社会人3年目、26歳の冬の話です。
俺は都内の中堅メーカーで営業をやっている、まあ普通のやつです。身長172で顔面偏差値はたぶん48ぐらい。よく言えば「清潔感はある」、悪く言えば「印象に残らない」タイプ。合コンに行っても3番手か4番手で、LINE交換はできるけどそこから先に進んだことがほぼない。そんな俺の話を聞いてください。
同期に柴田っていう女の子がいて、こいつがもうとんでもなくかわいかった。
顔は橋本環奈を少し大人っぽくした感じで、身長は158ぐらい。推定Eカップ。入社式の日に「あ、この子は俺みたいなのが話しかけていい存在じゃないな」って即座に判断したのを覚えてる。案の定、入社して半年もしないうちに営業部のエースの先輩と付き合い始めて、まあそうだよなって思った。
俺と柴田の接点は、同期の飲み会ぐらいだった。席が隣になっても「最近どう?」「まあぼちぼち」で終わる程度の、なんの発展性もない関係。
それが変わったのが、3年目の12月だった。
うちの部署の忘年会は毎年、神田の居酒屋でやる。30人ぐらいで座敷を貸し切って、部長の長い挨拶を聞いて、乾杯して、2時間でお開き。そこまでは例年通りだったんだけど、二次会のカラオケで事件が起きた。
二次会は10人ぐらいで歌舞伎町のカラオケに行ったんだけど、柴田もいた。普段は二次会に来ないのに珍しいなと思ったけど、深くは考えなかった。
で、1時間ぐらい経った頃に、みんなぽつぽつ帰り始めた。終電の時間もあるし、12月は忘年会ラッシュで体力的にもキツい時期だから、そんなもんだと思う。
気づいたら、部屋に俺と柴田の二人しかいなかった。
(え、なにこの状況)
「あれ、みんな帰った?」
「みたいだね。私もそろそろ出ようかな」
「だな、精算して――」
「……ねえ、もうちょっとだけいてくれない?」
柴田がソファに深く座り直して、手元のハイボールをぐいっと飲んだ。顔がだいぶ赤い。酔ってるな、と思った。
「いいけど、大丈夫?結構飲んでない?」
「飲んでる。今日はめっちゃ飲みたい気分なの」
「なんかあった?」
「……別れたの。秋山さんと」
秋山ってのは、さっき言った営業部のエースの先輩だ。社内では公認カップルみたいな感じだったから、結構びっくりした。
「え、マジで?いつ?」
「先月。もう1ヶ月になるんだけどね、なんか引きずっちゃって」
「そっか……大変だったな」
何を言えばいいかわからなくて、とりあえずウーロン茶を頼んだ。俺はもうアルコール入れないほうがいいと思ったから。
(いや待て、なんで俺にこの話してんだ?)
同期は他にもいるし、柴田には女友達も多い。わざわざ俺に言う理由がわからない。けど、聞いてほしそうな顔をしてたから、黙って聞くことにした。
「秋山さんってさ、外面はいいんだけど、二人きりになると全然話聞いてくれないの。私が仕事の相談しても『お前はそのままでいいよ』しか言わないし、デートの行き先もいつも秋山さんが決めるし」
「ふーん」
「で、この前さ、私の誕生日だったのに仕事で遅くなるって言われて、しょうがないかって思ってたら、インスタのストーリーに後輩の女の子と飲んでる写真あげてたの」
「……それはキツいな」
「でしょ?それで問い詰めたら『仕事の延長だから』とか言い出して。もう無理ってなった」
柴田がまたハイボールを一口飲んで、ふーっと息を吐いた。目が少し潤んでる。
(泣かれたらどうしよう)
正直、こういう場面に慣れてない。女の子の恋愛相談なんて受けたことないし、なんならちゃんと付き合った彼女も2人しかいない。
「秋山さんがバカだよ、柴田みたいな子放っといて」
「……みたいな子って、どういう意味?」
「いや、その……かわいいのに、もったいないなって」
言ってから(うわ、キモかったかな)と思ったけど、柴田はちょっと笑った。
「田中くんってさ、そういうこと普通に言うよね」
「え、俺なんか言ったっけ前にも」
「入社式の後の飲み会で、『柴田さんマジで顔が強い』って隣の同期に言ってたの聞こえてたからね」
(3年前のこと覚えてんのかよ……)
めちゃくちゃ恥ずかしかった。穴があったら入りたいってこういうことだと思う。
「あ、それは……すみません」
「ふふ、謝らなくていいよ。嬉しかったし」
カラオケの部屋って、二人きりだと妙に広い。BGMにJ-POPのメドレーが流れてるだけで、沈黙がちょっと気まずくなる瞬間がある。
柴田がリモコンを手に取って、あいみょんのマリーゴールドを入れた。
「ねえ、一緒に歌お」
「え、俺音痴なんだけど」
「いいからいいから」
半ば強引にマイクを渡されて、二人で歌った。柴田は歌もうまかった。(なんでこの子こんなにスペック高いんだ)と思いながら、俺はサビで音を外しまくった。
「あはは、田中くん本当に音痴だね」
「だから言ったじゃん……」
「でもなんか楽しい。秋山さんとカラオケ行っても、自分の好きな曲ばっかり入れて、私に歌わせてくれなかったから」
また元カレの話だ。気になったのは、柴田が秋山さんの話をするたびに、ちらっと俺の顔を見ること。
(もしかして、俺の反応を見てる?)
