引越し業者の助手席に乗ってきた派遣の女の子が、現場で泣き出してから関係がおかしくなった話

これ書いていいのかちょっと迷ったんだけど、もう時効だと思うので書きます。

俺は都内の引越し業者で働いてる28歳。まあ要するにトラックの運転手兼作業員ってやつ。身長172、体重68、顔は阿部寛をめちゃくちゃ劣化させた感じ。目だけはデカいらしいけど、それ以外に取り柄はない。彼女いない歴3年。モテません。

3月の繁忙期って引越し業界ほんとに地獄でさ。毎年この時期だけ派遣スタッフが入ってくるんだけど、大体は体育会系の男が来る。力仕事だし当然だよな。

で、その年の3月に来たのが、まさかの女の子だった。

朝礼のとき班長が「今日から派遣で入る鳥居さんです」って紹介して、出てきたのが155センチくらいの、華奢な子。髪はショートボブで、顔は永野芽郁をもうちょっと幼くした感じ。目がまん丸で、ちょっとおどおどしてて、明らかにこの現場に合ってない空気を纏ってた。

(いや、無理でしょ)

正直、全員がそう思ったと思う。冷蔵庫とか洗濯機とか運ぶ仕事に、この子を使えと?

案の定、初日の2件目で事件が起きた。

マンションの3階から学習机を降ろす作業中、階段の踊り場で彼女が机の角を壁にぶつけた。ガンッて音がして、養生テープの上からだったけど壁紙がちょっとめくれた。大したことないレベルだったんだけど、彼女の顔が一気に青くなって、そのまま泣き出した。

「すみません、すみません……」

もう声が震えてて、鼻水も出てて、作業が完全に止まった。

先輩の木村さんが舌打ちしたのが聞こえた。もう1人の派遣の男も「勘弁してくれよ」って顔してた。

俺はそのとき何を思ったかっていうと、正直よく覚えてない。ただなんか、放っておけなかった。

「鳥居さん、ちょっと外出て深呼吸してきな。これ俺やっとくから」

「で、でも……」

「いいから。泣きながら荷物持つ方が危ないって」

彼女が階段を降りていったあと、木村さんに「お前が面倒見んのか」って言われた。「まあ、しょうがないっすよ」って返したら、「じゃあ明日からお前の助手席な」って。

(ああ、押し付けられたわ)

翌日から、鳥居さんは俺の2トントラックの助手席に乗ることになった。

朝、営業所の駐車場で会うと、彼女はもう制服に着替えて待ってた。ちゃんと作業用の手袋も持ってて、靴も安全靴に替えてた。昨日泣いてた子と同じ人間とは思えないくらい、目がしっかりしてた。

「昨日はすみませんでした。今日からちゃんとやります」

「おう。まあ無理すんなよ」

トラックに乗り込んで、最初の現場に向かう。環七を北上しながら、なんとなく聞いた。

「鳥居さんさ、なんで引越し屋の派遣なんか来たの?」

「……お金が必要で」

「まあそりゃそうだろうけど。他にもあるじゃん、事務とか」

「事務は……タイピングが遅くて落とされちゃって」

「あー」

「あと、体動かす仕事のほうが向いてるかなって思って。バレーボールやってたので」

(バレー経験者なのか。それで派遣登録したのか。いや、でも引越しとバレーは全然違うからな……)

彼女は22歳で、大学を出たあと就職した会社を半年で辞めて、今はバイトと派遣で食いつないでるらしい。一人暮らし。板橋のワンルーム。家賃5万8千円。

「前の会社、営業だったんですけど、お客さんに怒鳴られるのが怖くて……」

「それで辞めたの?」

「はい……。根性なしですよね」

「いや、怒鳴られんのは普通に嫌だろ」

「……ありがとうございます」

なんかさ、この子、ちょっと褒めるだけで目がキラッてなるんだよ。犬みたいっていうか。褒められ慣れてないんだろうなって、すぐわかった。

最初の1週間は正直きつかった。彼女は力がないから、重い荷物は基本俺が持つ。彼女には段ボールの搬出と、養生と、トラックへの積み込みの指示を任せた。

ただ、意外だったのが、彼女の段取りのよさ。3日目くらいから、俺が何も言わなくても養生の順番を把握してて、次に何が必要か先回りして準備してた。

「鳥居さん、気が利くな」

「え? そうですか?」

「うん。正社員の奴より動けてるよ」

「……っ」

また泣きそうな顔になったから、「泣くなよ」って笑ったら、必死に我慢してた。

(この子、ほんとに誰にも認めてもらえてなかったんだな)

