これ書いていいのかわかんないけど、まあ聞いてくれ。
俺、27歳。都内のIT企業で働いてる、どこにでもいるSE。身長172センチ、体重はまあ70キロぐらい。顔は…友達には「雰囲気イケメン」って言われるけど、それって要するに雰囲気でごまかしてるだけだからな。星野源から華を抜いた感じって言えば伝わるだろうか。伝わってほしくないけど。
で、なんで俺がこんな話を書いてるかっていうと、趣味で通ってた社会人向けのクロッキー会がきっかけなんだわ。
クロッキーってのは、短時間でモデルをスケッチする練習のこと。美大出身でもなんでもないんだけど、大学の一般教養で取った美術の授業がきっかけで絵を描くようになって、社会人になってからも御茶ノ水のアトリエで月2回やってるクロッキー会に参加してた。参加者は大体10人ぐらいで、40代50代の主婦とか定年後のおじさんとかが多くて、俺みたいな20代は珍しい方だった。
で、その日のこと。
2月の土曜日、いつも通り御茶ノ水駅から歩いて5分のアトリエに行ったら、主催の高木さん(60代のおばさん、元美大教授)が困った顔してた。
「高木さん、どうしたんですか」
「あー宮田くん、ちょうどよかった。今日のモデルさんがインフルで来れなくなっちゃって」
「まじすか」
「で、ちょっとお願いがあるんだけど…」
嫌な予感しかしない。
「今日、宮田くんモデルやってくれない?」
「は?」
「着衣でいいから!着衣クロッキーってことで!ね?」
まあ着衣ならいいかと思って引き受けた。ポーズとるだけだし。
で、椅子に座っていろんなポーズを取ってたんだけど、途中で高木さんが「もうちょっと肌の面積がほしいのよねえ」とか言い出して、結局上だけ脱ぐことになった。2月のアトリエ、暖房はあるけど普通に寒い。(なんで俺が…)と思いながらも、まあ筋トレの成果を見せる場だと思えばいいかと自分に言い聞かせた。
そしたら、10分休憩のタイミングで、アトリエのドアが開いた。
「すみません、遅れました…!」
聞き覚えのある声に振り返ると、そこにいたのは――会社の後輩の中野だった。
中野。入社2年目、経理部。俺とはフロアが違うけど、新人歓迎会で同じテーブルになって以来、たまに社食で会うと話す程度の関係。橋本環奈をもうちょっとシュッとさせた感じの顔立ちで、身長は160ぐらい。いつも会社ではブラウスにカーディガンっていう地味めの格好をしてて、おとなしい印象だった。でも笑うと八重歯がちょっと見えて、それがやたら可愛いんだよな。
…って、なんで中野がここにいるんだよ。
「あれ、宮田さん…?」
中野も完全に固まってた。しかも俺、上半身裸。
「…どうも」
「え、なんで…裸…?」
「いや、モデルが来れなくなって、代打で…」
「え、宮田さんがモデルなんですか?」
高木さんが「あら、お知り合い?ちょうどいいわ、中野さんもこっち座って」と巻き込んでいく。聞けば中野は先月から参加し始めたらしい。俺が前回休んだ回に初参加だったから、会わなかったわけだ。
で、俺は再びポーズを取らされる。上半身裸で。会社の後輩の目の前で。
(これ、月曜日どういう顔して会えばいいんだよ…)
中野は最初こそ目を合わせられない感じだったけど、スケッチが始まると真剣な顔になった。鉛筆を走らせる横顔がまた…いや、余計なこと考えるな。モデルなんだから微動だにするなと自分に言い聞かせた。
休憩時間、Tシャツを着て中野のところに行った。
「中野、絵描くの好きだったの?」
「はい、高校のとき美術部で…。社会人になってからまた描きたくなって、ネットでここ見つけたんです」
「へえ、知らなかった」
「宮田さんこそ。SEなのに絵描くんですね」
「まあ、息抜きっていうか」
「あの…宮田さんの体、結構すごいですね。筋トレしてるんですか」
「あー、うん、まあ週3ぐらいで」
「描きやすかったです。筋肉の付き方がわかりやすくて」
「芸術的な観点からの感想」ということは理解してるんだけど、会社の後輩に「体すごいですね」って言われると、なんかこう、変な気分になる。ならない方がおかしいだろ。
クロッキー会が終わって、一緒にアトリエを出た。