いやいや、自意識過剰だろ。柴田みたいな子が俺のことなんか気にするわけない。単に酔って寂しいだけだ。
時計を見たら23時半を過ぎていた。
「そろそろ出ないと終電やばくない?」
「……田中くんの家ってこの辺だよね?」
「高田馬場だけど」
「私、練馬なんだけど……帰るの面倒くさい」
「タクシー呼ぶ?」
「……ラーメン食べたい」
完全に話をそらされた。けど、酔っ払いの柴田がなんかかわいくて、断れなかった。
歌舞伎町を出て、靖国通り沿いの二郎系のラーメン屋に入った。12月の深夜で、吐く息が白かった。柴田はダウンジャケットのフードをかぶって、マフラーに顔を埋めてた。
「寒い……」
「そりゃ12月だし」
「つめたい対応……」
「いや、別に冷たくしてるわけじゃ……」
ラーメン屋のカウンターで隣に座って、柴田が小ラーメンの野菜マシを頼んだのには驚いた。
「結構食うね」
「秋山さんの前では少食ぶってたから、その反動」
「それは疲れるだろ」
「疲れた。2年間ずっと疲れてた」
柴田がラーメンをすすりながら、ぽつりと言った。
「ねえ、田中くんって彼女いるの?」
「いない。もう1年半ぐらいいない」
「なんで?」
「なんでって……モテないからだよ」
「嘘。田中くん、経理の山本さんに好かれてるの知らないでしょ」
「は?」
「女子の間では有名だよ。田中くんが経費精算するときだけ山本さんめっちゃ笑顔になるから」
(知らなかった……てか、なんで柴田がそんなこと知ってるんだ)
ラーメンを食べ終わって店を出ると、もう0時を回っていた。終電は完全に終わってる。
「終電なくなっちゃった」
全然困ってない顔で言う。
「マジで帰れないじゃん。タクシー呼ぶよ」
「……田中くんの家、泊めてくれない?」
(は?)
