倉庫バイトに来た派遣のギャルが俺にだけタメ語で、夏が終わる頃には取り返しがつかなくなっていた

これ書いてる今も正直まだちょっと信じられないっていうか、あの夏のこと思い出すと心臓がギュッてなるんだけど、まあ聞いてください。

俺は当時24歳で、埼玉の三郷にある物流倉庫で正社員やってました。某大手通販サイトの下請けみたいなとこで、毎日ダンボールをピッキングして仕分けして、台車押して、みたいな。地味です。超地味。高校の同級生が渋谷のIT企業でMacBook開いてる横で、俺は汗だくで段ボール積んでた。年収は300万ちょい。彼女いない歴2年。顔面偏差値は中の下。身長172のやせ型で、唯一の取り柄は体力だけっていう、まあそういう感じの男です。

で、毎年7月になるとお中元シーズンで荷物がバカみたいに増えるから、派遣が何人か入ってくるのね。大体おばちゃんか、フリーターっぽい兄ちゃんか、たまに大学生のバイトが来るぐらいで、正直あんまり期待してなかった。

7月の第2月曜日。朝礼で所長の中田さんが「今日から派遣さん3人入ります」って言って、事務所のドアが開いた。

最初に入ってきた2人はまあ予想通りっていうか、40代ぐらいのおばちゃんと、ちょっとぽっちゃりした大学生の男。うん、いつものやつ。

で、3人目。

(は?)

俺の脳がバグった。

茶髪のゆるい巻き髪に、つけまバチバチの目元。日焼けした肌にピアス3つ。白のクロップドTシャツからへそが見えてて、デニムのショートパンツから伸びてる脚が長い。身長163ぐらいだと思うけど、ヒールのサンダル履いてたからもっとデカく見えた。

顔は――みちょぱをもうちょい丸くした感じ。目がでかくて、まつげが長くて、唇がぷっくりしてて。胸はたぶんEかFで、あのクロップドTからでもわかるぐらいの存在感。ケツもしっかりデカい。

なんでこんなギャルが三郷の倉庫に? って全員思ったと思う。おっさんたちの目が明らかに泳いでた。

(いやいやいや。場違いすぎるだろ)

「あ、りおって言います。よろしくお願いしまーす」

声まで可愛い。語尾が全部ちょっと上がる、ギャル特有のアレ。

所長がいろいろ説明して、りおの教育係は誰にするかって話になったとき、所長が俺を指差した。

「田村、お前若いし頼むわ」

いや待って。なんで俺。おっさんたちのほうが経験長いのに。

あとから聞いたら、「若い女の子にオッサンつけたらセクハラ案件になりかねないから」だと。まあ、そりゃそうか。

で、りおに倉庫内を案内することになった。

「田村です。よろしく」

「あ、田村さん? 何歳ですか?」

「24」

「え、若! うち21なんですけど、3つしか変わんないじゃないですか」

(うちって言うんだ……)

「じゃあタメ語でいいっすか? 敬語つかれるんで」

「え、まあ……いいけど」

断れるわけないだろ。この顔面でそんなこと言われて。

「やった。じゃあタムラン、よろしくね」

「タムラン?」

「田村だからタムラン。かわいくない?」

かわいくねえよ。でも訂正する気力もなかった。

それから倉庫内を歩きながらピッキングの手順とか説明したんだけど、りおが全然聞いてなくて、スマホいじってるし、「暑くない? まじ暑くない?」って3回ぐらい言ってた。

