俺、火村啓太、26歳。一人でSaaSを作って運営している、いわゆる一人会社の社長だ。
去年から渋谷の外れにある起業家向けシェアハウスに住んでいる。 1階がコワーキングスペース、2階と3階が個室。住人は全員、何かしらの事業をやっている連中だった。
技術力は中の上。でも行動力だけは天井知らずだ。コードの綺麗さで負けても、出荷スピードでは誰にも負けない。それが俺の流儀だった。
そのコワーキングの、いちばん奥の隅。そこにいつも、同じ席に陣取る女がいた。
九条芹奈、25歳。フリーランスのフルスタックエンジニア。 肩までの黒髪を無造作に結んで、大きめのパーカーで、デュアルモニターに向かっている。 机の端にはエナジードリンクの缶が、いつも2本か3本。
無口だった。挨拶以外でまともに喋ったことがない。 でも、コードを書くスピードがおかしかった。チラ見しただけで、こいつ次元が違う、とわかる。
(綺麗な人だよな……でも、話しかけたら睨まれそう)
それが、芹奈さんに対する俺のすべての印象だった。……あの夜までは。
10月の、火曜の深夜。 俺は2階の自室ではなく、コワーキングの真ん中の席で機能追加の作業をしていた。 住人はもうほとんど寝ていて、起きているのは隅の芹奈さんと、俺だけ。
午前2時を回った頃、スマホとPCが同時に、けたたましく鳴り出した。
ピロピロピロッ——ピロピロピロッ——
監視サービスからのアラート。それも一通じゃない。画面の通知が、ぶわっと津波みたいに積み上がっていく。
(え……嘘だろ)
ダッシュボードを開く。エラーレートが真っ赤。APIの応答が全部500。ユーザーが誰一人ログインできていない。
(大規模障害だ。全断。最悪のやつ)
血の気が引いた。 心臓がばくばくいって、指が震える。一人会社の弱点が全部出る。隣に頼れる人間が、いない。
アラート音が鳴り止まないまま、ログを開いては閉じを繰り返す。 焦りで頭が回らない。原因がどこにあるのかすら、見当がつかない。
そのときだった。 奥の席で、がたっと椅子が引かれる音がした。 イヤホンを片方外した芹奈さんが、こっちをじっと見ている。
「……うるさい」
「あ、ごめん、アラート切ります、今すぐ……」 「そうじゃなくて」
芹奈さんが立ち上がって、ノートPCを抱えたまま、俺の隣の席にすとんと座った。 ふわっと、エナジードリンクの甘い匂いと、シャンプーの匂い。
「……顔。死にそうな顔してる」
「いや、実際死にそうで」 「……見せて」
(え)
「ログ。見せて」
俺は反射的に画面を芹奈さんの方に向けた。 芹奈さんの目が、ぐっと細くなる。スクロールするスピードが速い。
「アクセス急増してる?」
「いや、トラフィックはいつも通り……」 「じゃあ内部。DBは?」 「DBは……あ、コネクション数が張り付いてる」
「それ、N+1だね」
「え」 「どっかのエンドポイントでループの中からクエリ投げてる。 さっきデプロイした?」 「……した。23時に、一件」
芹奈さんが、ふっと鼻で笑った。
「犯人それ」
(……かっこよ)
不覚にもそう思ってしまった。障害対応の真っ最中に。
そこからの芹奈さんは、まるで別人だった。無口なんかじゃない。指示が的確で、無駄がなくて、容赦がない。
「直近のデプロイのdiff、出して」
「これです」 「……ここ。一覧APIに項目追加したでしょ。 で、その項目を取るために、ループの中で個別にユーザー情報を引いてる」 「うわ、ほんとだ……」 「1リクエストで数百クエリ飛んでる。それがアクセス全部で乗算されて、コネクション枯渇。 全断の正体これ」
俺は唖然とした。一時間かけても見つけられなかったものを、芹奈さんは三分で射抜いた。
「ホットフィックス書ける? まずN+1殺す」
「あ、はい、JOINで一発で取る形に……」 「うん。あとコネクションプール、一時的に上げて時間稼ぎ。 私、ロールバックの準備しとくから、ダメだったらすぐ戻す」 「ロールバックも……」 「二段構え。本番直すときは、保険かけてからやる」
