周りには犬猿の仲で通っている幼なじみのスクールカースト最上位女子が、俺の部屋に転がり込んできた夜の話

これ読んでる人に聞きたいんですけど、幼なじみの女に「死ね」って言われたことあります?

俺はあります。週3ぐらいで。

高3の夏の話です。俺は都立の共学に通ってて、偏差値は中の上ぐらい。顔面偏差値は中の下。身長172で、部活はやってなくて、強いて言えば映画が好きなだけの量産型。自分で言うのもアレだけど、まあ女子にモテるタイプじゃないです。

で、そんな俺の幼なじみが瀬川。

瀬川はクラスの、っていうか学年のスクールカースト最上位みたいなやつで、ルックスは橋本環奈を少しだけ大人っぽくした感じ。身長159で、制服の上からでもわかるぐらい胸がでかい。たぶんEかFぐらい。顔がかわいいくせにスタイルもいいから、男子の間では「高嶺の花」枠。実際、告白して撃沈したやつを俺は少なくとも5人知ってる。

そんな瀬川と俺は、家が隣。生まれた病院も同じ。幼稚園も小学校も中学校も一緒。で、高校まで一緒。なんなら1年のときから3年連続で同じクラス。

ただ、仲がいいかって言われると、全然違う。

「おい佐々木、足どけろ。邪魔」

「は?お前が避ければいいだろ」

「なんで私があんたなんかのために避けなきゃいけないわけ?死ね」

こんな感じ。毎日。朝から。

クラスメイトからは「佐々木と瀬川ってマジで仲悪いよな」って言われてた。席替えで隣になると「ご愁傷様」って言われるし、瀬川も露骨に嫌な顔する。俺だって嫌な顔してた。たぶん。

でもまあ、幼なじみだから、完全に無視するわけにもいかなくて。登下校がたまに被ると、一応会話はする。険悪な空気のまま。

「なんでこいつと同じ高校なんだろ」って思いながら過ごしてた3年間の、最後の夏の話。

7月の終わり、終業式の日。蒸し暑くて、教室のエアコンが効きすぎてて、その温度差で頭がぼーっとしてた。

終業式が終わって、みんなが「夏休みどこ行く?」みたいな話をしてるなか、俺はさっさと帰ろうとしてた。塾の夏期講習が翌日からだし、特に打ち上げに呼ばれる身分でもない。

校門を出たところで、瀬川が追いかけてきた。

「ちょっと、佐々木」

「なに」

「……あんた今日、このあと暇?」

珍しいな、と思った。瀬川から「暇?」なんて聞かれたの、たぶん人生で初めてだった。

「暇っちゃ暇だけど」

「……別に、あんたと遊びたいわけじゃないから。勘違いしないでよ」

「してねーよ。で、なに」

「数学」

「は?」

「夏休みの課題。微積がわかんない。……教えて」

最後の二文字だけ、めちゃくちゃ小さい声だった。

瀬川は文系で、数学が壊滅的にできない。それは知ってた。中学のときも数学だけ赤点ギリギリで、よく補習に呼ばれてたから。

「塾で聞けよ」

「塾行ってない」

「友達に聞けよ」

「……みんな数学できないもん」

(いや、一軍の学力レベルどうなってんだよ……)

「俺に頼む理由がわからん」

「あんたが学年3位なのは知ってんの。いいから教えろ」

頼み方がなってなさすぎるだろ。でも、断る理由もなかった。正直、暇だったし。

「……じゃあ、うち来る?カフェとか高いし」

「は?あんたの部屋?……まあ、隣だし、別にいいけど」

こうして、瀬川が俺の部屋に来ることになった。

家に着いて、親は仕事でいなかった。リビングを通って自分の部屋に入ると、瀬川がきょろきょろ見回してた。

「……相変わらず物少ないね、あんたの部屋」

「悪かったな」

「別に悪いとは言ってない。……ていうかなんか懐かしい。小学校以来だっけ」

そう、瀬川がうちに来るのは小学校以来だった。中学に上がったぐらいから、なんとなく距離ができて、気づいたら険悪になってた。理由は正直よくわからない。俺が中1のとき瀬川の悪口を友達に言ったのが本人に伝わったとか、そういう些細なことだった気がする。

