転職先の学童保育で一番下っ端の俺が、年上の女性指導員のトラブルに巻き込まれて距離がバグった夜

こんにちは。当時28歳、今は30になった男です。

2年前の話なんですけど、俺はそれまで5年間やってた営業職を辞めて、地元の学童保育の指導員に転職しました。理由はシンプルで、毎日終電まで数字に追われる生活に心が死んだからです。子どもが好きだったわけでもない。ただ「もう少し人間らしく生きたい」みたいな、漠然としたやつ。

で、転職先は埼玉の武蔵浦和にある学童保育。職員は俺を含めて5人。俺は当然一番の新入り、一番の下っ端。しかも他の4人のうち3人が女性で、うち2人は保育士の資格持ち。俺は放課後児童支援員の研修をやっと終えたばっかり。

(完全にアウェーじゃん…)

初日から空気が読めなくて、おやつの配膳の順番を間違えたり、連絡帳の書き方が違うって注意されたり。営業時代はそれなりにやれてたつもりだったんですけど、ここでは本当にポンコツだった。

そんな職場で、一人だけ俺にやたら丁寧に教えてくれる人がいました。

宮田さん。32歳。保育士歴8年。身長158cmくらいで、髪はいつもひとつ結び。顔は――これ本人に言ったら怒られそうだけど、新垣結衣をもう少し丸くした感じ。笑うと目がなくなるタイプの人で、子どもたちからは「みやちゃん」って呼ばれてた。

(あ、この人めっちゃいい人だな…)

最初はそれだけ。マジでそれだけだった。

宮田さんは子どもへの接し方が異常にうまくて、暴れてる男の子を叱るときも声を荒げない。しゃがんで目線を合わせて、「どうしたの、なんか嫌なことあった?」って聞く。すると不思議なことにだいたい子どもが泣き出して、それを宮田さんが抱きしめて終わる。

俺が同じことやると「うるせーバカ!」って蹴られる。

「宮田さん、俺なんか子どもに舐められてる気がするんですけど…」

「舐められてるんじゃなくて、試されてるんだよ。新しい大人が来たから、どこまでやったら怒るか見てるの」

「見てるって…あいつらそんな計算高いんですか」

「子どもなめちゃだめだよ。大人より空気読むから」

こういう会話を毎日のようにしてた。仕事終わりに事務室で記録を書きながら、ぽつぽつと。宮田さんは俺の記録の書き方にも赤ペンを入れてくれて、最初の1ヶ月はほぼ家庭教師状態だった。

転職して2ヶ月目のある金曜日。その日は午後から大雨で、お迎えが遅れる家庭が続出した。最後の子どもを19時半に送り出して、俺と宮田さんだけが事務室に残ってた。

「はー、疲れた…」

宮田さんがデスクに突っ伏した。普段そういうの見せない人だったから、ちょっとびっくりした。

「大丈夫ですか?」

「うん…ごめんね、ちょっと今日いろいろあって」

「いろいろ」が何かは聞けなかった。聞いていい距離じゃないと思ったから。

でもその翌週の月曜、宮田さんの左手の薬指から指輪が消えてた。

(え? 宮田さん、彼氏いたの? っていうか婚約してたの?)

俺はそんな基本情報すら知らなかった。下っ端すぎて、職場の人間関係の情報網に入れてもらえてなかったのだ。後から別の指導員の高橋さんに聞いたら、宮田さんは3年付き合ってた彼氏と最近揉めてたらしい。

(いや、俺に関係ないし…)

本気でそう思ってた。そのときは。

でも問題は、宮田さんの様子が明らかにおかしくなったこと。子どもの前では普通に振る舞ってたけど、事務室に戻ると目が赤かったり、昼休みにトイレから出てこなかったり。

ある日の夕方、倉庫に教材を取りに行ったら、宮田さんがスチール棚の陰でスマホを見ながら泣いてた。

俺はとっさに引き返そうとしたんだけど、靴がキュッて鳴って、宮田さんがこっちを見た。

「あ…」

「す、すみません、教材取りに…」

「ごめんね。見苦しいとこ見せて」

「いえ、全然…あの、俺で良ければ話聞きますけど」

なんでそんなこと言ったのか、自分でもわからない。下っ端のくせに。入って2ヶ月の新人のくせに。でも泣いてる人を放置して教材だけ持って帰るのは、なんか違うと思った。

宮田さんは少し迷った顔をして、それから小さく笑った。

「じゃあ…今日、仕事終わったらちょっとだけ付き合ってくれる?」

武蔵浦和駅前のサイゼリヤ。宮田さんはデカンタのワインを頼んで、俺はドリンクバー。

「彼氏と別れたの。先週」

「あ、やっぱり…指輪してないなって」

「気づいてたんだ」

「まあ、一応…」

(気づいてたっていうか、宮田さんの手元をよく見てたっていうか…いや、これは仕事の話だから。記録の書き方教えてもらうとき手元見るから。そういうこと)

