社会人4年目、27歳の話です。
俺はまあ、よくいる量産型のサラリーマンで、新宿三丁目にある中堅のIT企業で営業をやってました。身長は172で、顔面偏差値は自分で言うのもあれだけど48ぐらい。合コンでは空気、飲み会では幹事、みたいなポジションのやつです。
で、その年の4月に営業部に新卒が3人入ってきたんですけど、そのうちの1人がちょっとヤバかった。
名前は伏せるけど、ここでは「後輩ちゃん」とだけ。22歳。身長158ぐらいで、髪は鎖骨ぐらいのセミロング。顔は今田美桜をもうちょい丸くした感じで、目がでかくてまつ毛が長い。Eカップあるらしいっていうのは後から本人に聞いた話だけど、初日からブラウスの第二ボタンあたりがパツパツで、(おいおい、ここは職場だぞ…)って心の中でツッコんでた。
でもまあ、こういう子って大体チャラい先輩とかイケメン同期に捕まるもんで、俺みたいな地味な先輩は「仕事教えてくれる便利な人」枠だろうなと。実際、後輩ちゃんの教育係は俺だったんですよ。
最初の1ヶ月は普通だった。敬語もちゃんとしてたし、メモも取るし、素直に言うこと聞くタイプ。ただ、妙に距離が近いなとは思ってた。デスクで教えてるときに肩がぶつかるぐらい寄ってきたり、飲み会で隣に座ってきたり。(いやいや、新卒ってこんなもんだろ。深読みすんなよ俺。)って自分に言い聞かせてた。
話が動いたのは6月の頭だった。
月末の経費精算の確認を俺がやることになってて、後輩ちゃんが出してきた領収書をチェックしてたんですよ。そしたら、1枚だけ明らかにおかしいのがあった。
新宿のとある居酒屋の領収書で、日付は5月の金曜日。金額は28,000円。但し書きは「お客様接待」。でも、その日の後輩ちゃんのスケジュールには接待の予定なんか入ってなかった。っていうか新卒が単独で接待なんかするわけない。
(これ、私的な飲み代を経費で落としてるやつじゃん…)
正直、金額的にはよくあるグレーゾーンで、見て見ぬふりする先輩も多いと思う。でも俺は教育係だし、こういうのは早めに言っておかないとクセになる。
翌日、後輩ちゃんをミーティングルームに呼んだ。
「あのさ、この領収書なんだけど」
後輩ちゃんの顔色が一瞬で変わった。
「あ…それ…」
「5月23日、接待って書いてあるけど、この日って予定入ってなかったよね?」
「…すみません」
下を向いて唇を噛んでる。あ、泣きそうだ。
「あの、大学の友達と飲んで…お金なくて…つい…」
「いや、気持ちはわかるけどさ。これバレたら始末書じゃ済まないよ?下手したらクビだし」
「…っ」
ぽろぽろ泣き出した。(うわ、泣かれると困るんだよな…)
「先輩、お願いします…誰にも言わないでください…もう絶対しません…」
「落ち着けって。今回は俺が自腹で補填しとくから」
「え…」
「28,000円ぐらいなんとかなるし。ただ、二度とやるなよ」
「先輩…ありがとうございます…本当にごめんなさい…」
涙でぐちゃぐちゃの顔で頭を下げられて、(いやこの顔でも可愛いのずるくないか…)とか思ってた自分が情けなかった。
で、この一件から後輩ちゃんの態度が明らかに変わった。
「先輩」じゃなくて「先輩っ」になった。語尾に「っ」がつくようになったというか、声のトーンが半音上がったというか。お昼に「先輩、一緒に食べませんか?」って毎日誘ってくるし、缶コーヒー差し入れてくるし、俺のデスクの横を通るたびに肩をぽんって叩いてくる。
(これ絶対、秘密握られてるから懐柔しようとしてるだけだよな…)
って頭ではわかってた。わかってたけど、今田美桜似のEカップに毎日笑顔向けられたら、そりゃ心拍数は上がるわけですよ。俺だって人間だし。
7月に入って、後輩ちゃんと二人で残業する日があった。
オフィスにはもう俺たちしかいなくて、エアコンの音だけがしてた。22時過ぎ。
「先輩、これ確認お願いしてもいいですか?」
「ん、どれ?」
後輩ちゃんが俺の椅子の後ろに立って、画面を覗き込んできた。シャンプーの匂いがした。いや、なんか甘い匂いだった。柔軟剤かもしれない。とにかく、いい匂いだった。
「ここの数字なんですけど…」