2週間目に入ると、助手席での会話が増えた。移動中ってやることないから、自然とそうなる。彼女は意外とよく喋る子だった。好きなアニメの話とか、板橋の安い中華屋の話とか。

「板橋のときわ台に『珍来』ってあるんですけど、半チャーハンラーメンセットが750円で最強なんですよ」

「それ俺も行くわ。東武練馬のほうの珍来じゃなくて?」

「違います!ときわ台のほうです! 全然違いますから!」

急に熱くなるのがおかしくて笑った。

ある日、志木の現場が終わったのが19時過ぎで、営業所に戻る道が渋滞してた。254号線が全然動かない。

「飯食ってから帰るか」

「え、いいんですか?」

「まあ経費じゃないけどな。俺が奢るよ」

「えっ……いいんですか、ほんとに」

和光市のファミレスに入った。ジョナサン。彼女はハンバーグセットを頼んで、出てきた瞬間の顔が完全に子供だった。

「わあ……」

「そんな嬉しい?」

「最近、自炊ばっかりだったので……外食ひさしぶりで」

(……お金ないんだな、ほんとに)

食べながら、ぽつぽつと話してくれた。実家は新潟の長岡で、親とは折り合いが悪くて仕送りはもらってないこと。前の会社を辞めたとき、父親に「だからお前はダメなんだ」って言われたこと。

「だから、この仕事は絶対に途中で辞めたくないんです」

目がマジだった。あのおどおどしてた子と同じ人間とは思えなかった。

俺はそのとき初めて、(この子、かわいいな)って思った。顔がどうこうじゃなくて、なんていうか、生き方が。不器用で、弱くて、でも逃げない感じが。

……いや、顔もかわいかったけどさ。

3週間目。事件が起きた。

その日は大型の法人案件で、8人チームでオフィスの引越しだった。場所は大手町。ビルの12階から4階への社内移転。班長の仕切りで俺と鳥居さんは段ボールの搬出担当になった。

問題は、木村さんだった。

木村さんは朝から機嫌が悪くて、鳥居さんに対してずっと当たりがきつかった。

「鳥居さん、そこの箱もう1個いけるだろ」とか、「遅ぇよ、走れ」とか。

(いや、俺のセリフじゃなくて木村さんが言ってたんだけど)

昼休憩のとき、鳥居さんが給湯室で1人で泣いてるのを見つけた。

「……大丈夫か」

「はい。大丈夫です」

全然大丈夫じゃない顔で言うからさ。

「木村さんの言い方はちょっとアレだけど、気にすんな。あの人誰にでもああだから」

「……わかってます。でも、私が遅いのは事実で……迷惑かけてるのも事実で……」

「迷惑って思ってんのは木村さんだけだよ。俺は鳥居さん来てから仕事楽になってるし」

「…………」

「つーか、3月終わったらどうすんの? 派遣の契約って3月いっぱいでしょ」

「……はい。また別の派遣探します」

「うちの営業所、正社員の事務募集してるけど。タイピングは遅くても大丈夫だと思うよ、あそこ」

「えっ……」

「いや、無理にとは言わないけど。鳥居さんみたいに段取りできる人、事務向いてると思うんだよな」

彼女はしばらく黙ってて、それから小さく「考えてみます」って言った。

(……なんで俺、こんなに必死なんだろ)

自分でもよくわかんなかった。ただ、3月が終わって彼女がいなくなるのが、なんか嫌だった。助手席に誰も座ってない2トントラックで環七走るの、想像するだけで寂しかった。

