俺、桐谷涼太、27歳。フリーランスの録音・ミックスエンジニア。 住んでいるのは、都内の外れにある「音楽家専用」を謳った防音シェアハウスだ。
元は小さな音楽スタジオだった建物を改装したらしく、各部屋が分厚い防音壁で仕切られている。住人は全員、何かしら音を出す人間だ。声楽科の院生、ジャズベーシスト、作曲家。深夜に楽器を鳴らしても苦情が出ない、変わり者だらけの家だった。
俺はといえば、自宅にこもってクライアントの音源をミックスする日々。納期前は完全に夜型になる。ヘッドホンを外すのは、だいたい日付が変わってからだ。
そんな俺の部屋の、すぐ隣。 壁一枚を隔てた向こうから、毎晩、ヴァイオリンの音が聴こえてきた。
朝宮詩織さん、24歳。 音大を出たばかりの、ヴァイオリン奏者だ。
防音壁のおかげで、普通なら隣の音なんてほとんど届かない。 それでも、深夜にすべての音が静まると、彼女の弾く旋律が、ごくかすかに、俺の部屋まで滲んでくることがあった。
不思議なのは、いつも同じ一小節を、何度も何度も弾き直していることだった。
すうっと美しく入って、途中で、ぷつりと止まる。 少し間を置いて、また頭から。止まる。また頭から。
(……今日も、同じところで止まってるな)
職業柄、人の出す音はつい気になる。 彼女の音は、技術的には文句のつけようがないように聴こえた。それなのに、決まって同じ場所で、何かにつまずくみたいに途切れる。
その理由を俺が知るのは、もう少し先のことだった。
その夜、俺は珍しく、日付が変わる前に作業を終えた。 喉が渇いて、共用のラウンジに降りる。深夜のラウンジは、たいてい誰もいない。
ところが、その日はソファに先客がいた。 膝を抱えて、ぼんやり窓の外の雨を見ている女性。 朝宮詩織さんだった。
家の中ですれ違うことはあっても、ちゃんと話したことはなかった。 肩より少し長い黒髪に、細い首。膝の上に、ヴァイオリンのケースを抱えている。
「あ……桐谷さん。すみません、うるさかったですか」
「いえ、全然。防音、しっかりしてますし。むしろ、ちゃんと聴こえなくて残念なくらいで」
「……聴こえて、ました?」
「ほんのかすかに。静かな夜だけ。すごく綺麗な音ですね」
詩織さんが、はっとしたように顔を上げた。 それから、困ったように目を伏せる。
「綺麗だなんて……いつも、途中で止まってばかりなのに」
「気づいてました。同じ一小節、何度も弾き直してますよね」
「……恥ずかしい。聴かれてたんだ」
膝を抱える腕に、少しだけ力がこもった。 俺は余計なことを言ったかと、慌ててフォローする。
「あ、責めてるんじゃないです。職業柄、音が気になるだけで」
「職業……?」
「録音エンジニアなんです。人の演奏を録って、整える仕事で」
詩織さんの目の色が、少しだけ変わった。 警戒の混じった表情が、ほんの少しだけほどける。
「録音の……プロの方なんですね」
「プロってほどでもないですけど。で、その止まる場所、なんかあるんですか」
「……来月、オーディションがあるんです」
ぽつりと、詩織さんが言った。 窓を打つ雨の音が、やけに大きく聴こえた。
「プロのオーケストラの、契約団員の。受かれば、ちゃんと演奏で食べていける。落ちたら……たぶん、実家に帰ることになる」
「結構、大事な勝負なんですね」
「人生で一番の。なのに私……人に聴かれると、あの一小節で、必ず手が止まっちゃうんです」