顔が近い。横を向いたら唇が当たりそうなぐらい近い。
「あー、ここは合計を出し直せばいけると思う」
「なるほど…先輩ってほんと頼りになりますよね」
「いや、こんなの基本だから」
「ねえ先輩、お腹空きません?近くの松屋でも行きます?」
結局、松屋じゃなくて靖国通り沿いの居酒屋に入った。後輩ちゃんが「せっかくだし」って言うから。
生ビールで乾杯して、枝豆つまみながら話してたんだけど、酒が入ると後輩ちゃんはよく喋る。大学時代の話、地元の広島の話、付き合ってた彼氏がクソだった話。
「あいつマジで最悪だったんですよ。誕生日にくれたプレゼントがメルカリの転売品で、値札シールの下にメルカリのロゴ入ってて」
「それは確かに最悪だな笑」
「でしょ?しかも問い詰めたら逆ギレするし。男ってほんとそういうとこありますよね」
「俺もその括りに入ってんの?」
「先輩は…違いますよ」
急に声のトーンが下がって、ジョッキ越しにこっちを見てくる。(やめろ、その目。酔ってるだけだ。)
3杯目を飲み終わったあたりで、後輩ちゃんがぽつりと言った。
「先輩って、あの領収書の件、他の人に言いました?」
「言うわけないだろ」
「ですよね…先輩、優しいから」
「優しいっていうか、言う必要がないだけ」
「…私、先輩に弱み握られてるのに、全然怖くないんですよ。それがなんか不思議で」
「弱みって…そんな大げさなもんじゃないし」
「でも先輩がその気になったら、私クビになるかもしれないんですよ?」
「ならないって。もう終わった話だし」
「ふふ、やっぱ先輩って…好きかも」
心臓が止まるかと思った。いや正確には止まってない、倍速で動いてた。
「…酔ってんだろ。水頼もうか」
「酔ってますけど、嘘は言ってないです」
目を逸らさないでこっちを見てる。(マジでやめてくれ、俺ここでカッコつけられるほど強くないんだよ…)
その日は何もなかった。タクシー呼んで後輩ちゃんを乗せて、俺は丸ノ内線で帰った。帰りの電車の中で、さっきの「好きかも」がリフレインしてて、荻窪で降り過ごした。
翌週、後輩ちゃんの態度は変わらなかった。っていうか、もっと距離が近くなった。
給湯室で二人になったとき、袖を引っ張ってきて。
「先輩、この間のことなんですけど」
「あー…忘れていいよ、酔ってただけだろ」
「忘れないでください」
真顔で言われた。
「酔ってたけど、本気です。先輩のことが好きです」
「いや、でも俺はお前の教育係だし、5つも年上だし…」
「5つ上がなんですか。私の元カレ9つ上でしたけど」
「いやそいつメルカリ転売マンだろ、比較対象として不適切だろ」
「あはは、確かに笑」
笑った顔がずるい。こういう顔されると、断る理由が全部どうでもよくなってくる。
でも、ここで俺は踏みとどまった。理由は一つで、(俺が弱みを握ってる状態で付き合うのは、それってどうなんだ)って思ったから。
後輩ちゃんが本当に俺のことを好きなのか、それとも「秘密を守ってくれる人を手放したくない」だけなのか。その区別が俺にはつかなかった。
7月の終わり、部署の飲み会があった。
新宿のいつもの居酒屋で、15人ぐらい。後輩ちゃんはいつも通り俺の隣に座ったけど、その日は同期のイケメン営業マン――仮にBとする――がやたら後輩ちゃんに絡んでた。
(まあ、Bだもんな。身長180あるし、顔は目黒蓮って言われてるし、そっち行くよな普通。)
正直、嫉妬してた。自分でも驚くぐらい。
Bが後輩ちゃんにLINE交換しようって言ってるのが聞こえて、俺はトイレに立った。
用を足して戻ろうとしたら、廊下で後輩ちゃんが待ってた。
「先輩」
「お、どした」
「B先輩にLINE聞かれたんですけど」
「ああ、教えてやれよ。Bいいやつだし」
「断りました」
「え、なんで」
「好きな人がいるからって言いました」
「…」
「先輩って鈍いですよね。もう3回告白してるのに」
3回? 居酒屋のと給湯室のと…あ、缶コーヒーに付箋でメッセージ書いてくれてたあれ、告白だったのか。「いつもありがとうございます、大好きです」って書いてあったけど、社交辞令だと思ってた。
「あの付箋…」
「やっと気づいた?」
(俺、マジでバカだったのか…?)
