高校で一度も話せなかった憧れの子と大学の飲み会で隣になって恋人役を頼まれた夜の話

これ読んでる人にまず聞きたいんだけど、高校のとき「あ、この子だけはレベルが違うな」って思った女の子、いました?

俺にはいた。

同じ高校の1個下の学年に、みんなが知ってるレベルでかわいい子がいて。顔は橋本環奈をもうちょい大人っぽくした感じ。身長は158くらいで、制服のスカートから出てる脚がやたら白くて細くて、でも太ももだけちゃんとむちっとしてるっていう。文化祭のときに廊下ですれ違っただけで、後輩の男子が「あれ誰?」ってざわつくような子。

で、俺は当時サッカー部だったんだけど、まあスタメンギリギリの補欠寄りで。顔は……友達には「雰囲気イケメン」って言われてた。つまりイケメンではない。身長173、体重62。普通 of 普通。

その子――仮にユカとするけど、ユカは吹奏楽部で、練習場所がサッカー部のグラウンドの脇の音楽棟だったから、部活帰りにたまに見かけてた。クラリネット吹いてるユカを窓越しにチラ見するのが、俺の密かな楽しみだったわけ。

話しかけたことは一度もない。マジで一度も。

だって学年も違うし、接点がゼロだし、何より俺みたいなやつが話しかけても「え、誰ですか?」で終わるのが目に見えてた。3年間ずっと、見てるだけ。我ながらキモいと思うけど、そういうもんでしょ、高校って。

で、卒業して、俺は都内の私大に進学した。法政の市ヶ谷キャンパス。ユカのことは「高校の思い出」として脳の奥にしまい込んで、大学生活を普通にやってた。サークルは入らず、バイトは飯田橋のツタヤで週3。彼女はいない。1年の秋に一瞬だけ付き合った子がいたけど、2ヶ月で「なんか違うかも」って言われて終わった。

話が動いたのは、大学2年の6月だった。

高校の同級生の田中(サッカー部の同期、今は明治)から急にLINEが来た。「今週の金曜、合コンあるんだけど来ない? 女の子3人来るらしい」。俺は合コンとか苦手なタイプだったけど、ちょうどバイトが休みだったし、田中に「頼む、人数合わないんだよ」って泣きつかれて、しぶしぶOKした。

金曜の夜、新宿三丁目の居酒屋「魚民」の個室。男3・女3の典型的なやつ。俺が一番最後に着いて、引き戸をガラッと開けたら――

(え?)

奥の席に、ユカがいた。

一瞬、脳がバグった。なんで? ここ新宿だぞ? なんでお前がここにいるの?

(いや待て落ち着け。似てる人かもしれない)

でもすぐにわかった。あの目の形、ちょっと垂れ気味の目尻、色素薄めの茶色い瞳。間違いない。髪は高校のときのストレートロングから、肩くらいのレイヤーボブに変わってて、大人っぽさが増してた。白いブラウスにベージュのスカートっていうシンプルな格好なのに、なんかもう存在感がえぐい。

田中が「おー来た来た、こっち座れよ」って言って、空いてる席を指差した。

ユカの隣だった。

(神様ってたまにこういうことするよな)

座って、軽く自己紹介タイム。ユカは俺と同じ大学だった。法政の文学部。俺は経済学部。同じ大学にいて一度もキャンパスで会ったことなかったのか。市ヶ谷キャンパス、そんなに広くないのに。

「え、法政なんだ! 私も法政! 学部どこ?」

「経済。2年」

「うそ、私文学部の2年! もしかして同じキャンパス?」

「そう。市ヶ谷」

「えーーすごい偶然! ……あれ、もしかして同じ高校じゃない?」

心臓が跳ねた。覚えてるのか? いや、そりゃ名前と高校名聞けばわかるか。

「あー……うん。たぶん。俺3年のとき、お前1個下だったよな」

「やっぱり! サッカー部の人だよね? 覚えてる覚えてる!」

(え、覚えてんの?)