……いや、それってもう完全にアレじゃん。好きじゃん。

気づいたのが遅すぎたのかもしれない。

3月の最終週、金曜日。鳥居さんの最終日だった。

その日は静岡の沼津まで長距離の案件が入ってて、俺と鳥居さんの2人で4トントラックを回すことになった。片道2時間半。

行きの東名高速で、彼女がやけに静かだった。

「どうした? 車酔い?」

「いえ……最後なんだなって思って」

「……ああ」

「1ヶ月、ありがとうございました。石井さんがいなかったら、初日で辞めてたと思います」

「大げさだろ」

「大げさじゃないです。本当に」

沼津の現場は意外とスムーズに終わった。新築のマンションへの搬入で、エレベーターが広かったから作業しやすかった。

帰りは18時を過ぎてた。東名の御殿場あたりで渋滞にハマって、全然進まなくなった。

「こりゃ遅くなるな。どっかで飯食うか」

足柄SAに寄った。フードコートでうどんを食べて、外のベンチでコーヒーを飲んだ。3月末だったけど山の上だから寒くて、彼女が腕をさすってた。俺は作業用のジャンパーを渡した。

「ありがとうございます……大きい」

ブカブカのジャンパーを着てる姿が妙にかわいくて、目を逸らした。

「……さっきの事務の話、どうなった?」

「あ……実は、応募しようと思ってます」

「マジで?」

「はい。石井さんに背中押してもらったので」

「よかった」

「……でも、ちょっと不安で」

「何が?」

「同じ会社になったら……石井さんと気まずくなったりしないかなって」

「なんで気まずくなるんだよ」

「…………」

彼女が俺の顔を見た。SAの照明に照らされた顔が、いつもと違って見えた。目がちょっと潤んでて、唇が微かに震えてて。

「石井さんは、私のこと、どう思ってますか」

(……来た)

心臓がバクバクした。28年生きてきて、こんなド直球の質問されたの初めてだった。

「……どうって」

「女として、見てくれてますか」

俺はコーヒーのカップを握りしめたまま、何も言えなかった。言ったら終わりだと思った。いや、終わりっていうか、始まるのが怖かった。俺みたいな冴えない引越し屋が、この子と付き合えるわけないだろって。

「……見てるよ」

言っちまった。

「見てる。めちゃくちゃ見てる。助手席に座ってるときの横顔とか、養生テープ切るときの真剣な顔とか。あと、ハンバーグ見たときの顔」

「……っ」

「鳥居さんが来月からいなくなるの、ほんとに嫌だった。だから事務の話もしたし。……ごめん、下心丸出しだわ」

「下心って……」

「好きだから近くにいてほしかったんだよ。それだけ」

彼女がジャンパーの袖で目元を押さえた。またかよ、って思ったけど、今回は俺も目頭が熱かった。

「私……石井さんが初日に『外出て深呼吸してきな』って言ってくれたとき、もうダメだって思ってたんです。もう辞めようって。でも石井さんがトラックの助手席に乗せてくれて、毎日話してくれて」

「……」

「石井さんの隣にいると、私でも大丈夫なんだって思えたんです。それがすごく嬉しくて……好きになりました」

(うそだろ)

(こんなことある?)

足柄SAの駐車場、4トントラックの前で、3月の夜風が吹いてて、俺は好きな子に告白されてた。

「……付き合おう」

「はいっ……」

泣き笑いの顔が、ほんとに、ほんとにかわいかった。

トラックに戻って、助手席に座った彼女とキスした。運転席から身を乗り出す形になって、シフトレバーが腹に当たって痛かったけど、そんなのどうでもよかった。彼女の唇は冷たくて、コーヒーの味がした。

「ん……」

離れたあと、彼女が俺のジャンパーの匂いを嗅いでた。

「汗くさいだろ」

「……好きな匂いです」

(やめてくれ。理性が持たない)