詩織さんが、自分の右手をじっと見つめた。 細くて綺麗な、演奏家の指だった。
「一人で弾けば、完璧に弾けるのに。本番を想像した瞬間、指が動かなくなる。情けないですよね」
「情けなくないですよ。それだけ、本気ってことでしょう」
詩織さんが、ふっと小さく笑った。 泣きそうな顔のまま笑う、不器用な笑い方だった。
「桐谷さん、優しいんですね」
「いや、本音です」
その夜は、それだけだった。 でも俺は、ラウンジに戻った後も、彼女のことが頭から離れなかった。
翌日から、俺は隣の音に、前よりもっと耳を澄ませるようになった。 やっぱり、同じ場所で止まる。すうっと入って、ぷつり。
ある夜、俺はラウンジで彼女を捕まえて、思いきって提案してみた。
「朝宮さん。よかったら、俺に演奏を録らせてもらえませんか」
「録る……?」
「人に聴かれると止まる、って言ってたでしょう。だったら、まずはマイク相手に、聴かれる練習をするのはどうかなと」
「マイク相手に……」
「録音って、後で自分の音を客観的に聴けるんです。どこで詰まるのか、どんな音が出てるのか。本番の感覚に、少しは近づけるかもしれない」
詩織さんが、ヴァイオリンのケースをぎゅっと抱えた。 迷うように、視線が揺れる。
「……でも、私の演奏なんて、録るほどのものじゃ」
「価値があるかどうかは、録る側が決めます。俺、朝宮さんの音、もっとちゃんと聴いてみたいんですよ」
しばらくの沈黙のあと、詩織さんは小さく頷いた。
「……お願い、します。プロの耳に、頼ってみたいです」
こうして俺たちは、梅雨の夜ごとに、共用の防音サロンで顔を合わせるようになった。
サロンは、家の一階にある一番大きな防音室だ。 グランドピアノが一台あって、住人なら誰でも使える。深夜は、ほとんど貸し切り状態だった。
俺は機材を持ち込んで、コンデンサーマイクを立てた。 詩織さんが、譜面台の前に立つ。
「じゃあ、いつも通りに弾いてみてください。録るって意識せず、気楽に」
「……気楽に、が一番難しいんですけど」
「ですよね。でも、まずは一回」
詩織さんが、弓を構えた。 すうっと、最初の音が立ち上がる。 やっぱり、綺麗だ。澄んでいて、でもどこか切ない音色。
そして、例の一小節に差しかかった瞬間—— ぷつり、と弓が止まった。
「……ごめんなさい。やっぱり、だめ」
「大丈夫。何回でも録り直せるのが、録音のいいところなんで」
詩織さんが、申し訳なさそうに俯く。 俺はあえて、何でもないことのように、機材をいじった。
「ちょっと、今録れたとこ、聴いてみます?」
「えっ。途中までしかないのに」
ヘッドホンを渡すと、詩織さんはおそるおそる耳に当てた。 自分の音を客観的に聴くのは、初めてだという。
再生ボタンを押す。 彼女の表情が、みるみる変わっていった。
「……これ、私の音?」
「そうですよ。止まる直前まで、すごくいい音してました」
「自分の演奏、こんなふうに聴こえてたんだ……知らなかった」
ヘッドホンを外した詩織さんの目は、少しだけ輝いていた。 止まったことより、自分の音が「ちゃんと音楽になっていた」ことのほうに、驚いているみたいだった。
「もう一回、行きましょうか」
「……はい。今度は、もう少し先まで」
その夜、詩織さんは、いつもより一小節だけ、先まで弾けた。
それからの夜は、二人の小さな儀式になった。
