経理のおとなしい後輩が最近やたらコンタクトにしたり髪巻いたりしてるのは俺に関係ないと思ってた

こんにちは。36歳、バツイチ、経理課主任のおっさんです。

まあ「おっさん」って自分で言うのもアレなんだけど、実際おっさんなんだからしょうがない。身長は172で、体型はギリギリ中肉中背をキープ…してると思いたい。顔はまあ、友達に「お前って星野源の素朴さだけ残して華やかさ全部抜いた感じだよな」って言われたことがある。褒めてるのか貶してるのか未だにわからん。

で、3年前に離婚した。理由は省略するけど、まあ俺がつまんない人間だったんだと思う。元嫁にも「あんたといると空気が淀む」って言われたし。それ以来、恋愛とかもうマジでどうでもよくなって、休日は多摩川沿いのスーパー銭湯で一人サウナ入るのが唯一の楽しみっていう、THE独身おっさんライフを送ってました。

話は去年の4月に遡る。

うちの経理課に新卒の女の子が配属されてきた。名前は一応伏せるけど、ここでは「後輩ちゃん」と呼ぶ。配属初日、髪は真っ黒のストレートで肩より少し下くらい。メガネかけてて、化粧もほとんどしてない感じだった。背は160あるかないかで、体型は正直わからん、いつも緩めのブラウスにカーディガン羽織ってたから。顔立ちは…橋本環奈をめちゃくちゃ控えめにしたっていうか、パーツはいいんだけど本人がそれを活かす気ゼロっていうか。

(あー、真面目そうな子だな)

第一印象はそれだけ。俺は彼女の教育係を任されたんだけど、最初の1ヶ月はもう普通に仕事教えるだけの日々だった。

後輩ちゃんはとにかく真面目だった。メモの取り方が尋常じゃなくて、俺が何気なく言ったExcelのショートカットとかまで全部書き留めてる。質問もちゃんとまとめてから聞きに来るし、同じこと二回聞くことがない。正直、すげえ優秀だった。

「主任、この月次のここなんですけど、前期の仕訳と突合したら3万円ズレてて…」

「お、よく気づいたな。それ多分、去年の修正仕訳が反映されてないやつだ」

「あ、やっぱりそうですか。一応修正案作ってみたんですけど、見てもらえますか」

「もう作ったの?仕事はえーな」

「…えへへ」

あ、こいつ褒めると照れるタイプだ、ってこの時思った。耳が赤くなるのがすぐわかるんだよ、肌白いから。

そんな感じで半年くらい経って、後輩ちゃんが戦力として一人立ちし始めた頃だった。

ある月曜日、出社したら後輩ちゃんがメガネかけてなかった。

「あれ、今日メガネは?」

「あ、コンタクトにしたんです。週末に」

「ふーん。目乾かない?経理ってPC見っぱなしだから、コンタクトきつくない?」

「…大丈夫です」

今思うと、なんでそんな実務的な返ししかできないのか自分に呆れる。でも本当にその時は何とも思わなかったんだよ。コンタクトにしたんだ、へー、くらいで。

それから2週間後くらいに、髪を巻いてきた。ゆるふわパーマっていうの?ストレートだった髪が肩のあたりでふわっとしてて、なんかこう、雰囲気が柔らかくなった。

「パーマかけた?」

「はい。似合いますか…?」

「いいんじゃない?つーか、経理課は見た目で評価されないから楽だぞ」

「…そうですね」

(今この会話思い出すと死にたくなる)

その後も変化は続いた。リップの色がついた。カーディガンじゃなくて少しフィットしたニットを着るようになった。あと、なんか香水っていうかボディミストっていうか、すれ違うとふわっといい匂いがするようになった。

でも俺は全部スルーしてた。だって、社会人2年目って女の子がおしゃれに目覚める時期だろ?彼氏でもできたのかなーくらいにしか思ってなかった。むしろ「若い子は変わるの早いなー」って、完全におっさん目線で見てた。

