俺、高槻慎吾、29歳。神田の不動産会社で営業をやってる。
仕事柄、外回りで歩き回ってばかりだから、夜に一杯やる店だけはこだわってる。 会社から歩いて5分、路地裏にある老舗の居酒屋「さわたり」。 週に2回は通う、俺にとっての止まり木みたいな場所だ。
カウンター7席に、小上がりが2つ。 親父さんが一人で切り盛りしていて、煮込みと出汁巻きが絶品。 燗の温度がいつも完璧で、疲れた体に染み込むんだ。
その「さわたり」が、先月から改装で長らく休んでいた。 親父さんが腰を悪くしたとかで、いったん閉めるって聞いていた。 正直、もうこのまま閉店かと半分諦めていた。
だから、いつもの路地を曲がって、真新しい木の看板に灯が入っているのを見たとき—— 俺は思わず立ち止まった。
「さわたり」。 墨で書かれた暖簾が、夕方の風に揺れている。 店の前に「改装オープン」の小さな立て看板。
(マジか。やってんのか)
仕事帰り、10月の冷たい風が首筋を撫でる。 迷わず暖簾をくぐった。
カラカラと引き戸を開ける。 木とヒノキの新しい匂い。磨かれたカウンター。明るくなった照明。 内装は新しくなっていたけど、店の骨格はあの「さわたり」のままだった。
「いらっしゃいませ」
その声に、俺は固まった。
親父さんの、低くて気だるいダミ声じゃない。 凛とした、よく通る女の声。
カウンターの中に立っていたのは—— 若い女将だった。
藍染めの割烹着。結い上げた黒髪。白いうなじ。 柔らかい標準語のイントネーションに、ほんの少しだけ京の訛りが混じっている。
俺はその顔を見て、心臓が一回、大きく跳ねた。
(……は?)
知ってる。 この顔を、俺は知っている。
「……っ」
向こうも、俺を見て息を呑んだ。 おしぼりを差し出そうとしていた手が、空中で止まる。
3年ぶりだった。 3年ぶりに見る、その顔だった。
沢渡茜(さわたりあかね)。 当時25歳、今は28歳になっているはずの——
俺の、元カノだった。
「……茜」
口から、勝手に名前が漏れた。
「……いらっしゃいませ、お客様」
茜は一瞬だけ唇を噛んで、それからすっと背筋を伸ばした。 女将の顔に戻る。完璧な、よそ行きの微笑み。
「お一人様、ですか。カウンターへどうぞ」
その他人行儀な敬語が、なぜか胸に刺さった。
俺は、ふらふらとカウンターの真ん中に腰を下ろした。 頭の中がぐちゃぐちゃだった。
なんで茜がここにいるんだ。 京都にいるはずだろ。料亭で修行してるって、最後にそう聞いた。
3年前。 付き合って2年目の冬に、茜は祖父の店を継ぐために京都の老舗料亭へ修行に出た。 俺は「応援する」と言って、送り出した。 かっこつけて、笑って、東京駅のホームで見送った。
そのあとは、よくある話だ。 遠距離。すれ違う時間。だんだん減っていく電話。 半年後、俺たちは別れた。
(祖父の店を継ぐ……?)