「ここ空調あるの棚の2番エリアだけだから、基本暑いよ」

「うそでしょ。うち暑いのむりなんだけど」

「じゃあなんで倉庫の派遣来たの」

「友達に紹介されて。時給いいし、なんかラクそうだったから」

ラクじゃないです。全然ラクじゃない。

初日、りおは3回ピッキングミスして、台車にダンボール積みすぎて崩して、休憩室の自販機の前で30分ぐらいスマホ見てた。

正直、すぐ辞めるだろうなって思った。

ところが辞めなかった。2日目も来たし、3日目も来た。相変わらずミスはするし要領悪いんだけど、なんか必死にやってるのは伝わってきた。

「タムラン、これどこの棚?」

「3-Cの上段。脚立使って」

「え、うち脚立こわい」

「じゃあ俺が取るから下で受けて」

「ありがとー。タムランやさしー」

こういうのをいちいち嬉しそうに言うのがずるい。

3日目の昼休み。俺がいつも飯食ってるバックヤードの隅っこに、りおが弁当持ってきた。

「ここ座っていい?」

「別にいいけど、他の人と食べないの?」

「おばちゃんたちと話合わないし。タムランのほうがいい」

そう言って俺の隣に座った。近い。シャンプーの匂いがする。

「タムランってさ、彼女いんの?」

「いない」

「えー、なんで?」

「なんでって言われても。モテないし」

「うそー。やさしいのに」

(やさしいだけでモテたら苦労しねえんだよ)

「りおは? 彼氏」

「いない。最近別れた」

「へえ」

「元カレがまじでクソで。浮気してたの。しかも相手がうちの友達」

「それはキツいな」

「ね。だからもう男信用してない」

言いながらコロッケ食べてるの、なんかちょっと面白かった。

1週間もすると、りおはだいぶ仕事に慣れてきた。ミスも減ったし、台車の押し方もサマになってきた。ただ、相変わらず俺にだけタメ語で、他の社員には一応敬語使ってた。

「りお、所長には敬語なのに俺にはタメ語なの不公平じゃね?」

「え、だってタムラン友達じゃん」

友達。24歳正社員と21歳派遣が。まあいいけど。

問題は、りおの服装だった。

倉庫作業だから基本的に動きやすい格好ならなんでもいいんだけど、りおは毎日攻めてた。キャミソールにショートパンツとか、背中が大きく開いたタンクトップとか。しゃがむたびに胸元が見えるし、脚立に登るたびにショートパンツの裾から太ももの裏側が丸見えになる。

俺は教育係だから近くにいなきゃいけないわけで、目のやり場に本気で困った。

ある日、りおが高い棚の荷物を取ろうとして脚立に登ったとき、バランス崩してグラッとなった。

咄嗟に支えた。腰に手を回す形になって、りおの体が俺の胸にぶつかった。

「……っ」

「だ、大丈夫?」

「ありがと……びっくりした」

りおが振り返って、顔が近かった。20センチもないぐらい。まつげ長いなとか、唇にグロス塗ってるなとか、そういうどうでもいいことが一瞬で頭に入ってきた。

「タムラン、手」

「え?」

「腰、まだ持ってる」

「あ、ごめん」

慌てて離した。りおは笑ってた。

「別にいいけどね」

(いいってなんだよ)

心臓がバクバクしてた。でも、これは多分俺だけだ。ギャルってこういうの慣れてるだろうし、深い意味はない。そう自分に言い聞かせた。

7月の最終週。金曜の夜、仕事終わりにりおからLINEが来た。

「タムラン明日ひま?」

正直ひまだった。でもすぐ返すのもなんかアレだから5分待ってから返した。

「ひまだけど」

「新三郷のららぽーと付き合って。買い物したい」

「え、俺と?」

「他に誰がいんのよ笑」

翌日、新三郷のららぽーとで待ち合わせた。

りおは私服で来てた。白のワンピースにサンダル。倉庫で見るのと全然違う。ちゃんとした女の子だった。(いや倉庫でもちゃんとした女の子だけど)

「あ、タムラン。おはよ」

「おう」

「なに? じろじろ見て」

「いや、私服だと雰囲気違うなって」

「え、かわいい?」

「まあ……うん」

「照れてんじゃん笑」

うるせえ。

ららぽーとの中をぶらぶら歩きながら、りおの買い物に付き合った。服屋でりおが「これどう思う?」って聞いてくるたびに「いいんじゃね」って答えてたら、「タムランそればっか。ちゃんと見て」って怒られた。