で、転機は12月。忘年会だった。

品川のちょっとお高めの居酒屋で経理課の忘年会。8人くらいで、俺は端っこで黙々とハイボール飲んでた。後輩ちゃんは向かい側に座ってて、珍しくお酒飲んでた。普段は飲まないのに。

「主任って、休みの日なにしてるんですか?」

「サウナ」

「サウナだけですか?」

「サウナの後にメシ食って帰る」

「…それ、楽しいですか?」

「楽しいよ。整うって知ってる?水風呂入ったあとに外気浴すると、脳みそがバグるんだよ」

「ぷっ…脳みそバグるって…」

後輩ちゃんが笑った。メガネかけてた時はあんまり笑わない子だと思ってたけど、最近よく笑うようになった気がする。あとやっぱメガネ外すと目がでかいな、って他人事みたいに思った。

忘年会が終わって、二次会にはいかず帰ろうとしたら、後輩ちゃんが俺の隣に立ってた。

「主任、私も二次会パスします。品川駅まで一緒に歩いていいですか」

「おう、いいけど」

12月の品川は風が冷たくて、後輩ちゃんが時々肩をすくめてた。薄手のコートだったから寒そうで。

「主任、あの…聞きたいことがあるんですけど」

「ん?」

「主任って、私のこと変わったなって思います?4月に比べて」

「ん?まあ、仕事できるようになったよな。最初の頃はPL見ても固まってたのに」

「…仕事じゃなくて」

「え?」

「…なんでもないです」

後輩ちゃんがちょっと早歩きになって、俺を置いて改札に向かっていった。

(なんだったんだ…?)

この時点で気づけよ、って話なんだけど、マジで気づかなかった。バツイチのおっさんがまさか12個下の新卒の女の子に好かれてるとか、発想自体がなかった。

年が明けて、1月の第2週。

後輩ちゃんの様子がちょっとおかしかった。普段は俺のデスクに質問しに来る時、ちゃんと正面に立って話すんだけど、その週はなんか目を合わせないし、メールで済ませられる用件もわざわざメールで送ってきたりして。

(あれ、なんか怒らせたかな…)

金曜日、定時を過ぎてフロアに俺と後輩ちゃんだけになった。月末の締め作業を前倒しでやってた。

「後輩ちゃん、この前の忘年会で俺なんか失礼なこと言った?もし言ってたらごめんな」

「え…言ってないですよ」

「じゃあなんで最近よそよそしいの?」

「…よそよそしくなんかないです」

「いや、明らかにおかしいって。俺は鈍いけど、そのくらいはわかるぞ」

「鈍いって自覚あるんですね」

「え、怒ってる?」

「怒ってません」

「怒ってるじゃん…」

後輩ちゃんがPCの画面から目を離して、こっちを見た。目が少し赤い気がした。

「主任は…私のこと、後輩としか見てないですよね」

「え?」

「コンタクトにしても、パーマかけても、服変えても、主任なんにも言ってくれないし」

「いや、気づいてたよ?似合ってるなーって思ってたし…」

「思ってたなら言ってくださいよ…!」

後輩ちゃんの声が震えてた。

「私がなんで急にコンタクトにしたと思ってるんですか。なんで髪巻いてると思ってるんですか。彼氏もいないのに誰のためにおしゃれ頑張ってると思ってるんですか」

「…え」

「主任のためですよ…!全部…主任に見てほしくて…」

頭が真っ白になった。

本当に、フリーズした。さっきサウナの話で「脳みそバグる」って言ったけど、それどころじゃなかった。36歳のおっさんに24歳の女の子が泣きそうになりながら「あんたのためにおしゃれしてた」って言ってる。いやいやいや、なんだこの状況。ドッキリか?経理課にカメラ仕込んでるのか?

