兄貴が蒸発して残された義姉が転がり込んできたんだが、俺の1Kに女の荷物が増えていく

これ書いていいのかずっと迷ってたんだけど、もう3年経つし、時効ってことで。

俺は当時25歳、都内の小さいIT企業でSEやってた。スペックは173cm、体重63kg、顔面偏差値は友達に「雰囲気イケメンって言えなくもない」って言われる程度。要するにフツメン。彼女いない歴2年。錦糸町の築30年のワンルームに住んでて、休日はだいたいSteamのセールで買ったゲームを積んでる、そういう人間です。

で、兄貴の話をしないといけない。

兄貴は俺の4つ上で、昔からちょっと派手な生活が好きなタイプだった。車はローンでアルファード、服はセレクトショップ、飲みは週4。それでも30手前で結婚して、一応落ち着いたかなと思ってた。相手は兄貴の職場の後輩で、名前は伏せるけど、ここでは義姉さんと書く。

義姉さんは当時28歳。初めて紹介されたとき、正直びっくりした。背は162cmくらいで、顔が今田美桜に似てる。似てるっていうか、系統が同じ。丸い目にちょっとタレ目がかった感じで、笑うと目が三日月になる。スタイルも普通にいい。たぶんEかFくらいあったと思う。兄貴がよくこんな人捕まえたなって、結婚式のとき親戚のおっさん連中がみんな同じこと言ってた。

俺も正直、初対面のとき(この人が義姉になるのか…)って複雑な気持ちになった。だって目の保養にはなるけど、兄貴の嫁だぞ。そこは線を引くでしょ普通。

で、結婚して2年くらい経った頃、事件が起きた。

ある水曜の夜、仕事終わりにスマホ見たら母親から着信が5件。折り返したら開口一番こう言われた。

「あんた、兄貴と連絡とれる?」

いや、母親の声じゃなかった。義姉さんだった。母親のスマホから掛けてきてたらしい。

「え、義姉さん? どうしたんですか」

「お兄さんが…3日前から帰ってこなくて。携帯も繋がらない」

「は?」

「会社にも行ってないみたいで…」

マジかよ、と思った。いや思っただけじゃなくて声に出てた。

詳しく聞くと、兄貴は半年くらい前から様子がおかしかったらしい。帰りが異常に遅い、スマホを肌身離さない、急に金の話をしなくなった。義姉さんが問い詰めたら逆ギレして、そのまま出ていって、音信不通。

しかもだ。兄貴が出ていった後に届いた郵便物を開けたら、消費者金融3社から催促状が来てた。合計で400万以上。

「私、実家にも帰れなくて…」

義姉さんの実家は鳥取で、両親とは折り合いが悪いらしい。結婚するとき揉めたとかで、ほぼ絶縁状態。

母親が電話を代わった。

「あんた、しばらくあの子のこと面倒見てあげなさい。うちはお父さんの介護があるから部屋がないの」

いやいやいや。俺の部屋、1Kの25平米だぞ。しかも義姉だぞ。色々まずくないか。

でも母親の「あんたしかいないの」の一言で、断れなかった。昔からそう。うちの家族、困ったことは全部末っ子の俺に回ってくる。

翌日の金曜、仕事を早退して錦糸町の部屋を最低限片付けた。ゲーミングチェアを端に寄せ、万年床を畳み、シンクに溜まった食器を洗い、コンビニで布団圧縮袋と来客用の寝具を買った。

夜8時、インターホンが鳴った。

ドアを開けたら、義姉さんがキャリーケース一つで立ってた。法事以来1年ぶりに見る義姉さんは、目の下にクマがあって、痩せてた。でもやっぱり綺麗だった。(こんな状況で何考えてんだ俺)

「…ごめんね、急に」

「いや全然。入ってください」

「お邪魔します…」

25平米のワンルームに大人二人。しかも異性。しかも義姉。冷静に考えてどうかしてる状況なんだけど、義姉さんの顔を見たら「帰れ」とは言えなかった。

最初の3日くらいは、お互い気を遣いすぎてぎこちなかった。俺はベッドを義姉さんに譲って、自分は床に寝袋。朝はどっちが先にシャワー浴びるかでもたもたして、トイレのタイミングも気まずい。1Kの壁の薄さをこんなに呪ったことはない。