頭の中で、何かが繋がりかけた。
割烹着のうなじ。藍染めの暖簾。「さわたり」。
「お客様、お飲み物は」
茜が、俺の思考を遮るように聞いた。 やっぱり、敬語。目を合わせようとしない。
俺は喉がからからに乾いていた。
「……生で」
「かしこまりました」
茜がジョッキにビールを注ぐ。 泡の立て方が、3年前とは比べ物にならないくらい綺麗だった。 きっちり7:3。白い泡がこんもり盛り上がる。
「お通し、です」
小鉢が出てきた。 菊菜と菊の花の白和え。出汁の香りが上品で、京都の料亭で何を学んできたのか、一口で分かった。
「……うま」
思わず声が出た。
茜の手が、ほんの少しだけ止まった気がした。
それから俺は、黙ってビールを飲んだ。 茜も、黙って洗い物をしていた。
カウンター越し、距離にして1メートルもない。 なのに、3年分の沈黙が二人の間に横たわっていた。
他の客が二人、小上がりで盛り上がっている。 その声だけが、やけに大きく響いていた。
会計のとき、俺は意を決して聞いた。
「……親父さんは?」
茜が、ふっと表情を緩めた。初めて、女将じゃなくて茜の顔になった。
「祖父、腰を悪くして。それで、わたしが」
「……継いだのか。この店を」
「はい。三代目です」
そこで、俺はようやく全部を理解した。
「さわたり」。 沢渡茜。
茜が継ぐって言ってた「祖父の店」は—— 俺が3年間ずっと通い続けた、この店だったんだ。
別れたあとも、俺は知らずにこの店に通っていた。 茜のお祖父さんが握った煮込みを食って、燗酒を飲んでいた。
「……マジか」
その偶然の重さに、俺は言葉を失った。
「……またのお越しを、お待ちしてます」
茜はそう言って、深く頭を下げた。 結い上げた髪の、白いうなじが見えた。
俺は逃げるように店を出た。
その夜、布団の中で何度も寝返りを打った。 スマホを開いて、3年前のトーク履歴を眺める。 最後のメッセージは「お互い、頑張ろう」だった。 あのとき、俺はそれが正しいと思っていた。
(茜が、あそこにいる)
たったそれだけのことが、頭から離れなかった。
それから俺は、また「さわたり」に通い始めた。 前と同じ、週2回。いや、たぶん前より多かった。
最初の何回かは、ぎこちなかった。 俺は生ビールと適当な肴を頼んで、茜は女将の敬語で応対する。 それだけ。それ以上は、踏み込めなかった。
でも、皿が一枚出るたびに、少しずつ何かが溶けていった。
ある夜、九条ねぎの入った出汁巻きを食いながら聞いた。
「これ、京都で覚えたのか」
「そうですね。向こうの板長に、しつこく仕込まれて」
「しつこく?」
「ええ。卵を何百個割ったか分かりません。最初の半年、ずっと卵焼きばっかり」
そう言って、茜がふっと笑った。
「もう、卵見るのも嫌になるくらい焼かされはって」
「……今、京都弁出たぞ」
「あっ」
茜が、口元を手で押さえた。頬が、ほんのり赤くなる。
「……たまに、出ちゃうんです。3年もいると」
その照れた顔は、3年前の茜そのものだった。 凛とした女将の仮面の下に、俺の知ってる茜がちゃんといた。
それからは、少しずつ話すようになった。
茜が京都でどれだけ厳しい修行をしたか。 お祖父さんが倒れて、急遽店を継ぐことになった経緯。 改装で予算が足りなくて、銀行を駆けずり回ったこと。
俺も話した。 営業のノルマがきついこと。後輩が一人辞めたこと。 休みの日は寝てるだけのこと。
カウンターの内と外。 皿を挟んだ会話は、いつのまにか昔の調子に戻っていた。
「慎吾さん、相変わらず冷奴の薬味全部のせる人なんやね」
「……あ、また出た」
「もう、ええやんか。慎吾さん相手やと、つい」
茜が、肩をすくめて笑う。 その「慎吾さん」の呼び方に、俺は毎回どきっとした。
でも、それ以上は進まなかった。 俺たちの間には、3年前の「別れ」がまだ横たわっていたから。
