大学の卒業旅行で行ったスキー場のナイターゲレンデで、リフトが止まった十五分間だけ隣にいた女の子の連絡先を聞けなかった話

これ読んでる人で、スキー場のナイターって行ったことあります?

昼間のゲレンデとは全然違うんですよ。照明に照らされた雪がオレンジっぽく光って、人もまばらで、なんか別世界みたいになる。俺がこの話をしたくなったのは、あのナイターの空気を思い出したからです。

大学4年の2月。卒業旅行で、サークルの仲間8人で白馬に来ていた。白馬五竜っていうスキー場。3泊4日の最終日で、翌朝には東京に帰る予定だった。

俺のスペックを先に言っておくと、身長172、顔面偏差値は自己評価で48ぐらい。坂口健太郎をめちゃくちゃ劣化させた感じと言われたことがある。それ褒めてんのか貶してんのかわかんないよな。体型は普通。スキーは中級者ぐらいで、パラレルはなんとかできるけどコブは無理、みたいなレベル。

最終日の夜、みんな疲れてて宿でダラダラしてたんだけど、俺だけなんか物足りなくて。

「ナイター行ってくるわ」

「えーマジで?俺もう足パンパンなんだけど」

って同期の田中に言われたけど、最終日だしもったいないじゃん。一人でゲレンデに出た。

ナイターのリフトは空いてて、ほぼ貸し切り状態だった。2本ぐらい滑って、3本目のリフトに乗ろうとしたとき、後ろから走ってきた女の子と相乗りになった。

4人乗りリフトに2人。間が一席空いてて、なんか微妙な距離感。

最初は何も喋らなかった。リフトがギシギシ揺れる音と、遠くのスピーカーからユーミンの「BLIZZARD」が流れてるのだけが聞こえてた。(いつの時代の選曲だよ)

で、リフトが中腹あたりで急に止まった。

「…え、止まった?」

小さい声だったけど、ナイターの静けさの中ではよく聞こえた。

「たまにあるっすよね、混んでると」

「混んでないのに…」

確かに。ガラガラなのに止まるのは珍しい。

隣の子をチラッと見た。ゴーグルを額に上げてて、顔がよく見えた。

…えっ、かわいい。

橋本環奈をちょっとシュッとさせた感じ。目がくりくりしてて、鼻が小さくて、肌が照明の光で白く光ってた。身長は160あるかないかぐらい。ニット帽からはみ出た髪が茶色がかってて、雪の粒がついてキラキラしてた。

(やば、めっちゃタイプなんだけど)

リフトは止まったまま動かない。30秒、1分。スピーカーから「しばらくお待ちください」ってアナウンスが流れた。

「寒い…」

「ですね。こういう時に限って風強いし」

「ひとりですか?」

「あ、はい。友達は宿で寝てます」

「うちもです。みんな温泉行っちゃって」

「卒業旅行とかですか?」

「そうです!大学最後で。そっちも?」

「あ、同じです。明日帰りで」

「えっ、うちも明日帰る!どこの大学ですか?」

偶然が重なるとテンション上がるよな。聞けば、向こうは東洋大の4年で、友達5人で来てるらしい。俺は法政。キャンパスは全然違うけど、東京の大学生が白馬に来るっていう構図が一緒で、なんか親近感が湧いた。

名前は「みく」って言ってた。

リフトはまだ動かない。5分が過ぎた。

「やばい、足の指の感覚なくなってきた…」

「靴の中で指動かすといいですよ。グーパーグーパーって」

「やってるんですけど…もう限界で」

みくがこっちに少し寄ってきた。空いてた一席分の距離が縮まって、ウェアの袖が触れた。

「ごめんなさい、ちょっと寄らせてもらっていいですか…寒すぎて」

「あ、全然。どうぞ」

(いや全然じゃない。心臓やばい)

