こんにちは。今年25になった社会人です。
これは俺が18のとき、大学進学で実家を出る前の夜に起きた話。もう7年前のことだけど、未だに忘れられなくて、初めて書いてみます。
俺の家庭環境をざっくり説明すると、高1の冬に母親が再婚した。相手は母親の職場の上司で、バツイチ。連れ子がひとりいて、それが当時中2の女の子だった。名前は伏せるけど、仮にユキとする。
最初に会ったのは顔合わせの食事会で、横浜のロイヤルパークホテルのレストランだった。正直、再婚とか連れ子とかめんどくせーなって思ってた。けど会ってみたら、ユキは橋本環奈を少しだけ大人っぽくした感じの顔で、身長は158くらい。制服じゃなくて白いワンピースを着てて、中2にしてはだいぶ大人びてた。
(いや、かわいいな普通に…)
でもユキは俺と目を合わせようとしなかった。箸を動かしながらずっと下を向いてて、話しかけても「はい」「別に」しか言わない。
「ユキちゃん、学校は楽しい?」
「…普通です」
「部活とかやってんの?」
「…やってません」
会話、終了。母親が「まあまあ、緊張してるのよ」ってフォローしてたけど、緊張っていうか、明らかに俺のことが嫌そうだった。
再婚が正式に決まって、ユキと義父が俺たちの家に越してきた。横浜市の青葉台にある3LDKのマンション。ユキの部屋は俺の隣になった。
同居が始まって気づいたんだけど、ユキが冷たいのは俺にだけだった。母親には「お母さん」って呼んで懐いてるし、近所のおばさんにも愛想がいい。学校の友達と電話してるときの声は別人みたいに明るい。
なのに俺に対してだけ、まるで存在しないみたいな態度をとる。
朝、洗面所でかちあうと無言で出ていく。リビングで俺がテレビ見てると自分の部屋に戻る。夕飯は家族全員で食べるけど、俺に話を振ることは絶対にない。
(俺、なんかしたか…?)
最初は気にしてたけど、半年もすると慣れた。ユキはそういう子なんだと思うことにした。反抗期なのかもしれないし、血の繋がらない兄貴なんて気持ち悪いんだろうなと。
ただ、ひとつだけ引っかかることがあった。
俺が学校から帰ってくると、玄関にユキの靴がある。でもリビングには誰もいない。自分の部屋に入ると、なんか微かにシャンプーの匂いがする。ユキと同じやつ。いち髪の、あの甘い香り。
最初は気のせいだと思ったけど、何回か続いて、さすがに気になった。でも聞けるわけもない。「お前、俺の部屋入った?」なんて言ったら余計に嫌われるだけだ。
高3の夏、俺は受験勉強に追われてた。志望校は京都大学の工学部で、青葉台から京都はかなり遠い。合格したら一人暮らしになる。
模試の結果がE判定で落ち込んでた日の夜、珍しくユキが俺の部屋のドアをノックした。
「…お母さんが、これ持ってけって」
差し出されたのは、マグカップに入ったホットココア。
「あ、ありがと」
受け取ろうとしたら、ユキの指が俺の指に触れた。ユキがびくっとして、ココアが少しこぼれた。
「っ…ごめん」
慌ててティッシュで拭こうとするユキの耳が真っ赤だった。
(え、なに…?)