そして、ある夜のことだった。
朝から空模様が怪しかった。 夕方には台風並みの雨が降り始めて、神田の路地は川みたいになっていた。
それでも俺は、傘をさして「さわたり」に向かった。 こんな日に客なんて来ないだろうけど、それでも行きたかった。
暖簾をくぐると、案の定、店内に客は俺一人だった。
「……来はったんですか。こんな雨の日に」
茜が、呆れたように笑う。
「来たよ。雨だからこそ、暖かいもん食いたくて」
「ふふ。じゃあ、煮込み温めますね」
俺はカウンターの端に座って、燗酒を頼んだ。 窓の外、雨が叩きつける音だけが響いている。 店の中だけが、ぽつんと暖かかった。
煮込みを食って、燗を飲んで。 ぽつりぽつりと、二人で話した。
そのうち、雨はますます強くなった。 電車も止まりそうな勢いだった。
茜が、ちらっと時計を見た。 それから、店の入り口に向かって歩いていって——
「……今日、もう閉めます」
カラララ、と暖簾を内側に下ろした。まだ8時前だった。
「え、いいのか?」
「こんな雨ですもん。どうせ、お客さん来はらへんし」
茜が振り返って、俺を見た。 女将の顔じゃなかった。少し、不安そうな、昔の茜の顔だった。
「……慎吾さん。せっかくやから……飲み直しません?」
その声が、少しだけ震えていた。
「……ああ。いいな」
茜がカウンターの中に戻って、いい酒を一本出してきた。 こっち側じゃなくて、カウンターの俺の隣の席に、自分の猪口を置いた。
内と外じゃなくて、初めて、横に並んだ。
「これ、京都の蔵元の。隠してたやつ」
とくとく、と酒を注ぐ。 俺の猪口に。それから、自分の猪口に。
「……再会に」
「……ふふ。再会に」
ちん、と小さく猪口を合わせた。
冷酒が、喉を滑り落ちていく。 雨の音が遠くで響いている。
しばらく、二人とも何も言わなかった。 横に並んでいるせいで、茜の体温が伝わってくる。 割烹着の袖が、俺の腕に触れそうで触れない。
先に口を開いたのは、茜だった。
「……あのね。京都にいた3年間」
「何回も、電話かけようとしたんです。慎吾さんに」
俺は猪口を持つ手を止めた。
「修行がしんどい夜とか。一人で泣いた日とか。スマホ握って、慎吾さんの番号開いて……でも、押せへんかった」
「……なんで」
「だって、もう別れてたから。今さら何言うんやって。慎吾さん、もう新しい彼女おるかもしれへんし」
茜の声が、だんだん湿っていく。
「でも、神田に戻ってきて。店継いで。暖簾出した初日に……慎吾さんが入ってきて」
「あのとき、わたし、心臓止まるかと思った」
「……俺もだよ」
俺は、ずっと言えなかったことを口にした。
「別れたあと、ずっと後悔してた。なんであのとき、もっと頑張らなかったんだろうって」
「『応援する』なんてかっこつけて。本当は、行ってほしくなかったのに」
茜が、ぴくっと肩を震わせた。
「……ずるい」
「そんなん、今さら言わんといて」
茜の目から、ぽろっと涙がこぼれた。
「別れようって言ったの、うちのほうやのに」
その言葉に、3年分の何かが詰まっていた。
「電話の向こうで、慎吾さんがどんどん遠くなって。引き止めてほしかった。でも慎吾さんは『分かった』って。それが、すごく寂しくて」
「だから、わたしから別れようって言うた。先に振られるの、怖かったから」
「……茜」
「ずっと、後悔してた。あんなこと、言わへんかったらよかったって」
茜が、両手で顔を覆った。 結い上げた髪が、少し崩れる。
俺は、もう我慢できなかった。
椅子から立って、泣いている茜の肩に手を置いた。 3年ぶりに触れた、茜の体は、記憶のままに細くて、温かかった。
「茜。こっち向いて」
茜が、ゆっくりと顔を上げた。 涙でぐしゃぐしゃの顔。それでも、綺麗だった。
「俺たち、間違えただけだ。やり直そう」
「……ええの? 今さら」
