社会人二年目の春。
俺、藤原蓮(ふじわら れん)、24歳。都内のIT企業でSEをやっている。
仕事は普通。人間関係も普通。彼女なし歴二年。
そんな俺の唯一の楽しみが──一人のYouTuberだった。
「みなさんこんばんは〜! 白石ひなのです!」
白石ひなの。登録者数42万人。ライフスタイル系。23歳。栗色のゆるふわロング。ぱっちり二重。透き通る白肌。
そして何より──笑顔が最強だった。
俺がひなののチャンネルを見つけたのは、登録者がまだ230人の頃だ。
二年半前。大学四年の冬。
就活のストレスで眠れない夜。ベッドでスマホをいじっていた。
YouTube のおすすめ欄に、見慣れないサムネイルが出てきた。
「初めまして! 白石ひなのです! 今日は私のお気に入りの喫茶店を紹介します♡」
画質はちょっと粗い。編集もシンプル。照明もたぶん部屋の蛍光灯そのまま。
でも──なんか、惹かれた。
カメラの前で緊張しながらも一生懸命喋る姿。途中で噛んで「あっ、ごめんなさい♡」って笑う顔。
飾らない。自然体。なのに目が離せない。
気づいたら、上がっていた全部の動画を見ていた。全部で8本。
そして一番最初に投稿された自己紹介動画のコメント欄に書き込んだ。
『初めまして! 動画すごく好きです。喫茶店の雰囲気が伝わってきて、行ってみたくなりました。応援してます!』
三日後、ひなのから返信が来た。
『ありがとうございます♡♡♡ 初めてコメントいただけてすっごく嬉しいです! もっと頑張りますね!!』
──それが、全ての始まりだった。
それから俺は、ひなのの動画が上がるたびに欠かさずコメントを書いた。
「蓮くん」──いつの間にか、ひなのは俺のことをそう呼ぶようになっていた。コメント欄で。
登録者が1000人を超えた時。
『蓮くんは一番最初からいてくれた人だから、私にとって特別な存在です♡』
登録者が10万人を超えた時も。
『蓮くん!! 10万人いきました〜!! 蓮くんが最初にコメントくれた日からここまで来られたの、本当に蓮くんのおかげです♡♡』
チャンネルが大きくなるにつれて、コメントの数も爆発的に増えた。
それでも、俺のコメントにはいつも返信があった。
嬉しかった。
でも同時に、分かっていた。
画面の向こうの人だ。推しと俺。その関係が変わることなんてない。
──そう思っていた。
ある夜。新着動画。
「【重大告知】オフ会やります!♡ 抽選で30名!」
応募フォームに迷わず入力した。
『登録者230人の頃から見ています。最初の自己紹介動画に一番乗りでコメントしたのが俺です』
一週間後──当選メールが届いた。
「っしゃあああ!!」
ワンルームで一人叫んだ。
4月12日。土曜日。快晴。
会場は表参道のおしゃれなカフェ。
開場の30分前に着いてしまった。明らかに早すぎる。
(落ち着け、俺……。ただのオフ会だぞ)
でも心臓がバクバクしている。
服は三日前から選んだ。黒のテーラードジャケットに白T、細身デニム。清潔感重視。美容院にも行った。
開場時間になって、スタッフに案内されてカフェに入る。何人かのファンが既に来ていた。年齢層は様々。みんなそわそわしている。
席についてコーヒーに口をつけた。
そして──
「お待たせしました〜! 白石ひなのです!」
カフェの奥から、本人が現れた。
息が、止まった。
動画で見るより──遥かに可愛かった。
白いワンピースに薄手のカーディガン。栗色の髪がゆるくカールしている。肌が白い。目が大きい。唇がつやつや。
そして、動画では分かりにくかった──スタイルがとんでもなかった。
ワンピースの上からでも分かる豊かな胸元。ウエストは細いのに、胸だけがしっかり主張している。
(Eカップって噂、マジだったんだ……)
「皆さん今日は来てくれて本当にありがとうございます♡」
ひなのがぺこりとお辞儀する。その拍子に揺れる胸から慌てて目を逸らした。
ひなのが一人ずつ話して回る中、俺のテーブルに来た。
「初めまして、藤原蓮です」
「藤原……蓮……? えっ! 蓮くん!? あの蓮くん!?」
ひなのの顔が輝いた。両手で口を覆って、目を潤ませる。
