こんにちは。今から話すのは俺が大学2年のときの話です。
当時、俺は都内の中堅私大に通う普通の大学生でした。特技は…ないです。強いて言えば数学がまあまあ得意なぐらい。顔面は中の下。身長172。彼女いない歴イコール年齢の、いたって平凡な男。
で、なんで家庭教師なんかやってたかっていうと、単純に金が必要だったんですよ。サークルの合宿費が6万もかかるっていうんで、居酒屋のバイトだけじゃ足りなくて。大学の掲示板に「個人契約の家庭教師募集」っていう張り紙があって、時給2500円。(居酒屋の倍以上じゃん…)と思って速攻で連絡しました。
指定された住所は世田谷の成城。駅から歩いて8分ぐらいのところに、門のある一軒家がありました。門ですよ、門。インターホン押すまでに門をくぐるって、俺の人生で初めてだった。
お母さんが出てきて、リビングに通されました。上品な人で、紺のワンピースに真珠のネックレスっていう、テレビに出てくる「良家の奥様」そのまんまの格好。
(場違い感がすごい…)
「娘は高2なんですが、数学がどうしても苦手で。週1回、水曜日にお願いできますか?」
はい、もちろんです、なんでもやります――と答えたあたりで、階段を降りてくる足音が聞こえました。
「あ、来てくれたんだ」
……え?
階段の途中で立ち止まったのは、橋本環奈を大人っぽくしたような顔立ちの女の子でした。身長は160ぐらい。黒髪のストレートが腰まであって、制服のリボンをきちんと結んでる。肌が白くて、まつ毛が長くて、目がくりっとしてて。
(いや待て、こんな子の家庭教師って、俺でいいのか…?)
「藤崎です。よろしくお願いします」
ぺこり、とお辞儀されました。背筋がぴんと伸びてて、所作がいちいち綺麗。
「あ、えっと、山田です。こちらこそよろしく」
「山田先生って呼んでいいですか?」
「あー…うん、好きに呼んでくれて大丈夫」
先生って。俺、ただの大学2年なんだけど。でもなんか、先生って呼ばれると背筋が伸びる。
最初の授業は数学IIの三角関数。お母さんが紅茶とクッキーを出してくれて(紅茶、ティーポットで出てきたの人生初)、リビングのテーブルで向かい合って座りました。
教え始めてすぐわかったんですけど、この子、頭が悪いわけじゃないんですよ。ただ、途中式を飛ばす癖があって、計算ミスで全部崩れてただけ。
「ここ、sin二乗+cos二乗=1をそのまま使えばいいだけだよ」
「あ……ほんとだ。なんで気づかなかったんだろう」
「いや、気づかないのが普通。パターンを覚えれば見えるようになるから」
「先生、教えるの上手ですね」
(いや、これぐらい誰でも教えられるんだけど…)
そんな感じで、毎週水曜の18時から20時まで、彼女の家に通うようになりました。
3回目ぐらいの授業で、彼女のことが少しずつわかってきました。門限18時(俺が来る日だけ特別に20時まで)。スマホは21時以降使用禁止。SNSは禁止。テレビはNHKとニュースだけ。友達と遊びに行くときは必ず誰とどこに行くか報告。
「うちのお母さん、ちょっと厳しいんですよ」
ちょっと、のレベルじゃない。
「友達とカラオケとかは?」
「行ったことないです」
「マジで?」
「はい。あ、でも一回だけ、友達の家でお菓子作りしたことはあります」
その話をするときの彼女の顔が、すごく嬉しそうだったのが印象に残ってます。
4回目の授業のとき、数学が予定より早く終わったんですよ。残り30分ぐらい。
「先生、あの…ひとつ聞いていいですか」
「ん?」
「大学生って…どういうことするんですか?」
「どういうことって?」
「たとえば…飲み会とか」
「あー、まあ普通にあるよ。サークルの打ち上げとか」
「朝まで遊んだりとかも?」
「たまにね」
彼女はそれを聞いて、ちょっと黙りました。
「……いいなぁ」
小さい声だったけど、ものすごく切実な響きでした。
(あ、この子、窮屈なんだ)
それからは授業が早く終わるたびに、ちょっとした雑談をするようになりました。大学の話、バイトの話、映画の話。彼女は映画もあんまり見たことがなくて、『君の名は。』を知らなかった。2024年にですよ。
俺が「えっ」って驚くたびに、彼女は少し恥ずかしそうに笑って「うち、ほんとに何にも知らないんです」って言うんです。
それが、なんか、すごく刺さった。
6回目の授業。8月に入って、夏休み期間は週2回に増やしたいとお母さんから連絡がありました。火曜と金曜、14時から16時。
夏休みだから制服じゃなくて私服なんですよ。白いブラウスに水色のロングスカートっていう、これまた清楚すぎる格好で出てきて。でも、制服のときより少しだけ砕けた雰囲気で。
「先生、暑いのにすみません」
「いや全然。涼しくしてもらってるし」
エアコンがんがんに効いたリビングで、この日は数IIBの微分。
途中でお母さんが「ちょっとお買い物に行ってきますね」と出かけました。初めて二人きりになった。
別に何も変わらないはずなんだけど、なんか空気が違うんですよ。彼女も少し意識してるのか、ペンを持つ手が止まりがちで。
「…先生」
「ん?」
「先生って、彼女いるんですか?」
(来たな、この質問)
「いないよ」
「えっ、なんで?」
「なんでって…モテないから?」
「うそ。先生、かっこいいのに」
さらっと言われて、ペンを落としそうになりました。
「…いや、それはない」
「ほんとですよ? 背も高いし、教えてくれるとき、すごく丁寧で」
(それは見た目の話じゃなくない?)