(この人、修羅場慣れしてる)
俺がコードを書く横で、芹奈さんは別のターミナルを開いて、淡々と退路を整えていく。二人で、一つの障害に向き合っている。 さっきまであんなに心細かったのに、隣に芹奈さんがいるだけで、嘘みたいに手が動いた。
3時。修正コードが書けた。 芹奈さんがレビューする。「ここ、nullのとき落ちる」と一箇所だけ指摘されて、直す。
「……OK。デプロイして」
「いきます」
ステージングで確認。エラーが出ない。 息を止めて、本番にデプロイのボタンを押す。
……アラートの数が、減り始めた。
「……減ってる」
「うん」 「エラーレート、下がってきた……戻ってる……戻ってきてる……!」
4時過ぎ、グラフがついに底を打った。真っ赤だったダッシュボードが、一つ、また一つと緑に変わっていく。
5時。全リージョン、応答正常。500エラー、ゼロ。
「……復旧、しました」
俺は椅子の背もたれに、どさっと身体を預けた。 全身から力が抜ける。汗で背中がびっしょりだった。
芹奈さんが、ふうっと長く息を吐いて、エナジードリンクを一気に飲み干した。 そして——無言で、こっちに手のひらを上げた。
ハイタッチ。
「……え」
「……早く」
ぱちん、と乾いた音が、夜明け前のコワーキングに響いた。
手のひらが触れた、その一瞬。 窓の外がうっすら白み始めていて、芹奈さんの横顔が朝の光に縁取られていた。 疲れ切った顔で、でも少しだけ口角が上がっていて。
(……あ)
そのとき、たぶん、何かが始まったんだと思う。
俺たちは近所の、朝5時からやっている町中華に入った。 「お礼に奢らせてください」と言ったら、芹奈さんは少し迷って、こくんと頷いた。
朝ラーメンを二つ。湯気の向こうで、芹奈さんがずるずると麺をすすっている。 徹夜明けのラーメンが、こんなに沁みるとは思わなかった。
「ほんと、助かりました。芹奈さんいなかったら、たぶん朝までに直せてなかった」
「……まあ。あれくらいなら」 「あれくらいって。神業でしたよ」 「……N+1は、現場で何回も殺してきたから。身体が覚えてるだけ」
芹奈さんがレンゲでスープをすくいながら、ぽつりと言った。
「障害対応、ちょっと楽しかった」
「え」 「……一人でやってると、こういうの、ぜんぶ一人で抱えるでしょ。 久しぶりだった。誰かと一緒に火を消すの」
そう言って、芹奈さんが、ふっと笑った。 無口でクールな美人エンジニアが、初めて見せた、やわらかい笑顔だった。
(……やば。心臓が)
ラーメンを噴き出しそうになって、慌てて水を飲んだ。
その日から、俺たちの距離は少しずつ変わった。 深夜のコワーキングで、芹奈さんが俺の隣の席に座るようになった。最初は「技術相談」という口実で。
「芹奈さん、このアーキテクチャ、どう思います?」
「……それ、マイクロサービスにする規模じゃない。モノリスで十分」 「やっぱそうですよね」 「分割は、痛くなってからでいい。最初から分けると、ぜんぶが遅くなる」
最初はそれだけだった。技術用語直球の、短いやり取り。 でも夜が深くなるにつれて、芹奈さんは少しずつ饒舌になっていった。
「火村くんのサービス、コードは荒いけど、出すのが速い」
「うっ。荒いは余計です」 「褒めてる。半分は」 「半分かよ」 「……でも、速いのは才能。私、考えすぎて出せないタイプだから」
エナジードリンクを並べて二人で長話をする。気づけば、それが毎晩の習慣になっていた。
ある夜、芹奈さんが珍しく、自分のことを話した。 モニターの光に照らされた横顔が、いつもより少しだけ無防備だった。
「私、前にスタートアップにいたんだ」
「へえ。エンジニアで?」 「最初のエンジニア。CTOみたいなことしてた。……二年で潰れたけど」
芹奈さんの指が、キーボードの上で止まった。
「資金が尽きて、メンバーが一人ずつ抜けてって。最後、私が一人でサーバー止めた。