「今さらじゃない。今からだよ」
俺は、茜の頬に手を添えた。 親指で、涙を拭う。
茜が、目を閉じた。 長いまつ毛が、濡れて光っている。
俺はゆっくりと顔を近づけて——
ちゅ。
3年ぶりに、唇を重ねた。
「……ん」
茜の唇は、柔らかくて、少し塩の味がした。 涙の味だった。
一度離して、もう一度。 今度は、さっきより深く。
ちゅ……ちゅぷ……
「ん……っ、慎吾さん……♡」
茜が、俺の割烹着——じゃない、俺のシャツの胸元を、ぎゅっと握った。 唇の隙間から舌を入れると、茜も恐る恐る、舌を絡めてきた。
ちゅる……れろ……ちゅぷ……
「ふ……ぁ……♡ んん……♡」
3年前と同じ、茜のキス。 でも、3年前より、ずっと切実だった。
雨の音が、二人を包んでいる。 店の中には、俺と茜しかいない。
キスをほどくと、唾液が透明な糸を引いた。 茜の目は、もう涙じゃなくて、別の何かで潤んでいた。
「……いいのか」
「……うち、3年待ったんやよ」
茜が、潤んだ瞳で見上げてくる。 昔の、甘えた声に戻っていた。
俺は、茜の割烹着の紐に手をかけた。 背中で結ばれた、藍染めの紐。
しゅるり。
紐をほどくと、割烹着がはらりと肩から落ちた。 その下から、白いブラウスに包まれた茜の体が現れる。
「……綺麗だ」
「……恥ずかし。あんまり見んといて♡」
茜が、頬を赤らめて目をそらす。 そのうなじが、間接照明の下で艶めいていた。
「2階……上で、いいか」
茜が、店の奥の階段に視線を送った。 この店の2階は、沢渡家の住居になっている。
「……うん。畳のほうが、ええよね」
「足元、気ぃつけて。古い階段やから」
俺は茜の手を引いて、軋む木の階段を上った。 一段ごとに、ぎし、ぎし、と鳴る。 雨の音が、少しずつ遠くなる。
2階の奥、畳敷きの和室。 小さな鏡台と、畳まれた布団。 窓の障子越しに、雨に煙る神田の街の灯りが滲んでいる。
茜が、押し入れから布団を一組、敷いた。 慣れた手つきなのに、その手は少し震えていた。
「……なんか、緊張しちゃう」
「俺もだよ」
俺は茜を、後ろからそっと抱きしめた。 結い上げた髪に、鼻先を埋める。 ほのかに、白檀みたいな香りがした。
うなじに、唇を落とす。 ちゅ。
「ひゃ……っ♡ そこ……♡」
茜の体が、びくっと跳ねた。 うなじが弱いのは、3年経っても変わってなかった。
ちゅ……ちゅう……
うなじを唇でなぞりながら、結い上げた髪をほどく。 かんざしを抜くと、黒髪がさらりと肩に流れ落ちた。
「……髪、下ろした方が好きだな。昔から」
「もう……女将は、髪上げとかなあかんの」
「……でも、慎吾さんの前やったら……♡」
茜が振り返って、自分から唇を重ねてきた。
ちゅ……ちゅぷ……れろ……
今度のキスは、さっきより積極的だった。 舌をねっとりと絡めながら、茜が俺の体に体重を預けてくる。
そのまま、二人で布団の上に崩れた。
俺は茜のブラウスのボタンを、一つずつ外していった。 白い肌が、少しずつ露わになる。
最後のボタンを外して、ブラウスを開くと—— 淡い藤色のブラに包まれた、茜の胸が現れた。
「……」
3年前より、少し大人びて見えた。 白い肌の谷間が、呼吸に合わせて上下している。
「あんまり、じっと見んといてって……♡」
「無理だ。綺麗すぎる」
ブラのホックに手を回して、外す。
ぷるん。
ホックが外れた瞬間、形のいい胸がこぼれ出した。 お椀型の、上向きの双丘。 頂点では、薄い桜色の乳首が、もう少し硬くなっている。
「触るぞ」
「……うん♡」
両手で、下から包み込むように揉む。
むにゅ……ふにゅっ……
「ん……っ♡ あ……♡」
吸い付くような、柔らかい感触。 指が沈み込んで、離すと、ぷるんと戻ってくる。 茜の呼吸が、だんだん荒くなっていく。
片方の胸の先に、唇を寄せた。 ちゅ。