「ずっと会いたかった♡ 一番最初からいてくれた蓮くんに! あの頃のコメント、全部スクショして保存してるんだよ?」
「マジで……?」
「マジだよ♡」
その笑顔が──動画のどの瞬間よりも眩しかった。
オフ会終了後。
「蓮くん、この後少しお話しできませんか? 他のファンには内緒で……♡」
断る理由が、一つも見つからなかった。
「もちろん」
ひなのの顔がぱっと明るくなった。
表参道の裏道にある、隠れ家みたいな小さなカフェ。客は俺たちだけだった。
向かい合って座る。目の前にいるのは登録者42万人のYouTuber。俺の推し。
なのに──
「ふぅ……♡ やっと二人きりだ〜」
ひなのは動画のキラキラした雰囲気とは全然違う、リラックスした表情をしていた。
「あのね、蓮くん。動画の私って、けっこう作ってるの知ってた?」
「え?」
「丁寧な喋り方とか、品のある感じとか……カメラの前だからやってるの。本当の私はもっと普通♡ 家ではジャージでゴロゴロしてるし、寝起きはめっちゃ不機嫌だし、一人の時は『ヤバ』とか『ウケる』とか普通に言うし」
「……へぇ」
意外だった。でも──
「なんかちょっと安心した」
「え?」
「動画のひなのは完璧すぎて、正直ちょっと遠い存在だった。でも今のひなのは……なんか、普通に可愛い」
ひなのが目を丸くして──ふにゃっと笑った。
「なにそれ……♡ 蓮くんって、そういうこと言うんだ」
「変なこと言ってすみません──」
「ううん。嬉しい♡」
ひなのが真っ直ぐこっちを見た。
「蓮くんのコメント、二年半分全部読んでるよ。新しい動画上げるたびに、蓮くんからコメント来てるかな、って最初に確認するの」
「……」
「私ね、蓮くんのことずっと気になってたんだ。どんな人なのかなって」
ひなのの頬がうっすら赤い。
「……蓮くん。連絡先、交換しよ♡」
LINEのやり取りが始まった。毎日メッセージが来る。素のひなの。スタンプ連打。深夜のボイスメッセージ。ジャージ姿の自撮り。
三日迷って、デートに誘った。
既読から返信まで23秒。
『行く♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡♡』
日曜日。待ち合わせは恵比寿。
ひなのは白いブラウスにベージュのプリーツスカートで現れた。軽くウェーブのかかった髪。薄いメイク。
「蓮くん! お待たせ♡」
小走りで駆け寄ってくる。ふわりと甘い香り。
「全然待ってない。……可愛いね、今日」
「えっ♡ ……ありがとう♡」
ぱっと顔を赤くして、髪を耳にかけた。
イタリアンのお店でパスタとワインを頼んだ。
「へ〜、蓮くんSEなんだ。かっこいい」
「全然。毎日パソコンとにらめっこしてるだけ」
「でもちゃんと仕事してる人って好き♡ 私の周りYouTuberとかフリーランスばっかりだから新鮮」
ひなのがワインを傾けながら笑う。
「登録者5万人の時、ひなのが『疲れちゃった』って動画出したの覚えてる?」
「……覚えてる」
「俺があの時コメントに書いた。『無理しなくていいから。ひなのが楽しんでる動画が一番好きです』って」
ひなのの目が潤んだ。
「あの時本当に辞めようとしてた。でも蓮くんのコメント読んで泣いちゃったの。蓮くんがいなかったらあのチャンネルは存在してない」
食事の後、夕暮れの恵比寿を並んで歩いた。
夕日がビルの間から差し込んで、ひなのの横顔を照らしている。
「今日、楽しかった♡」
「俺も」
「──ひなの」
立ち止まった。ひなのも足を止めて振り返る。
「ん? どうしたの?」
夕日が栗色の髪をオレンジに染めている。大きな瞳が俺を映す。
「ずっと画面の向こうで見てた。手が届かない存在だと思ってた」
「蓮くん……」
「でもこうして隣にいると──もっと欲張りたくなる」
一歩、近づいた。ひなのの甘い香りがふわりと届く。
「画面の向こうじゃなくて、隣にいてほしい。俺の隣に」
ひなのが息を飲んだ。みるみる涙が溜まっていく。
「ひなのが好きだ。YouTuberの白石ひなのじゃなくて──今ここにいる、素のひなのが好きだ。付き合ってほしい」