宮田さんは500mlのワインを1時間で空けながら、ぽつぽつと話してくれた。3年付き合ってた相手は同い年の会社員で、去年プロポーズされたけど、「保育士辞めて家に入ってほしい」と言われたのが引っかかってた、と。

「私がこの仕事好きなの知ってるくせにさ。子どもたちのこと『他人のガキ』って言うんだよ、あの人」

「…それはちょっと」

「でしょ?でもね、周りはみんな『32で結婚できるチャンス逃すな』って。母親にも泣かれた」

「で、別れたんですか」

「うん。私が悪いのかな」

「いや、悪くないでしょ。好きな仕事辞めろって言われて、はいそうですかってなるほうがおかしくないですか」

我ながら偉そうなことを言ったと思う。営業辞めてここに来た人間が何を言ってるんだって話だけど。

でも宮田さんは俺の顔を見て、目を見開いて、それから泣いた。さっきの倉庫のときと違って、声を出して泣いた。サイゼの端っこの席で。

(えっ、ちょ、やばい、周りの目…)

「ごめん…なんか、そう言ってくれたの、あんただけだから…」

「あんた」って呼ばれたのはそのときが初めてだった。いつも「高瀬くん」か「高瀬さん」だったのに。

その日から、なんとなく二人の距離がおかしくなった。

仕事中は今まで通り。でも仕事が終わると「今日も少しだけ」ってサイゼに行くようになった。宮田さんはいつもワイン、俺はドリンクバー。彼女の話を聞いて、たまに俺の前職の愚痴を言って。

3回目のサイゼのとき、宮田さんが唐突に言った。

「高瀬くんってさ、彼女いるの?」

「いないですよ。3年いない」

「へー。なんで?」

「なんでって…営業時代は時間なかったし、転職してからは余裕なかったし」

「ふーん。顔は悪くないのにね」

「悪くないって…フォローが下手すぎません?」

「あはは、ごめんごめん」

この人、酔うと笑い方が雑になるんだよな。普段の丁寧な感じが崩れて、なんか、その、ちょっとかわいいなって。

(いやいやいや。先輩だぞ。4つ上だぞ。つい最近別れたばっかりの人だぞ)

俺は必死に自分にブレーキをかけてた。でもたぶん、全然効いてなかった。

転職して3ヶ月目。事件が起きた。

学童にちょっと問題のある保護者がいて、お迎えのときに宮田さんに「うちの子の扱いが雑だ」ってクレームをつけてきた。正直、宮田さんの対応はまったく問題なかったし、その保護者が毎回何かしら文句を言うタイプなのは職員全員知ってた。

でもその日はちょっと異常で、保護者の男性が宮田さんに詰め寄って、「責任者出せ」「お前みたいのが子どもに関わるな」って大声を出した。

宮田さんは普段通り冷静に対応してたけど、俺はカウンターの向こうで見てて、手が震えてるのがわかった。

施設長の判断で、その場は収まった。保護者が帰ったあと、宮田さんはいつもの笑顔で「大丈夫、慣れてるから」と言った。

でも帰り際、駐車場で宮田さんの車のドアが開きっぱなしだった。運転席に座ったまま、ハンドルに額をつけて動かない。

「宮田さん」

「…ああ、ごめん。ちょっとぼーっとしてた」

「運転、大丈夫ですか? 送りましょうか。俺、電車通勤だし」

「…お願いしていい?」

宮田さんの車はフィットの水色。助手席に宮田さんを座らせて、俺が運転した。宮田さんの家は中浦和のマンションで、武蔵浦和から車で10分もかからない。

着いたとき、宮田さんが降りようとしない。

「ねえ、上がってかない? お礼にご飯作るよ」

「いや、俺は…」

「一人にしないで」

その声が、子どもに対するときとも、サイゼで愚痴るときとも違ってた。本当に怖がってる人の声だった。

宮田さんの部屋は1LDK。片付いてるけど、キッチンの隅にまだ男物のマグカップが残ってた。たぶん元彼の。

「あ、それ…捨てなきゃって思ってるんだけどね」

「いいですよ、自分のペースで」

宮田さんはパスタを茹でてくれた。ペペロンチーノ。にんにくの量がおかしくて、食べたら口の中が燃えた。

「みや…宮田さん、これにんにく何かけら入れました?」

「え、5つ?」

「5は多いでしょ」

「あはは、雑に作っちゃった。ごめんね」

二人で笑いながら食べた。あのサイゼの席で飲んでたときと同じように。でも距離は全然違った。

食後、ソファに並んで座って、テレビをつけたけどどっちも見てなかった。

「ねえ高瀬くん」

「はい」

「私ね、あの保護者に言われたこと、本当は結構きてて」

「でしょうね」

「『お前みたいのが子どもに関わるな』って…元彼にも同じようなこと言われたから」

「…」

「私が間違ってるのかなって、たまに思う」

「間違ってないですよ」

「どうしてそう言い切れるの」

「だって俺、宮田さんに教えてもらわなかったら1週間で辞めてましたもん。子どもへの接し方も、記録の書き方も、全部。宮田さんがいなかったら俺この仕事続けてないです」

(あれ、俺なんでこんな真面目なこと言ってんだ)

