親友の家に泊まりに行ったら姉がいて、翌朝ふたりきりの台所で何かが始まってしまった件

これは俺が高3のときの話。まだ誰にも言ってない。

俺、木村ユウタ。身長172の普通体型、顔面偏差値は自己採点で48ぐらい。よく言えば「清潔感だけはある」、悪く言えば「特徴がない」。高校では写真部に所属していて、文化祭のとき廊下に貼った風景写真を「いい写真だね」って言ってくれたのが担任だけだった、そういうレベルの存在感です。

で、親友の田中。こいつとは高1からの付き合いで、ゲーム好き同士ですぐ仲良くなった。田中は実家が東京の練馬で、西武池袋線の大泉学園駅から歩いて8分ぐらいのところに住んでた。俺は同じ路線の石神井公園だから、行き来しやすかったんだよな。

高3の夏休み、8月の頭。田中から「新しく買ったゲーム一緒にやんない?泊まりで」って誘われた。親にはちゃんと許可とって、土曜の昼過ぎに田中んちに向かった。

田中んちには何回か行ったことあったけど、家族とちゃんと話したことはほとんどなかった。お母さんに「いらっしゃい」って言われるぐらい。田中には3つ上の姉がいるって聞いてたけど、会ったことは一度もなかった。大学で一人暮らししてるって話だったし。

玄関で靴を脱いでると、リビングのほうから足音が聞こえた。

「あ、ソウタの友達?こんにちは」

振り向いたら、Tシャツにデニムのショートパンツ、髪をゆるく一つにまとめた女の人が立ってた。

(…は?)

橋本環奈を大人っぽくしたような顔。いや、ちょっと違うな。目元はもう少しきりっとしてて、笑うとくしゃっとなる感じ。身長は163ぐらいかな、すらっとしてるけどTシャツの下の胸の膨らみがしっかりわかる。たぶんEカップぐらいある。足が白くて細くて、ショートパンツから伸びてるラインが眩しくて、俺は3秒ぐらい固まった。

「あっ、こんにちは…!お邪魔します」

声が裏返りかけた。田中が階段の上から顔を出す。

「おい田中、お前姉ちゃんいたの」

「今日からちょっと実家にいるの。ゼミの課題やりに。邪魔しないから気にしないでね」

姉は笑ってリビングに戻っていった。田中が小声で「夏休みだけ帰ってきてんだよ、マジうるさいんだよな」とか言ってたけど、全然耳に入ってなかった。

(あの人が姉…?田中と顔ぜんぜん似てないじゃん…)

田中の部屋でゲームを始めたけど、正直全然集中できなかった。コントローラー握りながら、さっきの姉の笑顔がずっと頭の中でリプレイされてた。

夕方になって、田中のお母さんが仕事で夜遅くなるってことで、晩飯はピザを頼むことになった。田中がリビングのソファで注文してる間、俺はトイレに行った。

廊下を歩いてたら、リビングの隣の和室のドアが少し開いてて、姉がノートパソコンに向かって何か打ってるのが見えた。横顔がすごく真剣で、眼鏡をかけてた。(さっきと雰囲気違うな…)と思ってたら、姉がふっと顔を上げてこっちを見た。

「あ、ごめん。ドア開けっぱだった」

「いや、俺が覗いたみたいですみません…!」

「ふふ、覗きって自分で言っちゃうんだ」

(死にたい)

顔が熱くなって、早足でトイレに逃げた。鏡に映った自分の顔が真っ赤で、もうほんとに情けなかった。

ピザが届いて、3人でリビングで食べた。田中が姉に「友達の前で変なこと言うなよ」とか牽制してて、姉は「言わないって~」と笑ってた。俺はピザの味なんか全然覚えてない。ただ、姉が俺の取ったピザを見て「あ、テリヤキチキン好きなの?私も」って言ったとき、心臓が跳ねた。たかがピザの話なのに。

食べ終わって片付けてるとき、姉が俺に話しかけてきた。

「木村くん…だよね?ソウタとは同じクラス?」

「はい、高1からずっと同じで」

「へぇ、部活は?」

「写真部です」

「え、写真部!?私も大学で写真サークル入ってるの!」

目がキラキラしてた。マジで。カメラの機種の話とか、好きな写真家の話とか、急に盛り上がった。田中は「はいはい」って感じでゲームの準備してたけど、俺は正直もっと姉と話してたかった。

「おい木村、やるぞ」って田中に呼ばれて、渋々2階に戻った。

深夜1時ぐらいまでゲームして、田中が先に寝落ちした。俺は布団に入ったけど全然眠れなかった。姉のことばっかり考えてた。(名前なんだっけ…田中って呼ぶわけにいかないし…)

