俺の話、聞いてくれますか。
28歳、都内の中堅メーカーで営業やってる。身長172、体重は聞かないでほしい。顔面偏差値は友達に「普通だから安心しろ」って言われるレベル。つまりまあ、どこにでもいるやつです。
去年の9月、経理部から営業事務のサポートで一人異動してきた。名前は伏せるけど、25歳。第一印象は「地味」。それ以上でもそれ以下でもなかった。
黒縁の丸メガネに、いつもベージュとかグレーのゆるいブラウス。髪は肩より少し長いぐらいで、いつも一つに結んでる。化粧も薄いし、声も小さい。永野芽郁をもうちょっと地味にした感じっていうか、よく見ると顔のパーツは整ってるんだけど、本人がそれを全力で隠してるみたいな。
最初の一ヶ月は、正直ほとんど話さなかった。
仕事の受け渡しで「これお願いします」「はい」ぐらい。隣の島の席だったから、視界には入るんだけど、ずっとモニター見て黙々とExcel叩いてる。昼休みも一人でお弁当食べてるし、雑談にもほとんど入ってこない。
(まあ経理の人ってそういうタイプ多いよな)
ぐらいに思ってた。
変わったのは10月の終わり。俺が出した経費精算の領収書で、日付のところを一箇所間違えてたことがあって。
「あの、田中さん。この10月17日の分なんですけど、レシートだと18日になってて…」
「あ、マジだ。すみません、書き直します」
「いえ、もう直しておきました。確認だけお願いします」
差し出された書類を見たら、付箋で丁寧に修正箇所が示してあって、しかも「ここが違ってました」じゃなくて「確認だけ」って言い方をしてくれた。
(あ、この子気遣いできるんだな)
それから少しだけ、意識するようになった。
といっても恋愛感情とかじゃなくて、単純に「いい子だな」ぐらいの話。でも一回気にし始めると、いろいろ見えてくるもんで。
たとえば彼女、毎朝俺より先に来てて、営業部のデスク周りのゴミ箱を全部替えてくれてた。誰にも頼まれてないのに。あと、コピー機の紙が切れたら黙って補充してるし、来客用のお茶も率先して淹れてる。
営業の木村さん(35歳、既婚、めちゃくちゃ面倒見がいい)が「あの子マジで気が利くよな。うちの嫁より優秀だわ」って言ってて、それは奥さんに聞かれたらやばいだろって思ったけど、まあ分かる。
11月に入って、ちょっとした事件があった。
営業部の飲み会があったんだけど、場所が新橋のいつもの居酒屋で、たまたま俺の隣に座ることになった。
最初は全然喋んなくて、ビール一杯をちびちびやりながら他の人の話を聞いてるだけ。でも途中で木村さんが「お前彼氏いんの?」って聞いたら、
「あ…はい、まあ…いちおう」
って答えた。
(あー、いるのか)
なんか、ちょっとだけがっかりした自分がいて、それにびっくりした。いやいや、別に好きとかじゃないし。
その日はそれで終わったんだけど、翌週の月曜、給湯室でばったり会った時に、なぜか彼女のほうから話しかけてきた。
「田中さんって、お昼いつもコンビニですよね」
「え、あ、うん。大体セブンかローソン」
「よかったら…これ、余分に作っちゃったので」
って、小さいタッパーを差し出してきた。中身はきんぴらごぼう。
「え、いいの?」
「作りすぎちゃっただけなので…迷惑じゃなければ」
「迷惑なわけないでしょ。ありがとう」
食べたらめちゃくちゃ美味くて、午後の会議中ずっとあのきんぴらのこと考えてた。(俺は何をしてるんだ)
それからちょいちょい、タッパーを渡されるようになった。ひじきの煮物とか、だし巻き卵とか。毎回「作りすぎたので」って言うんだけど、さすがにそんなに頻繁に作りすぎるか?
でも彼氏いるって言ってたし、これは単に同僚への親切なんだろうなと。俺が変に意識するのは良くない。
12月。忘年会シーズン。
営業部の忘年会は恵比寿のちょっといい居酒屋で、20人ぐらい参加した。彼女も来てて、珍しくいつもと違う服を着てた。
白いニットに黒のタイトスカート。メガネは同じだけど、髪を下ろしてて、軽くウェーブがかかってた。
(え、誰…?)
