大学のゼミ合宿で「下だけは絶対無理」と言い張る二個上の先輩と同じ布団で寝る羽目になった話

これ書くかどうかけっこう迷ったんだけど、もう4年前の話だし、時効ってことで。

大学3年の夏、ゼミ合宿があった。場所は千葉の館山にある大学の研修施設。築40年ぐらいのボロい建物で、エアコンは食堂にしかないっていう、令和の大学生には厳しすぎる環境だった。

俺のスペックは当時21歳、170cm、顔は...まあ竹内涼真を3回洗濯機にかけて縮ませた感じって言えば伝わるかな。伝わらないか。要するにフツメンです。彼女いない歴2年、ゼミでは空気寄りのポジション。

で、問題の先輩。2個上の4年生で、名前は伏せるけど、ゼミの飲み会で男子が「あの人やばくない?」ってこそこそ言うぐらいには目立つ人だった。身長163cm、ショートボブが似合う橋本環奈系の顔で、でも橋本環奈よりもっと目が鋭い。スタイルは細身なんだけど胸だけしっかりあって、たぶんEカップはあったと思う。

ただ、この先輩には有名な噂があった。

「下は絶対やらせない人」。

過去に付き合った彼氏にも、口でするのはいいけどされるのは断固拒否だったらしい。潔癖なのか、コンプレックスなのか、理由は誰も知らない。飲み会でその話題になったとき、先輩本人が真顔で「無理なもんは無理」って言い切ってたのを覚えてる。

正直、俺にとっちゃどうでもいい情報だった。だってまず先輩と二人きりになることなんてないし。

...と思ってた。

合宿2日目の夜。ゼミ生15人で飲み会をやってたんだけど、教授が「明日のプレゼンに響くから23時には寝ろ」って言い出して、なし崩し的にお開きになった。

部屋割りは男女別の雑魚寝で、俺は男子部屋で寝る予定だったんだけど、部屋に戻ったら同期の田中がべろべろに酔って、布団3枚分ぐらい使って大の字で寝てた。しかも時々「うぇっ」って言ってる。(これ近くで寝たら絶対被弾するやつだ...)

仕方なく布団を1枚持って廊下に出た。

そしたら、先輩が廊下の突き当たりにある小部屋――たぶん元は物置だったっぽい4畳半の和室――の前に立ってた。

「あれ、どうしたの」

「田中がゲロりそうで避難してきました。先輩は?」

「女子部屋、いびきがすごくて無理。この部屋空いてるっぽいから使おうかなって」

「あー...俺もそこ使っていいですか」

先輩がちょっと考えるような顔をして、それから「いいよ別に」と言った。

中に入ると、布団が2組押し入れにあった。敷いてみたら、4畳半に布団2枚でほぼ床が埋まる。間に隙間なんてない。

(これ、まずくないか...?)

でも他に選択肢がなかった。田中のゲロか、ここか。

「変なことしたらゼミ追い出すからね」

「しませんって」

電気を消した。窓から入ってくる月明かりだけで、先輩の横顔がうっすら見える。Tシャツに短パンっていうラフな格好で、普段のきっちりした感じとのギャップがやばかった。

5分ぐらい無言で天井見てたら、先輩が唐突に話し始めた。

「...ねえ、あんたさ、卒論のテーマもう決めた?」

「いや、まだ全然です。先輩はもう書いてるんですか」

「書いてるっていうか...書けなくて死にそう」

「え、先輩が?成績いいじゃないですか」

「成績と論文は別でしょ。テスト勉強は得意だけど、自分の考えを書くのが壊滅的に下手なの」

暗闇で話すと、なんか変に距離が近く感じる。先輩の声がいつもより柔らかくて、ゼミの発表で後輩をバッサリ切ってくる人と同一人物には思えなかった。

「俺、文章書くのだけは得意なんで、よかったらチェックしますけど」

「...マジで?」

「はい、赤ペン先生やりますよ」

先輩が小さく笑った。初めて聞いた気がした、その笑い声。

「あんた、意外といい奴だね」

「意外は余計です」

「ふふ...おやすみ」

その夜は何もなかった。本当に。

でも翌朝、目が覚めたら先輩が俺の腕にしがみついて寝てた。寝相なのか無意識なのかわからないけど、柔らかい感触が腕に押し付けられてて、朝から心臓がやばかった。

先輩が目を開けて、状況を理解して、「...あっ」って言って飛び起きた。

「今のは寝ぼけてただけだから。変な勘違いしないで」

顔が真っ赤だった。(いや、勘違いもなにも事実しがみついてたじゃん...)

