社会人4年目、26歳。
会社の異動で本社のある渋谷エリアに通うことになった。 今まで千葉の幕張から通勤してたけど、片道1時間半はさすがにキツい。 上司に「近くに引っ越せ」と言われて、ようやく重い腰を上げた。
土曜の朝、SUUMOで見つけた不動産屋に予約を入れた。 渋谷駅から徒歩5分の大手チェーン。11時からの予約だ。
店に入る。明るい店内。受付の女性に案内されて奥のブースに座った。
「担当の者がすぐ参りますので少々お待ちください」
待つこと1分。カツ、カツ、カツ。ヒールの音。
「お待たせいたしました。本日担当させていただきます、瀬川と申します」
名刺を差し出されて——目の前に立った女性を見て、思考が止まった。
(……は?)
ストレートの黒髪をひとつにまとめたポニーテール。 きりっとした切れ長の目。すっと通った鼻筋。薄く引かれたリップ。 紺のジャケットに白のブラウス。タイトスカート。ヒール。 いわゆる「デキる女」の空気を纏っているのに、顔が完全にアイドル級だ。 ブラウスの胸元がさりげなく——いや、かなりはっきり膨らんでいる。
「瀬川彩音と申します。本日はよろしくお願いいたします」
にこっ、と営業スマイル。完璧すぎる。
「あ、は、はい。佐藤拓真です。よろしくお願いします」
(落ち着け俺。不動産屋に来たんだぞ。出会いを求めに来たんじゃない)
名刺を受け取る。指先が触れた。それだけで心拍数が上がった。
「では佐藤様、まずはご希望の条件をお伺いしますね」
瀬川さんがタブレットを操作しながらテキパキと質問してくる。 エリア、予算、間取り、駅距離、ペット、同居人。矢継ぎ早。
(彼女もいないです、とは聞かれてない)
「条件に合うものをいくつかピックアップしました。今日はこの3件を内見していただこうと思います」
画面には3つの物件。……が、正直どれも同じに見えた。 俺が見てるのは画面じゃなくて、画面を指さす瀬川さんの横顔だった。
説明の仕方が流暢で淀みない。プロだ。 でも時々ふっと柔らかい笑顔が混じる。そのギャップがやばい。
「佐藤様? この物件、気になりますか?」
「あ、はい。気になります」
(お前が気になる)
「では早速、車でご案内しますね」
瀬川さんが立ち上がる。タイトスカートのラインに沿った腰からお尻のシルエットが——
(見るな。見るな俺。)
見た。
社用車の助手席。車内に甘い香水の匂いがふわっと広がった。
(近い。距離が近い。車内って密室じゃん)
「佐藤様は今どちらにお住まいなんですか?」
「幕張です。通勤1時間半で」
「それは大変ですね。渋谷近辺はいい選択だと思います」
「瀬川さんはこの仕事長いんですか?」
「3年目です。25歳です」
「26です。1個上ですね」
ちょっと嬉しそうに微笑んだ気がした。営業スマイルかもしれない。
最初の物件に到着。代々木上原のマンション、5階の502号室。 1K、25平米。南向きで日当たりがいい。
瀬川さんが窓を開けて風を入れる。ポニーテールが風に揺れた。
(物件を見ろ。物件を。)
「キッチンはこちら。二口コンロで作業スペースも広めです」
「お料理はされますか?」
「まあ、一応。カレーとか」
「ふふ、カレーは大事ですよね」
笑った。営業スマイルじゃない、自然な笑顔。
クローゼットを見せてくれるとき、身を乗り出した瀬川さんのブラウスの胸元が少し——
(見てない。見てない。)
見た。谷間がちらっと見えた。
「佐藤様、いかがですか?」
「いいと思います!」
声が裏返った。
2件目は笹塚の1DK。3件目は代々木公園近くの1K。 正直、どの物件がどうだったか全然覚えていない。
