これは去年の秋の話。思い出しながら書いてるから多少前後するかもしれないけど、許してほしい。
俺は26歳、埼玉の川口に住んでる電気工事士。名前はまぁ伏せるとして、身長172、体重は当時68キロぐらい。顔面偏差値は友達に「雰囲気イケメン」と言われる程度で、つまり雰囲気を取ったらただの人。彼女いない歴は1年半を更新中だった。
仕事は主にビルや商業施設の電気設備の新設・改修工事。朝が早い日もあれば、夜間作業で深夜に終わる日もある。体力勝負だし手は荒れるし、合コンで「電気工事士です」って言うとだいたい「へぇ…」で終わる。華のない職業ランキングがあったら確実に上位だと思う。
その日は戸田の現場で夜間作業があって、終わったのが午前2時半。10月の終わりで、朝晩はもう結構冷える時期だった。国道17号を川口方面に向かって走ってた。雨がぱらぱら降ってきて、ワイパーを動かしながら(早く帰って風呂入りてぇな…)とか思ってた。
蕨のあたりを過ぎたところで、歩道に人影が見えた。
(こんな時間に?)
よく見ると若い女の子が、傘もなしで雨の中を歩いている。しかもヒールの高い靴で、明らかに足を引きずってた。
正直、俺はそういうとき声をかけるタイプじゃない。というか深夜に男が女に声かけたら通報されかねないし。でもその子、信号のない横断歩道のところで立ち止まって、しゃがみ込んだんだよ。
(…さすがに放っとけねぇか)
ハザードを出して路肩に車を寄せた。窓を開けて声をかける。
「あの、大丈夫ですか?」
女の子がびくっとしてこっちを見た。目が真っ赤だった。泣いてたっぽい。雨のせいでわかりにくかったけど。
「…大丈夫です」
全然大丈夫じゃない顔してる。
「いや、大丈夫じゃないでしょ。こんな時間に雨の中歩いてたら風邪ひくよ。どっか送ろうか?」
「…怪しい人じゃないですよね?」
「怪しいかどうかは俺が判断することじゃないけど…まぁ見ての通り作業着だし、仕事帰りなだけ」
俺は蛍光の安全ベストをまだ着てた。これが信用材料になったのか、女の子は少し考えてから立ち上がった。
「…すみません。西川口の駅まで行きたいんですけど…」
「近いよ、乗って」
助手席に乗り込んできた女の子を見て、(うわ…)ってなった。
濡れた髪が頬に張り付いてて、化粧は多少崩れてたけど、それでもめちゃくちゃ可愛い。橋本環奈をもう少しシャープにしたような顔というか、目がでかくて鼻筋が通ってて、唇がぷっくりしてる。身長は158ぐらいかな。濡れたワンピースが体に張り付いてて、胸の膨らみが…いやそんなこと考えてる場合じゃない。
「タオルあるよ、新品の。現場用だけど」
ダッシュボードから未開封のフェイスタオルを出して渡した。
「ありがとうございます…」
タオルで顔と髪を拭きながら、女の子がぽつりと言った。
「彼氏と喧嘩して…車降ろされちゃって…」
「こんなとこで?」
「はい…酔ってて…急に怒り出して…」
(うわぁ…最低じゃん)
雨の深夜に女の子を路上に降ろすとか、どんな男だよ。でもまぁ他人の恋愛事情に首突っ込むのもアレだし、黙って運転した。
「あの…お仕事なにされてるんですか?」
「電気工事士。ビルとかの配線いじる仕事」
「かっこいいですね」
「いや全然かっこよくないよ。天井裏にもぐったりするし、夏は死ぬほど暑いし」
「ふふ…でも手に職があるのっていいなって思います」
少し笑った顔がまた可愛くて、(いかんいかん)と自分に言い聞かせた。
西川口駅に着いて、女の子が降りた。
「本当にありがとうございました。あの…お名前聞いてもいいですか?」
「俺?まぁ…コウヘイって呼ばれてる」
「コウヘイさん。私、みゆっていいます。本当に助かりました」
ぺこりと頭を下げて、改札の方に小走りで消えていった。連絡先も聞かなかったし、(まぁ二度と会わないだろうな)と思いながら帰った。
それから一週間後。
俺は川口市内の新築オフィスビルの電気工事に入ることになった。3ヶ月ぐらいかかる大きめの現場で、元請けの建設会社から何人か若手が現場管理で入ってくるって話だった。
