毎朝の通勤電車で同じドアに立つ女性と、人身事故の運転見合わせで足止めされたホームで初めて喋ったら会社の裏通りの老舗和菓子屋の店員だった話

俺、結城涼、28歳。

文具メーカーの営業をしている。

職場は隣の市で、毎朝7時48分発の各駅停車に乗って通っている。

通勤電車なんて、本来、ただの移動でしかない。

寝足りない頭で吊り革に掴まって、窓の外の景色をぼんやり眺めて、駅の数を数える。

それだけの、なんの変哲もない時間だ。

でも、その時間に、一人だけ、ずっと気になっている人がいた。

毎朝、同じ車両の、同じドア。

俺がいつも立つドアの、ちょうど向かい側。

そこに、いつも同じ女性が立っている。

歳は、たぶん俺と同じか、少し下くらい。

肩より少し長い黒髪を、低い位置でひとつにまとめている。

派手な化粧はしていない。落ち着いた色のブラウスに、膝丈のスカート。

背筋がぴんと伸びていて、立ち姿がきれいな人だった。

(今日も、いるな)

最初は、ただそう思っただけだった。

混んだ車内で、向かいのドアに同じ顔があると、なんとなく安心する。

それくらいの、淡い意識。

毎朝、同じ電車に乗っていると、自然と顔は覚える。

向こうも、たぶん俺を覚えていたんだと思う。

いつからか、目が合うと、お互いに小さく会釈をするようになっていた。

(……会釈だけは、するんだよな)

それ以上の会話は、一度もない。

名前も、どこで降りるのかも、知らない。

ただ毎朝、同じドアの向かいで、軽く頭を下げ合うだけの関係。

それが、何ヶ月も続いていた。

六月に入って、梅雨が始まった。

その朝も、細かい雨が降っていた。

濡れた傘を提げて電車に乗ると、案の定、向かいのドアに彼女がいた。

今日は、淡い水色のブラウス。

たたんだ折りたたみ傘を、両手で大事そうに持っている。

俺はいつものように会釈をして、彼女も、いつものように小さく頭を下げた。

その、いつも通りの朝が——突然、止まった。

ガタンッ、と大きく揺れて、電車が急ブレーキで停止したのだ。

車内のアナウンスが流れる。

『ただいま、隣の駅構内で発生した人身事故の影響により、当駅で停車しております』

ざわっ、と車内がざわついた。

『運転再開の見込みは、立っておりません。お急ぎのところ申し訳ございませんが……』

電車は、ちょうど駅のホームに停まっていた。

ドアが開いて、乗客が次々と降りていく。

俺も、ため息をついて、ホームに降りた。

雨の朝の、人身事故。

これは、しばらく動かない。

(まいったな。営業先、午前イチなのに)

