これ、俺の人生で一番「運命ってあるんだな」って思った話です。
社会人3年目、26歳のとき。今から2年前の話なんだけど、ちょっと聞いてほしい。
まず俺のスペックから言うと、身長172cm、体重65kg、顔面偏差値は自分で言うのもアレだけど48ぐらい。フツーです。フツーの中のフツー。大学時代にサークルの飲み会で「お前って存在感薄いよな」って言われたのが地味にトラウマになってるぐらいには、パッとしない男です。
新卒で都内の中堅IT企業に入って、法人営業をやってた。毎日スーツ着て都営新宿線に乗って、神保町のオフィスに通う日々。仕事は嫌いじゃなかったけど、特にモテるわけでもなく、彼女なしの状態が1年半ぐらい続いてた。
で、話は6年前に遡る。俺が大学2年、20歳のとき。
その日は高円寺の居酒屋でサークルの飲み会があって、終電ギリギリで中央線に乗った。金曜の夜だから車内はまあまあ混んでて、酔っ払いもちらほらいた。
俺はドア横のスペースに立って、スマホをいじってた。次の駅で降りるつもりだったから、ぼーっとしてたんだけど。
ふと、車両の奥の方から声が聞こえた。
「やめてください…」
(ん?)
最初は聞き間違いかと思った。でも、もう一回聞こえた。
「ほんとに、やめてください…っ」
見ると、制服を着た女の子が、50代ぐらいの酔っ払いのおっさんに腕を掴まれてた。おっさんはベロベロに酔ってて、何かブツブツ言いながら女の子の腕を離さない。
周りの乗客は見て見ぬふり。金曜深夜の中央線あるあるだけど、酔っ払いに関わりたくないんだろう。
女の子は怖がって半泣きで、でも大声は出せないみたいだった。
(いや、これはダメだろ…)
正直、俺だって関わりたくなかった。酔っ払いに絡まれるの怖いし、万が一殴られたりしたら嫌だし。でもさ、あの子の顔を見たら、体が先に動いてた。
「すいません、その子、俺の連れなんですけど」
自分でもびっくりするぐらいスッと出た言葉だった。
おっさんが振り向いて、俺を見た。目が据わってる。
「あぁ?なんだお前…」
「いや、だからその子俺の連れなんで。離してもらっていいですか」
「うるせぇな…関係ねぇだろ…」
腕を離さないおっさんに、俺は一歩近づいた。心臓バクバクだったけど、声だけは落ち着かせた。
「おっさん、次の駅で駅員呼びますよ。マジで」
スマホをかざして見せた。録画してるフリ。実際は録画ボタン押してなかったけど。
おっさんは舌打ちして、女の子の腕をパッと離した。次の阿佐ヶ谷駅で降りていった。
女の子が俺を見上げた。
泣いてた。涙がぽろぽろ落ちてて、鼻も赤くなってて。
でも、その瞬間思ったのは「この子めちゃくちゃかわいいな」だった。不謹慎だけど。
高校生ぐらいだろうか。黒髪のストレートロングで、目がすごく大きくて、橋本環奈を大人しくしたような顔立ちだった。身長は155cmぐらい。制服のブレザーから華奢な体つきが見える。
「あ、ありがとうございます…っ」
「大丈夫?怪我とかしてない?」
「だ、大丈夫です…。怖かったです…」
「まだ震えてるじゃん。次どこで降りるの?」
「に、西荻窪です…」
「俺も荻窪だから、一緒に行こうか。もう絡まれないように」
「は、はい…ありがとうございます…」
二駅ぶん、隣に立ってた。女の子はまだ少し震えてて、俺のジャケットの袖をちょっとだけ掴んでた。それがなんか、すごく守らなきゃって気持ちにさせた。
(いや俺、なに熱くなってんだ。この子高校生だぞ多分)
西荻窪に着いて、改札を出たところで女の子が立ち止まった。
「あの…お名前、聞いてもいいですか?」
「いや、名前とか別にいいよ。気をつけて帰りな」
「で、でも…!」
「終電で一人は気をつけた方がいいよ。じゃあね」
かっこつけたかったわけじゃない。いや、ちょっとかっこつけたかったのかもしれない。でもそれ以上に、高校生の女の子に連絡先聞くのは違うだろっていう、変なプライドがあった。
(まあ、もう会うこともないだろうし)
そう思って、俺は反対方向に歩いて行った。
それから6年。
俺は社会人3年目になってた。担当してた案件で、新規の取引先に初めて訪問する日のこと。場所は品川シーサイドにある、けっこう大きめのメーカーだった。
受付でアポイントの名前を伝えようとした瞬間、受付の女の子と目が合った。
息が止まった。
黒髪のストレートロング。大きな目。橋本環奈を少し大人にして、今田美桜を混ぜたような顔。スーツ姿で、身長は160cmぐらいに伸びてた。胸元のあたりは控えめに見てもD以上はありそうで、大学生のころの華奢な印象とはだいぶ違ってた。
(え…?嘘だろ…?)