でも、そういうところが、彼女らしいなと思いました。見た目じゃなくて、接し方を見てくれてるんだなって。
…ここでちょっと正直に言うと、俺はこのあたりから彼女のことを意識し始めてました。でも、家庭教師と教え子っていう立場を考えると、それはダメだろ、と。お母さんから金もらってんのに、娘に色目使うとかありえないだろ、と。
だから、必死に気持ちを抑えてました。
8月の半ば、お盆休みで1週間授業がなかった翌日。久しぶりに彼女の家に行ったら、ちょっと様子が違いました。
「先生…」
目が赤い。泣いた跡がある。
「どうした?」
「…なんでもないです。授業しましょう」
強がってるのは見え見えでした。でも、踏み込んでいいのかわかんなくて、普通に授業を始めました。
問題を解いてる途中で、彼女の手が止まりました。ぽたっ、と問題集にしずくが落ちた。
「……ごめんなさい」
「いいよ。話してみ」
「お母さんと喧嘩したんです。私、文化祭の打ち上げに行きたいって言ったら、ダメだって。行ったことないんだよって言ったのに」
「…」
「私、高校生なのに、友達と夜ご飯食べに行ったことすらないんですよ。おかしいですよね」
「おかしくはないけど…つらいよな」
「先生みたいに自由に生きてる人が羨ましい…」
(俺、全然自由じゃないけどな…居酒屋のバイトで店長にどやされて、サークルの先輩にパシらされて…)
でも、彼女にとっては俺の「普通」が「自由」なんだと思うと、なんか胸が痛くなりました。
「…じゃあさ、いつか一緒にご飯でも行こうよ。俺が連れてってやるから」
言ってから、しまった、と思いました。家庭教師が教え子を外に連れ出すとか、お母さんにバレたら一発アウトだろ。
でも彼女は、今日一番の笑顔で言ったんです。
「…ほんとですか?」
「ほんと」
あの笑顔を見たら、撤回なんてできなかった。
9月の最初の金曜日。この日は授業のあと、お母さんが車で習い事の送迎に行くから16時で留守にする、という連絡が事前に来てました。
16時に授業が終わって、お母さんが「山田くん、今日もありがとうございます」と出て行った。
俺も帰ろうとしたら、玄関で彼女に腕を掴まれました。
「先生、まだ帰らないで」
「え?」
「…約束、覚えてますか」
一緒にご飯行こう、の話か。でも、今から外に出たらバレるし。
「外に行かなくていいんです。ただ…もうちょっとだけ、先生と話がしたくて」
リビングに戻って、二人でソファに座りました。彼女がキッチンに行って、アイスティーを作ってくれた。ティーポットじゃなくて、粉のやつ。
「これしか作れなくてすみません」
「いやいや、ありがとう」
なんか、いつもお母さんが出してくれる紅茶じゃなくて、彼女が自分で作ってくれた粉のアイスティーのほうが、よっぽど嬉しかった。
「先生…私のこと、どう思ってますか」
急に来た。
「どうって…」
「生徒としてしか見てないですよね」
「…」
「…ですよね」
そう言って、寂しそうに笑ったんですよ。
(いや違う。生徒としてしか見てないなんてこと、もうとっくに…)
でも、ここで「好きだ」って言ったら終わりだろ。家庭教師をクビになるだけならまだしも、彼女のお母さんがどう出るかわかんない。最悪、彼女が怒られるのは彼女だ。
「…ごめん。立場的に、答えられない」
「…立場"的に"は、ダメなんですね」
彼女は、俺が言わなかった部分を正確に読み取ってました。頭いいんですよ、この子。数学は苦手でも、人の気持ちを読むのはめちゃくちゃ上手い。
その日は、それ以上何もなく帰りました。帰りの小田急線で、ずっと考えてました。どうすりゃいいんだ、これ。
答えは出ないまま、次の火曜日が来ました。
この日、異変がありました。お母さんが最初から不在だったんです。玄関に「本日急用のため外出しております。山田くん、いつも通りお願いします」と書き置きがあった。
彼女がドアを開けて、リビングに通してくれた。
いつも通り授業を始めたんですけど、彼女の服装がいつもと違いました。紺色のワンピース。膝上丈。鎖骨がちょっと見えてて。
(意識してんのか、してないのか…)