沈黙。二秒。永遠みたいに長かった。
「──ずるい♡」
ひなのが涙を一筋流しながら、笑った。
「そんな言い方、ずるいよ♡♡ 泣いちゃうじゃん♡♡」
「……それは、」
「好き♡ 私も蓮くんのこと好き♡ オフ会で会った時から……ううん、もっと前から。コメント読んでた時から、ずっと気になってた♡」
ひなのが俺の胸にぽすんと額をつけた。
「隣にいたい♡ 蓮くんの隣がいい♡」
ひなのの肩をそっと抱き寄せた。小さくて、温かかった。
──画面の向こうの推しが、俺の彼女になった。
「蓮くん、今日うち来ない? ……蓮くんともっと一緒にいたいの♡」
ひなのの家は中目黒のマンションの一室だった。
「ちょっと散らかってるけど……入って♡」
1LDK。リビングの一角に撮影用のリングライトとカメラ。
「ここで撮ってるんだ」
「そう♡ おしゃれなカフェ風背景は全部セットで、裏側は段ボールだらけ♡」
ひなのが笑いながらカーディガンをソファに放る。
「飲み物なに飲む? ビールとチューハイと……ワインもあるよ」
「じゃあビール」
缶をこつんとぶつけて乾杯。
(推しの家にいるんだ俺は……)
まだ頭がふわふわする。
「ねね、蓮くん」
「ん?」
「私の最初の動画、まだ覚えてる?」
「自己紹介のやつ? カメラ目線定まってなくて、途中で犬の鳴き声入ったやつ」
「やだ! あれ恥ずかしいんだけど!?」
バシバシ腕を叩かれた。
「あれ見て、この子面白いなって思った」
「面白い!? 可愛いとかじゃなくて!?」
「可愛いのは最初から。でもそれだけじゃなかった。応援したくなった」
「……♡」
ひなのが缶を両手で包んで、小さく笑った。
「蓮くんの最初のコメント、何回も読み返したんだよ♡」
レモンサワーを飲むひなのの唇がグロスでつやつや光っている。
「……蓮くん」
「うん」
「付き合うって、キスとかするんだよね♡」
潤んだ瞳。赤い頬。
「……したい♡」
缶をテーブルに置いて、ひなのの頬に手を触れた。
「あっ……♡」
唇が、触れた。
ちゅ。
柔らかい。レモンサワーの味。
「ん……♡ もっと……♡」
もっと深く唇を重ねる。舌が絡む。
「ん……んん……♡♡」
ソファに押し倒す。ちゅ、くちゅ、と水音が響く。
「ふぁ……♡ もっとして♡」
キスしながら、ブラウス越しに胸に触れた。
「ひっ……♡ やめないで……♡ 触って……♡」
手のひらに収まりきらない。動画では緩い服で隠していたけど──本当にすごい。
「直接、触っていい?」
「……うん♡ 可愛い下着にしてきちゃった……♡ 期待しちゃってた……♡♡」
ボタンを外すと薄いラベンダーのレースブラ。ホックを外した瞬間──ぶるんっ♡
白い肌に薄ピンクの乳首。Eカップ。本物だ。
両手で包み込んだ。むにゅ……♡
「はぁっ……♡」
揉みしだきながら、乳首をちゅっと吸った。
「ひゃあっ♡♡ そこ敏感なのっ♡♡」
ちゅう、ちゅう、と音を立てて舌で転がす。
「あっ♡ んんっ♡♡ 気持ちいい……♡♡」
42万人のファンの誰も知らない、ひなのの甘い声。
ベッドに移動した。ラベンダーのシーツ。
ショーツを脱がすと──もうぐっしょり濡れていた。
「キスと胸で、もうとろとろで……♡♡」
指でそっと花びらに触れる。くちゅ。
「ひゃっ♡♡」
小さな突起をくるくる撫でながら、中指をゆっくり沈めていく。
ずぷ……♡
「あああっ♡♡♡ 蓮くんの指、すごい……♡♡」
奥のざらついた場所を見つけて刺激すると──
「そこっ♡♡ やばいっ♡♡♡ いっちゃうぅっ♡♡♡♡ ──っ♡♡♡♡♡」
びくんっ、びくんっ。ひなのが大きく震えて脱力した。
「はぁ……♡ すご……♡♡」
息を整えたひなのが、俺の前にちょこんと座った。
「私も蓮くんに気持ちよくなってほしい♡」
ベルトを外してジッパーを下ろすと──がちがちに硬くなったそれが跳ね出た。
「わ……♡♡ 大きい……♡♡」
細い指で包み込んで、きゅっきゅっと上下に動かす。
「気持ちいい?♡ ……もっと気持ちよくしてあげる♡」
ちゅ、と先端にキスしてから──はむっとくわえた。
ずぷ……♡