「…ちょっと待って、整理させて」

「待ちません。もう8ヶ月待ったんです」

「8ヶ月…?」

「主任が教育係になってくれた時から…好きでした」

後輩ちゃんの目から涙がぽろっとこぼれた。

俺はティッシュを引き出しから出して渡すことしかできなかった。マジで情けないんだけど、それしか思いつかなかった。

「ありがとうございます…ずるい…こういうとこなんですよ…」

「え、ティッシュがずるい?」

「こういう…さりげない優しさが…ずるいって言ってるんです…」

(いや、ティッシュ渡しただけなんだけど…)

俺はしばらく黙って、それからゆっくり口を開いた。

「俺、バツイチだよ」

「知ってます」

「12個も上だよ」

「知ってます」

「休みの日はサウナしか行かないよ」

「…それはちょっとどうかと思いますけど、一緒に行きます」

「混浴じゃないから無理だろ」

「…主任、真面目に聞いてください」

後輩ちゃんが泣き笑いみたいな顔で俺を見てた。

正直に言う。嬉しかった。でも怖かった。一回結婚に失敗してる人間が、12個下の子と付き合うなんて、周りから見たらどうなんだ。会社の目もある。彼女のキャリアにも影響するかもしれない。

でもそんなこと頭でぐるぐる考えてる間に、後輩ちゃんが立ち上がって俺のデスクの横に来た。

「返事、今じゃなくていいです。でも…考えてください。お願いします」

そう言って、深くお辞儀して、帰っていった。

経理課に一人残された俺は、30分くらいぼーっとしてた。窓の外は真っ暗で、遠くに品川のビルの明かりが見えた。

週末、サウナに行った。いつもの多摩川沿いのやつ。水風呂入って、外気浴して、整うはずだった。でも全然整わなかった。後輩ちゃんの泣き顔がずっと頭にあって、水風呂がぬるく感じた。

月曜日、出社したら後輩ちゃんは普通だった。いつも通り「おはようございます」って言って、いつも通り仕事してた。むしろ金曜のことがなかったみたいに振る舞ってた。それが逆にしんどかった。

3日悩んだ。

水曜日の昼休み、社員食堂で後輩ちゃんを見つけた。一人でチキン南蛮定食食べてた。

「隣いい?」

「あ、はい。どうぞ」

「金曜の返事なんだけど」

後輩ちゃんの箸が止まった。

「今週の土曜、一緒にメシ行かない?サウナ以外の場所で」

「…え」

「デートってやつ。俺、やり方もう忘れたけど」

後輩ちゃんがチキン南蛮をぽろっと落とした。

「…いいんですか」

「いいもなにも、お前が考えろって言ったんだろ。考えた結果がこれだよ」

「はい…行きます…行きたいです」

後輩ちゃんの目にまた涙が浮かんでて、俺は(頼むから社食で泣くな、周りに見られる)って内心焦ってた。

土曜日、中目黒で待ち合わせた。

俺は久しぶりにまともな私服を選ぶのに1時間かかった。結局ユニクロのネイビーのジャケットに白のカットソーっていう、おっさんの精一杯コーデで行った。

後輩ちゃんは…正直、最初誰かわからなかった。

ベージュのワンピースに、ちょっとヒールのあるサンダル。髪は少し巻いてて、ハーフアップにしてた。化粧も会社の時より明らかに気合い入ってて、唇がツヤツヤしてた。

(え、待って。こんなに可愛かった…?)

声かけられるまで3秒くらいフリーズしてたと思う。

「主任…?」

「あ、ごめん。ちょっとびっくりして」

「変ですか…?」

「いや。すげえ可愛い」

「っ…!」

後輩ちゃんの顔が一瞬で真っ赤になった。耳まで赤い。あー、この反応、会社で褒めた時と同じだ。

「…ありがとうございます。主任もかっこいいです」

「それはない」

「あります」

中目黒の川沿いのイタリアンに入った。テラス席は寒いから中の奥の席にして、白ワインを頼んだ。後輩ちゃんはカシスオレンジ。

飯食いながら、会社では聞けなかった話をいろいろした。後輩ちゃんは千葉の柏出身で、大学は法政で、経理になったのは「数字がぴったり合う瞬間が好きだから」っていう、いかにもこの子らしい理由だった。