スマホを取り出して、会社に遅れる旨の連絡を入れる。

振替輸送のバス停は、すでに長蛇の列だった。

俺はホームのベンチの、屋根のある一角に避難した。

すると——隣に、見覚えのある水色のブラウスが、そっと腰を下ろした。

彼女だった。

「……あの、ここ、いいですか」

「あ、どうぞどうぞ」

初めて、声を聞いた。

落ち着いた、少し低めの、柔らかい声だった。

俺たちは、少し離れて、ベンチに並んで座った。

ホームの屋根を、雨が叩いている。

しばらく、どちらも無言だった。

毎朝、会釈だけはしていたのに、いざ隣に座ると、何を話していいのかわからない。

先に口を開いたのは、彼女のほうだった。

「……いつも、向かいに立ってる方、ですよね」

「あ、はい。気づいてました?」

「もちろんです。毎朝なので。……なんか、こうやって喋るの、不思議な感じ」

ふっと、彼女が笑った。

その笑い方が、思っていたよりずっと柔らかくて、俺は少しどきっとした。

「ですね。会釈はしてたのに」

「ふふ。会釈だけは、毎日」

二人して、少し笑った。

それで、なんとなく、空気がほぐれた。

「災難ですね。この雨で、人身事故とか」

「ほんとに。私、今日ちょっと早く着きたかったのに」

「お仕事、近くですか?」

「はい。駅から歩いて、五分くらいのところで。結城さんは……あ、お名前、知らないんでした」

「結城です。結城涼。よくわかりましたね、苗字」

「定期入れ。いつも、ドアのとこで持ってるの、見えてたので」

ばれていたのか、と思って、ちょっと恥ずかしくなった。

「私は、麻生詩織です。麻生詩織、です」

詩織さん、と心の中で繰り返す。

毎朝見ていた向かいの人に、ようやく名前がついた。

それだけで、なんだか、世界が少し変わった気がした。

結局、電車は一時間近く動かなかった。

その一時間を、俺たちはずっと喋って過ごした。

詩織さんは、聞き上手で、でも、自分のこともぽつぽつ話してくれる人だった。

俺の仕事の愚痴に、ちゃんと笑ってくれて。

別れ際、運転再開のアナウンスが流れたとき、俺は少し、名残惜しいとさえ思っていた。

「あ、動きますね」

「ですね。……なんか、足止め食らったのに、ちょっと楽しかったです」

「ふふ。私もです」

電車に乗り込んで、いつものドアの向かいに立つ。

でも、今朝はもう、ただの会釈の相手じゃなかった。

目が合うと、お互い、少しだけ照れたように笑った。

その日から、俺の朝が、変わった。

電車で会うと、自然と隣に立って、少し話すようになった。

天気のこと、仕事のこと、くだらないこと。

たった数駅の時間が、毎朝の楽しみになっていった。

そして、ある昼休み。

俺は、その「会社から歩いて五分」を、偶然、知ることになる。

その日、取引先への手土産を買うように上司に言われて、俺は会社の裏通りを歩いていた。

普段は通らない、古い商店が並ぶ細い道。

その一角に、黒い瓦屋根の、品のいい和菓子屋があった。

暖簾には「翠月堂」と白く染め抜かれている。

(和菓子か。手土産にちょうどいいな)

引き戸を開けて、中に入る。

ひんやりとした、畳と餡子の甘い匂い。

ガラスのケースに、色とりどりの上生菓子が並んでいる。

そして、その向こうに立っていた店員が——

「いらっしゃいま——……えっ」

詩織さんだった。

藍色の作務衣に、白い前掛け。

髪をきっちりとまとめて、毎朝の通勤電車とは、まるで別人みたいに凛としている。

「……えっ。詩織さん!?」

「け、結城さん。どうして、ここに」

「手土産、買いに来て……てか、ここで働いてたんですか」

「はい……駅から五分って、ここのことで」

詩織さんが、慌てたように前掛けを直した。

毎朝の柔らかい笑顔とは違う、仕事中の、きりっとした横顔。

そのギャップに、不覚にも、どきっとした。

「すごい。和菓子屋さんだったんだ」

「製造の手伝いと、店番と。祖母の代からの店なんです」

奥の作業場から、女将さんらしき人が「いらっしゃい」と顔を出して、すぐにまた引っ込んだ。

「じゃあ、せっかくだから。おすすめ、ありますか」

その瞬間、詩織さんの背筋が、しゃんと伸びた。

「でしたら、今の時期は、水無月がおすすめです」

「ういろうの上に、小豆をのせた、三角のお菓子で。六月の終わりに、半年の穢れを払って、残り半年の無病息災を願って食べるんです」

すらすらと、言葉が流れ出す。

毎朝の電車では見せない、職人の顔だった。

「三角の形は、氷を表してるんですよ。昔、夏に氷が貴重だった頃の、暑気払いの名残で」

目を、きらきらさせて。

俺は、その横顔に、完全に見とれていた。

「……詩織さん、和菓子の話してるとき、すごい楽しそうですね」

「あっ……ごめんなさい。つい、語っちゃって」

ぱっと、頬を赤くして、詩織さんが口を押さえた。

毎朝の柔らかい笑顔が、ふっと戻ってくる。

そのギャップに、俺はもう、やられていた。

「じゃあ、水無月、手土産用に。あと、自分用にも一個ください」

「……はい。ありがとうございます」

丁寧に箱詰めしてくれた水無月を受け取って、店を出る。

その日の午後、こっそり食べた水無月は——

もちっとしたういろうの食感に、小豆の上品な甘さで、びっくりするくらい美味しかった。

(……これは、また来るな)