マジで驚いた。話したこと一度もないのに。でもまあ、同じ高校で部活やってれば顔くらいは覚えるか。深い意味はないだろ。

合コン自体はわりと普通に進んだ。田中がうまいこと場を回して、他の女の子2人(ユカの大学の友達らしい)もノリが良くて、それなりに盛り上がった。ユカは横で楽しそうに笑ってたけど、お酒はあんまり飲まなくて、ウーロンハイをちびちびやってた。

2時間くらい経ったとき、ユカのスマホがブブッと震えた。画面をチラッと見たユカの表情が、一瞬だけ曇った。

「……ごめん、ちょっとトイレ」

ユカが席を立った。5分くらいして戻ってきたとき、顔色がちょっと悪かった。

「大丈夫?」

「……うん。あのさ、ちょっとお願いがあるんだけど」

小声で、テーブルの下で俺の袖をくいっと引っ張ってきた。

「今日だけ……私の彼氏のフリ、してくれない?」

「は?」

「元カレがこの近くにいるっぽくて。さっきLINE来て、『今新宿にいるんだけど会えない?』って。別れたのに全然連絡やめてくれなくて……」

「いや、それ俺がフリしてなんとかなるもんなの?」

「もしばったり会っちゃったときに、彼氏と一緒にいるって言えたら諦めてくれると思う。お願い、今日だけだから……」

目がガチだった。ちょっと潤んでて、本気で困ってるのが伝わってきた。

(いや断る理由あるか?)

ないよな。好きだった子に頼られて断るやつ、いないだろ。

「……わかった。まあ任せろよ」

「ほんとに!? ありがとう……!」

ユカがぱあっと笑った顔がもう反則で、(これフリじゃなくて本物がいいんだけどな)とか思ったのは内緒。

合コンがお開きになって、他のメンバーとは新宿三丁目の駅前で解散。田中が「おい、ユカちゃんと帰るのかよ」ってニヤニヤしてきたけど、「ちょっと話あるだけ」って流した。

ユカと二人で歩きながら、元カレの話を聞いた。大学入ってすぐ付き合った先輩で、3ヶ月で別れたけど、それからずっとLINEが来るらしい。ブロックしても別のアカウントで送ってくるとか。

「それストーカーじゃん。警察行った方がよくね?」

「そこまでじゃないんだけど……会いたいってだけで、脅しとかはないし。でも気持ち悪いのは気持ち悪い」

「まあな……」

そんな話をしてたら、靖国通りの交差点あたりで、向こうから歩いてくる男がユカに声をかけた。

「ユカ?」

いや俺じゃない。向こうの男が「ユカ」って呼んだ。身長180くらいで、ジェルで固めた髪にブランドもんのTシャツ着た、いかにもな感じの男。

ユカがぎゅっと俺の腕を掴んだ。

「……やば、来た」

(え、マジで会うパターン?)

元カレが近づいてきた。

「久しぶりじゃん。LINE見た? 近くにいるなら飯行こうよ」

ユカが俺の腕にしがみついたまま言った。

「ごめん、今彼氏と一緒だから」

元カレが俺を見た。値踏みするような目。正直めちゃくちゃ怖かった。俺より明らかにデカいし、腕太いし。

「彼氏? こいつが?」

(こいつが、ってなんだよ。まあそう思うよな)

「どうも。彼氏です」

精一杯の平静を装って言った。声裏返らなかった自分を褒めたい。

元カレはしばらく俺とユカを交互に見て、舌打ちして去っていった。あっけないもんだった。

ユカが深く息を吐いた。

「……ありがとう、ほんとに助かった」

「いいよ別に。でもあいつまたやるだろ、対策した方がいい」

「うん……。ねえ、お礼にご飯おごるよ。今度」

「いいって、そんなの」

「ダメ。絶対おごる。LINE教えて」

そうやって俺たちはLINEを交換した。

それから1週間後、ユカから「ご飯行こう」って連絡が来た。場所は飯田橋のイタリアン。俺のバイト先のツタヤから歩いて5分の店だった。

正直に言うと、この1週間ずっとそわそわしてた。「お礼のご飯」って言われてるのに、デートみたいな気分になってる自分がいて、それが恥ずかしかった。フリとはいえ「彼氏」をやった夜から、ユカが腕にしがみついてきた感触がずっと残ってて。

(落ち着け。これはただのお礼だろ)

店に着いたら、ユカは白いワンピースにカーディガンっていう格好で来てて、(お礼の飯にしちゃ気合い入ってないか?)って思ったけど、まあ女の子は普段からそういうもんかもしれない。

パスタとワインを頼んで、最初は大学の話とか、高校の同級生が今どうしてるかとか、普通の話をしてた。

「ねえ、高校のとき私のこと知ってたって言ってたけど、なんで知ってたの?」

(来た。この質問来ちゃった)

「いや……普通にかわいい子いるなって。みんな知ってたろ」

「みんなって誰よ(笑)」

「サッカー部のやつらとか。『吹部の1年にやべー子いる』って話になってたし」

「えー恥ずかしい……。じゃあ私のことかわいいと思ってたんだ?」

「まあ……客観的事実として」

「なにそれ(笑)」

ユカが楽しそうに笑ってて、俺はワインをぐびっと飲んだ。酔ってないとやってられない。

「実は私も覚えてたんだよね、先輩のこと」

「え? なんで?」

「音楽棟の窓から、たまにサッカー部の練習見てて。先輩いっつも最後まで残って自主練してたじゃん」

(マジか。見てたのか。てか俺が窓からユカを見てたように、ユカも窓から外を見てたってこと?)