「ひゃあっ♡ ……っ、慎吾さん……♡」
桜色の乳首を、口に含んで、舌先で転がす。
れろ……ちゅる……ちゅう……
「あっ……あっ……♡ それ、あかん……♡ 弱いの……♡」
茜の腰が、もじもじとくねる。 もう片方の乳首を、指でくりくりと弄ぶ。
くりっ♡ こりっ♡
「ひぁっ♡♡ 両方は……っ♡ だめぇ……♡」
茜の声が、どんどん甘くなっていく。 3年前の、俺だけが知ってる、茜の喘ぎ声だった。
口で片方を吸いながら、もう片方を指で。 交互に責めていると、茜の太ももが、すりすりと擦り合わされた。
俺は、空いた手を、茜のスカートの中へ滑り込ませた。 内ももをなぞりながら、奥へ。
「あっ……♡ そこ……♡」
ショーツの上から、そっと指を這わせる。 布越しでも分かるくらい、もう湿っていた。
くちゅ。
「やぁ……っ♡ 言わんといて……♡」
「もう、こんなに濡れてる」
「だって……っ♡ 慎吾さんに触られたら……♡ すぐ……♡」
スカートを脱がせ、藤色のショーツも、ゆっくり下ろした。 脱がせる途中で、ショーツと肌の間に、透明な蜜が糸を引いた。
つぅ……っ♡
「……っ、恥ずかし♡」
茜の秘所は、すでにとろとろに濡れていた。 指を一本、そっと割れ目に滑らせる。
ずちゅ……っ♡
「ひあぁっ♡♡」
茜が、大きく体を仰け反らせた。
「すごい……中、とろとろだ」
「あっ♡ だって……♡ ずっと、慎吾さんのこと……っ♡」
指をゆっくり出し入れすると、くちゅくちゅと、いやらしい水音が響く。
くちゅっ♡ くちゅくちゅっ♡
「あっ♡ あっ♡ きもちいぃ……♡」
中の、ざらっとした場所を指の腹で擦り上げる。 同時に、親指で、上の小さな突起をくるくると撫でた。
くりくりっ♡ ぐちゅっ♡
「ひぁっ♡♡ そこっ♡ そこ、両方は……っ♡♡ あかんあかんっ♡♡」
茜が、布団のシーツをぎゅっと握りしめた。 腰が、びくびくと跳ねる。
「やっ♡ イ……イっちゃう……っ♡♡ 指で、イっちゃうからぁ……っ♡♡」
「いいよ。イって」
二本目の指を追加して、激しくかき回す。 親指は、突起を執拗に転がし続ける。
ぐちゅぐちゅぐちゅっ♡♡♡
「あっ♡あっ♡あっ♡♡ もうっ♡ イクっ♡ イクイクっ♡♡——っっ♡♡♡」
びくびくびくっ♡♡♡
茜の体が、弓なりに反り返った。 じゅわっと、温かい蜜が指に溢れ出す。
「はぁっ……♡ はぁっ……♡ ……指だけで、こんな……っ♡」
茜が、とろんとした目で俺を見上げた。 上気した頬、乱れた黒髪、汗で光る白い肌。 たまらなくエロかった。
それから、茜がゆっくりと体を起こした。
「……今度は、うちが♡」
茜が、俺のベルトに手をかけた。 カチャ……ジー……
ズボンを下ろすと、下着の中で、もうパンパンに膨らんでいるのが、丸わかりだった。
「……ふふ。もう、こんなになって♡」
茜が、上目遣いで微笑む。 その目つきが、妙に色っぽかった。
「茜が、エロすぎるから」
「もう……そんなこと言わんといて♡」
茜が、下着のゴムに指をかけて、ゆっくり下ろした。
ぼろん。
「……わ♡ 相変わらず、おっきい♡」
茜が、両手でそっと俺のモノを包み込んだ。 細い指が、熱い肌に絡みつく。
しゅっ……しゅっ……
「ん……♡ 慎吾さんの、すごく硬い……♡」
ゆっくりと、手で扱き始める。 先端から、透明な液が滲み出した。
「……お口で、してもいい?♡」
「……ああ」
茜が、布団の上で俺の前に屈み込んだ。 さらりと、黒髪が顔にかかる。
ちゅ。先端に、キス。
「ん……♡ ちゅ……♡」
小さなキスを繰り返してから、茜が、ぱくっと先端を咥え込んだ。
ずぶ……ちゅぷ……♡
「っ……茜……」
温かくて、濡れていて、舌が、ねっとりと絡みついてくる。 茜が、ゆっくりと頭を上下させ始めた。
じゅぶっ♡ ちゅぷっ♡ じゅるるっ♡
「んぷっ……ちゅるっ……れろれろ……♡」