それからというもの、俺は週に二、三度、昼休みに翠月堂へ通うようになった。

季節の上生菓子を、一個ずつ。

詩織さんは、毎回、その日のおすすめを丁寧に教えてくれる。

六月の半ばには、紫陽花を模した、寒天で作る涼しげな上生菓子が出た。

「これ、『あじさい』っていう銘で。中の餡を、角寒天のかけらで包んでるんです」

「光に透かすと、ほら。雨に濡れた紫陽花みたいでしょう」

詩織さんが、菓子を窓の光にかざす。

きらきらと、青や紫の寒天が透けて、ほんとうに、雨上がりの紫陽花みたいだった。

「……きれいだ」

「でしょう。私、この時期のお菓子が、一番好きで」

その横顔を見ているうちに、俺は、自分の気持ちにはっきり気づいた。

毎朝の電車も、昼休みの和菓子屋も。

全部、詩織さんに会いたくて、通っているんだと。

ある朝の電車で、俺は思い切って、連絡先を聞いた。

「あの、詩織さん。よかったら、連絡先、交換しません?」

「電車で会えない日とかも、あるし」

詩織さんが、少し目を見開いて。

それから、ふわっと笑った。

「……はい。私も、聞きたかったんです」

その「私も」に、心臓が跳ねた。

連絡先を交換したその日の夜、さっそくメッセージが来た。

『今日の水無月、暑かったから、よく出ました。結城さんのおかげかも』

そんな、なんでもないやりとりが、嬉しくてたまらなかった。

それから、何度かメッセージを重ねて。

俺は、思い切って、休みの日に誘った。

「今度の日曜、もしよかったら。紫陽花、見に行きませんか」

「いい寺があるって、詩織さんが前に言ってたとこ」

返事は、すぐに来た。

『行きたいです。ずっと、誰かと行きたかったので』

迎えた、日曜。

幸い、雨は上がって、梅雨の晴れ間が覗いていた。

待ち合わせの駅前に現れた詩織さんは、作務衣でも、通勤の服でもなかった。

白いワンピースに、淡い水色のカーディガン。

髪も、いつもより少しだけ、ゆるく下ろしている。

「……あの、すごく、似合ってます。その服」

「ほんとですか。……ちょっと、気合い入れすぎたかなって」

照れたように笑う詩織さんが、たまらなく可愛かった。

紫陽花の寺は、想像以上に見事だった。

参道の両脇に、青や紫や、淡いピンクの紫陽花が、雨上がりの光に濡れて咲き誇っている。

「わぁ……すごい。来てよかった」

「ほんとだ。これは、菓子にしたくなりますね」

「ふふ。結城さん、わかってきましたね」

二人で、紫陽花の小道を、ゆっくり歩く。

詩織さんは、花の色の違いを、土の酸性度がどうとか、和菓子の色合わせがどうとか、楽しそうに話してくれる。

その横顔を見ているだけで、俺は幸せだった。

人混みで、はぐれそうになった瞬間。

俺は、自然に、詩織さんの手を取っていた。

「……あ」

「……はぐれると、まずいんで」

「……はい」

詩織さんは、手を振りほどかなかった。

それどころか、細い指を、そっと俺の指に絡めてきた。

雨上がりの紫陽花の下、二人で手を繋いで歩く。

その手の温かさが、ずっと、忘れられなかった。

帰り道、夕方になって、また小雨が降り出した。

俺たちは、駅前の小さな喫茶店で、雨宿りをした。

窓際の席で、温かいコーヒーを挟んで向き合う。

ふと、詩織さんが、窓の外の雨を見ながら、ぽつりと言った。

「……私、しばらく、人を好きになるの、やめてたんです」

「え」

「前に付き合ってた人に、和菓子屋なんて地味だって、笑われたことがあって」

詩織さんが、コーヒーカップを、両手で包んだ。

「それから、なんか、自信なくしちゃって。仕事のこと話すと、また引かれるかもって」

「……」

「でも、結城さんは。私が和菓子の話をすると、ちゃんと聞いてくれて。きれいだって、言ってくれて」

詩織さんが、顔を上げた。

その目が、少し、潤んでいた。

「だから……ちょっと、勇気が出たんです」

俺は、テーブル越しに、詩織さんの手にそっと触れた。

「地味なんかじゃない。詩織さんの作る菓子、ほんとに、きれいで美味いです」

「それを笑うやつのほうが、どうかしてます」

詩織さんの目から、ぽろっと、一粒こぼれた。