「大丈夫大丈夫、俺が拭くよ」
「…勝手にすれば」
そう言って出ていった。でもドアを閉める直前に、一瞬だけ振り返った気がした。
それから受験が近づくにつれて、ユキの態度に微妙な変化が出てきた。相変わらず俺には冷たいんだけど、なんか距離が近くなった。
たとえば、俺がリビングで勉強してても出ていかなくなった。ソファの端っこでスマホをいじりながら、たまに俺の方をちらっと見てくる。目が合うとすぐそらすんだけど。
ある日、参考書が足りなくて本屋に行こうとしたら、玄関でユキとかちあった。
「お、出かけんの?」
「…買い物」
「俺も本屋行くんだけど、方向一緒じゃね?」
「…別に、一緒に行くとか言ってない」
「いや、言ってないけど、方向一緒なら一緒に歩くだけじゃん」
「……好きにすれば」
青葉台駅前まで歩く間、ユキは黙ってたけど、微妙に俺の半歩後ろをキープしてた。横に並ぼうとすると、すっと下がる。でも離れすぎることもない。
本屋で参考書を選んでたら、ユキが文庫本のコーナーにいた。手に取ってたのは住野よるの「君の膵臓をたべたい」。
「それ、面白いよ。俺も読んだ」
「…あんたの感想とか聞いてない」
「はいはい」
でも結局ユキはその本を買ってた。
帰り道、田園都市線の高架下を歩いてたとき。
「…ねえ」
「ん?」
「京都、受かりそうなの」
「いや、正直やばい。E判定だし」
「…ふうん」
「なに、心配してくれてんの?」
「は?してないし。いなくなったら部屋広く使えるなって思っただけ」
「ひっで笑」
でもユキの声は少し震えてた。俺はそのとき気づかなかったけど。
冬になって、奇跡的に京大に合格した。家族みんな喜んでくれた。義父は「よくやった」って肩を叩いてくれたし、母親は泣いてた。
ユキだけが、「おめでとう」も言わずに自分の部屋に閉じこもった。
夕飯のとき、母親がユキに「お兄ちゃんにおめでとうは?」って言ったら、
「…おめでとうございます」
って、お葬式みたいなテンションで言われた。
(まあ、ユキだしな…)
引っ越しは3月の頭。荷造りを進めながら、この2年間を振り返ってた。ユキとはついに仲良くなれなかったな、って。寂しいとかじゃなくて、なんか申し訳ないような気持ちだった。義理の兄としてもうちょっとやれることあったんじゃないかって。
引っ越し前日の夜。もう部屋の荷物はほとんど段ボールに詰めてあって、布団だけがぽつんと敷いてあった。スマホで京都の一人暮らし物件の写真を見てたら、11時過ぎにドアがノックされた。
こんな時間に母親が来るわけないし、義父はとっくに寝てる。
ドアを開けたらユキがいた。パジャマ姿で、長い髪を下ろしてた。普段はポニーテールにしてるから、髪を下ろしたユキを見るのは初めてだった。
(え、めちゃくちゃかわいい…)
いやいや、義妹だろ。何考えてんだ俺。
「…どした」
「…入っていい」
疑問文じゃなくて、ほぼ宣言だった。
俺が返事する前にユキは部屋に入ってきて、段ボールの山を見回した。
「…本当に行くんだ」
「まあ、合格したし」
「……」
ユキは何も敷いてない床に座った。俺も向かい合って座った。
沈黙が続いた。時計の秒針の音がやたらでかく聞こえる。
「…あのさ」
「うん」
「あたし、最初から…あんたのこと嫌いだったわけじゃない」
心臓が跳ねた。二年間ずっと冷たくされてきて、初めて聞く本音だった。
「…え?」
「顔合わせのとき、お母さんから写真見せてもらって…あんたの顔見て…」
ユキが膝を抱えて顔を伏せた。
「かっこいいって、思った」
(…は?)
「でも家族になるって聞いて、じゃあ絶対好きになっちゃダメだって…だから冷たくした。近づいたら好きになるってわかってたから」
俺は言葉が出なかった。二年間の全部が、頭の中でひっくり返った。
洗面所で逃げるように出ていったのも。リビングに俺がいると部屋に戻ってたのも。全部、好きだから離れてたのか。
「…お前、俺の部屋に入ってた?俺がいないとき」
ユキの肩がびくっと震えた。
「…っ、なんで知って」
