取引先の社長の娘が現場に差し入れを持ってくるようになってから、俺の仕事と私生活の境界がぶっ壊れた話

これは去年の夏の話です。身バレしたくないんで一部フェイク入れてるけど、ほぼ実話。

俺は都内の建設会社で現場監督をやってる28歳。名前は出せないけど、まあ中堅ゼネコンの下請けみたいなとこで、主に商業施設の内装工事を仕切ってる。身長172、体重68。顔面偏差値は友達に言わせると「雰囲気イケメン」らしいけど、要するに顔がいいわけじゃないってことだろ。髪型と服装で誤魔化してるタイプ。

彼女は3年前に別れてからずっといない。現場仕事って朝早いし夜遅いし、休みも不定期だから出会いがマジでない。マッチングアプリも一時期やったけど、「仕事何してるんですか?」「建設関係です」で大体フェードアウトされる。(土方だと思われてんだろうな…まあ間違ってないけど)

去年の7月、江東区の豊洲あたりで新しいテナントビルの内装をやることになった。元請けの下で、うちともう一社、設備屋が入る形。その設備屋ってのが「丸山設備工業」っていう、社員30人くらいの会社で、社長の丸山さんは50代の体育会系おじさんだった。

現場が始まって2週目。昼前にヘルメット被ったまま図面チェックしてたら、入口のところに見慣れない女の子が立ってた。

白いブラウスにベージュのスラックス、髪はダークブラウンのボブカット。顔は――これマジで言ってるんだけど――今田美桜にちょっと似てた。目がくりっとしてて、鼻筋が通ってて、でも全体的にはキツさがなくて柔らかい印象。身長は160あるかないかくらい。

手に紙袋をいくつも持ってて、きょろきょろしてる。

(誰だ…?施主の関係者か?)

声をかけようとしたら、丸山設備の職人の田中さんが「おっ、みーちゃん来たの!」って駆け寄っていった。

聞こえてきた会話を総合すると、どうやら丸山社長の一人娘で、大学を出たばかりの22歳。会社の事務を手伝いながら、現場に差し入れを届ける係をやってるらしい。

(社長の娘が差し入れ…昭和かよ)って思ったけど、紙袋の中身はスタバのフラペチーノとサンドイッチで、めちゃくちゃ現代だった。

俺のとこにも一つ持ってきてくれた。

「あの、内装の方ですよね?よかったらどうぞ」

「え、いいんですか?ありがとうございます」

「暑いですもんね。お父さんが、現場の人全員に配れって」

「社長さんの娘さん?」

「はい、丸山みなみです。えっと…」

「俺は鶴田です。内装の現場監督やってます」

「鶴田さん、よろしくお願いします!」

にこって笑った顔がまぶしくて、(いや待て、取引先の社長の娘だぞ)って自分にブレーキかけた。こういうのに手を出したら仕事ごと吹っ飛ぶ。建設業界は狭いから、悪い噂はすぐ広まる。

でもみなみちゃんは週に2回くらいのペースで差し入れを持ってくるようになった。

最初は全員分を配って回ってたんだけど、3回目くらいから俺のところに最初に来るようになった。(…気のせいか?)

ある日、図面を広げてたら横から覗き込んできた。

「これ、何の図面ですか?」

「これ?2階のテナントの間仕切りの割り付け図。ここにLGS立てて、ボード貼って――」

「LGS?」

「軽量鉄骨。壁の骨組みみたいなやつ」

「へえ…お父さんの仕事って空調とか配管ばっかりだから、こういうのは初めて見ます」

「設備屋さんと内装屋さんは、まあ仲良くしないと現場が回らないからね」

「仲良くしてくださいね?」

上目遣いで言われて、心臓が一瞬跳ねた。(いや、これは普通の会話だろ。深読みすんな俺)

8月に入ると、現場は佳境に入った。エアコンが効かない階での作業は地獄で、休憩時間は事務所のプレハブに全員集合する。

その日もみなみちゃんが来てて、職人たちと一緒に弁当を食べてた。場を和ませるのが上手い子で、50代の職人にも20代の若手にも同じテンションで話す。

「鶴田さんって彼女いるんですか?」

いきなりだった。周りに職人が5人くらいいる中で。

「え…いないけど」

「えー、なんで?かっこいいのに」

田中さんが「みーちゃん、鶴田くん狙ってんの?」ってニヤニヤしながら言って、みなみちゃんは「違いますよー!」って笑ってたけど、耳が赤くなってた。

(…赤くなってたよな?見間違いじゃないよな?)