「……結城さんって、ずるい」

「ずるい?」

「そういうこと、さらっと言うから」

雨の中の、小さな喫茶店。

俺たちは、しばらく、手を重ねたまま、見つめ合っていた。

その帰り、詩織さんのアパートは、俺の最寄りから一駅のところだった。

「……あの、結城さん」

アパートの前で、詩織さんが、傘の下で立ち止まった。

「よかったら……お茶、飲んでいきませんか」

「水無月、家にも、あるので」

その声が、少し、震えていた。

俺の心臓も、跳ねた。

「……お邪魔します」

詩織さんの部屋は、彼女らしい、静かで整った部屋だった。

棚には、和菓子の本がずらりと並んで、窓辺には、季節の花を生けた一輪挿し。

「狭いですけど。座ってください」

お茶を淹れてくれて、二人で、小さなテーブルを挟んで座る。

出された水無月を、一口食べた。

「……うん。やっぱり、美味い」

「ふふ。家のは、お店のより、ちょっと甘め」

笑い合って、そして、ふと、会話が途切れた。

雨の音だけが、窓の外から、静かに聞こえている。

詩織さんが、お茶のカップを置いて、俺を見た。

その目が、いつもより、潤んでいた。

「……結城さん」

「はい」

「今日、すごく、楽しかったです」

「……まだ、帰ってほしくない、です」

部屋が、しんと静かになった。

詩織さんの頬が、ほんのり赤い。

俺は、テーブルを回って、詩織さんの隣に座った。

距離が、ぐっと近くなる。

ふわっと、甘い、いい匂いがした。

「……詩織さん」

「……はい」

俺は、詩織さんの頬に、そっと手を添えた。

詩織さんが、ゆっくりと目を閉じる。

ゆっくりと、唇を重ねた。

ちゅっ。

「……んっ」

柔らかくて、温かい唇だった。

ほんのり、お茶と、餡子の甘い味がする。

一度離れて、お互いの顔を見る。

詩織さんの頬は真っ赤で、潤んだ目が、まっすぐ俺を見ていた。

「……もう一回、いい?」

「……はい」

今度は、もっと深く。

ちゅっ……ちゅる……

唇を重ねながら、舌先で詩織さんの唇をなぞる。

おずおずと、詩織さんの口が開いた。

舌先を差し入れると、応えるように、詩織さんの舌が、ちろっと触れてくる。

ちゅるっ、ちゅっ、ちゅるるっ

静かな部屋に、湿ったキスの音が響く。

「ん……っ……結城さん……」

「……涼、でいいよ」

「……涼、さん」

名前を呼ばれて、胸の奥がきゅっと締まった。

もう一度、唇を重ねながら、詩織さんの背中に手を回す。

ブラウス越しの、細い背中。

ぎゅっと引き寄せると、詩織さんの体が、俺の胸に寄りかかってきた。

「……涼さんの手、あったかい」

「詩織さんのほうが、あったかいよ」

ふわっと笑う詩織さん。

その笑顔に見とれていると、詩織さんが、自分からそっと、唇を寄せてきた。

ちゅっ……ちゅるっ……

積極的になった詩織さんに、心臓が跳ねる。

俺は、ブラウスのボタンに、そっと手をかけた。

「……脱がせて、いい?」

「……はい。あの、電気、暗くしてもらえますか」

「あ、ごめん」

間接照明だけにすると、部屋が、オレンジ色のやわらかい光に包まれた。

窓辺の一輪挿しが、影になって揺れている。

ブラウスのボタンを、一つ、二つと外していく。

白い肌と、淡い色の下着が覗いた。

「……あんまり、見ないでください。恥ずかしい」

「無理です。綺麗すぎて」

ブラウスを肩から落とすと、思っていたよりずっと、女性らしい体つきだった。

作務衣の下に、こんな体を隠していたなんて。

背中に手を回して、ブラのホックを外す。

ぷつん。

「……っ」

形のいい胸が、ふるんっとこぼれた。

頂きには、薄いピンクの乳首が、控えめに色づいている。

「……すごく、綺麗だ」

「……見つめないで。恥ずかしい、です」

俺は、両手で、その胸を包み込んだ。

むにゅっ。

「んっ……♡」

指が、柔らかく沈み込んでいく。

もちもちとした弾力が、手のひらに吸い付く。

水無月のういろうみたいだ、なんて、馬鹿なことを思った。

ゆっくり揉みながら、親指で、乳首をそっと撫でる。

「ひゃっ……♡」

詩織さんの体が、びくっと跳ねた。