覚えているのは——瀬川さんがデメリットもちゃんと言ってくれたこと。 3件目で「壁薄いかもですね。お隣の生活音が聞こえる可能性があります」と自社物件をdisるスタイル。誠実だ。好感度が爆上がりした。
店に戻って最終確認。1件目に決めた。
(正直どれでもよかった。瀬川さんが勧めるならそれでいい)
「では契約手続きに進みますね。来週、必要書類をお持ちください」
来週また会える。でも契約が終わったらもう会う理由がない。
翌週の土曜、契約手続きで再来店。 重要事項説明書を読み上げる瀬川さんのプロの滑舌。ハンコを押す箇所を丁寧に教えてくれる。
「これで契約完了です。おめでとうございます」
瀬川さんが両手で握手を求めてきた。柔らかくて温かい手。ちょっと長く握ってしまった。
(もう会えないのか)
帰り際、店のドアを開けたとき——
「佐藤様」
瀬川さんが小走りで追いかけてきた。ヒールがカツカツ鳴る。
「あの、これは完全に私個人の——お仕事とは関係のないお話なんですが」
頬がほんのり赤い。
「もしご迷惑でなければ……入居祝いに、お食事でもいかがですか?」
え。
「行きます」
即答。ゼロ秒。
「え?」
「行きたいです。ぜひ」
瀬川さんがぱっと花が咲くように笑った。
「よかった……! 実は断られたらどうしようってずっと緊張してて」
LINE交換。「瀬川彩音🏠」のアカウント名。
「家の絵文字がついてる」
「不動産屋なので笑」
「じゃあ、拓真さん。連絡しますね」
名前を呼ばれた。それだけで心臓が暴れた。
土曜、19時。駅近の和食居酒屋の個室。
彩音が来た。いつもの仕事スタイルとは全然違う。 ゆるく巻いた黒髪を下ろして、白いニットワンピースにベージュのコート。 ニットワンピースから主張する胸のラインが——目のやり場に困る。
「すごい綺麗だね」
「えっ、ありがとう。拓真さんもかっこいいです」
照れたように髪を耳にかけた。ダメだ可愛すぎる。
掘りごたつの個室。日本酒が進む。
「拓真さんのこと、最初の接客のときからちょっと気になってて」
「え、マジで?」
「物件の説明してるのに、全然物件見てなかったでしょ」
ぎくっ。
「……バレてた?」
「ずっと私のこと見てましたよね」
「い、いや、説明が上手だなと思って」
「ふふ、嘘が下手ですね」
「でも嬉しかったです。ドキドキしてました」
「仕事中だから余計に。プロでいなきゃいけないのに心臓バクバクで」
耳まで赤くなってる。
「彩音さん、俺も——最初から全然物件なんか見てなかった」
「知ってます」
「全部あなたのこと見てた」
「……知ってます♡」
その♡は声に出てた。ちょっとだけ甘い声。
二軒目はバー。カウンターで隣に座る。 肩が触れる距離。彩音の髪がふわっと俺の肩にかかった。
「新しいマンション、もう入居したんですか?」
「先週引っ越した。まだ段ボールだらけだけど」
「じゃあ……確認しに行ってもいいですか?」
「確認?」
「アフターフォローです♡ 担当として、住み心地のチェックを」
にっこり微笑む彩音。これは営業スマイルじゃない。
「……部屋、散らかってるけど」
「構いません」
「じゃあ、行こうか」
「はい♡」
代々木上原の502号室。
「わあ、結構ちゃんとしてますね。家具のレイアウトもいい」
本当にプロ目線でチェックしてる彩音が可愛い。
二人でソファに座る。一人用だから肩がぴったりくっつく。 テレビもつけてない。窓の外の街灯がぼんやり部屋を照らしている。
「彩音さん」
「はい」
「俺——彩音さんのことが好きだ」
彩音が俺を見た。目が潤んでいる。
「……私も。拓真さんのこと、好きです」
涙が一筋、頬を伝った。
「あ、やだ、泣いちゃった」
「なんで泣くの」
「嬉しくて……ずっとこうなりたいって思ってたから」
