これ書くかどうかめちゃくちゃ迷ったんだけど、もう時効だと思うんで書きます。
大学2年の春の話。俺、都内の私大に通ってたんだけど、まあ見た目は普通。身長172、痩せ型、髪はマッシュにしてたけど美容室じゃなくて1000円カットのやつ。友達には「雰囲気だけは悪くない」って言われてた。つまりブサイクを遠回しに言われてたってことだと思う。
んで、高校の時の話を少しさせてほしい。
俺が通ってた高校は横浜の港南台にある共学で、1学年6クラスぐらいの中規模校だったんだけど、そこに「神宮寺さん」って呼ばれてた子がいた。仮にそう呼ばせてもらう。
この子がもう、ほんとにやばかった。
顔は今田美桜をもうちょい大人っぽくした感じで、身長163くらい。髪はいつもゆるく巻いてて、制服のスカートは膝上10センチくらい。脚がほんとに綺麗で、体育の時間にショートパンツ姿を見るたびに(あ、俺死ぬな)って思ってた。
ただ、俺と神宮寺さんは3年間一度も同じクラスにならなかった。
廊下ですれ違うたびに目で追ってたけど、話しかける勇気なんてあるわけない。文化祭で神宮寺さんのクラスの喫茶店に行って、「ご注文どうぞ」って言われた時に「アイスコーヒー」しか言えなかったのが、俺と神宮寺さんの高校時代の全会話です。
そんな感じで卒業して、俺は都内の大学へ。高校の友達とはたまにLINEする程度で、神宮寺さんのことは「あの頃の美しい思い出」として脳の奥にしまい込んでた。
ところが大学2年の4月、新歓の時期に友達に誘われて行った他大学との合同飲み会で、事件が起きた。
渋谷の居酒屋、テーブル席に10人ぐらい。適当に座って、隣に来た子に「どこ大ですか?」って聞こうとして横を向いたら。
(え?)
神宮寺さんだった。
いや正確に言うと、高校の時より髪が短くなってて、ボブぐらいになってた。でも顔は間違いない。あの今田美桜系の、目がくっきりした顔。
「あの……港南台高校の……」
「え? ……あっ、もしかして港南台?」
「うん、同じ学年だった。覚えてないよな、一回も同じクラスになってないし」
「えー待って待って。……あ! 文化祭でうちのクラス来てくれた人?」
(覚えてんの!?)
いやいやいや。アイスコーヒー頼んだだけの客を覚えてるってどういうことだよ。
「よく覚えてるな……」
「だって一人で来て、アイスコーヒーだけ頼んで、めっちゃ静かに飲んで帰ったから逆に印象に残ってた(笑)」
恥ずかしすぎて死にたくなった。
でもそこから一気に話が弾んで、高校の共通の知り合いの話とか、今どこの大学かとか、住んでるエリアの話とか。神宮寺さんは俺と同じ沿線の駅に住んでて、大学も隣の駅だった。世界狭すぎだろ。
飲み会が終わって、みんなで駅まで歩いてた時に、神宮寺さんが俺の袖をちょっと引っ張った。
「ねえ、ちょっと話したいことあるんだけど」
「え? うん」
みんなと別れて、渋谷駅前のスタバに入った。22時過ぎてたけどまだ営業してて、窓際の席に向かい合って座った。
神宮寺さんはアイスラテを一口飲んでから、ちょっと困った顔をした。
「あのさ、変なお願いなんだけど……」
「なに?」
「彼氏のフリ、してくれない?」
は?
