周りには犬猿の仲で通っている幼なじみが、俺の部屋に忘れていったピアスの意味に三年かかって気づいた話

これ読んでる人に聞きたいんだけど、幼なじみの女にめちゃくちゃ嫌われてるって思い込んでたのに実は好かれてたっていう経験、ある?

俺はある。しかも三年間気づかなかった。

まず自己紹介させてください。当時高3、埼玉の川口市に住んでた。身長171で痩せ型、髪はいつもボサボサで、服はユニクロとGUのローテーション。顔面偏差値は自分で言うのもアレだけど48くらい。クラスでは中の下ポジション。成績だけはそこそこ良かったけど、それ以外は本当にパッとしない男です。

で、幼なじみの話。

名前は出せないから仮にAとする。家が三軒隣で、親同士が町内会の役員仲間。幼稚園から中学までずっと一緒で、高校も同じところに受かってしまった。

このA、見た目で言うと橋本環奈を少しシャープにした感じ。身長は158くらいで、Eカップ。制服の上からでもわかるくらいにはデカい。髪はダークブラウンのセミロングで、いつも毛先だけ緩く巻いてた。

高校に入ってからAは完全に一軍のポジションを確立してて、インスタのフォロワーも同学年でトップクラス。体育祭ではチアの前列センター、文化祭では劇のヒロイン。もうそういうタイプの女。

で、俺とAの関係なんだけど。

学校では、マジで犬猿の仲だと思われてた。

きっかけは高1の最初の席替え。隣の席になった俺に、Aが開口一番こう言った。

「うわ、最悪。なんでアンタが隣なの」

「こっちのセリフだわ」

周りがざわついた。幼なじみだってことは入学早々バレてたから、「あの二人めっちゃ仲悪いんだな」って空気が一瞬で出来上がった。

それから三年間、学校でAと顔を合わせるたびにバチバチやり合うのが日常になった。

廊下ですれ違えば「どけよ」「アンタがどけば」。教室で目が合えば「なに見てんの」「見てねーよ」。体育で同じチームになれば「足引っ張んないでよね」「お前こそな」。

クラスメイトは完全に「あいつらガチで仲悪い」と認識してて、席替えで近くなるたびに「ご愁傷様w」って言われるレベル。

でもさ、冷静に思い返すと変なことはたくさんあったんだよ。

たとえば、俺が風邪で三日休んだとき。Aが俺の家にプリントを届けに来た。わざわざ。クラスの学級委員でもないのに。

「勘違いしないでよ。たまたま帰り道だから先生に頼まれただけ」

三軒隣だから帰り道なのは事実なんだけど、プリントの端にポストイットが貼ってあって「英語のここ出るって言ってた」って走り書きがあった。筆跡はAのだった。

(いや、嫌いな相手にわざわざメモ残すか普通…?)

でも当時の俺はマジで気づいてない。「律儀な性格だな」くらいにしか思ってなかった。

あと、修学旅行の京都。自由行動の日に、俺は友達のBと二人で伏見稲荷に行った。千本鳥居を登ってたら、偶然Aのグループとすれ違った。

「え、なんでアンタがここにいるの。せっかくの修学旅行が台無しなんだけど」

「京都にお前専用の入場制限はねーよ」

Aの取り巻きが「やめなよ美羽~」ってなだめてたけど、Aは俺をにらみつけたまま去っていった。

…のはずが、十分後にLINEが来た。

『奥社の手前の茶屋のきつねうどん美味しいよ。Bくんと食べな』

は?

さっき「台無し」って言ったよな? なんでおすすめスポット教えてくれてんの?

(こいつほんとに意味わかんねぇ…)

まあでも、きつねうどんは確かに美味かった。出汁が甘めで、油揚げがでかくて。Bと「ここ当たりだな」って言いながら食った。

こういう矛盾、三年間ずっとあった。でも俺は毎回「Aは変なやつだな」で済ませてた。

高3の夏、決定的なことが起きた。

うちの高校は夏休みに補習がある。受験生は基本全員参加で、朝9時から昼の1時まで。俺は早稲田の商学部を狙ってたから、補習のあとは学校の図書室に残って自習するのが日課だった。

