営業部のエースに「車出して」と頼まれて行った日帰りスノボが吹雪で足止めになった夜の話

これを書いていいのかどうか、正直まだ迷ってる。

でも誰かに話したくてしょうがないので書きます。27歳、メーカーの経理部で毎日エクセルと格闘してる地味な男の話です。

俺のスペックを先に言っておくと、身長172cm、体重は聞かないでほしい。顔は「普通」と言われるのが最上級の褒め言葉で、合コンでは空気と化すタイプ。大学時代の彼女と別れてからもう3年、完全に枯れてた。

で、問題の人物なんだけど。

営業部の宮野さん。入社3年目。俺の1個下。

この人がまあ、やばい。

身長163cmで、橋本環奈をもう少しシュッとさせた感じ。いや関係ない芸能人を出すなって話だけど、本当にそうなんだからしょうがない。ゆるく巻いたセミロングの茶髪に、目がくりっとしてて、笑うと八重歯がちょっとだけ見える。Eカップ。これは後でわかったことだけど。

営業成績は部署でトップクラスで、取引先のおじさんたちにも人気があるらしい。社内では「営業部の宮野さん」で通ってて、昼休みに食堂で見かけるたびに(かわいいな…)と思ってたけど、接点なんてゼロだった。

経理と営業って、経費精算のときぐらいしか関わらないんですよ。

それが去年の12月。

金曜の夕方、俺が残業してたら宮野さんが経理のフロアにやってきた。

「あの、すみません。来週の交通費の精算なんですけど…」

「あ、はい。領収書あります?」

普通のやり取り。なんだけど、帰り際にいきなり聞かれた。

「あっ、田中さんって車持ってますよね?」

「え?あ、はい。一応」

「スノボとか行きます?」

「まあ…年に1、2回ぐらいは」

「じゃあさ、今度の日曜、車出してくれません?日帰りでスノボ行きたいんだけど、私免許持ってなくて」

(え?)

なんで俺?ってのが正直な感想だった。営業部には車持ちなんていっぱいいるだろうし、そもそも俺と宮野さんは今日が初めてまともに話した日なのに。

「えっと…他に誰か行くんですか?」

「ううん、二人。ダメかな?」

二人。

二人?

「あ、いや、全然。行きましょう」

断る理由がなかった。いや、あったかもしれないけど、脳みそが「行け」と命令してきた。

日曜の朝5時。まだ暗い練馬のコインパーキングで宮野さんを拾った。

「おはよー!寒いね、ありがとう」

ダウンジャケットにニット帽、ボードケースを担いだ宮野さんが助手席に乗り込んできた。車内にふわっと甘い匂いがした。朝5時にこの破壊力はずるいだろ。

関越道に乗って湯沢方面へ。宮野さんはすぐにコンビニで買ったホットコーヒーを開けて、助手席でご機嫌だった。

「あのね、なんで田中さんに頼んだかって言うと」

「うん」

「経費精算のとき、いっつも丁寧に教えてくれるじゃん。この人いい人だなって思ってて」

「あれ、仕事だから…」

「でも他の経理の人はめっちゃめんどくさそうにするよ?田中さんだけ違った」

(それは…俺が宮野さんに話しかけられて舞い上がってただけなんだが…)

そんなことは口が裂けても言えないので、黙ってハンドルを握った。

苗場に着いたのは8時過ぎ。天気は曇りだったけど雪質はまあまあで、午前中は楽しく滑れた。

宮野さんはスノボ歴5年でかなりうまかった。俺は3回ぐらいしかやったことないへなちょこで、何回もコケて笑われた。

「田中さん、重心が後ろすぎ!もっと前!」

「いや待って、これ怖いって」

「大丈夫、私が下で待ってるから!」

コースの途中で待っててくれる宮野さんに向かって滑っていくんだけど、止まれなくて突っ込みそうになるたびに宮野さんが笑いながら避ける。(もしかして俺、道化か?)と思ったけど、宮野さんが楽しそうだったからまあいいかと。