たぶん、してる。でも本人は自覚してない。こういう子は天然で破壊力がやばいんですよ。
微分の問題を解いてるとき、彼女が問題集を俺のほうに向けて「ここがわかんないです」って近づいてきた。肩が触れた。シャンプーの匂いがした。花っぽい、やわらかい匂い。
(落ち着け。平常心。平常心だぞ)
なんとか授業を終わらせました。16時。俺が帰る時間。
「先生」
「ん?」
「この前の返事、もらってないです」
「…」
「"立場的に"答えられないって言いましたよね。じゃあ、立場を抜きにしたら?」
追い詰められてる。完全に。
「…それを言ったら、もう家庭教師は続けられないよ」
「いいです。数学は自分で頑張ります」
「お母さんに何て言うの」
「成績上がったからもう大丈夫って言います。実際、先生のおかげで上がってるし」
全部用意してやがる。
「…」
「先生。私のこと、好きですか」
目をまっすぐ見て聞いてきました。あの澄んだ目で。嘘がつけない目。
「……好きだよ。ずっと、気持ち抑えてた」
彼女の目に、みるみる涙が溜まりました。泣くと思ってなかった。
「…よかった」
涙をぬぐいながら、へにゃって笑ったんです。その顔を見た瞬間、もう全部どうでもよくなりました。家庭教師とか、立場とか、お母さんとか。
気づいたら、彼女の頬に手を伸ばしてました。涙を親指で拭って。
「泣くなよ」
「だって…嬉しいんです」
顔が近い。唇が、すぐそこにある。
「…キス、していい?」
彼女が小さく頷きました。
唇を重ねました。ぎこちなくて、角度が合わなくて、鼻がぶつかって。
「ん…」
柔らかかった。グロスとかじゃなくて、リップクリームの味がした。
離れてから、お互いに顔が真っ赤だった。
「…初めてです。キス」
「俺も…久しぶりだけど、こんなにドキドキしたの初めて」
「もう一回…してください」
今度は少し上手くいきました。角度を変えて、ゆっくり。彼女が目を閉じて、俺のシャツの裾を握ってきた。
キスしたまま、ソファに座りました。彼女が俺の隣にぴったりくっついて、頭を肩に預けてきた。
「…ずっとこうしたかった」
「俺も」
「先生って呼んでいいですか。これからも」
「…好きにしなよ」
(これから、か。俺たち「これから」があるんだ)
正直、そのあとどうなるのか全然見えてなかった。お母さんが帰ってきたら?バレたら?でも、彼女の温もりが隣にあるだけで、そういう不安が全部霞んだ。
その日は、それ以上のことはしませんでした。キスして、くっついて、他愛もない話をして。お母さんが帰ってくる前に俺は帰った。
家庭教師は、翌週から「彼女の成績が上がったので」ということで契約終了になりました。彼女が自分でお母さんに話したらしい。最後の授業の日、お母さんに「本当にありがとうございました」って頭を下げられて、罪悪感で死にそうだった。
ここから先は、彼女が自分でうまくやってくれました。「学校の友達と図書館で勉強する」と言って、実際は俺と会ってた。成城じゃバレるかもしれないからって、下北沢まで出てきてくれて。
初めてのデートは下北沢の古着屋巡り。彼女は古着屋に入ったこともなかったらしく、一着一着をすごく真剣に見てました。
「これ、かわいい。でもお母さんに見つかったら何て言おう…」
「俺んちに置いとけばいいじゃん」
「…先生の家に?」
「あ、いや、変な意味じゃなくて」
「…行ってみたいです。先生の家」
変な意味じゃなくて言ったのに、変な方向に行きそうになってる。いやでも、高2の子を自分の部屋に上げるって、冷静に考えたらヤバいだろ。
でも、彼女のほうがこういうことに関しては度胸があるというか、一回決めたら迷わないんですよ。箱入りだったぶん、枷が外れるとブレーキが効かない。
翌週、彼女が初めて俺のアパートに来ました。経堂の築30年、家賃5万8千円の1K。
「…狭い」
「うるさいな」
「でも、先生の匂いがする。落ち着く」
そう言って、ベッドに腰掛けた。(ベッドしか座るとこないからしょうがないんだけど)
隣に座りました。肩が触れる。