「……え?」
「元カレがめっちゃしつこくて。別れたのに連絡してくるし、大学まで来るし。友達に相談したら『新しい彼氏いるって見せつけたら諦めるんじゃない?』って言われて」
「いやでも、なんで俺?」
「……同じ高校だったから信頼できるかなって。あと、今日話してて……なんか、安心する感じがした」
(いやいやいや。それ俺が高校の時から一方的に好きだった子に言われるセリフじゃないだろ)
頭の中がぐちゃぐちゃだった。嬉しいのか戸惑ってるのか分からない。でも断る理由もないし、正直、断れるわけがなかった。
「……わかった。いいよ」
「ほんとに!? ありがとう!」
神宮寺さんがぱっと笑った顔が、高校の時に廊下で見てた笑顔と全く同じで、心臓が痛くなった。
そこからLINEを交換して、偽カップル生活が始まった。
最初は週1ぐらいで一緒に大学の近くでランチしたり、帰りに並んで歩いたりする程度だった。神宮寺さんの元カレは同じ大学のサークルの先輩らしくて、学内で目撃されることが大事だった。
「ごめんね、手つないでもいい? あの人見てるかもしれないから」
「あ、うん」
神宮寺さんの手は想像してたより小さくて、ちょっと冷たかった。
(これ演技だからな。勘違いするなよ俺)
って自分に言い聞かせてたけど、正直全然ダメだった。手をつなぐたびに心拍数が上がるし、隣を歩いてる時にふわって香る髪の匂いで頭がバグる。
2週間ぐらい経った頃、神宮寺さんから連絡が来た。
「元カレから『新しい彼氏と別れたら連絡して』ってLINE来た。効いてるっぽい!」
「お、よかったじゃん」
「でもまだ安心できないから、もうちょっと続けてほしいんだけど……」
「いいよ全然」
即答した自分が怖かった。
そんで5月のゴールデンウィーク明け。神宮寺さんが「お礼にご飯作ってあげる」って言い出して、俺は神宮寺さんの一人暮らしのマンションに行くことになった。東急東横線の都立大学駅から徒歩5分の、わりと綺麗な1Kだった。
「散らかっててごめんね。座ってて」
部屋は全然散らかってなくて、むしろ女の子の部屋ってこんな良い匂いするんだって感動してた。
神宮寺さんがキッチンでパスタを作ってる後ろ姿を見てたら、エプロンの紐が腰のところでリボン結びになってて、(かわいいな……)ってぼんやり思った。
「できたよー! ナポリタンだけど」
「お、うまそう」
食べたらマジで美味かった。ケチャップの味がちゃんと飛んでて、ウインナーじゃなくてベーコン使ってるあたりにこだわりを感じた。
「これめっちゃ美味い」
「ほんと? よかったー」
食後にソファで並んでテレビ見てた時に、ちょっと空気が変わった。
「ねえ、聞いていい?」
「ん?」
「なんでこんなに付き合ってくれるの? 普通こういうのめんどくさいでしょ」
「いや、別に……同じ高校だったし」
「それだけ?」
目を見て聞いてくる。この距離やめてくれ。50センチぐらいしかない。
「……それだけ、じゃないかもしれない」
言ってから(あ、やべ)って思った。
「……どういう意味?」
「いや、なんでもない。忘れて」
「忘れない」
沈黙が3秒くらい続いた。テレビのバラエティ番組の笑い声だけが聞こえてた。
「……私、もしかして私のこと好きなのかなって、ちょっと思ってた」
心臓が止まるかと思った。
「……なんで」
「手つなぐ時、いつも心臓バクバクしてるの伝わってたよ」
終わった。完全にバレてた。
「……ごめん」
「なんで謝るの」
「だって、フリを頼まれただけなのに本気になってるとか、キモいだろ」
「キモくないよ」
神宮寺さんが俺のほうに体を寄せてきた。肩が触れた。
「……実はね、元カレ、2週間前にもう諦めたってLINE来てたの」
「え? じゃあなんで……」
「終わりにしたくなかったから」
(……は?)
「彼氏のフリ終わったら、もう会う理由なくなるじゃん。それが嫌だった」
「……」
「私もね、高校の時からちょっと気になってたの。文化祭の時、一人で来てくれたでしょ? あの後友達に『あの人誰?』って聞いたもん」
まったく知らなかった。3年間、俺が一方的に見てただけだと思ってたのに。
「マジで?」
「うん。でも話すきっかけがなくて、そのまま卒業しちゃった。だから飲み会で再会した時、すごい嬉しかった」
神宮寺さんの目がちょっと潤んでた。テレビの光が瞳に反射して、綺麗だった。
……いや、もう無理だった。
「俺、高校の時からずっと好きだった。ずっと見てた。話しかけたかったけどできなかった」
「……うん」
「フリじゃなくて、本当に俺の彼女になってほしい」
「……やっと言ってくれた」
神宮寺さんが笑った。泣き笑いみたいな顔だった。
「私も好き。ずっと好きだった」
俺から抱きしめた。小さい体が腕の中にすっぽり収まった。心臓の音が聞こえてるだろうなって思ったけど、もうどうでもよかった。