肩と肩がくっついた状態で、二人とも前を向いてた。ナイターの照明に照らされたゲレンデが下に広がってて、雪が横殴りに降ってて、正直めちゃくちゃ綺麗だった。

「…なんか、映画みたいですね」

「いやほんとに。こんなことあるんだなって」

「リフト止まってラッキーかも」

ふふっ、って笑った顔がやばかった。(この子、自分がどれだけかわいいかわかってないだろ)

10分が過ぎたあたりで、リフトがガクンと動いた。

「あ、動いた!」

「よかった…凍死するかと思った」

動き出したら、あっという間に山頂に着いてしまう。降り場で板をつけながら、なんとなく二人とも立ち止まってた。

「あの…よかったら、一緒に滑りません?ひとりだと怖くて」

断る理由がない。っていうか断りたくない。

みくは上級者コースは無理って言うから、中級の「いいもりゲレンデ」を並んで滑った。思ったより上手くて、綺麗なパラレルターンをしてた。

下まで降りて、もう1本。今度はちょっとスピード出して、先に着いた俺が待ってたら、みくが勢いよく滑り込んできて止まりきれなくて、俺にぶつかってきた。

「きゃっ、ごめんなさい!」

「大丈夫大丈夫」

支えた時に、グローブ越しだけど腰に手が回った形になって、二人とも一瞬固まった。

「…あの」

「あ、ごめん」

手を離した。みくは顔を赤くしてた。寒さのせいだけじゃないと思いたい。

その後もう2本滑って、ナイター営業の終了アナウンスが流れた。20時半。

板を返却して、ゲレンデの出口に向かう。ここで別れたら、もう会えない。そう思うと焦るのに、連絡先を聞く勇気が出ない。

(聞けよ。聞けばいいだろ。LINE交換しましょうって、それだけだろ)

でも声が出ない。俺はいつもそうだ。肝心なところでビビる。

「あの…まだ時間あります?うち、もうちょっと話したいんですけど…」

みくの方から言ってくれた。

ゲレンデ横の休憩所は閉まってたけど、自販機コーナーだけ明かりがついてて、そこのベンチに並んで座った。ホットココアを2本買って。

缶を両手で包みながら、いろんな話をした。みくは埼玉の川越出身で、春から地元の信用金庫に就職するらしい。俺は都内のIT企業。

「IT?かっこいい」

「全然かっこよくないですよ、SIerなんで。客先常駐でExcel叩くみたいな」

「あはは、信金もずっとExcelですよたぶん」

「Excelの民、同盟組みます?」

「いいね、Excel同盟」

くだらない会話なのに、めちゃくちゃ楽しかった。みくがココアを飲むとき、両手で包んで「ふーふー」してから飲むのが子供みたいでかわいかった。

「ねえ、彼女いるんですか?」

「いないです。3年の時に別れてから」

「そうなんだ…」

「みくさんは?彼氏」

「…いる」

…いる。

その一言で、胸のあたりがギュッとなった。いや、出会って2時間も経ってない相手にこんな感情抱くの、おかしいだろ。でも確実にへこんだ。

「あ、そうなんだ。まあ、そりゃそうだよね」

「…でも、もう別れると思う」

「え?」

「就職したら遠距離になるし…向こう、大阪の大学院行くから。それで最近ちょっと…ギクシャクしてて」

「そうなんだ…」

「この旅行も、本当は彼と行くはずだったんだよね。でもドタキャンされて」

みくが缶を両手でぎゅっと握った。

「研究が忙しいからって。…わかるけどさ、卒業旅行だよ?最後ぐらいって思うじゃん」

「それはきついな…」

「だからさっき、リフトで隣に座ってくれたのがすごい嬉しかった。ひとりで滑ってるの寂しくて」

みくが俺の方を向いた。目が少し潤んでた。ナイターの残り照明が斜めに差し込んで、みくの顔の半分だけ明るくなってた。

(…これ、慰めていいのか? 彼氏いるんだぞ)