でも1週間もすると、不思議と生活のリズムができてきた。

義姉さんは前の職場を辞めてたけど、すぐに派遣の登録をして、平日は新宿のコールセンターに通い始めた。行動力あるなこの人、と素直に思った。

俺が帰ると、小さいキッチンで何か作ってくれてることが多かった。

「居候の分際で家賃払えないから、せめてご飯くらいは」

「いや、マジでうまいんでありがたいです」

実際、義姉さんの飯はうまかった。肉じゃがとか、鶏の照り焼きとか、特別なものじゃないんだけど、味付けがちょうどいい。一人暮らし5年目にして初めて、帰ったら温かい飯がある生活を知ってしまった。これが一番やばかった。

2週間目くらいに、事件があった。

その日、俺は残業で23時過ぎに帰った。ドアを開けたら部屋が暗くて、義姉さんがベッドの上で体育座りしてた。

「義姉さん? 電気つけないんですか」

返事がない。近づいたら、泣いてた。声を殺して、肩を震わせて。

「…ごめん、なんでもない」

「なんでもなくはないでしょ」

「弁護士さんに相談したの。離婚の。そしたら、失踪から1年経たないと…って」

「…」

「借金は連帯保証人じゃないから私に返済義務はないって。でも…あの人名義のマンションのローンは止まるし、私の貯金もほとんどあの人に…」

声が震えてた。

「なんで私ばっかりこんな目に遭うんだろ」

その言葉を聞いたとき、兄貴に対する怒りがぶわって込み上げた。と同時に、この人を泣かせちゃいけない、って思った。義姉だからとか関係なく、目の前で泣いてる人を放っておけなかった。

「義姉さん。とりあえず、ここにいていいんで」

「…」

「家賃とか気にしなくていいし。俺の給料で二人分くらいなんとかなるんで」

嘘。なんとかなるけどカツカツだった。でも言った。

「…ありがとう」

義姉さんが俺の手を握った。小さくて、冷たい手だった。

そのへんから、俺の中で何かが狂い始めた。

意識しないようにしてたんだよ。でもさ、25平米に二人で暮らしてて意識するなって方が無理じゃない?

風呂上がりにTシャツ一枚でうろうろする義姉さん。寝てるとき無防備に寝返り打って、シャツがめくれて腹が見えてる義姉さん。洗濯物を干すとき、当たり前のように下着がベランダに並んでる光景。

(やめろやめろやめろ。兄貴の嫁だぞ)

自分に言い聞かせてた。でも一人暮らし歴5年の独身男が、今田美桜似の28歳と同じ部屋で寝起きしてて、何も感じないわけないだろ。毎晩寝袋の中で天井見つめながら(俺は人としてダメなのか?)って自問自答してた。

1ヶ月が過ぎた頃、季節は10月に入って、急に冷え込んだ。

その夜、布団に入ってしばらくしたら、義姉さんが声をかけてきた。

「ねえ、起きてる?」

「…起きてますけど」

「寒くない? 床、冷たいでしょ」

「まあ、多少は」

「…ベッド、半分使う?」

心臓が跳ねた。

「いや、それはさすがに」

「別に変な意味じゃなくて。シングルだけど、詰めれば寝れるし」

「いやいやいや」

「風邪引かれたら困るの、私が。看病する余裕ないから」

理屈としては正しい。正しいんだけど。

結局、義姉さんの「早く来なさい」の一言で折れた。(俺っていつもこうだ…)

シングルベッドに大人二人はさすがに狭くて、寝返りを打ったら肩がぶつかる距離。義姉さんの髪からシャンプーの匂いがして、背中越しに体温が伝わってきて、寝れるわけがなかった。

「…ねえ」

「はい」

「私のこと、名前で呼んでくれない?」

「え?」

「義姉さんって呼ばれるたびに、あの人のこと思い出すから」

「…わかりました。じゃあ、なんて」

「みなみ、でいいよ。周りはみんなそう呼ぶし」

「…みなみさん」

「さん付け(笑)まあいいけど」

暗い部屋で、背中合わせで、くすって笑い声が聞こえた。なんかその笑い声で、胸がぎゅってなった。

それから毎晩、同じベッドで寝ることになった。

3日目くらいには慣れた。嘘、慣れてない。慣れたふりをしてた。毎晩、隣で寝息を立てるみなみさんの気配を感じながら、天井を見つめて(俺はいつまで耐えられるんだろう)って考えてた。

