな」

二人でエレベーターに乗って1階に降りると、自販機コーナーにカップ麺の自販機があって、二人ともカレーヌードルを買った。なぜか同じやつを選んだのがちょっと気まずくて、水城さんが小さく笑った。

「被ったね」

「すみません、先に別のにすればよかったですね」

「なんで謝るの。好きなもの食べなよ」

休憩スペースのテーブルで向かい合ってカップ麺をすすった。蛍光灯がジーッて音を立ててて、外からは雨と風の音がずっと聞こえてた。

「ねえ、江藤くんって彼女いるの?」

唐突すぎて、麺が気管に入りかけた。

「げほっ……い、いないです」

「ふうん」

「水城さんは…」

「いないよ。去年別れた」

「あ、すみません…」

「だから何で謝るの」

(俺、この人の前だと謝ってばっかだな…)

水城さんがカップの底のスープを飲み干して、ふーっと息をついた。

「5年付き合ってた人。結婚するつもりだったんだけどね」

「5年…それは、きつかったですね」

「向こうの浮気。しかも相手が私の大学の後輩。最悪でしょ」

笑いながら言ってたけど、目は笑ってなかった。俺は何て返していいかわからなくて、ただ「最悪ですね」って言うのが精一杯だった。

「それからさ、なんか…仕事しかないなって思っちゃって。だから厳しくなったのかも、部下に対して」

「……」

「江藤くんにもきつく当たりすぎたかなって、たまに思うよ」

「いえ、おかげで成長できてると思います。さっき初めて褒めてもらえましたし」

水城さんが少しだけ目を丸くして、それからふっと笑った。

「あんた意外と図太いね」

その「あんた」にびっくりした。水城さんが敬語じゃないというか、素の言い方をしたのを初めて聞いた気がする。

7階に戻ると、フロアは非常灯のオレンジ色だけになっていた。メインの照明は省電力モードで落ちたらしい。

「暗いですね…」

「デスクのスタンドライトは点くでしょ」

水城さんが自分のデスクのライトを点けて、俺も自分のを点けた。広いフロアに小さな明かりが二つだけ。なんか妙にドキドキする状況だった。

(落ち着け落ち着け、ただの残業の延長だろ)

水城さんが給湯室からブランケットを2枚持ってきてくれた。備品のやつ。

「エアコン切れたから、夜中は冷えると思う」

「ありがとうございます」

二人とも自分のデスクチェアに座って、スマホをいじったり、ぼんやりしたりしてた。時計は11時を回っていた。

「ねえ」

「はい?」

「私のこと、怖い?」

「……正直に言っていいですか」

「どうぞ」

「入社1年目は、マジで怖かったです」

「でしょうね」

「でも2年目くらいから、水城さんが怒るのって全部理由があるなって気づいて。理不尽に怒ったこと一回もないじゃないですか」

水城さんが黙った。

「だから今は…怖いっていうか、尊敬してます」

また黙ってた。暗くてよく見えなかったけど、水城さんの横顔が少し揺れたように見えた。

「…ありがと」

その声がすごく小さくて、聞き間違いかと思った。

「こういうこと言われるの、久しぶりで。ちょっとびっくりした」

沈黙が続いた。風の音だけがずっと鳴ってた。

「ねえ、もう少しこっち来て話さない?声届きにくいし」

俺はチェアごとゴロゴロと水城さんのデスクの横まで移動した。近くで見ると、スタンドライトに照らされた水城さんの顔がいつもと全然違って見えた。会社の蛍光灯の下で見る凛とした顔じゃなくて、もっと柔らかい、というか、ガードが外れてる感じの顔。

「あのさ、私、今ちょっと弱ってるのかもしれない」

「え?」

「こんな話、普段は絶対しないし。部下に弱いとこ見せるなんてプロとして最悪じゃない?」

「いや、別に…弱いところがあるのは普通だと思いますけど」

「あんたさ、たまにすごく優しいこと平気で言うよね」

また「あんた」だった。しかも今度は少し笑ってた。

それから、水城さんが自分の話をしてくれた。5年付き合ってた彼氏との馴れ初めとか、一緒に住んでたマンションのこととか、浮気が発覚した日に荷物をまとめて出てきた夜のこととか。

俺はただ聞いてた。相槌を打って、時々「それはひどいですね」とか「水城さんは悪くないと思います」とか言うだけだったけど、水城さんは話すたびにどんどん表情が崩れていって、最後のほうは鼻声になってた。

「ごめんね、こんな話。部下にする話じゃないよね」

「今は部下じゃなくて、一緒に台風で閉じ込められた人ってことでいいんじゃないですか」

水城さんが俺の顔をじっと見た。暗い中でも、目が潤んでるのがわかった。

「…あんた、ほんとに25?」

「25ですけど」

「なんか、たまに年上に見える」

「老け顔ってことですか」

「違うよばか」

「ばか」って言われたのに、なぜか嫌じゃなかった。むしろちょっと嬉しかった。(俺、もしかしてヤバいのか?)