その子も俺を見て、一瞬固まった。
そして、みるみる顔が赤くなっていった。
「あ、あの…っ」
「…え?」
「終電の…方、ですよね…?」
(マジかよ…覚えてんのかよ…)
鳥肌が立った。6年前の、あの夜の中央線。震えてた女の子。俺のジャケットの袖を掴んでた、あの手。
「…西荻窪の子?」
「はいっ…!覚えてて、くれたんですね…!」
目がうるっとしてた。6年前と同じように。でも今度は怖くて泣いてるんじゃなくて、嬉しくて泣きそうになってる顔だった。
後ろで待ってる同僚の視線が痛い。
「あー…えっと、今日14時から御社の調達部の山田さんとアポイントいただいてる、ウェブクロスの加藤です」
仕事モードに切り替えた。さすがに受付でこの話の続きはできない。
「は、はい…!ご案内します…!」
会議室に通されるとき、彼女が名刺をそっと差し出してきた。受付の子が名刺って珍しいなと思ったけど。
名刺には「総務部 宮本 日向(みやもと ひなた)」と書いてあった。そして名刺の裏に、ボールペンで小さく書いてあった。
「お礼をさせてください」
その下に、LINEのIDが書いてあった。
(この子、俺のためにわざわざ名刺を…?)
商談中、正直あんまり頭に入ってこなかった。隣の先輩に「加藤、今日なんかボーっとしてない?」って言われたけど、いやそれどころじゃないんですよ先輩。
会社に戻ってから、速攻でLINEを追加した。
「今日はありがとうございました。終電の加藤です」
(いや、「終電の加藤」ってなんだよ。もうちょいマシな自己紹介あっただろ)
既読がすぐについた。
「本当にびっくりしました!ずっとお礼が言いたかったんです。あの時は名前も聞けなくて、ずっと後悔してて…」
「こっちこそ、まさか再会するとは思わなかった。元気そうでよかった」
「あの時のこと、ずっと忘れられなくて。改めてお礼をさせてください。ご飯とか、ご迷惑じゃなければ…」
迷惑なわけがない。あの橋本環奈似の女の子が、6年経ってさらにとんでもないことになってるのに、飯を断る理由がどこにある。
「全然。行こう」
次の土曜日、品川の居酒屋で飲むことになった。
当日。待ち合わせ場所の品川駅港南口に、宮本さんが立ってた。
白いブラウスにベージュのスカート。仕事のときはスーツだったから分からなかったけど、私服だとスタイルがえぐい。ウエストが細くて、でも胸と尻はしっかりあって。身長160cmでこのバランスは反則だろ。
「加藤さん!こっちですー!」
笑顔で手を振ってる。かわいすぎて直視できない。
居酒屋に入って、生ビールで乾杯した。
「てか、あの時高校生だったよね?今いくつなの?」
「高1でした。今は22です。今年の4月に入社したばっかりで」
「22か…俺26だから、4つ差か」
「はい。あ、そんなに離れてないですね」
(いや、あの時は14と20だったんだぞ。あの時なんかしてたら完全にアウトだったな…名前聞かなくて正解だったわ…)
「あの、加藤さんって…あの後、私のこと覚えてました?」
「正直に言っていい?」
「はい」
「めちゃくちゃ覚えてた。忘れられるわけないだろ、あんなかわいい子」
「っ…!///」
ビールのグラスで顔を隠すようにして、耳まで赤くなってた。
「…私も、ずっと忘れられなかったんです。名前も知らないのに、ずっと」
「6年もか」
「6年もです。…変ですかね」
「変じゃないよ。俺だって、中央線乗るたびにちょっと探してたし」
「えっ…本当ですか?」
「本当。でもまあ、見つかるわけないよな。名前も知らないし」
「…私、あの後しばらく、わざと終電に乗ってたんです。また会えるかもって。お母さんにめちゃくちゃ怒られましたけど」
(え、この子…マジで俺のこと…?)