マジでそう思った。普段のゆるいブラウスの下に、こんな体が隠れてたのかって。ニットの上からでも分かるぐらい胸があって、たぶんEかFぐらいある。ウエストは細いのに、スカートからの腰のラインがやばい。
木村さんが俺の肩を叩いて「お前今めちゃくちゃ見てたぞ」って小声で言ってきて、「見てないです」って即否定したけど、たぶん顔赤かった。
飲み会は盛り上がって、二次会はカラオケ。この時点で半分ぐらい帰って、残ったのは10人ぐらい。
カラオケでは、彼女がほとんど歌わずにドリンクバーのメロンソーダを飲んでた。俺はビールばっかで、正直けっこう酔ってた。
「歌わないの?」
「私、音痴なんで…」
「この騒ぎの中でそれ気にする?」
「…聞かれたくない人がいるので」
「え、誰?」
「…………」
彼女はメロンソーダのストローを噛んで、何も答えなかった。(なんだったんだ今の)
23時過ぎ、カラオケも終わってみんなバラバラに帰り始めた。恵比寿の駅に向かって歩いてたら、後ろから小走りで追いかけてくる足音が聞こえた。
「田中さん、あの…」
振り向いたら、彼女がコートの裾を握りしめて立ってた。12月の夜風で頬が赤くなってて、メガネの奥の目がちょっと潤んでた。
「どうした?大丈夫?」
「あの…もう少しだけ、一緒にいてもらえませんか」
「え?いいけど…彼氏に連絡しなくて平気?」
「……彼氏?」
「前に飲み会で、いるって言ってたじゃん」
彼女がぽかんとした顔をして、それから小さく笑った。
「あれ、猫です」
「は?」
「うちの猫、カリカリって名前なんですけど、木村さんに聞かれた時に咄嗟に…その、面倒で…」
「猫…」
「はい…彼氏、いないです。ずっと」
(この二ヶ月、俺は猫に嫉妬してたのか…?)
恵比寿の駅前のイルミネーションが綺麗だった。12月20日、土曜の夜。寒いのにコートのボタンを留め忘れてる彼女の横を歩きながら、俺の心臓はずっとうるさかった。
「じゃあ、あのタッパーのやつもさ…」
「……作りすぎてません。全部、田中さんの分だけ作ってました」
「…………」
「きんぴら、ちゃんと甘め味付けにしてるの、気づいてましたか」
気づいてなかった。でも確かに、実家のきんぴらより甘くて、それが美味かった。
「なんで俺なの。営業部、もっとイケメンいるじゃん」
「経費精算、間違えた時に怒らなかったの田中さんだけです」
「いや、あれは普通でしょ…」
「普通じゃないですよ。前の部署では、間違い指摘しただけで怒鳴る人もいたので…」
そう言って、彼女は少しだけ目を伏せた。前の部署で何かあったんだろうな、というのは察した。でもそこは今聞くことじゃないと思った。
「それに、ゴミ箱替えてるの気づいてくれたの、田中さんだけでした」
「え、分かってたの?」
「11月に一回だけ『いつもありがとう』って言ってくれたじゃないですか。あの時、泣きそうになりました」
俺、そんなこと言ったっけ。全然覚えてない。でも彼女は覚えてた。
恵比寿の駅前を通り過ぎて、なぜかガーデンプレイスのほうに向かって歩いてた。行き先なんか決めてなかった。ただ、隣を歩いてるこの子と離れたくなかっただけだと思う。
「田中さん」
「ん?」
「私のこと、どう思ってますか」
直球すぎて一瞬頭が真っ白になった。
「どうって…」
「職場の後輩としてしか見てないなら、それでいいんです。ただ、今日言わないともう言えない気がして」
彼女の手が、俺のコートの袖を掴んだ。指先がめちゃくちゃ冷たかった。
「好きだよ」
言ってから、(え、今俺なんて言った?)ってなった。
でも嘘じゃなかった。いつからかは分からないけど、たぶんきんぴらごぼうの時にはもう好きだった。認めたくなかっただけで。
「…………え?」
「いや、なんていうか、彼氏いると思ってたから蓋してたんだけど…猫だったんでしょ?じゃあもう我慢する理由ないなって」
「……ほんとに?」
「うん」
彼女が両手で顔を覆って、肩が震えてた。泣いてるのか笑ってるのか分からなかった。たぶん両方。
「よかった…」