その週末、珍しく土曜が休みになった。昼前まで寝てて、起きてスマホ見たら知らない番号からLINEの友達追加が来てた。

「丸山みなみです!お父さんの携帯から鶴田さんの番号もらっちゃいました(笑)迷惑じゃなければ繋がってもいいですか?」

(社長の携帯から…ってことは社長に断ってるのか?それとも勝手に見たのか?)

どっちにしろ断る理由がなくて、普通に承認した。

そこからLINEが始まった。最初は「明日差し入れ何がいいですか?」みたいな業務寄りの内容だったのが、だんだん「今日何してましたか?」「この映画観ました?」みたいな、完全にプライベートの話になっていった。

俺は仕事中はほぼ返せないから夜にまとめて返すんだけど、みなみちゃんは秒で既読つけて返してくる。(22歳ってみんなこんなもんなのか…?)

9月頭。現場近くの清澄白河でコーヒー豆を買いたいってみなみちゃんが言い出して、「鶴田さんコーヒー好きですよね?一緒に選んでもらえませんか」って誘われた。

(これ、デートだよな?いやでも取引先の…)

って迷ったけど、「コーヒー豆を選ぶだけだし」って自分に言い聞かせて行った。

清澄白河のARiSE COFFEE ROASTERSで豆を選んで、近くのブルーボトルでアイスラテ飲みながら話した。

みなみちゃんは大学で経営学をやってて、本当はコンサルに就職が決まってたけど、お父さんの会社を手伝うために蹴ったらしい。

「お父さん、体壊してるんです。去年の冬に心筋梗塞で倒れて」

「え…全然そんな風に見えなかった」

「無理してるんですよ。現場に出たがるし。だから私が少しでも事務をやれば、お父さんの負担が減るかなって」

コンサルの内定蹴って、親父の設備屋を手伝う22歳。正直、すごいなと思った。

「偉いな…」

「偉くないですよ。だって好きでやってるし。…でも、友達にはドン引きされました。笑」

「まあ、普通は理解できないよな」

「鶴田さんは理解してくれますか?」

「うん。俺も大学出て、みんながオフィスで働く中で現場仕事選んだから。周りに理解されない感じ、わかる」

みなみちゃんが少し黙って、それからすごくいい笑顔を見せた。

「…なんか鶴田さんに言われると、救われます」

(やばい。これは好きになるやつだ)

って思ったのに、ブレーキが効かなくなりかけてた。

10月。豊洲の現場は工期が押してて、土日も出勤が続いた。疲労がたまって、現場で職人と揉めることも増えた。

ある金曜の夜、21時過ぎに一人で事務所に残って工程表を直してたら、ドアが開いた。

「鶴田さん、まだいたんですか…」

みなみちゃんだった。手にコンビニの袋を持ってる。

「え、なんでいるの?」

「お父さんの書類を取りに来たんです。鶴田さんの車がまだ停まってたから…これ、おにぎりとお茶」

「…ありがとう」

プレハブの事務所に二人きり。外からは車の音だけ聞こえる。

みなみちゃんは帰ろうとしなかった。パイプ椅子に座って、俺が工程表を直すのをじっと見てた。

「…疲れてますよね」

「まあ、この時期はいつもこうだよ」

「お父さんも同じこと言います。でもお父さんは倒れました」

「…」

「鶴田さんは倒れないでください」

声が震えてて、振り返ったら目が潤んでた。

(え…泣きそう?なんで?)

「大丈夫だって。俺、丸山さんより15歳若いし」

「そういう問題じゃなくて…」

みなみちゃんが立ち上がって、俺のそばに来た。手が俺の腕に触れた。

「私…鶴田さんのこと…」

その瞬間、外から車のドアが閉まる音がした。誰か来た。

みなみちゃんがビクッとして離れた。入ってきたのは元請けの担当者で、「鶴田くん、明日の段取りちょっと確認させて」って言いながら事務所に入ってきた。

みなみちゃんは「お先に失礼します」って小さく言って、出ていった。

(…何を言おうとしてたんだよ。いや、わかってる。わかってるけど)