頬に手を伸ばして涙を拭う。
「付き合ってほしい」
「……はい♡」
泣き笑いの顔。どんな営業スマイルよりも綺麗だった。
額にキス。鼻先にキス。そして唇に——触れた。
柔らかい。甘い。カクテルの余韻が残ってる。
「ん……♡」
触れるだけのキスから少しずつ深く。舌先がそっと触れ合った。
「ちゅ……んっ……♡♡」
吸って、舐めて、絡めて。彩音がシャツの胸元を掴む。
「はぁ……♡ もっと♡」
腰を引き寄せる。ニットワンピース越しの胸の柔らかさが腕に押し当てられる。
「彩音……」
「拓真さん……♡ その先も……していいですか……♡」
上目遣い。とろけた表情。プロの不動産営業のどこにもない、恋する女の子の顔。
「いいの?」
「……いいです♡ 拓真さんとなら♡」
ニットワンピースの背中のファスナー。じーーーっ。
白い背中が現れた。薄いピンクのブラとショーツのセット。
ワンピースが肩から滑り落ちる。くびれたウエスト。そして——
「……すっげ」
ブラから溢れそうな胸。直接見るとインパクトが違う。形がいい。谷間が深い。
「そんなに見ないで……♡ 恥ずかしい……♡」
「ごめん。綺麗すぎて」
ブラの上から胸を包む。
「んっ……♡」
柔らかい。ふわっとした弾力の中にしっかりとした芯がある。
ブラのホックを外す。パチン。ふわっと零れた。薄いピンクの乳首がつんと上を向いている。
「や……♡ 直接は……♡」
親指で乳首を転がす。くりくり。
「あっ……♡ やっ……♡ そこ感じる……♡」
舌を伸ばして乳首を舐める。ぺろ、ちゅっ。
「ひあっ♡♡ 舐めないで♡♡」
吸い付きながら舌で転がす。もう片方は手で揉む。
「あっ♡ あっ♡ 両方同時は……♡ だめ……♡♡ 気持ちいい……♡♡」
嫌がってるのに俺の頭を抱え込んで離さない。
彩音を仰向けにソファに横たえる。 ショーツの中央がしっとり濡れていた。
「やだ……♡ 見ないで……♡ 濡れてるの見ないで……♡♡」
「こんなに?」
「拓真さんのせいでしょ……♡♡」
ショーツを脱がす。細い糸を引いた。 きれいに整えられた花びらが蜜で光ってる。
膝をそっと開かせて、内ももにキスを落とす。少しずつ上に。 舌が花びらに触れた。
「ひあぁっ♡♡」
甘い味。下から上へ舌を這わせる。くちゅ、ちゅ。
「あっ……♡ 舌……♡ そこ気持ちいい……♡♡」
一番敏感な場所を舌先で集中的に刺激する。
「そこっ♡♡ だめ♡♡ 気持ちよすぎて♡♡♡」
舐めながら指を一本入れる。ぬる……と抵抗なく滑り込んだ。
「あぁっ♡♡ 同時はだめ……♡♡ おかしくなっちゃ……♡♡」
くちゅくちゅくちゅ。彩音の腰が浮く。太ももが震える。
「イっちゃう♡♡ 拓真さん♡♡ イっちゃうぅ——♡♡♡」
びくんっ! 体全体が痙攣した。
「あ——ッ♡♡♡♡」
びくん、びくん。余韻で震える彩音。蕩けた瞳。半開きの唇。 テキパキした不動産営業は完全にどこかへ行ってしまった。
彩音が体を起こして、俺のベルトに手をかけた。
「拓真さん……♡ 私にもさせて……♡」
ズボンを下ろされて、限界まで硬くなったそれが現れた。
「わっ……♡ 大きい……♡♡」
細い指が根元からゆっくり撫で上げる。先端にちゅ、とキス。
「っ……!」
舌がぺろっと先端を舐める。裏側を丁寧になぞって、くるくると円を描く。
ぱくっと咥え込まれた。
「っっ……!」
温かくて柔らかくて、ぬるっとした口の中。舌が絡みつく。
「んちゅ……♡ ちゅぱ……♡♡ じゅるっ……♡」
上目遣いで見上げながらしゃぶる彩音。切れ長の目が潤んで、口元はそれを咥え込んでいる。
「彩音……すっげ気持ちいい……」
「ん♡ ほんと♡? もっとしてあげる……♡♡」