頭ではそう思ってるのに、体が先に動いてた。みくの肩に手を置いてた。

「…寂しかったんだな」

「…うん」

みくが俺の肩に頭を預けてきた。ニット帽が俺の首元に触れた。柔軟剤と、かすかに汗の匂い。

どのくらいそうしてたかわからない。2分か、5分か。

「…ね、宿どこ?」

「白馬駅の近くのペンション。歩いて15分ぐらい」

「うちも駅の近く…ホテルだけど」

「近いじゃん」

「…部屋、来る?」

心臓が跳ねた。いやいやいや。彼氏いるって言ったばっかりだろ。

「えっ…いいの?友達は?」

「友達は隣の部屋。うちシングルだから。…駄目?」

駄目じゃない。駄目なわけがない。でも、これは良くないって頭のどこかが言ってる。彼氏がいる子の部屋に行くのは、明確にアウトだろ。

…でも、みくの目を見たら断れなかった。

雪道を並んで歩いた。白馬の夜は静かで、街灯が少なくて、雪が降ると本当に音が消える。歩きながらグローブを外した手が触れて、そのまま繋いだ。みくの手は冷たかった。

ホテルのロビーを素通りして、エレベーターに乗った。3階の、312号室。カードキーでドアを開けて、中に入った瞬間、暖房の温かさに包まれた。

「散らかっててごめんね…」

ビジネスホテルの狭いシングルルーム。ベッドの上にみくの着替えとかドライヤーが置いてあって、急いで片付けてた。

「いいよいいよ、気にしないで」

みくがウェアを脱いだ。中は白いタートルネックのニットとデニム。ウェア着てたときはわかんなかったけど、細いのに胸があった。たぶんCかDぐらい。ニットの上からでもシルエットでわかる。

(見るな見るな見るな)

「飲み物、自販機で買ってくる。何がいい?」

「あ、じゃあお茶で」

みくが部屋を出て行った30秒ぐらいの間に、俺は何をしてるんだろうって冷静になりかけた。でもすぐにみくが戻ってきて、お茶とレモンサワーを持ってた。

「うち、ちょっと飲む。もらいもの」

ベッドに並んで座って、テレビをつけた。バラエティの再放送がやってたけど、どっちも見てなかった。

みくがレモンサワーを半分ぐらい飲んだところで、急に黙った。

「…ねえ」

「ん?」

「今日さ、リフト止まったとき…運命かなって思った」

「…大げさだよ」

「大げさじゃないよ。だって、あのタイミングで隣に座ってなかったら、今ここにいないじゃん」

確かにそうだ。電車を一本逃した幼馴染の話みたいな、偶然の積み重ね。俺がナイターに行こうと思わなかったら。リフトが止まらなかったら。みくが声をかけてこなかったら。

「…キスしていい?」

みくが俺の方を向いた。缶を床に置いて、体ごとこっちに向き直って。目がすこし潤んでて、唇が少し開いてて。

(いいのか、これ。本当にいいのか)