「でもさ、俺はお前の弱み握ってる側の人間だぞ。そういう相手を好きになるって、ストックホルム症候群みたいなもんじゃないのか」
「はあ?何言ってんですか」
後輩ちゃんがちょっと怒った顔をした。
「確かにあの件で先輩のこと意識し始めたのは事実ですよ。でもそれは弱みがどうとかじゃなくて、自腹切ってまで私のこと守ってくれたからです。上に報告すれば済む話なのに、わざわざ自分のお金で」
「いや、あれは…」
「しかもそのあと一回も恩着せがましいこと言わないし、態度も変わらないし。それで好きにならない方がおかしいでしょ」
「…」
「先輩こそ、私のこと何とも思ってないんですか?」
思ってた。めちゃくちゃ思ってた。毎日顔見るのが楽しみだったし、隣に座ってくると嬉しかったし、Bと話してるの見て胃が痛くなるぐらいには好きだった。
「…思ってないわけ、ないだろ」
「じゃあ答え出てるじゃないですか」
居酒屋の廊下で、壁にもたれた後輩ちゃんが手を伸ばしてきて、俺のネクタイを掴んだ。引き寄せられて、顔が近づいて。
「先輩、キスしてください」
「ここ店の廊下だぞ」
「誰も見てないです」
酒の匂いと甘い匂いが混ざってた。近くで見ると、まつ毛ほんとに長くて、唇にグロスが光ってて。
(ああ、もう無理だ。)
軽く、唇を合わせた。一瞬だけのつもりだったのに、後輩ちゃんが俺のシャツの裾を掴んで離さなくて、結局5秒ぐらいくっついてた。
唇を離したら、後輩ちゃんが真っ赤な顔で笑ってた。
「やっと。ずっと待ってたんですよ」
飲み会はそのあと適当に切り上げて、二人で店を出た。
新宿の街はまだ賑やかで、歌舞伎町の方からネオンが見えてた。酔い覚ましに歩こうって言って、花園神社の横を通って明治通りに出た。
後輩ちゃんが俺の腕に自分の腕を絡めてきた。
「先輩、今日うち来ませんか」
「…え?」
「私、高田馬場なんですけど。歩いても20分ぐらいだし」
「いや、さすがに今日は…」
「さすがにってなんですか。キスはしたのに」
「順番ってもんがあるだろ。まずちゃんと付き合ってから…」
「じゃあ今ここで付き合ってください。はい、付き合いました。さ、行きましょう」
強引すぎる。でも、断る理由がもう見つからなかった。
高田馬場の後輩ちゃんのアパートは、早稲田通りから一本入った住宅街にあった。1Kで、小綺麗にしてたけど、玄関にスニーカーが5足ぐらい並んでて、(靴好きなのか)とか場違いなことを考えてた。
「散らかってるけど…上がってください」
「おじゃまします」
部屋に入ると、テレビの横にぬいぐるみが並んでて、ベッドの上にクッションが3つ。女の子の部屋だなって感じ。甘い匂いがした。部屋全体が後輩ちゃんの匂いだった。
「なんか飲みます?ビールとレモンサワーしかないけど」
「じゃあレモンサワーで」
フローリングに座って、ローテーブル越しに缶を開けた。
「先輩、緊張してます?」
「してない」
「嘘。缶持つ手震えてるじゃないですか」
(バレてた。)
「私だって緊張してますよ。好きな人を家に呼ぶの、初めてだし」
「元カレは?」
「あいつは向こうの家ばっかで。私の部屋には一回も来たことないです」
「そっか」
「先輩が初めてなんです、この部屋に入った男の人」
なんかその一言で、腹の底がぎゅっとなった。
レモンサワーを半分飲んだぐらいで、後輩ちゃんが隣に移動してきた。
「ねえ、もう一回キスしていいですか」
返事する前に唇が重なった。今度はさっきと違って、柔らかくて、ゆっくりで、舌が入ってきた。
「ん…」
