こんにちは。僕は32歳、都内でシステムエンジニアをやってる独身です。
三鷹の2LDKに一人暮らし。別にモテないわけじゃない、と言いたいけど、最後に彼女がいたのは28の時だから、まあモテないんだと思います。休日は競馬の予想かNetflixか、そんな感じの冴えない生活です。
そんな僕のところに、去年の秋、妹の怜奈から電話がかかってきた。
「え、下宿?」
「違う違う、私じゃなくて。親友のことりちゃん。浪人して東京の予備校通いたいんだけど、実家が新潟で通えなくて」
怜奈は新潟で看護師をやってる26歳の妹だ。しっかり者だけど、人に頼み事をするのが下手で、電話口でもモゴモゴしてた。
「いや、知らない子を住まわせるのは……」
「知らなくないよ!お兄ちゃん、前にうちの実家来た時に会ってるじゃん。一緒にバーベキューしたでしょ」
言われてみれば、確かに3年前の夏に妹の友達と何人かで庭でバーベキューをした記憶がある。でも顔なんか全然覚えてない。
「ことりちゃん、すっごい大人しい子だから迷惑かけないよ。家賃も光熱費もちゃんと払うし。お願い、お兄ちゃんしか頼れる人いないの」
妹にここまで言われると断れない性格なのを、妹は完全にわかってた。
(まあ、空き部屋あるしな……)
結局OKしてしまった。
それから2週間後、ことりちゃんが三鷹にやってきた。
正直、驚いた。
バーベキューの時の記憶なんかまるでなかったけど、玄関に立ってたのは、橋本環奈を地味にしたような顔立ちの女の子だった。身長は155cmくらい。肩にかかるくらいの黒髪を一つに結んでて、度の入ってない伊達メガネをかけてる。胸は正直ペタンコに近い。Aカップあるかないかくらい。でも、肌がやたら白くて、なんか透明感がすごかった。
「あの……よろしくお願いします。怜奈さんにはいつもお世話になってて」
声がめちゃくちゃ小さい。聞き取るのに集中しないといけないレベル。
「あ、うん。こちらこそ。荷物それだけ?」
スーツケース1個とリュック1つ。浪人生ってこんなもんなのかと思いながら、空き部屋に案内した。6畳の洋室で、僕が前に使ってた机と本棚がそのまま残ってる。
「十分です。ありがとうございます」
ペコリと頭を下げるのが、なんか子犬みたいだった。
生活が始まって最初の1週間は、正直、ことりちゃんがいることをほとんど意識しなかった。
朝7時に出て予備校に行って、夜9時過ぎに帰ってくる。帰ったら自分の部屋で勉強して、11時にはもう寝てる。風呂もトイレも僕と被らないように気を使ってるのがわかった。
(めっちゃいい子だな……)
問題が起きたのは、2週目からだった。
僕の部屋とことりちゃんの部屋は、薄い壁一枚で隣り合ってる。
それまで気にならなかったんだけど、深夜に目が覚めた時、隣から微かに寝息が聞こえた。
すーすーって、規則正しい呼吸音。
(……なんだこれ)
それだけのことなのに、なぜか妙に意識してしまった。壁の向こうに19歳の女の子が寝てる。当たり前のことなんだけど、急にリアルに感じた。
その日から、毎晩ことりちゃんの寝息が気になるようになった。聞こえると安心するような、落ち着かないような、変な感覚。
(俺、やばくないか?)