「そこ……敏感、なので……」

ツンと色づいた乳首を、指先でくりくりと転がす。

「あっ……んっ……やっ……そこ……♡」

普段、落ち着いた声の詩織さんが、甘い声を漏らす。

そのギャップに、たまらなくなった。

我慢できずに、片方の乳首に、唇をかぶせた。

ちゅうっ。

「ひあっ……♡♡」

詩織さんの手が、俺の頭を、そっと抱え込んだ。

柔らかい胸に、頬が埋もれる。

甘い匂いが、鼻をくすぐった。

ちゅるっ……れろっ……ちゅっ……

舌先で乳首を転がしながら、もう片方の胸を、手で揉み続ける。

「ん……っ……涼さん、上手……♡」

交互に吸って、舐めて、揉んで。

「はぁっ……んっ……こんなの、初めて……♡」

詩織さんの体が、だんだん熱くなっていく。

太ももが、もじもじと、すり合わさっている。

俺は、スカートの中に、そっと手を伸ばした。

「……触っていい?」

「……はい」

ストッキング越しに、中心を、そっとなぞる。

すっ……

「ひゃっ……♡」

布越しでも、はっきりとわかる、湿り気。

「……もう、濡れてる」

「……だって。涼さんに、あんなことされたら……♡」

恥ずかしそうに、詩織さんが俯いた。

俺は、ストッキングと、その下のショーツを、ゆっくり引き下ろした。

露わになったそこは、もう、しっとりと濡れていた。

オレンジの光に、蜜が、てらてらと光っている。

「……すごい」

「……言わないで。恥ずかしい、です♡」

俺は、詩織さんを、そっとベッドに横たえた。

太ももを、優しく開く。

その間に、顔を近づけた。

「えっ……そんなとこ……♡」

「気持ちよくしたいから」

舌で、濡れた割れ目を、ゆっくりとなぞり上げた。

れろっ……

「んあっ……やっ……そこ……♡♡」

敏感な突起を、舌先でちろちろと弾く。

ちろちろ……れろっ……

「ひゃあっ……そこ、だめ……っ♡」

だめと言いつつ、詩織さんの手が、俺の髪を、きゅっと掴んだ。

逃がさないように。

突起を舐めながら、指を一本、ゆっくり中に入れる。

ずぷっ……

「んあぁっ……♡」

熱くて、きつくて、ぬるぬるの中が、指をきゅっと締め付ける。

指をゆっくり動かしながら、中の感じる場所を探る。

くちゅ……くちゅ……

「あっ……そこ……っ……変な感じ……です……♡」

ざらっとした場所を擦りながら、突起を、舌で吸い上げる。

ちゅるっ……くちゅくちゅ……

「やっ……あっ……両方、だめ……っ……おかしくなっちゃう……♡♡」

詩織さんの腰が、ぴくぴくと跳ねる。

声が、どんどん甘く、高くなっていく。

「あっ……あっ……涼さん……私……なんか……来ちゃう……っ♡」

指を曲げて、感じる場所を集中的に擦る。

突起を、舌でちゅるちゅると吸い続ける。

くちゅくちゅくちゅ……ちゅるるっ……

「あっ……あっ……だめっ……いっちゃう……いっちゃうっ……♡♡♡」

びくんっ。

詩織さんの体が、弓なりに反った。

太ももが、ぎゅっと俺の頭を挟んで、震える。

中が、きゅうっと指を締め付けた。

「はぁっ……はぁっ……すごい……こんなの、初めて……♡」

詩織さんが、潤んだ目で、俺を見上げた。

頬が上気して、髪が乱れて。

その姿が、たまらなく色っぽかった。

「……涼さんも」

詩織さんが、体を起こした。

まだ、脚が、少し震えている。

「私だけ、ずるい、です。涼さんも……気持ちよく、なってほしい」

詩織さんの細い指が、俺のベルトに伸びた。

ぎこちない手つきで、ベルトを外し、ズボンを下ろす。

下着の上から、もう硬くなっているそこに、そっと触れた。

「……わ。すごく、硬い……♡」

「詩織さんが、可愛すぎるから」

「……もう♡」

下着を下ろすと、限界まで張り詰めたものが現れた。

詩織さんが、おそるおそる、細い指で、そっと握る。

「……あつい」

ゆっくりと、上下に動かしてくれる。

しゅっ……しゅっ……

和菓子をこねる、丁寧な指先。

その指で扱かれるだけで、たまらなかった。

「……お口でも、していいですか」

「えっ……いいの?」

「……涼さんのこと、気持ちよくしたいので」

詩織さんが、俺の前に、かがみこんだ。