ちゅぱちゅぱちゅぱ。リズミカルに前後する頭。黒髪がさらさら揺れる。
「マジでやばい……出ちゃう」
口を離した彩音が、唾液の糸を引きながら見上げた。
「拓真さん……♡ 中に欲しい♡」
理性が飛んだ。
彩音を仰向けにして覆いかぶさる。正常位。 両腕が首に回る。足が腰に絡む。
「キスしながらがいい……♡」
唇を重ねて舌を絡め合いながら——先端を入り口に当てた。
ぬる……と蜜が絡みつく。
「入れるよ……」
「うん……♡ きて……♡」
ゆっくり腰を進める。ずぶ……ずぶぶ……
「あっ……♡♡ 入ってくる……♡♡ 大きい……♡♡♡」
根元まで入りきった。中が熱くて、きゅうきゅうと吸い付いてくる。
「はぁ……♡ 全部入った……♡ お腹の奥まで……♡♡」
「動くよ」
「うん……♡ お願い……♡」
ゆっくり引いて、奥まで突き入れる。ずぷっ。
「あっ♡♡」
くちゅ、くちゅ。テンポを上げていく。ぱん、ぱん、ぱん。
「やっ♡♡ 気持ちいい……♡♡ 奥に当たってる……♡♡」
腰の角度を変えて上を擦るように突く。
「ひあっ♡♡♡ そこ♡♡ そこいい♡♡♡」
彩音の爪が背中に食い込む。足がぎゅっと腰を挟む。
ぱんぱんぱんぱん。
「あっあっあっ♡♡♡ すごい♡♡ 気持ちいい♡♡♡」
中がぎゅうっと締まる。波のように吸い付いてくる。
「拓真さんっ♡♡ 好き♡♡ 好き好き♡♡♡」
「俺も好き……彩音……」
「あああっ♡♡♡ だめっ♡ それ言われたらイっちゃう♡♡♡」
最奥まで打ち付ける。ずぷっ、ずぷっ、ずぷっ。
「イくっ♡♡ イっちゃう——♡♡♡♡」
「俺も——出る!」
「中に♡♡ 中に出して♡♡♡ いっぱい出して♡♡♡♡」
どくっ、どくっ、どくっ、どくっ。
「っっっ♡♡♡♡ きてるっ♡♡ 熱い♡♡ 中にいっぱい♡♡♡♡♡」
びくんびくんびくん。彩音が全身で痙攣する。中が搾り取るように脈打つ。
「あぁ……♡♡♡ すごい……♡ いっぱい……♡♡♡」
汗ばんだ体を重ねたまま、荒い呼吸が部屋に響く。
「すごかった……♡♡ こんなの初めて……♡」
繋がったまま唇にキスを落とす。 しばらくキスを交わしていたら——まだ中にいるそれが、またむくりと。
「え……♡ また大きくなってる……♡♡」
「ごめん……彩音が可愛すぎて」
「謝らないでいいの♡♡ ……今度は私がする♡」
彩音が俺を押し倒した。跨る。騎乗位。
間接照明に照らされた彩音のシルエット。形のいいDカップの胸。くびれたウエスト。しなやかな太もも。
さっき出したばかりで、繋ぎ目からとろりと白いものが溢れている。 そのまま腰を沈めていく。ずぶ……ずぶぶ……
「あっ♡♡ さっきのが中に残ってて……♡ ぬるぬる……♡♡」
根元まで。彩音が腰を揺らし始める。くちゅ、くちゅ。
「あっ♡ この体勢すごい♡♡ 自分で動けるの気持ちいい♡♡」
上下に動く。胸がたゆん、たゆんと揺れる。
「揺れてる……」
「見ないで♡♡ 恥ずかしい♡♡」
手を伸ばして揺れる胸を下から支える。ぐにっ。
「ひゃっ♡♡ 揉みながらはだめ♡♡♡」
ぱん、ぱん、ぱん。テンポが上がる。
「やばい♡♡ 奥に当たる♡♡ この角度すごい♡♡♡」
「下から突いていい?」
「えっ♡ それは——ひあっ♡♡♡♡」
腰を突き上げた。ずぶっ。
「だめっ♡♡ 下からも来たらおかしくなっちゃう♡♡♡♡」
ぱんぱんぱんぱんぱん。彩音の動きに合わせて下から突き上げる。
「あああっ♡♡♡ すごいすごい♡♡♡ 一番奥♡♡♡♡」
胸を揉みながら腰を打ち付ける。彩音が仰け反る。黒髪が背中に流れる。
「イくっ♡♡ 一緒にイって♡♡♡」
「イく——!」
「中にちょうだいっ♡♡♡♡」
どくんっ、どくんっ、どくんっ、どくんっ!