昼にレストハウスでカレーを食べながら、宮野さんが窓の外を見て眉をひそめた。

「ねえ…なんか天気やばくない?」

見ると、さっきまで曇りだった空が真っ白になっていて、雪がかなり強く降り始めてた。

スマホで天気予報を確認したら、午後から湯沢エリアに吹雪の警報が出てた。関越道は三国峠付近でチェーン規制、夕方には通行止めの可能性ありと。

「これ…帰れなくなるかも」

「えっ、まじで?」

まじだった。

14時にゲレンデが閉鎖になって、俺たちは駐車場に戻ったけど、もう視界が2メートルぐらいしかない。高速は案の定通行止め。下道も除雪が追いつかなくて走れる状態じゃなかった。

「どうしよう…」

宮野さんが本気で困った顔をしてる。(やばい、こんな顔もかわいいとか思ってる場合じゃない)

「とりあえず、どっか泊まれるとこ探そう」

スマホで片っ端から旅館を検索したけど、同じ考えの人が多いのか全然空いてない。30分ぐらい電話しまくって、やっと越後湯沢駅の近くの小さな旅館が「一部屋だけ空いてます」と。

一部屋。

「あの…一部屋しかないんですけど…俺、車で寝るんで、宮野さんが部屋使って」

「は?この吹雪で車で寝たら死ぬでしょ。一緒でいいよ、別に気にしないし」

気にしないし、って。俺は気にするんだが。

旅館は昔ながらの木造で、6畳の和室に布団が一組。仲居さんが「お布団もう一組お持ちしますね」と言ってくれたのが救いだった。

荷物を置いて、とりあえず温泉に入ることにした。

「お風呂入ってあったまろ。先に出たらロビーで待ってるね」

男湯に入って、熱い湯に浸かりながら考えた。

(落ち着け。偶然泊まることになっただけだ。宮野さんは俺のことなんとも思ってない。運転手として声かけただけだ。勘違いだけはするな)

自分に言い聞かせて湯から上がったけど、ロビーで浴衣姿の宮野さんを見た瞬間、全部吹っ飛んだ。

髪を後ろで一つにまとめて、浴衣の襟元からうっすら鎖骨が見えてて、頬がほんのりピンクで。

「田中さん、長風呂だね笑」

「あ…いや、気持ちよくて」

嘘。ずっと自分に言い聞かせてただけ。

旅館の夕飯は会場食で、地元の山菜の天ぷらとか鮎の塩焼きとか、素朴だけどめちゃくちゃうまかった。宮野さんは日本酒を頼んで、俺はビール。

「田中さんって彼女いるの?」

「いない。3年ぐらい」

「へー、意外」

「意外って…どこが」

「だって優しいし、ちゃんとしてるし」

「ちゃんとしてるだけじゃモテないんだよ…。宮野さんは?」

「私も…いない。1年ぐらいかな」

(え、マジで?営業部の宮野さんが?)

信じられなかったけど深く聞けなかった。聞いたら期待してるみたいだし。

部屋に戻ると布団が二組、微妙な距離感で敷いてあった。50cmぐらい空いてる。近いような、遠いような。

売店で買った缶ビールを飲みながら、座卓でだらだら話した。仕事の愚痴、学生時代の話、好きな映画、くだらないことばっかり。でも楽しかった。宮野さんは酔うと関西弁が少し出る。京都出身だったらしい。