朝礼で並んでるとき、現場監督の田中さんが新人を紹介した。
「…え?」
白いヘルメットの下から覗く顔。あの夜の女の子だった。
「本日からこちらの現場に配属になりました、高木みゆです。よろしくお願いします」
目が合った。みゆちゃんも明らかに固まってた。
(嘘だろ…)
朝礼が終わって、みゆちゃんが走ってきた。
「コウヘイさん!?なんでここに!?」
「それ俺のセリフなんだけど…建設会社の人だったの?」
「はい…今年入社で、初めての現場配属で…」
つまり22歳か23歳。あの夜のワンピース姿と、ヘルメットに安全靴の今とのギャップがすごい。でもヘルメット被っても可愛いもんは可愛い。現場のおっちゃんたちがチラチラ見てるのが露骨だった。
「あの夜のこと…」
「あっ、誰にも言わないでくださいね!彼氏と喧嘩して拾われたとか…恥ずかしすぎるので…」
「言わないよ。つーか俺もあんま知られたくない」
「ですよね…ふふ」
こうして、あの夜だけの出来事だと思ってた女の子と、毎日顔を合わせる生活が始まった。
現場ではみゆちゃんは「高木さん」だし、俺は下請けの作業員だから基本的に立場が違う。でも新人のみゆちゃんは現場のことがまだわからないことだらけで、よく俺に質問してきた。
「コウヘイさん、ケーブルラックの耐荷重ってどこで確認すればいいですか?」
「メーカーのカタログ。あとで型番教えるよ」
「ありがとうございます…先輩に聞くと怒られそうで…」
「現場監督なんだから堂々と聞けばいいのに」
「だって田中さん怖いんですもん…」
こんなやりとりが毎日続いた。昼休みも、みゆちゃんは現場事務所の隅で一人で弁当食べてることが多くて、俺がたまに缶コーヒー差し入れると嬉しそうにしてた。
(いかんぞ俺。仕事中に下心見せたら一発アウトだ)
自分に言い聞かせてはいたんだけど、みゆちゃんが俺のところに来る頻度は日に日に増えてた。しかも周りのおっちゃんたちが「おい、高木さんまた来てんぞ」ってニヤニヤするもんだから居心地が悪い。
ある日の昼休み、みゆちゃんがいつもと違う顔をしてた。
「コウヘイさん…ちょっと相談いいですか」
「どうした?」
「あの夜の彼氏のこと…別れたんです」
「お、いいじゃん」
「いいじゃんって…笑」
「いや、だってあんな男…雨の中で降ろすようなやつだぞ?」
「…ですよね。でもなんか、すっきりしたようなさみしいような…」
「そういうもんでしょ。付き合ってたんだし」
本音を言うと心の中でガッツポーズしてた。最低だよな、俺。人の失恋を喜ぶとか。でも彼氏持ちってわかってからずっとモヤモヤしてたのは事実で、その蓋が外れた感覚があった。
(…いやでも、立場的にアウトだろ。元請けの社員と下請けの作業員だぞ)
頭ではわかってた。わかってたんだけど。
11月の終わり、現場の忘年会があった。居酒屋の「魚民」川口駅東口店。下請けも含めて20人ぐらいの宴会。
みゆちゃんは最初、現場監督の田中さんの隣で大人しくしてたんだけど、飲み始めたら意外と強くて、途中から席替えして俺の隣に来た。
「コウヘイさぁん、なんであんまり飲まないんですかぁ?」
顔が赤い。ちょっと呂律が怪しい。
「車だから」
「えー、代行使えばいいのにぃ」
「高いだろ代行…」
「じゃあ私が送ってあげますよぉ」
「お前の方が酔ってんじゃん」
近い。距離が近い。酔ったみゆちゃんが肩にもたれかかってきて、シャンプーの匂いがする。(やばい。理性。保て。周りの目がある)
二次会はカラオケだったけど、酔いつぶれたおっちゃんたちを見送ったあと、残ったのは俺とみゆちゃんと、先輩の電気工事士2人だけだった。先輩たちも帰ることになり、俺はみゆちゃんを送ることにした。
「家どこなの?」
「西川口…歩けます…」
「歩けねぇだろその足で」
ヒールを脱いで裸足で歩こうとしてたので、さすがに止めた。
「タクシー呼ぶよ」
「…コウヘイさんも一緒に乗ってくれます…?」
(…それはつまり、家まで来いってことか?)