3週目に入ると、もう一つ問題が出てきた。
ことりちゃんは部屋着がめちゃくちゃ無防備だった。
予備校から帰ってくると、タンクトップにショートパンツという格好になる。胸が小さいからブラをつけてないのか、薄いタンクトップ越しに乳首のかたちがうっすら見える。本人は全く気にしてない様子で、リビングでお茶を入れる時も、洗面所ですれ違う時も、その格好のまま。
(いや、32歳のおっさんと二人暮らしだぞ……もうちょっと警戒してくれ……)
でも、ことりちゃんにとって僕は「怜奈さんのお兄さん」、つまり身内みたいなもんなんだろう。だから気を許してるというか、異性として見てないんだと思う。
それはそれでちょっと寂しいんだけど。
(いやいや、寂しいとかじゃなくて)
ある土曜日、僕が休みで家にいたら、ことりちゃんも予備校が休みだった。
リビングで英語の参考書を広げてたことりちゃんが、突然うなり始めた。
「うーーー……」
「どうした?」
「英語が……全然わかんなくて……」
見ると、関係代名詞のところで詰まってた。
「あ、それ俺わかるかも。見せて」
僕は理系だったから英語が得意ってわけじゃないけど、受験英語くらいならなんとかなる。隣に座って教え始めた。
「え、すごい。そういうことだったんだ……」
「まあ、仕組みがわかれば簡単だよ」
「お兄さん、頭いいんですね」
「いや、そんなことないって。一応MARCHだけど」
「MARCH!?ことり、そこ第一志望なのに……」
目をキラキラさせてこっちを見てくる。距離が近い。シャンプーの匂いがする。
(やめろやめろ、受験生だぞ)
その日から、週末は僕が勉強を教えるのが習慣になった。
ことりちゃんは教えるとすぐ吸収するタイプで、教えてて楽しかった。わからないところがわかった瞬間に「あっ」って小さく声を出すのがかわいくて、(いかんいかん)って毎回思ってた。
11月に入って、気温がぐっと下がった頃。
事件が起きた。
深夜2時、僕はいつものように壁越しの寝息を聞きながらウトウトしてたんだけど、急に寝息が止まった。
代わりに聞こえてきたのは、微かな……声だった。
「ん……」
最初は寝言かと思った。でも違った。
「んっ……はぁ……」
僕は一瞬で目が覚めた。
(……マジか)
壁が薄いことを、ことりちゃんは知らないんだと思う。本人はめちゃくちゃ声を抑えてるつもりなんだろうけど、深夜の静寂の中では微かに漏れてくる。
布団がこすれる音。息を殺してるけど漏れる吐息。
僕は耳を塞ごうとしたけど、体が言うことを聞かなかった。下半身がとっくに反応してた。
(最低だ、俺……)
その日は結局、ことりちゃんの声が止んでからも眠れなくて、3時過ぎまで天井を見つめてた。
翌朝、キッチンで顔を合わせたことりちゃんは、いつも通りだった。
「おはようございます。コーヒー、入れましょうか?」
「あ……うん、ありがとう」
何事もなかったように振る舞うしかない。でも僕の目線は勝手にことりちゃんの薄いパジャマの胸元にいってしまう。
(ダメだダメだダメだ)
それからというもの、壁越しのあの声は週に2、3回のペースで聞こえてきた。
僕の方は完全にオナニーしづらくなっていた。音が漏れたらことりちゃんにバレる。でも溜まる一方。会社のトイレで処理するという情けない状態が続いた。
(32歳にもなって何やってんだ……)
12月の模試の結果が返ってきた日、ことりちゃんの様子がおかしかった。
リビングのソファに座って、じっと成績表を見つめてる。目が赤い。
「ことりちゃん……大丈夫?」
「……E判定でした」
声が震えてた。
「やっぱり私、ダメなのかな……浪人までしてるのに」
泣きそうなのを必死に堪えてるのがわかった。
「まだ12月だろ。ここからだよ」
「でも……こんな成績じゃ、怜奈さんにもお兄さんにも申し訳なくて」
「申し訳ないとかないから。俺だって現役の時はE判定だったし」
「……え、嘘」
「嘘じゃないって。12月のE判定なんて、そこからの追い込みで全然ひっくり返る」
