居酒屋バイトの年下の子が終電を逃すたびにうちに泊まるようになって、気づいたら合鍵を渡していた話

大学3年の夏の話をする。

俺、当時21歳。中央線の国分寺駅から徒歩12分、家賃5万8千円の1Kに住んでた。6畳にユニットバス。エアコンは一応ついてるけど、フィルター掃除しても臭い風が出てくるタイプ。まあ、男の一人暮らしなんてそんなもんだろう。

容姿は…正直に言うと、可もなく不可もなくだと思う。身長172。痩せ型。髪は伸ばしっぱなしで、たまに鏡を見ると「誰だお前」ってなる。高校のとき一回だけ告白されたことあるけど、付き合って2ヶ月で「なんか違う」って振られた。それ以来彼女はいない。

バイトは駅前の居酒屋「鳥よし」。チェーンじゃなくて個人経営のやつ。大将が頑固でたまに理不尽にキレるけど、まかないが美味いから続けてた。週4で入って、だいたい17時から23時のシフト。

その年の6月、新しいバイトが入ってきた。

名前は伏せるけど、ここでは「ユキ」としておく。俺と同じ大学の1年生、19歳。入ってきた初日に大将が「おい、新人に仕事教えてやれ」って俺に丸投げしてきたのが始まりだった。

最初に見たとき、(え、こいつめちゃくちゃかわいくない?)って普通にビビった。身長155くらいで小柄なんだけど、顔がもう今田美桜にそっくり。目がでかくて、笑うとくしゃっとなる感じ。髪は肩くらいのボブで、耳にかけるクセがあった。あと、居酒屋のTシャツ着てるのに胸の存在感がやばかった。あとで本人に聞いたらFカップだった。155センチでFって、バグだろ。

(いや、冷静になれ俺。バイトの後輩だぞ)

そう自分に言い聞かせながら、ドリンクの作り方とか注文の通し方とか教えた。ユキは覚えが早くて、2週間もすればホールを一人で回せるようになった。

ただ、ちょっと変わったところがあった。

シフトが終わるとき、いつも俺に話しかけてくる。

「先輩、今日もお疲れさまでしたー」

「おう、お疲れ」

「先輩って国分寺に住んでるんですよね?」

「まあ、一応」

「いいなー、私、国立なんですよ。地味に終電早くて」

俺は最初、普通に世間話だと思ってた。バイト終わりの雑談。

でも、7月に入ったあたりから状況が変わり始めた。

金曜のシフト上がりが23時半。片付けとか大将への挨拶とかで店を出るのが23時45分。国立行きの終電は…確か0時ちょいすぎだったと思う。ギリギリなんだよな。

で、ある金曜の夜。

「先輩、やばい。電車なくなっちゃいました」

「え、マジで?タクシーは?」

「金欠で…あの、ソファとか、床とかでいいんで、泊めてもらえません…?」

断る理由がなかった。いや、あるだろ普通。でもこの子が駅前のベンチで朝まで過ごすのを見て見ぬふりするのも人としてどうかと思って。

「…わかった。汚いけど」

「やったー!ありがとうございます!」

こうして、ユキは俺の6畳に初めて足を踏み入れた。

「うわ、思ったより片付いてますね」

「普段はもっと汚い。昨日たまたま掃除した」

「あはは、ラッキー」

俺はユキに布団を出して、自分は寝袋で寝た。寝袋を持ってたのは、キャンプサークルのやつに一回だけ連れて行かれたから。その後一度も使ってなかった寝袋がまさかこんな形で役に立つとは。

(いや、壁一枚隔ててもない同じ部屋に年下の女の子が寝てるんだけど?)

