はい、こんにちは。35歳のおっさんです。
最初に言っとくと、俺はモテない。身長171cm、体重はここ数年で73kgまで増えた。顔は…強いて言えば、劣化した大泉洋。髪も前より確実に薄くなってる。
で、バツイチ。3年前に離婚してる。理由は省略するけど、まあ俺が悪い部分も多かった。それ以来、恋愛とかそういうのは完全に枯れてた。
仕事は新宿の中堅メーカーで経理をやってる。朝8時半に西新宿の古いオフィスビルに出社して、数字とにらめっこして、21時くらいに帰る。たまに飲みに行く同期もいるけど、基本は缶ビール片手にYouTubeで釣り動画を見て寝る生活。
そんな俺の部署に、今年の4月に新卒が配属された。
名前は伏せるけど、第一印象は「真面目そうな子だな」。それだけ。
黒髪のボブで、メイクもほとんどしてない。服もグレーとか紺のシンプルなやつばっかり。身長は160cmくらいで、体型は…正直、最初はよくわからなかった。ゆるっとしたブラウスで隠れてたから。
顔は、うーん、今泉佑唯に似てた。欅坂のときの今泉佑唯。目がくりっとしてて、笑うと少しだけ八重歯が見える感じ。でも本人はあんまり笑わなかった、最初のころは。
配属初日に俺が教育担当になって、まあ普通に仕事を教えてた。
「ここの勘定科目はこっちで、この仕訳はこのパターンに当てはめて」
「はい、わかりました」
「わかんないことあったら聞いて。俺暇だから」
「暇じゃないですよね?いつも遅くまで残ってるの知ってます」
「…見てたの?」
「研修のとき、経理のフロア通るので」
ちょっとドキッとしたけど、まあ普通の会話だよな、と思った。この時点では完全にそう。
5月に入ったあたりで、朝出社すると俺のデスクにコーヒーが置いてあるようになった。
最初は自販機のやつかと思ったら、給湯室のドリップマシンで淹れたやつだった。しかもブラック。俺がブラック派なの、いつの間に知ったんだろう。
「あ、これ誰が…?」
「あ、私です。ドリップマシンの使い方覚えたんで、ついでに」
「ついでって、お前8時に来てるってことだろ?始業8時半なのに」
「朝型なんで」
嘘つけ。研修中は毎朝ギリギリだったの知ってるぞ。
…でも、まあ、後輩が先輩にコーヒーを出すのなんて普通のことだよな。気にしすぎだよな。そう思ってた。(今考えると、バカすぎる)
6月。梅雨に入って、雨の日が続いてた。
ある月曜日、出社したら彼女の印象がちょっと変わってた気がした。でも何が変わったのか、わからない。
「おはよう。…なんか今日、雰囲気違う?」
「…え?そう、ですか?」
「うーん、気のせいか。ごめん」
「……いえ」
少しだけ悲しそうな顔をしたのが気になったけど、すぐにいつもの真面目な表情に戻った。
同じ経理部の山下さん(45歳・既婚・おばちゃん)が、昼休みに俺に言ってきた。
「なんすか、山下さん」
彼女のことだった。
「あの子、髪型変えたの気づかなかったでしょ」
…え?
言われてみれば、ボブだった髪が少し伸びて、毛先がゆるく巻かれてた。あと、前髪が変わってたかもしれない。
「あと先週から眉毛の形変わってるし、リップの色も変えてるよ」
いや、そんなの気づくわけないだろ。おっさんだぞ俺は。
「誰のためにやってるか、わかんないの?」
「…え?」
「鈍すぎ」
山下さんはそれだけ言って去っていった。
(いやいやいや。まさかな)
12歳年下だぞ? 俺バツイチだぞ? 顔だって大泉洋の劣化版だぞ?