で、ある日。図書室に行ったら、いつもの席にAが座ってた。

俺がいつも使う、窓際の一番奥の席。図書室の中でもエアコンの風が直接当たらなくて、西日も入らない。俺が一年かけて見つけたベストポジション。

「おい、そこ俺の席なんだけど」

「は?名前でも書いてあんの?早い者勝ちでしょ」

「…じゃあ隣座るわ」

「勝手にすれば」

それから、補習期間の二週間、毎日俺とAは隣同士で自習することになった。

最初の数日は無言だった。たまに消しゴムを落とした拍子に腕がぶつかって「触んないで」「触ってねーよ」って小競り合いするくらい。

四日目くらいに、Aがボソッと言った。

「…ねえ、この古文の活用、合ってる?」

「見せてみ。…ここ、已然形じゃなくて未然形」

「…ふーん」

お礼は言わない。でも次の日もAは同じ席にいて、また質問してきた。

一週間もすると、休憩時間に二人で自販機にジュースを買いに行くようになった。学校の自販機、三階の渡り廊下の奥にあるやつ。Aはいつもカルピスウォーターで、俺はブラックのBOSS。

「よくそんな苦いの飲めるね。味覚おかしいんじゃない?」

「砂糖水飲んでるお前に言われたくねーよ」

「カルピスは砂糖水じゃないし!乳酸菌だし!」

こういう会話を、誰もいない渡り廊下でしてた。教室では絶対こんな空気にならない。

(なんだこれ、普通に楽しいんだけど…)

いや、待て。楽しいってなんだ。Aだぞ。犬猿の仲のAだぞ。

でもさ、二人でいるときのAって、学校で見せてる顔と全然違ったんだよ。教室だとキツい目つきでツンツンしてるのに、図書室だと声のトーンが半分くらい下がって、たまに「ふふっ」って小さく笑う。

あと、暑い日にAが髪をゴムでまとめたとき、うなじが見えて、そこにうっすらほくろがあるのに気づいてしまった。

(いや、なんでそんなとこ見てんだ俺は)

補習最終日、夕方の五時くらいに二人で図書室を出た。外はまだ明るくて、部活帰りの後輩たちがグラウンドの脇を歩いてた。

「…ねえ」

「ん?」

「明日から図書室来ないの?」

「補習終わりだから、家で勉強するけど」

「…ふーん」

Aはそれだけ言って、早足で先に帰っていった。

その後ろ姿がなんか寂しそうに見えたのは、たぶん西日のせいだと思ってた。

夏休み明け、文化祭の準備が始まった。うちのクラスはお化け屋敷。俺は裏方の装飾係で、Aは受付係。基本的に接点はないはずだった。

でも前日の夜、学校に残って作業してたら、Aが装飾係の教室に来た。

「受付の看板、まだできてないんだけど。手伝ってくんない?」

「それ装飾の仕事じゃなくね?」

「細かいこと言わないでよ。他に残ってる人いないんだから」

教室には俺とAの二人だけだった。九月の終わりで、窓を開けると秋の虫の声が聞こえた。

看板は模造紙にゴシック体で「恐怖の館」って書くだけの簡単な作業。Aが文字の下書きをして、俺がペンキで塗る分担になった。

「アンタ、塗るの下手すぎない?はみ出てるんだけど」

「うるせぇ、下書きが細すぎるんだよ」

「は?私の字キレイって有名なんだけど?」

「キレイすぎて看板に向いてないんだわ」

「…それ褒めてるの?けなしてるの?」

「さあ、どっちでしょう」

Aが黙った。横目で見たら、耳が赤くなってた。

(え、なに。なんで赤くなってんの)

九時過ぎに看板が完成して、二人で校門を出た。川口駅までの帰り道、コンビニでアイスを買って歩いた。Aはパピコのチョココーヒー、俺はガリガリ君の梨味。

「…ねえ、あんたさ」

「ん」

「志望校、どこ?」

「早稲田の商学部」

「…ふーん」

「お前は?」

「…早稲田の文学部」

「まじ?同じ大学じゃん」

「だから何。べつにアンタに合わせたわけじゃないし」

「言ってねーよそんなこと」

「…うるさい、先帰る」

Aはアイスを食べ終わる前に走っていった。パピコの片方をぐいっと俺に押し付けてから。

(いや、嫌いな相手にアイス渡すか?)

…渡さないよな、普通。

この辺りからさすがに俺も「あれ?」って思い始めた。でも確信には至らない。だって学校のAは相変わらず俺に冷たかったから。

文化祭当日。お化け屋敷は盛況で、俺は裏でお化け役をやってた。白い布かぶって「うらめしや~」って言うだけの簡単なお仕事。

昼休憩のとき、受付にいるAの様子を見に行ったら(見に行ったわけじゃなくて、たまたま通りかかっただけだけど)、他校の男二人がAにナンパしてた。

「…」

別に俺が口出すことじゃない。Aにはクラスの男友達もいるし、自分で対処できるだろ。

そう思って通り過ぎようとしたら、Aの声が聞こえた。

「あー、ごめん。私、彼氏いるんで」

は?