深夜1時を過ぎた頃、水城さんがデスクに突っ伏して寝てしまった。ブランケットがずり落ちてたので、俺が拾って肩にかけ直した。

近くで見る水城さんの寝顔は、本当にきれいだった。いつもの鋭い目元が閉じられてると、まつ毛が長くて、頬のラインが柔らかくて、唇の形がすごくきれいで。

(見るな見るな、俺。この人は上司だぞ)

自分のデスクに戻って、俺もチェアにもたれて目を閉じた。でも全然眠れなかった。水城さんの「あんた」っていう声が頭の中でずっと繰り返されてた。

うとうとしてたのか、気がつくと3時過ぎで、肌寒さで目が覚めた。エアコンが完全に切れてて、10月の夜中はさすがに冷えた。

水城さんを見ると、椅子の上で丸くなってて、微かに肩が震えてた。

俺は自分のブランケットを持って水城さんのそばに行った。ブランケットを重ねてかけようとしたら、水城さんが目を開けた。

「…寒い」

「ですよね。ブランケットもう一枚かけますね」

「あんたは?」

「俺は大丈夫です、体温高いんで」

「嘘。鳥肌立ってるじゃん」

水城さんが俺の腕を掴んだ。反射的にびくってなった。水城さんの指が冷たかった。

「…くっついたほうが温かいかな」

「え」

「体温高いんでしょ?だったら合理的じゃない?」

いや合理的とかそういう問題じゃないだろって思ったけど、水城さんが本気で寒そうだったし、断る理由も見つからなくて。

給湯室の横にある休憩用の長椅子に二人で並んで座って、ブランケット2枚を重ねて体にかけた。水城さんの肩が俺の腕に触れてて、心臓がうるさかった。

「あったかい…」

小さい声でそう言われて、俺はもう頭の中がぐちゃぐちゃだった。

(落ち着け。寒いだけだ。温まりたいだけだ。それ以上の意味はない)

「ねえ」

「はい」

「私のこと、女として見たことある?」

心臓が止まるかと思った。

「…それ、答えたらまずくないですか」

「今は上司と部下じゃないんでしょ。台風で閉じ込められた人同士」

俺の言葉をそのまま返された。ずるい人だと思った。

「…正直に言っていいなら」

「うん」

「入社した日から、ずっと見てました」

水城さんが息を呑んだのが、隣にいるからわかった。

「怒られるたびに、この人に認められたいって思ってて。それがいつからか、もっと近くにいたいに変わってて。でも上司だし、俺じゃ釣り合わないし、絶対に気づかれちゃいけないって…」

最後まで言えなかった。水城さんが俺の手を握ったからだ。

「私もね」

「え?」

「あんたのこと、ちょっと気になってた。真面目だし、素直だし、怒っても腐らないし。でも部下だし、4つも下だし、彼氏と別れたばっかりだったし…言い訳ばっかりしてた」

暗い休憩室で、水城さんの目がライトの反射で光ってた。

「台風のおかげだね、こんなこと言えたの」

水城さんが俺の方に体を寄せてきて、顔が近くなった。吐息が頬にかかるくらいの距離。

「水城さん…」

「今日だけ、名前で呼んで。美月って」

「…美月さん」

そう呼んだ瞬間、水城さんの唇が俺の唇に触れた。

柔らかかった。ほんの一瞬だったけど、頭の中が真っ白になった。

離れた後、水城さんが恥ずかしそうに目を逸らした。

「ごめん…私から…」

「謝らないでください」

今度は俺から水城さんの頬に手を添えて、もう一度キスした。今度はもっと深く。水城さんの唇が少しだけ開いて、舌が触れ合った。

ブランケットの下で、水城さんの指が俺のシャツの裾を掴んでた。その仕草がたまらなくて、気がついたら水城さんの腰に手を回してた。

「んっ…」

「…いいんですか」

「敬語、やめて。今だけ」

「…いいの?」

「うん」

キスしながら、水城さんのブラウスのボタンに指をかけた。手が震えてた。3年間ずっと見てただけの人に、今触れてるっていう事実が信じられなくて。

(これは夢だ。台風で疲れて、デスクで寝たまま夢を見てるんだ)