ないない。絶対ない。山下さんの冗談だ。そう思うことにした。
でも、一度意識してしまうと、目が追うようになる。
彼女がドリップマシンの前で俺のマグカップを持ってる後ろ姿。給湯室で少しだけ鼻歌を歌ってるのが聞こえたとき。俺が説明してるときに真剣にメモを取る横顔。
あと、服が変わってきてたのにもようやく気づいた。前はゆるっとしたブラウスばっかりだったのが、少しだけ体のラインが出るニットを着るようになってた。
で、それを見て初めて気づいたんだけど、この子、けっこう胸がでかい。
いやいや、何を見てるんだ俺は。教育担当だぞ。35歳のおっさんが23歳の新卒の胸を見てどうする。セクハラで一発アウトだぞ。
…でも、見えちゃうものは見えちゃうんだよ。
7月に入って、決算の時期でクソ忙しかった。
彼女も残業が増えて、22時過ぎまで一緒に残ることが何度かあった。
ある夜、他の社員がみんな帰って、フロアに二人きりになった。
「先輩、これ、ここの数字合わないんですけど…」
「どれどれ」
彼女のデスクに近づいて、画面を覗き込む。近い。シャンプーの匂いがする。(何の匂い嗅いでんだ俺は)
「あー、これ前期の振替仕訳が漏れてるな。ここをこうして…」
マウスを操作しようとして、彼女の手に触れた。
「あっ」
「あ、ごめん」
「…いえ」
沈黙。画面の数字が滲んで見える。
「…先輩」
「ん?」
「今度の土曜、もしお時間あったら…ごはん、行きません、か」
声が震えてた。画面を見たまま、耳が真っ赤になってるのが見えた。
(…マジか)
山下さんの言葉が頭をよぎった。
「誰のためにやってるか、わかんないの?」
俺は3秒くらい固まって、それから口を開いた。
「…いいよ。行こう」
「っ!…ほんとですか?」
振り向いた顔が、入社してから見た中で一番明るかった。
土曜日。新宿三丁目の小さいイタリアンで飯を食った。
彼女は白いワンピースを着てきてた。会社とは完全に別人だった。ちゃんとメイクもしてて、髪もきれいに巻いてた。首元にシルバーのネックレスが光ってた。
(え、こんなに可愛かったか、この子…)
「なんか、すげー雰囲気違うな」
「会社だとどうしても地味になっちゃうので…今日はちょっと頑張りました」
「頑張りすぎだろ。俺なんかTシャツにジャケット羽織っただけだぞ」
「先輩はそれくらいがちょうどいいです」
なんだその返し。上手いな。
ワインを飲みながら、仕事の話から趣味の話になった。彼女、釣りに興味があるらしい。
「YouTubeで釣り動画よく見るんですよ」
「え、マジで?俺も見てるわ。誰の見てる?」
「きまぐれクックとか…」
「あれ釣りっていうか捌く系じゃん」
「あはは、バレました」
初めて、声を出して笑うのを見た気がする。八重歯がちらっと見えて、心臓がうるさかった。
2軒目に行こう、と言ったのは俺からだった。
新宿御苑の近くのバーに入って、カウンターで横並びに座った。
「先輩って、奥さんと別れてからお付き合いとかしてないんですか?」
急に来たな。
「してない。…てか、よく知ってるな俺がバツイチって」
「経理部、噂早いですよ」
「だよな…」
「私、先輩がバツイチとか年上とか、そういうの全然気にしないです」
「…それは、どういう意味で」
「そのままの意味です」
目が合った。この子の目、本気だった。
「…俺、お前の教育担当だし、12歳も上だし、バツイチだし、おっさんだし」
「全部知ってます」
「知ってて、それでも?」
「…コーヒー、毎朝早起きして淹れてました。髪型、3回変えました。リップも変えました。全部、先輩に気づいてほしくて」