「あー……あれは単にレギュラー取れなくて焦ってただけなんだけど」

「でもかっこよかったよ。真剣な顔してボール蹴ってるの」

その一言で、心臓がぎゅってなった。高校3年間、ずっと遠くから見てるだけだと思ってたのに。向こうも見てたのか。

(……でも、だからってそれは「気になってた」とは違うだろ。練習してるの見えただけだ)

お礼の食事はそれで終わったけど、問題はそこからだった。

ユカから頻繁にLINEが来るようになった。「今日の授業まじ眠かった」「学食のカレー値上がりしてた」「先輩ってNetflix何見てる?」。どうでもいい内容。でも毎日来る。

で、2週間後くらいに、ユカからまた相談が来た。

「ごめん、また元カレからLINE来た……。『この前の彼氏って嘘でしょ? 付き合ってるなら写真見せてよ』って」

「しつこいな……。写真って何撮ればいいんだよ」

「ツーショット……撮ってくれない? 送りつけたら諦めると思う」

「わかった。じゃあ明日学校で撮るか」

翌日、昼休みに市ヶ谷キャンパスの中庭で待ち合わせた。ユカが俺の腕に寄り添って、自撮りでパシャ。

「もうちょっとくっついて。彼氏っぽくして」

「こう?」

ユカの肩に手を回した。シャンプーのいい匂いがした。

「うん、いい感じ。……ありがと」

写真を撮り終わったあとも、ユカはすぐに離れなかった。

「ねえ、せっかくだし学食行かない?」

「……いいけど」

それから、週に2〜3回は一緒にご飯を食べるようになった。ユカの友達に「彼氏?」って聞かれて、ユカが「うん、まあ」って答えてるのを横で聞きながら、(これいつまで続けんの?)って思ってた。

嬉しいに決まってる。でもこれは「フリ」だ。ユカは元カレ対策で俺を利用してるだけで、俺に好意があるわけじゃない。そう思おうとしてた。思おうとしてたんだけど、学食でユカが俺のおかずを「一口ちょうだい」って食べてきたり、帰り道に自然と手が触れたり、LINEの語尾がだんだん甘くなってきたりすると、期待するなっていう方が無理だった。

決定的だったのは、7月の頭、期末テスト前の土曜日だった。

ユカから「テスト勉強一緒にしない? カフェだとお金かかるから、うちでよければ」って誘われた。

(家? お前の家?)

一瞬フリーズしたけど、「いいよ」って返した。断る選択肢は、なかった。

ユカの家は、市ヶ谷の駅から歩いて15分くらいのワンルームマンション。1Kの7畳、きれいに片付いてて、小さいテーブルの上にテキストとノートが広げてあった。

「散らかっててごめんね。飲み物出すから座ってて」

「全然散らかってないけど」

アイスティーを出してもらって、向かい合って勉強を始めた。ユカは英文学のレポートをやってて、俺はミクロ経済学の問題集を解いてた。

1時間くらい経ったとき、ユカが突然テキストを閉じた。

「ねえ」

「ん?」

「元カレ、もう連絡来なくなったんだよね」

「お、よかったじゃん」

「うん。……だから、もう彼氏のフリ、しなくていいよ」

一瞬、心臓が止まるかと思った。

(あ、終わりか)

そりゃそうだ。目的が達成されたんだから、もう用済みだ。わかってた。わかってたけど。

「……そっか。じゃあ、まあ、よかったな」

精一杯の笑顔を作ったと思う。たぶんめちゃくちゃぎこちなかったけど。

「……」

ユカが黙った。テーブルの上で、ユカの指がテキストの角をいじってた。

「あのさ」

「うん」

「フリじゃなくて……本物の彼氏に、なってくれない?」

時間が止まった。比喩じゃなくて、マジで3秒くらい何も聞こえなかった。

「……え?」

「高校のとき、ほんとは話しかけたかったの。でも先輩、いっつもサッカー部の人たちといるし、私後輩だし、きっかけなくて。大学で再会したとき、嬉しくて……元カレのこと、ちょっと利用しちゃった。ごめん」

「利用って……元カレは本当にいるんだろ?」

「いるよ。連絡来てたのもほんと。でも……彼氏のフリを頼んだのは、先輩と一緒にいる口実が欲しかったから。最低だよね」

ユカの目がうるんでた。俺は呆然としてた。

(いや待て。つまり……俺が3年間見てただけだったのと同じで、こいつも俺のことを?)