雨が屋根を打つ深夜、サロンに二人。 俺がマイクを立てて、詩織さんが弾く。止まったら、録れたところまで一緒に聴く。 少しずつ、彼女の弓は、例の一小節を越えられるようになっていった。
「桐谷さんが録ってくれると、不思議と、いつもより弾けるんです」
「俺はただ、マイク立ててるだけですけどね」
「ううん。聴いてくれる人がいるって、こんなに違うんだって、初めて知りました」
機材を片づけながら、俺たちはよく、音楽の話をした。 詩織さんがヴァイオリンを始めたのは、五歳のとき。 ずっと優等生で、コンクールでも上位だったのに、人前に出るほど緊張するようになったのだという。
「期待されるのが、怖くなっちゃって。失敗したら、応えられなかったらって、考えるほど指が固まる」
「真面目すぎるんですよ、きっと」
「桐谷さんは、緊張とかしないんですか」
「しますよ。でも俺の仕事は、裏方なんで。緊張するのは、いつも表に立つ朝宮さんのほうです」
詩織さんが、こちらをじっと見た。
「……桐谷さんがいてくれたら、表に立つの、ちょっとだけ怖くなくなる気がする」
その一言に、俺の心臓が、ぎゅっと掴まれた。 いつの間にか俺は、彼女の演奏を録ることより、その横顔を見ることのほうが、楽しみになっていた。
ある日曜。 その日は録音の予定はなかったけれど、俺は詩織さんを誘ってみた。
「朝宮さん。明日、楽器街に行きません?気晴らしに。いい弦、見に行きましょうよ」
「弦?」
「本番用の。音、変わるんでしょう。俺、楽器屋巡り、結構好きなんですよ」
「……行きたい、です」
梅雨の晴れ間の、午後だった。 雨が上がって、湿った空気の向こうに、薄い陽が差していた。
楽器街を、二人で歩く。 弦楽器専門店に入ると、詩織さんの目が、さっきまでと別人みたいに輝いた。
「見て、この松脂。すごく評判がいいんです」
「朝宮さん、楽器の話してるとき、一番楽しそうですね」
「あ……ごめんなさい、つい夢中になっちゃって」
「謝らないでください。むしろ、もっと聞きたいです」
試奏室で、詩織さんが店の楽器を借りて、少しだけ弾いた。 人のいない小部屋だからか、彼女の弓は、迷いなく走った。 例の一小節も、するりと越えていく。
「……今、止まらなかったですね」
「あ。ほんとだ」
「やっぱり、朝宮さんは弾ける人ですよ。本番でも、絶対」
詩織さんが、弓を下ろして、こちらを見た。 試奏室の窓から差す光が、彼女の頬を照らしている。
「桐谷さんって、ずるいです」
「ずるい?」
「そういうこと、さらっと言うの。本気にしちゃうのに」
その横顔を見て、俺はもう自分の気持ちをごまかせなくなっていた。 この人のことが、好きだ。録音の口実なんて、とっくに必要なくなっていた。
帰り道、近くのカフェで、買ったばかりの弦を眺めながら、詩織さんがぽつりと言った。
「私ね、本当は……オーディション、逃げ出したいくらい怖いんです」
「うん」
「でも、桐谷さんと録音するようになってから、少しだけ、立ち向かえる気がしてる。聴いてくれる人のために弾くって、こんなに力になるんだって」
遠くを見る詩織さんの目に、迷いと、ほのかな希望が混じっていた。 俺は、その横顔から目が離せなかった。
オーディションの、前夜。 その日は朝から、梅雨らしい激しい雨が降っていた。
深夜、俺がサロンに降りると、明かりがついていた。 詩織さんが、一人で立っていた。ヴァイオリンを抱えたまま、青い顔で。
「朝宮さん?こんな時間に」
「……桐谷さん。眠れなくて」
「明日、本番ですもんね」