課題のプリントを広げて、微積の基礎から教え始めた。

「ここは置換積分っていって、t=って置くと——」

「なんでtなの」

「いや、別に何でもいいんだけど」

「じゃあなんでtにしたの」

「慣習」

「は?」

(めんどくせえ……)

でも、瀬川は意外と真面目に取り組んでた。ノートにメモ取るし、わかんないとこはちゃんと聞いてくる。いつもの攻撃的な感じが少し薄れて、素直に「わからない」って言ってるのが、なんか新鮮だった。

1時間ぐらいやったところで、瀬川が伸びをした。制服のブラウスが引っ張られて、胸のラインが強調されて、俺は慌てて目を逸らした。

「ねえ、なんか飲み物ない?」

「冷蔵庫に麦茶あるけど」

「取ってきて」

「自分で取れよ」

「私はお客様ですけど?」

「お客様は『教えろ』とか言わねーよ」

結局俺が取りに行った。グラスに氷入れて麦茶注いで持っていくと、瀬川が俺のベッドに座ってスマホいじってた。

「おい、ベッドに座んな」

「床硬いんだもん」

「クッションあるだろ」

「いいじゃん別に。……あんたのベッド、なんか安心する」

(……は?)

今なんて言った?聞き返そうとしたけど、瀬川はもうスマホに目を戻してて、何事もなかったみたいな顔してた。

気のせいか、と思うことにした。

勉強を再開して、さらに1時間。窓の外が薄暗くなってきた。

「……あー、もう無理。脳が拒否してる」

「まだ半分も終わってないけど」

「明日もやればいいじゃん」

「明日は塾」

「じゃあ明後日」

「明後日も塾」

「……あんた、夏休みに遊ぶ予定とかないの?」

「ない」

「…………」

瀬川がなんか複雑そうな顔をした。哀れんでるのか、呆れてるのか、よくわからない表情。

「ねえ、ご飯食べた?」

「まだ」

「……うちで食べる?お母さんが作りすぎたって連絡来てるし」

「いいの?」

「別に。隣だし。減るもんじゃないし」

瀬川の家で晩ご飯をごちそうになった。瀬川のお母さんは昔から俺に優しくて、「まーくん久しぶりね、大きくなって」とか言ってくれた。瀬川が「まーくんって呼ぶのやめてよお母さん」って嫌そうにしてたけど、耳が赤かった。

(……あれ、まーくんって呼ばれてた時期あったっけ?)

そういえば、小学校低学年のとき、瀬川は俺のこと「まーくん」って呼んでた気がする。いつから「佐々木」になったんだろう。

飯を食べ終わって、自分の家に戻った。部屋に入ると、瀬川が座ってた場所にかすかに甘い匂いが残ってた。シャンプーか、制汗剤か。

(……いい匂いだったな)

いやいや。何考えてんだ俺。あいつだぞ。週3で「死ね」って言ってくるあいつだぞ。

その日はなんとなく寝つきが悪かった。

翌日から夏期講習が始まって、瀬川のことは頭から消えた。……消えたはずだった。

3日後の夜、22時過ぎ。部屋で英語の長文読んでたら、スマホが鳴った。瀬川からのLINE。

「今から行っていい」

疑問符すらついてない。

「は?今から?」

「うん」

「なんで」

既読がついたまま、1分ぐらい返信がなかった。

「……お父さんとお母さんが喧嘩してる。うるさくて無理」

瀬川の両親が不仲なのは知ってた。小学校のときから夫婦喧嘩がひどくて、瀬川がうちに逃げてきたことが何度かあった。中学以降は距離ができてたから、そういうことはなくなってたけど。

「親は?」

「出張。明日の昼まで帰らない」

「……わかった。裏口開けとく」

5分後、瀬川が来た。パーカーにショートパンツっていうラフな格好で、目が少し赤かった。泣いてたのかもしれないけど、聞かなかった。

「……邪魔する」

「おう」

瀬川は俺の部屋に入ると、迷わずベッドに座った。

「また座るのかよ」

「安心するって言ったでしょ」

今度はちゃんと聞こえた。

しばらく無言が続いた。俺は机で英語の続きをやって、瀬川はベッドでスマホをいじってた。普通に考えたら異常な光景なんだけど、不思議と居心地は悪くなかった。

「……ねえ」

「ん」

「佐々木って、彼女いたことある?」

「ないけど」

「……だよね」

「なんだその納得の仕方」

「いや別に。……安心した」

(安心?)