「宮田さん、このあと予定ありますか?」
「いや、特にないけど」
「あの、もしよかったら…ちょっと個人的にスケッチさせてもらえませんか。今日の20分ポーズ、途中で終わっちゃったので」
「え、どこで?」
「うち、すぐ近くなんです。御茶ノ水から歩いて7分ぐらいで…」
(いやいやいやいや)
会社の後輩の家で、上半身裸でポーズを取る。冷静に考えてヤバい。でも「芸術だから」っていう建前がある。芸術ってすげえな。何でも許される免罪符みたいだ。
…まあ、行くけど。
中野のマンションは築浅のワンルームで、思ったより広かった。6畳半ぐらいかな。壁にはいくつかデッサンが貼ってあって、静物画とか風景画とか。うまいな普通に。
「散らかっててすみません…。あ、お茶入れますね」
「ありがとう。ていうか中野、絵うまいな」
「えー全然ですよ、まだまだで…」
お茶をもらって少し話してから、スケッチ開始。窓際の椅子に座って、さっきと同じように上を脱いだ。部屋にはちゃんとエアコンがついてて、アトリエより暖かい。
中野はスケッチブックを膝に乗せて、真剣な目で俺を見てた。鉛筆の音だけが部屋に響く。なんだろう、この静けさ。クロッキー会の喧騒とは全然違う。2人きりで、しかも後輩の部屋で、上半身裸。状況だけ切り取ったら完全にアウトだ。
(でも、これは芸術だから…芸術だから…)
自分に言い聞かせてたんだけど、20分ぐらい経ったとき、中野が急に立ち上がった。
「宮田さん、すみません…あの…」
「ん?」
「もうちょっと…下も、描きたいんですけど…」
「下?」
「足の筋肉の付き方とか、全体のバランスを見たくて…。だからその…ズボンも脱いでもらえたら…」
顔真っ赤にしながら言ってくる。
「いや、それは…」
「パンツは履いたままでいいので!芸術ですから!」
芸術ですから、で済ませていい範囲がどんどん拡大してないか。
…でもまあ、海とかプールとか行けばパンツ一丁みたいなもんだし。そう思ってジーンズを脱いだ。ボクサーパンツ一枚。(今日わりとマシなやつ履いてきてよかった…)
中野はまた真剣な顔に戻ってスケッチを始めた。でも、さすがにさっきより目線の動きが落ち着かない感じだった。ちらちらと俺の下半身を見ては、すぐスケッチブックに視線を落とす。
15分ぐらいして、中野がぽつりと言った。
「宮田さんって、彼女いるんですか」
「いないけど。なんで?」
「いえ…なんとなく」
「中野は?」
「いません。ずっと」
「嘘だろ、中野めっちゃ可愛いじゃん。告白とかされないの」
「…されても、断っちゃうんですよね」
「なんで」
「好きな人が、いるから」
そう言って、中野は俺を見た。いや、正確には俺を「描くために見てた」のかもしれない。でもその目が、さっきまでと違う気がしたのは、俺の自意識過剰だろうか。
(いやいや、落ち着け。会社の後輩だぞ。しかも今の状況は「芸術」だ。変な空気にしちゃダメだ)
「そっか。その人、幸せ者だな」
「…どうですかね。気づいてないと思うので」
中野がスケッチブックを置いて立ち上がった。
「宮田さん、ちょっと見てもらっていいですか」
スケッチブックを受け取って見た。びっくりした。20分でこれかよって。筋肉のラインとか、陰影の付け方とか、素人の俺が見てもわかるぐらい丁寧に描かれてた。
「すげえな、中野…」
「ありがとうございます。でも、まだ全然…」
隣に立ってスケッチブックを覗き込む中野。近い。シャンプーの匂いがする。甘い、バニラっぽい匂い。
「ここの影の付け方とかめっちゃ好き」
「え、宮田さんわかるんですか?」
「一応俺も描いてるからな」
「あ、そうですよね…。私、宮田さんの絵も見たいです」
「俺のは大したことないって」
「謙遜しないでください。あ、そうだ…」
中野が何かを思いついた顔をした。
「宮田さんも、私を描きませんか?」
「え?」
「フェアじゃないですか、一方的に描くだけって。宮田さんも描いてくれたら、お互い様ってことで」
「まあ、それはそうだけど…」
「じゃあ決まりです。宮田さんが脱いでくれたんだから、私も同じ条件で」
は?