彼氏?Aに彼氏?

聞いてない。マジで聞いてない。っていうか、いつの間に?誰?

(…なんだろ、この胸のあたりがギュッてなる感じ)

いや、待て。なんで俺がそんなこと気にしてんだ。犬猿の仲だろ。嫌い合ってるんだろ。

…嫌い合ってるのか?本当に?

文化祭の打ち上げはクラスでカラオケに行った。俺は端っこの席で適当に盛り上がってたんだけど、Aがなぜか隣に来た。

「ここ空いてるから座ってるだけだから」

「誰も何も言ってねーよ」

酔ってる(ソフトドリンクだけど場の空気に酔ってる)クラスメイトが、俺とAが隣に座ってるのを見て「犬猿の仲なのに隣じゃんw」ってイジってきた。

「うるさい、席がここしかなかっただけだし」

でもAは動かなかった。二時間ずっと隣にいた。

カラオケが終わって帰り道、駅前で解散した。俺とAは家が近いから、当然帰る方向が同じ。

十月の夜は冷えてて、Aが薄手のパーカーの前をぎゅっと握ってた。

「…寒いの?」

「べつに」

「嘘つけ、震えてんじゃん」

俺はリュックからパーカーの上に着れるウインドブレーカーを出して、Aに渡した。部活用のやつだから男臭いかもしれないけど。

「…いらないって言ってないのに」

「言う前に渡してんだよ」

Aは何も言わずにウインドブレーカーを羽織った。俺より二回りくらい大きいから、手が完全に隠れてた。

家の前まで来たとき、Aが立ち止まった。

「…ねえ」

「ん」

「さっきの、彼氏いるって言ったの…嘘だから」

「え?」

「うるさい、おやすみ」

Aはウインドブレーカーを着たまま家に入っていった。

翌日、ウインドブレーカーは俺の家のポストに入ってた。洗濯されて、きれいに畳まれて。ファスナーのポケットに、小さなピアスが一個入ってた。

銀色の、星の形のやつ。Aがたまにつけてるのを見たことがある。

(忘れ物…?いや、ポケットに入れるか普通。落ちたならわかるけど、ポケットって)

この時点で気づくべきだった。でも俺は「洗濯のとき紛れ込んだのかな」って思って、机の引き出しにしまった。

それから受験シーズンに入って、Aとの接点は激減した。学校でも会わないし、LINEもほぼ来ない。たまに深夜二時くらいに既読がつくことがあったけど、何か送ってくることはなかった。

(あいつ、こんな時間まで勉強してんのか。大丈夫かよ)

…あれ、心配してる。俺、Aのこと心配してる。

いつからだ。いつから俺は、Aのことをこんなに気にしてたんだ。

十二月の末、大掃除の日。教室のロッカーを整理してたら、Aとばったり会った。

久しぶりに近くで見たAは、少し痩せてた。目の下にうっすらクマができてて、いつもピカピカの爪が少し荒れてた。

「…お前、ちゃんと飯食ってる?」

「は?なにいきなり。アンタに心配される筋合いないんだけど」

「心配っていうか、顔色悪いから言ってんだよ」

「…」

Aの目が少し潤んだように見えた。でもすぐにそっぽを向いた。

「受験終わったら…話がある」

「話?」

「今はいい。受験に集中して」

それだけ言って、Aは教室を出ていった。

「話がある」が気になりすぎて、年明けの勉強が全然手につかなかった。

二月。早稲田の入試が終わった。

手応えは正直、五分五分。でも終わったものはしょうがない。

合格発表の日。俺は家のパソコンで結果を見た。

商学部――合格。

「よっしゃああ!」

親に報告して、友達にLINEして、落ち着いたところでふとAのことを思い出した。

文学部の発表は同じ日。AのLINEを開いたけど、自分から聞くのもなんか違う気がして、結局送れなかった。

夜の八時くらいに、玄関のチャイムが鳴った。

出ると、Aが立ってた。目が真っ赤だった。

「…おい、お前、泣いて…」

「受かった」

「え?」

「受かったの!文学部!」

「まじ!?おめでとう!」

「アンタは?」

「俺も受かった。商学部」

Aがその場にしゃがみ込んだ。泣きながら笑ってた。

「…よかった。同じ大学…よかった…」

(同じ大学でよかった?なんで?嫌い合ってるんじゃないの?)