(山下さん、ごめん。本当だったわ)
「でも先輩、一回も気づいてくれなかった…」
目が潤んでた。照れてるのか、悔しいのか、その両方か。
「…ごめん」
「謝らないでください。私が勝手にやったことなんで」
「いや、ごめんじゃなくて…今、やっと気づいたから」
彼女が顔を上げた。
「お前がコーヒー淹れてくれる朝が、ここ数ヶ月で一番楽しみだった。理由わかんなかったけど。…お前がいない土日が、なんか物足りなかった。それが何なのか、35にもなって分かってなかった」
自分でも驚くくらいスラスラ出てきた。嘘じゃなかった。全部本当だった。
「…先輩、ずるい。そんなの…泣いちゃうじゃないですか」
バーのカウンターで静かに涙を流す23歳は、今泉佑唯なんかよりずっと可愛かった。
店を出て、新宿御苑沿いの道を歩いた。
7月の夜でも、日が落ちると少し涼しい。並んで歩いてたら、彼女の指が俺の手に触れた。
迷った。2秒くらい。
…握った。
小さくて、冷たい手だった。きゅっと握り返された。
「…先輩の手、あったかい」
「お前が冷たすぎるんだよ。7月なのに」
「緊張してるんです」
「…俺もだよ」
立ち止まった。街灯の下で向かい合った。
キスしていいか、聞けなかった。35歳のおっさんが23歳の後輩に路上でキスを迫るとか、事案だろ普通に。
でも彼女が、つま先立ちになって、目を閉じた。
(…もう、いいのかな)
触れるだけのキスをした。唇が柔らかくて、リップの甘い味がした。
離れた瞬間、彼女が俺のジャケットの裾を掴んだ。
「…帰りたくない」
その言葉に、理性が揺れた。いや、たぶんもう折れてた。
「…俺の家、ここから歩いて15分くらいだけど」
「…行きたいです」
俺の部屋は、独り暮らしの35歳のおっさんの部屋だ。決して広くはないけど、一応片付けてはいた。
玄関で靴を脱いで、リビングに通した。
「散らかってるけど…」
「全然きれいですよ。うちの実家より全然」
「水でも…」
言いかけたところで、後ろから抱きつかれた。
背中に顔を押し付けて、腰に腕を回してくる。
「先輩の匂いがする…」
「おっさんの匂いだろ、それ」
「好きな匂いです」
振り向いたら、顔が近かった。目が潤んでて、唇が少し開いてて。
キスした。今度はさっきみたいな触れるだけのやつじゃなくて、ちゃんとした、深いやつ。
舌が触れた瞬間に、彼女が小さく声を漏らした。
「ん…っ」
腰に回してた腕の力が強くなって、俺のシャツを掴んでくる。
(やばい。これ、止まれるのか俺)
キスしながらリビングのソファまで移動して、座った。彼女が俺の膝の上にまたがってきた。白いワンピースのスカート部分が太ももの上に広がる。
「先輩…触って、ほしい…です」
「…ほんとにいいのか。俺なんかで」
「俺なんかって言わないでください。私が好きになった人なんですから」
(…こういうこと言うんだよ、この子は)
ワンピースの上から腰を撫でて、背中に手を滑らせた。ファスナーに指をかける。
「下ろすよ」
小さく頷いたのを確認してから、ゆっくりファスナーを下ろした。ワンピースが肩から滑り落ちて、白いブラが見えた。
(……でか)
いや、会社でニット越しに見たときから予感はあったけど、予想を超えてた。控えめに見てもFカップ。あんな地味なブラウスの下に、こんなの隠してたのかよ。
「…すげぇな」
「…そんなにじっと見ないでください。恥ずかしい」
「ごめん。でも、目が離せない」
ブラのホックを外したとき、ぽろんと零れ落ちた。形がきれいで、肌が白くて。
片手で包むと、指の間から溢れる感じがした。
「んっ…」
