転勤先のコインランドリーで毎週会う大学生に距離感バグらせた話

これは俺が27歳の時の話。読んでくれたら嬉しい。

4月の異動で大阪から横浜に飛ばされた。といっても栄転みたいなもんで、横浜支店の営業二課に配属された。会社が用意してくれたのは東神奈川駅から徒歩8分の1Kで、築年数だけは立派なやつ。まあ家賃補助が出るから文句は言えない。

問題は洗濯機だった。

前の部屋では備え付けがあったんだけど、この部屋にはない。防水パンはあるのに洗濯機がない。引っ越し初日に気づいて、とりあえず近所のコインランドリーを探した。徒歩3分のところに「ウォッシュパーク東神奈川」っていう、24時間営業のやつがあった。蛍光灯が白すぎるけど、まあ清潔だし、大型乾燥機もある。

洗濯機を買うまでの繋ぎのつもりだった。マジで。

最初の土曜日、朝10時ぐらいに洗濯物を抱えて行った。客は俺ともう一人だけ。ベンチに座ってスマホをいじってる女の子がいた。

パッと見た感じ、橋本環奈をちょっとだけ大人っぽくした感じ。身長は158ぐらいかな。髪はダークブラウンのセミロングで、前髪が目にかかるぐらい。グレーのスウェットにショートパンツっていうラフな格好なのに、脚がやけに白くて目を引いた。

(いや、ジロジロ見んなよ俺…)

自分に言い聞かせて、空いてる洗濯機に服を突っ込む。100円玉を4枚入れて、スタートボタンを押した。

30分ぐらい待つことになる。ベンチに座ってスマホで野球のニュースを読んでたら、乾燥機の終了音がピーピー鳴った。女の子が立ち上がって乾燥機を開ける。

そこで俺、やらかした。

彼女が取り出した洗濯物の中から、ハンドタオルがひとつ、床にぽとっと落ちた。彼女は気づいてない。

「あ、落ちましたよ」

拾って差し出した。

彼女が振り向いた瞬間、顔が近かった。思ったより距離が近くて、お互い一瞬固まった。

「あっ…すみません、ありがとうございます」

声が柔らかかった。鈴みたいな、とかそういうポエムじみた表現は使わない。ただ、聞いてて心地いい声だった。

「いえいえ」

それだけ。それだけのやりとりだったのに、なぜか俺はその日一日ずっとあの子の顔を思い出してた。

(いやいやいや、落ち着けよ…タオル拾っただけだろ)

翌週の土曜日。同じ時間にコインランドリーに行ったら、またいた。同じベンチで、今度はイヤホンしながら本を読んでた。

俺が入っていったら、ちらっとこっちを見て、小さく会釈してくれた。

(覚えてくれてんだ…)

嬉しくなっている自分がキモかった。27歳にもなって、大学生ぐらいの女の子に会釈されたぐらいで浮かれるなよ。

その日も特に会話はなかった。でも、帰り際に彼女が先に出ていく時に、

「あ、先週タオルありがとうございました」

って言ってくれた。先週のこと覚えてて、わざわざお礼を言ってくれる律儀さにちょっとやられた。

3週目。この頃にはもう、洗濯機を買う気が完全に失せていた。いや、買おうと思えば買えるんだけど。なんか…土曜の朝にコインランドリーに行く習慣が、悪くないなって思い始めてた。

(それ完全に不純な動機だろ)