合宿が終わって大学に戻ってから、先輩が本当に卒論のチェックを頼んできた。週に2回、大学のカフェテリアで原稿を見る時間ができた。

最初は純粋に赤入れしてただけだった。でも先輩の文章って、内容はちゃんとしてるのに、なぜか感情が全部そぎ落とされてるような書き方で。

「先輩、ここ、なんでこの結論になったか、もうちょっと先輩自身の言葉で書いた方がいいと思います」

「自分の言葉って何。論文に感想文は要らないでしょ」

「感想文じゃなくて、考察ですよ。先輩がこのデータ見てどう思ったかって話です」

先輩がペンを止めて、黙った。

「...私、自分がどう思ってるかとか、言語化するの苦手なの。昔から」

その言い方が妙に重くて、これは卒論の話だけじゃないなって思った。

10月に入って、千駄ヶ谷の国立競技場の近くにある先輩の一人暮らしのマンションで原稿を見ることが増えた。カフェだと周りがうるさいから、って理由で。

最初は警戒してたけど(先輩の家って...)、実際行ってみたら、1Kの狭い部屋にデスクと本棚しかないような質素な空間で、なんかこの人らしいなと思った。

ただ、問題は距離感だった。

狭い部屋で二人、ノートPCの画面を覗き込む体勢になると、先輩のシャンプーの匂いがする。石鹸みたいな、シンプルな匂い。

(やめろ、意識するな)

って自分に言い聞かせてたんだけど、ある日、先輩が淹れてくれたコーヒーをこぼして、先輩のスカートにかかった。

「すみません!!大丈夫ですか熱くないですか」

「大丈夫、ぬるかったし。...ちょっと着替えるから、あっち向いてて」

背中を向けて待ってた。衣擦れの音がして、(今、先輩が後ろで着替えてる)っていう事実だけで頭がおかしくなりそうだった。

「もういいよ」

振り向いたら、先輩がスウェットに着替えてた。なんかそれが合宿の夜を思い出させて、心臓がぎゅっとなった。

「...なに、その顔」

「いえ、何でもないです」

「嘘。今なんか考えてたでしょ」

(鋭すぎる...)

「合宿のこと思い出してました。先輩が腕にしがみついてきたやつ」

先輩の目が一瞬見開かれて、すぐにそっぽを向いた。

「...あれは寝ぼけてたって言ったじゃん」

「はい、わかってます」

「......」

「......」

沈黙がやばかった。時計の秒針の音が異常にでかく聞こえた。

「...寝ぼけてなかったかも」

え?