「弾こうとすると、手が震えるんです。明日、絶対に止まる気がして……怖くて、怖くて」
詩織さんの指先が、小刻みに震えていた。 窓の外で、雨が屋根を激しく叩いている。 他の住人はみんな寝静まって、家の中は、雨音だけが響いていた。
俺はマイクを立てず、ただ譜面台の前に、椅子を一脚置いた。
「録音は、なしです。今日は、俺一人に聴かせてください」
「桐谷さん一人に……?」
「審査員も、マイクもいません。ただ、俺が聴いてる。それだけです」
詩織さんが、震える手で弓を構えた。 すうっと、音が立ち上がる。 そして、例の一小節——ぷつり、と止まった。
「……っ、ごめんなさい。やっぱり」
弓を下ろした詩織さんの目に、みるみる涙が盛り上がった。
「だめだ、私。明日も、きっとこうなる。みんなの期待、裏切っちゃう」
「朝宮さん」
「ずっと頑張ってきたのに……肝心なところで、いつもこうなんです」
ぽろっと、一粒こぼれた。 いつも気丈に弓を構えている人が、雨の夜に、子供みたいに泣いていた。
俺は思わず、彼女に歩み寄って、その頬を伝う涙を指で拭った。 触れた瞬間、詩織さんがびくっとして、でも逃げなかった。
至近距離で、見つめ合う。 深夜のサロン。雨音だけが、二人を包んでいる。 彼女の濡れた瞳が、揺れていた。
「期待なんて、考えなくていいです。明日、たった一人のために弾くと思ってください」
「一人……?」
「俺のために。客席のどこかに俺がいると思って、俺だけに聴かせるつもりで弾けばいい」
詩織さんの瞳が、大きく揺れた。
「……桐谷さんのために」
「はい。朝宮さんの音は、いつだって、俺の心に届いてます」
詩織さんが、息を呑んだ。 俺は彼女の頬に手を添えて、ゆっくり顔を近づけた。 詩織さんは、目を閉じた。
唇が、触れた。
ちゅ……
柔らかくて、あたたかい。涙の、ほのかな塩の味がした。 触れるだけのキスで、一度離れる。 詩織さんが、薄目を開けて俺を見上げた。頬が、真っ赤に染まっている。
「……ずっと、桐谷さんに、こうしてほしかったのかも」
「……俺もです。録音を口実に、朝宮さんに会ってたようなもんで」
今度は、彼女のほうから唇を寄せてきた。 ちゅっ……んっ…… さっきより深く。俺は詩織さんの後頭部に手を回して、もっと深く重ねる。
舌で唇をなぞると、彼女の口がそっと開いた。 れろ……ちゅるっ……
「ん……っ♡」
おずおずと、詩織さんの舌が絡んでくる。 いつも気を張っている彼女が、俺の腕の中で、小さく震えていた。
「朝宮さん、好きです。録音より、ずっと前から」
「……私も。桐谷さんのこと、ずっと」
ちゅるるっ……ちゅぷっ……
雨の降る深夜のサロンで、何度も唇を重ねた。 松脂と、彼女の髪の、甘い匂い。
「……ここじゃ、誰か来ちゃうかも」
「……」
「私の部屋……来ますか?」
俺は黙って頷いた。 詩織さんが俺の手を取って、二階の自室へと歩き出す。 その手が、まだ少しだけ震えていた。
詩織さんの部屋に入るのは、初めてだった。 壁一面に楽譜が並んだ棚があって、窓辺に、小さなドライフラワー。 壁の向こうは、俺の部屋だ。毎晩、ヴァイオリンが聴こえてきた、あの壁。
ドアを閉めた瞬間、俺は詩織さんを抱き寄せた。
「あっ……♡」
もう一度キスをして、ゆっくりベッドに座らせる。 間接照明に照らされた詩織さんは、いつもより無防備で、色っぽかった。
「朝宮さん、すごく綺麗です」