そういえば、さっきリビングに姉宛ての郵便物があったのをちらっと見た気がする。「田中あかり」って書いてあった。あかりさん。

3時ぐらいにやっと寝て、朝7時に目が覚めた。夏の朝日が眩しい。隣の布団で田中はまだ爆睡してる。喉が乾いてたから、水をもらおうとそっと1階に降りた。

台所に入ったら、あかりさんがいた。

パジャマ姿。薄いグレーのキャミソールにゆるいコットンのパンツ。髪はおろしてて、寝起きっぽい感じ。肩のラインが華奢で、キャミソールの胸元から鎖骨がきれいに見えてた。

(やば…)

「あ、おはよう。早いね」

「おはようございます。水もらってもいいですか」

「コーヒー淹れるとこだけど、飲む?」

「あ、いただきます」

あかりさんがドリップコーヒーを2つ淹れてくれた。カップを受け取ったとき、指が触れた。ありきたりだけど、マジで電気走った。

小さなダイニングテーブルで向かい合って座った。朝の静かな台所に、コーヒーの匂いと、蝉の声だけ。

「ソウタまだ寝てるでしょ」

「はい、完全に」

「あの子、昔から朝弱いんだよね。私がご飯作っても起きないの」

「あかりさんって料理もするんですか」

「え、名前知ってるの?」

しまった。郵便物をチラ見したのバレる。

「あ…えっと…昨日、玄関のとこに…」

「あはは、いいよいいよ。うん、あかりです。よろしくね、木村くん」

(よかった…引かれなかった…)

そこからぽつぽつと話した。あかりさんは大学3年で、デザイン系の学部に通ってること。写真は趣味で始めたけど最近ちょっと本気出してること。フィルムカメラが好きで、Nikon FM2を中古で買ったこと。

「FM2!?うちの父親が同じの持ってます!」

「ほんと!?見せてほしい!今度持ってきてよ」

今度。「今度」って言った。つまりまた会える前提ってこと…?(落ち着けよ木村…お前の勘違い力なめんなよ…)

田中が起きてきて、この朝の時間は終わった。昼前に俺は帰ったけど、帰りの電車でぼーっとしてて、石神井公園で降り損ねて保谷まで行った。

それから1週間、あかりさんのことが頭から離れなかった。でも連絡先を交換してない。田中に「お姉さんの連絡先教えて」なんて言えるわけがない。

転機は次の土曜日に来た。

田中から「また家来ない?」って誘いが来た。二つ返事でOKした。ゲームなんかどうでもいい。(いや、田中には悪いけど…)

この日もあかりさんは実家にいた。リビングでまたパソコンに向かってたけど、俺たちが来ると手を振ってくれた。

夕方、田中が「コンビニ行ってくる」と出ていった。5分ぐらいで戻ってくるだろうけど、その5分間、リビングで姉とふたりきりになった。

「ねえ木村くん、これ見て」

あかりさんがスマホの画面を見せてくれた。最近撮ったっていう写真。井の頭公園の木漏れ日を撮ったやつで、光の捉え方がすごく良かった。

「これめちゃくちゃいいですね…光の入れ方が」

「ほんと?嬉しい。写真の話できる人あんまりいないんだよね」

「俺も部活の人としか話さないんで…」

「じゃあさ、今度一緒に撮りに行かない?」

心臓止まるかと思った。

「行きたいです!」

即答しすぎた。でもあかりさんは嬉しそうに笑って、「じゃあLINE交換しよ」って言ってくれた。

田中がコンビニから帰ってくる前に、連絡先の交換は完了した。俺の中で、この夏が急に色づいた気がした。

翌週の水曜日、あかりさんと吉祥寺で待ち合わせた。井の頭公園で写真を撮ろうって話になってた。

改札で待ってたら、白いブラウスにネイビーのロングスカートのあかりさんが来た。肩にNikon FM2をぶら下げてて、夏の日差しの中でほんとに綺麗だった。

「お待たせ。暑いねー」

「全然待ってないです」

(ほんとは20分前から来てた)