はい、その通りです。

3週目は彼女の方から話しかけてきた。

「毎週来てますよね?この辺に住んでるんですか?」

「あ、うん。4月に引っ越してきて。洗濯機がまだなくて」

「あはは、私もです。アパートに置くスペースないんですよ」

「あー、わかる。防水パンあるのに微妙にサイズが合わないやつ」

「そうそう!それです!なんなんですかねあれ」

会話が始まったら、意外と止まらなかった。彼女の名前は知らない。聞けなかった。でも、横浜市大の3年生で、この近くのアパートに一人暮らししてることはわかった。

4週目には、洗濯が終わるまでの30分を普通に喋って過ごすようになった。

彼女は英文学を専攻してて、就活が始まるのが憂鬱だと言ってた。俺は営業の仕事がどんだけ地味かって話をした。

「営業って、もっとバリバリしてるイメージでした」

「いや、8割はExcelだよ。残りの2割が移動。バリバリ要素ゼロ」

「ふふ、夢がない」

「夢は初任給で消えた」

「あはは、リアルすぎる」

こういう、何でもない会話が楽しかった。金曜の夜に「明日はコインランドリーだな」って思うようになってた自分に気づいた時は、さすがにちょっと引いた。

5週目に事件が起きた。

いつも通り土曜の朝に行ったら、彼女が洗濯機の前でしゃがみ込んでた。

「おはよ。どうした?」

「…100円玉が足りなくて。両替機、故障してるみたいで」

見ると両替機に「調整中」の紙が貼ってある。

「あー、俺余分に持ってきてるから貸すよ」

「えっ、いいんですか?」

「400円だろ?別にいいよ」

「ありがとうございます…あの、お返し…」

「いらないいらない」

「じゃあ、お礼にコーヒーおごらせてください。この近くにいいとこあるんです」

(え?)

これは…デートの誘いなのか?いや違うだろ、コーヒー一杯だぞ。400円のお返しにコーヒー。等価交換。それ以上の意味はない。ないはずだ。

「あ、じゃあ…洗濯終わったら行く?」

「はい!」

彼女の笑顔が眩しかった。いや眩しかったって何だよ、蛍光灯だろこの光は。

洗濯物を畳んで、歩いて5分ぐらいの小さなカフェに行った。「COFFEE STAND NAKA」っていう、東神奈川の高架下にある店。カウンター席が5つしかない狭い店だけど、豆の種類がやたら多い。

彼女はカフェラテ、俺はブラック。

ここで初めて名前を聞いた。

「そういえば名前聞いてなかったですよね。私、若林です。若林千紗」

「俺は吉岡。吉岡拓也」

「吉岡さんって、何歳ですか?」

「27」

「あ、6つ上か…。お兄さんって感じですね」

「おっさんの間違いだろ」

「ふふ、全然おっさんじゃないですよ」

その日は1時間ぐらい喋った。彼女はサークルに入ってなくて、バイトは近所の本屋。映画が好きで、最近はA24の作品をよく観るらしい。俺も映画は嫌いじゃないから、その話で盛り上がった。

帰り際、自然にLINEを交換した。

(いやこれ、大丈夫か?27歳が21歳の大学生とLINE交換って…)