「……からかわないでください」
「本気ですよ」
「……もう♡」
部屋着のボタンに手をかける。 一つ、二つと外していくと、白い肌と、淡い色の下着が覗いた。
「あんまり……見ないで♡ 恥ずかしい」
「無理です。綺麗すぎて」
部屋着を脱がせると、彼女の身体が露わになった。 細い肩、柔らかそうな胸、くびれた腰。 いつも楽器の陰に隠れていた身体が、こんなに女性らしいなんて。
ブラのホックを外す。ぷつん。 形のいい胸がこぼれ落ちた。先端が、すでにつんと尖っている。
「やっ……見つめないでってば♡」
「綺麗だから無理です」
「もう……♡」
そっと両手で胸を包む。 ふにっ……
「んっ……♡」
手のひらに、柔らかい弾力が伝わる。 ゆっくり揉みながら、先端を指でつまんだ。 こりっ……こりこりっ……
「ひゃっ……♡♡ そこっ……♡」
びくんと、詩織さんの身体が跳ねた。 左の乳首を指で転がしながら、右に口を寄せる。 ちゅっ……れろ……ちゅぱっ……
「んあっ♡♡ だめっ……♡ 声、出ちゃう……♡♡」
詩織さんが手の甲で口を押さえた。 いつも澄んだ音を奏でる唇から、甘い声が漏れていく。
左右交互に吸いながら、空いた手でもう片方を揉みしだく。 じゅるっ……ちゅぱっ……
「はぁっ♡ あっ♡ 桐谷さんっ……♡♡」
「涼太、でいいです」
「……涼太さん♡」
名前を呼ばれただけで、全身に電気が走った。 俺の手が、彼女のショーツの腰のラインに触れる。
「下も、いいですか」
「……うん♡」
ショーツに指をかけて、ゆっくり引き下ろす。 内ももが、すでにじっとりと濡れていた。
「もう濡れてますね」
「言わないで……♡ 恥ずかしいんだから……♡」
膝をそっと開かせる。 薄い茂みの下で、花弁が蜜にてらてらと光っていた。
「あんまり……見ないで♡」
「綺麗ですよ、すごく」
花弁にそっと指を這わせる。くちゅ……
「ひあっ♡♡」
すじに沿って上下になぞると、蜜があふれてくる。 くちゅ……くちゅ……
「あっ♡ んっ♡ そこ……♡♡」
小さな突起を探り当てて、指先で転がした。 くりっ……くりくりっ……
「んんっ♡♡♡ それっ……♡♡ だめっ……♡」
腰がびくびくと跳ねる。 クリを刺激しながら、中指をゆっくり沈めていく。 ずぷっ……
「んああっ♡♡♡」
中は熱くて、ぬるぬるで、きゅうっと指を締め付けてきた。 ぐちゅ……ぐちゅぐちゅ……
「あっ♡ 指っ♡ 入ってる……♡♡」
指を曲げて、上の壁のざらついた場所をこする。 ぐりぐりっ……
「ひぃっ♡♡♡ そこっ♡♡ すごいっ……♡♡♡」
ざらつく場所をこすりながら、親指でクリも同時に弄る。
「あっ♡♡ 両方はっ♡♡♡ おかしくなるっ……♡♡」
詩織さんの身体が、がくがくと震え始めた。 お腹がぴくぴくと痙攣する。
「いくっ♡♡♡ 涼太さんっ♡♡♡ いっちゃうっ……♡♡♡♡」
びくんっ♡♡♡♡
きゅうぅぅっと指を締め付け、蜜がじゅわっと溢れて俺の手を濡らした。 詩織さんが、力が抜けたようにベッドに沈み込む。
「はぁ……♡ はぁ……♡♡」
「気持ちよかったですか」
「……うん♡♡ すごかった……♡」
息を整えた詩織さんが、ゆっくり身体を起こした。 そして、潤んだ瞳で俺を見上げる。
「涼太さんも……気持ちよくなって♡」
彼女の細い指が、俺のベルトに伸びた。 弓を握る、繊細な指。 パンツを下ろすと、限界まで張り詰めたものが飛び出した。
「わっ……♡♡ 大きい……♡」