唇でしっかり圧をかけながら、舌先で裏筋をなぞってくる。 3年前より、ずっと上手くなっていた。
「くっ……気持ちいい……」
「ん……♡ もっと、してあげる……♡」
茜が、頬を窄めて吸い上げながら、ペースを上げる。 時々、先端をちゅぽんと抜いて、裏筋をべろーっと舐め上げ、また深く咥え直す。
じゅぷっ♡ ちゅぱっ♡ じゅるるるっ♡
「んっ……♡ 慎吾さんの味……♡ 懐かしい……♡」
潤んだ瞳で見上げながら、茜がさらに奥まで咥え込む。 喉の奥に、先端が当たる。
「っ……茜、それやばい……出る……」
「んっ……ぷはっ♡ ……だめ♡ まだ、イったらあかん♡」
茜が、ちゅぽんと口を離した。 唾液の糸が、つぅっと光る。
「……うちの中で、イってほしいの♡」
「……茜」
茜が、布団の上に仰向けになった。 両膝を、少し開く。
「……来て♡ 慎吾さん♡」
俺は、茜の脚の間に体を入れた。 とろとろに濡れた入り口に、先端を当てる。
熱い。とろっとした温かさが、伝わってくる。
「いくぞ、茜」
「うん……♡ 優しく、して……♡」
ずぷっ……♡
「んあぁっ♡♡♡」
先端が入った瞬間、茜が甲高い声を上げた。 きつい。すごくきつい。 なのに、とろとろに濡れているから、吸い込まれるように奥へ進んでいく。
ずず……ずぷぷっ……♡
「あぁっ……♡ おっきい……♡ 奥まで、来てる……っ♡」
「くっ……茜の中、めちゃくちゃ気持ちいい……」
「ほんと……?♡ うれしい……♡」
奥まで入りきった。 茜の中が、ぎゅうぎゅうと、俺を締め付けてくる。 3年ぶりの、茜の中だった。
「動くぞ」
「うん……♡」
ずちゅっ♡ ぱんっ♡
「ひぁっ♡」
ずちゅっ♡ ずちゅっ♡ ぱんっ♡ ぱんっ♡
「あっ♡ あっ♡ あっ♡ 慎吾さんっ♡」
正常位で、ゆっくりと腰を動かす。 引くときに、きゅっと締まって、入れるときに、とろっと受け入れてくれる。 その繰り返しが、信じられないくらい気持ちよかった。
ぱんっ♡ ぱんっ♡ ぱんっ♡
「あぁっ♡ やっ♡ そこっ♡ そこ、あかんのっ♡♡」
奥の方を突くと、茜が大きく体を跳ねさせた。
「そこ当たると……っ♡ 頭、真っ白になるぅ……っ♡♡」
「じゃあ、ここ……重点的に」
ぱんっ♡ ぱんっ♡ ずちゅっ♡ ぱんっ♡
「あっ♡あっ♡あっ♡あっ♡ だめっ♡ そこばっかりっ♡♡ おかしくなるぅ……っ♡♡」
茜の胸が、突くたびに、ぷるんぷるんと揺れている。 障子越しの街灯りに、汗で光る白い肌が浮かび上がる。 その光景が、エロすぎた。
雨の音が、二人の喘ぎと水音に、溶けていく。
ぱんぱんぱんっ♡♡♡
「ああっ♡♡ 慎吾さんっ♡ きもちいいっ♡♡ すごいのっ♡♡」
「俺も……茜の中、気持ちよすぎて……っ」
俺は、体を倒して、茜を抱きしめた。 胸と胸が、密着する。 茜の柔らかい胸が、ぷにゅっと潰れる。
「あっ♡♡ ぴったりくっついてる……っ♡ 慎吾さんの心臓の音、聞こえる……♡」
「茜……好きだ」
「っ♡♡ うちも……っ♡ 好き……♡ ずっと、好きやった……♡♡」
茜が、両腕を俺の背中に回して、ぎゅっとしがみついてきた。
ずちゅっ♡ ぱんっ♡ ぐちゅっ♡
「あっ♡あっ♡♡ もうっ♡ イきそ……っ♡ 慎吾さんと、一緒がいいっ♡♡」
「ああ……俺も……っ」
「中にっ♡ そのまま、中にちょうだいっ♡♡ うち、慎吾さんのがほしいのっ♡♡」
ぱんぱんぱんぱんっ♡♡♡
「あぁぁっ♡♡ イクっ♡ イクイクイクっ♡♡♡」
「っ……! 茜っ……!」
ずぷぷぷっ——♡♡♡
奥の奥で、全部、解き放った。
「あぁぁぁっ♡♡♡ きてるっ♡♡ 中に、いっぱいっ♡♡♡ あったかいのっ♡♡♡」
ドクドクと、最奥に注ぎ込む。 茜の中が、びくびくと痙攣して、搾り取るように締め付けてくる。
「はぁっ……♡ はぁっ……♡ すごい……♡ 3年ぶり、なのに……♡」
