これ読んでる人で、親に「いい人いるんだけど会ってみない?」って言われたことある人いますかね。
俺は去年の冬、まさにそれを食らいました。27歳、都内のIT企業で社内SEやってる、顔面偏差値48ぐらいの男です。身長172、体重は聞かないでほしい。強いて芸能人で言えば、ハナコの岡部みたいな感じ。いや、あそこまで愛嬌はないか。
母親が突然LINEしてきて、「来週の日曜、荻窪の梅丘寿司に来なさい」と。なんだよ急に寿司かよ、ラッキーじゃんと思ったら、「向こうのお母さんと娘さんも来るから」って。
は?
「いや待って、それお見合いってこと?」
母親の返事は「お見合いなんて大げさなものじゃないわよ、ただの食事会」だと。いやそれお見合いだろ。令和にもなってそんなことある?
正直、断ろうと思った。だって俺、彼女いない歴=年齢ではないけど、最後に付き合ったのが大学3年のときで、もう4年以上経ってる。そんな状態でいきなり知らない女の人と飯食えって言われても困る。
でも母親が「あんたもう27でしょ、うちの近所の山田さんのとこの息子さんはもう子供いるのよ」攻撃を始めたんで、面倒くさくなって了承しました。
当日。荻窪駅を出て、12月の冷たい風に首を縮めながら店に向かった。紺のジャケットにチノパンという、就活の二次面接みたいな格好。(これで合ってんのか?)と不安しかない。
店に入ると、母親がすでに奥の座敷にいて、向かいにもう一組の母娘が座っていた。
娘さんのほうが、こっちを見て立ち上がった瞬間、俺の脳みそがバグった。
(……え、なっちゃん?)
小学校の頃、家が3軒隣だった女の子。幼稚園から小6まで、毎日一緒に帰ってた。中学に上がるときに向こうが引っ降して、そのまま連絡も途絶えた。なっちゃん――本名は夏希っていうんだけど、まさかここで出てくる?
向こうも明らかに固まってた。
「……え、翔太くん?」
「え、うそ。なっちゃん?」
母親たちはなぜかニコニコしている。(お前ら知ってて黙ってただろ)
なっちゃんは29歳になっていた。俺より2つ上。小学校のときはショートカットのボーイッシュな子で、休み時間はいつもドッジボールしてたような子だったのに。
目の前にいるのは、セミロングの黒髪をゆるく巻いた、橋本環奈を大人っぽくしたような……いや、もうちょっと目が切れ長で色気がある感じ。身長は160ぐらいで、ベージュのニットワンピースが似合いすぎてた。
(あのなっちゃんが、こうなるのか……)
とりあえず座って、寿司を食べ始めたんだけど、母親たちが完全に二人の世界に入ってしまい、俺となっちゃんは向かい合って残されることになった。
「翔太くん、全然変わってないね」
「いやいや、そっちこそ変わりすぎでしょ。誰かわかんなかったもん」
「えー、そう?……ちょっと嬉しいかも」
「なっちゃん今なにしてんの?」
「看護師。杉並の総合病院」
「マジで。あのドッジボール女が看護師……」
「ちょっと、ドッジボール女って何」
笑ってくれた。10年以上会ってなかったのに、この距離感の近さはなんだろう。幼馴染の貯金ってすごい。
中トロを食べながら、なっちゃんが少し声を落として言った。
「正直さ、今日来るの嫌だったんだよね。お母さんに無理やり……」
「あ、俺もそう。完全に同じ」
「でも、翔太くんでよかった。知らない人だったら帰ってたかも」
その言い方が、なんか、ずるかった。
食事が終わって、母親たちは「私たちはここでお茶するから、若い人たちは二人で散歩でもしたら?」と露骨にけしかけてきた。断る理由もないし、なっちゃんも「行こっか」と立ち上がったので、荻窪の商店街をぶらぶら歩くことになった。
12月の荻窪は、クリスマスのイルミネーションがちらほらあって、でもガチのデートスポットってわけでもない微妙な雰囲気。それがかえってちょうどよかった。
「翔太くんさ、小学校のとき私のこと好きだったでしょ」
突然すぎて、持ってたホットコーヒーを落としそうになった。
「は?なに急に」
「卒業式の日、手紙くれたじゃん」
……覚えてんのかよ。いや覚えてるよ俺も。小6の卒業式で、「中学別々になるけど、なっちゃんのことずっと好きでした」みたいなクソ恥ずかしい手紙を渡した。返事はもらえないまま、なっちゃんは引っ越した。
「……覚えてたんだ」
「当たり前じゃん。あの手紙、まだ持ってるよ」
(えっ?)