「シャンプーの匂い、残ってた」
「……最悪」
顔を膝に埋めたまま、ユキの耳がまた真っ赤になってた。
「あんたの枕とか、ベッドとか…匂い嗅いでた。気持ち悪いでしょ。きょうだいなのに」
「気持ち悪くない」
自分でも驚くぐらい即答してた。
「…嘘」
「嘘じゃない。つーか、俺もユキのこと…」
ここで止まった。自分が何を言おうとしてるのか、急に怖くなった。
義妹だぞ。家族だぞ。これを言ったら取り返しがつかない。
でも、ユキが泣いてた。声を殺して、膝に顔を押し付けて、肩を震わせてた。
二年間ずっとひとりで我慢してたんだと思ったら、胸が締めつけられた。
「ユキ」
「…なに」
「こっち向いて」
ユキがゆっくり顔を上げた。目が真っ赤で、鼻も赤くて、でもやっぱりかわいかった。涙で睫毛がくっついてて、上目遣いで俺を見てくる。
「俺も、お前のことずっと気になってた。嫌われてると思ってたから言えなかっただけで」
「…は?…え?」
「かわいいなって思ってた。でも義妹だし、嫌われてるしで、どうしようもなかった」
「うそ…だって、あたしあんなに冷たくしたのに…」
「冷たくされても気になるもんは気になるんだよ」
ユキの目からまた涙がぼろぼろ落ちた。今度は違う涙だった。
「ばか…もっと早く言ってよ…」
「お前が冷たいからだろ」
「それは…あんたが鈍いから…っ」
言い合いみたいになってるのに、二人とも笑ってた。おかしくて、でも泣けて。
気づいたら、俺はユキを抱きしめてた。小さい体は震えてて、パジャマ越しに心臓の音が伝わってきた。どっちの心臓か、もうわかんなかった。
「…明日、いなくなるんでしょ」
「いなくならねーよ。京都行くだけだろ」
「同じことじゃん…」
「帰ってくるし、いつでも電話できるし」
「…電話、出てくれるの」
「当たり前だろ」
ユキが俺の胸に顔を押し付けて、シャツをぎゅっと握ってきた。
「…キス、していい?」
その言葉を聞いた瞬間、理性とかモラルとか、全部どうでもよくなった。
義妹だとか、家族だとか、そんなことを考える余裕は一切なかった。
俺が手のひらでユキの頬を包むと、ユキが目を閉じた。睫毛が震えてて、唇が少し開いてて。
唇を重ねた。
柔らかかった。少し乾いてて、でも温かくて。触れただけのキスだったのに、頭の中が真っ白になった。
離れたら、ユキの目がとろんとしてた。
「…もう一回」
今度は俺から。深く、長く。ユキの唇を吸うと、小さく「ん」って声が漏れた。
舌を入れると、ユキが一瞬びくってなったけど、すぐに舌を絡ませてきた。下手くそだったけど、一生懸命こっちに合わせようとしてるのがわかった。
(やばい。かわいすぎる)
キスしながら、ユキの背中に手を回した。パジャマの生地が薄くて、背中の骨が指に触れる。こんなに華奢だったのかって思った。
「ん…っ、はぁ…」
唇を離すと、ユキが潤んだ目で俺を見上げてた。
「…あたし、あんたのこと二年間ずっと好きだった」
「知ってたら、もっと早くこうしてたのにな」
「…ばか」
ユキが俺の首に腕を回してきた。密着すると、パジャマの下にブラをつけてないのがわかった。胸の柔らかい感触が直に伝わってきて、体が反応した。
ユキも気づいたみたいで、顔を真っ赤にして、でも離れなかった。
「…あんたの最後の夜だから」
「最後じゃない。また帰ってくるって言ったろ」
「…じゃあ、最初の夜にして」
(…この子、ずるい)
そんな言い方されたら止まれるわけない。
でも一応確認した。
「…いいのか、本当に。家族に聞こえたら」
「お母さんたちの部屋は一階でしょ。それに…」
ユキが少し目をそらして、
「あたし、声、我慢するから」
(いや、そういう問題じゃないんだけど…でもこの状況で断れるわけないだろ…)
俺はユキを布団の上にそっと寝かせた。
明日にはこの部屋を出ていく。この布団で眠るのも今夜が最後。そのことが余計に胸を締めつけた。
ユキのパジャマのボタンを上からひとつずつ外していった。手が震えてた。俺の方が緊張してるってどういうことだよ。