代表とは、その後、連絡取ってない」 「……それは、きついな」 「うん。だから、フリーランスやってる。 業務委託なら、いつでも切れるし、切られる前提だし。 ……人と組むの、怖いんだよね」
ぽつりと落ちた、その本音。 いつもの直球な口調が、そのときだけ、少し震えていた。
「怖い、か」
「……笑う?」 「笑わないですよ。むしろ、めちゃくちゃわかる」
俺は正直に言った。 「俺が一人でやってんのも、半分はそれです。誰かと組んで、揉めて、壊れるのが怖い。だから全部一人で抱えてる。 ……この前の障害も、本当は誰かに頼りたかったのに、頼り方を忘れてた」
芹奈さんが、ちらっとこっちを見た。
「……あの夜、頼ってくれたじゃん」
「あれは芹奈さんが勝手に隣に来たから」 「……うるさい」
そう言って、芹奈さんは黙って、タイピングの速度を上げた。かたかたかたっ、と音が急に速くなる。
(……あ、これ。照れてるときのやつだ)
最近わかってきた。芹奈さんは、照れると黙る。そして、タイピングが異様に速くなる。 無口の鎧の下に、ちゃんと体温がある人だった。
12月。俺のサービスにとって、一年でいちばん大事な日が来た。 大型アップデートのリリース日。新機能を全部入れて、料金プランも刷新する。ここで失敗したら、一年が水の泡になる。
その日、俺は朝からコワーキングに籠もって、緊張で何度も同じ手順書を読み返していた。 夜、芹奈さんが、エナジードリンクを二本持って、俺の隣にすとんと座った。
「今日、リリースでしょ」
「……なんで知ってるんですか」 「ずっと、その手順書ばっか見てたから」
そう言って、芹奈さんは自分のノートPCを開いた。
「今日だけ、手伝う」
「え、いいんですか、業務委託の契約も結んでないのに」 「……今日だけ。お金もいらない。 あの障害の、リベンジ。最後まで見届けたいだけ」
(……この人)
俺たちは、二人で徹夜することにした。 リリース前のチェックリストを、芹奈さんと一項目ずつ潰していく。
「マイグレーション、ロールバック手順は?」
「ここに」 「決済まわりのテスト、本番モードで一回通した?」 「……あ、ステージングだけです」 「通して。お金が絡むところで事故ったら、信用がゼロになる」 「はい!」
芹奈さんがいるだけで、抜け落ちが全部埋まっていく。 俺の「速さ」と、芹奈さんの「堅さ」が噛み合って、チェックリストがどんどん緑になっていく。
午前0時。リリースの時間。新バージョンを、本番にデプロイする。
「……いきます」
「うん。いけ」
ぽちっ。
デプロイが走る。ビルド、ヘルスチェック、切り替え。 心臓がうるさい。芹奈さんも、隣で身を乗り出してダッシュボードを睨んでいる。
新バージョン、起動。エラーレート、上がらない。新機能、正常稼働。 そして——アップグレードプランへの課金が、ぽつ、ぽつ、と入り始めた。
「……決済、通った」
「うん」 「課金、来てる……一件、二件……増えてる……」
リアルタイムの売上グラフが、右肩上がりに伸びていく。 ずっと平らだった線が、今夜、初めて、はっきりと上を向いた。
「芹奈さん、見て、これ……上がってる……!」
「……すごい。火村くんのサービス、ちゃんと、お金になってる」
数字がぐんと跳ねた瞬間だった。 俺は思わず隣を向いた。芹奈さんも、こっちを向いた。 どっちが先だったか、わからない。気づいたら、俺たちは抱き合っていた。
「やった……やりましたよ……!」
「……うん、やったね」
芹奈さんの細い腕が、俺の背中に回っている。パーカー越しの体温と、心臓の鼓動が、伝わってくる。
——そこで、ふっと、音が止んだ。 歓声みたいだった空気が、急に、静かになる。 腕の中の芹奈さんが、顔を上げて俺を見た。徹夜で疲れた目が潤んで、唇が、少しだけ開いている。
(……あ、これは)
頭で考えるより先に、身体が動いていた。 芹奈さんの後頭部に手を添えて、ゆっくり、唇を重ねる。