「主任はなんで経理に?」

「営業が死ぬほど向いてなくて、異動希望出したら経理に飛ばされた」

「ぷっ…飛ばされたって」

「でも結果的によかったよ。数字は嘘つかないし、人間関係のストレスも営業よりマシだし」

「私も…経理でよかったです」

「ん?」

「主任がいる部署に配属されたから」

俺はワインを飲み込むのを失敗してちょっとむせた。こいつ、こういう直球を何の前振りもなしに投げてくるからびっくりする。

デートっぽいことをほとんどしたことがない俺は、ご飯のあとどうすればいいかわからなくて、結局「散歩する?」っていう小学生みたいな提案をした。後輩ちゃんは「はい」って嬉しそうに頷いた。

中目黒の川沿いを歩いた。1月だから桜はないけど、街灯が川面に反射してて、まあそれなりに雰囲気はあった。

歩いてる途中、後輩ちゃんの手が俺の手に触れた。寒いからポケットに手を入れようとして、ぶつかっただけだと思った。

2回目。

3回目。

さすがに4回目で気づいた。(…あ、これ手つなぎたいってことか?)

「…手、冷たくない?」

「冷たいです」

「…」

俺は後輩ちゃんの手を握った。小さくて、本当に冷たかった。

「…主任の手、あったかい」

「おっさんは体温高いからな」

「おっさんって言わないでください」

「事実だろ」

「私の好きな人をおっさん呼ばわりしないでください」

…参った。こんなこと言われたの、人生で初めてだ。

駅に向かう途中、人通りの少ない路地に入った時、後輩ちゃんが足を止めた。

「主任」

「ん?」

「…今日、帰りたくないです」

心臓が跳ねた。

「…それは」

「主任の家、近いですよね。中目黒から」

「池尻大橋だから、一駅だけど…」

「行っていいですか」

「いやでも、お前…」

「お前じゃなくて、名前で呼んでください。今日くらい」

「……わかった」

一駅分、手をつないだまま電車に乗った。土曜の夜の田園都市線は空いてて、後輩ちゃんは俺の肩にそっと頭を預けてきた。その重みが、ちょっと泣きそうになるくらい温かかった。

池尻大橋の1LDK。築15年の、別にきれいでもない部屋。掃除はしてたけど、生活感しかない空間。

「お邪魔します…」

「散らかってはないと思うけど、あんまり期待しないでくれ」

「主任の部屋だ…」

後輩ちゃんが部屋をきょろきょろ見回してた。本棚にある『経理の教科書』とか『Excelピボットテーブル完全ガイド』とかを見て、くすって笑ってた。

「笑うなよ」

「笑ってないです。主任らしいなって思っただけ」

コーヒーでも入れようかと思ってキッチンに立ったら、後ろから抱きつかれた。

後輩ちゃんの腕が、俺の背中に回ってた。

「…コーヒーいらないです」

「…じゃあ何がいるの」

「主任」

振り返ったら、後輩ちゃんが至近距離で俺を見てた。潤んだ目がやばかった。会社で見てた真面目な顔とは全然違う、こんな表情するんだこの子、って思った。

俺から唇を寄せた。柔らかくて、カシスオレンジの味が少しした。

「ん…」

一回離れて、もう一回。今度は後輩ちゃんから舌を入れてきた。

(え、めちゃくちゃ上手いんだけど…)