「嘘でしょ」
「嘘じゃないし。……返事、書こうとしたんだよ。でも引っ越しでバタバタして、新しい学校に慣れるのに必死で、気づいたら連絡先もわかんなくなって」
商店街の端のベンチに並んで座った。なっちゃんの横顔が街灯に照らされて、まつ毛の影が頬に落ちてた。
「ずっと気になってたんだよね。あの手紙の返事、まだ間に合うかな」
心臓がうるさい。27歳にもなって、こんな漫画みたいな展開あるのかよ。
「……間に合うっていうか、時効でしょもう」
「時効とかないし。……私も好きだったよ、翔太くんのこと」
は?いや、ちょっと待って。小学校のときの話? 今の話? どっち?
聞きたかったけど聞けなかった。なっちゃんが耳まで赤くなってて、それ見たら余計なこと言えなくなった。
「また会いたい」と俺から言った。なっちゃんは小さく頷いた。LINE交換して、その日は解散。帰りの中央線で、心臓がずっとバクバクしてた。
そこから週1ペースで会うようになった。荻窪のカフェ、新宿の映画館、下北沢の古着屋。付き合ってるのかって聞かれたら、正直よくわかんなかった。手も繋いでないし、告白もしてない。でも、毎回会うたびに別れが惜しくなる感じは、確実に「そういうやつ」だった。
3回目に会ったとき、吉祥寺のハモニカ横丁で飲んだ。なっちゃんは酒が入ると少しだけ大胆になる。
「ねぇ、翔太くんって今彼女いんの?」
「いないよ。4年ぐらい」
「4年!? 嘘でしょ。……よかった」
最後の「よかった」が小さすぎて、聞こえたふりをするか聞こえなかったふりをするか迷った。聞こえなかったふりをした。(チキンなので)
「私もね、2年前に別れてから誰ともいない」
「そうなんだ。なんで別れたの?」
「んー……なんか、違うなって。一緒にいて楽しいけど、ドキドキしないっていうか」
「ドキドキ大事?」
「大事だよ。……今、めっちゃしてるもん」
俺のほうを見ずに、焼き鳥を食べながら言った。ずるい。ずるいってそういうの。
4回目のデート。1月の終わり、雪が降りそうな寒い夜だった。新宿で買い物して、晩飯を食べて、駅に向かう途中でなっちゃんが立ち止まった。
「ねぇ、もうちょっと一緒にいたい」
時計を見たら22時過ぎ。なっちゃんの家は荻窪で、明日は夜勤明けの休みだと言った。
「どっか行く? カラオケとか?」
(なに言ってんだ俺は。カラオケって)
「……翔太くんの家、近いんでしょ」
俺の家は中野。新宿から中央線で一駅。
「近いけど……来る?」
「うん」
歩いて向かった。無言だった。寒さのせいか緊張のせいか、二人とも黙ってた。中野駅から自分のアパートまでの道が、いつもの3倍長く感じた。
1Kの部屋に二人で入った瞬間、狭さが際立つ。
「あー、散らかっててごめん」
「男の人の部屋って感じ。翔太くんらしい」
なっちゃんはコートを脱いで、小さいソファに座った。ニットの下の体のラインが目に入って、慌てて目を逸らした。
コーヒーを淹れて渡した。なっちゃんが一口飲んで、マグカップを置いた。
「ねぇ」
「ん?」
「あの手紙の返事、していい?」
心臓が止まるかと思った。
「……いいよ」
「私も好きです。15年越しだけど」
なっちゃんが笑った。泣きそうな顔で笑ってた。
気づいたら抱きしめてた。なっちゃんの体があったかくて、シャンプーの匂いがした。華奢なようで、ちゃんと肉がついてる感じ。腕の中で少し震えてた。
「……ずっと会いたかった」
「俺も」
顔を上げたなっちゃんの目が潤んでて、そのまま唇が触れた。
最初は軽いキスだった。でもすぐにお互いの唇が開いて、舌が触れた瞬間、頭の中が真っ白になった。
15年分の空白を埋めるみたいに、夢中でキスした。なっちゃんの手が俺のジャケットの裾を掴んでて、離す気がないのが伝わってきた。
「翔太くん……」
「なっちゃん、俺……」
「いいよ」
ソファから立ち上がって、ベッドのほうに移動した。なっちゃんが自分からニットに手をかけて、頭の上から脱いだ。白いブラジャー。鎖骨が綺麗で、思わず指でなぞった。
「ん……くすぐったい」
ブラを外すと、思ってたより大きかった。Eカップあるって後から聞いた。あのドッジボール少女が、こんなことになってたとは。