「起きてた。起きてて、あんたが隣にいるのがなんか安心して、...つい」

先輩が膝を抱えて、顔を伏せた。こんな先輩、見たことなかった。ゼミで堂々と発言して、後輩にも教授にも物怖じしないあの先輩が、今めちゃくちゃ小さく見えた。

「先輩」

「...何」

「俺、先輩のこと好きかもしれないです」

自分でも信じられなかった。こんなタイミングで言うつもりなんてなかった。でも、先輩が弱いとこ見せてくれたのに、俺だけ隠してるのがずるい気がして。

先輩がゆっくり顔を上げた。目がちょっと潤んでた。

「"かもしれない"って何。中途半端」

「...好きです。たぶんじゃなくて」

「...バカ」

先輩が俺のTシャツの裾を掴んだ。引っ張られて、気づいたらキスしてた。

先輩の唇が震えてた。

「...先輩」

「黙って。今しゃべらないで」

もう一回、今度は先輩から。さっきより深くて、舌が触れた瞬間、先輩が小さく「ん...」って声を漏らした。

頭の中が真っ白になった。ゼミの先輩、2個上、卒論のチェック係。全部どうでもよくなった。

先輩の背中に手を回したら、思ったより華奢で、力を入れたら壊れそうだった。

「...ベッド、行っていい?」

先輩がそう言ったとき、正直、(俺でいいのか?)って思った。

先輩のベッドに並んで座って、またキスした。先輩が自分からTシャツを脱いだ。白いブラから谷間が見えて、息が詰まった。

「触っていいですか」

「敬語、やめていいよ。...今だけ」

ブラを外した。想像してたよりずっと大きくて、形が綺麗で、思わず見とれた。

「...そんな見ないで」

「ごめん、綺麗だなって」

「...バカ」

胸を揉むと、先輩が目を閉じて眉を寄せた。乳首に触れたら「ん...っ」って声が出て、先輩が自分の口を手で押さえた。

「声、我慢しなくていいのに」

「うるさい...」

でも手をどけてくれた。乳首を転がすと、先輩の呼吸が浅くなっていくのがわかった。

「ちゅ...」乳首に口をつけたら、先輩の体がびくっと跳ねた。

「あっ...そこ、弱い...」

舐めながら、もう片方の手で下着の上から触った。

...濡れてた。じわっと生地が湿ってるのが指先でわかった。

先輩が俺の手首を掴んだ。

「...下は、やめて」

来た。例の「下は無理」。

「...わかった」

手を引いた。正直、触りたかった。でもここで無理したら全部終わる気がした。

先輩がじっと俺の顔を見てた。

「...怒った?」

「怒るわけないだろ」

「前の彼氏は...怒ったんだよね。なんで嫌なのかわかんないって」

「...」

「汚いとか、そういうんじゃなくて...なんか、怖いの。見られるのが。...弱いとこ全部さらけ出すみたいで」

先輩の声が小さくなっていった。

あの合宿の夜、「自分の気持ちを言語化するのが苦手」って言ってた先輩が、今めちゃくちゃ頑張って言葉にしてくれてるのが伝わった。

「無理しなくていいよ。先輩が嫌なことはしない」

先輩が目を伏せて、「...ありがと」って言った。

それから先輩が俺のベルトに手をかけた。「こっちは、いい?」

先輩の手が下着の中に入ってきて、直接握られた。細い指が絡みつくように動いて、先輩の手が冷たくて、それが逆に気持ちよかった。

「...こういうの、久しぶりだから下手かも」

「いや、全然...気持ちいい...」

先輩が少し大胆になって、先端を親指でくるくる触ってきた。もう我慢できるレベルじゃなかった。

「先輩、やば...もう出そう...」

「...出していいよ」

先輩がティッシュを用意してくれてて、(こういうとこ、ちゃんとしてるな...)とか場違いなこと考えてる間に限界が来た。

先輩の手の中で出した。頭がぼうっとして、しばらく動けなかった。

「...すごい量」

「...すみません」

「なんで謝るの。...嬉しいんだけど」

先輩が小さく笑って、ティッシュで丁寧に拭いてくれた。

「...ねえ」先輩が俺の胸に顔を埋めた。

「もうちょっと...触ってほしい」

「...いいの?」

「胸だけ...ね?」

仰向けになった先輩の上に覆いかぶさって、胸を揉みながらキスした。舌を絡ませると先輩の腰がかすかに浮くのがわかった。

乳首を吸いながら、体を密着させた。さっき出したばかりなのに、もう硬くなってた。先輩の太ももの間に挟まる形になって、先輩が息を飲んだ。

「...当たってる」

「ごめん」

「......ゴム、ある?」

心臓が止まるかと思った。

「...財布の中に」

先輩が、顔を真っ赤にしたまま、こくんと頷いた。

ゴムをつけて、先輩の下着をゆっくり下ろした。先輩が顔を腕で隠した。

「...見ないで」

「見ない。目つぶってるから」

嘘だったけど、先輩を安心させたかった。

入り口に先端を当てたら、先輩の体が強張った。