キスは、もう何回かしてたから慣れてきてた。でもこの日は、なんか、空気が違った。
「先生…」
「ん」
「今日は…もう少し先に進んでもいいです」
心臓が止まるかと思いました。
「…いいの? 無理しなくていいんだよ」
「無理してないです。ずっと…考えてました。先生となら、怖くないって」
キスしました。今までより深くて、長くて。舌が触れたとき、彼女が小さく震えた。
「大丈夫?」
「はい…。緊張してるだけです」
ゆっくりベッドに横にしました。白いブラウスの上から身体に触れると、彼女が目をきゅっと瞑った。ボタンをひとつずつ外していく。手が震えてたのは俺のほうです。
(俺のほうが緊張してるじゃん…)
ブラウスを開くと、白いレースのブラが見えました。Cカップぐらいか。華奢な身体に合った、ちょうどいい大きさ。
「綺麗だよ」
「……恥ずかしい」
両手で顔を隠したんですけど、指の隙間からこっちを見てるのがバレバレで。
ブラの上から胸に触れました。柔らかくて、体温が伝わってくる。
「あ…」
小さな声。直接触れたくて、背中に手を回してホックを外しました。ブラを取ると、形の綺麗な胸が現れた。ピンク色の乳首がちょっと立ってて。
指で触れると、びくっと反応した。
「ん…先生…」
口に含むと、甘い声が漏れた。
「あ…だめ…変な声出ちゃう…」
「出していいよ。誰もいないから」
「でも…恥ずかしい…」
恥ずかしがりながらも、彼女の手が俺の頭を抱えるように回されて、離さないでっていうふうに。
(この子、自分では気づいてないんだろうけど、めちゃくちゃ積極的なんだよな…)
スカートの上から太ももに手を置くと、一瞬、脚をきゅっと閉じました。でもすぐに力を抜いて。
「…いいです」
許可をもらって、スカートの中に手を滑らせました。下着の上から触れると、少し湿ってた。
「…濡れてるよ」
「言わないでください……」
顔が真っ赤で、でも脚は開いてくれてる。その矛盾がたまらなかった。
下着をずらして直接触れました。指を沿わせると、彼女がぴくっと跳ねた。
「あっ…んっ…」
慣れてない反応。当たり前だ、たぶん誰にも触られたことないんだから。ゆっくり、指で探るように動かしました。
「やっ…そこ…」
「気持ちいい?」
「…わかんない…でも…止めないで…」
俺の空いてる手を、彼女が自分から握ってきた。ぎゅっと。その手の力の入り方で、感じてるんだなってわかった。
しばらく指で刺激してると、彼女の呼吸がだんだん荒くなってきた。
「あっ…先生…なんか…変…」
「大丈夫、力抜いて」
「あ、あっ…だめ…っ」
身体がびくんと震えて、俺の手をぎゅっと握りしめた。目がうるうるして、唇を噛んで、必死に声を堪えてた。
「…いった?」
彼女が小さく頷きました。目の端に涙が溜まってる。
「…初めて…です。人に…されたの…」
「…痛くなかった?」
「ぜんぜん。むしろ…こんなの知らなかった…」
(こんなこと言われたら、もう理性とか無理でしょ…)
ここで止めるべきだったのかもしれない。でも、彼女のほうから俺のズボンに手を伸ばしてきたんです。
「先生も…見せてください」
「…マジ?」
「不公平じゃないですか。私ばっかり」
ズボンを下ろしました。もうとっくに硬くなってた。
「…おっきい」
「そんなことない。普通だと思う」
「比較対象ないのでわかんないですけど…触っていいですか?」
恐る恐る、指先で触れてきた。ひんやりした指が熱いところに触れて、思わず声が出た。
「っ…」
「痛いですか?」
「逆。気持ちいい」
「そうなんだ…」
おそるおそる握って、ゆっくり動かしてくれた。全然慣れてなくて、力加減もぎこちないんだけど、それがむしろ興奮した。
しばらくそうしてから、彼女が顔を上げて言いました。
「先生…したい」
「…ほんとに? 初めてなんだろ?」
「だから先生がいいんです」
コンビニで買ってあったゴムを取り出しました。一応持ってたんですよ。こうなるかもしれないって、心のどこかで思ってたんだと思います。(最低だな、俺)
装着して、彼女の上に身体を預けました。
「痛かったら言って。すぐ止めるから」