その夜、家に帰ってシャワー浴びてから、LINEを開いた。みなみちゃんから来てた。

「さっきはごめんなさい。変なこと言いかけて」

俺は10分くらい画面を見つめてから返した。

「変なことじゃないよ。でも俺、みなみちゃんのお父さんの会社と仕事してる立場だから。軽はずみなことは言えない」

既読がついて、しばらく返事がなかった。

「…仕事じゃなかったら、どうですか?」

心臓がうるさかった。

「仕事じゃなかったら、とっくに誘ってた」

送ってから後悔した。いや、後悔っていうか、覚悟が決まった感じ。もう戻れないな、って。

みなみちゃんからは「…嬉しい」とだけ返ってきた。

11月。豊洲の現場が終わった。竣工の打ち上げが門前仲町の居酒屋であって、元請けも下請けも設備屋も全員集合。丸山社長も来てた。

俺は社長の隣に座ることになって、焼酎を注ぎながら現場の話をした。

「社長、お身体のほうは大丈夫ですか?」

丸山社長はハイボールを飲みながら「んー、まあぼちぼちだよ。みなみが色々やってくれるから助かってるわ」って言った。

「みなみさん、すごいですよね。コンサルの内定蹴ってまで」

社長がちょっと驚いた顔をした。

「…みなみからそこまで聞いてんの?」

(あ、まずい)

「いや、現場で少し話す機会があって…」

社長はじっと俺の顔を見て、それからふっと笑った。

「鶴田くん、うちの娘のことどう思う?」

ストレートすぎて酒が気管に入った。ゲホゲホしてたら社長が背中叩いてくれた。

「冗談だよ。…半分な」

(半分って何だよ半分って)

打ち上げが終わって、門前仲町の駅前で解散になった。酔った職人たちがタクシーに乗り込んでいく中、みなみちゃんがそっと近づいてきた。

「鶴田さん、この後時間ありますか?」

「…あるけど」

「少しだけ、話したいことがあって」

丸山社長は先に帰ってた。俺たちは門前仲町の商店街を抜けて、深川不動のほうに向かって歩いた。11月の夜風が冷たくて、みなみちゃんはカーディガンの前をぎゅっと合わせてた。

「お父さんに、鶴田さんのこと話しました」

「…え?」

「好きな人がいるって。建設の現場で知り合った人だって」

「いや待って、俺の名前は…」

「言ってません。でもお父さん、多分気づいてます。さっき鶴田さんに変なこと聞いてませんでした?」

(あの「どう思う?」はそういうことかよ…)

「みなみちゃん、俺さ…正直に言うと、好きだよ。でも」

「でも、仕事のことがあるから、でしょ?」

「…うん」

「豊洲の現場、今日で終わりましたよね」

「…そうだけど」

「次の現場で丸山設備が入るかどうかは、まだ決まってないですよね」

「まあ、そうだけど…」

「じゃあ今は、仕事関係ないですよね?」

理詰めだった。コンサル行ってたら恐ろしい交渉力を発揮してたんだろうな、この子は。

俺は黙った。みなみちゃんが一歩近づいてきた。酒の匂いと、甘い香水が混ざった匂いがした。

「…鶴田さん。私のこと、女として見てくれてますか?」

「見てるよ。見てるから困ってんだよ」

「じゃあ困らなくていいです」

みなみちゃんが背伸びして、俺の唇にキスした。深川不動の参道の街灯の下で。酔ってるのかしらふなのかわからない、柔らかいキスだった。

離れたみなみちゃんの顔が真っ赤だった。

「…初めてです、自分からキスしたの」

「…マジで?」

「マジです。もう心臓やばいです」

(俺もだよ)

「うち来る?」って俺が言った。自分でも驚いた。理性とか建前とか、全部飛んでた。

みなみちゃんは小さく頷いた。

門前仲町から大江戸線で2駅。俺のマンションは清澄白河のワンルーム。建設現場の人間が住むにしてはこざっぱりしてるほうだと思う。掃除だけはちゃんとしてる。

部屋に入って、電気をつけて、「散らかってないから安心して」って言ったら、みなみちゃんが笑った。

「鶴田さんらしいです」

「何か飲む?」

「…お水ください」

水を渡して、ソファに並んで座った。しばらく無言。時計の秒針の音だけが聞こえる。

「…緊張してる?」

「してます。すごく」

「俺も」

「嘘。慣れてそう」

「3年ぶりだよ、女の子が家に来るの」

「…ほんとに?」

「ほんとに」

みなみちゃんが俺の肩にもたれてきた。シャンプーの匂いがした。

俺はみなみちゃんの顔を持ち上げて、ゆっくりキスした。さっきの参道でのキスとは違う、ちゃんとした、時間をかけたキス。

「ん…」

唇を離すと、みなみちゃんの目がとろんとしてた。

「…みなみちゃん」

「みなみ、でいいです」

「…みなみ」

「はい」

もう一度キスして、今度は舌を入れた。みなみが小さく声を漏らして、俺のシャツの裾を握った。

ソファからベッドに移動した。みなみのブラウスのボタンを一つずつ外していく。手が震えてるのは俺のほうだった。(28にもなって何やってんだ)