後輩ちゃんの手が俺の首の後ろに回って、髪の生え際あたりを指でなぞってくる。ぞくっとして、腰が浮いた。
唇を離すと、後輩ちゃんの目が潤んでて、頬が赤くて、唇が濡れてた。
「先輩…」
「…いいのか、本当に」
「本当にって…私が誘ってるんですよ?」
「いや、でも酔ってるし…」
「酔ってないです。さっきからほとんど飲んでないし」
確かに、後輩ちゃんの缶はまだ3分の1も減ってなかった。(計算ずくかよ…)
もう一回キスした。今度は俺から。後輩ちゃんがんっって小さく声を漏らして、俺のシャツの前をぎゅっと握った。
後輩ちゃんをベッドに座らせて、上からキスした。首筋に唇を当てると、甘い匂いが直に鼻に入ってきて頭がくらくらした。
「あ…先輩…くすぐったい…」
ブラウスのボタンを外していく。一つ、二つ、三つ。白いレースのブラが見えた。
「…すげえな」
「何がですか」
「いや、思ってたよりでかいなと思って」
「思ってたよりって、前から見てたんですか?」
「見てないとは言えない」
「ふふ、正直でいいですね」
ブラのホックを外すと、ぷるんって揺れた。形が綺麗で、先っちょがうっすらピンクで。(これが…今田美桜似のEカップ…)とか馬鹿みたいなこと考えてた。
手のひらで包むと、柔らかいのに張りがあって、指が沈んでいく感触が信じられなかった。
「ん…先輩の手、あったかい…」
乳首を親指で転がすと、後輩ちゃんの背中がびくっとなった。
「あっ…そこ、弱いんです…」
「弱いのか」
「意地悪な顔しないでくださいよぉ…」
口に含むと、後輩ちゃんが俺の頭を抱え込んできた。
「あ…あっ…だめ…吸わないで…声出ちゃう…」
スカートの中に手を入れると、太ももの内側がしっとり汗ばんでて、ショーツの上からでも濡れてるのがわかった。
「すごい濡れてる…」
「言わないでください…恥ずかしい…」
顔を両手で覆って隠す仕草が、職場で見る後輩ちゃんとのギャップがすごくて、(これ現実か?)って本気で思った。
ショーツを脱がして、指を滑らせると、ぬるぬるの感触が指先に広がった。後輩ちゃんが太ももをぴったり閉じて抵抗するんだけど、クリに触れた瞬間、力が抜けた。
「ひっ…あ、そこ…」
「ここ?」
「あっ…あっ…先輩ずるい…っ」
中に指を入れると、きゅっと締まってきた。温かくて、吸い付いてくるような感触。
「んっ…あ、奥…当たって…」
(いいのか、本当にこんなことして。教育係が新卒とこんなこと…)
って頭の片隅で思ってたけど、後輩ちゃんの声と体の反応が気持ちよすぎて、もう理性とかそういう次元の話じゃなくなってた。
「先輩…もう、入れて…ほしい…」
「ゴム…」
「引き出し…一番上…」
ベッドサイドの引き出しを開けると、ちゃんとコンドームがあった。
「用意いいな…」
「だって…いつか先輩をここに連れてこようと思ってたから…」
(計画的すぎるだろ…でもなんか、それが嬉しかった。)
ゴムをつけて、後輩ちゃんの足を開いた。ベッドの上で仰向けの後輩ちゃんは、片腕で目を覆ってて、もう片方の手でシーツを握ってた。
先端を当てると、熱い。ゆっくり腰を押し出した。
「あっ…」
「痛くない?」
「大丈夫…全然大丈夫…来て…」
少しずつ入れていくと、中がぎゅうって締まってきて、頭が真っ白になりかけた。
「やば…」
「先輩…全部入った…?」
「うん…」
「はあ…なんか…すごい…」
目を覆ってた腕をどかすと、後輩ちゃんの目が涙で滲んでた。泣いてるのかと思って動きを止めたら。
「泣いてないですよ。嬉しいだけです。動いてください」
