屋久島の縄文杉ツアーでペアになった美人と下山後の民宿で結ばれた話

2026.06.12NEW

23分で読了

午前四時。

俺、早乙女亘(さおとめ わたる)は、まだ星の残る空の下で送迎バスを待っていた。

二十八歳。商社で営業をやっている。半年続いた案件がようやく片付いて、上司が半ば強引に押し込んでくれたリフレッシュ休暇。その消化先に選んだのが、屋久島だった。

(体力には自信あるし、縄文杉くらい一回見ておくか)

そんな軽いノリでツアーを予約した。往復十時間のトレッキングだと案内に書いてあったけど、毎週ジムに通っている身だ。なんとかなるだろうと思っていた。

五月の屋久島。本州はもう初夏でも、ここの早朝はひんやりして、長袖一枚だと少し肌寒い。ヘッドライトを首に巻いて、リュックを背負い直す。

やがて白いマイクロバスが宿の前に滑り込んできた。乗り込むと、もう半分くらい席が埋まっている。みんな眠そうな顔だ。俺は後ろから三列目の窓際に腰を下ろした。エンジンの振動が体に伝わってくる。次の宿で数人乗せるらしく、バスはまた走り出した。

数分後。

通路を挟んだ向こうではなく、俺の真隣の席に、ひとりの女性が座った。

(……あ)

寝起きなのか、目をこすりながら小さくあくびをしている。

ショートボブの黒髪。化粧っ気はほとんどないのに、肌が白くて、横顔の輪郭がきれいだ。鼻筋がすっと通っていて、まつげが長い。グレーのトレッキングウェアの上からでも、ほっそりした体つきがわかる。

目が合った。彼女が小さく会釈する。

「……おはようございます」

「おはようございます。眠いですね、こんな時間」

「ですね。四時起きとか久しぶりすぎて」

くすっと笑って、彼女はまた窓の外に視線を戻した。それきり二人とも黙る。

バスは真っ暗な山道を登っていく。ヘッドライトの光だけが、深い森の輪郭を切り取っている。

(隣、めちゃくちゃ綺麗な人だな……)

そう思いながら、俺も窓に頭を預けて目を閉じた。

登山口の駐車場に着いたのは、空がうっすら白み始めた頃だった。バスを降りると、ひんやりした空気と土の匂いが体を包む。参加者は十五人ほど。みんなで準備運動をして、ガイドの説明を聞く。日に焼けた中年のガイドが、にこやかに口を開いた。

「えー、今日は長丁場です。安全のために、二人一組のバディを組んでもらいます。お互いの体調を気にかけ合ってください」

ガイドが参加者を見回して、ぱっぱとペアを指名していく。そして、俺のところで足を止めた。

「お兄さんと……はい、そこのお姉さん。お二人ペアね」

指さされたのは──さっきバスで隣だった、あの女性だった。

「あ」

「……また一緒ですね」

二人で顔を見合わせて、思わず笑った。

「早乙女です。よろしくお願いします」

「篠崎仁奈です。こちらこそ。……足、引っ張らないように頑張ります」

「いやいや、こっちこそ」

仁奈さん、と頭の中で繰り返した。トロッコ道へ足を踏み入れる。かつて材木を運んでいたという線路の跡が、森の奥までまっすぐ続いている。枕木の間隔が微妙に歩幅と合わなくて、地味に歩きにくい。でも、それがかえって会話のきっかけになった。

「この枕木、間隔おかしくないですか」

「おかしいです。設計した人、人間の歩幅を測ってないと思います」 「真顔で言うじゃないですか」 「すみません、職業病で。データがないと落ち着かなくて」

聞けば、仁奈さんは製薬会社の研究員だという。年は二十六。有給を消化するための一人旅で、屋久島を選んだらしい。

「研究員さんが屋久島って、なんか意外ですね」

「樹齢何千年っていう生き物を、一度この目で見ておきたかったんです。私が扱ってるのは、せいぜい数日で代謝される分子なので」 「スケールでかすぎでしょ」 「ふふ。でしょう」