いや、待て。冷静になれ。これはお礼の飯だ。6年前に助けてくれた人への感謝の気持ちで来てくれてるだけだ。勘違いしたら痛い目を見る。俺みたいなフツメンが、この子に好かれてるわけがない。
2軒目に行こうということになって、近くのバーに入った。カウンターで隣に座ると、距離が近い。彼女の髪からシャンプーのいい匂いがして、ちょっと頭がおかしくなりそうだった。
「加藤さんって、彼女いるんですか?」
「いない。1年半ぐらい」
「…そうなんですか」
なんか、ちょっと嬉しそうだった。気のせいか。気のせいだろ。
「宮本さんは?彼氏とかいるでしょ、そのスペックなら」
「いないです。大学でも付き合ったことなくて」
「嘘だろ」
「本当です。なんか…比べちゃうんですよね」
「比べるって、誰と?」
「…」
黙ってこっちを見てた。潤んだ目で。
(いやいやいや、これは…いや、でも、まさか…)
「…俺?」
「…怒りますか?」
「いや、怒らないけど…。でも俺、あのとき普通のことしただけだよ?」
「普通じゃないです。誰も助けてくれなかったのに、加藤さんだけが来てくれた。名前も聞かずに去っていった。…あの背中、ずっと忘れられなかったんです」
「…」
俺はカクテルを一口飲んだ。手が震えてた。
正直、嬉しかった。嬉しすぎてどうしていいか分からなかった。でも同時に怖かった。この子は、6年前の「助けてくれた人」っていう幻想に恋してるだけじゃないのか。本物の俺を知ったら、がっかりするんじゃないか。
「あのさ、宮本さん」
「はい」
「俺、あの時かっこよかったかもしれないけど、普段は全然だよ。休みの日はずっとゲームしてるし、部屋は汚いし、料理できないし。あの時の印象で期待されたら、たぶん裏切ることになる」
自分でも何を言ってるのか分からなかった。好きだって言ってくれてる子に、わざわざネガティブな情報を並べるとか、バカすぎる。
でも宮本さんは笑った。
「知ってますよ、そういうの」
「…え?」
「加藤さんのSNS、こっそり見つけてたので。ゲームの実況配信とか、カップ麺のレビューとか」
「は?マジで?いつから?」
「2年ぐらい前に…。あの時の電車の車両の防犯カメラの映像を手がかりに…って、これ言ったら引きますよね」
「いや引かないけど…ちょっと怖い」
「ですよね…。ごめんなさい。でも、加藤さんの普段の姿を見て、それでもやっぱり好きだなって思ったんです。ゲームしてるときの顔、楽しそうで」
(この子、ガチだ…)
俺の配信、登録者28人しかいないんだけど。そのうちの1人がこの子だったのか。
「…今度、一緒にゲームする?」
「えっ、いいんですか!?」
目がキラキラしてた。さっきまでの色っぽい雰囲気が吹っ飛んで、完全に嬉しさ全開の22歳の女の子の顔になってた。
(かわいい。これはヤバい。完全に落ちた)
バーを出たのは23時過ぎだった。
「終電大丈夫?送るよ」
「…大丈夫です。あの、加藤さん」
「ん?」
「今日で終わりにしたくないです」
まっすぐ俺を見てた。目は酔ってちょっとトロンとしてたけど、言葉はちゃんとしてた。
「…俺も。でも、酔ってる時に大事なこと決めない方がいい」
「酔ってません。…嘘です、ちょっと酔ってます。でも頭はちゃんとしてます」
「宮本さん」
「ひなたでいいです」
「じゃあ、ひなた」
名前を呼んだら、彼女の目からぽろっと涙がこぼれた。
「…6年間、ずっとこうやって名前で呼んでほしかった」
もうダメだった。理性とか、冷静さとか、全部どっか行った。
「…うち来る?」
「…はい」
荻窪の俺のアパートまで、電車で30分ぐらい。中央線に乗った。6年前と同じ路線。
隣に座ったひなたが、俺の腕にそっと自分の手を絡めてきた。
「…6年前は、ここ掴んでましたよね。袖」
「覚えてんの、そんなことまで」
「全部覚えてます」