当然、眠れなかった。

翌朝、ユキは俺より先に起きて、冷蔵庫にあった卵と残りご飯でチャーハンを作ってくれた。

「お礼です!味付けは保証しません!」

「…普通にうまい」

「でしょー?えへへ」

その笑顔がやばかった。朝日の中で今田美桜がチャーハン作ってくれてるんだぜ。(いや、本人じゃないけど)

ユキは昼前に帰っていった。

…で、次の金曜もまた終電を逃した。その次も。

3回目くらいで俺は気づき始めた。いや、こいつわざとだろ。だって片付けにそこまで時間かかるわけないじゃん。大将が帰ったあと、モップかけるのをわざとゆっくりやってる。

でも何も言えなかった。言えなかった理由は、正直に言えば、俺もユキが泊まりに来るのが嫌じゃなかったからだ。

(…いや、嫌じゃないどころか、めっちゃ楽しみにしてるだろ俺)

8月に入る頃には、ユキの歯ブラシが俺の部屋にあった。冷蔵庫にはユキが買ってきたプリンが常備されるようになった。「先輩の冷蔵庫、野菜が少なすぎます」と言って、トマトとかきゅうりとか勝手に補充された。洗面所にはユキの化粧水と乳液が並んだ。

もう半同棲じゃん。

で、ある日。

「先輩、私の分の鍵ってないですか?先輩がバイト行く前に先に来て、ごはん作って待ってたいなって」

「……は?」

「だめ?」

上目遣いでそんなこと言われたら、だめって言えるわけないじゃん。

翌日、駅前のミスターミニットで合鍵を作った。780円。この780円が俺の人生を変えた。

合鍵を渡した日から、ユキは完全にうちに入り浸るようになった。週4、5で来る。バイトがない日も来る。授業が終わったら直接来る。

俺が大学から帰ると、部屋から明かりが漏れてる。ドアを開けると「おかえりー」って声がする。テーブルにはごはんが並んでる。

(なんだこれ、新婚か?)

嬉しいに決まってる。でも俺はずっとモヤモヤしていた。

ユキはなんでこんなに俺の部屋にいたがるんだ?

俺のことが好き…なわけないよな。だって、ユキくらいかわいかったら男なんて選び放題だろ。実際、バイト先にもユキを狙ってる常連客とか、同じ大学の男とかがたまに来る。ユキは愛想よく対応してるけど、連絡先は教えてないらしい。

ある日、バイト中にホールのお客さんからユキがしつこく絡まれてるのを見た。酔った30代くらいのリーマンが「LINE教えてよー」みたいなことを言ってて、ユキが困った顔をしていた。

俺は厨房から出ていって、ユキとそのリーマンの間に割って入った。

「すみません、そろそろラストオーダーなんですけど」

リーマンは俺を見て少したじろいだ。別にガタイがいいわけでもないけど、まあ、顔には出てたと思う。

リーマンが帰ったあと、片付けしてたらユキが横に来た。

「先輩、ありがとうございます」

「別に。仕事だし」

「…嘘。仕事じゃなかったでしょ」

見透かされてるのがなんか恥ずかしくて、黙って皿を洗った。

8月中旬、お盆休みでバイトが3日間休みになった。

ユキは相変わらずうちにいた。というか、この3日間はずっといた。

2日目の夜、二人で安いワインを飲みながら(俺が買った。未成年に酒を出すわけにはいかないのでユキはぶどうジュース)、なんとなくお互いの家の話になった。

「てか、ユキってなんでそんなに家帰りたくないの?実家じゃなくて一人暮らしなんだろ?」

ユキの顔が少し曇った。

「…ルームシェアなんですよ、友達と」

「それがなんか問題あんの?」

「その友達が…彼氏連れ込むんですよね、毎晩。壁薄くて全部聞こえるし、リビング占拠されるし」

「あー…」

「最初は我慢してたんですけど、もう限界で。でも引っ越す金もないし…」

ユキが小さく笑った。でもその笑い方は、いつもの明るいやつじゃなかった。

「先輩の部屋が一番落ち着くんです。…迷惑ですよね、わかってるんですけど」

「迷惑じゃない」

即答した自分にびっくりした。

「…ほんとに?」

「ほんとに」

ユキが俺の顔をじっと見た。なんか、泣きそうな目をしてた。

「先輩って…ほんとに優しいですよね」

「そうか?」

「そうですよ。鈍感だけど」

鈍感。その一言がずっと頭に残った。

俺が鈍感?何に対して?