頭の中が真っ白になった。社内一かわいい同期が、俺の家に泊まりたいと言っている。これは何かの罰ゲームか、もしくは酔っ払いの冗談か。
「いや、それは……まずくない?」
「なにが?」
「いろいろと」
「変なことしないでしょ?」
(いや、する側はお前だろ……ってそういう問題じゃない)
「しないけど……」
「じゃあいいじゃん。お願い、今日は一人でいたくないの」
最後の一言が効いた。泣きそうな声じゃなくて、静かな声だったのが逆にきつかった。
高田馬場の俺のワンルームまで、歩いて15分ぐらい。途中ファミマでペットボトルの水と明日の朝ごはん用のおにぎりを買った。
部屋に入ると、柴田が「意外ときれいだね」と言った。
「まあ、物が少ないだけ」
「秋山さんの部屋、服とか靴とか散らかり放題だったから、なんか新鮮」
(また秋山さんの話か……)
正直、ちょっとイラッとした。いや、嫉妬とかじゃなくて。いや嫉妬だったのかもしれない。自分でもよくわからなかった。
柴田にスウェットの上下を貸して、俺はTシャツとジャージに着替えた。ベッドは柴田に譲って、俺は床に寝袋を敷くことにした。
「ありがとう。なんか田中くん、優しいね」
「普通だろ」
「普通じゃないよ。秋山さんだったら――」
「柴田さ、」
思わず遮ってしまった。
「秋山さんの話、もうやめない?」
「……え」
「ごめん、言い方きつかったかも。でもさ、ずっと秋山さんと比べてたら、いつまでも引きずるだけじゃん」
部屋が静かになった。やりすぎたかなと思ったけど、本音だった。
「……そうだよね。ごめん」
「謝んなくていいよ。ただ、今ここにいるのは俺なんだから、比較対象にされるのはちょっとキツい」
言ってから、(え、俺今めちゃくちゃ意味深なこと言わなかった?)と焦った。
柴田がベッドの上からこっちを見ている。暗い部屋の中で、街灯の光が少しだけ差し込んでいて、柴田の顔が半分だけ見えた。
「……田中くんってさ、私のこと意識したことある?」
「え」
「正直に言って」
「……入社式の日からずっと、かわいいなとは思ってたよ。でも秋山さんと付き合い始めたし、俺なんか相手にされないと思ってたから、最初から諦めてた」
(言っちゃった……)
「なんで諦めるの?」
「なんでって……見りゃわかるだろ。釣り合わないよ」
「そういうとこ」
「は?」
「田中くんのそういうところが好きなの。自分を大きく見せようとしないし、ちゃんと話聞いてくれるし、私が食べたい分だけ食べても何も言わないし」
(ラーメンのことまだ言ってんのか)
でも、「好き」って言われた瞬間、心臓がバクバクした。酔ってるだけかもしれないのに、体が正直に反応してしまう。
「それは……酔ってるからでしょ」
「酔ってないよ。ラーメン食べて結構醒めた」
柴田がベッドから降りて、床に座っている俺の隣に来た。スウェットがぶかぶかで、鎖骨から肩のラインが見えてる。
「私ね、ずっと田中くんのことが気になってた。でも秋山さんと付き合ってたから、見ないようにしてた」
「……マジで言ってる?」
「マジ。今日二次会に残ったのも、田中くんがいたからだよ」
頭がぐちゃぐちゃになった。嬉しいのと、信じられないのと、(これ秋山さんの代わりにされてるだけじゃないのか)っていう疑いが全部混ざってた。
「でもさ、俺がOKしたら、それって秋山さんの穴埋めじゃないの?寂しいから手近にいた俺で妥協してるだけじゃないの?」
我ながらめんどくさいことを言ってると思ったけど、ここで流されたら後で絶対後悔する。
柴田の顔がこわばった。
「……妥協なんかじゃない。田中くんは秋山さんの代わりじゃないよ」
「じゃあ証明してよ。さっきからずっと秋山さんの話ばっかりしてたのに、急に好きって言われても信じられないだろ」
きついことを言った自覚はあった。でも柴田は泣かなかった。
「……確かに。ごめん。私、秋山さんの話ばっかりしてた」
「……」
「でもね、あの話してたのは、田中くんなら否定してくれるかなって思ったからなの。秋山さんってこうだったよねって言ったら、田中くんが『俺はそうしない』って言ってくれるのを、ずっと待ってた」
(え、そういうことだったの?)