「ていうかさ、田中さんって経理っぽくないよね」

「え?経理っぽいって何」

「なんか…もっとお堅い感じかと思ってた。話してみたら全然違う」

「そっちこそ、営業の人ってもっとギラギラしてるイメージだったけど」

「私、外ではめっちゃ頑張ってるだけだよ。家帰ったらゲームしてゴロゴロしてるもん」

「何やんの」

「あつ森」

笑った。営業成績トップの宮野さんが、家であつ森やってると思ったら一気に親近感がわいた。

23時を過ぎて、さすがに寝ようかという空気になった。

電気を消して、それぞれの布団に入る。外では吹雪の音がごうごう鳴ってる。

暗闇の中で、しばらく沈黙があった。

「…ねえ」

「ん?」

「あのさ、今日ほんとにごめんね。私のせいで巻き込んじゃって」

「いや、天気のせいだし。気にしなくていいよ」

「…」

「でもさ、ほんとはちょっと…嬉しい」

「…え?」

「帰れなくなって、田中さんと二人で泊まることになって。不謹慎だけど、嬉しいって思っちゃった」

心臓が跳ねた。暗闘の中で宮野さんの顔は見えない。

「それって…」

「あのね。私が田中さんをスノボに誘ったの、車が必要だったからじゃないの」

「…」

「田中さんと二人で出かけたかったから」

(…は?)

脳みそが追いつかない。暗闘の中で布団がガサガサと音がして、宮野さんの気配が近くなった。

「経費精算のとき、いっつも目ぇ合わせてくれるでしょ。他の人は書類しか見ないのに、田中さんはちゃんと私の顔見て話してくれる。それがすごく嬉しかった」

「いや…それは…」

(それは宮野さんがかわいすぎて顔を見ずにいられなかっただけなんだが)

「最初はただ感じいい人だなって思ってただけなんだけど、だんだん経費精算の日が楽しみになってきて。でも理由つけないと話しかけられなくて」

「宮野さん…」

暗闇で手が触れた。宮野さんの指が、俺の手の甲に触れてきた。

小さくて、温かい手だった。

「…俺も。宮野さんのこと、ずっとかわいいなって思ってた。食堂で見かけるたびに」

「…ほんとに?」

「ほんとに。でも接点なさすぎて、絶対無理だと思ってた」

「バカ…」

宮野さんが笑った。泣き笑いみたいな声だった。

気づいたら手を握ってた。そのまま引き寄せて、布団の中で宮野さんの体に腕を回した。

心臓の音が聞こえるぐらい近い。シャンプーの匂いがする。

「キス…していい?」

「…うん」

暗闇の中で、唇が触れた。

最初はそっと、確認するみたいに。宮野さんの唇は柔らかくて、少し日本酒の味がした。

「ん…」

もう一回。今度はもう少し深く。宮野さんの手が俺の浴衣の襟をつかんだ。

舌が触れ合った瞬間、スイッチが入ったみたいに二人とも止まらなくなった。

「んぅ…はぁ…」

宮野さんの舌が俺の口の中に入ってきて、絡みついてくる。営業トークがうまいだけあって(いや関係ないだろ)、キスもめちゃくちゃうまかった。

気づいたら俺が宮野さんの上に覆いかぶさってた。浴衣がはだけて、鎖骨が見えてる。暗闘に目が慣れてきて、宮野さんのうるんだ目が見えた。

「…ここから先、行っていい?」

「…待って」

(あ、やっぱダメか)と思った。当然だ。今日初めてまともに話した男と、いくら吹雪で閉じ込められたからって。

「ゴム…持ってる?」

「え?」

「持ってないの?」

持ってなかった。日帰りスノボだと思ってたんだから当然だ。

宮野さんが起き上がって、自分のバッグをごそごそ探り始めた。

「…あった。ポーチに入ってた」

「え、なんで持ってんの」

「…いつも入ってるの。別に今日のためじゃないよ」

(いやそれはそれで気になるんだけど…)