答えは、翌週に分かることになる。

シフト終わりに大将と二人で片付けをしていたとき、大将が唐突に言った。

「大将、なんすか急に」

「お前、あの子のこと好きなんだろ」

「は?誰のことですか」

「ユキちゃんだよ。毎回お前の目、追いかけてるじゃねえか」

(えっ、俺そんな分かりやすかった?)

「あの子もお前のこと見てるぞ。俺がこの歳まで飲食やってりゃ、そのくらい分かる」

「いや、さすがにそれは…」

「鈍いんだよお前は。いいから告白しろ。うちの店で変な空気出されるのが一番困るんだ」

大将、そういうとこだぞ。でもその言葉で、俺の中の何かが動いた。

次の日のシフト。俺はずっとソワソワしてた。

ユキはいつも通りだった。ホールをてきぱき回して、常連さんと冗談言って、厨房の窓から俺と目が合うとにこって笑う。

(あの笑顔は俺にだけ…なわけないか)

23時半、シフト上がり。いつものように二人で国分寺駅に向かう。

「今日も暑かったですねー」

「な。厨房は地獄だった」

「先輩、汗すごいですもんね。でもなんか、働いてる先輩って…」

「ん?」

「なんでもないです」

そこで会話が途切れた。

改札の前まで来て、ユキが立ち止まった。電車はまだある時間だった。

「先輩」

「ん?」

「今日、終電あるんですけど…泊まってもいいですか」

「…終電あるのに?」

「うん」

ユキは俺の目をまっすぐ見てた。いつもの「終電逃しちゃいましたー」っていう軽い感じじゃない。

「…いいよ」

部屋に着いた。いつも通りユキがシャワーを先に浴びて、俺のTシャツとショートパンツを着て出てくる。もうすっかり定番の光景。でもこの日は、なんか雰囲気が違った。

俺がシャワーから出ると、ユキは布団の上に座って膝を抱えていた。

「先輩、隣いいですか」

「…どうぞ」

並んで座った。エアコンのぶーんって音だけが聞こえてた。

「ねえ先輩。私がなんで毎回ここに来てるか、本当にわかんないんですか」

「…ルームシェアがしんどいから、だろ?」

ユキが小さく笑った。

「それもあるけど…それだけじゃないって、ほんとにわかんない?」

心臓がうるさかった。大将の言葉が頭をよぎった。

「…わかんない。だから教えてくれ」

ユキが俺の方を向いた。目が潤んでた。

「先輩のこと、好きだから来てるんですよ。最初からずっと」

(マジかよ…)

頭が真っ白になった。本当に、何も考えられなかった。

「先輩が優しくしてくれるのが嬉しくて、でも先輩は全然気づかなくて…合鍵もらったとき、ほんとは泣きそうだった」

「泣きそう…?なんで?」

「だって、鍵もらえるくらい信用されてるのに、女として見てもらえてない気がして。便利な後輩としか思われてないのかなって…」

全然そんなことなかった。俺はずっとユキのことを意識してた。ただ、俺みたいな地味な男が今田美桜似の子に告白するなんて、分不相応だと思ってた。

「…俺も」

「え?」

「俺も、ユキのこと…好きだった。多分、最初から」

ユキの目から涙がぽろっと落ちた。

「なんでもっと早く言ってくれないんですか…ばか」

「だって俺みたいなのが…」

「そういうとこ!そういうとこが鈍感だって言ってるの!」

ユキが俺の胸に顔をうずめた。Tシャツが涙で濡れた。シャンプーの匂いがした。ユキが買ってきて俺の部屋に置いてるやつ。いつのまにか、俺もそのシャンプーを使うようになってた。

気づいたら、ユキの顔を上げさせてキスしてた。自分から。

柔らかかった。唇が震えてた。どっちのかは分からない。多分、両方。

「ん…」

離れて、また見つめ合って、もう一回。今度はもう少し長く。ユキの手が俺の首の後ろに回った。

「…いいの?」

「先輩こそ。私でいいんですか」

「ユキがいい。ユキじゃなきゃだめ」

自分でもびっくりするくらい、すんなり出てきた言葉だった。

ユキを布団の上に倒した。キスしながら、Tシャツの裾に手を入れた。

素肌に触れた瞬間、ユキの体がびくっと跳ねた。

「あ…冷たい」

「ごめん、手冷たかった?」

「ううん…びっくりしただけ」

お腹から脇腹にかけて、ゆっくり手を滑らせていく。ユキの肌はすべすべで、触れるたびに小さく息を吸い込む音が聞こえた。

Tシャツを脱がせた。ブラはしてなかった。

(え…ノーブラだったの…?)