半分は嘘だった。僕はD判定だった。でも、今はそんなことはどうでもいい。
「……ありがとうございます」
ことりちゃんが泣いた。声を出さずに、ぽろぽろと涙を流した。
僕は何も考えずに頭を撫でてた。
「……っ」
ことりちゃんが僕の胸に顔を埋めてきた。
(え)
細い肩が震えてる。僕は固まったまま、なんとか背中をさすった。
「お兄さんがいてくれて……よかった……」
心臓がバクバクした。
(俺、こいつのこと……)
好きなのか?いや違う。いや、どうなんだ。わからない。ただ、腕の中にいるこの子を守りたいとは思った。
(でも俺は13歳年上の、妹の友達を預かってるだけのおっさんだぞ)
年末年始、ことりちゃんは実家に帰らず勉強すると言い張った。
怜奈には「ちゃんと面倒見てあげて」と釘を刺された。何の面倒だよ、と思いつつ、大晦日は二人で鍋を食べた。
「お兄さん、料理上手ですね」
「鍋は切って入れるだけだから」
「でも、出汁が美味しいです」
「それは茅乃舎だしのおかげ」
「ふふっ」
ことりちゃんが笑うと、メガネの奥の目が細くなって、ほっぺたが少し上がる。その顔を見るたびに胸がきゅっとなる自分がいて、もう認めるしかなかった。
(好きなんだよな、俺。この子のこと)
でも、絶対に言えない。言ったら終わりだ。
紅白を見ながら、こたつで並んで座ってた。ことりちゃんはいつの間にか寝落ちしてて、僕の肩にもたれかかってた。
起こすのが忍びなくて、そのままにしてた。
除夜の鐘がテレビから聞こえた。
「……あけましておめでとう」
誰にも聞こえない声で呟いた。
1月に入って、受験が近づくとことりちゃんのピリピリした空気が伝わってきた。
勉強を教える時間も長くなった。隣に座ると肩が触れる距離で、時々ことりちゃんの横顔をぼんやり見てしまう自分がいた。
ある夜、いつもより遅くまで数学を教えてた時のこと。
「お兄さん」
「ん?」
「……壁、薄いですよね」
一瞬、息が止まった。
「え……」
「私……聞こえちゃってるの、知ってます」
ことりちゃんの耳が真っ赤だった。目は参考書に落としたまま、こっちを見ない。
「あ、いや、それは……」
「お兄さんも……聞こえてた、でしょ」
心臓が口から出そうだった。
「……ごめん」
「謝らないでください」
ことりちゃんがやっとこっちを向いた。メガネの奥の目がうるんでた。
「私……お兄さんのこと考えながら、してました」
(は?)
脳みそがフリーズした。
「最低ですよね。お世話になってるのに……でも、毎日隣にいて、優しくしてもらって……どうしようもなくなっちゃって」
「ことりちゃん……」
「お兄さんは私のこと、子供にしか見えないですよね。わかってます。だから受験終わったら出ていきます。ごめんなさい」
立ち上がろうとしたことりちゃんの手首を、僕は掴んでた。
(何やってんだ俺)
でも、手を離せなかった。
「……俺もだよ」
「え……」
「俺も、ことりちゃんのこと……ずっと意識してた。寝息が聞こえるだけでドキドキして、タンクトップ姿見るたびに目のやり場に困って、会社のトイレで……いや、これは言わなくていいか」
「……っ」
「でも、俺は32で、ことりちゃんは19で、しかも妹の友達で。ダメだろ、普通に考えて」
「普通って何ですか」
ことりちゃんの声が、初めて強くなった。
「私、19です。自分で決められます」
そう言って、ことりちゃんは僕の方に体を寄せてきた。
唇が触れた。
柔らかくて、温かくて、少し震えてた。
僕は最初、固まってた。でも、ことりちゃんが離れようとした瞬間、自分から唇を重ねてた。
「ん……」
短いキスだった。でも、頭の中が真っ白になった。
「お兄さん……」
「……これ以上は、ダメだ」
「ダメじゃないです」
「受験が……」
「受験のせいにしないでください」
ことりちゃんの目がまっすぐ僕を見てた。
(この子、こんなに強い目をするんだ)
普段の大人しいことりちゃんからは想像できない顔だった。
「……お兄さんの部屋、行っていいですか」