しばらくそのままでいたら、神宮寺さんが顔を上げた。
「……キスして」
俺はたぶん、人生で一番緊張しながらキスした。
唇が触れた瞬間、(ああ、これ現実か)って思った。高校3年間ずっと遠くから見てた子と今キスしてる。脳の処理が追いつかなかった。
唇を離すと、神宮寺さんが「ん……もう一回」って小さく言って、今度は舌を入れてきた。
「んっ……」
甘くて、ちょっとナポリタンの味がして、それがなんかリアルで余計に興奮した。
キスしながら自然に体が横になって、ソファの上で重なるような形になった。
「……ベッド、行こっか」
小さい声で言われて、手を引かれるままに寝室に入った。ダブルベッドにグレーのシーツ。間接照明がぼんやりついてた。
ベッドに座った神宮寺さんの前に立ったまま、俺は一瞬迷った。
「……いいの?」
「いいよ。っていうか、私がしたいの」
その一言で理性の蓋が外れた。
ベッドに押し倒して、もう一回キスした。今度は深くて、長くて、お互い息が荒くなってた。
神宮寺さんが着てた白いニットの裾に手をかけると、自分から腕を上げてくれた。脱がすと、薄いピンクのブラの下に、思ってた以上の膨らみがあった。
「……でかくない?」
「Eあるよ。服だと分かんないでしょ」
(Eカップ……)
高校の時、制服の上からはそこまで分からなかった。ブラを外したら、形が綺麗な胸がこぼれるように出てきた。乳首は薄いピンクで、なんかもう芸術品みたいだった。
「……そんな見ないで」
「ごめん、綺麗すぎて」
胸に顔を埋めて、舌先で乳首を転がすと、神宮寺さんが小さく声を漏らした。
「あ……っ」
片方を舐めながらもう片方を指で触ると、体がびくって震えた。
「乳首……弱いの……あんま触んないで……」
そう言いながら頭を押さえてくるから、全然説得力がなかった。
俺もシャツを脱いで、肌と肌が触れた瞬間に、胸の柔らかさが直接伝わってきて頭がおかしくなりそうだった。
手を下に滑らせて、デニムのボタンを外す。薄い水色のショーツの上から触ると、もう濡れてた。
「……やだ、バレた」
「いつから?」
「キスしてる時から……っ」
ショーツをずらして直接触る。指が滑るくらい濡れてて、クリに触れた瞬間に腰がびくって跳ねた。
「んっ……!」
「そこ……いい……」
ゆっくり円を描くように触りながら、中に指を入れた。きつかったけど、すぐに受け入れてくれた。
「あっ……ん……気持ちいい……」
指を動かすたびに、神宮寺さんの声が少しずつ大きくなってく。太ももで俺の手を挟むみたいにして、シーツ掴んで耐えてた。
「やば……もう……いきそ……」
クリを親指で押しながら中を指で掻くと、神宮寺さんの体がぎゅって硬直した。
「ああっ……!」
ぶるぶる震えながらイって、しばらく目を閉じて荒い息をしてた。
「……はぁ……すごかった……」
「大丈夫?」
「うん……今度は私が……」
起き上がった神宮寺さんが、俺のズボンを下ろした。もうとっくにパンパンになってたやつが出てきて、ちょっと恥ずかしかった。
「……おっきい」
「いや普通だと思う」
「元カレより全然おっきいよ」
それ言われると複雑な気持ちになるんだけど、正直嬉しかった。
神宮寺さんが両手で握って、ゆっくりしごき始めた。慣れてない手つきだったけど、それが逆にやばかった。
「こう……?」
「うん……気持ちいい……」
そのまま顔を近づけて、先っぽにキスするみたいに唇を当ててきた。
「ちゅ……」
「味、しょっぱい……」
そう言いながら口に含んできた。温かくて柔らかい口の中に包まれて、腰が浮きそうになった。
「んん……じゅる……」
下手なんだけど、一生懸命やってくれてるのが伝わってきて、それが何より興奮した。高校の時ずっと見てただけの子が、今俺のをくわえてる。この事実だけで射精しそうだった。
「やべ、もう出そう……」
「ん……いいよ、出して……」
「口の中はさすがに……」
「いいから」
覚悟を決めた目で見上げられて、限界が来た。
「あっ……出る……!」
口の中に出した。神宮寺さんはちょっとむせたけど、そのまま飲み込んでくれた。
「ん……けほっ……思ったより量多い……」
「ごめん……」
「ううん。……ねぇ、したい」
「……うん」
神宮寺さんがサイドテーブルの引き出しからコンドームを出した。
「用意してたの?」
「……今日こうなるかもって、ちょっと思ってたから」
(こいつ……確信犯かよ……)
でもそれが可愛くて、笑ってしまった。
ゴムをつけて、神宮寺さんの上に覆いかぶさった。脚の間に体を入れると、神宮寺さんが不安そうな顔をした。
「……ちょっと怖い。前の時、痛かったから」
「ゆっくりするから。痛かったら言って」
「……うん」