理屈っぽいけど、笑うと一気に幼くなる。そのギャップがずるい。

トロッコ道はひたすら平坦で、長い。森の中をどこまでも歩く。屋久杉の巨木、苔むした倒木、澄んだ沢の水。空気がしっとりと濃い。

「仁奈さん、ペース大丈夫ですか」

「大丈夫です。早乙女さんこそ、さっきから後ろ気にしすぎじゃないですか」 「バディなんで。気にかけ合うんでしょ」 「……律儀ですね」

少しだけ、仁奈さんの口元が緩んだ気がした。

二時間ほど歩いて、トロッコ道が終わり、本格的な山道に入る。そこから少し登ったところに、それはあった。

ウィルソン株。

中が空洞になった、巨大な切り株だ。中に入って見上げると、ぽっかり開いた穴の縁が──ハートの形に見える。

「うわ、ほんとにハート型に見える」

「角度があるみたいですよ。ガイドさんが、ここから撮るとって」

ガイドに教わった立ち位置にしゃがんで、空を見上げる。確かに、切り株の縁が綺麗なハートを描いていた。

「撮りましょう。仁奈さん、ハートの中、入って」

「え、私が?」 「せっかくだし」

少し照れたように、仁奈さんがハートの真下に立つ。俺はしゃがんでスマホを構えた。ハートの空を背負った仁奈さんが、ぎこちなく微笑む。

「いいですね。撮れた」

「じゃあ次、早乙女さん。交換です」 「俺も?」 「バディなんで。フェアにいきましょう」

さっきの台詞を返されて、苦笑した。今度は俺がハートの下に立ち、仁奈さんがスマホを構える。

「……はい、撮れました。送りますね」

その場で連絡先を交換した。お互いのスマホに、ハートを背負った相手の写真が一枚ずつ。

(なんか、いいな。これ)

口には出さなかったけど、そう思った。そこからさらに登る。木の階段、急な岩場、何度も渡る橋。ふくらはぎが張ってくる。仁奈さんは口数こそ減ったけど、弱音は一切吐かなかった。

そして──歩き始めて五時間近く。ついに、それが現れた。

縄文杉。

樹齢数千年といわれる、屋久島の主。

展望デッキから見上げたその幹は、想像していたどんな写真よりも太く、ごつごつと、生きていた。瘤だらけの幹に苔がびっしりと生し、無数の枝が天に向かって伸びている。

「……でかい」

語彙が、それしか出てこなかった。何千年。俺が生まれるずっと前、文字が生まれる前から、こいつはここに立っていた。そう思った瞬間、足の疲れも、息の上がりも、全部どうでもよくなった。ただ、圧倒された。