親が「上がってもらいなよ」って言ったから、Aを俺の部屋に通した。子供の頃はしょっちゅう遊びに来てたけど、高校に入ってからは初めてだった。

Aは俺のベッドの端に座って、まだ少し鼻をすすってた。

「水飲む?」

「…うん」

冷蔵庫からペットボトルの水を持ってきて渡した。Aが両手で受け取って、少し飲んだ。

「…ねえ」

「ん」

「十二月に、話があるって言ったの覚えてる?」

「覚えてるよ。気になってしょうがなかった」

「…ホント?」

「ホントだよ。なんだよ、話って」

Aが俺の机の方を見た。引き出しが少し開いてて、中に入れてた星のピアスがチラッと見えた。

「…あれ、まだ持ってたの」

「あ、ピアス?返すの忘れてた、ごめん」

「違う」

「え?」

「忘れ物じゃない。わざと入れたの」

は?

わざと?わざとピアスを入れた?

「…なんで?」

Aが顔を上げた。目がまだ赤くて、鼻の頭もピンクで、それが西日に照らされて妙にきれいだった。

「好きだからに決まってんでしょ、バカ」

脳みそがフリーズした。

え、ちょっと待って。好き?俺のことが好き?Aが?犬猿の仲の、学校で俺にめちゃくちゃ冷たいあのAが?

「い、いつから…」

「中二のとき。合唱コンクールの練習で、私が音外して笑われたとき、アンタだけ『裏声使えばいける』って真面目にアドバイスしてきたでしょ。あれから」

「よ、四年前…?」

「うん」

「いや、でもお前、俺のことめちゃくちゃ嫌ってたよな?学校で会うたびに…」

「嫌ってない。一回も嫌ったことない」

「は?じゃあなんで…」

「高校入って、急にキラキラした子たちの中に入って、幼なじみのアンタに普通に話しかけたら色々言われると思って…。だから、わざとキツく当たるしかなくて。でもそうしたら距離が出来ちゃって、どんどん素に戻れなくなって…」

Aの声が震えてた。

「ほんとは図書室でずっと隣にいられたの、めちゃくちゃ嬉しかった。きつねうどん美味しかったって言ってくれたの嬉しかった。ウインドブレーカー…アンタの匂いがして、返したくなかった」

おいおいおいおい。

俺、三年間なにやってたんだ。

プリントのメモも、LINEのおすすめも、パピコの片方も、全部そういうことだったのか。

Aが泣きながら続けた。

「ピアスはね、おまじないみたいなもの。好きな人に自分の持ち物を持っててほしくて…捨てられてたらもう諦めようって思ってた」

俺は引き出しから星のピアスを取り出した。三ヶ月間ずっと、なんとなく捨てられなくて入れっぱなしにしてたやつ。

「捨ててないよ」

「…うん」

「なんで捨てなかったか、今わかった」

Aを引き寄せた。抵抗はなかった。っていうか、Aの方から俺のシャツを掴んできた。

「俺も好き。たぶんずっと前から。気づくのが遅すぎた」

「…バカ。三年もかかるとか、ほんとバカ…」

泣きながらAが笑った。泣き笑いのAの顔が至近距離にあって、涙で濡れたまつ毛が長くて、こんな近くで見たの初めてで。

キスした。

自分でもびっくりするくらい自然に。Aの唇が少し冷たくて、震えてて。

「ん…っ」

離れたら、Aが真っ赤な顔で俺を見上げてた。さっきまでの強気な一軍女子の面影は完全に消えてて、ただの泣き虫の女の子がそこにいた。

「…もう一回」

もう一回キスした。今度はAの方から舌を入れてきて、俺も応えた。Aの舌はさっきまで飲んでた水のせいか冷たくて、でもすぐに熱くなった。

「ん…」

「ちゅっ…はぁ…」

三回目は長かった。お互い息が続かなくなるまでキスして、離れたとき二人とも肩で息してた。

「…ねえ」

「ん」

「親、いつ帰ってくる?」

「…九時くらいって言ってた」

時計を見たら七時半だった。

「…一時間半、あるね」

Aが俺の手を握った。指を絡めてきた。手が小さくて、でも力はしっかり入ってて。

「A…」

「…怖い。でも、アンタとなら…」

Aをベッドに押し倒した。っていうか、Aが自分から倒れた。仰向けになったAの上に覆いかぶさると、Aが両腕を俺の首に回してきた。

キスしながら、Aのパーカーのファスナーを下ろした。中は薄手のニットで、その下にAの胸の膨らみがあった。

「…触っていい?」

「…聞かないで、バカ」

ニットの上から胸に触れた。柔らかい。予想以上に大きくて、片手じゃ収まりきらない。

「んっ…」

Aが小さく声を漏らした。さっきまで泣いてた声とは違う、甘い声。

(うそだろ、Aからこんな声出るのかよ…)