乳首に触れると、すぐに硬くなった。
「あっ…先輩、そこ…弱い、です…」
敬語が崩れかけてるのが、たまらなかった。
口に含んだ。
「やっ…ん…っ」
膝の上で腰が小さく動く。太ももの内側に熱を感じる。
(…俺、ほんとにこんな子に好かれてるのか)
まだ信じられなかった。半分夢だと思ってた。でも目の前の彼女の体温は確実に上がっていて、呼吸は荒くなっていて。
ソファから立ち上がって、ベッドに移動した。
横になった彼女のワンピースを完全に脱がせると、白いショーツだけになった。
「…きれいだな」
「お世辞はいいです…」
「お世辞じゃない。本気で言ってる」
ショーツの上から触れたら、もう濡れてた。
「…っ。見ないで…」
「ごめん、でも…嬉しい」
ショーツをゆっくり下ろす。彼女が顔を両手で覆った。
指を一本入れると、きつくて、熱くて。
「あっ…ん…んんっ…」
「痛くない?」
「…大丈夫です…もっと、奥…」
ゆっくり動かしながら、クリトリスを親指で触れた。
「ひっ…やっ、そこ…だめ、です…っ」
腰がびくっと跳ねた。太ももが閉じようとするのを、もう片方の手で押さえる。
「先輩…先輩…っ」
名前じゃなくて「先輩」って呼ばれるの、これ、反則だろ。
指を動かし続けたら、彼女の声が高くなっていった。
「あっ…あっ…だめ…なんか変…っ」
「いっていいよ」
「あっ…あぁっ…!」
体を震わせて、俺の手首を両手で掴んだ。内側がぎゅっと締まるのがわかった。
しばらく荒い呼吸を繰り返して、薄目を開けた彼女が言った。
「…先輩も、脱いでください」
シャツとズボンを脱いだ。正直、もうとっくに限界だった。
ゴムを引き出しから取り出そうとしたら、彼女が俺の手を止めた。
「…なしで、いいです」
「いや、それは…」
「ピル、飲んでます。…先輩に誘ってもらえたとき、すぐ病院行きました」
(…この子、どんだけ準備周到なんだ)
「…いつから?」
「先週の月曜から…」
つまり、俺が飯に誘った翌日に病院に行ったってことか。
(…マジか)
正直、感動とも困惑ともつかない気持ちだった。この子は俺のことをそこまで想ってくれてたのか。おっさんの、バツイチの、劣化大泉洋のことを。
先端を当てた。
「入れるよ」
「…はい」
ゆっくり、少しずつ入れていく。きつい。ものすごくきつい。熱い。
「ん…んんっ…」
眉間にしわが寄ってた。
「痛いか?止めるか?」
「…痛いけど、やめないでください。ずっと、こうしたかったから…」
目が潤んでた。痛みなのか感情なのかわからないけど、涙が一筋流れた。
奥まで入った。そのまま動かずにいたら、彼女が深く息を吐いた。
「…先輩が中にいる…」
「…動いていい?」
「ゆっくり…お願いします」
ゆっくり腰を引いて、押し込む。中がぎゅうっと絡みついてくる感覚。35年生きてきて、こんなの経験したことなかった。元嫁のときとも全然違う。
いや、比べるなよ。比べるな。
「んっ…あっ…」
少しずつ表情が和らいでいった。眉間のしわが消えて、目が潤んだまま俺を見上げる。
「気持ちいい…です…先輩…」
「…俺も」
ペースを上げた。彼女の足が俺の腰に絡んできた。
「あっ…あっ…先輩、先輩…っ」
名前を呼ばれるたびに理性が削れていく。35歳のおっさんが23歳の後輩にこんな声出させてるって、冷静に考えたらやばいんだけど、もう冷静じゃなかった。
「やばい…もう…」
「いいです…中に…出してください…」
「…っ」
腰の奥がぎゅっと締まった瞬間に、もう我慢できなかった。
奥まで押し込んで、出した。全部出した。
「っ…!」
体が痺れるくらいの快感だった。彼女の中で脈打ってるのが自分でもわかった。