ちゅ……
触れただけの、やわらかいキスだった。
芹奈さんは、逃げなかった。むしろ、俺のパーカーの裾を、きゅっと掴んできた。
少しだけ顔を離すと、芹奈さんが上目遣いで俺を見て、小さく言った。
「……打ち上げ、しよ」
「え」 「二人で。私の部屋で」
(……心臓が、もたない)
夜明け前のコワーキングを抜けて、俺たちは3階の芹奈さんの部屋に上がった。 俺がこのシェアハウスに住んで一年、初めて入る、彼女の領域だった。
ドアを開けて、目を疑った。
机の上に、自作キーボードが二つ。その横に、家庭用とは思えないサイズのサーバーラックが鎮座している。 ファンの低い唸りと、青いLEDの光。エナジードリンクの空き缶が、几帳面に整列していた。
「……すごい部屋ですね。サーバー、家にあるんだ」
「……自宅で検証回したいから。火村くんのサービスより、たぶんうちのほうが堅い」 「張り合わないでくださいよ」
芹奈さんが、ふっと笑って、ベッドに腰を下ろす。青いLEDが、彼女の白い肌を淡く照らしている。
「……火村くん」
「はい」 「来て」
俺はベッドに上がって、芹奈さんの隣に座った。向き合うと、また俺のパーカーの裾を掴んでくる。
「芹奈さん」
「……名前。芹奈でいい」 「……芹奈」 「……うん♡」
名前を呼んだだけで、芹奈の頬がふわっと赤くなった。 俺は、その頬に手を添えて、もう一度キスをした。
ちゅ……んっ……
さっきより深い。舌で唇をなぞると、芹奈の口がそっと開いた。
れろ……ちゅぷ……ちゅるっ…… 「ん……♡ んむっ……♡」
芹奈の舌が、おずおずと俺の舌に絡んでくる。無口な彼女が、キスの中で初めて出した甘い声。
ちゅぷ……ちゅるるっ…… 「はぁ……♡ 火村くん……♡」
俺は芹奈をベッドに、そっと押し倒した。 青いLEDの中で、潤んだ瞳、上気した頬、濡れた唇が、色っぽく光る。
「……可愛い」
「……言わないで♡ そういうの、慣れてない♡」 「俺も、こんな綺麗な人、初めてだから」 「……ばか♡」
照れた芹奈が、ぱしっと俺の胸を叩いた。でも、その手はすぐに、また俺のパーカーを掴み直す。
ジッパーに手をかけると、芹奈が、こくんと頷いた。 脱がせると、下は黒いキャミソール。鎖骨のラインが、青い光に浮かび上がる。
キャミの肩紐を、指でそっとずらす。
「ひゃっ……♡ 冷たい……♡」
「ごめん」 「……ううん。もっと♡」
キャミ越しに、胸をやわく包む。ふにっ。 「あっ……♡」 手のひらに収まる、形のいい胸。先端が、もう小さく尖っている。
キャミをめくり上げると、ブラはしていなかった。白い肌に、薄いピンクの乳首。
「ノーブラだったんだ」
「……だって、部屋着だし♡ こうなると思ってなかったし……♡」
乳首を、指の腹でくりくりと転がす。 こりっ……こりこりっ…… 「んっ……♡♡ そこ、だめ……♡」びくっ、と芹奈の身体が跳ねる。
左を指で弄りながら、右の乳首に唇を近づける。 ちゅっ……れろ……ちゅぱっ…… 「ひあっ……♡♡ 吸っちゃ……♡♡」
芹奈が、手の甲で口を押さえた。(この声、ずるいな……)
左右交互に吸いながら、空いた手でもう片方を揉みしだく。 「あっ♡ んっ♡ はぁっ♡♡ 火村くんっ……♡♡」
芹奈の息が、どんどん荒くなる。俺の手が、彼女のショートパンツの腰に触れた。
「下も、いい?」
こくん、と頷く。
ショートパンツを下ろすと、黒いシンプルなショーツ。中心が、もう、じわっと湿っている。
「濡れてる」
「言わないで……♡」
ショーツの上から、すじに沿って、指を上下に滑らせる。 くちゅ……くちゅ…… 「んっ♡ あっ♡ んぅっ……♡♡」
ショーツを脱がすと、薄い茂みの下に、ぷっくりと熱を持った花弁。蜜が、青い光にてらてら光る。
花弁を、指でそっと開く。ぷちゅ…… 「ひぁっ……♡♡」
中は、火傷しそうに熱くて、ぬるぬるだった。 上の方の小さな突起を探り当てて——くりっ。 「んんっ♡♡♡」腰が、びくんと跳ねた。