「いや、別に中野は脱がなくて…」
「フェアじゃないです」
なんかすごい真面目な顔で言ってくる。この子、経理部でも数字が1円でも合わないと帰らないって評判だったけど、そのきっちりした性格がこんなところで発揮されるとは。
中野がカーディガンを脱いで、ブラウスのボタンに手をかけた。
「ちょ、本気か…」
「芸術ですから」
その言葉、便利すぎだろ。
ブラウスが床に落ちて、白いブラジャーが現れた。華奢な肩。鎖骨がきれいに浮いてる。普段カーディガンに隠れてたけど、ウエストめちゃくちゃ細い。で、その割に胸がある。多分Cカップぐらい。いやDかもしれない。服の上からだと全然わからなかった。
(おい、見るな。これは芸術だ。芸術的な観点から観察しろ。デッサンのための観察だ)
無理。無理だよそんなの。会社の後輩がブラジャー一枚で目の前にいるのに「芸術的な観点」とか。
でも俺はプロだから。プロの何だかわかんないけど、とにかく平静を装ってスケッチブックと鉛筆を受け取った。
「じゃあ…そこの椅子に座って」
「はい」
中野が椅子に座る。窓からの午後の光が斜めに差し込んで、白い肌に影を作ってる。
…うん、絵としてはすごくいい光だ。絵としては。
描き始めた。鎖骨のライン、肩から腕にかけての曲線。描けば描くほど中野の体をじっくり見ることになる。デッサンってそういうものだ。観察が全て。でもこれ、普通に考えたらガン見してるのと変わんないからな。
10分ぐらい描いてたら、中野が口を開いた。
「宮田さん、私の体、描きにくいですか?」
「いや、なんで」
「さっきから、首から上ばっかり描いてるので」
バレてた。意識的に胸のあたりを避けてたのがバレてた。
「…そんなことないけど」
「ちゃんと全体を見てください。じゃないと、デッサン崩れますよ」
後輩に怒られた。正論すぎて何も言えない。
覚悟を決めて、ちゃんと全体を見て描き始めた。鎖骨から胸にかけてのライン。ブラジャーの上からでもわかる丸みのある形。くびれたウエスト。(落ち着け、これは芸術だ。芸術だ…)
20分が経って、なんとか一枚描き終えた。我ながらまあまあの出来だと思う。ちゃんとクロッキーとして成立してる。
「見せてください!」
中野が駆け寄ってくる。で、スケッチブックを見て、目を見開いた。
「…え、すごい。私、こんなふうに見えてるんですか」
「いや、そのまま描いただけだけど」
「なんか…きれいに描いてくれてますね」
「そのまま描いたらそうなっただけだって」
言ってから(あ、これ口説き文句みたいだな)と思ったけど、もう遅い。
中野が顔を上げて、俺を見た。近い。30センチぐらいの距離。八重歯がちょっと見えてる。呼吸が少し早い。
「宮田さん」
「うん」
「好きな人って、宮田さんのことです」
…。
え?