違うだろ。送り届けるだけだ。酔った女の子を一人でタクシーに乗せる方が危ないし。
タクシーの中で、みゆちゃんは俺の肩に頭を預けて目を閉じてた。
「コウヘイさん…あの夜、声かけてくれてありがとうございました…」
「ん?」
「あの時ね…もう全部嫌になってて…消えたいなって思ってたんです…」
「…」
「でもコウヘイさんが止まってくれて…タオルくれて…なんか、まだ大丈夫かなって…」
声が震えてた。酔ってるから出た本音なのか、酔ってるから言えた言葉なのか。
俺は何も気の利いたことが言えなくて、ただ「そっか」とだけ返した。
西川口の駅前でタクシーを降りて、みゆちゃんのアパートまで歩いた。築浅の1Kで、オートロックのマンション。
「送ってくれてありがとうございます…あの、よかったらお茶でも…」
(ここで上がったらアウトだ。絶対にアウト。酔ってる女の子の部屋に上がるとか)
「いや、俺帰るよ。明日も現場あるし」
「…そうですよね。すみません」
少し悲しそうな顔をしたのが刺さった。でもここは引かなきゃダメだと思った。
「また明日な。水飲んでから寝ろよ」
「…はい。おやすみなさい」
帰りのタクシーの中で、俺は自分を褒めてた。よくぞ耐えた、と。でも同時に(本当にこれでよかったのか?)っていう疑問がずっと消えなかった。
次の日から、みゆちゃんの態度が少し変わった。前より距離を置くようになったというか、必要以上に話しかけてこなくなった。
(あぁ…拒否されたと思ったのかな…)
仕事中にそんなこと考えてる自分にも腹が立つ。ケーブルの結線ミスりそうになって先輩に怒られたし。最悪。
3日ぐらいそんな状態が続いて、俺は昼休みにみゆちゃんを呼び出した。現場の裏手にある喫煙所。俺はタバコ吸わないけど、昼はだいたい誰もいない。
「あのさ、この前の夜…帰ったのは、みゆちゃんのことどうでもいいからじゃないよ」
「…え?」
「酔ってる時にそういうことしたくなかっただけ。…ちゃんとしたいなって思ったから」
自分で何言ってんだろって思った。「ちゃんとしたい」ってなんだよ。でも他に言葉が見つからなかった。
みゆちゃんが目を見開いて、それからゆっくり顔を赤くした。ヘルメットの下から覗く耳まで赤い。
「…それって…」
「今度、休みの日にメシでも行かない?ちゃんと…デートとして」
「……はいっ」
即答だった。(え、マジ?)って俺の方がびっくりした。
最初のデートは浦和のパルコでランチして、北浦和公園を散歩した。12月の頭で、公園のイチョウが全部散ったあとだったけど、みゆちゃんは「落ち葉がきれい」とか言ってスマホで写真撮ってた。
私服のみゆちゃんは、あの雨の夜とも現場とも全然違った。白いニットにチェックのスカート、ショートブーツ。髪をちゃんとセットしてて、薄めのメイクで、(こんな子と歩いてていいのか俺)っていう気持ちと(やっぱめちゃくちゃ可愛いな)っていう気持ちが半々。
「コウヘイさん、私服もかっこいいですね」
「いや、ユニクロだけど…」
「ユニクロでもかっこいいものはかっこいいんです」
「フォローうまいな…」
カフェに入って向かい合って座ったとき、みゆちゃんが急に真剣な顔になった。
「あの…コウヘイさんに言っておかなきゃいけないことがあって」
「なに?」
「私…前の彼氏のこと、まだ完全には吹っ切れてないかもしれません」
「…」