「ずるいよね、私。試すみたいなことして。でも怖かったの、また同じような人を好きになってたらどうしようって」
柴田が膝を抱えて、小さくなった。橋本環奈似の高嶺の花が、俺のスウェットを着て、俺のワンルームの床で膝を抱えてる。この絵面が、なんかもう、たまらなかった。
「……俺は、誕生日に他の女と飲みに行ったりしないよ」
「うん」
「カラオケで自分の曲ばっかり入れたりもしない。つーか俺が歌ったら拷問だから、お前が歌ってくれたほうが全然いい」
「ふふ……確かに」
「ラーメンも一緒に食いたい。野菜マシも全然いい」
柴田が顔を上げて、笑った。目がちょっと赤い。
「……ね、キスしていい?」
こっちから答える前に、柴田が顔を近づけてきた。唇が触れた瞬間、頭の中の理性みたいなものがぶっ飛んだ。
柴田の唇は柔らかくて、かすかにハイボールの匂いがした。最初はそっと触れるだけだったのが、柴田の手が俺の首の後ろに回って、舌が入ってきた。
「んっ……」
柴田の舌が俺の舌に絡みついて、息が荒くなる。ぶかぶかのスウェットの上から腰に手を回すと、思ったよりも細い体が震えた。
「……田中くん……」
「やめる?」
「やめないで」
ベッドに移動して、キスしながら柴田の体に触れた。スウェットの上から胸に手を当てると、予想以上にたわわで指が沈み込んだ。ブラを外してたのか、直接やわらかい感触が手のひらに伝わってくる。
「下着……つけてないの?」
「だって寝るときつけないもん……っ」
スウェットの裾からゆっくり手を入れると、柴田が小さく声を漏らした。直に触れた胸は、やわらかいのに張りがあって、指で乳首をかすめるとぴくっと体が跳ねた。
(やばい、これ、本当に起きてることなのか?)
3年間ずっと高嶺の花だと思ってた同期の胸を、今、俺が触ってる。脳が状況に追いついてなくて、手が震えた。
「ん……もっと触って……」
スウェットを脱がすと、街灯の薄い光の中で柴田の裸の上半身が見えた。色白で、鎖骨のラインがきれいで、Eカップの胸が重力に逆らうみたいに上を向いてる。
「きれいだな……」
「恥ずかしい……あんまり見ないで……」
見ないでと言いながら隠さないのがずるい。乳首に口をつけて舌でころがすと、柴田の指が俺の髪をつかんだ。
「あっ……そこ、弱いの……んっ」
片方を口で吸いながら、もう片方を指で転がす。柴田の体がだんだん熱くなっていくのが、肌越しに伝わってきた。
手をスウェットのズボンの中に入れると、下着の上からでもわかるぐらい濡れてた。
「っ……触んないで、恥ずかしい……」
「すごい濡れてるけど……大丈夫?」
「大丈夫じゃない……田中くんのせいだから……」
下着をずらして直接触れると、ぬるっとした感触と一緒に柴田の腰がびくんと跳ねた。指を滑らせてクリトリスに触れると、甲高い声が漏れた。
「あっ……んんっ……そこ、やばい……」
ゆっくり中に指を入れると、きゅっと締め付けられた。熱くて、やわらかくて、指を入れただけで全身がぞくぞくした。
「はぁ……あっ、奥……奥当たってる……んっ」
指を動かしながらクリトリスを親指でこねると、柴田が腰をくねらせて俺のTシャツを掴んだ。
「だめ、それ、イっちゃう……待って、田中くん……あっあっ……!」
全身を震わせて、柴田がイった。俺の指を締め付けたまま、しばらくびくびくと痙攣してた。
「はぁ……はぁ……やば……」
「大丈夫?」
「大丈夫じゃないって言ったでしょ……」
荒い息のまま、柴田が俺のジャージのズボンに手を伸ばしてきた。
「田中くんも……すごいことになってるじゃん」
「そりゃそうなるだろ、この状況で」
柴田がズボンを下ろして、手で握ってきた。柔らかい手が俺のを包み込んで、ゆっくり上下に動かす。
「硬い……思ったより大きいかも」
「お世辞はいいから……っ」
「お世辞じゃないよ。ね……入れて、ほしい」
(マジで?)