しばらく言葉もなく見上げていた。ふと、隣を見る。

仁奈さんが、泣いていた。声も立てず、ただ縄文杉を見上げて、頬を一筋、涙が伝っている。

「……仁奈さん」

「……あ。やだ、ごめんなさい」

慌てて目元を拭う。

「変ですよね。木を見て泣くなんて、データにもならないのに」

「変じゃないですよ。俺も、ちょっと来てます」

「……ふふ。早乙女さんも?」

「正直、何千年って言われた瞬間に、自分のちっぽけさがバグった」

仁奈さんが、涙のにじんだ目で笑った。

「……それ、すごくわかります」

二人で並んで、ただ縄文杉を見上げた。その沈黙が、不思議と心地よかった。

弁当を広げて昼食を取り、デッキでしばらく休んで、いよいよ下山が始まった。そして、それは下り始めてすぐに来た。

ぽつ、ぽつ。

「あ、降ってきた」

「ですね。……来ると思ってました」 「え、わかってたんですか」 「屋久島は月に三十五日雨が降る、って言うんですよ。データ的には雨です。覚悟してください」

そう言い終わるか終わらないかのうちに──ざあっ、と一気に来た。土砂降りだった。

慌ててレインウェアを引っ張り出して着込む。それでも横殴りの雨が容赦なく叩きつけてくる。木の階段はみるみる滑りやすくなって、岩場は小さな滝みたいになった。

「仁奈さん、こっち滑るんで、こっち踏んで!」

「はいっ」

「手、貸します」

濡れた岩場で、俺は手を差し出した。仁奈さんが、迷わずその手を掴んだ。冷たくて、でもしっかりした手だった。

「……ありがとう」

敬語が、少し崩れた。ぬかるんだ斜面を、二人で支え合って下りる。一度、仁奈さんが足を滑らせかけたのを、腰に手を回して受け止めた。

「うわっ……ご、ごめん」

「いえ。これもバディなんで」

「……もう、そればっかり」

雨の中で、仁奈さんがくすっと笑った。レインフードの下、濡れた前髪が頬に貼りついていて、それがやけに色っぽかった。

文句ひとつ言わなかった。研究員らしい理屈はどこかへ消えて、ただ前を向いて、一歩一歩、確実に下りていく。その芯の強さに、俺は完全にやられていた。

「仁奈さん、強いですね」

「強くないよ。早乙女さんがいるから、平気なだけ」

雨音にまぎれて、その言葉は、危うく聞き逃すところだった。トロッコ道まで下りる頃には、雨は小降りになっていた。長い長い線路の跡を、二人でとぼとぼ歩く。

「足、もう棒みたい」

「俺も。ジム通ってる自信、完全に粉砕された」 「ふふ。ざまあみろ」 「言うようになりましたね」

登山口に着いて、迎えのバスに乗り込んだ頃には、もう日が傾いていた。十時間。本当に、丸一日かけて歩き切った。泥だらけで、くたくたで、でも──不思議と満ち足りていた。

バスに揺られながら、仁奈さんの頭が、こてんと俺の肩に乗った。眠っている。

(……起こさないでおくか)

濡れた髪から、雨と森の匂いがした。俺はそのまま、窓の外を流れる夕暮れの島を眺めていた。バスは集落へ下りて、宿の前に順番に停まっていく。俺の宿で停まったとき、ガイドが声をかけた。

「早乙女さん、ここですよ」

肩の仁奈さんを起こす。

「ん……あ、ごめん。寝てた」

「俺、ここなんで。お疲れさまでした」

そう言って降りようとしたら──仁奈さんも、立ち上がった。

「……え。私も、ここ」

「……は?」

宿の名前を確認し合う。同じ、民宿だった。

「うそでしょ。同じ宿……」

「バディ、どこまで続くんですか」

二人で顔を見合わせて、声を上げて笑った。

古い木造の、こぢんまりした民宿だった。トビウオが名物だという。泥だらけのウェアを洗って、それぞれシャワーを浴びて、汗を流す。さっぱりして広間に下りると、夕食の支度ができていた。

「あの、よかったら、ご一緒にどうですか」

女将さんに頼んで、仁奈さんと同じ卓にしてもらった。トビウオの姿揚げ、首折れ鯖の刺身、地の野菜の煮物。どれも素朴で、染みるほど旨かった。一日歩き切った体に、食事がぐんぐん吸い込まれていく。

「……生き返る」

「ですね。十時間ぶりにまともなもの食べた気がする」

部屋着姿の仁奈さんは、昼間の凛とした雰囲気とは別人みたいに、やわらかく見えた。

食後、女将さんが言った。

「縁側で飲まれます? うちの島焼酎、よく冷えてますよ」

二人で顔を見合わせて、頷いた。縁側に出ると、すっかり夜だった。民宿の裏は段々畑で、その向こうに山の稜線が黒く沈んでいる。そして頭上には──息を呑むほどの、満天の星。