「ひどいことされたのに、たまに連絡が来ると…揺れちゃう自分がいて…」
正直、きつかった。でもみゆちゃんが正直に言ってくれたことは嬉しかった。隠されるよりずっといい。
「別にいいよ。すぐ忘れろなんて言わない。ただ、もう雨の中歩かされるようなことがあったら俺に電話して。迎えに行くから」
「…っ」
みゆちゃんの目がうるっとして、慌てて上を向いた。
「泣かないって決めたのに…ずるい…」
2回目のデートは川口のイオンモールで映画を観た。なんかのラブコメ。内容はあんまり覚えてない。隣に座ってるみゆちゃんの存在感がデカすぎて集中できなかった。
暗い中で手が触れて、どっちからともなく指が絡まった。みゆちゃんの手は小さくて冷たくて、ずっと握ってたら温かくなった。
映画のあとラーメン屋に入って、3回目のデートの約束をして別れた。まだ告白もキスもしてない。焦りはあったけど、俺はみゆちゃんに対して変にガツガツしたくなかった。前の男がそういうタイプだったっぽいし。
3回目のデートはクリスマスイブ。現場は12月28日まであったけど、24日は祝日で休みだった。
大宮のイルミネーションを見に行った。けやきひろばの光のページェント。平日なのにカップルだらけで、(俺たちもカップルに見えてんのかな)とか思いながら歩いた。
「きれい…」
「ん」
「コウヘイさん」
「ん?」
「元カレの連絡先、消しました」
「…え?」
「先週また連絡来て…でも、もういいやって。会いたい人は別にいるから」
イルミネーションの光がみゆちゃんの横顔を照らしてて、息が白かった。
「みゆちゃん」
「はい」
「俺と付き合ってくれない?」
「…遅い」
「え?」
「もうとっくにそのつもりでした。コウヘイさんが言ってくれるの待ってたのに…ほんと鈍いんだから…」
涙がぼろぼろ出てた。笑いながら泣いてて、(あぁ、この子は強がるタイプなんだな)って思った。
抱きしめた。冬のコート越しでも、みゆちゃんの体の細さがわかった。
「寒い…」
「部屋行く?」
「…コウヘイさんの家がいい」
俺の車で川口の俺のアパートに向かった。1LDKの狭い部屋。急いで片付けたけど、脱ぎっぱなしの作業着とか洗濯物とか完全には隠せなかった。
「男の人の部屋だ…」
「汚くてごめん…」
「ううん。コウヘイさんの匂いがする。安心する」
ソファに並んで座って、テレビをつけたけど何も観てなかった。みゆちゃんが俺の肩にもたれかかってきて、俺はみゆちゃんの髪を撫でた。
「みゆちゃん」
「ん…」
顔を上げたみゆちゃんにキスした。ちゅ、って軽く触れるだけのつもりだったのに、みゆちゃんの方から唇を押し付けてきた。
「ん…っ」
舌が触れた。みゆちゃんの舌は柔らかくて熱くて、キスしながら体の力が抜けていくのがわかった。
「…待って、いいの?」
「いい…コウヘイさんがいい…」
ニットの上から胸に手を置いた。Eカップぐらいある。現場のヘルメットと安全帯からは想像もつかないボリュームで、(え、こんなにあったの?)って素直にびっくりした。
「…じろじろ見ないでください…」
「いや…すげぇなって…」
「すげぇって…もうちょっと言い方…」
ニットを脱がせると、薄いピンクのブラから溢れそうなほど柔らかい膨らみが現れた。ブラを外すと、形のきれいな胸がぷるんと揺れた。
触ると指が沈み込むような柔らかさで、乳首はうっすらピンク色だった。