ベッドの引き出しからゴムを探した。半年前に買ったやつがまだ残ってた。情けない話だけど、使う機会がなかったからだ。
装着する手が震えた。柴田が仰向けに脚を開いてくれてるのに、緊張で手元がおぼつかない。
「……緊張してる?」
「めちゃくちゃしてる」
「ふふ、私も」
先端を当てて、ゆっくり腰を押し出した。中に入った瞬間、二人同時に声が出た。
「あっ……」
「んっ……あぁ……」
きつい。熱い。中の壁が俺のに吸い付いてくるみたいで、動かなくても気持ちいい。
「痛くない?」
「痛くない……動いて」
ゆっくり腰を引いて、また押し込む。柴田が声を殺すみたいに唇を噛んでた。
「我慢しなくていいよ」
「だって……壁薄いって言ってたから……」
(気遣いがそこかよ)
笑いそうになったけど、それがなんかすごくリアルで、「ああ、これ本当に起きてるんだな」って実感した。
少しずつペースを上げていくと、柴田が我慢できなくなったのか声が漏れ始めた。
「んっ……あっ……田中くん……気持ちいい……」
「柴田も……すごい気持ちいい」
「ねえ……名前で呼んで……」
「え」
「柴田じゃなくて、瑠奈って呼んで……」
「……瑠奈」
名前を呼んだ瞬間、中がきゅっと締まった。
「あっ……もう一回、言って……」
「瑠奈……瑠奈……」
呼ぶたびに締め付けが強くなって、俺もやばくなってきた。手を繋いで指を絡めると、柴田が……瑠奈が、もう片方の手で俺の頬に触れた。
「裕也……って呼んでいい?」
「いいよ……」
「裕也……裕也っ……好き……」
その声で理性の糸が切れた。腰を深く打ち付けると瑠奈が背中を反らした。
「あっ……だめ、奥当たって……気持ちいい……」
「俺もやばい……」
「一緒にイこ……ね……」
深く繋がったまま、瑠奈を抱きしめた。体が密着して、心臓の音がお互いに聞こえるぐらい近い。
「イく……っ」
「あぁっ……!」
全身が痺れるような快感が走って、腰が止まらなかった。瑠奈も同時にイったみたいで、体を震わせて俺にしがみついた。
しばらく二人で動けなかった。荒い息を繰り返しながら、おでこをくっつけて目を見つめ合った。
「……ねえ」
「ん?」
「もう秋山さんの話、しないから」
「……当たり前だろ」
「ふふ。ね、もう一回……していい?」
2回目は瑠奈が上に乗った。ゆっくり腰を動かしながら、俺の胸に手をついて、とろんとした目で見下ろしてくる。
さっきとは違う角度で中を擦られて、別の場所が気持ちよくなった。瑠奈のEカップが揺れるのを下から見てるのがとんでもなくえろくて、思わず手を伸ばして揉んだ。
「あっ……揉まないで……動けなくなる……」
「それは無理」
乳首をつまむと瑠奈が甘い声をあげて腰の動きが速くなった。
「んっ……あっ……やば……また来る……」
「いいよ……イって」
「裕也も……一緒に……」
「ああ……っ」
腰を突き上げて深く押し込むと、瑠奈の中がぎゅうっと締まって、二人同時に達した。
瑠奈が俺の胸に崩れ落ちてきて、そのまま抱きしめた。汗と体温がまじりあって、12月なのに暑かった。
「はぁ……はぁ……裕也のここ、すごい好き……」
「ここって?」
「心臓の音。どきどきしてる」
「そりゃするだろ……」
「ふふ」
カーテンの隙間から、うっすら空が白み始めてた。
「もう朝じゃん……」
「田中くん……じゃなくて裕也。ねえ、一つだけ聞いていい?」
「なに?」
「これって……今日だけ?」
「今日だけでいいの?」
「よくない。ぜんぜんよくない」
「じゃあ、付き合おう」
「……うん」
瑠奈が俺の胸に顔を埋めて、小さく泣いた。嬉しい方の泣き方だった、と思う。
朝になって、コンビニで買ったおにぎりを二人で食べた。瑠奈は鮭を選んで、俺は昆布を食べた。
「ねえ、会社ではどうする?」
「どうするって?」
「バレたらざわつくでしょ、秋山さんのこともあるし」
「まあ……しばらくは黙っとく?」
「うん。でも経費精算のときは山本さんの前で手繋ぎたい」
「それは目立つだろ」
「冗談だよ。……半分ね」
半分本気かよ、と思ったけど、俺の家のスウェットを着たままおにぎりを食べてる瑠奈がかわいすぎて、何も言い返せなかった。
あれから3年経って、来月入籍する。
秋山さんとは今でも同じ部署で、最初は気まずかったけど、向こうはとっくに別の彼女ができてて特に何もなかった。
瑠奈はあの日以来、元カレの話を一度もしなくなった。たまに「あの忘年会の二次会に残ってよかった」と言ってくれるのが、くすぐったい。
あ、あと山本さんの件は本当だったみたいで、俺と瑠奈の交際が社内でバレたとき、経費精算の対応がちょっとだけ塩になった。申し訳ない。