宮田さんが俺を見てた。テレビの光がその顔を横から照らしてて、目がうるんでるのがわかった。

「高瀬くん、ずるいよ」

「え?」

「そういうこと…弱ってるときに言わないで…」

「あ、すみません、俺別にそういうつもりじゃ…」

「わかってる。わかってるけど…」

宮田さんが俺の肩に頭を乗せてきた。

心臓がうるさすぎて、たぶん宮田さんにも聞こえてたと思う。

「宮田さん…」

「少しだけ。少しだけこうさせて」

シャンプーの匂いがした。汗とかじゃなくて、ちゃんとシャンプーの匂い。一日の終わりなのに。

(やばい。やばいやばいやばい。先輩だぞ。別れたばっかだぞ。反動だぞこれは。俺が好きなわけじゃなくて、弱ってて、たまたま俺がいるだけで…)

でも、頭ではそう考えてるのに、体が動いてしまった。宮田さんの肩に手を回してた。

宮田さんが顔を上げた。近い。近すぎる。

「…キスしていい?」

「え…いいんですか」

「聞いてるのは私」

唇が触れた。ワインの味がした。さっき食後に飲んでた赤ワインの。

最初は触れるだけだったのが、宮田さんのほうから深くなった。舌が入ってきて、俺の口の中を探るように動いて。

(にんにく臭くないかな俺…)

こんなときにそんなこと考えてる自分が情けなかった。

「ん…」

キスしながら宮田さんの体を抱き寄せると、思ったより細かった。仕事中はエプロンの下がよくわからなかったけど、腰がくびれてて、でもお尻はちゃんとある。

唇を離したとき、宮田さんの顔が真っ赤だった。

「ごめん…私から誘っといて、すごい緊張してる…」

「俺もですよ。心臓やばいです」

「…あはは。そっか」

宮田さんが俺のシャツの胸元を掴んだ。

「ねえ。奥…行こ」

寝室に入って、ベッドの上で向かい合った。宮田さんは自分からトップスを脱いだ。白いブラジャー。飾り気のない、でもちゃんと肌に合ってる感じのやつ。

「…」

「何?」

「いや、すげえ綺麗だなって…」

「お世辞でも嬉しい」

「お世辞じゃないです」

宮田さんのブラを外すと、Cカップくらいの胸が出てきた。大きくはないけど形が綺麗で、先端が薄いピンクだった。

(いいのかこれ。本当にいいのか。明日から気まずくならないか。っていうか俺、この人のこと好きなのか? 好きなのかどうかもわかんないのに…でもたぶん、好きだ。たぶんじゃなくて、好きだ)

もうブレーキは効かなかった。

宮田さんの胸に顔を埋めた。舌で先端を転がすと、宮田さんが声を殺して震えた。

「んっ…そこ、弱い…」

「ここ?」

「うん…あっ…」

右手をスカートの中に入れた。太ももの内側が熱い。下着の上から触ると、もう湿ってた。

「…恥ずかしい。濡れてるの、わかるでしょ」

「わかります」

「意地悪…」

下着をずらして直接触った。指を滑らせると、宮田さんの腰がびくって跳ねた。

「あっ…んん…」

クリトリスを親指で円を描くように触りながら、中指をゆっくり入れた。中は熱くて、きゅっと締まってくる。

「やっ…指、動かさないで…いく…いっちゃう…」

「いっていいですよ」

「だめ…まだ早い…あっ、あっ…」

宮田さんが俺の肩にしがみついて、全身を震わせた。びくびくって痙攣するように。しばらくして、力が抜けて俺にもたれかかってきた。

「はぁ…はぁ…」

「大丈夫ですか」

「…大丈夫じゃない。こんな早くいくの久しぶりで恥ずかしい…」

宮田さんが俺のベルトに手を伸ばしてきた。ズボンを下ろされて、もう完全に硬くなってるのが露わになる。

「…おっきい」

「普通ですよたぶん」

「いや、元彼より…って、ごめん、こんなとき元彼の話」

「いいですよ別に」

(全然よくねえけど。まあいいや)