潤んだ瞳が、俺を見上げる。

先端に、ちゅっとキスを落とした。

ちゅっ……

「ん……涼さんの、匂い……♡」

ちろっと、舌先が出て、先端を舐める。

れろっ……ちろっ……

「……っ」

「……気持ち、いいですか」

「やばい……」

詩織さんが、嬉しそうに目を細めて——ぱくっと、口に含んだ。

「んっ……♡」

温かくて、湿った口の中に、包まれる。

じゅるっ……ちゅぷっ……

小さな舌が、絡みつきながら、ゆっくり動く。

「んっ……じゅるっ……ちゅぷっ……♡」

蕩けた目が、俺を見上げている。

「詩織さん……上手だよ……」

「ん……ふふ……じゅるっ……♡」

嬉しそうに、頭を上下に動かす。

頬がへこんで、吸い付く圧が強くなる。

じゅぽっ……じゅるっ……ちゅぷちゅぷ……

「……詩織さん、そろそろ、やばい」

「……っ。じゃあ」

詩織さんが、ぱっと口を離した。

唾液が、つうっと糸を引く。

「……来て、ください。涼さんが、欲しい」

詩織さんが、ベッドに横たわって、両手を広げた。

俺は、その脚の間に、体を入れた。

先端を、濡れた入り口に、あてがう。

ぬるっとした感触。

「ゴム……持ってないんだけど」

「……今日は、大丈夫な日、なので」

「……涼さんなら、いいです。そのまま、来て」

その言葉に、頭がくらっとした。

「……入れるよ」

「……はい。来て、ください」

ゆっくりと、腰を進めた。

ずぷっ……

「んあっ……♡」

中に入った瞬間、詩織さんの体が、びくんと震えた。

「あつい……涼さんの……あつい、です……♡」

少しずつ、奥へと進めていく。

ずぶ……ずぶ……ずぶっ……

「んんっ……おっきい……奥まで、来てる……っ♡」

詩織さんの中は、信じられないほど熱くて、きつくて、とろとろだった。

壁が、絡みついて、吸い付くように締め付けてくる。

「……詩織さん、すごい締まってる」

「だって……涼さんの、大きいから……っ♡」

奥まで入って、根元まで密着した。

詩織さんの顔が、目の前にある。

上気した頬。半開きの唇。

その全部が、可愛くて、色っぽくて、たまらない。

俺は、詩織さんの唇にキスをしながら、ゆっくり腰を動かし始めた。

ちゅっ……ずちゅっ……

「んむっ……♡」

ずちゅっ……ぬぷっ……ずちゅっ……

「ん……っ……あっ……♡」

奥まで突くたびに、詩織さんが、甘い声を漏らす。

最初はゆっくり。少しずつ、ペースを上げていく。

ぱんっ……ぱんっ……

「あっ……んっ……涼さん……気持ちいい……です……♡♡」

詩織さんの白い胸が、突くたびに、たゆんたゆんと揺れる。

その揺れを見ながら、腰を動かす。

「詩織さんの中、最高だ……」

「んっ……そんなこと言われたら……もっと、感じちゃう……っ♡」

詩織さんの腕が、俺の首に回された。

ぎゅっと、抱きついてくる。

「……もっと、近くに、来てほしい……です♡」

俺は、体を密着させて、奥を突いた。

ずぱんっ……

「ひゃあっ……そこっ……当たってる……っ♡♡」

奥の、感じる場所に当たったみたいだ。

詩織さんの中が、きゅうっと締まった。

「ここ?」

ずぱんっ……

「そこっ……やっ……すごい……っ♡♡」

同じ場所を、何度も突く。

ぱんっ……ぱんっ……ぱんっ……

「あっあっあっ……涼さん……もっと……っ♡♡」

普段、落ち着いた声の詩織さんが、甘い声で「もっと」とねだる。

そのギャップに、理性が飛びそうになる。

言われるままに、腰の動きを速めた。

ぱんぱんぱんっ……

「んあぁっ……やばい……気持ちよすぎる……です……っ♡♡♡」

詩織さんの中が、どんどんきつくなっていく。

静かな部屋に、肌のぶつかる音と、水音が反響する。

「詩織さん……中、やばい……っ」

「涼さん……私も……もう……っ♡」

ぱんっ……ぐちゅっ……ぱんっ……ぬちゅっ……

「あっ……いっちゃう……また、いっちゃう……っ♡♡」

「俺も……っ」

「来てっ……中に……涼さんの、いっぱい、ほしい……っ♡♡♡」

ぱんぱんぱんぱんっ……

「……出る、詩織さんっ」

「来てっ……いっ……いくっ……♡♡♡」