細い指が、根元からそっと握る。きゅっ。
「すごく硬い……♡」
「朝宮さんがエロすぎるんで」
「もう……♡」
ゆっくり上下に手を動かす。しゅっ……しゅっ…… 詩織さんが顔を近づけて、先端にちゅっとキスを落とした。
「ぴくって動いた♡ 可愛い」
舌を出して、ぺろぺろと舐め始める。 れろ……ちゅるっ…… カリの部分を重点的に、裏筋を下から上へ。
「……やばい、気持ちいいです」
口を大きく開けて、ぱくっと咥え込んだ。 ずぷっ……ちゅぱっ……じゅるっ……
「んっ♡ んむっ♡ んぷっ……♡」
頭をゆっくり上下に動かす。 普段ヴァイオリンを支える手で俺のものを握って、夢中で咥えている。 その光景だけで、頭が焼き切れそうだった。
「朝宮さん、待って。このままだと出ちゃう」
口を離した詩織さんが、唾液の糸を引いて、上目遣いで見上げる。
「……涼太さんが欲しい♡」
「俺もです」
詩織さんをベッドに横たえて、脚の間に身を置いた。 先端が、入り口にぬるりと触れる。 たっぷりの蜜で、もうぬるぬるだった。
「ゴム、持ってきます?」
「……今日は、大丈夫な日だから♡ このまま……来て♡」
(こんなに誰かを求めるの、初めてだ)
俺はゆっくり、腰を進めた。
ずぷっ……
「ぁあああっ♡♡♡♡」
熱い。 きゅうぅっと、彼女の中が締め付けてくる。
「朝宮さん、中、すごい……」
「おっきい……♡♡ 奥まで来てる……♡♡♡」
ずず……ずずずっ…… ゆっくり、最奥まで押し込んでいく。
「んんっ♡♡♡ いっぱい……♡♡♡ 届いてる……♡♡」
隙間なく、彼女に包み込まれた。 しばらくそのまま、二人で呼吸を整える。
「動きますね」
「うん……♡ ゆっくり……♡」
ずちゅっ♡ ずちゅっ♡♡
「あっ♡♡ あっ♡♡ んっ♡♡♡」
ぱんっ♡ ぱんっ♡ ぱんぱんっ♡♡ リズムを作って、腰を打ちつける。
「涼太さんっ♡♡ 気持ちいいっ……♡♡♡」
「朝宮さんの中も、めちゃくちゃ気持ちいいです」
ぱんぱんぱんっ♡♡♡ だんだん速くなっていく。 ぐちゅっ♡ ぬちゅっ♡ ぱんっ♡♡
「あんっ♡♡ 奥っ♡♡ 奥に当たるっ……♡♡♡」
いつも気を張って弓を構える詩織さんが、俺の下でどんどん乱れていく。 眉を寄せて、口を半開きにして、俺にしがみついてくる。
「やだっ……♡♡ 私、こんな……♡♡♡」
「可愛いです、朝宮さん」
「言わないでっ♡♡♡ 恥ずかしいのに止まんないっ……♡♡♡♡」
詩織さんの脚が、俺の腰に巻きついた。 もっと奥へ、と求めるように。
「もっとっ♡♡ もっと強くしてっ……♡♡♡」
ぱんっぱんっぱんっぱんっ♡♡♡♡ ベッドがぎしぎしと軋む。 深夜の部屋に、雨音と、肌のぶつかる音と、彼女の甘い声が満ちていく。
「声っ♡♡♡ 出ちゃうっ……♡♡ 壁、薄いのにっ……♡♡♡♡」
「防音、しっかりしてるんでしょう」
「やだっ♡♡♡ でも止まらないっ……♡♡♡♡」
ぱんぱんぱんぱんっ♡♡♡♡♡
「いくっ♡♡♡♡ もうっ♡♡♡♡ いっちゃうっ……♡♡♡♡♡」
「俺も……っ、朝宮さん、中に出していいですか」
「出してっ♡♡♡♡ 中にっ♡♡♡♡ 全部っ……♡♡♡♡♡」
ずんっずんっずんっ♡♡♡
「イクッ♡♡♡♡♡」
「出ます……っ!」
びゅるっ♡♡ びゅるるっ♡♡♡ どくどくっ♡♡♡♡
「んんんっ♡♡♡♡♡♡」
彼女の最奥に、熱いものがどくどくと注ぎ込まれる。 詩織さんの身体がびくびくと痙攣して、きゅうぅぅっと締め付けてきた。