途中でクレープ屋に寄って、2人でベンチに座って食べた。

「ねえタムラン」

「ん」

「うちさ、最初まじで倉庫辞めようと思ってたんだよね」

「だろうな。向いてないもんな」

「ひどくない? でもまあ、そう。暑いし重いし虫出るし」

「じゃあなんで続けてんの」

「……タムランがいるから」

クレープの生クリームが口の端についてた。本人は気づいてない。

「は?」

「いや、だってタムランまじ優しいし、仕事ちゃんと教えてくれるし。他の職場こんな人いなかったもん」

「それは教育係だからでしょ」

「そういうのじゃなくて。うちがミスっても怒んないし、さりげなくフォローしてくれるし」

「……まあ、怒ってもしょうがないし」

「ほら、そういうとこ」

りおがこっちを見て笑った。生クリームついたまま。

「口、ついてるよ」

「え、まじ? どこ?」

「右」

りおが手の甲で拭おうとして、全然違うとこ拭いてた。

「違う。もっと右」

「ここ?」

「だから違うって」

めんどくさくなって、俺の親指でりおの口元を拭いた。

「……」

りおが固まった。

「取れた」

「……うん」

りおが急に黙って、顔がちょっと赤くなってた。ギャルって赤面するんだ、って初めて知った。

(あ、やべ。やりすぎたか)

気まずい沈黙が3秒ぐらいあって、りおがスマホ取り出して「あ、そろそろ行こ。次あの店見たい」って早口で言った。

8月に入って、猛暑がヤバかった。三郷の倉庫は空調がほぼ死んでて、2番エリア以外はサウナ状態。俺は慣れてるけど、りおはキツそうだった。

ある日の午後、りおが荷物運んでるときに急にフラッとした。

「りお?」

返事がない。膝から崩れ落ちそうになったのを慌てて抱きとめた。

「おい、大丈夫か」

「……ん、ちょっとくらくらする」

軽い熱中症だった。休憩室に連れてって、冷たい水飲ませて、首の後ろに保冷剤当てた。

「ごめん、迷惑かけて」

「いいから横になってろ。今日はもう上がっていい」

「でも……」

「いいから」

りおが休憩室のソファに横になって、俺はとりあえず仕事に戻ろうとした。

「タムラン」

「ん?」

「……ありがとね」

「別に。水ちゃんと飲めよ、明日から」

「うん」

その日の夜、りおからLINEが来た。

「今日はほんとにありがとう」

「いいよ。体調どう?」

「もう平気。ごはん食べて元気になった」

「よかった」

「ねえ」

「なに」

「タムランってさ、うちのこと、どう思ってる?」

(どう思ってるって……)

返信に迷った。15分ぐらい画面見つめてた。

「普通に、いい子だなって思ってる」

「いい子かぁ」

「なに、不満?」

「不満っていうか」

「?」

「なんでもない。おやすみ」

おやすみって返したけど、全然眠れなかった。

(あいつ、なんなんだよ。「どう思ってる?」って)

多分、俺はこの時点でもう自覚してた。してたけど、認めたくなかった。だって相手はギャルで、派遣で、21歳で、俺とは住んでる世界が違う。ららぽーとで生クリーム拭いただけで心臓止まりそうになる男と、インスタのフォロワー3000人いるギャルが釣り合うわけない。