「はい…」
先端を当てて、ゆっくり押し込みました。
「っ……痛い…」
「止める?」
「…大丈夫です。続けてください」
手を握ってくれた。さっきより強い力で。
少しずつ入れていって、全部入ったとき、彼女が深く息を吐きました。
「…入った…」
「うん…大丈夫?」
「痛いけど…先生が中にいるって思ったら、なんか…安心する…」
(このセリフ反則だろ…)
ゆっくり動き始めました。最初は痛そうだったけど、だんだん表情が変わってきた。
「あ…ん…」
「痛い?」
「ううん…もう痛くない…むしろ…」
少しずつ腰を動かすスピードを上げると、彼女が両腕を俺の首に回してきた。
「先生…気持ちいい…」
その声がもう、たまんなくて。抱きしめる力が強くなった。
「俺も…やばい…」
「先生…好き…」
「俺も好きだよ…」
額をくっつけて、目を合わせたまま。彼女の瞳に俺が映ってた。
「…そろそろ出そう…」
「うん…」
奥まで押し込んで、彼女を抱きしめたまま出しました。ゴム越しでも、中の温かさと締め付けがすごくて、頭が真っ白になった。
「はぁ…」
「…終わった?」
「うん…」
「…もうちょっと、このままでいてください」
抱き合ったまま、しばらく動けなかった。彼女の心臓の音が聞こえるぐらい近い距離で。
「ねえ先生」
「ん?」
「私のこと…これからも好きでいてくれますか?」
「当たり前だろ」
「…じゃあ、もう一回」
「え、もう?」
「だって…先生とこういうことできる時間、限られてるから…」
それはそうだった。お母さんの目を盗んで会ってるわけだし、いつバレるかわかんない。
2回目は、彼女が上に乗りました。初めてとは思えない大胆さで。でも動き方はぎこちなくて、それがまた良くて。
「これ…合ってますか…?」
「合ってるよ…すごく気持ちいい」
1回目とは違って、彼女にも余裕が出てきてた。腰を揺らしながら、俺の顔を見つめてくる。さっきまで泣きそうだった目が、今は潤んで、でも笑ってて。
「先生…先生のここ、私の中にいる…」
「…そういうこと言うなよ…限界なんだから…」
「ふふ…」
いたずらっぽく笑って、腰の動きを速くした。箱入りが枷外れるとこうなるのか、って思いました。怖いぐらい積極的。でも表情はずっと幸せそうで。
「っ…出る…」
「うん…いいよ…」
彼女を抱き寄せて、キスしながら出しました。ゴムの中に、さっきより多い量が出た気がする。
そのまま、二人で横になって、天井を見てました。
「…先生の家、狭いけど好きです」
「最初に言ったことと違うじゃん」
「狭いから好きなんです。先生と近くにいられるから」
(こういうセリフ、どこで覚えたんだよ…)
彼女がスマホを見て、「あ、そろそろ帰らなきゃ」と起き上がりました。時計を見たら17時半。門限の18時まであと30分。
慌ててシャワーを浴びて、彼女を駅まで送りました。成城学園前行きの急行が来るホームで。
「先生、また来ていいですか」
「いつでも来いよ」
「じゃあ…毎週来ます」
にこっと笑って改札を通っていく後ろ姿を見送りながら、俺はホームのベンチに座り込みました。
(俺、とんでもないことしたな…)
でも、後悔はしてなかった。してたのは、お母さんに対する罪悪感だけで。
あれから彼女は、本当に毎週来るようになりました。「図書館で勉強」を口実に。たまに本当に勉強もしてた。俺が教える側で。家庭教師契約は終わったのに。
そうやって、彼女が高校を卒業するまでの1年半、俺たちはこっそり付き合い続けました。卒業式の日、LINEで「卒業しました!もう堂々と先生に会えます」って来たとき、ちょっと泣きそうになった。
彼女は結局、うちの大学に受かりました。数学の偏差値、俺が教え始めたときは42だったのが、受験本番では67まで上がってた。……マジで頭悪くなかったんですよ、この子。
今はもう、お母さんにも紹介済みです。最初はめちゃくちゃ気まずかったけど、「山田くんだったの?」って言われて、覚悟してた修羅場にはならなかった。お母さん、薄々気づいてたらしいです。
先生って呼ばれるのは、今も変わってません。