「お前は?彼氏とかいんの?」

「いるわけないじゃん」

「いや、お前レベルなら普通にいるだろ」

「……いないの。告白はされるけど、全部断ってる」

「なんで」

「…………」

瀬川が答えなかった。スマホの画面を見つめたまま、唇を噛んでた。

「……佐々木ってさ、なんで私に冷たいの」

「は?お前が先に突っかかってくるからだろ」

「……そうだけど」

「自覚あんのかよ」

「ある。……あるよ。わかってる。私が悪いの、全部」

声が震えてた。

「中1のとき……あんたが友達に、『瀬川ってうざくね?』って言ってたの聞こえて……」

あ、やっぱりそれか。

「……あー、あれは」

「すっごいショックだった。それまで、あんたのこと……まーくんのこと、ずっと好きだったから」

え?

「好きだったのに、うざいって言われて、どうしていいかわかんなくなって……気づいたら、突っかかることでしか話しかけられなくなってた」

瀬川がパーカーの袖で目を擦った。

「馬鹿みたいでしょ。6年間もそんなことしてて。……私が一番馬鹿なの、わかってる」

俺は椅子から立てなかった。

好きだった?瀬川が?俺のこと?

中1からずっと?

あの「死ね」は、あの舌打ちは、あの睨みは、全部——

(いや待て待て待て。整理しろ。落ち着け)

でも落ち着けなかった。心臓がありえないぐらいうるさかった。

「……瀬川」

「なに」

「あのときの『うざい』は……お前が構ってくるのがうざいんじゃなくて……意識しちゃう自分がうざかったんだと思う」

自分でも何言ってるかよくわからなかった。でも、嘘じゃなかった。

瀬川が顔を上げた。

「……え?」

「お前のこと、別に嫌いじゃない。嫌いだったことない。……むしろ」

言葉が詰まった。こういうの慣れてない。

「むしろ、なに」

「……お前がかわいいのは知ってた。誰よりも」

瀬川の目がまんまるになった。

「は……?なに急に……」

「急じゃない。ずっと。ずっと思ってた。でもお前が俺のこと嫌いだと思ってたから、なんも言えなかった」

沈黙が降りた。エアコンの音だけがやたらでかく聞こえた。

瀬川がベッドから立ち上がって、俺の前に来た。距離、30センチぐらい。シャンプーの匂いがした。

「……私たち、6年間なにしてたんだろうね」

「ほんとにな」

「ばか」

「それはどっちが」

「両方」

瀬川が笑った。泣きながら。その顔がずるいぐらいかわいくて、気づいたら手を伸ばしてた。

頬に触れると、瀬川がびくっとした。でも離れなかった。

「……佐々木」

「ん」

「キス……して」

頭が真っ白になった。でも体は動いてて、瀬川の顔を両手で包んで、唇を合わせた。

柔らかかった。ほんのり甘かった。瀬川の唇が微かに震えてて、それで「あ、こいつも緊張してるんだ」って思ったら、なんか安心した。

一度離れて、また重ねた。今度は瀬川のほうから舌を入れてきて、俺もそれに応えた。

「ん……っ」

ぎこちないけど、やめられなかった。瀬川の腰に手を回すと、体を預けてきた。パーカー越しに伝わる体温が熱くて、頭がどんどんぼんやりしていく。

どれぐらいキスしてたかわからない。息が上がって、唇を離したとき、瀬川の目がとろんとしてた。

「……もっと」

「え」

「もっと触って。……お願い」

「お願い」なんて瀬川の口から初めて聞いた。

ベッドに座らせて、横に並んだ。キスしながら、パーカーの裾から手を入れた。素肌に触れた瞬間、瀬川が小さく声を漏らした。

「ひゃっ……手、冷たい」

「ごめん」

「……いい。そのまま」

お腹から上に手を滑らせると、ブラの感触があった。その上から胸に触れると、想像以上にでかくて柔らかくて、思わず手が止まった。

「……なに固まってんの」

「いや……でかいなって」

「ばか、そういうの言うな」

怒ってるけど、耳まで赤い。

パーカーを脱がせた。白いブラ。制服のときは隠してたんだろうけど、改めて見ると、もうなんか暴力的なボリュームだった。

「……外していい?」

「……ん」

小さく頷いたから、背中のホックを外した。手が震えてて一発で外れなくて、瀬川に「下手くそ」って言われた。

(いやお前……こっちは初めてなんだよ……)