8月の第3週、お盆で倉庫が3日間休みになった。

お盆明けの月曜、りおがいつもより30分早く来てた。髪がちょっと明るくなってて、ネイルが新しくなってた。

「おはよ、タムラン。お盆なにしてた?」

「なんも。家でゲームしてた」

「うわ、つまんね笑」

「うるせえ。りおは?」

「友達と海行った。江ノ島」

「いいな」

「でもさ、海行っても全然楽しくなかったんだよね」

「なんで?」

「……なんでだろうね」

言いながらりおは作業に戻った。俺の方は見なかった。

その週の水曜。残業でりおと2人だけ残った。

8月でも18時半を過ぎるとさすがに薄暗くなってきて、倉庫の中は蛍光灯の白い光だけになる。他のパートさんは帰って、事務所にも誰もいない。

「ふぅ、終わったー」

りおが台車をガコンと壁際に止めて、額の汗を腕で拭った。タンクトップの脇から汗で肌が光ってた。

「お疲れ。今日多かったな」

「ね。もう腕パンパン」

りおが俺の隣に座って、ペットボトルの水を一気に半分飲んだ。

「タムラン」

「ん」

「うちさ、来月で派遣の契約切れるんだよね」

知ってた。夏季限定の契約だから、9月末まで。あと6週間ぐらい。

「そうだな」

「……寂しくない?」

「まあ、慣れたし」

我ながらヘタクソな返答だった。慣れたし、じゃねえだろ。

「うちは寂しいよ」

「そう」

「そうって何。冷たくない?」

りおが頬を膨らませた。21歳がやるには反則だった。

「冷たいんじゃなくて、なんて言えばいいかわかんないだけ」

「じゃあ思ったこと言えばいいじゃん」

「……俺も、寂しい」

言った瞬間、顔が熱くなった。こんなこと言う予定じゃなかった。

りおが俺の顔を見て、ちょっと目を見開いた。

「……ほんとに?」

「ほんとに」

「じゃあさ」

りおが体ごとこっちを向いた。膝が俺の太ももに触れた。

「うちのこと、好き?」

直球すぎる。ギャルってこうなの? もうちょっとこう、段階とかあるだろ。

「……嫌いじゃない」

「なにそれ笑。好きか嫌いかで聞いてるんだけど」

「……好き、だと思う」

「思うって何。はっきり言ってよ」

「好きだよ。りおのこと」

言ってしまった。倉庫のバックヤードで。蛍光灯の下で。汗だくで。シチュエーション最悪だ。

「……やっと言った」

りおが笑った。泣きそうな顔で笑ってた。

「うちもね。タムランのこと、好き。たぶん7月のあの脚立のときから」

「あれ? 落ちそうになったやつ?」

「うん。腰持ってくれたとき、すごいドキドキした。それからもうずっと」

「ずっとって……3週間前じゃん」

「3週間ずっとは"ずっと"でしょ」

りおの理論がよくわからなかったけど、そんなことはどうでもよかった。

気づいたらキスしてた。

どっちからかは覚えてない。多分同時だった。りおの唇は柔らかくて、グロスの甘い味がした。

「ん……」

離れて、見つめ合って、また唇を重ねた。今度はりおの舌が入ってきて、俺もそれに応えた。さっきまでの汗の匂いに、りおのシャンプーの匂いが混ざって、頭がぼんやりした。

「……タムラン」

「ん」

「ここじゃ嫌だ」

「だよな」

「うちの家、ここからチャリで10分なんだけど」

「……行っていいの」

「来て」

りおのアパートは三郷駅から歩いて7分ぐらいの1Kだった。築浅で、女の子の部屋って感じのいい匂いがした。

「散らかっててごめんね。飲み物出す」

「いいよ、座ってて」

冷蔵庫からりおが麦茶を出してくれた。

2人でフローリングに座って、麦茶飲みながら、なんかぎこちなかった。さっきまであんなに自然にキスしてたのに、部屋に入った途端に急に意識してしまう。

「ねえ、シャワー浴びていい? 汗やばいから」

「あ、うん。どうぞ」

りおがバスルームに消えて、シャワーの音が聞こえてきた。

(俺、なにしてんだろ。ギャルの家に来ちゃったよ)

10分ぐらいでりおが出てきた。白いTシャツにショートパンツっていうラフな格好で、髪が濡れてた。すっぴんに近い顔で、倉庫で見るのともららぽーとで見るのとも違って、なんか、すごく綺麗だった。