「あ…っ」
乳首を指でなぞると、みゆちゃんが声を漏らした。
「感じる?」
「…っ、うん…」
キスしながら胸を揉んで、乳首をつまむと体がびくっと跳ねた。
「やっ…そこ弱い…」
俺もシャツを脱いで、みゆちゃんをベッドに連れていった。スカートを脱がせると、マッチングの薄ピンクのショーツで、太ももが白くて細くて、触れたらすごく柔らかかった。
「触るよ…」
ショーツの上から触れると、もう湿ってた。
「恥ずかしい…見ないで…」
「見ないで触るの無理じゃない?」
「…ばか」
ショーツをずらして直接触れる。みゆちゃんの体がぴくっと反応した。
「ここ?」
「あっ…そこ…もうちょっと上…」
指示が具体的で、なんかそれがリアルですごくよかった。言われた通りに触ると、みゆちゃんの息が荒くなってきた。
「んっ…気持ちいい…コウヘイさん上手…」
「上手っていうか、みゆちゃんの教え方がうまいんだけど」
「やめてよそういうの…集中できなくなる…」
中に指を入れると、きゅっと締まった。ゆっくり動かすと、みゆちゃんが俺の首に腕を回してしがみついてきた。
「あ…っ、やば…」
「いきそう?」
「うん…っ、止めないで…」
指の動きを速めると、みゆちゃんの体が大きく震えた。
「あっ…んんっ…!」
びくびくっと体を震わせて、俺の腕をぎゅっと掴んだ。息が荒い。額に薄く汗が浮いてる。
「はぁ…はぁ…すごかった…」
「よかった」
「コウヘイさんも…してあげたい…」
みゆちゃんが体を起こして、俺のベルトに手をかけた。ズボンとパンツを下ろされて、もうガチガチになってた俺のものを握られた。
「大きい…」
「普通だと思う…」
「普通じゃないよ…前の人より全然…あ、比べちゃダメか…ごめん…」
「いや、今のは素直に嬉しい」
みゆちゃんが笑って、それから俺のものを舐め始めた。舌で先端をちろちろ舐めてから、口に含む。
「ん…んっ…」
温かくて柔らかい口の中で、舌が絡みつくように動く。
「うっ…上手…」
「ほんと?嬉しい…もっとしてあげる…」
奥まで咥えて、ゆっくり上下する。気持ちよすぎて腰が浮きそうになる。
「やば…みゆちゃん、そろそろ止めないと出ちゃう…」
「…出していいよ?」
「いや、中に出したい…」
自分で言っておいて(なに言ってんだ俺は)って思ったけど、みゆちゃんは顔を真っ赤にしながら頷いた。
コンドームを取り出した。買っておいてよかったと心底思った。つけるとき手が震えたのは…まぁ、緊張してたんだと思う。
正常位でみゆちゃんの上に覆いかぶさった。
「入れるよ…」
「うん…来て…」
ゆっくり入れていく。みゆちゃんの中はすごく温かくて、きつくて、入れた瞬間に(あ、これやばい)って思った。
「あっ…大きい…」
「痛い?」
「ううん…気持ちいい…全部入れて…」
奥まで入れると、二人とも動けなくなった。繋がってる感覚がリアルすぎて、なんか信じられなかった。1ヶ月前まで赤の他人だったこの子と今こうしてるのが。
「動くよ…」
ゆっくり腰を動かし始める。みゆちゃんが俺の背中に手を回してきた。爪が食い込むのがわかる。
「あっ…んっ…コウヘイさん…」
「みゆちゃん…気持ちいい…」
腰を動かすたびにみゆちゃんが声を上げる。最初は小さかった声が、だんだん大きくなってきた。
「あっ…そこ…いい…もっと…」
「ここ?」
「うんっ…そこ…やばいっ…」