荻窪駅で降りて、アパートまで歩いた。築30年の1Kで、別にきれいでもないんだけど、朝に一応掃除しておいてよかった。いや、なんで俺は朝掃除したんだろう。こうなることを予想してたのか。してないだろ。
「散らかっててごめんね」
「全然です。あ、ゲーミングチェアだ。配信で見たやつ」
「やっぱ見てたんだ…」
水を飲ませて、ソファに並んで座った。テレビでも付けようかと思ったけど、そんな余裕なかった。
隣にいるひなたが、俺の方に体を傾けてきた。肩に頭を乗せてくる。シャンプーの匂いがまた近くなる。
「加藤さん」
「…うん」
「キス、してもいいですか」
敬語でキスの許可を求めてくるの、なんかもう反則だった。
俺は何も言わずに、ひなたの顎に手を添えて、唇を合わせた。
柔らかかった。ほんの少しアルコールの味がして、でもその奥に甘い味がした。
「ん…」
最初は触れるだけだったのが、ひなたの方から深くしてきた。舌がちょっとだけ入ってきて、俺のを探すみたいに動く。たどたどしいけど、一生懸命な感じが伝わってきた。
(この子、キスに慣れてない…)
離すと、ひなたの顔が真っ赤だった。
「…初めてだったんですけど、変じゃなかったですか…?」
「え、キス初めてなの?」
「…はい。彼氏いたことないって言いましたよね…」
マジか。22歳でキスも初めてって。この顔とスタイルで。
(俺なんかでいいのかよ、本当に)
もう一回キスした。今度は俺からちゃんとリードして、ゆっくり舌を絡めた。ひなたが小さく「ん…」って声を出して、俺のシャツを掴んだ。
その手が震えてた。6年前と同じように。でも今度は、怖いからじゃない。
「…怖い?」
「怖くないです。…緊張してるだけ」
「無理しなくていいからね」
「無理じゃないです。…したい、です。加藤さんと」
その言葉を聞いて、俺は彼女をそっとソファに倒した。
ブラウスのボタンを一つずつ外していく。白いレースのブラが見えた。
「きれい…」
ひなたが腕で胸を隠そうとしたけど、その腕をやさしくどけた。
「…恥ずかしい」
「見せて。ちゃんと見たい」
ブラを外すと、思ってた以上だった。Eカップあるんじゃないかってぐらい、形がきれいでボリュームがあった。色白の肌に、薄いピンクの先端がちょっと固くなってて。
(これ、俺が初めて見てるんだよな…。この体を。信じられない…)
胸に顔を埋めて、舌先で先端を転がした。
「あっ…」
小さく声が出た。ひなたの手が俺の頭に添えられて、指が髪に絡む。
「気持ちいい?」
「…わかんない。でも、止めないで…」
もう片方も同じようにして、交互に吸ったり舐めたりした。ひなたの呼吸がだんだん荒くなっていく。
スカートに手を入れると、太ももが柔らかくて、ぴくっと震えた。
「あ…そこ…」
下着の上から触ると、もう濡れてた。布越しにぬるっとした感触がして、ひなたが顔を横に向けた。
「…こんなの、初めてで…」
「直接触っていい?」
「…はい」
下着をずらして、直接触れた。指がぬるっと滑って、ひなたが「ひっ」と声を上げた。
ゆっくり指を動かす。上の方にある膨らみを探り当てると、ひなたの腰がびくっと跳ねた。
「あっ、そこ…っ、だめ…っ」
「だめ?やめる?」
「だめじゃなくて…っ、すごくて…っ」
指の動きを速くすると、ひなたが俺の肩にしがみついてきた。耳元で聞こえる息遣いがどんどん荒くなっていく。
「あ、あ、加藤さ…っ、やば…っ…!」
体がびくびくって大きく震えて、ひなたの手が俺の背中をギュッと掴んだ。そのまま数秒、息を止めるみたいにして、それからふっと力が抜けた。
「はぁ…はぁ…」
「…イった?」
「…たぶん…。自分でしたことも、ないから…こういうの…」
(自分でしたこともないのに、俺の手で初めてイったの…?いや、ちょっと待って。これ夢じゃないよな?)