公園を歩きながら、お互いに写真を撮った。俺はデジタルの一眼、あかりさんはフィルム。同じものを撮ってるのに、ファインダー越しの世界が全然違って、それが面白かった。

池のほとりのベンチに座って休憩してるとき、あかりさんが急に真剣な顔になった。

「ねえ、木村くん。ひとつ聞いていい?」

「はい」

「私のこと、ソウタに言った?」

「え?何をですか」

「今日のこと。一緒に出かけてるって」

「言ってないです。写真撮りに行くとは言ったけど、誰とかは…」

「そっか。…言わないでおいてくれる?」

その言葉にどきっとした。隠す理由があるってことは、あかりさんもこれが普通の外出じゃないって思ってるってことで。

「わかりました。言いません」

「ありがとう。…変な意味じゃないんだけど、弟の友達と遊んでるってなるとさ、ソウタがうるさいから」

それだけの理由じゃない気がしたけど、俺は頷いた。

帰り道、吉祥寺の駅前で別れた。あかりさんが改札に入る前に振り返って、

「今日楽しかった。また撮りに行こうね」

って言って、小さく手を振った。そのときの笑顔を、俺は写真に撮れなかったのが今でも悔しい。

それから8月の間に、あかりさんとは3回出かけた。2回目は新宿御苑、3回目は代々木公園。毎回写真を撮って、カフェでお互いの写真を見せ合って、帰りは最寄り駅まで一緒に帰った。

田中には一切言わなかった。LINEでのやり取りも増えて、夜中に写真の話から関係ない話になって、気づいたら2時間ぐらい電話してることもあった。

でも、ずっと引っかかってることがあった。

あかりさんは俺のことをどう思ってるんだろう。年下の弟の友達で、写真の話が合う後輩、ぐらいにしか思ってないんじゃないか。俺が21歳の大学生だったら堂々と誘えるけど、現実は18歳の高校生で、3つも下で、しかも親友の弟分みたいな立場で。

(無理だろ、普通に考えて…)

4回目に会ったのは8月の最後の土曜日だった。あかりさんから「夕方から夜の写真を撮りたい」って連絡が来て、お台場に行くことになった。

ゆりかもめに揺られて、レインボーブリッジを渡るとき、あかりさんが窓に張り付いて写真を撮ってた。夕暮れのオレンジの光が横顔を照らしてて、俺はそっちにカメラを向けた。シャッターを切ったのがバレて、「え、撮った?」って言われた。

「あ、いや…景色を」

「嘘つき。私が写ってるでしょ」

「…すみません」

「いいよ別に。でもあとで見せてね」

お台場の海沿いを歩いた。日が沈んで、対岸のビル群に灯りがつき始める時間帯。三脚を立てて長時間露光で撮ったりして、写真部っぽいことをやってた。

「もうすぐ夏休み終わっちゃうね」

「はい…」

「私も来週にはアパートに戻るから」

知ってた。でも改めて言われると、胸のあたりがぎゅっとなった。

「あかりさん」

「ん?」

「…いや、なんでもないです」

言えなかった。「好きです」の4文字が、喉のところで詰まって出てこなかった。

あかりさんは少し黙って、それから静かに言った。

「木村くんってさ、いつも途中でやめるよね」

「え?」

「何か言いかけて、やめる。私、気づいてるよ」

(バレてた…?)