「あっ——♡♡♡♡♡ きてるきてる♡♡♡ また中にいっぱい♡♡♡♡♡♡」
びくんびくんびくん。中が絞るように脈打って、最後の一滴まで搾り取られる。
力が抜けた彩音が俺の胸に倒れ込んできた。
「すごかった……♡♡♡ 最高……♡♡♡♡」
二人とも汗だくで、心臓がバクバクいってる。 彩音が俺の胸に頬を寄せたまま、くすくす笑い始めた。
「ふふ……♡ 不動産営業がアフターフォローでお客様の部屋に来て、こんなことしてたらクビですね♡」
「俺はもう客じゃなくて彼氏だから」
「……♡♡ そうでした♡♡」
繋がっていたところからとろりと白いものが溢れる。
「ねえ、拓真さん」
「ん?」
「このマンション、気に入ってくれましたか?」
不動産営業の顔——でも目はまだとろけたまま。
「最高の物件だよ。担当の営業さんが特に」
「ふふっ♡ アンケートに『瀬川さんの対応が大変良かった』って書いてください♡」
「『担当の瀬川さんと付き合うことになりました』って書いていい?」
「だめです♡♡ 怒られます♡♡」
くすくす笑い合って——彩音がぎゅっと抱きついてきた。
「拓真さん」
「ん」
「このマンション選んでよかったですね」
「うん。最高の選択だった」
「私も……あの日、勇気出して声かけてよかった……♡」
額にキスを落とす。黒髪に顔を埋める。いい匂いがする。
「これからもよろしくね、彩音」
「はい♡ ……あ、そうだ」
彩音がにかっと笑った。テキパキ系美人の本来の笑顔。無邪気で、ちょっといたずらっぽい。
「改めてお聞きします——」
営業口調で、でも声は甘々で。
「住み心地はいかが?♡」
「——最高です。ここに住みます。一生」
彩音の目がじわっと潤んだ。
「契約更新、永久でお願いしますね♡♡」
そう言って、もう一度キスしてきた。 甘くて、柔らかくて、幸せな味がした。
翌朝。日曜。窓からの朝日で目が覚めた。
隣に彩音がいる。俺のTシャツを借りて寝てる。すやすやと寝息を立てて、少し口が開いている。
(……反則だろ)
「ん……♡ おはよう♡」
「おはよう」
「……ここ、どこだっけ」
「お前が見つけてくれたマンションの502号室だよ」
「あ、そうだった♡ 私の選んだ物件で私が寝てる♡」
「自分で選んで自分で住んでどうする」
「居心地がいいんだもん♡」
むにゅ、と俺の胸に顔を埋める彩音。
「朝ごはん作りますね♡ 卵あります?」
「卵とベーコンが」
「オムレツにします♡」
キッチンに立つ彩音の背中。俺のTシャツから伸びる素足。フライパンの音。バターの香り。鼻歌。
ふわふわのオムレツ。テーブル越しに笑う彩音を朝の光が照らしている。
「次の休み、一緒に家具見に行きませんか? もうちょっと収納があったほうがいい」
「不動産屋の目線だ」
「違います♡ 彼女の目線です♡♡」
——この物件、当たりだ。
いや、この物件を見つけてくれた営業さんが、人生で最高の当たりだった。
「彩音」
「なに?」
「ありがとう。ここに引っ越してきて、本当によかった」
「……♡ 私こそ。あの日担当になれて、本当によかった♡」
向かい合って、笑い合って。週末の朝の、なんでもない幸せ。
この部屋の住み心地は——間違いなく、最高だ。
おわり