客観的に見たらやばいやつだろ。でも向こうから誘ってきたんだし…いや、それは言い訳か。

LINEではたまにメッセージをやり取りするようになった。映画の感想とか、おすすめの曲とか、本当にどうでもいい内容。でもそのどうでもよさが心地よかった。

6週目の土曜日。コインランドリーで会って、また帰りにカフェに寄った。これが自然な流れになりつつあった。

「吉岡さんって彼女いないんですか?」

不意打ちだった。カフェラテのカップを持ち上げた状態で固まった。

「…いない。2年ぐらいいない」

「えー、もったいない」

「もったいないって、何が」

「だって優しいし、面白いし」

「それ営業トークじゃなくて?」

「私、営業職じゃないんで」

うまいこと言うなこの子。

「若林さんは?彼氏とかいるの?」

「…いません」

なんか、その時の間が気になった。「いません」の前の一瞬の沈黙。何かありそうだなとは思ったけど、踏み込まなかった。

7週目。この週は平日にもLINEの頻度が上がってた。夜の10時ぐらいに「今日こんなことがあって〜」みたいな報告LINEが来るようになって、俺もそれに返してた。

金曜の夜、ちょっと変わったメッセージが来た。

『明日の洗濯、午後にしません?午前にゼミの課題やりたくて』

『了解。何時がいい?』

『14時とかどうですか?』

『おっけー』

俺はこの時点で完全に彼女に合わせてスケジュール組んでた。洗濯の時間を相手に合わせる27歳の社会人。冷静に考えるとだいぶ終わってる。

土曜の14時、コインランドリーに行った。彼女はもう来てて、いつものベンチに座ってた。

でもこの日はちょっと様子が違った。目が赤い。

「…どした?」

「え、何がですか?」

「いや、なんか…泣いた?」

「…」

彼女はしばらく黙って、それから小さく笑った。

「バレますよね。…ちょっと、元カレから連絡来て」

「元カレ」

「去年別れたんですけど…たまに連絡してきて。会いたいとか言ってきて」

「それで泣いてたの?」

「泣いてたっていうか…イラついて泣いたっていうか。もう関係ないのに、なんで連絡してくんだろって」

俺は何も気の利いたことが言えなかった。「ブロックすれば?」は正論だけど、それを言うのは違う気がした。

「…まあ、話聞くことぐらいしかできないけど。聞くよ」

「…ありがとうございます」

その日は洗濯が終わった後も、ベンチに並んで座って1時間ぐらい話した。元カレは大学の同級生で、束縛がひどくて別れたらしい。別れてからも定期的に連絡してきて、LINEをブロックしても別の手段で連絡してくると。

「重いですよね、こんな話」

「全然。てか、それはちょっと怖いな。ストーカーっぽくない?」

「そこまでじゃない…と思うんですけど。でも正直、ちょっと怖いなって思う時もあって」

「マジでやばかったら言ってよ。俺で良ければ力にはなれると思うから」

自分で言っておいて、何言ってんだ俺は、と思った。ヒーロー気取りかよ。でも本心だった。

「…吉岡さんって、ほんとに優しいですね」

「いや、大したことは何も」

「大したことですよ。…私にとっては」

彼女がこっちを見た。午後の日差しがコインランドリーの窓から入ってきてて、彼女の横顔がやたら綺麗に見えた。

(あ、やべえな、これ)

好きだ、と思った。認めたくなかったけど。6歳下の大学生を好きになるとか、どう考えても俺が悪い。

8週目。この週は何もなかった。いつも通りコインランドリーで会って、カフェに行って、2時間ぐらい喋って帰った。でも明らかに距離が近くなってた。物理的にも。カフェの隣同士の席で、肩が触れるぐらいの距離で座ってた。

9週目の金曜日の夜。LINEで映画の話をしてて、

『その映画、ちょうど観たいと思ってたんです!』

『マジ?ムービルでやってるよ。横浜駅の』

『行きたい!…一緒に行きませんか?』

『明日?』

『明日!洗濯の後に!』

こうして俺たちは、コインランドリー仲間から映画デート仲間にランクアップした。いや、デートじゃない。多分。本人たちがそう思ってないから。

…嘘だ。俺は完全にデートだと思ってた。

土曜日。洗濯を済ませて、横浜駅のムービルで映画を観た。A24の新作で、内容はよかったんだけど、正直あんまり頭に入ってこなかった。隣に千紗がいて、たまに腕が触れるのが気になって集中できなかった。

映画の後、そごうの地下で適当に弁当を買って、臨港パークのベンチで食べた。6月だったから日が長くて、18時過ぎても明るかった。

「今日楽しかったです」

「うん、俺も」

「…ねえ、吉岡さん」

「ん?」

「私のこと、どう思ってますか」

心臓が止まるかと思った。いや比喩じゃなくて、マジで一瞬心臓が止まった気がした。

「…どうって」

「ごまかさないでください」

千紗はまっすぐこっちを見てた。逃げ場がなかった。

「…好きだよ。たぶん、結構前から」

「たぶんって何ですか」

「いや…確実に好き。でも6個も上だし、社会人と大学生だし…」

「そんなの関係ないです」

「…」

「私も好きです。ずっと…もっとずっと前から。タオル拾ってくれた時から、たぶん」

(タオル…あの初日の…?)

「マジで?」

「マジです。毎週土曜が楽しみだったの、吉岡さんがいるからです」

(…ってことは、俺が「洗濯機買わなきゃな」って言いながら買わなかったのと同じ理由で、彼女も毎週来てたってこと?)