「んっ…はぁ…」

キスしながらリビングからベッドの方に移動して、後輩ちゃんをベッドに座らせた。俺は膝をついて目線を合わせた。

「本当にいいの?」

「ずっとこうしたかったんです。8ヶ月、ずっと…」

ワンピースのジッパーを後輩ちゃんが自分で下ろした。中は白のレースのブラとショーツで…この子、今日この下着で来たのかと思ったら、頭がクラっとした。

「…すげえ綺麗」

「…恥ずかしいから、そんなに見ないで…」

「ごめん、でも見る」

ブラを外したら、想像以上だった。普段のカーディガンやニットで全然わからなかったけど、形がすごく良くて、手に収まるくらいの大きさで。

「あっ…」

胸に口づけたら、後輩ちゃんが小さく声を上げた。

「感じる?」

「…初めて人に触られるから…わかんない…」

「初めて?」

「…ちゃんと付き合ったの、初めてなので…」

マジか。橋本環奈の控えめ版みたいな顔して、24歳でそういう経験がないっていうのが信じられなかった。でも、だからこそ余計に丁寧にしなきゃって思った。

ゆっくり全部脱がした。後輩ちゃんは顔を手で隠そうとしたけど、俺がその手をどけた。

「隠すな。全部見たい」

「…っ、主任のくせに…かっこつけないでください…」

「おっさんだって、たまにはかっこつけたいんだよ」

太ももの内側に触れたら、もう濡れてた。

「やっ…そこ…」

「力抜いて。ゆっくりやるから」

指を一本入れたら、きゅっと締まって、後輩ちゃんが息を飲んだ。

「あぁっ…」

「痛い?」

「痛くない…です…でもなんか…変な感じ…」

ゆっくり動かしながら、親指でクリに触れた。

「ひっ…!そこ…だめ…」

「だめって、すごく反応してるけど」

「だって…自分でも…こんなの初めてで…あっ…んっ…」

後輩ちゃんの体が小刻みに震えてた。目が潤んでて、唇を噛んで声を抑えようとしてた。

「我慢しなくていいよ」

「だって…恥ずかし…あっ、あっ、だめ…なんか…来る…」

「いっていいよ」

「あぁっ…!」

後輩ちゃんの体がびくっと跳ねて、俺の指をぎゅっと挟んだ。しばらく体を小刻みに震わせて、荒い息をしてた。

「はぁ…はぁ…なに今の…すごかった…」

「初めてなの、信じるわ」

「…主任のこと考えながら、自分でしたことは…あります…」

「…お前、爆弾投下するのやめてくれない?」

「えへへ…」

俺のを後輩ちゃんが恐る恐る触ってきた。小さい手でぎこちなく握って、どうすればいいかわからないって顔してた。

「これ…合ってますか…?」

「…充分」

下手なのに、いや下手だからか、めちゃくちゃ興奮した。この子が俺のために頑張ってくれてるっていう事実だけで、もうやばかった。

「…入れていい?」

「…はい」

コンドームをつけて、後輩ちゃんの上に覆いかぶさった。

「痛かったら言って。すぐ止めるから」

「…はい。お願いします…」

先端を当てて、ゆっくり入れていった。

「…っ、いたっ…」

「止めようか?」

「だめ…止めないで…やっとここまで来たのに…」

後輩ちゃんが俺の背中に手を回して、ぎゅっと抱きしめてきた。

少しずつ入れていくと、後輩ちゃんの表情が苦しそうなのから段々変わっていった。

「あっ…奥…」

「全部入ったよ」

「…主任が中にいる…」

「…それ、会社では言うなよ絶対」

「ぷっ…こんな時に…笑わせないでください…」

でもその笑顔で少し体の力が抜けたみたいで、中がふわっと柔らかくなった。

ゆっくり動き始めた。

「んっ…あっ…」

「大丈夫?」

「大丈夫…気持ちいい…かも…」

腰を動かすたびに、後輩ちゃんが小さく声を上げた。目が潤んでて、頬が赤くて、会社のデスクでExcelと向き合ってるのと同じ人間とは思えなかった。

「主任…好き…好きです…」

「…俺も」

自分で言ってびっくりした。でも嘘じゃなかった。いつからかはわからないけど、この子のことが好きだったんだと思う。メガネかけてた頃から、質問をちゃんとまとめてから聞きに来る時の真剣な顔が、修正仕訳を先回りして作ってくる時の得意げな顔が、全部好きだった。気づくのが遅すぎた。