「…寝るときはブラしないんです。変じゃないですよ、普通です」

心を読まれたみたいで恥ずかしかった。

目の前に、Fカップが露わになった。155センチの小柄な体に、形の綺麗なおっぱい。色が白くて、乳首はうっすらピンク。

「…すげえ」

「やめてください、そんなまじまじ見ないで…」

恥ずかしそうに腕で隠そうとするのを、そっとどかした。

片手で右の胸を包むと、指が沈み込むくらい柔らかかった。揉むたびにユキが小さく声を漏らす。

「んっ…」

乳首を親指でなぞると、すぐに硬くなった。

「感じやすいんだな」

「先輩のせいですっ…ん、あ…」

口に含んで舌で転がすと、ユキの手が俺の頭を抱えるように押しつけてきた。

「あ…先輩、そこ…やばい…」

もう片方の手をショートパンツの中に滑らせた。下着ごしに触れると、もう濡れてた。

「あっ…やだ、もう濡れてるのバレちゃう…」

「バレちゃうっていうか、もうバレてるけど」

「意地悪…」

ショートパンツと下着を一緒に脱がせた。ユキが恥ずかしそうに足を閉じようとするのを、膝の間に体を入れて防いだ。

(これ、夢じゃないよな?)

何度も自分に確認した。2ヶ月近く一緒にいたのに触れられなかった体が、今、目の前にある。

指でゆっくり触れた。ぬるぬるして、中指が簡単に入っていった。

「んんっ…先輩、指…上手い…」

「嘘つけ、こんなの初めてだぞ」

「ほんとに…あ、そこ、いい…」

Gスポットらしき場所をクリっと触ると、ユキの腰が浮いた。

「あっ、だめっ…なにそれ、やばっ…」

クリトリスを親指で刺激しながら、中を攻める。ユキがシーツを掴んでた。

「先輩っ…なんか、来る…やば、い…」

「いっていいよ」

「あ、あああっ…!」

ユキの体が弓なりに反って、中がぎゅっと締まった。太ももが震えてるのが分かった。

「はぁ…はぁ…なにこれ…自分でするのと全然違う…」

(自分でしてるんだ…)って思ったけど、口には出さなかった。

「先輩、入れて…ほしい」

「ゴム…あったかな…」

ベッドの下の引き出しを漁った。大学入ったときに友達にもらったやつが、未開封のまま残ってた。使う機会がなかったから。使用期限ギリギリだったけど、ないよりマシだ。

装着して、ユキの入り口に先端を当てた。

「…入れるよ」

「うん…お願いします」

ゆっくり押し進めた。きつかった。ユキが目をぎゅっとつぶって、唇を噛んだ。

「痛い?」

「ちょっと…でも大丈夫。ゆっくりなら…」

時間をかけて、奥まで入れた。ユキの中が、熱くて、きつくて、頭がおかしくなりそうだった。

「全部…入った?」

「うん」

「先輩の…感じる。中にいるの、わかる…」

ゆっくり腰を動かし始めた。ユキが息を吐くたびに小さな声が混じる。

「あっ…ん…んっ…」

俺はユキの顔を見ながら腰を振った。泣きそうな顔で、でも目は俺をまっすぐ見てる。さっきまで泊まりに来る後輩だったのに、今は俺の下で喘いでる。その事実が信じられなかった。

(本当にいいのか、これ。俺なんかで)