ようやく気づいた。遅すぎる。

俺は黙って千紗の手を握った。千紗の指が、少し震えてた。

「…ちょっと手、汗かいてるかも」

「俺もだよ」

「あはは…緊張してるんですか?27歳なのに」

「27歳でも緊張するわ」

千紗が笑って、俺の肩に頭を預けてきた。

みなとみらいの観覧車が光り始める時間まで、ずっとそうしてた。

翌週の土曜日。俺たちは付き合い始めて最初の「コインランドリーの日」を迎えた。もはや洗濯はおまけで、メインイベントはその後だった。

いつものカフェでコーヒーを飲んで、この後どうしようかって話になった。

「…うち来ます?」

さらっと言われた。千紗はカフェラテのカップから目を離さずに言った。耳が赤い。

「…いいの?」

「散らかってるけど」

「そこは気にしない」

千紗の部屋は東神奈川駅から反対方向に歩いて7分ぐらいの、古いアパートの2階だった。1Kで6畳。本棚がやたらデカくて、部屋の面積の3分の1を占めてた。

「本棚すごいな…」

「英文学科なんで…。あ、座ってください。飲み物出しますね」

千紗がキッチンに行ってる間、俺は床に座って本棚を眺めてた。カズオ・イシグロとカーヴァーが多い。趣味いいな。

麦茶を持って千紗が戻ってきて、俺の隣に座った。

「はい」

「ありがとう」

しばらく二人で麦茶を飲みながら、本の話をしてた。でも段々と会話の間が長くなっていった。

千紗が俺の方をちらちら見てるのがわかった。俺も千紗を見てた。

「千紗」

「…はい」

「キス、していい?」

千紗が小さく頷いた。目を閉じて、少し唇を突き出してる。その仕草が可愛くて、思わず笑ってしまった。

「…なんで笑うんですか」

「ごめん、可愛くて」

「…もう」

千紗の頬に手を添えて、唇を重ねた。柔らかかった。カフェラテの味がした。

最初は軽く触れるだけだったのが、千紗の方から舌を入れてきた。

(え、積極的…)

千紗の手が俺のシャツの袖を握ってた。離れたくないって言ってるみたいに。

唇を離したら、千紗の目がトロンとしてた。

「…もっとしたい」

「…俺も」

今度は俺から。千紗の腰に手を回して、深くキスした。千紗が小さく声を漏らした。その声を聞いた瞬間、頭の中のブレーキが半分ぐらい壊れた。

「千紗…これ以上やったら、止まれなくなるかも」

正直に言った。ここで止まるべきなのは分かってる。まだ付き合って1週間だ。

「…止まらなくていいです」

千紗が俺のシャツの裾を掴んだ。

「吉岡さんとなら…したい」

「…名前で呼んで」

「…拓也さん」

その声で完全にスイッチが入った。

千紗をゆっくり押し倒した。狭い部屋だからすぐ後ろがベッドで、二人でそのまま倒れ込んだ。

キスしながらTシャツの裾から手を入れた。千紗のお腹が少しひくっとした。

「ん…くすぐったい…」

「ごめん」

「やめないで…」

背中に手を回してブラのホックを外した。Cカップぐらいだと思う。服の上からだと華奢に見えるけど、触ってみると柔らかくて形が綺麗だった。

「…恥ずかしい」

千紗が両手で顔を覆った。

「見せて」

「…やだ」

「綺麗だよ」

「見てないのに言わないでください…」

「見たから言ってんの」

千紗がちょっとだけ指の隙間からこっちを覗いた。その目が潤んでて、反則だと思った。

胸に唇を落としたら、千紗が小さく息を吸った。乳首を舌先で転がすと、千紗の手が俺の髪を掴んだ。

「あ…っ…拓也さん…」

「感じる?」

「…わかんない…でも…気持ちいい、かも…」

「かも」が可愛かった。素直に気持ちいいって言えないところが千紗らしい。

ショートパンツを脱がせた。水色のコットンのパンツが見えた。コインランドリーで洗ってたやつだろうな、と思ったら変な感慨が湧いた。

(何考えてんだ俺は)