その声がすごく小さくて、でもちゃんと聞こえた。
ガーデンプレイスのバカラのシャンデリアが見える場所で、彼女が顔を上げた。メガネが曇ってて、その奥の目が真っ赤で、それなのに笑ってた。
「メガネ曇ってるよ」
「うるさいです…」
「取ってあげようか」
メガネを外してあげたら、素顔がやばかった。目がでかくて、まつ毛が長くて、涙で頬が光ってて。永野芽郁に似てるって思ってたけど、メガネなしだともっと色っぽい。橋本環奈の大人版みたいな、透明感と甘さが同居してる顔。
「なんでこの顔隠してんの…」
「前の部署で…目立つと面倒だったので」
そう言われると、もう何も言えなかった。
「あのさ、今から…」
言いかけて止めた。こういうのは焦っちゃいけないだろ、と一応理性が働いた。
でも彼女のほうが俺の手を握ってきた。
「行きましょう」
「え、どこに」
「…田中さんが言おうとしたところに」
恵比寿から歩いて5分くらいのところにあるホテルに入った。ここまでの道のり、ずっと手を繋いでて、彼女の手がだんだん温かくなってくのが分かった。
部屋に入った瞬間、彼女が俺に抱きついてきた。コートも脱がないまま。
「ずっと、こうしたかったんです」
顔を上げた彼女とキスした。最初は唇を合わせるだけだったのが、すぐに舌が絡まった。彼女のほうから入れてきて、(え、けっこう積極的じゃん)って動揺した。
コートを脱がして、ニットの上から体に触れた。思った以上に柔らかくて、ニットの薄さ越しに体温が伝わってくる。
「ん…」
「脱がしていい?」
「…はい」
ニットを頭から脱がせたら、白いレースのブラジャーが出てきた。そしてその中身の存在感がすごかった。普段のゆるいブラウスじゃ全然分からなかったけど、Fカップはある。形も綺麗で、ブラの上からでも柔らかいのが触って分かる。
「これ隠してたの罪だろ…」
「やめてください…恥ずかしいんです、胸大きいの…」
「恥ずかしいことないって」
ブラのホックを外したら、ぽろんと零れた。形が崩れないのがすごい。薄いピンクの乳首が少し上を向いてて、既にちょっと硬くなってた。
(いやこれは…やばいな)
指で触れると、彼女の肩がびくっとなった。
「あっ…そこ、敏感で…」
乳首を親指で転がすと、彼女の呼吸が乱れ始めた。片方を口に含んだら、甘い声が漏れた。
「んっ…田中さん…」
「下の名前で呼んでいい?」
「…はい」
名前を呼んだら、彼女が目を閉じて唇を噛んだ。胸を舐めながらスカートに手を入れると、太ももが柔らかくて、指が沈む感じがした。下着の上から触ったら、もう湿ってた。
「もう濡れてるじゃん…」
「…だって、ずっと田中さんのこと考えてたから…」
下着をずらして直接触れると、熱くてぬるぬるしてた。クリを指先で軽く擦ると、彼女の腰が跳ねた。
「ひっ…そこ…っ」
指を一本入れたら、きゅっと締まる感覚があった。奥のほうまでゆっくり入れていくと、彼女が俺の肩にしがみついてきた。
「あっ、あっ…指、奥まで…」
「痛くない?」
「痛くない…気持ちいい…もっと動かして」
二本に増やして、中を探るように動かす。ある場所を押したら、彼女の声のトーンが変わった。
「あああっ…そこ…っ!」
同時にクリも擦ると、彼女の体が震え始めた。メガネが完全にずれて、顔がぐちゃぐちゃになってるのが見えた。
「やっ…イっちゃう…田中さん…イく…っ!」
びくびくっと体を震わせて、俺の指をきつく締めたまま、彼女がイった。肩で息をしながら、俺の胸に額を押し付けてくる。
「はぁ…はぁっ…」
「大丈夫?」
「…大丈夫です。あの…私も、したいです」
そう言って彼女がベルトに手をかけてきた。ズボンを下ろされて、もうとっくに硬くなってるのを見られた。
「…大きい」
「普通だと思うけど…」
「普通じゃないです…」
彼女が恐る恐る握ってきて、ゆっくり上下に動かし始めた。手が小さくて、指が全部回りきらない感じ。でもその不慣れな感じがたまらなかった。
「こう…ですか?」
「うん…気持ちいい」
「あの…口で、してもいいですか」
(え、この子から言うの…?)