「んぐっ……♡ じゅる……♡♡ しょっぱい……♡♡」
ちゅぽ、ちゅぽ、と頭を前後に動かしながら舌を絡める。上目遣い。涙目。よだれが垂れるのも気にしない。
清楚なYouTuberが──俺のを夢中でしゃぶっている。
「ひなのっ……出ちゃう……っ」
ちゅぽん、と口を離したひなのが言った。
「出さないで♡ 中に出して♡♡ 蓮くんの欲しいの♡♡♡」
ひなのを仰向けに横たえた。脚の間に体を割り込ませる。
「ゴム、持ってなくて……」
「いらない♡ そのまま欲しいの♡♡ 安全日だから♡」
先端を入り口に当てた。ぬるり。
「……来て♡♡」
ゆっくりと腰を進める。
ずぷ……ずぷぷ……♡♡
「あ……あああっ♡♡♡ おっきい……♡♡ 奥に当たって……♡♡♡」
熱い。きつい。でもとろとろに濡れているから奥まですると入っていく。
動き始めた。
ずちゅっ♡ ずちゅっ♡
「あっ♡ あっ♡♡ 気持ちいい……♡♡ 蓮くん気持ちいいよぉ……♡♡♡」
ぱんっ、ぱんっ、と肌がぶつかる音。
「もっと♡ もっと奥まで♡♡♡」
ひなのが首に両腕を回す。胸がぎゅうっと押し付けられて柔らかさが広がる。
「れんくんっ♡♡ すきっ♡♡ すきぃっ♡♡♡」
「俺も好きだ、ひなの……っ」
奥の奥を突き上げる。
ずんっ♡♡
「ひゃあああっ♡♡♡♡ そこすごいっ♡♡♡♡ いっちゃっ♡♡ またいっちゃうぅっ♡♡♡♡♡」
「俺ももう──っ」
「中にっ♡♡ 中に出してっ♡♡♡ 全部ちょうだいっ♡♡♡♡」
奥まで押し込んで──
どぷっ♡♡♡ どぷどぷどぷっ♡♡♡♡
「あっ♡♡♡ きたっ♡♡♡ 中にいっぱい出てるぅっ♡♡♡♡♡」
全部出した。何度も何度も。
「あったかい……♡♡ 蓮くんの、中にいっぱい……♡♡♡」
ぎゅっと抱きしめ返してきた。
「……もう一回、してもいい?♡」
数分後。ひなのがするりと俺の上に跨った。まだ繋がったまま。
「今度は私が動いてあげる♡」
腰を持ち上げて──ずぶっ、と落とす。
ぐちゅっ♡♡
さっき出したのが結合部からあふれ出る。
「やだ♡♡ 出てきちゃう……♡♡ でも気持ちいい……♡♡♡」
上下に動き始めた。栗色の髪が揺れる。大きな胸がぷるんぷるん弾む。
42万人のファンが夢見る顔を、俺だけが見ている。
「触ってよぉ♡♡ おっぱい揉みながらしたいの♡♡♡」
揺れる胸を両手で鷲掴みにした。むにゅんっ♡♡
「あっ♡♡♡ 両方はずるいよぉっ♡♡♡♡」
ぱんっ♡ ぱんっ♡ ぱんっ♡♡ 腰の動きが速くなる。
「やばっ♡♡ また来ちゃっ♡♡♡」
「俺も──っ」
「一緒にいこっ♡♡♡♡」
ずちゅんっ♡♡♡ ずちゅんっ♡♡♡
「いくっ♡♡♡ いくいくいくぅっ♡♡♡♡♡」
ひなのの中がぎゅうううっと締め上げて──
どぷっ♡♡♡ どぷどぷっ♡♡♡♡
二回目。また奥に全部出した。
「あっ♡♡♡♡ また中にっ♡♡♡♡ いっぱいっ♡♡♡♡♡♡」
ひなのが俺の上に崩れ落ちた。柔らかい胸が密着する。
「はぁ……♡♡ すごかった……♡♡♡♡」
翌朝。ひなのの部屋で目が覚めた。
隣で無防備に寝てるひなの。ちょっとよだれ出てる。髪ぼさぼさ。
──可愛い。
「……れんくん、おはよ♡」
寝起きの声。かすれていてセクシー。
「んー……えへへ、夢じゃなかった♡♡」
布団の下で裸のまま腕にぎゅっと抱きつかれる。
「あ、蓮くん。お願いがあるの♡」
ひなのがスマホを取ってカメラを起動した。
「次の動画、『彼氏ができました』ってタイトルにしようと思ってて♡」
「え」
「蓮くんも出てよ♡ 顔は映さなくていいからさ♡」
「42万人に見られるんだけど……」
「いいじゃん♡♡ 私の一番最初のファンで、私の彼氏♡ 最高のストーリーでしょ♡」
ひなのがカメラをこっちに向けた。
「みなさんこんばんは〜! 白石ひなのです! 今日は重大発表があります♡♡♡」
朝日の中でひなのが笑っている。
動画のキラキラした白石ひなのでもなく、ファンの前の完璧な白石ひなのでもなく。
俺だけが知っている、素顔の──俺の彼女のひなのが。
「次の動画に出てよ♡」
──推しが彼女になった日から、俺の人生は再生回数なんかよりずっと最高になった。
Fin.