いいとか悪いとか、もう考えられなかった。

「…いいよ」

みくが目を閉じて顔を近づけてきた。唇が触れた。冷たかった。レモンサワーの味がした。

最初は軽く触れるだけだったのが、どっちからともなく深くなった。舌が触れて、みくが「んっ」って小さく声を出した。

離れて、見つめ合って、またキスした。2回目は最初から深くて、みくの手が俺の首の後ろに回ってきた。

「…みくさん」

「みく、でいいよ」

「…みく」

「ん…」

3回目のキスの途中で、俺の手がみくの腰に行ってた。ニットの裾から手を入れると、肌が冷たくて、みくが「ひゃっ」って跳ねた。

「手、冷たい…」

「ごめん」

「…いいよ、そのまま」

ニットの中に手を入れたまま、背中を撫でた。肌がすべすべしてた。ブラのホックに指が触れて、みくの呼吸が変わった。

「…脱がせて」

みくが両手を上げた。ニットを頭から抜くと、白いレースのブラジャー。鎖骨がきれいで、腕が細くて、ゲレンデでウェア着てた時と同じ人とは思えなかった。

「…きれいだよ」

「…ありがと」

ブラを外した。やっぱりCぐらい。大きくはないけど、形が綺麗で、先端がうっすらピンクだった。触ると柔らかくて、みくが息を詰めた。

「ん…っ」

胸に顔を埋めた。甘い匂いがした。ボディクリームか何か。舌で舐めると、みくが俺の髪を掴んだ。

「あっ…そこ、だめ…感じちゃう…」

みくの声がさっきまでと変わってた。ゲレンデで話してた時の明るい声じゃなくて、もっと低くて、甘くて、必死に抑えてる感じ。

デニムのボタンを外した。みくが腰を浮かせて脱ぐのを手伝って、白いショーツだけになった。

(本当にいいのか。2時間前に出会ったばかりの、彼氏がいる子を)

そう思った瞬間、みくが俺のTシャツの裾を掴んだ。

「…脱いで。不公平」

俺もTシャツを脱いだ。みくが俺の胸板に手を置いた。ぜんぜん鍛えてない普通の体なのに、みくは感心したみたいに撫でてた。

「…あったかい」

そのまま抱き合って横になった。肌と肌が触れる温度が、さっきまで外にいたせいでお互い少し冷たくて、それが体温で溶けていく感じがした。

みくのショーツに手をかけた。みくが息を止めた。

「…いい?」

「…うん」

触れた瞬間、みくが「ひっ」って声を出した。もう濡れてた。指で外側をなぞると、みくが目をぎゅっとつむって唇を噛んだ。

「んんっ…あっ…」

「気持ちいい?」

「…ばか、聞かないで…」

指を中に入れた。きゅっと締まって、みくの体がびくって跳ねた。

「あっ…だめ…もう…っ」

みくの手が俺のズボンの上から触ってきた。もうとっくに硬くなってて、みくの指がそれを確認するように撫でた。

「…大きい」

「…普通だよ」

「普通じゃないよ…」

ズボンとパンツを下ろされて、みくが直接握ってきた。冷たかった手がもう温かくなってて、ゆっくり動かしてくれた。

「っ…」

「ね…入れて」

「え…ゴムない」

「…うちある。ポーチの中」

みくが枕元のポーチから取り出した。コンビニで買ったっぽいやつ。

(彼氏と来る予定だったから持ってたのか)

その事実が一瞬チクッとしたけど、考えるのをやめた。

つけて、みくの上に覆いかぶさった。みくが足を開いて、俺を受け入れる体勢になった。

先端を当てた。みくの息がひっかかった。

「…入れるよ」

「…うん」

ゆっくり入れた。中があったかくて、きつくて、俺は声が出なかった。

「んっ…あ…っ」

みくが俺の背中に手を回した。爪が食い込んだ。

「…大丈夫?」

「大丈夫…動いて…」

ゆっくり腰を動かした。ベッドがギシギシ鳴って、隣の部屋に聞こえてないか心配になったけど、すぐにそんなことどうでもよくなった。

「あっ…あっ…気持ちいい…」

みくの声が耳元で直接聞こえる。ゲレンデで出会ってからずっと敬語だったのに、もう完全にタメ口で、それが妙にリアルで、信じられなかった。

(これ、夢じゃないよな)