「私もね、ほんとはソウタの友達と何回も出かけるなんて、おかしいって分かってる。写真が好きだから、だけじゃないのも…自分で分かってるの」

海風が吹いて、あかりさんの髪が揺れた。俺はカメラを握る手に力を入れて、なんとか声を絞り出した。

「俺、最初に会ったときから好きでした。田中んちの玄関で見たときから。ずっと言いたかったけど、あかりさんにとって俺は弟の友達でしかないと思って」

あかりさんは黙ったまま、海のほうを見てた。数秒がすごく長く感じた。

「…3つ下だよ?高校生だよ?」

「分かってます」

「ソウタにバレたらどうすんの」

「…それも分かってます」

「分かってて言うの?」

「はい」

あかりさんが振り向いた。目が少し潤んでた。

「ずるいよ、木村くん。そういう真っ直ぐなの、弱いんだって」

何が起きてるのか、頭が追いつかなかった。

「私も…気になってた。最初は弟の友達だからって思ってたのに。写真の話するときの目がさ、すごく真剣で。それがどんどん気になって。…困ってたの、ほんとに」

俺の手を、あかりさんがそっと握った。あかりさんの手はひんやりしてて、でも柔らかかった。

「でもね、今日で最後にしようと思ってた。戻ったら会わないようにしようって」

「え…」

「だって…ダメでしょ、こういうの。ソウタの友達だし、年齢も…」

「ダメじゃないです」

強く言いすぎた。でも止まらなかった。

「俺、来年には大学生です。3つなんか、あっという間です」

「…あはは、あっという間って。すぐそういうこと言う」

「本気です」

あかりさんが俺の手をぎゅっと握り返してきた。

「…帰りたくないな、今日」

その一言で、心臓が壊れるかと思った。

俺たちは新橋まで戻って、駅前のビジネスホテルに入った。あかりさんがスマホでさっと予約して、フロントでカードキーを受け取る手が少し震えてた。

部屋に入ると、急に静かになった。さっきまで海風と人混みの音があったのに、急に二人きりの空間になって、空気が変わった。

あかりさんがベッドの端に座って、俺を見上げた。

「…緊張してる?」

「してます。めちゃくちゃ」

「私も。こんなの初めて」

「初めて…って」

「こういうこと。ホテルに来るのも。…嘘じゃないよ?」

信じられなかった。あかりさんみたいな人が、これまで誰とも。

「俺も初めてです」

「…そっか」

あかりさんが少し笑って、自分から俺の手を引いた。隣に座ると、肩が触れた。

「あかりさん…キス、していいですか」

「…うん」

最初のキスは、唇が触れただけ。あかりさんの唇が柔らかくて、コーヒーの匂いがほんの少しした。

離れてお互いの顔を見て、もう一度。今度は少し長く。あかりさんが目を閉じてたから、俺もつられて目を閉じた。舌が触れたとき、あかりさんの肩がびくってなった。

「ん…っ」

「…ごめん、急に」

「ううん…もっとして」

何回もキスした。気づいたらあかりさんの腰に手を回してて、あかりさんは俺のシャツの襟元を掴んでた。キスのたびに甘い声が漏れて、その声を聞くたびに頭の中がおかしくなってった。

あかりさんを押し倒すように、ベッドに寝かせた。

ブラウスのボタンに手をかけたら、あかりさんが俺の手に自分の手を重ねた。

「…電気、消して」

「あ、うん…」

ベッドサイドのスタンドだけ残して、天井のライトを消した。薄暗い中で、あかりさんの肌が白く浮かんでる。

ボタンを一つずつ外していった。手が震えてて、3つ目のボタンで指が滑った。

「…ふふ、焦んないで」

「焦ってないです…焦ってるけど」

「正直でよろしい」

ブラウスを開くと、白いレースのブラが見えた。形がよくて、谷間に汗が少し光ってた。ブラの上から触ると、あかりさんが息を詰めた。

「あっ…」

「痛い…?」

「ううん…続けて」

背中に手を回してホックを外した。外れた瞬間、ふわっと零れるように胸が出てきて、俺の手に吸い付くように収まった。柔らかいのに弾力があって、指が沈む感触がたまらなかった。

「きれいだ…」

「恥ずかしいよ…そんなじろじろ見ないで…」

でも、あかりさんは俺の手を払わなかった。乳首に唇をつけたら、背中がぴくって跳ねた。

「んっ…だめ…声出ちゃう…」

「出していいよ」

あかりさんの体を下に辿っていった。スカートのジッパーを下ろすと、あかりさんが自分で腰を上げてくれた。白い下着を残して、脱がしていく。太ももの内側を指先でなぞったとき、あかりさんが足をぎゅっと閉じた。

「…やだ、恥ずかしい」

「俺のほうが恥ずかしいですよ。こんな綺麗な人の前で…俺なんかが…」

「なんかって言わないで。…私が一緒にいたいって思ったの、木村くんなんだから」

その言葉で、腹が決まった。

下着の上から触ると、もう湿ってた。あかりさんが顔を横に向けて、シーツを掴んだ。下着をずらして直接触れたとき、あかりさんの腰がかくんって震えた。

「あぁっ…」

指を動かすたびに、あかりさんの息が荒くなる。途中から俺の肩にしがみついてきて、耳元で荒い息が聞こえる。

「やば…っ…気持ちいい…」

「ここ?」

「うん…そこ…っ」

あかりさんの反応を見ながら、場所と強さを探っていった。中に指を入れたとき、きゅっと締まってきて、あかりさんが小さく叫んだ。

「あっ…待って…なんか…来る…っ」

体が強張って、ぶるぶるって震えた。俺の肩に爪が食い込むぐらい力を入れて、あかりさんは目を強く瞑った。

「…はぁっ…はぁ…」

「大丈夫…?」

「…うん。びっくりした…こんなの…」

少しぼうっとした目で俺を見上げて、あかりさんが手を伸ばしてきた。俺のベルトに手をかける。

「木村くんも…」

あかりさんが俺のズボンを下ろして、もう限界まで硬くなってるのに触れた。あかりさんの細い指が包むように握ってくれて、ゆっくり動かし始めた。

「っ…」

「こう…?」

「うん…気持ちいい…」

「よかった…こういうの初めてだから…下手じゃない?」

「全然。やばい…」

あかりさんの手が優しくて、でも確実に追い詰めてくる感じがして、このままだと先に終わっちゃうと思った。

「あかりさん…入れたい」

あかりさんの手が止まった。数秒の沈黙。

「…うん」

「ゴム…財布に…」

正直に言うと、田中んちに泊まりに行くようになってから、万が一に備えてコンビニで買ったやつをずっと財布に入れてた。あかりさんとこうなるなんて本気で思ってなかったけど、持ってない自分が嫌で。