「はぁ……はぁ……ああ……最高だった……」
しばらく、繋がったまま、抱き合っていた。 茜の中が、まだびくびくと、余韻に震えている。 雨の音だけが、ずっと響いていた。
やがて、茜が「ふふっ」と笑った。
「……ねぇ、慎吾さん」
「ん?」
「……まだ、元気よね♡」
茜が、腰を小さくくいっと動かした。 確かに、まだ全然、萎えてなかった。
「3年分やもん♡ 一回じゃ……足りひん♡」
茜が、とろんとした目で、にっこり笑う。 それから、ゆっくりと、自分から体を起こして——
「今度は……うちが、上で♡」
繋がったまま、茜が俺の上に跨る形になった。 上から見下ろしてくる茜の姿は—— 乱れた黒髪。上気して紅潮した頬。汗で艶めく白い肌。 そして、重力で形を変える、たわわな胸。
「……すげえ景色」
「もう……えっち♡」
茜が、ゆっくりと腰を落としていく。 さっき出したばかりの中に、また奥まで、俺を呑み込んでいく。
ずぷぷっ♡♡
「んあぁっ♡♡ 自分で入れると……っ♡ すごい、感じる……っ♡♡」
「茜……上から見てると、エロすぎる……」
「見ててな♡ 慎吾さんのために……腰、振るから♡」
茜が、両手を俺の胸板につき、ゆっくりと腰を前後に動かし始めた。
ぐちゅっ♡ ぐちゅっ♡
「んっ♡ あっ♡ これ……奥に当たるぅ……っ♡♡」
茜の胸が、腰の動きに合わせて、ぷるんぷるんと上下に揺れている。 その光景が、視界いっぱいに広がる。
ぱんっ♡ ぱんっ♡ ぐちゅっ♡
「きもちいいっ♡ 自分で動くのっ♡ すごいのっ♡♡」
俺は、揺れる胸に手を伸ばして、鷲掴みにした。
むにゅんっ♡♡
「ひゃぁっ♡♡♡ おっぱいも……っ♡ そんなんされたら……っ♡♡」
胸を揉みながら、下から腰を突き上げる。
ぱんっ♡♡♡
「ひあぁっ♡♡♡ 下からもっ♡♡ 慎吾さんので、お腹の奥っ♡♡ ぐちゃぐちゃにされてるぅ……っ♡♡♡」
茜の腰の動きが、どんどん速くなっていく。 俺の下腹に、茜の蜜が、ぱちゃぱちゃと音を立てて滴る。
ぐちゅぐちゅぐちゅっ♡♡♡
「あああっ♡♡ これやばいっ♡♡ 自分で振ると、奥ガンガン当たるのぉっ♡♡♡」
俺は体を起こして、茜を抱きしめた。 対面座位の形になって、二人の体が、ぴったり密着する。
「あっ♡♡ また、くっついた……っ♡ 顔、近い……♡」
「茜。もう一回、言わせてくれ」
「俺と、やり直してほしい。今度こそ、離さないから」
茜の目に、また涙が浮かんだ。 でも、今度の涙は、嬉しさの涙だった。
「……うん♡ うん……っ♡ うち、慎吾さんと、やり直したい……っ♡♡」
俺は、茜に深くキスをした。
ちゅ……ちゅぷ……れろ……
繋がったまま、舌を絡め合う。 雨の音が、二人を包んでいる。
ずちゅっ♡ ぱんっ♡ ぐちゅっ♡
「んっ♡♡ ……んっ♡ もうっ♡ また、イっちゃうっ♡♡」
「俺も……もう……っ!」
「一緒にっ♡ 慎吾さんと、一緒にイきたいっ♡♡ 中にっ♡ また、いっぱい、ちょうだいっ♡♡♡」
ぱんぱんぱんぱんっ♡♡♡♡
「あぁぁぁっ♡♡♡ イクっ♡ イクイクイクっ♡♡♡♡ 中に、いっぱいっ♡♡♡♡♡」
「っ……!! 茜っ……!!」
ずぷぷぷぷっ——♡♡♡♡♡
二回目。 ドクドクと、奥の奥に、全部、注ぎ込んだ。
「あぁっ♡♡♡ また、中にっ♡♡♡ いっぱい、出てるぅ……っ♡♡♡」
茜の全身が、びくびくびくっと痙攣して、ぎゅうっと俺にしがみついてくる。 茜の中が、最後の一滴まで搾り取るように、収縮を繰り返した。
「はぁっ♡♡ はぁっ♡♡ ……すごかった……♡♡♡」
「はぁ……はぁ……ああ……」
しばらく、抱き合ったまま、動けなかった。 お互いの汗が、肌の上で混ざり合う。 心臓の音が、だんだん落ち着いてくる。
やがて、茜が、ゆっくりと俺の上から体を離した。
ずるっ♡
「んっ……♡ こんなに、いっぱい……♡」