「力、抜いて。ゆっくりいくから」

「...ん」

ゆっくり入れた。先輩がシーツを掴んだ。中はきつくて熱くて、自分まで声が出そうになった。

「...っ...あ...」

「痛い?」

「痛くない...大丈夫...動いて」

ゆっくり腰を動かし始めた。先輩が腕をどけて、目が合った。先輩の目が潤んでて、なんか、泣きそうな顔をしてた。

「先輩?」

「...なんでだろ、怖くない」

「え?」

「あんたとだと...怖くないの...」

その言葉で、俺の中で何かが外れた。もっとこの人のことを知りたい、全部受け止めたいって、本気で思った。

先輩の手を握って、指を絡ませた。腰の動きは速くしなかった。ゆっくり、深く、先輩の反応を見ながら。

「ん...あ...そこ...いい...」

先輩が自分から腰を押し付けてきた。目が潤んだまま、でもさっきとは違う、気持ちよさで溶けていくような表情になってた。

「先輩、気持ちいい...」

「...私も...」

先輩がぎゅっと手を握り返してきた。

先輩の中がきゅって締まって、「あ、イきそう...」って小さく言った。

「やだ...イっちゃう...っ」

体が震えて、先輩が声を押し殺しながらイった。その締め付けで俺も限界が来て、ゴムの中に出した。

しばらく、二人とも動けなかった。

先輩が俺の首に腕を回して、引き寄せてきた。

「...もう一回、していい?」

2回目は、先輩が上に乗った。自分から腰を動かして、自分のペースで。さっきより声が出てて、我慢してない感じが伝わった。

「ん...あ...っ、...これ...やば...」

俺は下から胸を揉みながら、先輩の顔を見てた。普段クールで隙がない人が、目をとろんとさせて、口を半開きにしてる。背徳感というか、自分だけがこの顔を知ってるっていう独占欲みたいなものが湧いた。

先輩が腰を止めて、俺の上に倒れ込んできた。

「ちょっと待って...脚、力入んない...」

「俺が動くよ」

下から突き上げたら、先輩が耳元で「あ、あ、あ...」って声を漏らした。

「イく...またイっちゃう...っ」

先輩が俺の肩に爪を立てた。痛かったけど、それがたまらなかった。

ゴムを替えてから入れ直して、横向きで抱き合ったまま、3回目。

もう時間の感覚がなかった。先輩がずっと俺の名前を呼んでた。苗字じゃなくて、下の名前。いつの間にか先輩の目から涙がこぼれてて、でも「泣いてない」って言い張るから、黙って拭いた。

全部終わったあと、先輩が俺の腕の中で丸くなってた。

「...ねえ」

「ん?」

「なんで怒らなかったの。下は無理って言ったとき」

「嫌なことを無理にやらせて何が楽しいの」

「...それ普通じゃないよ。今までの人はみんな、"なんで?" "おかしいだろ"って」

「おかしくないだろ。嫌なもんは嫌でいい」

先輩がぎゅっと俺に抱きついた。

「...ずるい。そういうこと言うからさ」

「何がずるいの」

「...好きになっちゃうじゃん」

先輩の声が、掠れてた。

翌日から、俺たちは付き合い始めた。先輩は3月に卒業して、都内の出版社に就職した。俺はまだ4年で大学に残ってて、週末だけ先輩のマンションに通う生活が始まった。

付き合って半年ぐらい経った頃。先輩がシャワーから出てきて、バスタオル1枚で俺の前に立った。

「...やってほしいことがある」

「何?」

先輩が俺の目を見て、ちょっと震える声で言った。

「下...してほしい」

俺は3秒ぐらい固まった。

「...いいの?無理しなくていいんだよ」

「無理じゃない。...あんたにならって、ずっと思ってた。でも怖くて言えなかった」

先輩が俺の手を取って、ベッドに座った。

「...ちゃんと見て。逃げないから」

先輩がバスタオルを外した。

丁寧に、ゆっくり、先輩が怖くないように。途中で先輩が「待って」って言ったら止まって、「大丈夫」って言ったら続けて。

先輩がイったとき、枕に顔を埋めて、体を震わせてた。

しばらくして顔を上げた先輩は、泣いてた。

「...馬鹿」

「...うん」

「なんで泣いてんの私」

「知らね」

二人で笑った。先輩がずっと怖がってたものが、たぶんこの夜、少しだけ小さくなったんだと思う。

今はもう別れてて、先輩は去年結婚した。年賀状が来て、旦那さんと二人で写ってる写真が入ってて、先輩がめちゃくちゃ笑ってた。俺が見たことないぐらいの、全開の笑顔で。

正直ちょっと切なかったけど、(ああ、良かったな)って素直に思えた。

千駄ヶ谷のあのマンションは、もう取り壊されてワンルームのビルに変わってた。この前仕事帰りに通りかかって、Googleマップで確認した。跡形もなかった。

でも、先輩が「怖くない」って言ったときの声だけは、今でもはっきり覚えてる。


編集部プロフィール画像

編集部が運営。「あの夜」で読める恋の体験談を厳選して公開しています。