「はぁ……♡♡ あったかい……♡♡♡♡」
虚ろな目で、詩織さんが幸せそうに微笑む。 俺はそっと、その唇にキスを落とした。
ちゅっ♡
「朝宮さん、最高でした」
「……私も♡♡ すごく、よかった……♡♡♡」
繋がったまま、しばらくキスを交わす。 だけど俺の熱は、まだ収まっていなかった。 彼女の中で、もう一度硬くなっていく。
「……え♡ まだ、元気なの?♡」
「朝宮さんが可愛すぎるんで」
「……もう♡♡♡」
詩織さんが、いたずらっぽく笑った。 さっきまでの不安げな表情から、少しだけ余裕が戻ってくる。
「じゃあ……今度は私が動いてみる♡」
俺を押し返して、繋がったまま馬乗りになる。 ずるっ……ずぷっ♡♡
「んっ♡♡♡ この体勢……奥まで入る……♡♡♡♡」
背筋を伸ばして、詩織さんが俺を見下ろした。 長い黒髪が揺れて、間接照明にシルエットが浮かび上がる。
(綺麗すぎる……)
腰を、ゆっくり上下に動かし始める。 ずちゅっ♡♡ ずちゅっ♡♡
「あっ♡♡ 自分で動くと……♡♡ すごいっ……♡♡♡」
動きに合わせて、胸がたゆんたゆんと揺れた。 俺は手を伸ばして、揺れる胸を下から掴む。 もにゅっ♡♡
「ひゃっ♡♡♡ 揉みながらっ♡♡♡ ずるいっ……♡♡♡♡」
詩織さんの腰の動きが、だんだん激しくなる。 気持ちいいポイントを探すように、ぐりぐりと腰を回した。
「あっ♡♡♡ ここっ♡♡♡ ここ当たるっ……♡♡♡♡」
見つけたらしい。 そこを擦りつけるように、前後に腰を振る。 ずちゅっずちゅっずちゅっ♡♡♡♡
「気持ちいいっ♡♡♡♡ 涼太さんのっ♡♡♡♡ 奥に届くのっ……♡♡♡♡♡」
俺の胸に両手をついて、激しく腰を打ちつける。 ぱんっぱんっぱんっぱんっ♡♡♡♡♡
「また来るっ♡♡♡♡ いっちゃうっ……♡♡♡♡♡」
「俺ももう……っ」
「一緒にっ♡♡♡♡♡ 一緒にいこっ……♡♡♡♡♡♡」
ぱんぱんぱんぱんぱんっ♡♡♡♡♡♡
「いくっ♡♡♡♡♡♡ いくいくいくっ……♡♡♡♡♡♡♡」
「朝宮さん……っ、また中に出します……!」
俺は彼女の腰をがっしり掴んで、下から深く突き上げた。 ずんっ♡♡♡♡
びゅるるっ♡♡♡♡ どくどくどくっ♡♡♡♡♡♡
「んんんんっ♡♡♡♡♡♡♡♡」
二回目を、さっきよりもっと奥に注ぎ込む。 詩織さんがぶるぶる震えて、がくんと俺の上に倒れ込んできた。
「はぁ……♡♡♡ すごかった……♡♡♡♡♡」
汗ばんだ肌が触れ合って、心臓の鼓動が伝わってくる。 詩織さんが、俺の胸に顔を埋めた。
「涼太さん……♡」
「はい」
「……幸せ♡♡」
ぎゅっと抱きついてくる詩織さんを、俺も強く抱きしめ返した。 しばらく、二人とも動けなかった。
気がつくと、雨はいつの間にか、小降りになっていた。 窓の外がうっすら白み始めている。明け方だ。
「……明日、ううん、もう今日だ。本番」
「眠れそうですか」
「うん。さっきまでの震えが、嘘みたい。……涼太さんのおかげ」
毛布にくるまって、二人で寄り添う。 壁の向こうから、いつも聴こえていた彼女が、今は腕の中にいた。
「ねえ、涼太さん。明日、本番、客席のどこかにいると思って弾くから」
「俺、行けないですけど」
「いいの。心の中にいてくれれば。それだけで、私、止まらずに弾ける気がする」
ちゅ、と軽く唇を重ねて、俺たちはもう一度笑い合った。