頷いたら、彼女がしゃがんで、先端にキスするみたいに唇を当ててきた。そのあとゆっくり口に含んで、舌で丁寧に舐め始めた。
正直めちゃくちゃ上手いわけじゃなかったけど、一生懸命さが伝わってきて、それが逆に興奮した。時々歯が当たるのも、なんか良かった。
「ちょっと待って、このままだと出ちゃう」
「…出していいですよ?」
「いや、中がいい」
自分で言っておいてびっくりしたけど、本音だった。
彼女をベッドに押し倒して、最後の下着を脱がせた。全裸の彼女は、普段の地味な後輩とは完全に別人だった。くびれがあって、胸が大きくて、肌が白くて。
「コンビニ行く?ゴム…」
「…あります。カバンに」
「え?」
「…今日、もしかしたらって思って…持ってきてました」
(この子、今日のことある程度想定してたのか…)
彼女がカバンからゴムを出してきて、俺に渡した。手が震えてた。
装着して、彼女の脚の間に入った。先端を当てると、彼女がぎゅっと目を閉じた。
「入れるよ」
「…はい」
ゆっくり挿入した。中が熱くて、きつくて、吸い付くみたいだった。彼女が息を止めて、シーツを掴んだ。
「んっ…あぁ…」
「痛い?」
「ちょっと…でも大丈夫…動いて」
ゆっくり腰を動かし始めた。彼女の中が俺の形に馴染んでくのが分かって、だんだん声が変わっていった。
「あっ…あっ…田中さん…」
「名前で呼んで」
「…拓也さん…っ」
初めて下の名前で呼ばれた。それだけで全身に電気が走ったみたいになって、思わず腰の動きが激しくなった。
「あああっ…速い…っ!でも…いい…っ」
彼女が俺の背中に手を回してきて、爪が食い込んだ。その痛みすら気持ちよかった。
「きつい…やばいかも…」
「まだっ…もうちょっと…一緒にイきたい…」
その言葉で必死に堪えた。彼女の胸を揉みながら奥を突くと、中がぎゅうっと締まって、彼女の声が裏返った。
「あっ、そこっ…!イく…っ、イっちゃう…っ!」
「俺も…もう…っ」
彼女の中がぎゅっと波打つみたいに締まって、俺も限界だった。腰を密着させたまま出した。ゴムの中に、全部。
「んんっ…あぁ…っ」
お互い息が荒いまま、しばらく動けなかった。彼女の胸の上に顔を乗せて、心臓の音を聞いてた。ドクドクって速くて、俺と同じぐらい緊張してたんだなって思った。
「…重いですよ」
「ごめん」
体を起こしたら、彼女がメガネを直しながら笑った。裸でメガネ直してるのシュールすぎて、俺も笑った。
「なんで笑うんですか」
「いや、可愛いなって」
「……もう一回、してもいいですか」
さっきまで恥ずかしがってた子が、自分から「もう一回」って言ってきたのに驚いた。でも俺のほうも、一回じゃ全然足りてなかった。
二回目は彼女が上になった。跨がった状態で、ゆっくり腰を動かす。
さっきとは表情が違って、恥ずかしさより気持ちよさが勝ってる顔だった。メガネの奥の目がとろんとしてて、普段の「経理部の地味な後輩」はもうどこにもいなかった。
Fカップの胸が上下する度に目が離せなくて、手を伸ばして揉んだ。彼女がその上から自分の手を重ねてきて、(なにそれ…反則だろ)って思った。
「拓也さん…気持ちいい?」
「やばい…お前のなか、気持ちよすぎる」
「…お前って言われるの、ちょっと好きかも」
二回目は一回目よりゆっくりで、その分お互いの体を感じてた。彼女の腰の動きがだんだん速くなって、呼吸が浅くなっていく。
「あっ…また…イきそう…」
「いいよ、イって」
「拓也さんも…一緒に…っ」
体を密着させて、抱き合ったまま二人でイった。一回目とは違う、じんわりと全身に広がるような快感だった。
「…………すげえ」
「…ぜんぜん足りないです」
「マジで?」
「三ヶ月分、溜まってるので」
(三ヶ月て。異動してきてからずっとってこと?)
結局、その夜は四回した。三回目は後ろからで、彼女が枕に顔を埋めて声を殺してるのがエロかった。四回目はシャワー浴びた後にもう一回って彼女から言ってきて、濡れた髪のまま正常位で。
明け方の5時過ぎ、さすがに二人とも限界で、ベッドに並んで天井を見てた。
「…会社、どうしましょう」
「どうしようね」
「バレたら気まずいですよね…」
「木村さんには絶対バレると思う」
「…確かに」
「でも、付き合おう。ちゃんと」
彼女が寝転んだまま、俺の手を握ってきた。
「…はい」
「きんぴら、また作ってよ」
「もう作りすぎたって嘘つかなくていいんですね」
「うん。堂々と『彼氏に作った』って言ってくれ」
「…カリカリに焼きもちとか焼かれないですかね」
「猫に負ける自信はないわ」
彼女が声を出して笑った。その笑顔が、あの日のきんぴらと同じくらい甘かった。
月曜日、会社で顔を合わせた時に目が合って、彼女がぺこりと頭を下げた。いつもの地味な黒縁メガネ、ゆるいブラウス、一つ結び。誰も、その下にあるものを知らない。俺だけが知ってる。
それだけで、俺の月曜日は最高の一日になった。
木村さんだけ、やたらニヤニヤしてたけど。