クリをくりくりと刺激しながら、中指をゆっくり沈める。 ずぷっ…… 「んああっ♡♡♡」
きゅうっと、指を締め付けてくる。 ぐちゅ……ぐちゅぐちゅ…… 「あっ♡ 指っ♡ 入ってる……♡♡」
指を曲げて、上の壁の、少しざらついた場所をこする。ぐりぐりっ。 「ひぃっ♡♡♡ そこっ♡♡ やばいっ……♡♡♡」
そこを重点的に刺激しながら、親指でクリも同時に転がす。 「あっ♡♡ 両方は、だめっ♡♡♡」
芹奈の身体が、ぶるぶると震え出す。お腹が、ぴくぴくと痙攣する。 「いくっ♡♡♡ もう、いくっ……♡♡♡♡」
びくんっ♡♡♡♡ きゅうぅぅっと指を締め付けて、じゅわっと愛液が溢れ、俺の手を濡らした。
「はぁ……♡ はぁ……♡♡」
力が抜けた芹奈が、ベッドにくたっと沈む。指を、ゆっくり抜く。ぬぷっ……
「……すごかった♡」
「火村くんも……気持ちよくなって♡」
芹奈が身体を起こして、俺のベルトに手をかけた。 タイピングで鍛えた指が、思いのほか器用に、ボタンとジッパーを外していく。
ボクサーの上から触れて、芹奈が、くすっと笑った。 「……大きい♡」
ボクサーを下ろすと、ぶるんっと飛び出した。 「わっ……♡♡ すごい……♡」
細くて長い指が、根元からゆっくり握る。きゅっ。 「気持ちいい?」 「……めちゃくちゃ」
ゆっくりと、上下に擦り上げる。しゅっ……しゅっ…… 芹奈が顔を近づけて、先端にちゅっとキスをした。 「びくって動いた♡」
舌を出して、ぺろぺろと舐め始める。 れろ……ちゅる…… カリの段差を、舌先で重点的に。裏筋を、下から上へ。 「……やべ」
芹奈が、口を大きく開けて咥え込んだ。ずぷっ…… ちゅぱっ……じゅるっ……ちゅぷちゅぷ…… 「んっ♡ んむっ♡」
無口な彼女が、夢中で頭を上下に動かしている。そのギャップに、頭がくらくらした。
「待って。芹奈も、もっと気持ちよくしたい」
「……ん♡」
俺は芹奈をベッドに横たえて、脚の間に身体を入れた。 さっきイったばかりのそこは、とろとろに濡れている。
「芹奈、入れていい?」
「……うん♡ 来て♡」
先端を、入り口にあてがう。ぬるっ。たっぷりの蜜で、ぬるぬるだ。
「いくよ」
「……ゆっくり♡」
ずぷっ…… 「ぁああっ♡♡♡♡」
熱い。きゅうぅっと、奥まで締め付けてくる。 「芹奈っ……中、すごい……」 「おっきい……♡♡ 入ってくる……♡♡♡」
奥まで、ゆっくり押し込む。 ずず……ずずずっ…… 「んんっ♡♡♡ 奥っ♡♡ 当たってる……♡♡♡♡」
最奥まで届いた。隙間なく、包み込まれている。
「動くよ」
ずちゅっ♡ ずちゅっ♡♡ 「あっ♡♡ あっ♡♡ んっ♡♡♡」
ぱんっ♡ ぱんっ♡ ぱんぱんっ♡♡ リズムを作って、腰を打ち付ける。
「火村くんっ♡♡ 気持ちいいっ♡♡♡」
「芹奈の中も、やばい……」
ぱんぱんぱんっ♡♡♡ 動きが、だんだん速くなっていく。 ぐちゅっ♡ ぬちゅっ♡ ぱんっ♡♡ 「あんっ♡♡ 奥っ♡♡ 奥に当たるっ♡♡♡」
芹奈の脚が、俺の腰に巻きついてきた。もっと奥へ、と求めるように。 「もっとっ♡♡ 強くしてっ♡♡♡」
ぱんっぱんっぱんっぱんっ♡♡♡♡ サーバーの低い唸りと、肌のぶつかる音と、芹奈の甘い声が、部屋に重なる。
「声、廊下に響いちゃう……♡♡♡」
「いいよ。聞かせて」 「やだっ♡♡♡ でも、止まらないっ♡♡♡♡」
ぱんぱんぱんぱんぱんっ♡♡♡♡♡ 「イくっ♡♡♡♡ もう、イっちゃうっ♡♡♡♡♡」 「俺も……芹奈、中に出すぞ……!」 「出してっ♡♡♡♡ 中にっ♡♡♡♡ ぜんぶっ♡♡♡♡♡」
ずんっずんっずんっ♡♡♡ 「イクっ♡♡♡♡♡」 「出るっ……!」
びゅるっ♡♡ びゅるるっ♡♡♡ どくどくっ♡♡♡♡ 「んんんっ♡♡♡♡♡♡」
芹奈の奥に、熱が、どくどくと注ぎ込まれる。 身体をびくびく痙攣させながら、きゅうぅっと締め付けてくる。
「はぁ……♡♡ あったかい……♡♡♡♡」