ひなたが俺の顔を両手で挟んで、自分からキスしてきた。さっきよりも大胆で、舌を絡めてくる。
「…入れてほしい」
「…ゴム、持ってくる」
ベッドサイドの引き出しからコンドームを出した。正直、最後に使ったのいつだよって思いながら、装着した。
ソファからベッドに移動して、ひなたの脚の間に自分の体を入れた。
「初めてだから、痛かったら言って。すぐ止めるから」
「…うん」
敬語が崩れてた。それがなんか、距離が縮まった感じがして嬉しかった。
先端を当てて、ゆっくり押し込んだ。ひなたの眉間にしわが寄る。
「っ…痛い…」
「止める?」
「大丈夫…。ゆっくりなら…大丈夫」
少しずつ入れていく。途中でひなたが俺の手を握ってきた。きつく、きつく。
全部入ったとき、ひなたが長い息を吐いた。
「…入った?」
「うん。全部入ったよ。大丈夫?」
「…思ったより、大丈夫。痛いけど…嬉しい」
その言葉に、なんか胸が詰まった。
ゆっくり動き始めた。ひなたがちょっと顔をしかめるけど、徐々にその表情が変わっていく。痛みが引いて、別の感覚に置き換わっていくのが分かった。
「あ…っ、なんか…変な感じ…」
「痛い?」
「違う…。痛くない…。なんか、奥が…ずんって…」
少しずつ腰の動きを速くした。ひなたの声が変わっていく。
「あ…あっ…加藤さ…っ」
「名前、呼んでいいよ。達也って」
「た、達也さん…っ、気持ちいい…」
自分の名前を呼ばれた瞬間、頭の中が真っ白になった。この子が、俺の名前を、こんな声で呼んでる。6年前に名前も教えなかったのに。
腰の動きが自然と速くなって、ひなたが声を押し殺すように唇を噛んだ。
「声、出していいよ」
「…でも、隣に聞こえ…っ」
「いいから」
「あっ、あっ…達也さん…っ、すごい…奥…っ」
ベッドが軋む音と、ひなたの声が部屋に響く。1Kの狭い部屋が、6年分の想いで満たされていくみたいだった。
(いや、そんな詩的なこと考えてる余裕ないんだけど。気持ちよすぎて)
「やば…俺もう…」
「いいよ…出して…っ」
「ゴムしてるから…そのまま…っ」
「うん…っ、一緒に…っ」
ひなたの中が締まってきて、もう限界だった。最後に深く突いて、中で出した。
「っ…!」
「あ…っ、あああ…っ…!」
ひなたも同時にイったみたいで、体がガクガク震えてた。俺に抱きついたまま、しばらく二人とも動けなかった。
「はぁ…はぁ…」
「…大丈夫?」
「…大丈夫。すごかった…」
抱き合ったまま、しばらくそうしてた。ひなたの心臓の音が聞こえた。速い。俺のも速い。
ゴムを処理して、タオルで体を拭いてあげた。ひなたは恥ずかしそうに、でもどこか満足そうな顔をしてた。
「痛くなかった?」
「最初だけ。…途中から、気持ちよかった。本当に」
「…よかった」
少し休んでから、ひなたが俺の胸に顔を埋めてきた。
「…もう一回、していい…?」
二回目は、さっきよりゆっくりだった。お互いの体の感覚に慣れてきて、どこが気持ちいいのかちょっとずつ分かってきた。ひなたが自分から腰を動かすようになったのが、正直めちゃくちゃ興奮した。さっきまで「初めてです」って言ってた子が、自分から求めてくるっていうのは、男としてこれ以上ないぐらい嬉しいんですよ。
二回目が終わったとき、時計を見たら2時を回ってた。
「寝よっか」
「…うん。あ、でも」
「ん?」
「これって…私たち、どういう関係なんですか…?」
それを聞かれて、笑ってしまった。
「付き合おうよ。普通に」
「…え、いいんですか?」
「いいも何も、ここまでしといて付き合わないとかあり得ないだろ」
「…っ、嬉しい…!」
また泣いてた。この子ほんとによく泣くな。
「てか、取引先の子と付き合うの、会社的にどうなんだろ…」
「あ…。そこは…どうにかしましょう」
「どうにかって」
「6年待ったんですよ?会社の規則ぐらいどうにかします」
この子、見た目はおっとりしてるけど、芯がめちゃくちゃ強い。
朝、隣でひなたが寝てた。朝日が差し込んで、白い肌がきれいだった。寝顔を見ながら思った。
6年前のあの夜、俺がもし見て見ぬふりをしてたら。名前を聞いてたら。どっちに転んでも、今この瞬間はなかったかもしれない。助けたから繋がって、名前を聞かなかったから6年間ずっと想い続けてくれた。
全部が、ちょうどよかったんだ。
ひなたが目を開けて、俺を見て、寝ぼけた顔で笑った。
「…おはよう、達也さん」
「おはよう。今日はどこか行く?」
「…もうちょっと、こうしてたい」
俺の腕に顔を押し付けて、また目を閉じた。
今は付き合って2年目。取引先との関係は担当替えしてもらって問題なし。来月、ひなたと一緒に住む部屋を探しに行く予定だ。荻窪あたりで、中央線沿いがいいって、ひなたが言ってる。
あの中央線がなかったら、今の俺たちはいない。
おっさんありがとう。いや、おっさんに感謝するのは違うか。