「タムランも浴びなよ。タオル置いとくから」

言われるがままにシャワーを浴びた。りおのシャンプー使っていいか迷ったけど、他になかったから使った。甘い匂いのやつ。

風呂から出ると、りおがベッドの端に座ってた。

「あ、服これ使って。元カレが置いてったやつだけど」

「元カレの……」

「いやそこ気にする? 洗濯してあるから」

まあいいか。Tシャツとスウェットを借りて着替えた。

りおの隣に座った。ベッドが狭いから、肩が触れた。

「ねえ」

「ん」

「さっきの、倉庫でのキス。あれ、うちの初めてのキスじゃないけど、一番ドキドキしたキスだった」

「……俺も」

「タムランって、経験あるの?」

「元カノと1回だけ」

「ふーん。うちは2回」

「元カレと?」

「うん。でもさ、元カレのときは全然気持ちよくなかった。なんか義務みたいで」

「……」

「タムランとは違うかなって思って」

りおが俺の方を向いた。目が潤んでた。

「もっかい、キスして」

俺はりおの頬に手を添えて、唇を重ねた。ゆっくり、さっきより丁寧に。りおの手が俺のTシャツの裾を掴んでた。

舌が絡まって、息が荒くなって、気づいたらりおを押し倒す形になってた。

「ん……タムラン」

「ごめん、重い?」

「ううん。大丈夫」

りおの髪がベッドに広がって、見上げてくる目がとろんとしてた。首筋にキスしたら、小さく声が漏れた。

「あ……」

りおのTシャツの裾に手をかけた。一瞬りおの体が強張った。

「……脱がしていい?」

「うん」

Tシャツを脱がすと、ブラつけてなかった。風呂上がりだから当然なんだけど、直に見えた瞬間、息が止まった。

形が綺麗で、大きくて、肌が日焼けとの境目でくっきり白くて。

「そんな見ないでよ……恥ずかしいじゃん」

「いや、すごい綺麗だなって」

「……ばか」

りおが顔を手で覆った。指の隙間から目だけ見えてた。

胸に触れた。柔らかくて、手に収まりきらない。指で先端を転がしたら、りおの体がぴくってなった。

「ん……」

「感じる?」

「わかんない……でも、なんか変な感じ」

口に含んだ。りおの手が俺の頭を掴んだ。

「あっ……やばい、それ……」

舌で転がしながら、もう片方の手で右の胸を揉んだ。りおの呼吸が荒くなっていく。

「タムラン……下も、触って」

ショートパンツの上から触ると、もう湿ってた。ゆっくりパンツごと下ろすと、りおが脚を閉じようとした。

「恥ずかしい……電気消して」

「やだ。見たい」

「最低……」

言いながらも脚を開いてくれた。

直接触れた。ぬるっとした感触。指を滑らせると、りおが腰を跳ねさせた。

「あっ、そこ……」

「ここ?」

「うん……そこ、いい……」

ゆっくり指を動かしながら、りおの反応を見た。目を閉じて、唇を噛んで、たまに我慢できなくなって声が漏れる。普段あんなに騒がしいギャルが、こういうとき意外と声を抑えるんだなって思った。

「タムラン……もう、入れて」

「いいの?」

「うん……タムランとしたい」

元カレの置いてったTシャツの上に、りおが裸で横たわってて、俺に「入れて」って言ってる。この状況のシュールさに一瞬笑いそうになったけど、りおの目が本気だったから笑えなかった。

「ゴム、ある?」

「……ない」

「俺も持ってきてない」

「……外に出してくれれば、いいよ」

まじか。

(いいのか。ほんとに)