ゆっくり腰を動かすと、後輩ちゃんの口から甘い声が漏れた。ぱちゅ、ぱちゅ、って水音がして、(こんな音出るんだ…)って妙な感動があった。
「あっ…あっ…先輩…気持ちいい…」
「俺も…めちゃくちゃ気持ちいい…」
後輩ちゃんが両腕を広げて、抱きしめてくる。耳元で「好き」って囁かれて、もう限界だった。
「やばい…もう出そう…」
「いいですよ…出してください…」
腰を密着させたまま、後輩ちゃんの中で果てた。ゴム越しでも、出す瞬間に後輩ちゃんのお腹がぴくっと跳ねたのが見えた。
「ん…あったかい…ゴムの上からでもわかる…」
しばらく繋がったまま動けなかった。後輩ちゃんの胸の上に顔を埋めて、心臓の音を聞いてた。速い。俺と同じぐらい速い。
「ねえ先輩、もう一回したいんですけど」
「いや、ちょっと待って…」
「待たない。私、先輩のこと4ヶ月待ったんですよ」
後輩ちゃんが俺を押し倒して上に跨った。
上から見下ろす後輩ちゃんの表情は、オフィスで見るそれとは全然違って、どこか挑発的で、でも頬が赤くて。Eカップが揺れるたびに、さっき出したばかりなのにもう反応してた自分が恥ずかしかった。
「先輩のここ、正直ですね」
「…お前な」
「ふふ、可愛い」
新しいゴムをつけて、後輩ちゃんが自分で腰を落としてきた。さっきより滑らかに入って、中が熱くて柔らかかった。
「あっ…んんっ…」
後輩ちゃんがゆっくり腰を動かすと、さっきとは違う角度で当たって、二人とも声が出た。
2回目は、さっきより余裕があった。後輩ちゃんの腰の動きに合わせて下から突き上げると、甘い声が大きくなっていく。
「あああっ…先輩…そこ…っ」
「ここ?」
「そこっ…だめ…イっちゃう…っ」
後輩ちゃんの体がびくびくって震えて、中がぎゅうっと締まった。その締め付けで俺も限界が来て、2回目を後輩ちゃんの中に出した。
後輩ちゃんが俺の上に崩れ落ちてきて、肩で息をしてた。汗で肌がくっついて、心臓の音が重なった。
「先輩…」
「ん?」
「私のこと、弱み握ってるから抱いたんじゃないですよね?」
「馬鹿。そんなわけないだろ」
「じゃあなんでですか」
「…好きだからだよ」
「やっと言ってくれた」
後輩ちゃんが泣きながら笑った。泣くなよって言ったら「嬉しいから泣いてるんです」って返された。
シャワーを浴びて、後輩ちゃんのベッドに二人で入った。1Kの狭いベッドだから、くっつかないと寝れない。
「先輩、明日一緒に出勤しませんか」
「いや、それはバレるだろ」
「バレてもいいですけど」
「よくない。お前の立場もあるし」
「はいはい。じゃあ先輩が先に出て、私は30分ずらします」
「そうしてくれ」
「ねえ先輩」
「なに」
「あの領収書の件、感謝してます。あれがなかったら先輩のこと好きにならなかったかもしれないから」
「経費精算のミスがきっかけで付き合うことになるとか、経理が聞いたら泣くぞ」
「あはは」
後輩ちゃんが俺の腕にすっぽり収まって、すぐに寝息を立て始めた。
正直に言うと、まだ信じられない気持ちの方が大きかった。こんな可愛い後輩が、なんで俺なんかのことを。弱みがどうとかじゃなく、本当に好きだって言ってくれてるのが、嬉しいのと怖いのと半々だった。
でも、腕の中で眠ってる後輩ちゃんの寝顔を見てたら、(まあいいか。考えるのは明日にしよう。)って思えた。
高田馬場の夜は静かで、早稲田通りの方からたまに車の音がするぐらいだった。エアコンの音と、後輩ちゃんの寝息。
俺は結局、朝まで眠れなかった。隣で寝てる顔がかわいすぎて。