東名を降りて首都高に入って、もう22時を過ぎてた。営業所に戻ってトラックを駐車場に停めて、報告書を書いて。いつもの手順を終えたのが23時前。

「送ってくよ」

「いいんですか?」

「つーか、板橋でしょ。近いし」

彼女のアパートは東武練馬から歩いて10分の、古い2階建てだった。1階の角部屋。

玄関の前で、彼女が鍵を出しながら言った。

「……上がっていきますか?」

「いいの?」

「汚いですけど」

部屋は6畳のワンルームで、全然汚くなかった。むしろきれいに片付いてて、小さいテーブルの上にノートパソコンと、読みかけの文庫本が置いてあった。

麦茶を出してくれて、床に並んで座った。さっきまで4トントラックの中で一緒にいたのに、6畳の部屋で隣に座ると距離感が全然違った。彼女の体温と、シャンプーの匂いがした。

「鳥居さん」

「……名前で呼んでほしいです」

「え? なんて名前だっけ」

「ひどい! 知ってるくせに!」

「冗談だって。……詩織」

「……はい」

名前を呼んだら、耳まで真っ赤になってた。

キスした。さっきのトラックの中みたいな不格好なやつじゃなくて、ちゃんと向き合って。詩織の唇は暖かくなってて、さっきとは違う味がした。麦茶の味。

「ん……石井さん」

「俺も名前で」

「……拓海さん」

ゾクッてした。この子に名前呼ばれるの、こんなにくるのかって。

キスが深くなって、舌が絡んで、俺は無意識に彼女の腰に手を回してた。彼女の体が小さくて、片腕で全部抱えられそうだった。

「あの……シャワー、浴びてもいいですか。汗かいてるので」

「ああ、俺もか」

「拓海さんが先にどうぞ」

「いや、詩織が先に入りなよ」

「じゃあ……一緒に、入りますか?」

(この子……こういうこと言うのか……)

狭いユニットバスに2人で入った。物理的に無理があるんだけど、それが逆に密着せざるを得なくて。シャワーを出して、彼女の肩にお湯がかかった瞬間、変な声が出た。

「あっ……熱い」

「ごめん」

温度を調整して、俺は彼女の背中にお湯をかけた。背中が白くて、肩甲骨がきれいに浮き出てて。バレーやってたっていうのがわかる筋肉のつき方だった。

「背中、きれいだな」

「……恥ずかしいです」

彼女が振り返った。シャワーの水滴がまつげについてて、上目遣いになってて。

俺はもう我慢できなくて、そのままキスした。シャワーの音と、水の感触と、彼女の体温が全部混ざって、頭がぐちゃぐちゃになった。

部屋に戻って、バスタオル一枚の状態でベッドに座った。シングルベッド。2人で座ると狭い。

「……いいの?」

「……はい」

バスタオルを外したら、想像してたよりずっときれいだった。細いんだけど、胸はちゃんとあって。Cカップくらいか。制服の下に隠れてたのが信じられなかった。

「……すげえ」

「そんな見ないでください……」

「いや、見るよ。好きな子の裸、見ないわけないだろ」

「……っ」

胸に触れた。柔らかくて、手のひらに収まるサイズで。乳首がピンク色で、触ったらすぐに硬くなった。

「あ……ん……」

声が小さくて、でも確かに感じてるのがわかった。

口に含んだら、ビクッて体が跳ねた。

「拓海さん……っ」

「感じやすいな」

「……久しぶりだから……」

「久しぶりって、前は?」

「大学のとき、1回だけ……」

(1回だけかよ……ほぼ初めてじゃん)

丁寧にしなきゃって思った。この子を泣かせるのだけは嫌だった。いや、さっきから泣いてばっかだけど、そういう涙じゃなくて。

下に手を伸ばすと、もう濡れてた。指を入れたら、きゅって締まって、詩織が俺の肩に爪を立てた。

「ん……あっ……」

「痛い?」

「痛くない……です。気持ちいい……」

ゆっくり動かすと、腰が小さく揺れ出した。

「拓海さん……もう、入れてほしい……」

コンビニで買ったゴムをつけた。足柄SAのトイレで買ったやつ。(我ながら用意周到すぎる……いや、もしかしたらって思ったのは事実だし)