ボタンを全部外すと、ユキの白い肌が暗がりに浮かんだ。ブラをつけてないのはさっきわかってたけど、実際に見ると息が止まった。
Cカップくらいの、形がきれいな胸。乳首は薄いピンクで、暗い部屋でもはっきりわかった。
「…きれいだな」
「…見ないでよ、恥ずかしい」
口ではそう言いながら、隠そうとしない。むしろ少しだけ胸を張ったように見えたのは、俺の願望か。
胸にそっと手を置くと、ユキが小さく声を漏らした。
「ん…っ」
柔らかくて、手のひらに吸い付くような感触。ゆっくり揉むと、乳首が硬くなるのがわかった。
「あ…っ、そこ…」
乳首を指先で転がすと、ユキが体をくねらせた。
「感じる?」
「…うるさい。わかってて聞くな…っ」
ツンデレは胸を触られても健在らしい。
口に含むと、ユキの手が俺の頭を掴んだ。押し返すのかと思ったら、逆に引き寄せてきた。
「んっ…は…ぁ」
声を殺そうとしてるのが伝わってきた。唇をぎゅっと結んで、でも息が漏れて。
パジャマのズボンに手をかけると、ユキが俺の手首を掴んだ。
「…待って」
「…嫌か?」
「嫌じゃない。ただ…あたし、初めてだから…」
その言葉を聞いて、なぜか安心した。同時に、とんでもない責任感が湧いた。
「俺も、ほぼ初めてみたいなもんだよ」
正確には高2で一度だけ経験があったけど、あのときは酔った勢いで記憶も曖昧だった。実質初めてみたいなもんだ。
「…ほぼって何」
「いや、気にすんな。ゆっくりやるから」
ズボンを脱がすと、白い下着が見えた。シンプルな綿のやつ。子供っぽいのに、それがやたらエロく感じた。
下着の上から触ると、もう湿ってた。
「っ…やだ、触んないで…濡れてるの気づかれたくない…」
「もう気づいてるけど」
「…最悪」
でもユキは脚を閉じなかった。
下着をずらして直接触れると、ぬるっとした感触が指に伝わった。
「あっ…」
声が出た。ユキが慌てて口を両手で塞いだ。
「んんっ…っ…」
俺は無理せず外側を撫でるようにした。クリに触れると、ユキの体がびくっと跳ねた。
「ここ?」
「っ…そこ、だめ…敏感すぎる…っ」
少しずつ指を動かしていくと、ユキの息が荒くなった。口を塞いでるのに、鼻から漏れる吐息がエロすぎた。
「んっ…ん…はぁ…っ、あ…」
ユキの手が布団を掴む。太ももが小刻みに震え出した。
「やだ…変な感じ…っ、止めて…っ、止めないで…」
矛盾してるのがユキらしくて、少し笑ってしまった。
「笑うなっ…ばか…あっ…」
ユキが限界に近いのがわかった。全身に力が入って、俺の腕をぎゅっと掴んで。
「っ……!」
声にならない声を上げて、ユキの体が弓なりに反った。太ももが俺の手を挟むように閉じて、びくびくと震え続けた。
しばらく震えが収まるのを待った。
「…はぁ…はぁ…」
「大丈夫?」
「…大丈夫じゃない。頭真っ白になった」
顔を覆って横を向くユキの横顔が、汗で髪が張り付いてて、本当にきれいだった。
「…あんたも、脱いで」
その言葉で俺も服を脱いだ。もうとっくに限界だった。
ユキが俺の体を見て、目を逸らした。
「…でかい」
「…お褒めの言葉どうも」
「褒めてない。入るのかなって心配してるの」
「ゆっくりやるから」
コンドームを取り出した。引っ越しの荷物に入れといたわけじゃなくて、財布に入ってたやつ。半年以上前に買ったまま使う機会がなかったやつだ。
ユキが仰向けになって、膝を立てた。脚が震えてるのが見えた。
「…痛い?」
「まだ何もしてない」
「わかってるし。聞いてるの」
「最初はちょっと痛いかも。でも無理しないから。嫌だったら言って」
「…嫌なわけないでしょ。二年間ずっと…こうしたかったんだから」
その言葉に心臓を撃ち抜かれた。
先端を当てて、ゆっくり入れた。
「んっ…痛…っ」
ユキが眉を寄せた。すぐに止まった。
「大丈夫か?」
「…大丈夫。続けて」
少しずつ、本当に少しずつ進めた。ユキが痛そうな顔をするたびに止まって、慣れるのを待った。
全部入ったとき、ユキが長い息を吐いた。
「…入った」
「うん。すげえ…きつい…」