ゴムを着けて、あかりさんの間に入った。先端を当てたとき、あかりさんが俺の背中に腕を回してきた。

「入れるよ…」

「うん…ゆっくりね…」

ゆっくり入れていった。きつくて、熱くて、頭が真っ白になりそうだった。あかりさんが顔をしかめて、俺の背中の服をぎゅっと掴んだ。

「っ…痛…い…」

「止める…?」

「ううん…大丈夫…もう少し…」

全部入ったとき、二人とも動かなかった。あかりさんの中が脈打つように締まったり緩んだりしてて、その感覚だけでおかしくなりそうだった。

「…動いて、いいよ」

ゆっくり腰を動かした。あかりさんが声を殺そうとしてるけど、漏れてくる。その声が、前半にリビングで笑ってたときと同じ人の声だとは信じられなかった。

「あっ…ん…っ」

「あかりさん…」

「名前…下の名前で呼んで…」

「…あかり」

「んっ…もう一回…」

「あかり…あかり…」

名前を呼ぶたびに、あかりさんが強く抱きしめてくる。俺も、もう我慢の限界だった。

「やばい…出そう…」

「うん…いいよ…」

奥まで入れた状態で、体が勝手に震えた。ゴム越しだったけど、全身の力が抜けるような感覚で、あかりさんにしがみつくようにして出した。

「っ…あぁ…」

「…はぁ…」

しばらく動けなかった。あかりさんが俺の髪を撫でてくれた。

「…重い」

「あ、ごめん…」

慌てて体を起こしたら、あかりさんが笑ってた。目の端に涙が少し光ってた。

「ばか、冗談。…離れないでよ」

もう一度抱きしめて、額にキスをした。あかりさんの体温と、汗の混じった甘い匂いと、心臓の音が伝わってきた。

少し休んで、あかりさんが俺の胸に頭を乗せたまま言った。

「…もう一回、してもいい?」

2回目は、あかりさんが上になった。最初は恥ずかしそうにしてたけど、だんだん自分から腰を動かすようになって、その姿を下から見上げてたら、写真を撮りたいって本気で思った。もちろん撮らなかったけど。

2回目はお互い少し余裕が出てきて、さっきよりゆっくり、でも深く。あかりさんが俺の手を自分の胸に導いて、「触って」って小さく言ったとき、この人を離したくないって強く思った。

あかりさんが先にイって、俺もすぐあとに続いた。

終わったあと、シャワーを浴びて、ベッドに戻った。時計を見たら23時過ぎてた。

「…ソウタに何て言う?」

「いつかちゃんと言います。でも今はまだ…」

「そうだよね…」

「あかりさん」

「さん付けに戻ってる」

「…あかり。俺、本気です。遊びとかじゃなくて。ちゃんと付き合いたい」

あかりさんが俺の顔を両手で挟んで、まっすぐ見てきた。

「…私も。でもほんとに大変だよ?ソウタのこともあるし、年齢のことも。覚悟ある?」

「あります」

「…じゃあ、私たち、付き合うってことで」

「はい」

あかりさんが照れたように笑って、布団を頭まで被った。その下から「やばい、なんか泣きそう」って声が聞こえた。

布団をめくって顔を覗き込んだら、ほんとに泣いてて。俺は笑いながら涙を拭いて、おでこにキスした。

その夜、腕枕のまま二人で眠った。

翌朝、チェックアウトの時間ぎりぎりに起きて、新橋の駅前で別れた。

「じゃあね、木村くん」

「人前では木村くんなんだ」

「当たり前でしょ。…二人のときだけ、ね?」

改札に入っていくあかりさんの背中を見ながら、俺はスマホを握りしめてた。LINEに「ありがとう」って打って、送信した。

既読がついて、スタンプが返ってきた。ハリネズミが頬を赤くしてるやつ。

あの夏から、もう何年も経った。田中には大学に入ってからちゃんと話した。最初は殴られるかと思ったけど、「知ってたわ」って言われた。バレてたらしい。あかりさんの態度が変わったのに気づいてたんだと。「姉ちゃん幸せそうだから、いいよ」って、最後にはそう言ってくれた。

あかりさんとは今も一緒にいます。FM2は今でも二人で使ってる。あの夏に撮った井の頭公園の写真は、額に入れてリビングに飾ってある。


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