でもユキが俺の背中に手を回して、ぎゅっと抱きしめてきた。

「先輩…好き…」

「俺も…好きだよ、ユキ」

初めて名前を呼んだ。いつも「お前」とか「ユキ」って心の中で呼んでたけど、面と向かっては「後輩」とか「お前」だった。

「あっ…名前、呼んでくれた…嬉しい…」

ユキが泣きながら笑った。反則だった。

ペースを上げた。中がどんどん締まってくる。

「あっ、そこっ…だめ…また来る…」

「俺も…やばい…」

「一緒に…先輩、一緒にいって…」

「っ…!」

ユキを抱きしめたまま、中でいった。ゴムの中に出してるのに、体が痺れるくらい気持ちよかった。ユキも同時にいったみたいで、体をびくびくさせながら俺にしがみついてた。

「はぁ…はぁ…先輩…」

「…ユキ」

しばらく、そのまま抱き合ってた。汗が混ざるのが分かった。エアコンの風が背中に当たって、少し冷たかった。

抜いたあと、ゴムを処理して横になった。ユキが俺の腕の中に潜り込んできた。

「先輩…もう帰らないでいいですか。ずっとここにいたい」

「いていいよ。…てか、もう実質住んでるだろ」

「あはは…それもそっか」

「つーか、もう先輩はやめろ。名前で呼べ」

「…いいんですか?じゃあ…たくみ、さん」

「さん付けかよ」

「だってまだ照れるもん…慣れるまで待ってください」

ユキが顔を赤くして俺の胸に顔を押し付けた。

少し経って、ユキが顔を上げた。

「ね、たくみさん…もう一回、したい」

「…マジ?」

「だって…ずっと我慢してたんですよ。先輩のとなりで寝るの、毎回しんどかったんだから」

(こっちのセリフだよそれ…)

2回目は、さっきより余裕があった。ユキが上に乗って、自分で腰を動かした。さっきは痛そうだったのに、今度は気持ちよさそうな顔をしてる。

「ん…あっ…たくみさ…っ」

俺はユキの腰を掴んで、下から突き上げた。Fカップがぷるんぷるん揺れる。なんかもう現実感がなかった。

「やばっ…またいきそ…っ」

「いいよ、いけ…俺ももう…」

「あっ、あああっ…!」

ユキがガクガク震えながら俺の上に崩れ落ちてきた。ゴムの中にまた出した。2回目なのに、全然衰えなかった。

「もう…無理…動けない…」

「そりゃそうだろ…」

ユキをそのまま抱えて布団をかけた。ユキは俺の胸に頬をくっつけて、すぐに寝息を立て始めた。

窓の外がうっすら明るくなってた。エアコンの臭い風が、この日はなぜか気にならなかった。

翌朝。

目を覚ますと、ユキがキッチンに立ってた。俺のTシャツ一枚で。

「あ、おはよう。目玉焼き、半熟でいい?」

「…おう」

なんだこの光景。昨日までと何も変わらないのに、全部が違って見える。

朝ごはんを食べながら、ユキが言った。

「ねえ、私のルームシェア、来月で契約切れるんだけど」

「…ここ来る?」

「いいの!?」

「もう実質住んでるだろって昨日も言ったじゃん」

「やったー!家賃半分出しますね!」

「いや、いいよ別に…」

「だめ。ちゃんと出します。対等でいたいの」

その「対等でいたい」って言葉が、なんかすごく、ユキらしいと思った。

こうして俺たちの同棲生活は正式に始まった。

あれからもう3年経つ。ユキは今年大学を卒業して、都内の広告代理店に就職した。俺はSIerでSEをやってる。国分寺の1Kは手狭になったので、去年、同じ沿線の武蔵境で1LDKに引っ越した。家賃は9万2千円。ちゃんと半分ずつ出してる。

朝、会社に行く前にユキが「いってらっしゃい」って言う。夜、先に帰った方がごはんを作る。金曜の夜はたまに「鳥よし」に飲みに行く。大将は「お前らまだ続いてんのか」って呆れた顔をするけど、まかないを二人分出してくれる。

あの夏、終電を逃した(ふりをした)後輩に合鍵を渡した日のことは、たぶんずっと忘れない。

780円の合鍵が、今のところ俺の人生で一番コスパのいい買い物だった。


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