ニットをたくし上げて、直接触った。ブラ越しでも形がわかるくらいにおっきい。後ろに手を回してホックを外すと、ぽろんと溢れた。

「でかいな…」

「やだ、そういうこと言わないで…」

「褒めてんだよ」

「…バカ」

乳首に触れると、Aが背中を反らした。ピンク色の、きれいな乳首だった。指先で転がすと、みるみる硬くなった。

「あっ…そこ…敏感…なの…」

「ごめ、痛い?」

「痛くない…気持ちいいから、やめないで…」

Aの声がどんどん甘くなっていく。学校で「うわ最悪」とか言ってた同じ口から出てるとは思えない。

口に含んだ。

「んんっ…!ちょ、ま…っ」

舌先で弾くと、Aが俺の髪を掴んできた。痛いくらいの力で。

左手でもう片方の胸を揉みながら、右手をAの腰のあたりに下ろした。スカートの裾から手を入れると、Aの太ももが少し震えてた。

「…っ、待って」

「やめる?」

「やめないで…。ただ…その…初めてだから、ゆっくりしてほしい」

初めて。

Aが初めて。

あれだけモテてて、告白もたくさんされてたはずのAが。

「…俺も初めてだよ」

「…嘘」

「嘘じゃねーよ。彼女いたことねーもん」

「…ぷっ、笑。なにそれ。私たち二人とも初めて同士ってこと?」

「そういうことになるな」

「…なんか、安心した」

Aが少しだけ笑った。その笑顔を見て、緊張が少し解けた。

ゆっくりとAのスカートに手を入れて、下着の上から触った。湿ってた。かなり。

「…っ、見ないで」

「見てねーよ、触ってるだけだろ」

「それが恥ずかしいの…バカ…」

下着をずらして、直接触れた。Aがびくっと跳ねた。

「あ…っ」

指を滑らせると、Aの手が俺の腕をぎゅっと掴んできた。

「ここ?」

「ん…もう少し上…」

言われた通りに指を動かすと、Aの声が一段上がった。

「そこ…そこいい…っ」

Aが目を閉じて、唇を噛んでた。声を抑えてるのがわかる。

「我慢しなくていいよ」

「む、無理…声出したら…隣の部屋に…」

そうだった。俺の部屋の隣は親の部屋だ。今はいないけど。

「今いないから大丈夫」

「ん…あっ…んんっ…」

抑えてた声が少しずつ漏れ始めた。Aの太ももが俺の手を挟むように閉じてきて、でもすぐにまた開いた。

指を一本、中に入れた。

「っ!…痛…」

「ごめん、抜く?」

「…大丈夫。ゆっくり…動かして」

ゆっくり、本当にゆっくり指を動かした。Aの中はきつくて、熱くて、指を締めつけてくる感覚があった。

しばらくすると、Aの表情が変わった。眉間のシワがほどけて、口が少し開いて。

「あ…気持ちいい…かも…」

二本目を入れると、Aの腰が自分から動き始めた。

「んっ…ああっ…やば…なにこれ…」

「A…」

「ちょっと待っ…何か来る…来てる…っ」

Aの体が弓なりに反って、ぎゅうっと俺の指を締め付けた。

「あっ…!!」

びくびくと震えるAの体を、空いてる腕で抱きしめた。Aが俺の肩に顔を埋めて、荒い息をしてた。

「はぁ…はぁ…なに今の…」

「…イったんじゃないの」

「知らない…こんなの初めて…」

Aがまだ震えてる手で、俺のズボンのベルトに触れた。

「…私も、触りたい」

Aがぎこちない手つきで俺のズボンを下ろした。もうとっくにパンパンに膨らんでたから、恥ずかしかった。

「…おっきい」

「普通だと思うけど」

「比較対象ないからわかんない…」

Aが両手で包むように握った。冷たい指先が触れた瞬間、ゾクッとした。

「こう…?上下に…?」

「ん…そう…もう少し強くていい」

Aの手が慣れない動きで上下して、ぎこちないのに、それがかえって興奮した。だってこれ、三年間ずっと犬猿の仲だと思ってた相手だぜ。学校じゃ「触んないで」って言ってたAが、今俺のを握ってる。

(意味わかんねぇ。夢か?これ夢じゃないよな?)