胸に顔を埋めると、なっちゃんが俺の髪を撫でてきた。乳首を舌で転がすと、小さく声が漏れた。
「あ……っ、そこ……弱い……」
看護師って普段は冷静な人が多いと思うんだけど、なっちゃんは全然そんなことなかった。敏感で、触るたびにビクッて反応する。
スカートを脱がせて、下着越しに触れると、もう濡れてた。
「やだ……もうこんなになってる……」
「恥ずかしがんなくていいよ」
「恥ずかしいよ……だって幼馴染だよ……」
その言葉が、余計に興奮させた。幼馴染だから恥ずかしい。幼馴染だからこそ、こうなってることの背徳感みたいなのがある。
下着をずらして直接触れた。なっちゃんが腰を浮かせて、声を殺そうとしてる。
「んっ……あ、そこ……もうちょっと上……」
言われたとおりにクリを撫でると、太ももがぎゅっと閉じた。
「気持ちいい?」
「……うん。翔太くんの手、あったかい……」
ゆっくり指を入れた。中があったかくて、きゅっと締まった。二本目を入れると、なっちゃんの呼吸が荒くなった。
「あぁ……っ、だめ……そんなされたら……」
指を動かしながら、胸を舐め続けた。なっちゃんが俺のTシャツを掴んで、体をくねらせてる。
「もう……もう無理……イっちゃう……っ」
体をビクビクさせて、イった。俺の指が締めつけられる感覚がすごかった。
しばらく荒い呼吸を繰り返してから、なっちゃんが俺のベルトに手を伸ばしてきた。
「……翔太くんも、脱いで」
俺も服を脱いだ。なっちゃんが下を見て、少し目を見開いた。
「……おっきい」
(いや、普通だと思うけど)
なっちゃんが手で握ってきた。看護師の手って、なんか独特のしなやかさがある。ゆっくり上下に動かされて、それだけで頭がぼーっとした。
「やば……手つきよすぎ……」
「えっ、そうかな……こういうの久しぶりだから自信なくて」
2年ぶりって言ってたもんな。でも俺は4年ぶりだから、正直もうこの時点でかなりギリギリだった。
「なっちゃん、入れたい……」
「……うん。ゴム、ある?」
財布の中に一個だけあった。いつ買ったか覚えてないけど、使用期限は大丈夫だった。(こういうときに限って確認する几帳面さ)
ゴムをつけて、なっちゃんの上に覆いかぶさった。脚を開いてくれて、先端を当てた。
「……ゆっくりね」
ゆっくり入れた。あったかくて、きつくて、途中でなっちゃんが「んっ」って声を漏らした。
「痛い?」
「ううん……久しぶりだから、ちょっとだけ……大丈夫」
全部入ったとき、なっちゃんが俺の背中に手を回してきた。爪が軽く食い込んで、それがまたたまらなかった。
ゆっくり動き始めた。なっちゃんの顔が目の前にあって、目が合うとお互い少し笑った。
「なんか……変な感じ。翔太くんとこういうことしてるの」
「俺もそう思ってる。……でも嫌じゃないだろ?」
「嫌なわけないじゃん……ばか……」
腰を動かすスピードを上げた。なっちゃんが声を抑えきれなくなってきて、俺の耳元で甘い声が響く。
「あっ……あぁ……翔太くん……っ」
「なっちゃん……やばい……気持ちよすぎる……」
なっちゃんが脚を俺の腰に絡めてきた。密着度が上がって、奥に当たるたびにビクッてなる。
「そこ……っ、だめ……すごい……っ」
(だめって言いながら、脚の力強くなってんだよなぁ)
なっちゃんの中がキュッと締まって、体が震え始めた。
「イく……っ、イっちゃう……翔太くん……っ!」
なっちゃんがイったのと同時に、俺も限界だった。
「俺も……もう……っ」
中で膨張する感覚がして、ゴムの中に出した。頭が真っ白になって、しばらく動けなかった。
なっちゃんの上に崩れ落ちて、二人とも荒い呼吸を繰り返した。
「……重い」
「あ、ごめん」
横にずれて、天井を見た。なっちゃんが横向きになって、俺の胸に頭を乗せてきた。
「ねぇ、私たちってさ」
「うん」
「付き合ってる……よね?」
「付き合ってるでしょ。もう」
「ふふ。よかった。……ちゃんと言ってほしかったの」
それから少し休んで、なっちゃんがシャワー浴びたいって言うから、先に入ってもらった。狭いユニットバスから「シャンプー何これ、メリットじゃん」って声が聞こえてきて笑った。