断る理由を、僕は見つけられなかった。
部屋に入って、ドアを閉めた瞬間、ことりちゃんが抱きついてきた。
細い体が密着して、心臓の音がお互いに聞こえるくらい近かった。
「ずっと……こうしたかった」
「……俺も」
認めたら楽になった。もう抑える必要がない。
キスした。さっきより深く、長く。ことりちゃんの舌がおずおずと入ってきて、僕もそれに応えた。
「んっ……ちゅ……」
キスしながら、ことりちゃんの背中に手を回す。タンクトップの下に手を入れると、素肌が熱かった。
「あ……」
背中を撫でると、ことりちゃんが小さく声を出した。ブラをつけてないのはわかってたけど、実際に手で確認すると頭がくらっとした。
「前、触っていい?」
「……小さいですけど」
「そんなの関係ないよ」
タンクトップの上から胸に触れた。確かに小さい。でも、柔らかさはちゃんとあって、手のひらにすっぽり収まる感じがたまらなかった。
「んっ……」
親指で乳首のあたりを撫でると、すぐにぷっくりと硬くなった。
「感じやすいね」
「言わないで……恥ずかしい……」
タンクトップを脱がすと、白い肌にピンクの乳首が立ってた。
(やばい、かわいすぎる)
口に含むと、ことりちゃんの体がびくっと跳ねた。
「あっ……そこ、弱いです……」
舌で転がすたびに、ことりちゃんの指が僕のTシャツを掴む力が強くなる。
ベッドに座らせて、ショートパンツの上から太ももを撫でた。ことりちゃんは自分から足を少し開いた。
「……触るよ」
「うん……」
ショートパンツの裾から手を入れると、下着越しでもわかるくらい濡れてた。
「すごい濡れてる」
「だって……ずっと我慢してたから……」
その言葉で、僕の中の何かが外れた。
ショートパンツと下着を一緒に下ろした。ことりちゃんが恥ずかしそうに太ももを閉じようとするのを、膝に手を置いて止めた。
「見せて」
「……恥ずかしい……」
でも、力を抜いてくれた。
指で触れると、ぬるっと滑った。
「あっ……ん……」
クリトリスのあたりを指の腹で優しく撫でると、ことりちゃんの呼吸が荒くなった。
「そこ……気持ちいい……」
壁越しに聞いてた声が、今は目の前で聞こえる。それだけで興奮がすごかった。
指を中に入れると、きゅっと締まった。
「あっ……んんっ……」
「中も気持ちいい?」
「うん……自分でするのと全然違う……」
ゆっくり動かしてると、ことりちゃんの腰が自然に動き始めた。
「あ、ダメ……なんかもう……」
「いっていいよ」
「あっ、あっ……んっ……!」
ことりちゃんの体がぎゅっと硬くなって、中の指がきつく締められた。小さく痙攣して、僕にしがみついてきた。
「はぁっ……はぁっ……」
「大丈夫?」
「……人にしてもらうと、こんなに……すごいんだ……」
まだ肩で息をしてることりちゃんが、僕のズボンの上から触れてきた。
「お兄さんも……こんなになってる」
「そりゃ、なるよ……」
ことりちゃんがズボンを下ろした。勃起した状態のものが出てきて、ことりちゃんが少し目を見開いた。
「……大きい」
「いや、普通だと思うけど」
「触っていいですか」
「……うん」
細い指が恐る恐る握った。ぎこちない動きだったけど、ことりちゃんの手だと思うだけでゾクゾクした。
「こう……ですか?」
「うん……もうちょっと強くていいよ」
「こう?」
「あ、それいい……」
ことりちゃんが真剣な顔で上下に動かしてくる。その真面目さがまたかわいくて、変な話だけど感動してた。
「ことりちゃん……俺、入れたい」
言ってから、(何を言ってるんだ俺は)って思った。相手は19歳の受験生だぞ。
でもことりちゃんは、少し考えてから頷いた。
「……私も、してほしい」
「ゴム……あったかな」
引き出しを漁った。半年以上前に買ったやつがあった。期限は大丈夫。
つけるのに手間取ってると、ことりちゃんが自分からベッドに横になった。メガネをベッドの脇に置いて、こっちを見てる。メガネなしの顔は、さらに幼く見えて、ドキッとした。
「初めて?」
「……うん」