「…え?」
「新歓のとき、隣に座ってくれたじゃないですか。私、人見知りで誰とも話せなくて、でも宮田さんだけ普通に話しかけてくれて」
「いや、あれは普通に…」
「社食でも、いつも声かけてくれるの、宮田さんだけなんです。経理って他部署と関わりないから、孤立しやすくて…」
知らなかった。いや、社食で会ったら話すぐらい普通だろって思ってたけど、中野にとってはそうじゃなかったのか。
「クロッキー会で偶然会えたとき、本当にびっくりして…。でも嬉しかった。宮田さんの知らない一面が見れて」
いや俺の方が見てるから。知らない一面を。ブラジャーの上から。
「中野…俺は…」
正直、中野のことは可愛いと思ってた。でも後輩だから、そういう目で見ちゃいけないと思ってた。
でも今、目の前にブラジャー一枚の後輩がいて、好きだって言ってくれてて、拒絶する理由がどこにもない自分に気づいた。
「…中野って、いつからそんな大胆だったの」
「全然大胆じゃないです。心臓ばくばくで死にそうです」
「じゃあ、なんで…」
「こうしないと、ずっと"会社の先輩と後輩"のままだと思ったから…」
泣きそうな顔してた。
気づいたら、キスしてた。
誰がどう動いたのかは覚えてない。でも、唇が触れた瞬間、中野がふっと力を抜いたのは覚えてる。緊張が一気にほどけた感じ。俺の首に腕を回してきた。
「ん…」
柔らかい唇だった。恐る恐る舌を入れると、中野も応えてきた。ぎこちなくて、でも一生懸命で、(あ、この子あんまり慣れてないんだな)ってわかった。
長いキスが終わって、中野が俺の胸に顔をうずめた。
「…これも芸術ってことにしていいですか」
「もう無理があるだろ、さすがに」
「ですよね…」
小さく笑って、中野が顔を上げた。目が潤んでる。
「…好きだよ、中野」
自分でもびっくりするぐらい自然に出た。嘘じゃない。多分ずっと、気づかないようにしてただけだ。社食で中野を探してたのも、声かけるときちょっと緊張してたのも、全部。
(本人だけが最後に気づくってやつか…ほんと情けない)
「…ほんとですか」
「ほんと」
「名前で呼んでください。美羽、です」
「美羽」
「…もう一回、キスしてください」
今度はもっと深いキスだった。中野の…美羽の舌がぎこちなく絡んでくる。俺は美羽の腰に手を回して引き寄せた。素肌に触れる。さっきまでスケッチブック越しに見てた白い肌が、今は手のひらの下にある。
背中に指を滑らせると、ブラのホックに触れた。
「…いいの?」
「宮田さんが外したいなら…」
「俺も名前で呼んでよ」
「…裕也さん」
外した。
ブラが落ちて、きれいな形の胸が現れた。やっぱりDだな、これ。ピンク色の先端がちょっと硬くなってて、デッサンしてた時とは全然違う色気がある。
(さっきまで芸術とか言ってたのに、もう完全にそういう目で見てる。すまん高木さん、あなたの教えを裏切ってしまった)
美羽をベッドに座らせて、隣に座った。肩を抱くと、小さな体が寄りかかってくる。
「緊張してる?」
「…します。あんまり経験なくて」
「あんまりってことは、ゼロではない?」
「1回だけ…大学のとき。でも全然よくなくて…相手もよくわかってなかったし」
「俺もそんな多くないから、安心して」
美羽の胸に手を伸ばした。柔らかい。すごく柔らかい。手のひらに収まりきらないぐらいの大きさで、触ると美羽がぴくっと反応した。
「ん…っ」
「感じる?」
「…胸、あんまり触られたことなくて…」
親指で先端をなぞると、美羽が息を詰めた。小さい声が漏れるのを我慢してるのが伝わってくる。
「我慢しなくていいよ」
「だって…恥ずかしい…」