「…あったかい…」
彼女が俺の背中に爪を立てて、ぎゅっと抱きしめてきた。
しばらくそのまま動けなかった。
汗だくの額にキスした。
「…大丈夫だった?」
「…はい。すごく…よかったです」
「敬語…」
「…くせです。直んないかも」
「直んなくていいよ。それがお前だし」
「…っ。ずるい」
まただ。「ずるい」って言うとき、この子は泣きそうな顔で笑う。
抜いたあと、少しだけ休憩した。水を飲んで、エアコンの温度を下げて。
俺はもう満足してた。おっさんの体力的に、1回で十分だろうと思ってた。
でも彼女がベッドの上で横向きに寝て、こっちを見てた。
「…先輩」
「ん?」
「…もう1回、していいですか」
「していいですか」って聞くのかよ。敬語で。
(…勝てるわけないだろ、そんなの)
2回目は彼女が上になった。
さっきとは別人みたいに積極的で、腰を自分から動かしてきた。
「んっ…ん…あっ…」
さっきの遠慮がちな声と違って、少しだけ自分の快感を追ってる感じがした。
上から見下ろしてくる目が、潤んでて、熱くて。
「先輩…見て…」
「見てるよ」
「もっと…こっち見て…っ」
甘えてるんだ、この子は。さっきまでの「大丈夫です」「お願いします」の敬語の壁が、少しだけ崩れてきてる。
胸が揺れるのを下から見ながら、腰を突き上げた。
「あっ…だめ…そこ…すごい…っ」
「ここ?」
「そこ…っ!やば…先輩…先輩ぃ…っ」
「先輩ぃ」って。語尾が伸びるの、ずるいだろ。
体を起こして、抱きしめながら動いた。対面座位。彼女の腕が俺の首に回る。顔が近い。息が混ざる。
「好き…です…先輩が、好き…」
「…俺も。好きだ」
会社じゃ絶対言えないこと、ベッドの上でだけ言えてる。
「あっ…あっ…イきそ…っ」
「一緒にイこう」
「うんっ…先輩と一緒に…っ」
中が痙攣するみたいに締まって、もう無理だった。
2回目を中に出した。今度はさっきより深い場所に、全部。
「っ…あぁ…っ!」
ぎゅっと抱きしめたまま、二人とも動けなくなった。
額と額をくっつけて、荒い呼吸を繰り返す。
「…幸せです」
「…おっさんで、よかったのかよ。ほんとに」
「何回同じこと聞くんですか」
「…まだ信じられなくて」
「じゃあ信じられるまで、何回でも言います。好きです。先輩が好きです。大泉洋に似てるところも含めて全部好きです」
「…それ、褒めてるのか?」
「褒めてます」
笑った。二人で笑った。裸のまま。
そのあとシャワーを浴びて、俺のTシャツを貸した。彼女が着ると裾が太ももの半分まで来て、なんか…えっちだった。
エアコンの効いた部屋で、ベッドに並んで横になった。
「先輩、月曜から会社でどうしましょう」
「…普通にしてるしかないだろ。少なくとも教育担当が外れるまでは」
「じゃあコーヒーは淹れ続けていいですか」
「…今まで通りでいい。ただ…」
「ただ?」
「今度から、髪型変えたら気づくようにする」
「…っ」
顔を俺の胸に押し付けてきた。
「…約束ですよ」
「おう」
腕の中の彼女が、だんだん呼吸が穏やかになっていった。寝たんだと思う。
月曜日。いつも通り出社したら、デスクにコーヒーが置いてあった。
いつもと同じ、ブラックのドリップコーヒー。
でも、マグカップの下に小さい付箋が貼ってあった。
「今日のネイル、気づいてくれたら嬉しいです」
見たら、左手の薬指だけ、淡いピンクに塗ってあった。
(…反則だろ、それ)
山下さんが通りすがりに俺の顔を見て、ニヤッと笑った。
たぶん、バレてる。
でもまあ、いいか。
コーヒー、美味かった。今までで一番。