中がぎゅっと締めつけてきて、動いたら一瞬で終わりそうだった。
「…なに、もう出そうなの」
「うるせえ。お前が締めすぎなんだよ」
「あたしのせいにしないでよ…初めてなんだから…しょうがないでしょ…っ」
こんな状況でも言い合いになるのが、俺たちっぽいなと思った。
ゆっくり動き始めると、ユキの顔が変わった。痛みから、別の何かに。
「あ…っ、ん…それ…」
「痛い?」
「…ちがう。なんか…変な感じ…悪くない…」
声を必死に殺してるのに、息が漏れる。俺も必死だった。気持ちよすぎて、でも早く終わらせたくなくて。
ユキの手を握った。指を絡めると、ユキがぎゅっと握り返してきた。
「…好き」
小さすぎて聞こえないくらいの声だった。でも確かに聞こえた。
「俺も」
ユキの目がまた潤んだ。泣き虫だなこいつ。
「もっと…動いて…」
ペースを上げると、ユキが口を塞ぐのを忘れた。
「あっ…あっ…んっ…」
「声、出てる」
「っ…わかってる…でも…止められない…っ」
ユキが俺の背中に手を回して、爪を立てた。痛いのに、それがたまらなかった。
「なんか…来る…っ、あたし、また…っ」
「俺も…もう…」
「一緒に…っ」
最後の瞬間、ユキが俺を抱き寄せた。密着したまま、俺は中で果てた。ユキも声を殺して、でも全身を震わせて。
しばらく、どっちも動けなかった。
繋がったまま、額をくっつけて息を整えた。
「…はぁ…はぁ…」
「…ユキ」
「…なに」
「よかった」
「…なにが」
「お前の気持ち、知れて」
ユキがまた泣きそうな顔をした。
「…ばか。泣かせんなよ」
抜いた後、ユキは俺の腕の中に収まった。小さい体がすっぽりはまって、ぴったりだった。
「…ねえ」
「ん」
「もう一回…していい?」
「お前から言うんだ」
「…うるさい。言わせんな」
二回目は、ユキの方から積極的だった。さっきまでの緊張が嘘みたいに、自分から腰を動かしてきた。
「ん…っ、あ…こうすると…気持ちいい…」
「お前、さっき初めてって…」
「初めてだよ。でも…二年間ずっと、こうしたいって想像してたから…」
(こいつ…二年分の妄想を今ぶつけてきてんのか…)
ユキの腰の動きが速くなった。声を殺すために俺の肩に顔を埋めて、でも吐息が耳にかかって。
「好き…好き…っ、ずっと好きだった…っ」
二年間の我慢が全部溢れ出すみたいに、ユキは何度もそう言った。
二回目が終わった後、時計を見たら午前2時を過ぎてた。
ユキは俺の胸に頬をくっつけたまま、指で俺の鎖骨をなぞってた。
「…あたし、明日の朝は見送りに出ないから」
「え、なんで」
「泣くから。お母さんたちの前で泣きたくない」
「…そっか」
「でも電話する。毎日。いいでしょ」
「毎日かよ」
「嫌なの」
「嫌じゃない。毎日出るよ」
「…約束ね」
ユキが小指を差し出してきた。指切りなんて何年ぶりだよと思ったけど、黙って小指を絡めた。
「破ったら殺すから」
「物騒だな」
「…あんたじゃなきゃ言わないよ、こんなこと」
ユキはそのまま俺の腕の中で眠った。
翌朝、起きたらユキはもういなかった。
隣の部屋からは何の物音もしなくて、本当にいないみたいだった。
でも枕元に、一冊の文庫本が置いてあった。住野よるの「君の膵臓をたべたい」。あの日本屋で買ったやつだ。
開いたら、最後のページに付箋が貼ってあって、ユキの字で一言だけ書いてあった。
「ちゃんと帰ってきて」
荷物をトラックに積み込むとき、俺は泣いた。母親に「どうしたの」って聞かれて、「花粉」って言ったけど、3月の青葉台に花粉なんかそこらじゅうに飛んでるからバレてないと信じたい。
あれから7年。俺たちは今も続いてる。親にはまだ言えてない。いつかちゃんと話さなきゃいけないってのはわかってる。
でもあの夜、ユキが部屋に来てくれなかったら、俺はたぶんユキの気持ちを知らないまま京都に行って、そのまま疎遠になってたと思う。
だから感謝してる。ツンデレのくせに、一番大事なときだけは素直になってくれたユキに。
…ここまで読んでくれた人、ありがとうございました。長くてすみません。