正常位で、ゆっくり入れた。

「……っ」

きつかった。1回しか経験ないって言ってたから、ほぼ処女みたいなもので。彼女の顔が歪んだのを見て、一度止まった。

「大丈夫か?」

「大丈夫……動いて」

ゆっくり腰を動かした。グチュッて音がして、詩織が目を閉じた。

「あ……あっ……ん……」

小さな声が、部屋に響いた。窓の外をたまにトラックが通る音がして、それが妙にリアルだった。引越し屋のトラックかもな、なんて馬鹿なことを考えてた。

腰を掴んで、少しペースを上げた。

「あっ……拓海さん……気持ちいい……」

「俺も……やばい」

彼女が両腕を俺の首に回してきた。密着して、額と額がくっついて、お互いの息が混ざった。

「好き……好きです……」

「俺も……好きだよ」

彼女の中がきゅって締まって、俺は限界だった。

「出る……っ」

「うん……」

ゴムの中に出した。体の力が全部抜けて、彼女の上に崩れ落ちた。

「重い……」

「ごめん」

横にどいて、天井を見た。6畳の天井。蛍光灯が微かに点滅してた。

「……泣いてないですよ、今回は」

「え?」

見たら、笑ってた。泣いてなかった。初めてだった、この子が泣かずに笑ってるの見たの。

「……かわいいな、ほんとに」

「拓海さんのせいですよ」

しばらくそのまま横になってた。彼女が俺の胸に頭を乗せて、俺は彼女の髪をぼんやり触ってた。

気づいたら、また手が伸びてた。さっきとは違う触り方で、彼女の太ももをなぞって、内側に指を這わせた。

「……また?」

「だめ?」

「……だめじゃない」

2回目は、彼女が上になった。自分から腰を動かして、最初はぎこちなかったけど、だんだんリズムがついてきた。

さっきと違ったのは、彼女の表情。1回目は不安そうだったのが、今度は自分から気持ちよくなろうとしてた。目がとろんとして、口が半開きになって。

「あっ……ん……拓海さん……」

「いいよ、好きに動いて」

彼女が腰を前後に振ると、結合部からぐちゅぐちゅって音がした。

「なんか……すごい……」

「何が?」

「拓海さんの中にいるの、すごい……安心する……」

(逆だろ。俺が中にいるんだけど)

ツッコもうとしたけど、彼女があんまり気持ちよさそうな顔してたから、黙ってた。

腰のペースが速くなって、彼女の息が荒くなった。

「あっ……あっ……だめ、なんか……っ」

「いっていいよ」

「あ……っ!」

体がびくって震えて、俺の上に倒れ込んできた。腕の中で小さく痙攣してて、それを見たら俺も限界だった。

そのまま抱きしめたまま出した。2回目はなんか、さっきより全然気持ちよくて、たぶんお互いに力が抜けてたからだと思う。

「…………」

「寝た?」

「……起きてます」

「もう1時だぞ」

「……知ってます」

彼女がもぞもぞ動いて、俺の横に収まった。シングルベッドだから半分はみ出てるんだけど、別にいいかって思った。

「拓海さん」

「ん」

「事務の件、絶対受けます」

「……おう」

「毎日、拓海さんの帰りを待ちたいです。事務所で」

(やめろ。泣くぞ今度は俺が)

あれから3ヶ月経った。

詩織は4月にうちの営業所の事務で採用されて、今は毎日受付で伝票整理してる。タイピングは相変わらず遅いけど、段取りは誰よりいいから所長にも気に入られてる。

俺が現場から帰ると、事務所の窓から手を振ってくれる。

木村さんには「お前いつの間に」ってどやされたけど、まあ、そんなのどうでもいい。

週末は板橋の珍来で半チャーハンラーメンセット食って、彼女のワンルームに帰る。6畳で十分だ。蛍光灯はまだ点滅してるけど、そのうち替える。

たぶん、この先も泣くことは多いと思う。この子は泣き虫だから。

でも、泣き止んだあとの笑顔が見たくて、俺はまた助手席のドアを開ける。


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