(さっきブラジャー一枚でポーズ取ってた人の台詞とは思えないな)って心の中でツッコんだけど、口には出さなかった。あれは「芸術」だからセーフだったんだろう。この子の中では。
美羽を仰向けにして、首筋にキスした。鎖骨に沿って唇を這わせる。デッサンで何度もなぞったラインを、今度は唇でたどってる。不思議な感覚だった。
胸に唇を寄せると、美羽が小さく声を上げた。
「あっ…そこ…」
先端を舌で転がすと、美羽の指が俺の髪を掴んだ。力は弱いけど、離したくないって感じの掴み方。
スカートの上から太ももに手を滑らせた。内側に指を這わせると、美羽の体がこわばった。
「嫌だったら止めるよ」
「嫌じゃない…ただ、ちょっと…ドキドキしすぎて…」
「ゆっくりでいいから」
スカートをたくし上げて、太ももに直接触れた。すべすべしてて、ちょっとひんやりしてる。指を上に滑らせていくと、布越しに熱を感じた。
「やっ…」
「…もう濡れてる」
「…言わないで…恥ずかしい…」
下着の脇から指を入れて、直接触れた。ぬるっとした感触。美羽の腰がびくっと跳ねた。
「んっ…あ…っ」
声を殺そうとしてるけど、漏れてしまう。ゆっくりと指を動かすと、美羽がシーツを掴んで体を捩った。
「ここ、気持ちいい?」
「…うん…そこ…いい…」
クリトリスを親指でゆっくり撫でながら、中に指を一本入れた。きつい。でも濡れてるから、ゆっくり押し込むと入っていった。
「ぁっ…んん…」
中でくにくにと指を曲げると、美羽が大きく息を吸い込んだ。お腹が上下に動く。さっきスケッチしたお腹の動きとは全然違う、なまめかしい動き。
しばらく指を動かしてたら、美羽の声がだんだん大きくなってきた。
「あっ…まって…なんか…やばい…」
「いきそう?」
「わかんない…こんなの初めて…あっ…!」
美羽の体がびくんと大きく震えて、俺の指がぎゅっと締め付けられた。そのまま数秒、痙攣するみたいに体が小刻みに動いてた。
「はぁ…はぁ…」
「…大丈夫?」
「…いっちゃった…人にしてもらったの初めて…」
目がとろんとしてる。頬が紅潮して、汗が浮いてる。会社で見るいつものおとなしい中野とは別人みたいだった。
「裕也さんも…気持ちよくなってほしい」
美羽が起き上がって、俺のパンツに手を伸ばした。もうとっくに限界だった。パンツを下ろすと、見てわかるぐらい硬くなってるそれが出てきた。
「…おっきい…」
「普通だと思うけど」
「普通じゃないです…」
おそるおそる握ってくる。手が小さくて、指が細くて、それだけでもうやばかった。ゆっくり上下に動かしてくれるんだけど、力加減がわからないのか、たまにぎゅっと強く握ったりして、それはそれで気持ちいい。
「美羽…挿れたい」
「…うん」
「ゴム、ある?」
「…ない…です…」
(まずい)
「コンビニ行ってくる」
「え、やだ…離れたくない…」
「でも…」
「外に出してくれれば…だめ、ですか」
美羽が俺の手を握って、上目遣いで見てくる。この顔は反則だろ。橋本環奈が上目遣いしてるようなもんだぞ。いや橋本環奈より破壊力あるかもしれない、リアルだから。
(冷静に考えろ。外出しはリスクがある。大人としてちゃんと…)
「お願い…このまま…」
…負けた。
美羽を仰向けにして、脚の間に入った。先端を当てる。美羽が息を止めた。
「ゆっくり入れるね」
「…うん…」
さっき指で確認したよりも、ずっときつい。少しずつ押し込んでいく。美羽が下唇を噛んで耐えてる。
「痛い?」
「ちょっと…でも大丈夫…入れて…」
半分ぐらい入ったところで、美羽が大きく息を吐いた。そこから少しずつ奥まで。全部入った時、美羽が「ん…」と小さく声を出した。
(信じられない。会社の後輩と、してる。しかも生で。朝の俺にこの展開を教えてやりたい。信じないだろうけど)