宮田さんが俺のものを握って、ゆっくり上下に動かしてくれた。手が小さいから、指が全部は回りきらない。でもそのぎこちなさがかえってよかった。

「宮田さん…入れたい」

「…うん」

「ゴム、ありますか」

「…ない。捨てちゃった、全部」

「えっ」

「元彼と使ってたやつだから…なんか嫌で」

(いや、その気持ちはわかるけど…)

財布の中を探ったら、半年前に先輩に押し付けられた1個が奇跡的に出てきた。有効期限はギリギリセーフ。

「あった」

「なんで持ってるの…」

「いやこれは前の会社の先輩が…」

「あはは、まあいいや」

ゴムを着けて、宮田さんの脚の間に体を入れた。先端を当てると、宮田さんが息を呑んだ。

「入れますよ」

「…うん」

ゆっくり入れた。中が熱くて、きつくて、頭がぼうっとした。

「あ…っ…」

「痛くないですか」

「痛くない…けど…久しぶりだから…ちょっと待って…」

しばらくそのまま動かずにいた。宮田さんが俺の背中に手を回して、深呼吸を繰り返してる。

「…いいよ。動いて」

ゆっくり腰を動かし始めた。引いて、押して。宮田さんの中が俺を包み込むように締めてくる。

「んっ…あ…そこ…いい…」

「ここ?」

角度を少し変えたら、宮田さんが急に大きな声を出した。

「あっ…やば…そこ当たる…っ」

腰の動きを速めた。ベッドが軋む音と、肌がぶつかる音が部屋に響いてた。

(信じられない。本当にこれ現実か? さっきまで先輩と後輩だったのに。下っ端の俺が、宮田さんと)

宮田さんが俺の首に腕を回してきた。耳元で荒い息がかかる。

「高瀬くん…高瀬くん…っ」

名前を呼ばれるたびに頭がおかしくなりそうだった。

「宮田さん…俺、そろそろ…」

「いいよ…出して…中に出して…」

「いやでも…ゴムしてるとはいえ…」

「いいから…お願い…一緒に…」

限界だった。腰を深く押し込んで、宮田さんの中で果てた。宮田さんも同時にびくびくって震えて、俺の背中を爪で引っ掻いた。

「はぁ…はぁ…」

しばらく二人とも動けなかった。俺が体を離そうとしたら、宮田さんが腕を離さなかった。

「もう少し…このまま…」

「重くないですか」

「重い。でもいい」

そのまま2分くらい抱き合ってた。宮田さんの心臓の音が伝わってきて、どくどくって速いのがわかった。

体を離して、使い終わったゴムを処理して戻ったら、宮田さんがシーツに包まって天井を見てた。

「ねえ」

「はい」

「これ…一回だけ?」

「…俺は、一回だけは嫌です」

「…そっか」

「宮田さんは?」

「…私も」

宮田さんが小さく笑った。そのあと、にんにく臭い息で笑いながら「お風呂入ろ」って言って、一緒にシャワーを浴びた。宮田さんの体は裸で見るとやっぱり細くて、背中の肩甲骨が目立ってて。

シャワーを浴びながら、宮田さんが俺の胸に顔を押し付けてきた。

「ねえ、明日からどうする」

「どうするって…」

「職場で気まずくならない? 私、あんたの先輩だよ?」

「まあ…バレたら面倒ですよね」

「うん。だから職場では今まで通り」

「了解です」

「…でも、帰りは一緒に帰りたい」

「俺もです」

風呂から上がって、宮田さんに借りたでかいTシャツを着て、ベッドに二人で転がった。

「ねえ、ひとつ聞いていい?」

「はい」

「高瀬くんは…私のこと、いつから?」

「…たぶん、倉庫で泣いてたの見たときから」

「あのとき?」

「いや、正確には…初日からかもしれない。記録の書き方教えてもらったとき、赤ペンの字がめちゃくちゃ丁寧で、この人すげえなって」

「赤ペン…? そこ?」

「そこです」

「変なの…あはは」

宮田さんが笑って、俺の腕の中にすっぽり収まった。

「宮田さん」

「ん?」

「付き合ってください」

「…順番おかしくない?」

「おかしいですね。完全に」

「…うん。付き合う」

そのまま、二人で眠った。翌朝、宮田さんのスマホのアラームで起きた。6時15分。隣で寝てる宮田さんの顔を見て、夢じゃないことを確認して、それからコンビニまで走って朝飯を買いに行った。

あれから2年。俺と宮田さん――今は名前で呼ぶようになった、さやかさん――はまだ付き合ってる。職場にバレたのは半年後で、高橋さんに「知ってたよ」って言われた。「帰りに駐車場で手を繋いでるの見えてたから」って。

(いやもっと早く言ってくれよ…)

さやかさんのにんにくペペロンチーノは相変わらずにんにく5かけら。俺はもう慣れた。


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