「最低じゃねえよ。俺なんか高校のとき、音楽棟の窓越しにお前がクラリネット吹いてるのチラチラ見てたんだぞ。そっちのがキモいだろ」

「えっ……見てたの?」

「見てた。3年間ずっと」

「……なにそれ」

ユカが泣き笑いみたいな顔をした。

「だから、フリじゃなくても全然いい。つーかフリの時点で嬉しかったし、本物になれるならもう何も言うことない」

「……ほんとに?」

「ほんとに」

ユカがテーブル越しに手を伸ばしてきて、俺の手を握った。小さくて、ちょっと冷たい手だった。

「じゃあ……もう、フリじゃないね」

「うん」

しばらくそのまま手を握ってた。テーブルの上のアイスティーの氷が溶ける音がやけに大きく聞こえた。

ユカが立ち上がって、俺の隣に来た。

「ねえ……キス、していい?」

答える前に、ユカの唇が触れた。

柔らかくて、ちょっとだけアイスティーの味がした。3秒くらいで離れて、ユカが照れくさそうに笑った。

(あ、俺この子のこと好きだわ)

いや、ずっと好きだったんだけど、このとき初めて「ああ本当に好きだったんだな」って実感した。頭じゃなくて、胸の奥が熱くなるやつ。

「……もっかいしていい?」

「うん……」

今度は俺からキスした。唇を押し当てて、ちょっとだけ角度を変えて。ユカが小さく「ん」って声を出して、目を閉じた。舌をちょっとだけ出したら、ユカも恐る恐る舌先を合わせてきた。

キスしながら、気づいたらユカの腰に手を回してた。ユカの手が俺のTシャツの胸元をぎゅっと掴んでた。

唇を離すと、ユカの顔が真っ赤だった。

「……心臓やばい」

「俺もだよ」

それから何回キスしたかわからない。最初はテーブルの横で、そのうちベッドの端に並んで座って、気がついたらユカが俺にもたれかかるようにして横になってた。

「ねえ……電気消していい?」

ユカが小声で言った。

「……いいの?」

「先輩がいい。先輩となら……いい」

部屋の照明が消えて、カーテンの隙間から入る街灯の光だけになった。

ユカのブラウスのボタンを、一つずつ外した。手が震えてたと思う。ユカも震えてた。

白いブラの上から胸に触れると、思ったよりも柔らかくて、手の中にちょうど収まるくらいだった。

「……Cくらい?」

「ばか、こんなときに聞かないでよ……C65」

「いや気になるだろ」

「……変態」

そう言いながらも、ユカは自分でブラのホックを外した。

(あ、これ現実なのか?)

高校のとき窓越しに見てた女の子が、今目の前で服を脱いでる。脳の処理が追いつかない。

キスしながら胸を触ると、ユカが「ん……」って甘い声を出した。乳首が指先で硬くなっていくのがわかって、そこを親指で転がすと、ユカの体がびくってなった。

「あ……そこ、弱い……」

「ここ?」

「ん……っ」

ユカの体が敏感なのか、それとも俺が触ってるから反応してるのか、わからなかった。でもユカが気持ちよさそうな顔をしてるのを見てると、こっちまで頭がぼうっとしてくる。

スカートの上からユカの太ももに手を滑らせた。内腿のあたりに指が触れると、ユカが脚をきゅっと閉じた。

「……ちょっと待って」

「ごめん、嫌だった?」

「嫌じゃない……けど、恥ずかしい」

「じゃあ目閉じてていいよ」

ユカが目を閉じて、力を抜いた。スカートをゆっくりめくると、白い下着が見えた。真ん中が少し湿ってた。

(……濡れてる)

下着の上から触ると、ユカが息を飲んだ。指でそっとなぞると、布越しに熱が伝わってきた。

「あ……やっ……」

「脱がすよ」

下着をゆっくり下ろした。ユカが腕で顔を隠した。

直接触れると、もう結構濡れてて、指がすんなり滑った。クリの周りを指でくるくる撫でると、ユカの腰がびくって跳ねた。

「あっ……そこ……ダメ……」

「ダメなの?」

「ダメじゃないけど……声出ちゃう……」

(出していいんだけど)