でもそんなことを追及してる場合じゃなかった。

宮野さんを抱き寄せて、浴衣の襟をゆっくり開いた。肩が出て、キャミソールの肩紐が見えた。

「…恥ずかしいんだけど」

「俺のほうが緊張してる」

本当だった。手が震えてた。3年ぶりの女の体に触れる緊張と、それが宮野さんだっていう信じられなさで。

キャミソールの上から胸に触れた。想像以上に大きくて柔らかい。

「んっ…」

声を殺そうとしてる宮野さんの反応がたまらなくて、キャミソールをたくし上げた。薄いレースのブラ越しに、乳首が硬くなってるのがわかった。

ブラのホックを外すのにちょっと手間取った。(情けない…)と思ったけど、宮野さんが自分で外してくれた。

「はい…」

暗がりでも明らかにわかる、形のいい胸。手のひらに収まりきらないぐらいの大きさで、揉むと弾力のある柔らかさが指に吸いつく。

「すごい…きれい」

「そういうの…言われ慣れてないから…やめて」

乳首を親指で転がしたら、宮野さんの体がびくってなった。

「あ…っ、そこ弱い…」

口に含んだ。舌で乳首を転がしながら、もう片方の胸を揉む。宮野さんが俺の頭を抱えるように両手を回してきた。

「ん…あっ…田中さん…」

名前を呼ばれるだけで頭がおかしくなりそうだった。

手を下に伸ばした。浴衣の裾から太ももに触れると、すべすべで温かい。内ももを撫でると宮野さんが足を少し開いてくれた。

ショーツの上から触れた。もう湿ってた。

「…濡れてる」

「言わないで…っ」

恥ずかしそうに顔を背ける宮野さんの耳が真っ赤だった。ショーツをずらして直接触れると、ぬるっとした感触が指を包んだ。

「あっ…んん…」

小さな突起を指の腹で円を描くように触ると、宮野さんの腰が浮いた。中に指を入れると、きゅっと締まってきた。

「あ…っ、気持ちいい…もっと…」

いつも営業先では完璧な笑顔を見せてる宮野さんが、こんな声を出すのかと思ったら、もう止められなかった。

二本目の指を入れて、中の壁をなぞるように動かすと、宮野さんが俺の肩をつかんで声を殺した。

「やっ…そこ…だめ…っ」

だめって言いながら腰を押しつけてくるのが可愛くて、もっと攻めたくなる。

「ま、待って…このままだとイっちゃう…っ」

「いいよ、イって」

「やだ…一人でイくの…恥ずかしい…っ」

「じゃあ…入れていい?」

宮野さんが無言でうなずいた。

さっき渡されたゴムを急いで着けた。手が震えてまともに着けられない。

「…緊張してるの?」

「めちゃくちゃ。3年ぶりだし…相手が宮野さんだし」

「…私も1年ぶり。だから、ゆっくりしてね」

宮野さんの足の間に入って、先端を当てた。ぬるっとした熱さに、腰が勝手に動きそうになる。

ゆっくり、ゆっくり入れていった。

「あ…ぁぁ…」

宮野さんが息を吐きながら、俺の背中に腕を回してきた。爪が軽く食い込む。

根元まで入った瞬間、二人とも動けなくなった。宮野さんの中は驚くほど熱くて、きゅうきゅうと締めつけてくる。

「…やばい、もう気持ちいい」

「私も…動いて…」

ゆっくり腰を引いて、また押し込む。宮野さんの体が小さく跳ねた。

「んっ…あ…あっ…」

声を殺そうとしてるけど漏れてくる。旅館だから壁薄いの気にしてるんだろうけど、その必死さがまたたまらなかった。

少しずつペースを上げていくと、宮野さんが俺の首に腕を回してきた。耳元で熱い息がかかる。

「田中…さん…気持ちいい…すごい…」

「宮野さんも…中めちゃくちゃ気持ちいい」

抱きしめながら腰を動かし続けた。布団がぐちゃぐちゃになってるのに、そんなの気にならなかった。外では吹雪がごうごう鳴ってて、この部屋だけが世界みたいだった。

「ねえ…もっと強くして…」

「いいの?」

「うん…もっと…」

腰の角度を変えて、深く突くと、宮野さんが声を抑えきれなくなった。枕に顔を押しつけて喘いでる。

「あっ、あっ、だめ…声出ちゃ…んんっ…!」