みくが腰を合わせてきた。リズムが噛み合って、奥まで届くたびにみくが短く声を上げた。

「んっ…そこ…いい…っ」

「みく…っ」

「名前…呼んで…もっと…」

「みく…みく…っ」

「あっ…やば…っ…」

みくの中がきゅって締まって、俺も限界だった。

「っ…いきそう…」

「うん…いって…一緒に…っ」

みくが俺を強く抱きしめた。体が密着して、汗ばんだ肌が滑った。

「あっ…いく…っ」

「あぁっ…んん…っ!」

全身の力が抜けるみたいにイった。みくも同じタイミングで体を震わせて、爪が背中に深く食い込んだ。

しばらく二人とも動けなかった。俺がみくの上に崩れ落ちて、肩で息してた。

「…重い」

「あ、ごめん」

横に転がった。天井を見た。ビジネスホテルの白い天井。

みくが寝返りを打って、俺の胸に頬をつけてきた。

「…ねえ」

「ん?」

「もう一回、したい」

2回目は、みくが上に跨った。さっきよりずっと大胆で、自分から腰を振ってきた。

「んっ…あっ…奥に当たる…っ」

1回目と違ったのは、みくの表情だった。さっきは目をつむってたのが、今度はこっちを見てた。髪が揺れて、目が潤んでて、なんかもう、泣きそうな顔してた。

「…泣いてる?」

「泣いてない…っ…気持ちよすぎるだけ…」

嘘だと思った。たぶんみくは、彼氏のこととか、明日で終わるこの旅行のこととか、いろんなことが混ざって泣いてた。

でも俺にはどうすることもできなくて、ただ腰を掴んで、みくのペースに合わせて突き上げた。

「あっあっ…いく…いっちゃう…っ」

みくが体を反らせて、声を我慢するみたいに自分の手で口を押さえた。びくびくって痙攣して、中がぎゅうって締まった。

その締まりで俺もイった。2回目なのに、ものすごい勢いで出た。

みくが俺の上に倒れ込んできた。汗と涙で顔がぐちゃぐちゃだった。

「…大丈夫?」

「…大丈夫。ありがとう」

ありがとう、って言われて、なんか胸が苦しくなった。俺がお礼を言う側だろうに。

その後、狭いユニットバスのシャワーを交互に浴びた。みくが先に出てきた時、バスタオル一枚だけで、まだ髪から水が滴ってて、その姿にまた心臓を持っていかれた。

ベッドに戻って、並んで横になった。もう深夜1時を過ぎてた。

「…ねえ、連絡先交換しない方がいいよね」

えっ、と思った。俺はまさにLINE交換しようって言おうとしてたのに。

「…なんで?」

「だって、ずるいじゃん。うち彼氏いるのに、こんなことして、その上連絡先まで交換したら…ただの最低な女になる」

「…別に最低じゃないだろ」

「最低だよ。でも…後悔はしてない」

みくが俺の手を握った。

「今日だけ、でいい。今日だけの人でいさせて」

(…マジか)

受け入れるしかなかった。たった数時間で好きになった女の子の、最初で最後の頼みだった。

「…わかった」

「ありがとう。…ねえ、朝まで一緒にいてくれる?」

「いるよ」

みくが俺の腕の中に収まった。小さくて、あったかくて。外では雪がまだ降ってた。白馬の夜はとにかく静かで、みくの寝息だけが聞こえてた。

俺は眠れなかった。眠ったらこの時間が終わる気がして。

朝5時ぐらいに、みくが起きた。

「…朝だ」

「おはよう」

「寝た?」

「ちょっとだけ」

嘘だ。一秒も寝てない。

みくが身支度を整えて、俺も服を着た。部屋を出る前に、みくが振り返った。

「…お互い、いい社会人になろうね」

「…うん」

「じゃあね」

「じゃあね」

ホテルのロビーで別れた。朝の白馬は嘘みたいに晴れてて、昨日の雪が朝日でキラキラ光ってた。

宿に帰ったら田中が起きてて、「お前どこ行ってたんだよ」って聞かれた。

「ナイター滑ってて、そのまま近くの漫画喫茶にいた」

嘘をつくのは簡単だった。

帰りのバスで窓の外を見ながら、みくの顔を思い出してた。連絡先を聞けなかったのは、みくに止められたからだ。でも本当は、止められなくても聞けなかっただろうなって、自分でわかってた。

あれから3年経った。俺はSIerで毎日Excelを叩いてる。みくは信金に就職したんだろうか。彼氏とはどうなったんだろうか。

去年の冬、会社の同期に誘われて白馬に行った。あのナイターのリフトに乗った。もちろん誰もいなかった。リフトは止まらなかった。

あの夜のことを、俺はたぶん一生忘れない。忘れたくない、って言った方が正確かもしれない。

みく。お前がくれたあの一夜は、俺にとって大学生活で一番の思い出だよ。…って、本人には一生届かないんだけどな。


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