ボタンを外すと、白いレースのブラが見えた。スタンドライトの薄い光に照らされて、谷間がうっすら影になってて。

「…じろじろ見ないで」

「ごめん、でも…きれいだなって」

「ばか」

また「ばか」って言われた。でも目は嬉しそうだった。

ブラの上から触れると、想像以上に柔らかくて、両手に収まりきらないくらいだった。水城さんが小さく声を漏らして、俺の肩に額を押し付けてきた。

「あっ…ちょっと…」

「痛い?」

「違う…久しぶりすぎて…感覚が…」

ブラをずらして直接触れた。乳首がすでに硬くなっていて、指先で転がすと水城さんの体がびくっと震えた。

「んぁっ…だめ、そこ弱いの…」

いつも冷静な水城さんが、耳元でそんな声を出してることが俺の理性を溶かしていった。会社のフロアで、外は台風で、二人とも頭がおかしくなってるんだと思った。でも止められなかった。

水城さんのスカートの中に手を入れると、太ももが熱くて、ストッキングの感触がすごかった。付け根のほうに指を滑らせると、ストッキング越しでもわかるくらい濡れてた。

「…わかった?」

「うん」

「恥ずかしいんだけど…」

「俺だって、もうとっくにバレてると思うけど」

水城さんが俺の下半身にちらっと目をやって、耳まで赤くなった。

(主任がこんな顔するんだ…)

ストッキングとショーツを一緒にずらして、直接触れた。指が沈む感触と、水城さんの息が詰まる音がした。

「あぁっ…」

クリを親指で円を描くように触りながら、中指をゆっくり入れていった。水城さんの中は熱くて、きゅっと指を締めつけてきた。

「ん…っ、あ…そこ…」

「ここ?」

「うん…っ、もう少し奥…」

指を深く入れて、少し上向きに曲げると、水城さんの腰がガクッと跳ねた。

「やっ…!そこ…だめ…っ」

だめって言いながら、腰が押し付けてくるのが可愛くて仕方なかった。あの水城主任が、目を潤ませて、唇を噛んで、必死に声を抑えてる。

(会社だもんな、声出せないよな…でも俺以外誰もいないのに)

指を動かし続けると、水城さんの呼吸がどんどん浅くなって、俺の肩を掴む手に力が入った。

「やばい…っ、も…イきそう…っ」

「いいよ、イって」

「あっ…あぁっ…!」

体をぶるっと震わせて、水城さんが俺にしがみついてきた。指が中で締め付けられて、びくびくって痙攣するのが伝わってきた。

しばらく肩で息をしてた水城さんが、顔を上げた。目が潤んでて、頬が紅くて、普段の凛とした表情がどこにもなかった。

「…今度は、あんたの番」

水城さんが俺のベルトに手をかけた。ジッパーを下ろされて、下着越しに握られた瞬間に腰がびくってなった。

「っ…」

「すごく硬い…」

下着から出されて、水城さんの細い指で直接握られた。手が少しひんやりしてて、それが逆に気持ちよかった。

「こういうの、久しぶりだから下手かも」

「全然…気持ちいい…」

水城さんが上下に動かし始めて、親指で先端をくるくる触ってくるのが上手すぎて、すぐにいきそうになった。

「あ、やば…もう…」

「早いね」

「3年間ずっと見てた人にされてるんだから、そりゃ早いよ…」

水城さんがふふって笑って、動きを速めた。

「待って…ほんとに出る…」

「いいよ、出して」

水城さんのその声で限界だった。腰が勝手に動いて、水城さんの手の中に全部出した。

「うっ…あぁ…」

「たくさん出たね…」

水城さんが、汚れた手をティッシュで拭きながら、少し照れたように笑ってた。

(この人のこういう顔、俺しか知らないんだ)

そう思ったら、また欲しくなった。自分でも信じられないくらいすぐに回復してた。

「美月さん…もっと触りたい」

「…うん」

休憩室の長椅子に水城さんを横にして、ブラウスを全部脱がせた。ブラも外すと、きれいな乳房が露わになった。ライトの微かな光で見る水城さんの裸は、息をのむくらいだった。