虚ろな目で、芹奈が、幸せそうに微笑んだ。
ちゅっ♡ 「芹奈……最高だった……」 「私も……♡♡ すごい、気持ちよかった……♡♡♡」
繋がったまま、しばらくキスを交わした。 でも、芹奈の中で、俺の熱はまだ収まっていない。むしろ、彼女の中で、再び硬くなっていく。
「……まだ、元気なの♡」
「芹奈が可愛すぎるから」 「……っ♡♡♡」
照れた芹奈が、黙って俺の胸を押し返す。そして、繋がったまま、ゆっくりと上に乗ってくる。
「……今度は、私が、上♡」
ずるっ……ずぷっ♡♡ 「んっ♡♡♡ この体勢……奥まで、来る……♡♡♡♡」
芹奈が背筋を伸ばして、俺を見下ろした。青いLEDが、彼女のシルエットを淡く縁取っている。 結んでいた髪が、いつのまにか解けて、肩に流れていた。
(……エンジニアの顔と、ぜんぜん違う)
芹奈が、腰をゆっくりと上下に動かし始める。 ずちゅっ♡♡ ずちゅっ♡♡ 「あっ♡♡ 自分で動くの、すごい♡♡♡♡」
胸が、動きに合わせて、たゆんたゆんと揺れる。 俺は手を伸ばして、揺れる胸を下から掴んだ。もにゅっ♡♡ 「ひゃっ♡♡♡ 揉みながらっ♡♡♡ ずるいっ♡♡♡♡」
芹奈の腰が、だんだん大胆になっていく。気持ちいいポイントを探すように、ぐりぐりと腰を回す。 ぱんっ♡♡ ぱんぱんぱんっ♡♡♡
「あっ♡♡♡♡ ここっ♡♡♡♡ ここ、当たるっ♡♡♡♡♡」
見つけたらしい。そこを擦り付けるように、前後に激しく動き出す。 ずちゅっずちゅっずちゅっ♡♡♡♡ 「気持ちいいっ♡♡♡♡ 火村くんのっ♡♡♡♡ 最高っ♡♡♡♡♡」
俺の胸に両手をついて、芹奈が腰を打ち付ける。 ぱんっぱんっぱんっぱんっ♡♡♡♡♡ 「また来るっ♡♡♡♡ イっちゃうっ♡♡♡♡♡」 「俺も、もう……!」 「一緒にっ♡♡♡♡♡ 一緒に、イこっ♡♡♡♡♡♡」
ぱんぱんぱんぱんぱんっ♡♡♡♡♡♡ 「イくっ♡♡♡♡♡♡ イくイくイクっ♡♡♡♡♡♡♡」 「芹奈っ……!中に、出すっ……!」
俺は芹奈の腰をがっしり掴んで、下から深く突き上げた。 ずんっ♡♡♡♡
びゅるるっ♡♡♡♡ どくどくどくっ♡♡♡♡♡♡ 「んんんんっ♡♡♡♡♡♡♡♡」
二回目を、さっきよりさらに奥に、どくどくと注ぎ込む。 芹奈が、ぶるぶると震えて、がくんと俺の上に倒れ込んできた。
「はぁ……♡♡♡ すごかった……♡♡♡♡♡」
汗ばんだ肌を、俺の胸に押し付けてくる。心臓の鼓動が、二つ、重なって聞こえる。
「火村くん……♡」
「ん?」 「……一人で火、消さなくていいんだ♡」 「……うん」 「私が、隣にいるから♡」
芹奈が、ぎゅっと抱きついてきた。 俺も、その背中を抱きしめ返す。 サーバーの低い唸りだけが、二人の部屋に響いていた。
気がつくと、カーテンの隙間から白い光が差し込んでいた。 青かったLEDに、朝の光が混じっている。俺たちは、いつのまにか芹奈のベッドで眠っていたらしい。
腕の中で、芹奈がすやすやと眠っている。 無防備な寝顔が、無口でクールな普段とは、まるで別人だった。 (昨日のあれ、夢じゃないよな……)腕の中の温もりが、夢じゃないことを証明している。
芹奈のまつげが、ぴくっと動いた。ゆっくりと目が開いて、とろんとした目が俺と合う。
「……おはよう」
「……おはよ♡」 照れくさそうに、芹奈が微笑む。昨夜の大胆さは、どこへやら。耳が、真っ赤だった。
そして芹奈は、もぞもぞと身体を起こして、枕元からノートPCを引き寄せた。
「え、朝からコード書くの?」
「……違う」
芹奈が、かたかたかたっ、と何かをタイプし始める。照れたときの、あの速いタイピングだ。 しばらくして、芹奈が画面をくるっと、俺の方に向けた。
そこには、契約書のテンプレートが開かれていた。 タイトルは「業務委託契約書」。……だったものに、二重線が引かれて、上から書き換えられている。
「……契約、改定して」
「え」 「業務委託じゃなくて——共同創業者で」
(……は?)