ブラを取ると、形のいい胸がこぼれた。色白の肌に、薄いピンクの乳首。直視してたら瀬川が腕で隠した。

「そんなに見ないで……」

「見るだろ普通に」

「……変態」

腕をそっとどかして、右の胸に触れた。指が沈み込む感触に、本気で手が震えた。

「んっ……」

「感じる?」

「……うるさい」

乳首を親指で擦ると、瀬川が唇を噛んで堪えた。強がってるけど、息が荒くなってきてる。

そのまま口に含んだ。

「ひっ……ちょ、待っ……」

「嫌なら止める」

「嫌とは言ってない……っ」

舌で転がすと、瀬川の手が俺の頭を掴んだ。押し返すのかと思ったら、逆に引き寄せてきた。

「あっ……んん……」

瀬川を仰向けにして、ショートパンツに手をかけた。

「……脱がすよ」

「…………うん」

ショートパンツを下ろすと、白い下着が見えた。真ん中に小さなリボンがついてて、なんかそれが妙にかわいくて、心臓がうるさかった。

その上から触れると、もう濡れてた。

「やっ……そこ……」

「濡れてるじゃん」

「言うなっ……ばか……」

下着をずらして、直接触った。指が滑るぐらい濡れてて、クリに触れた瞬間、瀬川の腰がびくって跳ねた。

「あっ、そこ……だめ……っ」

「だめなの?」

「だめっていうか……感じすぎて……っ」

ゆっくり指を動かしながら、もう片方の手で胸を揉んだ。瀬川が目を瞑って、シーツを握りしめてた。

「んあっ……佐々木……っ……やば……」

指を中に入れると、きつく締まった。ぬるっとした感触で、瀬川が声を殺すように唇を噛んだ。

「痛い?」

「痛くない……もっと……奥……」

二本目を入れて、ゆっくり動かした。中がきゅっと指を締めてきて、瀬川の喘ぎ声がだんだん大きくなった。

「あ……あああ……っ、もう……イきそ……っ」

クリを親指で擦りながら、中で指を曲げた。

「あっ、あっ、あっ……!やば……っ!」

瀬川の体がびくびくって震えて、俺の指をぎゅって締めつけた。太ももが閉じて、俺の手を挟んだまま、しばらく小刻みに震えてた。

「はぁ……はぁ……」

目が潤んでて、頬が紅潮してて、いつもの強気な瀬川とは全然違う顔だった。

「……イった?」

「……うるさい」

まだ強がってる。

「……ねえ」

「ん」

「佐々木も……脱いで」

(え、マジで?ここまでいくの?)