とは言わず、もうちょっと優しくゆっくり指を動かした。ユカの息が荒くなって、太ももが小刻みに震え始めた。

「先輩……先輩……っ」

名前じゃなくて「先輩」って呼ばれるのが、なんかすごくきた。高校のときの距離感がそのまま残ってるみたいで、それが余計にエロく感じた。

指を1本、中に入れた。きつかった。

「あっ……ん……っ」

「痛い?」

「痛くない……もっと奥……」

奥の方をくいって押すと、ユカが声を抑えきれなくなった。壁が薄いのを気にしてるのか、自分の手で口を押さえてた。

「やば……先輩の指……すごい……」

しばらく中と外を同時に触ってたら、ユカの体がぐっと強張った。

「あっ……ん、んんっ……!」

びくびくって痙攣して、中がぎゅって締まった。イったんだと思う。ユカが目を開けて、潤んだ目で俺を見た。

「……先輩も、脱いで」

俺がTシャツとジーンズを脱いでる間、ユカがベッドの脇の引き出しからコンドームを出した。

「……用意してたの?」

「……先輩を家に呼んだ時点で、こうなってもいいと思ってた」

(この子、めちゃくちゃ計画的だな……)

でもそれが嬉しかった。俺と同じで、覚悟して今日を迎えてたんだと思うと。

ゴムをつけて、ユカの上に覆いかぶさった。入り口に先端をあてると、ユカが俺の背中に手を回した。

「いくよ」

「うん……」

ゆっくり押し込んだ。きつくて、熱くて、頭の中が真っ白になった。ユカが「っ……」って息を詰めた。

「大丈夫?」

「うん……大丈夫。全部入れて」

奥まで入れると、ユカが長い息を吐いた。しばらく動かずに、お互いの心臓の音を聞いてた。

(これが現実だって、まだ信じられない)

高校で3年間見てるだけだった子の中にいる。フリから始まった関係が、今こうなってる。偶然の再会がなかったら、一生このままだったかもしれない。

ゆっくり腰を動かし始めた。ユカが小さく声を漏らす。

「あ……ん……先輩……」

「気持ちいい?」

「うん……気持ちいい……」

ユカの目が潤んでて、街灯の光を反射してきらきら光ってた。その顔見てたら、こっちまで目頭が熱くなりそうだった。何に感動してるのか自分でもわからなかったけど。

ペースを上げると、ベッドがきしむ音とユカの声が混ざった。ユカが俺の首に腕を回して、耳元で「好き」って囁いた。

「好き……先輩、好き……」

「俺も……好きだよ」

(こんなこと言ったの初めてかもしれない。本心で)

ユカの中がきゅって締まって、俺も限界が近くなった。

「やば……もう出そう……」

「うん……いいよ……」

最後にぐっと奥まで押し込んで、達した。頭の中がぐわんってなって、数秒間なにも考えられなかった。

しばらくそのまま重なってた。ユカの心臓の音が、俺の胸に響いてた。

抜いてゴムを外して、ティッシュで処理して。ユカが恥ずかしそうに毛布を体にかけてた。

「……ねえ先輩」

「ん?」

「もう先輩って呼ぶのやめた方がいいのかな。彼女なんだし」

「いや……先輩のままでいいよ。なんかそっちの方がいい」

「変なの」

「変かな」

「変だよ。……でも、わかる」

ユカが笑って、俺の胸に顔をうずめた。

「もうちょっとこのままでいい?」

「いいよ。いくらでも」

7畳のワンルームに、エアコンの音と外を走る車の音だけが響いてた。ユカの体温があったかくて、頭を撫でてたら、いつの間にか寝息を立ててた。

俺はしばらく天井を見てた。

高校3年間、一度も話しかけられなかった。それがずっとコンプレックスだった。でも結果的には、この距離感があったからこそ、今夜があるのかもしれない。あのとき話しかけてたら、普通の先輩後輩で終わってたかもしれないし。

人生って、何がどう繋がるかわからんもんだな。

翌朝、ユカが作った目玉焼きトーストを一緒に食べた。ユカが「先輩、目玉焼き醤油派? ソース派?」って聞いてきて、「塩コショウ派」って答えたら「邪道」って言われた。

それが4年前の話。

今、俺たちは同棲してる。目玉焼きは未だに決着がついてない。


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