先端を当てて、少しずつ入れた。さっきイったからかスムーズに入っていったけど、途中できゅって締められた。
「あ……っ」
「痛い?」
「ううん……痛くない。前と全然違う……ゆっくりだから……」
奥まで入った時、俺も声が出た。きつくて、温かくて、(あ、これ長くもたないかも)って正直思った。
「動くよ……」
「うん……」
ゆっくり腰を動かし始めた。最初は慎重に、でも神宮寺さんの表情が痛みから気持ちよさに変わっていくのが分かって、少しずつペースを上げた。
「あっ……あっ……んっ……」
手を繋いだ。指を絡めたら、ぎゅって握り返してきた。
「気持ちいい……こんなの初めて……」
「俺も……やばい……」
正直、自分でも信じられなかった。高校3年間、廊下で目が合うだけで一日中幸せだったあの子と今こうしてる。現実感がなさすぎて、でも神宮寺さんの中の熱さと締め付けと、耳元で聞こえる吐息がリアルすぎて、夢じゃないことを突きつけてくる。
「ねぇ……もっと……もっと奥……」
腰の角度を変えて深く突くと、神宮寺さんが目を見開いた。
「あっ! そこ……そこいい……!」
「ここ?」
「うんっ……やば……」
同じ場所を狙って突くたびに、声がどんどん大きくなる。俺の背中に回された爪が食い込んでたけど、全然気にならなかった。
「あっ……あっ……いく……いっちゃう……!」
「俺も……もう……」
「一緒に……っ」
体を密着させて、最後の数回を深く突いた。
「んあっ……!」
神宮寺さんの中がぎゅうって締まって、俺も同時にイった。ゴムの中に出しながら、(ああ、もう戻れないな)って思った。良い意味で。
「はぁ……はぁ……」
しばらくそのまま重なってて、お互いの心臓の音を聞いてた。
「……ねぇ」
「ん?」
「これ、フリじゃないよね」
「当たり前だろ」
「ふふ……よかった」
ゴムを外して、ティッシュで処理してたら、神宮寺さんが後ろから抱きついてきた。
「ねぇ……もう一回したい」
「えっ、もう?」
「だって、前の彼氏は1回で終わりだったから……」
(それ比較されると元カレ可哀想だな……いやでも悪い気はしない)
2回目は神宮寺さんが上に乗った。腰をゆっくり動かしながら、上から見下ろされる。間接照明の光が神宮寺さんの体のラインを照らしてて、Eカップが揺れるのをぼんやり見てた。
「気持ちいい……?」
「うん……めちゃくちゃ……」
1回目と違って余裕があるぶん、お互いの体をゆっくり探るみたいなセックスになった。胸を掴むと神宮寺さんが「んっ」って甘い声を出して、乳首を指で挟むと腰の動きが速くなった。
「やだ……乳首触られると勝手に腰動いちゃう……」
「いいよ、好きに動いて」
神宮寺さんが前のめりになって、キスしながら腰を振ってきた。唾液が糸を引いて、お互いの吐息が混ざる。
「あっ……あっ……んっ……」
中がきゅうきゅう締まってきて、神宮寺さんがまた近い顔をした。
「また……いきそ……一緒に……いって……」
「うん……っ」
下から突き上げて、神宮寺さんの腰を掴んで押し付けた。
「あっ……!」
びくびくって震えながら、俺の上で崩れ落ちるようにイった。俺もそのまま出した。
しばらく重なったまま動けなかった。汗で肌がくっついてて、でもそれが気持ちよかった。
「……シャワー浴びよ」
「うん」
一緒にシャワーを浴びた。狭いユニットバスで体を洗い合うのが、セックスの何倍も恥ずかしかった気がする。
「背中流すね」
「ありがと……ってか、なんか新婚みたいだな」
「ふふ、そうだね」
シャワーから上がって、神宮寺さんに借りたTシャツ(メンズのLサイズ、元カレのじゃないよね?って聞いたら「お父さんの」って言われてそれはそれで複雑だった)を着て、ベッドに並んで寝転がった。
時計を見たら1時半だった。
「ねぇ、もう一つ言っていい?」
「どうぞ」
「文化祭の時、本当はアイスコーヒー作ったの私なの」
「……え?」
「あの子来た!って思って、急いでキッチン入って自分で作った。氷多めに入れちゃったでしょ? 焦ってたから」
そういえば、あのアイスコーヒー、やたら氷が多かった気がする。
「5年越しの伏線回収やめてくれ……」
「ふふ」
神宮寺さんが俺の腕に頭を乗せてきた。
「ねぇ、もう偽物じゃないんだから、名前で呼んでよ」
「……亜美」
「……うん」
嬉しそうに目を細めた顔を見て、(ああ、高校の時に話しかけてたらどうなってたんだろう)って思った。
でも、あの時話しかけなかったから、今こうなったのかもしれない。そう思ったら、あの3年間の片思いも、アイスコーヒーの一件も、全部ここに繋がるための時間だった気がした。
「おやすみ」
「おやすみ」
腕の中で眠った亜美の寝顔を見ながら、俺はしばらく眠れなかった。嬉しすぎて。
ちなみにあれから3年経ったけど、まだ付き合ってます。来月、同棲を始める予定。