正直、頭の中では「いいのかこれ」っていう声がずっと鳴ってた。でも体はもうとっくに反応してて、ズボンの中がきつくて仕方なかった。

服を脱いだ。瀬川が俺の体を見て、ふっと笑った。

「……意外と筋肉あるじゃん」

「意外とって何だよ」

「帰宅部のくせに」

「腕立ては毎日やってる」

「……ふーん」

瀬川が俺のを見て、また耳を赤くした。

「……大きい」

「いや、たぶん普通だと思うけど」

「比較対象ないからわかんないけど……入るかな」

その言葉で、こいつも初めてなんだって気づいた。あれだけモテる瀬川が。

「ゴム……あったかな」

机の引き出しを漁った。去年、修学旅行のとき友達にふざけて渡されたやつが1個だけ残ってた。期限は……ギリギリセーフ。

装着して、瀬川の上に覆い被さった。

瀬川が俺の首に腕を回してきた。近くで見ると、まつげが長くて、目がうるうるしてて、こんな顔する子だったんだって今更ながら思った。

「……入れるよ」

「……うん」

先端を当てて、ゆっくり押し込んだ。

瀬川の眉間にしわが寄った。

「っ……痛……」

「止めようか?」

「止めないで。……大丈夫だから」

瀬川が俺の背中に爪を立てた。痛かったけど、それどころじゃなかった。中がきつくて、熱くて、自分のものが飲み込まれていく感覚がした。

全部入ったとき、瀬川が長く息を吐いた。

「……入った?」

「うん……大丈夫?」

「……大丈夫。少し待って」

30秒ぐらい、動かずにいた。瀬川の目から涙が一筋流れて、俺はそれを親指で拭った。

「……動いて。ゆっくり」

ゆっくり腰を動かした。瀬川が声を堪えるみたいに唇を噛んでたけど、少しずつ表情が変わっていった。苦しそうな顔から、とろけたような顔に。

「あ……んっ……」

「痛くない?」

「もう痛くない……もっと……」

ペースを上げた。瀬川が俺の背中にしがみついて、耳元で息を漏らしてる。その声がたまらなくて、理性がどんどん溶けていく。

(やばい……気持ちよすぎる……)

こんな感覚、想像したことすらなかった。中が俺の形に合わせるみたいに締めつけてきて、動くたびに瀬川が甘い声を出す。

「あっ……んんっ……佐々木……っ」

「瀬川……っ」

「……名前」

「え?」

「名前で呼んで……下の……っ」

「……ひな」

瀬川——ひなが、目を見開いた。

「……っ、ずるい……そんな声で呼ばないで……っ」

ひなの中がきゅっと締まった。名前を呼んだだけでこんなに反応するの、正直やばかった。

「ひな……ひな……っ」

「あっ、あっ……まーくん……っ」

(まーくん……?)

小学校以来の呼び方が出てきて、なんかもう全部持っていかれた。

「やば……もう……出そう……っ」

「待って……一緒に……っ」

ひなが腰を合わせてきて、奥まで届くたびに声が高くなる。

「あっ、あああ……っ、イく……っ、イっちゃう……っ!」

ひなの中が痙攣するみたいに締めつけてきて、もう限界だった。

「出る……っ!」

体の奥から搾り出されるみたいに、全身の力が抜けた。ゴム越しでも中に出す感覚がはっきりわかって、ひなの中がまだびくびく震えてた。

「はぁ……はぁ……」

「はぁ……」

抜いて、ゴムを外して、ティッシュで処理した。色気もなにもないけど、こればっかりは仕方ない。

ひなが横を向いて、シーツを引っ張って体を隠した。

「……大丈夫だった?」

「…………」

返事がない。泣いてるのかと思って顔を覗き込んだら、真っ赤な顔で目を逸らされた。

「……気持ちよかった」

ぼそっと。蚊の鳴くような声で。

「だからなに?文句ある?」

「いや、ない。……俺も」

隣に横になった。しばらく天井を見てた。エアコンの風がべたついた肌に当たって、やたら心地よかった。

「……ねえ」

「ん」

「今日のこと……なかったことには……」

「しない」

即答した。自分でもびっくりするぐらい迷いがなかった。

「しないよ。……ていうか、付き合いたい」

「…………は?」

「6年分の喧嘩の埋め合わせ、させて」

我ながらキザなセリフだと思ったけど、本心だった。

瀬川が——ひなが、シーツに顔を埋めた。

「……ばか。ほんとばか。なんでもっと早く言わないの」

「それはお互い様だろ」

「……うん」

顔を上げたひなが、鼻を赤くして笑ってた。

「じゃあ明日から……もう死ねって言わない。……たぶん」

「たぶんかよ」

「癖だから……3日に1回ぐらいは許して」

「週3が週2になるだけじゃねーか」

「……今の、気持ちいいほうの死ねだから」

意味がわからなかったけど、なんか笑ってしまった。

その夜、ひなは帰らなかった。俺の腕にしがみついて、小さい声で「もう1回」って言ったけど、ゴムがなかったから断った。代わりに朝までずっとくっついて寝た。

翌朝、隣で寝てるひなの寝顔を見て、こいつとあと6年早くこうなれてたらな、って思った。

でもまあ、6年分の「死ね」があったから今があるのかもしれない。

夏休みが明けて学校が始まったとき、教室での俺たちは相変わらずだった。

「おい佐々木。足どけろ」

「お前が避けろ」

クラスメイトが「あいつらまた喧嘩してるよ」って呆れてたけど、瀬川の足が机の下で俺の足に触れてきてることには、誰も気づいてない。

俺だけが知ってる。あの「死ね」の意味を。


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