下着は白いレースだった。すごくみなみらしいな、って思った。

「…脱がすよ」

「…うん」

ブラを外すと、思ってたより大きかった。Eはあるんじゃないかってくらい。服の上からじゃわからなかった。

「隠してたな、これ」

「隠してないですよ…。服がゆるいだけです」

「…触るよ」

柔らかくて、手に吸いつくような感触だった。乳首に軽く触れると、みなみがビクッと体を震わせた。

「あ…っ」

「感じるとこ?」

「…わかんない。自分で触ったことないから…」

(マジかよ…)

口に含んで舌で転がすと、みなみが俺の頭を抱えるようにして声を殺した。

「んっ…や…っ、鶴田さ…」

「鶴田さんじゃなくて」

「…まさき、さん…」

俺の下の名前。現場では誰も呼ばないから、なんか新鮮で、それだけでぞくっとした。

下も脱がした。白いショーツが濡れてるのが見えて、みなみが顔を両手で覆った。

「見ないでください…恥ずかしい…」

「見るに決まってるだろ」

太ももの内側にキスしながら、指でゆっくり触れた。濡れ方がすごくて、指がすぐに滑った。

「あっ…ん…っ」

クリに触れると体が跳ねた。敏感すぎて、強く触ると痛がりそうだったから、周りをなぞるように優しく刺激した。

「まさきさん…なんか…おかしくなりそう…」

「おかしくなっていいよ」

指を中に入れると、きゅっと締まった。1本でもかなりきつい。

「あ…っ、あぁ…」

「みなみ…これ、もしかして」

「…初めて…です」

心臓が止まるかと思った。

22歳で。あの見た目で。コンサルの内定取れるくらい賢くて。社交的で。

(嘘だろ…)

「…いいの?俺で」

「鶴田さ…まさきさんがいいんです。ずっと…現場に通い始めてからずっと、まさきさんのこと考えてて」

(差し入れを俺のところに最初に持ってきてたのも、図面覗き込んできたのも、LINEの友達追加も、全部)

自分がどれだけ鈍かったか、やっとわかった。

コンドームを取り出した。3年前の彼女の時から引き出しに入れっぱなしだったやつ。期限を確認して――ギリギリセーフだった。

「ゆっくり入れるから。痛かったら言って」

「…はい」

みなみが俺の首に腕を回した。先端を当てて、少しずつ押し込んでいく。

「っ…痛…い…」

「止まろうか?」

「ううん…大丈夫。続けて…」

奥まで入った時、みなみの目から涙がこぼれた。痛いのか感極まったのかわからなくて、額にキスした。

「泣いてる…」

「泣いてないです…。嬉しいだけ」

ゆっくり動き始めた。みなみが声を殺して、シーツを握って、でも俺の背中からは離れなかった。

「ん…あ…っ、まさき…さん…」

「みなみ…」

少しずつ痛みが引いたのか、みなみの声が変わってきた。甘くなった、っていうのが正確かもしれない。

「あ…気持ちいい…かも…」

「ほんと?」

「うん…もっと…動いて…」

ペースを上げると、みなみが俺の背中に爪を立てた。痛いのに、それがたまらなく興奮した。

「あっ…あっ…まさきさんっ…」

「みなみ…俺もやばい…」

「ん…っ、いっしょに…」

密着したまま腰を動かして、みなみの中がきゅっと締まった瞬間、俺も限界が来た。ゴムの中にどくどくと出しながら、みなみを強く抱きしめた。

「はぁ…はぁ…」

「…大丈夫?」

「大丈夫…。すごかった…」

みなみが笑って、泣いて、また笑った。情緒がめちゃくちゃになってるのが、なんか人間らしくて可愛かった。

処理してベッドに戻ると、みなみが俺の胸に顔をうずめてきた。

「…ねえ。お父さんに報告しなきゃ」

「今!?」

「ううん、明日。…でも、ちゃんと言わないと」

「…殺されないかな俺」

「大丈夫ですよ。お父さん、鶴田さんのこと気に入ってるから」

「娘に手を出した男は別だろ…」

「お父さん、前に言ってました。現場の男は嘘つけないからわかりやすいって。鶴田さんが私を見る目が変わってきたの、多分お父さんも気づいてたと思います」

(見る目が変わってた…って、俺そんなにわかりやすかったのか)

みなみが俺の胸に頬をくっつけたまま、くすくす笑ってた。

「差し入れ、最初から鶴田さんに最初に渡してたの、気づいてました?」

「…3回目くらいから気づいた」

「遅い。初回からです」

(初回から…?)