その姿を見たら理性なんて残ってなくて、夢中で腰を打ちつけた。

「やば…俺もう…」

「いいよ…出して…」

宮野さんが俺の腰を足で挟んできた。(あ、これゴムの中にだけど足で固定してくるやつだ…)とか馬鹿なことを考えてる間に、もう限界だった。

「っ…出る…!」

奥まで押し込んだまま、全部出した。頭が真っ白になって、腕の力が抜けて、宮野さんの上に崩れ落ちた。

「…重い笑」

「ごめん…」

横に転がって、二人で天井を見ながら息を整えた。吹雪の音だけが聞こえる。

「ねえ」

「ん」

「私のこと、名前で呼んでほしい」

「…美咲さん?」

「呼び捨てで」

「…美咲」

「ふふ、ちょっと照れてるじゃん」

「そりゃ照れるだろ…」

美咲が俺の胸に頭を乗せてきた。髪が頬に触れる。

「裕介」

「…うん」

「もう一回、したい」

耳元で囁かれて、さっき出したばっかりなのに下半身が反応した。3年間の枯れが嘘みたいだった。

今度は美咲が上になった。浴衣を完全に脱いで、ゆっくり腰を下ろしてくる。

「んっ…あ…深い…」

暗闘に慣れた目で見上げると、美咲の体のシルエットが見えた。揺れる胸、くびれたウエスト、腰をゆっくり動かす姿。

(これ本当に現実か?)

さっきの勢いとは違う、ゆっくりした動き。美咲が自分で気持ちいいところを探してるみたいだった。

「あ…ここ…いい…」

俺は下から胸を揉みながら、美咲の腰の動きに合わせて少しだけ突き上げた。

「んっ…裕介…そう、そこ…」

名前を呼ばれるたびに興奮が跳ね上がる。さっきは「田中さん」だったのが「裕介」になっただけで、こんなに違うのか。

美咲のペースが少しずつ速くなってきた。

「あっ…あっ…やばい…気持ちいい…」

腰を起こして、美咲を抱きしめた。対面で座る形になって、お互いの体が密着する。キスしながら、美咲の腰を持って動かした。

「んぅっ…裕介、好き…」

「俺も…好きだ…」

言葉にしたら、なんか急にリアルになった。これは夢じゃないんだと。

美咲の中がきゅっと締まって、体が震え始めた。

「あ、あっ、イク…イっちゃう…!」

「俺も…一緒にイく…」

美咲を強く抱きしめて、奥まで突き上げた。美咲が声を殺して震えて、その締めつけに引っ張られるように俺も果てた。

しばらく抱き合ったまま動けなかった。

「…もう2時だ」

「マジか…」

「明日帰れるかな」

「…帰れなくてもいい」

「笑 それは困る」

美咲が笑いながら布団をかけ直してくれた。二組あった布団は完全にぐちゃぐちゃで、結局一組を二人で使って、くっついて寝た。

朝起きたら、吹雪は止んでた。窓の外は一面の銀世界で、昨日の荒れ模様が嘘みたいに青空が広がってた。

美咲はまだ寝てた。寝顔を見て、改めて思った。

(本当にかわいいな…)

朝食を食べて、チェックアウトして、除雪された道を通って東京に帰った。

助手席で美咲が窓の外を見ながら言った。

「ねえ、月曜から会社で会うの、ちょっと気まずいんだけど笑」

「俺のほうが気まずいわ。経費精算持ってこられたらどうしよう」

「毎週持ってくよ?」

「経費そんなにかからんだろ」

「じゃあ嘘の領収書作る」

「経理として見逃せないんだけど」

二人で笑った。

練馬で美咲を降ろすとき、車の中で最後にキスした。

「来週、タイ料理食べに行かない?会社の近くにいい店あるの」

「行こう」

「じゃあ、経費精算のついでに誘いに行くね」

「それもう経費精算関係ないよね」

「うん。関係ない」

美咲がにっと笑って車を降りた。

あれから半年経った今も付き合ってる。社内にはまだ言ってない。バレてるかもしれないけど。

あの吹雪の夜がなかったら、俺は今でもただの「経費精算を丁寧にやる経理の田中さん」で終わってたと思う。

吹雪に感謝してる。人生で初めて、天気予報が外れてよかったと思った日だった。


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