体を密着させて、キスしながら腰を動かす。みゆちゃんの中がきゅうきゅう締まってきて、俺ももう限界が近かった。
「みゆちゃん…俺もう…」
「私も…っ、一緒にいって…」
「っ…!」
体の奥から込み上げるような快感が全身を駆け抜けた。みゆちゃんも同時に体を震わせて、俺の背中をぎゅっと抱きしめてきた。
「あぁっ…!」
しばらく二人とも動けなかった。荒い息だけが部屋に響いてた。
「…はぁ…すごかった…」
「…うん…」
ゆっくり抜いて、ゴムを外して捨てた。みゆちゃんがそのまま俺の胸に頬をくっつけてきた。
「ねぇ…もう一回…ダメ?」
「…マジ?」
「だって…もっとコウヘイさん感じてみたい…」
2回目はみゆちゃんが上になった。腰をゆっくり動かすみゆちゃんの顔が、さっきより余裕がなくて、でもすごく色っぽかった。揺れる胸を下から見上げながら、(あぁ、俺この子のこと本気で好きだ)って確信した。1回目は必死すぎてそんなこと考える余裕なかったけど、2回目は不思議と冷静な部分が残ってて、みゆちゃんの表情とか声とか、全部覚えておきたいって思った。
「コウヘイさん…好き…」
「俺も…好きだよ…」
2回目が終わったあと、みゆちゃんは俺の腕枕で眠りについた。寝顔がびっくりするぐらい幼くて、22歳って嘘だろって思った。
朝、先に目が覚めた。隣でまだ寝てるみゆちゃんの寝顔を見ながら考えた。この先、現場でどうやって平然とした顔で接するんだよ、と。
みゆちゃんが目を開けた。
「…おはようございます」
「おはよう。…敬語いらなくない?もう」
「…おはよう、コウヘイ」
呼び捨て。ヘルメットも安全帯もない、ただのみゆ。
(あ、やべ。呼び捨ての破壊力えぐい)
結局、現場では今まで通り「高木さん」「コウヘイさん」で通した。周りにバレたら色々面倒だし。でも田中さんには多分バレてた。昼休みに「おい、高木に変なことすんなよ」って釘刺されたし。
現場が終わる3月まで、俺たちは秘密の関係を続けた。休みの日はほぼ毎週会ってたし、平日も夜に電話してた。みゆちゃんは仕事にもどんどん慣れていって、最初は田中さんに聞けなかった質問も自分からガンガン聞くようになった。
現場の最終日、解散のあと二人で残って片付けをしてたとき。
「次の現場、所沢なんだって」
「遠いな」
「もう毎日会えなくなるね…」
「まぁ、仕事中は会えなくても休みは会えるだろ」
「…うん」
「つーかさ、もう一緒に住まない?」
「え…」
「川口と西川口なんて隣じゃん。どっちかの家に引っ越せばいいだけだし」
「…本気で言ってる?」
「本気じゃなかったら言わないよ」
みゆちゃんが泣き出した。現場の誰もいなくなった資材置き場で、ヘルメット被ったまま泣いてる彼女を、安全帯つけたまま抱きしめた。絵面は全然ロマンチックじゃなかったと思う。でも、あの瞬間が俺たちには一番しっくりきた。
今、俺たちは川口の2LDKで一緒に暮らしてる。みゆは相変わらず現場管理の仕事をしてて、俺も相変わらず天井裏にもぐってる。業種は近いけど現場は別々。でも毎晩同じベッドで寝てる。
あの雨の夜、蕨の国道で車を止めなかったら。あの子が次の週に現場に来なかったら。忘年会で隣に座らなかったら。全部たまたまの偶然が重なっただけなのに、今の生活がある。
人生ってほんとわかんないもんだなって思う。
以上、長くなったけど読んでくれた人ありがとう。