びゅるるるっ……

どくっ……どくっ……どくっ……

詩織さんの一番奥に、熱いものが、注ぎ込まれる。

「んあああっ……あついっ……中、いっぱい……っ♡♡♡」

詩織さんの中が、きゅうきゅうと痙攣しながら、俺のものを搾り取るように締め付ける。

びくんびくんと、体が震える。

最後の一滴まで、注ぎ込まれて——

「はぁっ……はぁっ……」

「はぁ……はぁ……すごかった、です……♡」

繋がったまま、お互いの額をくっつける。

詩織さんの、蕩けた瞳が、うるうると揺れていた。

「……詩織さん」

「……涼さん」

しばらく、そのまま、呼吸を整える。

オレンジの光の下、二人の荒い息だけが響いていた。

やがて、詩織さんが、俺の胸に頬を寄せて、ぽつりと言った。

「……ねえ、涼さん」

「ん?」

「……もう一回、しても、いいですか」

「えっ」

「だって……すごく、気持ちよかったから……♡」

「……ずるい、ですか」

その言葉だけで——中で、また硬くなっていくのがわかった。

「……全然、ずるくない」

詩織さんが、ふわっと笑った。

そして、ちょっと、いたずらっぽい顔をする。

「……今度は、私が上で、してみたい、です」

その言葉に、ぞくっとした。

俺は一度抜いて、仰向けになった。

詩織さんが、おずおずと、俺の腰の上に跨がる。

オレンジの光の中、白い胸が、目の前で揺れている。

「……えっと。これで、合ってますか」

「うん。ゆっくりでいいよ」

詩織さんが、腰を持ち上げて、自分で位置を合わせた。

先端が触れた瞬間、びくっと震える。

「ん……♡」

ゆっくりと、腰を下ろしていく。

ずぷっ……ずずずっ……ずぷんっ……

「んあぁっ……奥まで……っ……さっきより、深い、です……♡♡」

重力で、さっきよりも深く、繋がった。

詩織さんの、蕩けた顔が、すぐ近くにある。

「……動きます、ね」

詩織さんが、ゆっくりと腰を、上下に動かし始めた。

ずちゅっ……ぬぷっ……ずちゅっ……

「あっ……ん……はぁっ……気持ちいい……です……♡♡」

最初はぎこちなかった動きが、だんだん、滑らかになっていく。

胸が、たゆんたゆんと揺れて、白い肌が、オレンジの光の中で、うっすら汗ばんでいる。

「……詩織さん、その顔、やばい」

「やっ……見ないで……えっちな目で、見ないでください……っ♡♡」

そう言いながら、腰の動きが速くなる。

ぱちゅっ……ぬちゃっ……ずちゅずちゅ……

「あっ……ん……自分で動くと……変なとこ、当たる……です……っ♡♡」

俺は、揺れる胸を、下から両手で包んだ。

むにゅっ。

「ひゃっ……♡♡」

揉みながら、下から、ぐっと突き上げた。

どんっ。

「んあぁっ……♡♡♡」

詩織さんが、仰け反った。

俺は、詩織さんの腰を掴んで、下からのピストンを加速させた。

ぱんぱんぱんっ……

「やっ……下から……っ……すごい……また、来ちゃう……っ♡♡♡」

詩織さんが、前のめりに倒れ込んできた。

柔らかい胸が、俺の顔に押し付けられる。

目の前の乳首を、口に含んだ。

ちゅるっ。

「あーっ……♡♡♡」

突き上げながら、乳首を吸って、舐めて。

「あっ……あっ……だめ……っ……全部、気持ちいい……です……っ♡♡♡」

「俺も……そろそろ……っ」

「来てっ……また、中に……っ……いっぱい、ほしい……っ♡♡♡」

詩織さんが、自分から、腰を打ち付けてきた。

ぱんぱんぱんぱんっ……

「いっ……いくっ……涼さん……一緒に……っ♡♡♡♡」

「……っ、出るっ」

どくっ……どくっ……どくどくっ……

二回目を、詩織さんの一番奥に注ぎ込んだ。

「あぁっ……また、あついの……いっぱい……っ♡♡♡♡」

びくんびくんと、詩織さんの体が痙攣する。

中が、きゅうきゅうと、俺のものを搾り取る。

そして、詩織さんが、俺の上に、崩れ落ちてきた。

二人とも、汗だくだった。

「はぁ……はぁ……涼さん……最高、でした……♡♡」

「俺も……めちゃくちゃ」

詩織さんが、俺の胸に頬を預けて、目を閉じた。

オレンジの光の中、二人の鼓動が、だんだん落ち着いていく。