「……うわ、すごい星」

「……ほんとだ。こんなの、東京じゃ絶対見えない」

縁側に並んで腰を下ろす。女将さんが置いていってくれたのは、三岳という芋焼酎だった。グラスに氷を入れて、ロックで注ぐ。

「……お疲れさまでした」

「お疲れさまでした」

こつん、とグラスを合わせた。

一口飲む。芋の香りと、まろやかな甘み。一日歩き切った疲れた体に、じわりと熱が広がっていく。

「うまい。これは染みる」

「……危険なお酒ですね、これ。疲れてるときに飲むと、効きそう」

その予感は当たった。

二杯、三杯と重ねるうちに、仁奈さんの頬がほんのり染まっていく。そして、研究員らしい理屈が、少しずつ剥がれていった。

「私ね、いつも……何にでも理由を探しちゃうんです」

「理由?」

「これはこういうメカニズムで、こういうデータがあって、だからこうなる、って。そうしないと、不安で」

「真面目なんですね」

「……でも、今日。縄文杉の前で、初めて、何も説明できなかった。ただ、泣いてた。それが、すごく……怖くて、でも、気持ちよかった」

星空を見上げる仁奈さんの横顔を、星明かりが薄く照らしている。睫毛の影が、頬に落ちている。

「……仁奈さん」

「ん?」

俺は、グラスを縁側に置いた。

「俺も、今日、説明できないことだらけです。バスで隣になったのも、ペアになったのも、宿が同じだったのも──全部、偶然なんだけど」

「……うん」

「偶然なのに、なんか、運命みたいだって思ってる自分がいて」

仁奈さんが、ゆっくりこちらを向いた。星を映した瞳が、潤んでいる。

「……それ、データには、ないですよ」

「ない」 「再現性も、ない」 「ない。一回きりだ」

仁奈さんが、小さく息を吐いた。それから、ふっと笑って、まっすぐ俺を見た。

「……データにない夜が、あってもいいと思うんです。今日だけは」

その一言が、合図だった。

俺はそっと、仁奈さんの頬に手を添えた。火照った肌は、思ったよりずっと熱い。仁奈さんが、目を閉じる。

縁側で、唇を重ねた。

ちゅ……。

焼酎の甘い香りが、移ってくる。柔らかくて、少し冷たくなった唇。軽く触れて、離れて、もう一度。

「……ん♡」

「……部屋、行こう」

「……うん♡」

手を取って、仁奈さんの部屋へ。畳に布団が一組、敷いてあった。障子越しに、星明かりがうっすら差し込んでいる。

布団の上に並んで座る。膝が触れ合う距離。もう一度、唇を重ねた。

今度は、深く。

ちゅぷ……んむ……れろ……♡

舌先で唇をなぞると、仁奈さんが小さく口を開いた。絡んだ舌が、ぬるりと熱い。焼酎の味がする。

「ん……ふ……♡ ちゅ……♡」

腰に手を回して、引き寄せる。部屋着越しに、体温が伝わってきた。

ぷはっ、と離れると、唾液が細い糸を引いて切れた。仁奈さんの瞳が、とろんと潤んでいる。

「……研究員なのに♡ 頭、真っ白……♡」

「それでいいんじゃないですか。今日だけは」

「……うん♡」

部屋着のボタンに手をかける。一つずつ外していくと、白い肌が現れた。淡いベージュのブラジャー。ほっそりした鎖骨。

「あんまり、見ないで……♡」

「それは、無理です」

「……理屈っぽい人、嫌いって言ったのに♡」

首筋に唇を落とす。鎖骨をなぞって、肩へ。背中に手を回して、ホックを外した。かちっ。ブラを取り去ると、形のいい胸がこぼれ出た。色白の肌に、薄いピンクの先端。緊張で、もう少し硬くなっている。

そっと、左の胸を手のひらで包んだ。

ふにゅ……♡

「あ……♡」

指を沈めると、柔らかくはみ出してくる。もう片方の手で、右も。両手いっぱいの、しっとりした弾力。

親指で、先端をくりっと転がす。びくん、と肩が跳ねた。

「ひゃっ……♡♡」

唇を寄せて、ちゅっと吸う。

「やっ……!♡ 声、出ちゃう……♡♡」

「出していいですよ。誰も聞いてない」

舌先で、硬くなった先端をころころ転がす。ちゅるっ……れろ……ちゅう……♡♡

「あっ……あっ♡♡ そんな、ずっと……♡♡」

交互に舌を這わせながら、もう片方を指で揉みしだく。仁奈さんの肌が、うっすら汗ばんできた。理屈っぽい言葉が、もう全部、喘ぎに変わっている。

「……下も、いいですか」

「……うん♡」

部屋着の下を、ゆっくり脱がせる。淡い色のショーツ。その中央が、もう、しっとりと色を変えていた。

布の上から、そっと指で触れる。

くちゅ……♡

「ひっ……♡♡」

びくん。

「……もう、こんなに」

「だって……♡ キスのとき、から……ずっと……♡♡」

ショーツに指をかけて、ずり下ろす。くちゅ、と蜜が糸を引いた。整えられた茂みの下に、濡れそぼった花びら。透明な蜜が、とろりとあふれている。仁奈さんの膝を、そっと押し開いた。