パンツの上から触れると、もう湿ってた。

「あ…そこ…ダメ…」

「ダメ?」

「ダメじゃないけど…恥ずかしい…」

パンツをずらして、直接触れた。指先が濡れた。

「んっ…あ…」

クリトリスを指の腹で優しく撫でると、千紗の腰がびくっと跳ねた。

「ここ?」

「…うん…そこ…いい…」

ゆっくり円を描くように刺激した。千紗の呼吸がどんどん浅くなる。太ももが微かに震えてた。

指を一本、中に入れた。

「あっ…!」

「痛い?」

「ん…大丈夫…」

中は熱くて、きゅっと指を締めつけてきた。ゆっくり動かしながら、同時にクリを刺激し続けた。

「あっ…あっ…拓也さん…やば…っ」

千紗の手が俺の手首を掴んだ。止めてほしいのかと思ったら違った。もっと奥に押し込むみたいに力を入れてきた。

「あ、あ、あ…っ…なにこれ…っ」

「いきそう?」

「わかんない…でも…やばい…拓也さんっ…」

千紗の声が裏返った。体をぎゅっと丸めて、俺の腕にしがみついた。

「…っ!…ん…んんっ…」

びくびくっと体が何度か震えて、千紗がぐったりした。

「…いった?」

「…多分…」

「多分って」

「…自分でもよくわかんないんです…でも頭がぼーっとする…」

千紗の顔が真っ赤だった。汗で前髪が額に張り付いてる。

少し落ち着いてから、千紗が俺のベルトに手を伸ばしてきた。

「…私も…したい」

ズボンを下ろしてくれて、俺のを千紗が握った。

「…大きい…」

「普通だと思うけど」

「私に普通かどうか判断する基準がないんですけど」

そう言いながら、千紗が恐る恐る動かし始めた。ぎこちないけど、千紗の細い指が俺のを包んでる感触がたまらなかった。

「あ…気持ちいい…」

「ほんとですか?…こう?」

「うん…もうちょい強くていい」

千紗が少し力を入れて、先端を親指で撫でるように動かした。

「っ…それ…いい…」

「…拓也さんの顔…すごいことになってます」

「うるさい…」

千紗がくすっと笑った。こんな状況で笑われると恥ずかしいんだけど、でもそれが千紗との空気感で、俺はそれが好きだった。

「千紗…俺、入れたい」

「…うん」

「ゴム持ってきてない。…コンビニ行ってくる」

「…引き出しの中にあります」

「え?」

「…先週買いました。…こうなるかもって…思って…」

千紗が顔を真っ赤にしてそっぽを向いた。

(先週から準備してたのかよ…)

なんか、もう、この子のことが好きすぎて困った。

ゴムをつけて、千紗の脚の間に入った。

「痛かったら言って」

「…はい」

ゆっくり先端を当てた。千紗の体がこわばるのが分かった。

少しずつ入れていく。千紗の爪が俺の背中に食い込んだ。

「…っ…痛…」

「止めようか?」

「…ううん…大丈夫…ゆっくりなら…」

ほんとに少しずつ。千紗の表情を見ながら。眉間にしわが寄ってて、唇を噛んでた。

全部入った時、千紗が大きく息を吐いた。

「…入った…?」

「うん…大丈夫?」

「…うん。ちょっと待って…」

千紗が俺の首に腕を回してきた。ぎゅっと。

「…このままちょっとだけ、こうしてて」

「…うん」

繋がったまま、千紗を抱きしめた。千紗の心臓がドクドクいってるのが伝わってきた。

(俺は今、この子の中にいるんだ)