繋がっていたところから、白いものが、とろりと溢れ出す。
「……ふふ。2回も、中に……♡」
茜が、俺の隣に倒れ込んで、胸に顔を埋めた。
「……ごめん。加減できなかった」
「謝らんといて♡ ……うち、嬉しかったもん♡ 全部、受け止めたかったから♡」
俺は、茜の乱れた髪を、そっと撫でた。
障子の外、雨は、いつのまにか小降りになっていた。
そのまま、二人で布団に潜り込んで、雨の音を聞きながら眠った。 茜の体温が、ずっと隣にあった。 3年間、ずっと足りなかったものが、そこにあった。
——
翌朝。
俺が目を覚ますと、隣に茜の姿はなかった。 障子越しに、朝の光が差し込んでいる。 雨は、すっかり上がっていた。
階下から、とんとん、と包丁の音がする。
俺は服を着て、軋む階段を下りた。
カウンターの中で、茜が、仕込みをしていた。 割烹着を着て、髪を結い上げて。 昨日の女将の姿だけど、表情は、ずっと柔らかかった。
「……おはよ♡ よう寝てはったね」
「おはよう。何してんだ?」
「仕込み。今日も店、開けなあかんから」
俺は、カウンターの中に回り込んで、茜の隣に立った。 まな板の上には、大根が一本。
「手伝うよ。何すればいい?」
「ふふ。じゃあ、そこの大根、桂剥きできる?」
「……無理だな」
「やと思った♡ じゃあ、見てて」
茜が、すっと包丁を構えた。 左手で大根を回しながら、右手の包丁で、薄く、薄く、剥いていく。 透けるくらい薄い大根が、途切れることなく、するすると伸びていく。
「……すげえ」
「3年、これだけは死ぬほど練習したから♡」
横顔を、見ていた。 集中している茜の横顔。 睫毛の影が、頬に落ちている。 3年前より、ずっと、綺麗になっていた。
剥き終わって、茜が顔を上げた。 俺がじっと見ていたのに気づいて、ふっと笑う。
「……なに、じろじろ見て♡」
「いや。綺麗になったなと思って」
「……もう♡ 朝から、そういうこと言わんといて♡」
茜が、頬を赤らめて、包丁を置いた。 それから、まっすぐ俺を見た。
「……ねぇ、慎吾さん」
「ん?」
茜が、少し言いにくそうに、でも、はっきりと口を開いた。
「これからは……毎日、来て」
「毎日?」
「うん。……でも、お客さんとしてじゃなくて」
茜が、俺の手を、両手で握った。 3年前と同じ、温かい手。 昔より少し、料理で荒れた、働き者の手。
「お客さんやなくて……うちの人として、毎日、来て♡」
その言葉に、3年分の想いが、全部詰まっていた。
俺は、茜の手を、握り返した。
「……ああ。毎日来る」
「お客じゃなくて、お前の——彼氏として」
茜の目に、また涙が滲んだ。 でも、口元は、満面の笑みだった。
「……っ♡ うん♡ うん……っ♡」
俺は、茜を抱き寄せて、キスをした。
ちゅ。
割烹着の上から、茜の体温が伝わってくる。
「……ふふ。仕込み、終わらへんやん♡」
「じゃあ、手伝う。彼氏として」
「……それ、戦力になる?♡」
「ならないかもな」
「もう♡」
茜が、声を上げて笑った。 京の訛りの混じった、柔らかい笑い声。 3年前、俺が一番好きだった笑い方だった。
行きつけの居酒屋の、新しい女将。 それは3年前に、俺がかっこつけて送り出した、元カノだった。
遠回りした。 3年も、無駄にした。
でも—— こうしてまた、同じカウンターに立てたなら。 それで、よかったんだと思う。
その日の夜。 俺は、お客としてじゃなく、店仕舞いを手伝う「うちの人」として、 カウンターの内側で、茜の隣に立っていた。
「……慎吾さん。暖簾、下ろしてくれる?♡」
「おう」
「さわたり」の暖簾を、内側に下ろす。 振り返ると、茜が、燗を二つ、つけて待っていた。
「……お疲れさま♡ 飲み直そ♡」
ちん、と猪口を合わせる。
雨上がりの神田の夜は、静かで、暖かかった。
― 終 ―