「やっ……明るくないのに、恥ずかしい……♡」

太ももの内側に、唇を落としながら、中心へ近づく。舌先で、花弁にそっと触れた。ちろ……♡

「んあっ……!♡♡」

腰が、びくんと跳ねる。ちゅる……れろ……ちゅっ……♡♡

「あぁっ……♡♡ やっ、それ……♡♡」

仁奈さんの手が、俺の髪をくしゃっと掴んだ。小さな突起を探り当てて、舌先を集中させる。こりこり……ちゅっ……♡♡

「そこっ……♡♡♡ あっ、あっ、あっ……♡♡」

太ももを押さえて開かせながら、突起を唇で挟んで、ちゅうっと吸い上げた。

「──っ♡♡♡! だめ、それ、来ちゃう……♡♡♡」

舌の動きを速めながら、指を一本、入り口に沈める。ずぷ……♡

「ひぅっ……♡♡♡ 入って……きてる……♡♡」

熱い。きつい。中が、きゅうきゅうと指を締め付けてくる。曲げて、上の壁をぐっと押すと、仁奈さんの腰がびくびく震え始めた。

「やっ……そこ、やばい……♡♡♡ 来る、来ちゃうっ……♡♡♡♡」

指でかき回しながら、突起を舌で転がす。ぐちゅっ、ぐちゅっ、こりこり……♡♡♡

「──イっ……♡♡♡ イっちゃ……んんんっ……♡♡♡♡」

背中が、弓なりに反った。中がぎゅうっと指を締め付けて、全身がびくびくと痙攣する。

しばらくして、力が抜けたように、布団に沈み込んだ。

「はぁ……はぁ……♡♡ ……指だけで、こんなの……初めて♡」

潤んだ瞳で、俺を見上げてくる。それから、ゆっくり体を起こした。

「……今度は、私♡ 早乙女さんにも、気持ちよくなってほしい♡」

仁奈さんの手が、俺のズボンに伸びる。カチャ……ジー……。ベルトを外して、下ろす。布越しでも、限界まで張りつめているのがわかった。下着の上から、そっと手を添える仁奈さん。