「あっ…やっ…もっと…」

動きを速くした。ベッドが軋む音と後輩ちゃんの声が混ざって、なんかもう現実感がなかった。36歳のバツイチが、こんな可愛い子と、こんなことしてていいのか。いいのか本当に。

「やば…もう…」

「いいです…きて…」

限界だった。後輩ちゃんを抱きしめて、中で出した。ゴムの中だけど、出す瞬間に後輩ちゃんが「あっ…」って言ったのが、もう駄目だった。

「はぁ…はぁ…」

「…出ました?」

「…うん」

「…わかりました。なんか、ぴくってなったから」

しばらく抱きしめたまま動けなかった。後輩ちゃんの心臓がどくどく鳴ってるのが伝わってきて、俺のも同じくらい鳴ってた。

少し休んで、後輩ちゃんが俺の胸に顔を埋めたまま言った。

「…主任」

「ん」

「もう一回…していいですか」

「…おっさんの体力舐めんな」

「さっきサウナで鍛えてるって言ってたじゃないですか」

「サウナは心肺機能であってこっちの体力とは…」

後輩ちゃんが俺のを握ったら、もう反応してた。

「…元気じゃないですか」

「…否定できない」

2回目は後輩ちゃんが上になった。慣れてないから動きはぎこちなかったけど、一生懸命腰を動かしてる姿が愛おしかった。さっきまで緊張で強張ってた体が少しずつほどけていくのがわかった。

「ん…こう…?これで気持ちいですか…?」

「うん…いい…」

「よかった…」

後輩ちゃんが俺の上で前かがみになって、おでこを合わせてきた。

「ねえ…私のこと、名前で呼んでくださいよ…」

「…会社じゃ呼べないぞ」

「今は会社じゃないです」

俺は後輩ちゃんの名前を呼んだ。初めて名前で呼んだ瞬間、後輩ちゃんの中がきゅって締まったのがわかった。

「あっ…もう一回言って…」

名前を呼びながら下から突き上げたら、後輩ちゃんが声を押し殺すように俺の首筋に顔を埋めた。

「だめ…それ…好きすぎて…おかしくなる…」

2回目は長く続いた。お互いの体が馴染んできて、どこに触れたら後輩ちゃんが声を上げるか、どう動いたら中が締まるか、少しずつわかってきた。こんなの、何年ぶりだろう。こんなに誰かの反応を知りたいって思ったの。

「あっ…あっ…もう…私もう…」

「俺も…」

「一緒に…」

抱きしめて、ほぼ同時にいった。後輩ちゃんが俺の耳元で甘い声を出して、全身を震わせた。

終わったあと、二人でぼーっと天井を見てた。

「…主任」

「だから名前で呼べって言ったり主任って呼んだり、どっちなんだよ」

「…会社では主任って呼びます。二人の時は…健太郎さん、って呼んでいいですか」

「…好きにしろ」

「健太郎さん」

「…なんだよ」

「コンタクトにしてよかった」

後輩ちゃんが笑った。8ヶ月かけて少しずつ変わっていった全部の理由が、こんな間抜けなおっさんのためだったって思ったら、なんかもう、ちゃんとしなきゃって思った。

この子のために。

あれから半年経った。会社にはまだ言ってない。でも経理課の課長だけは気づいてるっぽい。先月「最近楽しそうだな、イマケン」って言われて「サウナにハマってるんです」って答えたら「嘘つけ」って言われた。

休日のサウナは今も行ってる。ただ一人じゃなくて、近くの岩盤浴に後輩ちゃんが行って、終わったあと合流してメシ食うようになった。

あのとき鈍感すぎた自分をぶん殴りたいけど、鈍感だったからこそ後輩ちゃんが8ヶ月も頑張ってくれたのかもしれない、と思うことにしている。

以上、36歳バツイチ経理課主任の、人生で一番間抜けな恋の話でした。


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