上から覆いかぶさるようにキスしながら、太ももの間に体を入れた。水城さんが足を開いてくれた。

「入れていい?」

「…ゴム、ないよね」

「…ない」

「…外に出してくれるなら」

頷いて、ゆっくり入れた。水城さんの中がものすごく熱くて、締め付けが強くて、入れた瞬間に声が出た。

「っ…あ…」

「んっ…大きい…」

腰を動かし始めると、水城さんが声を殺すように唇を噛んでた。

「声、出していいよ。誰もいないから」

「…無理…癖で…抑えちゃう…」

「じゃあ、俺にだけ聞かせて」

耳元でそう囁いたら、水城さんの中がきゅってなって、小さな声が漏れた。

「あっ…ん…そう言うの…ずるい…」

腰をゆっくり深く動かすたびに、水城さんの背中が反って、きゅうきゅう中が締まった。俺の首に腕を回して、しがみつくように抱きついてきた。

「あ…っ、もっと…奥…」

言われるままに深く突くと、水城さんの声がだんだん大きくなっていった。もう抑えきれなくなってるのが、たまらなかった。

「美月さん…すごい気持ちいい…」

「私も…っ、あんたのが…すごくいい…」

「あんたのが」って、敬語でもなんでもない剥き出しの言い方をされて、頭がおかしくなりそうだった。

ペースを上げていくと、水城さんの腰がこっちの動きに合わせて揺れて、ぱちゅっと音がするたびにお互いの呼吸が荒くなった。

「あぁっ…やば…また…イきそう…!」

「一緒にイこう…」

「外に…ちゃんと…」

「わかってる…」

水城さんの中が限界みたいに締まって、体がびくんと跳ねた瞬間に俺も限界がきて、ギリギリで抜いてお腹の上に出した。

「っ…はぁ…」

「ん…っ…はぁ…はぁ…」

二人とも荒い呼吸のまま、しばらく動けなかった。水城さんのお腹に散った白いのが、薄明かりの中で生々しかった。

ティッシュで拭きながら、水城さんが小さく笑った。

「会社でこんなことするなんて…最低だね、私たち」

「台風のせいってことで」

「そうだね、台風のせい」

服を直して、また並んで長椅子に座った。ブランケットをかけて、水城さんが俺の肩に頭を預けてきた。

「ねえ」

「うん」

「明日から…どうする?」

「明日から?」

「会社では、今まで通り。主任と部下。私はあんたに厳しくする。それは変えない」

「…うん」

「でも、仕事が終わったら…もし良かったら…」

言いかけて、水城さんが口ごもった。

「ご飯とか、行きましょう。二人で」

「…部下に告白されるの待ってたら、先に言われた」

「告白したつもりなかったんですけど」

「じゃあ今のなし?」

「いや、なしにしないでください」

「どっちなの」

二人で笑った。さっきまであんなことしてたのに、会話は中学生みたいだなと思った。

水城さんの寝息が聞こえ始めたのは4時半頃で、外の風の音は少しだけ弱くなってた。俺はまた眠れなくて、水城さんの頭の重さを肩に感じながら、天井を見てた。

(明日から、いや今日から、この人にまた怒られるんだろうな。資料のここがダメだとか、報告が遅いとか。でも、今の俺はたぶんニヤニヤしちゃうぞ。だって、あの水城主任が俺の肩で寝てるんだから)

朝の6時頃、非常灯が消えてメインの照明が自動で点灯した。パッと明るくなったフロアで、二人して飛び起きた。

「やば、明るっ…」

「台風、過ぎたっぽいですね」

「ですね」って言った瞬間、あ、俺敬語に戻った、って思った。水城さんも一瞬だけ寂しそうな顔をして、でもすぐにいつもの表情に戻った。

「…ブランケット、片付けるから。江藤くんは顔洗ってきて」

主任の声だった。

洗面所で顔を洗いながら鏡を見たら、寝癖がひどいのと、首筋に小さな赤い跡が残ってて焦った。ワイシャツのボタンを一番上まで留めてなんとか隠した。

デスクに戻ると、水城さんは何事もなかったかのようにPCを開いてた。

「中島精機の資料、8時にメールするから。最終確認、もう一回お願い」

「はい」

それから出社してきた同僚たちに「台風の中残ってたんですか?」とか「大丈夫でした?」とか聞かれて、俺は「資料が終わらなくて」って適当に答えた。水城さんは「私は途中からいただけ」って涼しい顔で言ってた。

昼休み、給湯室で一人でコーヒーを淹れてたら、後ろからトンって肩を叩かれた。

振り向くと水城さんが立ってて、小さく折った紙を俺の手に押し込んだ。

開いてみると、水城さんの字で「今週の金曜日、恵比寿のイタリアン。19時。遅れたら怒るから」って書いてあった。

(メールでもLINEでもなくて、手書きのメモかよ…)

社内で証拠が残らないようにってことなんだろうけど、そのアナログ感がむしろグッときてしまった。

あの金曜日の恵比寿のイタリアンがどうなったかは、また別の話です。ただ一つ言えるのは、あれから水城さんは仕事中はもっと厳しくなったということ。

でも俺にだけ、たまにこっそり渡してくるメモの文字は、あの台風の夜みたいに柔らかい。

そのギャップにやられて、俺は今も完全に沼ってます。


編集部プロフィール画像

編集部が運営。「あの夜」で読める恋の体験談を厳選して公開しています。