「……すごい♡ 硬い……♡」

ウエストに指をかけて、引き下ろす。ぶるん、と勢いよく飛び出した。仁奈さんが、息を呑む。

「……おっきい♡♡ こんなの、入るのかな……♡」

細い指が幹に絡んで、ゆっくり上下に動く。しゅっ……しゅっ……♡

それから、顔を近づけて──ぺろ、と先端を舐めた。

「……ん♡ 早乙女さんの、味♡」

ちゅっ、と先端にキス。それから、ぱくりと口に含んだ。

ずぷ……♡

温かくて、濡れた口の中。舌が裏筋を、ねっとりとなぞる。

「ん……じゅる……♡ んちゅ……れろ……♡♡」

ゆっくり頭を上下させながら、頬をすぼめて吸い上げる。上目遣いの、潤んだ瞳。星明かりに照らされたその顔が、艶っぽすぎて、頭がくらくらした。

ちゅぱっ……じゅるるっ……♡♡

「……仁奈さん、それ、やばい」

「ん♡ もっと……奥まで、する♡」

ずぷっ、と深く咥え込んで、喉の奥に触れる。全身に、電流みたいなものが走った。

「……ストップ。それ以上は、イく」

ぷはっ、と口を離す。唇が、唾液でてらてらに光っていた。

「ふふ♡ まだ、だめ♡」

いたずらっぽく笑う仁奈さんを、そっと布団に押し倒した。乱れた髪、紅潮した頬。

「……ゴム、持ってきてます」

「……用意いいんですね♡」 「一応、大人の嗜みで」 「ふふ……♡ つけて♡」

手早く装着して、脚の間に体を滑り込ませる。蜜で濡れた入り口に、先端をあてがった。

「……来て♡ 早乙女さんの、ほしい……♡」

ゆっくり、腰を進める。ずぷ……ずぷぷ……♡♡

「あぁっ……♡♡♡ 入って……くるぅ……♡♡♡」

きゅうきゅうと締め付けながら、奥へ引き込んでくる。

「おっきい……♡♡ お腹の中、いっぱい……♡♡♡」

ずぷん、と根元まで収まった。下腹部が、ぴたりと密着する。

「……動きますよ」

「うん……♡ 来て♡」

ゆっくり腰を引いて、また押し込む。ぱん……ぱん……ぱん……♡♡

「あっ、あっ、あっ……♡♡♡ 気持ちいい……♡♡」

ぐちゅ……ぐちゅ……♡ 結合部から、卑猥な水音が響く。

腰を掴んで、少しずつペースを上げていく。ぱんぱんぱん……!♡♡♡

「あっあっあっ♡♡♡♡ 奥っ、当たって……♡♡♡」

角度を変えて、奥を突き上げると──

「そこっ……♡♡♡!! だめ、そこばっかり……♡♡♡」

仁奈さんの脚が、俺の腰に絡みついてくる。もっと奥を、と引き寄せるように。ぱんぱんぱんぱん……!!♡♡♡

「研究員なのにっ……♡♡♡ 頭、ばかになるっ……♡♡♡♡」

「……いいんですよ。今日は、ばかで」

ぐちゅぐちゅと、蜜が泡立つ音がする。仁奈さんの中が、リズミカルに締め付けてくる。

「来るっ……また、来ちゃうっ……♡♡♡♡」

「……俺も、そろそろ」

「一緒に……♡♡♡ 一緒に、イきたい……♡♡♡♡」

仁奈さんが両腕を背中に回して、しがみついてくる。爪が、背中に食い込んだ。少し痛い。でも、それがまた、興奮を煽る。

最後、奥に押し付けるように──ずぷんっ!