「お父さんから『今度の現場の内装監督は真面目ないい若い人だから仲良くしとけ』って言われて、最初はそのつもりだったんです。でも、会って話したら…なんか、安心する人だなって」

「安心するって、おじさんみたいじゃん」

「違います。安心するのに、ドキドキもするんです。…矛盾してるけど」

矛盾してないよ、って言おうとしたけど、言葉にならなかった。代わりにもう一度キスした。

2回目は、みなみのほうから求めてきた。

「もう一回…したいです」って耳元で言われて、断れるわけがなかった。

今度は対面で座って、みなみを抱き上げるようにして入れた。さっきより滑らかに入って、みなみが小さく息を吐いた。

「あ…さっきより…全然違う…」

「痛くない?」

「ううん…気持ちいい…」

みなみが俺の肩に額をくっつけて、腰を小さく動かし始めた。自分から動いてるのが信じられなくて、頭が真っ白になりかけた。

「まさきさん…好き…」

「俺も…好きだよ」

「あっ…ん…っ、なんか…来る…かも…」

みなみの体がびくびくと震えて、中がきゅうっと締まった。初めてイッたのか、本人もわからないみたいな顔をしてた。

「…なにこれ…」

「…イった?」

「わかんない…でも…すごい…」

その顔を見てたら俺も限界で、2回目のを出した。みなみが「あつい…」って呟いて、ゴムごしでもわかるのか、って少し笑ってしまった。

抜いた後、二人でぐったりしてベッドに倒れた。時計を見たら午前2時を過ぎてた。

「お風呂…入りたい」

「ユニットバスだけど、いい?」

「全然いいです」

先にみなみに入ってもらって、その間に俺はシーツを替えた。少しだけ血がついてたのを見て、(ああ、ほんとに初めてだったんだな)と改めて思った。責任、って言葉が頭をよぎった。でもそれは重いんじゃなくて、不思議と温かかった。

みなみが俺のTシャツを借りて出てきた。膝丈くらいまであって、なんかそれがめちゃくちゃ良かった。(語彙力)

俺も軽くシャワーを浴びて出ると、みなみがベッドの上で膝を抱えてスマホを見てた。

「何見てんの?」

「お父さんに『今日は友達の家に泊まります』ってLINE送りました」

「…嘘じゃん」

「友達以上ですから、嘘じゃないです」

屁理屈だけど、妙に説得力があった。コンサル向いてたと思う、マジで。

布団に二人で入って、みなみが俺の腕を枕にした。狭いベッドだから密着せざるを得ない。

「…次の現場、うちの会社入ったらどうしますか?」

「…その時はその時だよ。仕事は仕事でちゃんとやる」

「現場でイチャイチャしたりしません?」

「するわけないだろ。職人に殺される」

「ふふ。…じゃあ差し入れは続けていいですか?」

「それは業務だから、止める権利は俺にないよ」

「業務です。はい。業務として、まさきさんのところに一番に持っていきます」

笑って、キスして、そのまま眠った。

翌朝、窓から入ってくる光で目が覚めた。横でみなみが寝てて、まつ毛の長さに今更気づいた。

台所で適当にトーストを焼いてたら、みなみが起きてきて「私が作りますよ」って言ったけど、「座ってろ」って座らせた。大したもの出せなかったけど。

コーヒーを入れて二人で飲みながら、窓の外の清澄白河の景色を見た。

「…ここ、いいですね。清澄白河」

「コーヒー屋多いだけだけどな」

「それがいいんです」

しばらく黙って、みなみが言った。

「今日、お父さんに言います」

「…一緒に行くよ」

「え?」

「俺も挨拶する。ちゃんと」

みなみが少し驚いた顔をして、それからぶわっと泣いた。嬉しい泣きだった。(多分)

「建設の男は嘘つけない」って丸山社長が言ってたらしいけど、確かにそうかもしれない。現場で嘘ついたら人が死ぬからな。だから俺も、この子の前では嘘つけないし、つきたくない。

あの日から8ヶ月くらい経って、今も付き合ってる。丸山社長には最初めちゃくちゃ睨まれたけど、年末にみなみの実家に呼ばれて鍋食った。社長が酒飲みながら「鶴田くん、次の現場もうち使ってくれよ」って言ったのは、多分許してくれたんだと思う。多分。

次の現場でも、みなみは差し入れを持ってくる。俺のところに一番に。

それが業務なのかどうかは、もう誰も気にしてない。


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