「痛かったら言って。すぐ止めるから」
ことりちゃんの足の間に体を入れて、先端を当てた。さっきの愛撫でまだ十分濡れてたけど、ゆっくり、ゆっくり入れた。
「っ……痛……」
「大丈夫?止める?」
「大丈夫……もうちょっと……」
少しずつ進めていく。きつかった。ことりちゃんの中は熱くて、ぎゅうぎゅうに締めつけてきた。
全部入った時、二人とも息を吐いた。
「……入ってる……」
「痛くない?」
「最初はちょっと痛かったけど……今は……なんか、変な感じ」
「動いていい?」
「うん……」
ゆっくり腰を動かした。ことりちゃんが僕の背中に手を回してきた。
「あ……ん……お兄さん……」
壁越しに聞いてたあの声が、耳元で聞こえる。
(これ、夢じゃないのか)
本気でそう思った。毎晩寝息を聞いて、タンクトップの胸元に目をそらして、会社のトイレで情けない思いをしてた僕が、今こうしてことりちゃんの中にいる。
「気持ちいいよ、ことりちゃん……」
「私も……気持ちいい……」
ことりちゃんの足が僕の腰に絡んできた。密着度が増して、小さな胸が僕の胸に押しつけられる。
「もっと……動いて……」
少しずつペースを上げた。ことりちゃんの声が大きくなる。
「あっ……あっ……お兄さん……すごい……」
「やばい……ことりちゃんの中、きつすぎ……」
「ダメ……そんなこと言われたら……っ」
ことりちゃんの中がきゅっと締まった。
「っ……もう出そう……」
「うん……いいよ……」
腰を密着させたまま、中で果てた。ゴム越しだったけど、今までのどんな経験より気持ちよかった。
「はぁ……はぁ……」
「……出した?」
「うん……ごめん、早くて」
「ううん……嬉しい。お兄さんが、私で気持ちよくなってくれたのが」
抱きしめたまま、しばらく動けなかった。
(俺、とんでもないことしたな……)
後悔はなかった。でも、これからどうなるのかは全くわからなかった。
少し休んでから、もう一度した。
今度はことりちゃんが上に乗った。慣れないのか、ゆっくりしか動けなくて、でもその分ことりちゃんの表情がよく見えた。眉をひそめて、唇を噛んで、でも気持ちよさそうに目を細めて。
「お兄さん……好き……」
「……俺も」
2回目は長く持った。ことりちゃんが先にイって、中がぎゅうぎゅう締まるのに耐えながら、腰を持って下から突き上げた。
「あっ……待って……今イったばっかり……っ」
「もう少しだけ……」
最後に深く入れて、中で出した。ことりちゃんが僕の胸に倒れ込んできて、そのまま二人で荒い息をついてた。
後始末をして、並んでベッドに寝転がった。
「お兄さん」
「ん?」
「……今日から壁越しじゃなくて、ここで寝ていいですか」
「受験……」
「勉強はちゃんとします。でも、寝る時は隣がいい」
断れるわけがなかった。
「……怜奈には絶対バレないようにしような」
「ふふ。怜奈さんには受かってから言います」
その夜、初めて壁越しじゃない寝息を聞いた。
すぐ隣で、ことりちゃんが僕の腕の中で眠ってる。
(受かってくれよ、頼むから)
こんな大事な時期に変なことを始めてしまった罪悪感と、隣にいてくれる幸福感が同時にあって、わけがわからなかった。
でも、悪くない気分だった。
2月、ことりちゃんは本番に向けてラストスパートをかけてた。僕の部屋で一緒に寝るのは続いてたけど、エッチは週末だけにしようと二人で決めた。(それでも十分おかしいんだけど。)
3月。合格発表の日。
ことりちゃんはスマホの画面を見て、3秒くらい固まってから、叫んだ。
「受かった……!」
僕の方が泣いてた。
今、ことりちゃんは三鷹のマンションから大学に通ってる。もちろん、もう「空き部屋」には住んでない。僕のベッドで寝てる。
怜奈にはまだ言えてない。でも、夏には言おうと思ってる。多分殴られる。
あ、ちなみに。ことりちゃんに「壁薄いの知ってたのにわざと声出してた?」って聞いたら、「途中から、ちょっとだけ……」って真っ赤になってた。
やっぱりこの子は、大人しい顔して一番やばいタイプだった。