窓の外の雨は、いつの間にか、止んでいた。

しばらくして、詩織さんが、俺の胸の上で、ぽつりと言った。

「……涼さん」

「ん?」

「私、毎朝、向かいのドアに涼さんがいるの……ずっと、楽しみだったんです」

「会釈、するだけなのに。それだけで、一日、頑張れて」

その言葉に、胸の奥が、じんわり温かくなった。

俺は、詩織さんの髪を、そっと撫でた。

「……俺も同じだよ。詩織さんがいると、朝が、楽しみだった」

「会社の和菓子屋に通ってたのも、本当は、菓子じゃなくて、詩織さんに会いたくて」

詩織さんが、ぱっと顔を上げた。

潤んだ目が、まんまるになっている。

「……ほんとですか」

「ほんと。水無月、一個じゃ足りなくて、毎回、理由探してた」

詩織さんが、ぷっと吹き出して、それから、じわっと涙を浮かべた。

笑っているのか、泣いているのか、わからない顔で。

俺は、その頬に手を添えて、まっすぐ目を見た。

「詩織さん。俺と、付き合ってください」

詩織さんの目から、ぽろっと、涙がこぼれた。

「……いいんですか。和菓子屋の、地味な私で」

「地味じゃない。詩織さんが、いいんです」

詩織さんが、ぎゅっと、俺に抱きついてきた。

「……はい。私も……涼さんと、付き合いたい、です」

「ずっと……毎朝の電車が、来るのが、楽しみだったので」

俺は、詩織さんを、ぎゅっと抱きしめ返した。

ふわっと、甘い、餡子みたいな、優しい匂いがした。

毎朝、向かいのドアで見ていた人が、今は、腕の中にいる。

それからの俺たちの朝は、すっかり変わった。

7時48分の各駅停車。

俺はもう、向かいのドアじゃなくて、詩織さんの隣に立つようになった。

「おはようございます、涼さん」

「おはよう。今日、雨上がりそうだね」

「ふふ。じゃあ、お昼、お店に来てください。新作、出したので」

肩を寄せ合って、電車に揺られる。

毎朝の、なんでもない通勤時間が、一番幸せな時間になった。

会社では、同僚の田所に、すぐに勘づかれた。

「結城、お前、最近やたら裏通りの和菓子屋通ってるよな」

「まあな」

「しかも、菓子持って帰ってくる日、やたら機嫌いいし。彼女でもできた?」

「……まあ、隠すことでもないんで。あの店の人と、付き合ってる」

「えーっ!まじか!通勤電車で会った人って、それかよ!」

ばれて笑われたけど、不思議と、悪い気はしなかった。

六月の終わり。

ちょうど、夏越の祓の頃。

俺は、詩織さんの店で、水無月を二つ、買った。

「はい、水無月。半年分の穢れ、ちゃんと払ってくださいね」

「詩織さんと出会えたんだから、今年の前半は、穢れより、いいことのほうが多かったよ」

「……もう。お店で、そういうこと言わないでください♡」

奥から、女将さんが、にやにやしながらこっちを見ていた。

詩織さんが、真っ赤になって、俯く。

その横顔が、最初に店で見た、凛とした職人の顔と。

毎朝、電車で見ていた、柔らかい笑顔と。

ベッドで見た、蕩けた顔と。

全部が、俺だけのものになったんだと思うと、たまらなく幸せだった。

帰り道、二人で並んで、水無月を食べた。

三角形の、氷を模した、夏越のお菓子。

もちっとしたういろうに、小豆の上品な甘さ。

「……美味しいですか?」

「うん。詩織さんと食べると、もっと美味い」

「ふふ。じゃあ、来月は、夏のお菓子、たくさん作りますね」

「水ようかんに、葛切りに……あ、また語っちゃう」

口を押さえて、照れたように笑う詩織さん。

その横顔に、夕暮れの光が差していた。

毎朝、向かいのドアで会釈するだけだった人。

人身事故の足止めがなかったら、俺たちは、ずっと会釈だけの関係だったかもしれない。

でも今は、隣にいる。

「ねえ、涼さん。明日も、7時48分で」

「うん。隣、空けといてよ」

「……もちろん。ずっと、隣、空けておきます」

雨上がりの空に、薄く、夕焼けが滲んでいた。

なんでもない通勤電車と、裏通りの小さな和菓子屋。

その二つが、俺の人生で、一番大切な場所になった。

― 終 ―


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