信じられなかった。2ヶ月前はコインランドリーでタオルを拾っただけの関係だったのに。

「…動いていいよ」

ゆっくり腰を引いて、またゆっくり押し込んだ。

「んっ…あ…」

「痛くない?」

「もう大丈夫…気持ちいいかも…」

また「かも」だ。でもその「かも」が、さっきよりは確信に近い声色だった。

少しずつペースを上げた。千紗の声が変わっていった。痛みの混じった声から、甘さを含んだ声に。

「あ…拓也さん…拓也さん…っ」

名前を呼ばれるたびに頭がおかしくなりそうだった。

「千紗…好きだよ…」

「私も…好き…っ」

千紗が俺を引き寄せてキスしてきた。舌を絡ませながら腰を動かし続けた。

千紗の中があったかくて、きつくて、ゴム越しでもやばかった。

「千紗…俺そろそろ…」

「うん…いいよ…出して…」

腰を強く押し込んで、千紗の中で果てた。

「…っ…」

頭が真っ白になった。千紗の腕の中で、しばらく動けなかった。

ゆっくり体を離したら、千紗が恥ずかしそうに笑ってた。

「…やっぱり顔すごかったです」

「…二度と顔の話すんな」

「あはは」

後処理をして、二人でベッドに横になった。千紗が俺の腕の中に収まるように体を寄せてきた。

「…ねえ、拓也さん」

「ん?」

「コインランドリー、これからも一緒に行きますか?」

「当たり前だろ。洗濯機買う気ないし」

「…ふふ。私もです」

千紗が俺の胸に顔を押しつけた。

「…匂い嗅いでいいですか」

「嗅ぐなよ。汗くさいだろ」

「汗くさくないです。拓也さんのにおいがします」

「それ同じことでは」

「違います」

千紗は人の話を聞かない。でもそれでいい。

窓の外が暗くなってた。東神奈川の踏切の音が遠くに聞こえてた。

「…もう一回していい?」

「…まだするんですか」

「嫌なら」

「嫌って言ってないです」

2回目は千紗が上に乗った。本人はぎこちなかったけど、一生懸命腰を動かしてくれるのが愛おしかった。さっきより余裕ができたのか、千紗の方から腰を落とすタイミングを探ってた。

「あ…これ…奥…当たる…っ」

千紗が声を漏らしながら、自分で角度を調整してた。気持ちいいところを探してるんだろう。

俺は千紗の腰を支えながら、下から突き上げた。

「あっ…だめ…そこ…すごい…」

千紗の体がぐっと反って、俺の胸に倒れ込んできた。そのまま、千紗の耳たぶにキスした。

「ひゃっ…耳…弱い…」

「覚えた」

「覚えないで…っ」

さっきは千紗の体を気にするので精一杯だったけど、2回目は余裕がある分、千紗のいろんなところが見えた。目を固くつむる癖とか、声を抑えようとして唇を噛む癖とか、気持ちいい時だけ爪を立ててくる癖とか。

「千紗…いきそう…」

「…私も…なんか…変…」

千紗を抱き寄せて、密着した状態で腰を動かした。

「あっ…あっ…拓也さんっ…好きっ…」

「千紗…っ」

千紗の中がきゅっと締まって、俺もそのまま果てた。

二人でぐったりして、しばらく動けなかった。

「…疲れました」

「お疲れ様です」

「他人行儀すぎません?」

「はは」

千紗が俺の手を取って、指を絡ませてきた。

「…来週もコインランドリー、10時ですよ」

「了解」

「洗濯機、絶対買わないでくださいね」

「買わない。一生買わない」

「一生は言いすぎです」

「じゃあ、千紗が卒業するまでは」

「…卒業したら?」

「その時は…一緒に住めば洗濯機1台でいいだろ」

言った後で、自分でびっくりした。何言ってんだ俺。まだ付き合って1週間だぞ。

でも千紗は怒りもせず、引きもせず、ただ静かに笑った。

「…それ、プロポーズですか?」

「いや…ただの洗濯機の話」

「ふふ。じゃあ洗濯機の話、覚えておきますね」

千紗が目を閉じた。すぐに寝息が聞こえてきた。

俺は千紗の寝顔を見ながら、東神奈川の踏切の音を聞いてた。

…洗濯機、マジで買わなくてよかったなと思った。


編集部プロフィール画像

編集部が運営。「あの夜」で読める恋の体験談を厳選して公開しています。