「あぁぁっ♡♡♡♡♡!!」

どくっ、どくっ、どくっ……! ゴム越しでも、脈打ちながら全部を吐き出していくのがわかる。仁奈さんの全身が震え、中が痙攣するように搾り取ってくる。

「はぁっ……♡♡♡ すごい……♡♡」

抱き合ったまま、荒い呼吸を重ねた。ちゅ、と軽く唇を合わせる。

「……大丈夫ですか」

「……うん♡ 全然、大丈夫じゃない♡」

くすっと笑って、それから、潤んだ瞳で、いたずらっぽく囁いた。

「……ねえ♡ 今日だけ、なんだから……もう一回、いい?♡」

体が、すぐに反応した。

「……今度は、仁奈さんが上で」

「……研究員に、実験させる気♡?」

「データ、取りましょう」

「……もう♡ ばか♡」

新しいゴムをつけて、仰向けになる。仁奈さんが、ゆっくり俺の上にまたがった。

星明かりの中、見上げる仁奈さん。ぷるんと揺れる胸、引き締まったお腹、繋がろうとしている場所。仁奈さんが角度を合わせて、ゆっくり腰を落とす。ずぷん……♡♡

「あっ……♡♡♡ この体勢、奥まで……入る……♡♡♡」

ゆっくり、腰を上下させ始めた。ずぷ……ずちゅ……ずぷっ……♡♡

「ん……♡♡ 自分で、動くの……恥ずかしいのに……♡♡♡」

目の前で、胸がぷるんぷるん揺れる。両手を伸ばして、掴んだ。ふにゅっ♡♡

「ひゃんっ♡♡♡ 揉んだら……動けなく、なる……♡♡♡」

「いいから。続けて」

ぱんっ♡ ぱんっ♡ ぱんっ♡♡

「あっあっあっ♡♡♡ 奥に……当たってるっ……♡♡♡」

仁奈さんが、腰を回すように動き始めた。中を、ぐりんとかき回される。

「……仁奈さん、それ、反則です」

「データ、取ってるだけ♡♡♡ ……どこが、一番、効くか……♡♡♡」

下から、ぐっと突き上げた。ずぷんっ♡♡♡

「ひぁっ♡♡♡♡ 下から……っ♡♡♡」

仁奈さんの動きと、俺の突き上げが、一番奥でぶつかる。ぱんぱんぱんぱんっ♡♡♡♡♡ ぐちゅぐちゅぐちゅ♡♡♡♡

「だめっ……♡♡♡ また、来ちゃうっ……♡♡♡♡」

「……俺も、もう……っ」

「一緒に……♡♡♡ 今度も、一緒に……♡♡♡♡」

仁奈さんが、俺の上に倒れ込んでくる。汗で湿った肌が、ぴたりと重なる。最後、下から思いきり突き上げた。ずぷんっ♡♡♡♡

「イくぅっ……♡♡♡♡♡!!」

どくっ、どくっ、どくっ……! 二度目とは思えないほど、強く脈打つ。仁奈さんの中が、ぎゅうぅっと搾り取るように締め付けてきた。

「はぁっ……♡♡♡ はぁっ……♡♡ ……すごかった……♡♡」

汗だくの体を重ねたまま、しばらく動けなかった。障子の隙間から、星明かりが薄く差し込んでいる。外で、夜の虫が鳴いている。

「……ねえ、早乙女さん」

「ん」

「これ……データに、ない夜……でしたね♡」

「……ですね。再現性ゼロの、一回きり」

仁奈さんが、ふっと笑って、俺の胸に頬を寄せた。

「……でも、もう一回、取りたくなるくらい、いいデータでした♡」

「……それは、追試が必要ですね」

「ふふ♡ 理屈っぽい人、嫌いって言ったのに♡」

ゆっくり体を離して、後始末を済ませる。布団に並んで横になると、自然と体がくっついた。仁奈さんが、俺の腕の中に、すっと収まる。

「……あったかい♡」

「仁奈さんも」

濡れていた髪は、もう乾きかけていて、ほのかにシャンプーの匂いがした。

「……おやすみなさい♡」

「おやすみ、仁奈さん」

星明かりの中、二人で目を閉じた。

朝。

障子越しの光で目が覚めた。隣を見ると、仁奈さんが、俺の腕の中で眠っていた。

すぅ……すぅ……。

穏やかな寝顔。化粧っ気のない素顔は、昨日よりもさらに幼く見えた。

(……夢じゃ、なかった)

そっと髪を撫でると、仁奈さんがむずがって、ゆっくり目を開けた。

「……ん♡ おはよう……ございます……」

「おはよう。よく眠れた?」

「……寝すぎました♡ 十時間歩いて、二回もして……そりゃ、寝ますよ♡」

「ふふ、言うようになった」

民宿のトビウオ出汁の味噌汁を二人で飲んで、女将さんに見送られて宿を出た。今日はもう、ツアーの予定はない。

「……仁奈さん、今日、どうします?」

「……白谷雲水峡、行ってみたいんです。苔の森が、すごいって」

「じゃあ、二人で行きましょう。バディ、もう一日延長で」

「……ふふ♡ しつこいですね、そのネタ♡」

レンタカーを借りて、二人で白谷雲水峡へ向かった。そこは、別世界だった。

見渡す限りの、緑。岩も、倒木も、地面も、何もかもが、深い苔に覆われている。木漏れ日が苔に降り注いで、森全体がやわらかな緑色に発光しているみたいだった。

「……すごい。映画みたい」

「ほんとだ。空気が、緑色」

昨日のツアーとは違って、誰に急かされることもなく、二人だけの時間。手を繋いで、ゆっくり、ゆっくり、苔の森を歩いた。

沢のせせらぎ。鳥の声。それ以外、何も聞こえない。

途中、苔むした岩の上で休んだ。仁奈さんが、ぽつりと言った。

「私、明日の便で帰るんです」

「……俺も、明日です」 「何時の?」 「夕方の鹿児島乗り継ぎ」

仁奈さんが、ぱっと顔を上げた。

「……私、午前の便なんです。……変えても、いいですか。早乙女さんと、同じ便に」

心臓が、跳ねた。

「……いいんですか。一人旅、だったのに」

「……一人旅は、もう、終わりにしたいです」

苔の森の真ん中で、俺は仁奈さんの手を、ぎゅっと握った。

「仁奈さん。東京に帰っても、会ってくれませんか」

仁奈さんが、潤んだ目で、まっすぐ俺を見た。それから、研究員らしい言い回しで、答えた。

「……一回きりじゃ、サンプルが足りません」

「……つまり?」 「東京でも、データ、取り続けましょう♡ ……長期の、追跡調査で♡」 「……それ、付き合ってくれるって、ことでいいんですよね」 「……ふふ♡ はい♡ ……お願いします、早乙女さん♡」

苔の森に、木漏れ日が降り注いでいた。

「亘でいいよ。もう、バディなんだし」

「……じゃあ、私も。仁奈、で♡」

その場で、スマホを取り出して、二人の帰りの便を、同じ時刻に揃えた。鹿児島で乗り継いで、羽田まで一緒に帰る。

「……東京でも、よろしくお願いします♡」

「こちらこそ。──長期の追跡調査、楽しみにしてる」

仁奈さんが、声を上げて笑った。

その笑顔は、縄文杉よりも、苔の森よりも、満天の星よりも──この旅で見た、どんな景色よりも、綺麗だった。

繋いだ手の温もりが、確かだった。

未明のバスで、たまたま隣になっただけ。ガイドの気まぐれで、ペアになっただけ。宿が、たまたま同じだっただけ。

データには、ない。再現性も、ない。それでも、これは──きっと、運命だ。

二人で見上げた苔の森の天井は、どこまでも、緑に輝いていた。

― 終 ―


編集部プロフィール画像

編集部が運営。「あの夜」で読める恋の体験談を厳選して公開しています。