その日の午後。 俺は家で、祈るような気持ちで連絡を待っていた。 夕方、玄関のドアが勢いよく開く音がして、詩織さんが駆け込んできた。
「涼太さん!受かった、受かりました!」
「ほんとですか!?」
「あの一小節、止まらなかった!最後まで、一度も!」
息を切らした詩織さんの目には、涙が光っていた。 あの不安げな顔じゃない。やり遂げた人の、晴れやかな目だった。
「弾いてる間、ずっと涼太さんのこと考えてた。涼太さんに聴かせるつもりで弾いたら、怖くなかったの」
「弾いたのは朝宮さんですよ。俺はただ、聴いてただけで」
「ううん。涼太さんがいなかったら、私、本番でまた止まってた。間違いなく」
詩織さんが、まっすぐ俺を見た。
「ねえ、涼太さん。これからも、私の演奏、一番に聴いてくれる?」
「もちろん。録音係も、一番の客も、ずっと俺がやります」
「ふふ。じゃあ、一生離さないから、覚悟しててね♡」
くすくす笑う詩織さんが、可愛くて仕方なかった。
それからの夜は、二人の時間になった。
雨の夜、サロンで詩織さんが弾いて、俺がマイクを立てる。 止まることは、もうなくなった。彼女は、聴かれることを楽しめるようになっていた。
ある深夜、機材を片づけていると、ジャズベーシストの住人がサロンを覗きに来た。
「あれ、桐谷くんと朝宮さん、最近やたら一緒にいない?」
「えっ。べ、別に、録音の練習で」
「いやいや。朝宮さん、最近やたらいい音で弾くようになったよね。なんかこう、幸せそうな音」
「……っ」
詩織さんが、わかりやすく固まって、耳まで赤くなった。
「あ、図星だ」
「……まあ、隠すことでもないんで。俺たち、付き合ってます」
きっぱり言うと、詩織さんが「えっ」と俺を見上げた。 それから、観念したように、こくんと頷く。
「えーっ!やっぱり!壁一枚隣同士で付き合うとか、近すぎない?」
「壁越しに毎晩聴いてた音が、好きになったきっかけなんで」
「……っ、涼太さん、それ恥ずかしいから言わないで♡」
顔を覆う詩織さんを見て、住人が笑いながら去っていった。
夏の初め。 詩織さんは、契約団員として、初めての本番のステージに立った。 俺は客席の一番後ろで、彼女の演奏を聴いた。
壁越しじゃない、ホールいっぱいに響く、彼女の音。 あの、何度も止まっていた一小節を、詩織さんは堂々と、最後まで弾ききった。
終演後、ロビーで会った詩織さんは、まだ少し興奮していた。
「涼太さん、聴いてくれた?」
「最高でした。ほんとに。録音させてほしいくらい」
「ふふ、じゃあ今度、ちゃんと録ってよ。プロの録音エンジニアさん」
「喜んで。一番いい音で残します」
詩織さんが、まっすぐ俺を見て、笑った。 あの雨の夜の、不安げな顔はもうどこにもなかった。
「ねえ、涼太さん。私が弾く限り、ずっと一番前で聴いててね」
「言われなくても。一番のファンなんで、俺」
「……もう♡ そういうこと、さらっと言うんだから」
壁越しに、同じ一小節を繰り返していた、本番に弱いヴァイオリニスト。 そのつまずきの音を、毎晩聴いていた俺は、いつの間にか、彼女の一番の理解者になっていた。
梅雨の夜に始まった俺たちの時間は、晴れた夏の空の下で、ちゃんと一つの音楽になっている。
「ねえ、涼太さん。今夜も、新しい曲、聴いてくれる?」
「了解です。マイク、立てときますね」
「うん。……待ってるね、サロンで」
壁一枚を隔てて聴こえていた、あのヴァイオリン。 その音は今、すぐ隣で、俺だけのために鳴っている。
― 終 ―