なっちゃんが出てきて、俺のTシャツを借りて着てた。膝丈ぐらいで、下は何も履いてない。
(これ反則だろ)
俺もシャワー浴びて出てきたら、なっちゃんがベッドの端に座ってスマホいじってた。
「お母さんに『泊まる』って送った」
「えっ。大丈夫なの、それ」
「29だよ? さすがに何も言われないし」
まぁそうか。でもなんか、この状況に俺のほうがドギマギしてた。
ベッドに二人で横になった。シングルベッドだから、ぴったりくっつかないと落ちる。
「ねぇ……もう一回したい」
なっちゃんが俺のTシャツの裾から手を入れてきた。腹筋のあたりを指でなぞられて、一瞬で反応した。
「……ゴム、もうないんだけど」
「……私、ピル飲んでるよ」
「え、そうなの?」
「生理重いから。……だから、大丈夫」
なっちゃんが上に乗ってきた。Tシャツを自分で脱いで、裸のまま俺にまたがった。さっきとは全然違う表情。少し余裕があって、でも頬は赤い。
生で入れた瞬間、さっきとは比べものにならない感覚が走った。
「うっ……全然違う……」
「あ……っ、私も……直接のほう、全然……」
なっちゃんがゆっくり腰を動かし始めた。上から見下ろされて、揺れる胸と、とろんとした目が視界いっぱいに広がる。
「翔太くん……好き……」
「俺も。……ずっと好きだった、たぶん」
「たぶん」って言ったのは嘘じゃなくて、正直、15年間ずっと好きだったかって言われたら自信がない。でも、なっちゃんと再会して、あの手紙のことを覚えてくれてたって聞いた瞬間に、全部が繋がった気がした。あの頃の気持ちが、消えてなかったんだって。
なっちゃんの動きが速くなった。俺も下から突き上げた。
「あぁっ……だめ……奥に当たって……」
「なっちゃん……中にきつい……」
「だって……気持ちよすぎて……勝手に締まっちゃう……」
なっちゃんの腰の動きが乱れてきた。俺は上体を起こして、なっちゃんを抱きしめた。対面座位の形になって、さらに深く入った。
「あっ……あっ……もうだめ……っ」
「一緒にイこう……」
「うん……っ、出して……中に……っ」
なっちゃんの中がぎゅうっと締まった瞬間、俺も限界を超えた。ゴムなしで出す感覚は初めてで、頭の奥がスパークした感じだった。
「っ……出てる……」
「あぁ……あったかい……」
しばらく抱き合ったまま動けなかった。なっちゃんが俺の肩口に顔をうずめて、体を小さく震わせてた。
「……泣いてる?」
「泣いてない。……泣いてないし」
泣いてた。
「ただ……嬉しくて。会えて、本当によかったなって」
「俺も。……あのとき母親の話聞いてなかったら、なっちゃんに会えてなかったんだよな」
「ね。お母さんたちに感謝だね」
「死んでも直接は言わないけど」
なっちゃんが鼻で笑った。こういうとこは昔と変わってない。
朝方、なっちゃんのスマホのアラームで目が覚めた。隣でまだ寝てるなっちゃんの顔は、小学生のときの面影が残ってた。寝顔だけは変わんないんだなって思った。
「……おはよ」
「おはよ」
「ねぇ、翔太くん」
「なに?」
「次いつ会える?」
「いつでも」
「じゃあ明日」
「近いな」
「15年分取り返さなきゃいけないから」
それからの俺たちは、週3〜4で会うようになった。なっちゃんの荻窪の部屋に行ったり、俺の中野の部屋に来たり。付き合い始めて3ヶ月で半同棲みたいな状態になって、春には正式に同棲を始めた。中野と荻窪の間を取って、高円寺に新しい部屋を借りた。
母親には「あんたたちうまくいってるの?」と毎週のようにLINEが来る。うまくいってるどころじゃないんだけど、詳しくは絶対に言えない。
あの日、嫌々ながら荻窪の寿司屋に行った俺に、グッジョブと言いたい。
あと、俺が小6のときに渡した手紙。先日なっちゃんの実家に行ったとき、マジで見せてもらった。折り目がつきまくったルーズリーフに、鉛筆の字が半分消えかけてた。「なっちゃんのことずっとすきでした。中学べつべつでもわすれません」って書いてあって、自分で書いたのに死ぬほど恥ずかしかった。
でもなっちゃんは、それを15年間の引っ越しを全部乗り越えて持ってたんだよな。
……女ってすげぇなと思いました。以上です。