「動くよ…」
「うん…ゆっくり…」
ゆっくり腰を引いて、また押し込む。ぬるぬるとした感触が気持ちよくて、自分の体がどんどん勝手に動こうとする。でも美羽のペースに合わせないと。
「あ…んっ…あ…」
声が漏れ始める。痛みから快感に変わっていくのが、表情でわかった。眉間のしわがほどけて、口が少し開いて、目がとろんとしていく。
「気持ちいい?」
「…うん…気持ちいい…裕也さん…」
名前を呼ばれるたびにぞくっとした。俺の中の何かが外れそうになる。少しずつペースを上げていった。
パン、パン、と肌がぶつかる音が部屋に響く。美羽の声もだんだん大きくなる。
「あっ…あんっ…そこっ…いいっ…」
奥の方を突くと、美羽が大きく反応した。その場所を狙って腰を振ると、美羽が俺の背中に爪を立てた。
「やっ…だめっ…そこばっかり…っ」
「だめって言いながら、すごい締めてくるじゃん…」
「だって…んっ…あ…また…きちゃう…」
「いっていいよ」
「あっ…あぁっ…いくっ…!」
美羽の中がぎゅうっと締まった。それと同時に俺も限界が来て、慌てて引き抜いた。美羽のお腹の上に出した。結構な量だった。
「はぁ…はぁ…」
「はぁ…すごい…あったかい…」
美羽が自分のお腹を見て、呆然としてる。
「ごめん、ティッシュ…」
「あ、そこに…」
ティッシュで拭いてあげながら、なんだか急に現実に戻ってきた。ここは会社の後輩の部屋で、俺たちは今さっきまで「芸術活動」をしてたはずで、気づいたらこうなってた。
「…中野…いや、美羽」
「はい」
「月曜日、どうする?会社で」
「…普通にしてたらいいんじゃないですか。社食で会ったら、今まで通り話して」
「今まで通りは無理だろ、さすがに」
「じゃあ…今まで以上に、話してください」
美羽が俺の肩に頭を乗せた。窓の外はもう夕暮れで、西日がオレンジ色に部屋を染めてた。壁に貼ってあるデッサンが、その光で少し違う表情に見える。
「裕也さん」
「ん?」
「もう一回…描いていいですか」
「え、今から?」
「今の裕也さんの顔、すごくいい表情してるから」
そう言って、美羽はベッドから降りて、裸のままスケッチブックを手に取った。
「ちょ、服着ろよ」
「芸術ですから」
「だからそれで何でも通すのやめろって」と言いかけたけど、もう笑うしかなかった。
裸でスケッチブックに向かう美羽の横顔を、俺はただ見てた。鉛筆を走らせる真剣な目。さっきまで色っぽい声を出してた人と同一人物とは思えない集中力。
(ああ、俺、この子のこと本当に好きだな)
ようやくそう思えた。社食で声をかけてた1年間、ずっとそうだったくせに。
結局その日は夜まで美羽の部屋にいて、スケッチしたり話したり、また一回したりした。2回目は美羽が上になって、ゆっくり動いてくれた。1回目より余裕がある分、表情をちゃんと見れた。途中で「これも描きたいのに手が塞がってる…」とか言い出したときはさすがに笑った。
翌週の月曜日、社食で美羽を見つけた。いつものカーディガン姿。おとなしい顔して、経理部の先輩と話してる。
俺がトレーを持って近づくと、美羽がちらっとこっちを見た。ほんの一瞬、口角が上がった。八重歯がちょっと見えた。
「中野、隣いい?」
「あ、宮田さん。どうぞ」
何も変わらない。でも、テーブルの下で美羽の指が俺の指に触れて、そっと絡んだ。
今度の土曜のクロッキー会、また一緒に行く約束をした。高木さんには悪いけど、正直もう「芸術」とか建前はどうでもいい。ただ、美羽と同じ時間を過ごせる場所があるってことが、ただそれだけが嬉しかった。
…でもまあ、聞かれたら「芸術です」って答えるけどな。便利だし、その言葉。