芹奈が、画面を指でさす。 「持ち分はあとで話し合う。私、CTOやる。 火村くんが出して、私が堅くする。あの障害の夜と、リリースの夜みたいに」
「いや、待って、芹奈さん、人と組むの怖いって……」
「怖い」 「じゃあ……」 「怖いけど。火村くんとなら、火を消せるってわかったから」
芹奈の頬が、また赤くなる。 そして、タイピングの手を止めて、こっちをまっすぐ見た。
「……あと」
「あと?」 「彼女でも♡」
(……っ)
芹奈が、画面の隅を指さす。 そこには、契約書の備考欄に、小さく一行、こう書き足されていた。
——「乙は甲の彼女とする。両者の熱意ある合意に基づく。」
「契約書に書くことかよ、それ」
「……だって。口で言うの、慣れてない♡ コードと契約書のほうが、私、正直になれる」
俺は思わず吹き出して、笑いながら芹奈の頬に手を当てた。
「了解です。契約、改定で。
共同創業者で、CTOで、彼女で。全部、まとめてサインします」 「……うん♡」 「ただし、一個だけ条件があって。業務委託より、ずっと長い契約にしてほしい」 「……ばか♡♡」
芹奈が、ぽろっと目から涙をこぼした。でも、とびきりの笑顔だった。
「無期限でいいよ♡♡ 火村くんの会社と、火村くんの、両方♡♡♡」
俺は芹奈を抱き寄せて、朝の光の中で、もう一度キスをした。穏やかで、あたたかい、契約成立のキス。
「他の住人にバレたら、やばくない?」
「……あー♡ 昨日、けっこう声、出てたかも♡」 「3階まで聞こえてたら終わりだな」 「それは火村くんが、私をイかせすぎるのが悪い♡♡」 「契約書には書かないでくれよ、それ」 「……備考欄に書いとく♡♡♡」
(この人で、よかった)
二人でベッドから出て、芹奈の部屋のサーバーの電源を確認する。 青いLEDが、安定して光っている。俺たちの会社の、最初の資産だ。
「朝ごはん、あの町中華、また行く?」
「……行く。打ち上げの、二次会♡」 「障害の夜のとこか」 「うん。あそこ、私たちの始まりの店だから♡」
笑い合いながら、二人で身支度をする。共同創業者で、CTOで、彼女。 肩書きが三つに増えた芹奈が、俺の隣で、エナジードリンクを一本、鞄に詰めた。
「それ、朝から飲むの?」
「……創業初日だし♡ 景気づけ♡」 「俺の会社、ブラックにならない?」 「ならないようにするのが、CTOの仕事♡」
「……いい会社になりそうだ」
俺がそう呟くと、芹奈が、ふっと笑って、こっちの手のひらに、自分の手のひらを上げた。
あの夜と、同じ。 ぱちん、と乾いた音が、朝の部屋に響いた。
「創業、おめでとう」
「……うん♡ これから、よろしく♡♡♡」
無口で、超優秀で、人と組むのを怖がっていた美人エンジニアは、 共同創業者で、CTOで——世界で一番、頼れる彼女になった。
徹夜の障害対応に、感謝。 あの朝5時のハイタッチから、俺たちの会社と、俺たちの関係は、始まったんだ。
― 終 ―