りおの脚の間に体を入れた。先端を当てると、りおが息を呑んだ。

ゆっくり入れていった。

「っ……あ……」

「痛い?」

「ちょっとだけ……でもいい、そのまま」

奥まで入ったとき、りおが俺の背中に手を回した。爪が食い込むぐらい強く。

「動くよ」

「うん……」

ゆっくり動き始めた。りおの中はきつくて、熱くて、信じられないぐらい気持ちよかった。

でも、それ以上に、りおの顔を見てたら胸が痛くなった。こんな子が俺なんかと。派遣の契約が切れたら終わるのに。こんなの、絶対よくない。

「タムラン……気持ちいい?」

「うん……やばい」

「うちも……なんか、前と全然違う」

「違うって?」

「全部、ちがう。気持ちいいし……怖くない」

その言葉で理性が飛んだ。

腰の動きが速くなって、りおの声も大きくなった。

「あっ、あ……タムラン、すき……っ」

「俺も好き……」

「もっと……」

りおの脚が俺の腰に巻きついた。

「やばい……出そう」

「だめ、中はだめ……」

「わかってる……」

ギリギリまで粘って、引き抜いた。りおのお腹に出した。びゅるって2回、どくどくって3回ぐらい。

「はぁ……はぁ……」

「……いっぱい出たね」

「ごめん、ティッシュ」

「あそこ」

ティッシュでりおのお腹を拭いた。

「ねえ、タムラン」

「ん」

「今の、点数つけるなら?」

「え、点数?」

「うん。100点満点で」

「……85点」

「なにそれ! 低くない?」

「いや、次はゴムつけたいから。マイナス15点はそこ」

「あー……たしかに」

りおがケラケラ笑った。裸のまま、お腹にティッシュの跡がついたまま、ケラケラ笑ってた。

「じゃあ次は100点にしてね」

「次あんの?」

「あるに決まってんじゃん。バカなの?」

バカはお前だろって思ったけど、言わなかった。

10分ぐらいぼーっとして、りおが「もっかいしていい?」って聞いてきた。

「え、もう?」

「だってタムランともっとしたいもん」

今度はりおが上になった。俺の上に跨がって、自分で腰を動かし始めた。

さっきとは違う角度で入って、りおが「あ、これやばい」って言った。

「なにが」

「めっちゃ奥当たる……」

りおが腰を前後に動かすたびに、胸が揺れた。下から見上げるその光景が嘘みたいだった。三郷の倉庫でダンボール積んでた俺が、こんな子の下にいるなんて。

「タムラン、触って」

「どこ」

「胸……」

両手で胸を掴んだ。りおが甘い声を出して、腰の動きが速くなった。

「あっ、やば……きもちい……」

「りお……」

「タムランも気持ちい?」

「うん……めちゃくちゃ」

さっきとは違う気持ちよさだった。1回目は必死で、2回目は少し余裕ができて、りおの体を見る余裕ができた。日焼けの跡、腰のくびれ、揺れる髪、閉じた目。全部、きれいだった。

「あ、あ……っ、うち、もう……っ」

りおの動きが不規則になって、中がきゅっと締まった。

「い……く……っ」

りおが俺の胸に倒れ込んできた。全身で震えてた。

「はぁ……はぁ……」

「大丈夫?」

「うん……すごかった」

「俺、まだなんだけど」

「あ、ごめん……じゃあタムランがして」

体勢を入れ替えて、今度は後ろから入った。

「あ……っ、深い……」

さっきイったばかりだからか、りおの反応が敏感になってた。ちょっと動くだけで声が出る。

「タムラン……もう出していいよ」

「でも中は」

「お腹でも背中でもいいから……っ」

腰を掴んで、奥まで突いた。りおのシーツの上に撒き散らされた髪が汗で湿ってた。

「ああっ……っ」

限界が来て、引き抜いて、りおの背中に出した。

「……ん」

「ごめん、背中」

「いいよ……あったかい」

しばらく2人とも動けなくて、そのまま横になった。りおが俺の腕の中に収まった。小さかった。あんなに存在感でかいのに、体は小さかった。

「ねえタムラン」

「ん」

「うち、9月で契約終わるけどさ」

「うん」

「終わっても、会ってくれる?」

「当たり前だろ」

「ほんとに?」

「ほんとに。つか、りおが嫌になるまで会う」

「……嫌になるわけないじゃん」

りおが俺のTシャツ――正確にはりおの元カレのTシャツ――を握りしめた。

「ていうか、このTシャツ捨てよ。明日タムランの買いに行こ」

「元カレの服着せといてそれ?」

「だって、もう元カレの匂いしない。タムランの匂いしかしない」

くさいセリフだけど、りおが言うとなんか許せた。

窓の外が明るくなり始めてた。三郷の空は、きれいな朝焼けだった。武蔵野線の始発の音が遠くから聞こえた。

「ねえ、タムラン」

「ん」

「付き合おう。ちゃんと」

「……うん」

「返事軽くない?」

「いや、嬉しすぎて言葉が出てこない」

「なにそれ笑。やっぱタムランって面白い」

りおが俺の胸に顔をうずめた。肩が震えてて、笑ってるのか泣いてるのかわからなかった。多分、両方だった。

結局あの夏、りおは9月末まで倉庫で働いて、契約が切れた。でも俺たちは別れなかった。

今も付き合ってる。りおは別の仕事を見つけて、たまに倉庫に差し入れ持って来る。おっさんたちに「タムランの彼女ちゃん」って呼ばれて、りおはまんざらでもなさそうにしてる。

三郷のダンボールまみれの倉庫で始まった恋が、こんなに続くとは思わなかった。

でもまあ、人生ってそういうもんなのかもしれない。期待してないところに、とんでもないのが派遣されてくる。


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