「…ねえ、入れてほしい」

「え…いいの?」

「ゴム…ある?」

俺は慌てて机の一番下の引き出しを漁った。半年前にBにノリで渡されたやつが、未開封のまま残ってた。

(B、ありがとう。お前は神だ)

ゴムを装着するのに手間取った。Aが横で見てて「不器用だね」って笑ったけど、お前だって震えてんじゃねーか。

「…いくよ」

「…うん」

ゆっくり入れた。先端が入った瞬間、Aが息を呑んだ。

「っ…痛い…」

「止めるか?」

「止めないで。…もう少し、ゆっくり」

少しずつ進めた。Aが俺の背中に爪を立てて、それが痛くて、でもやめたくなかった。

奥まで入ったとき、Aの目から涙が一筋こぼれた。

「大丈夫?」

「…うん。泣いてるのは痛いからじゃない」

「じゃあなんで」

「嬉しいから…バカ」

この「バカ」が三年間で一番柔らかかった。

ゆっくり腰を動かし始めた。Aがぎゅっと俺の手を握ってきた。恋人繋ぎ。Aの指が細くて、でも握り返す力はしっかりしてた。

「ん…あっ…」

「痛くない?」

「もう平気…動いて」

少しずつペースを上げた。Aの声が変わっていった。痛みの声から、違う何かに。

「あ…ん…なにこれ…さっきと違う…」

「気持ちいい?」

「わかんない…でも止めないで…」

密着したまま動いた。Aの肌が熱くて、汗ばんでて、さっきつけた香水の残りが微かに匂った。

「ん…っ、好き…」

「…俺も」

「ずっと好きだった…三年間ずっと…っ」

「ごめん…気づかなくて」

「バカだから…アンタほんとにバカだから…あっ…」

Aが俺をぎゅっと抱きしめてきた。腕も、脚も、全部で俺を包むみたいに。

限界が近づいてた。

「やばい…もう…」

「いいよ…出して…」

腰を押しつけて、そのまま果てた。頭が真っ白になって、体中の力が抜ける感覚。ゴム越しでもAの中の熱さが伝わってきた。

「はぁ…はぁ…」

「…出た?」

「うん…」

「…ふふ」

Aが俺の髪をくしゃっと撫でた。

「お疲れ、バカ」

「お前さ、バカって何回言うんだよ…」

「だってバカなんだもん。三年も気づかないし」

抱き合ったまましばらく動けなかった。Aの心臓の音が聞こえた。早い。俺のも早い。

ゴムを外してティッシュで処理して、二人でベッドに横になった。

「…ねえ」

「ん」

「明日から学校で会ったら、どうする?」

「…普通に話しかけるけど」

「…私、急に態度変えたらみんなに変に思われる」

「知るかよ。もう犬猿の仲ごっこは終わりだ」

「…ごっこって言うな」

「じゃあなんて言えばいいんだよ」

「…恥ずかしいから、少しずつでいい?」

「いいよ。少しずつな」

Aが俺の胸に顔をくっつけてきた。

「…ありがとう。ピアス、捨てないでくれて」

「なんとなく捨てられなかったんだよ。今思えば、ずっとお前のことが気になってたんだろうな」

「やっと気づいたの?」

「おう。三年かかったけど」

「…長かったなぁ」

八時四十分にAは帰った。親が帰ってくる二十分前。

玄関で「じゃあね」って言ったAの顔は、三年間で見た中で一番やわらかかった。

次の日、学校でAと廊下ですれ違った。周りにはクラスメイトがいっぱいいた。

Aが俺を見た。いつもならここで「なに見てんの」って来るはず。

でもAは、一瞬だけ笑って、そのまま通り過ぎた。

(…あ、今の笑顔、俺だけに向いてた)

帰り道、Aからメッセージが来た。

『今日、目合ったとき笑っちゃった。バレてないかな』

『たぶんバレてない。俺だけが見てた』

『…きもい笑』

『お前がきもいって言えた立場かよ、ピアスの人』

『うるさい。おやすみ、バカ』

星のピアスは今も俺の机の引き出しに入ってる。Aは片耳だけ別のピアスをつけて学校に来てる。もう片方が俺の手元にあるって知ってるのは、この世で二人だけ。


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