転機は、同居して6週目の土曜日だった。

その日はみなみさんが休みで、俺も珍しく土日両方オフだった。昼から二人で部屋にいて、特にやることもなく、アマプラで映画を見てた。

みなみさんが冷蔵庫からストロングゼロを2本出してきて、「飲む?」って。まだ14時。でもまあ休みだし、と思って受け取った。

2本目を開ける頃には、みなみさんがちょっと酔っぱらって饒舌になってた。

「ねえ、聞いていい? なんで彼女いないの」

「いや、普通にモテないからです」

「嘘でしょ。優しいし、顔もそこそこだし」

「そこそこって」

「褒めてるの(笑)」

「まあ、2年前に別れてから特に出会いもなくて」

「ふーん…もったいない」

みなみさんがソファ代わりのベッドの上で足を投げ出して、缶を傾けた。Tシャツの首元から鎖骨が見えて、目のやり場に困る。

「私さ、お兄さんと最後にしたの、半年以上前だよ」

「…え」

「あ、ごめん。こんな話。酔ってるわ」

「いや…」

「でもさ、女としてどうなんだろうって思うことない? 28で旦那に捨てられて、弟の部屋に転がり込んで。惨めだなって」

「惨めなんかじゃないですよ」

「そう?」

「兄貴がクソなだけで、みなみさんは何も悪くないじゃないですか」

みなみさんが俺を見た。潤んだ目で。

「…そうやって優しくされると、勘違いしちゃうんだけど」

「勘違いって」

「自分でもわかってるよ。私おかしいって。でも…」

みなみさんが俺の腕を掴んだ。酔ってるのか、目が赤い。

「こんなに近くで優しくされたら、好きになっちゃうに決まってるじゃん…」

(え?)

頭が真っ白になった。いや、嬉しかった。嬉しかったけど、それ以上に混乱してた。

「みなみさん、酔ってるから」

「酔ってない。酔ってたら言えないよこんなこと」

「でも、俺は兄貴の…」

「あの人はもう関係ない。私を捨てたの、あの人でしょ」

正論だった。でも。

「…ダメですよ。俺たち、そういう関係になっちゃ」

そう言った。言ったんだよ。ちゃんと断った。偉いだろ、俺。

みなみさんは「…そうだよね」って小さく笑って、そのまま寝落ちした。

俺はその夜、リビングの床で寝た。10月の床は冷たかった。

翌日、みなみさんは何事もなかったように振る舞ってた。朝ごはんを作って、「昨日は飲みすぎた」って笑って。

俺もそれに合わせた。なかったことにした。

でも、なかったことになんてできるわけなかった。

あの夜から、みなみさんを見る目が変わってしまった。料理してる後ろ姿、テレビ見て笑ってる横顔、寝る前に「おやすみ」って言う声。全部が、全部がしんどかった。好きだって自覚した瞬間から、隣にいるのに触れられない距離が苦しくなった。

(兄貴の嫁だぞ。まだ籍入ったままだぞ。俺は何を考えてるんだ)

毎日自分を殴りたかった。

さらに1週間後の金曜日。

その日は会社で大きめのトラブルがあって、俺は終電の総武線で錦糸町まで帰ってきた。疲れ切ってドアを開けたら、部屋が暗くて、でもベッドの上のスマホの明かりが見えた。

「ただいま…」

「おかえり。ご飯、温める?」

「いや、もう食ったんで大丈夫です」

靴を脱いで、スーツのまま床に座り込んだ。本当に疲れてた。

「…大丈夫?」

みなみさんがベッドから降りてきて、俺の隣に座った。

「大丈夫です。ちょっと疲れただけ」

「顔、死んでるよ」

「死んでるのは顔面偏差値の方です」

「(笑)そういうとこだよ、ほんと」

みなみさんが俺の頭を自分の肩に引き寄せた。シャンプーの匂いがした。

「頑張ってるの、わかってるから」

「…」

「家賃も光熱費も、私の分まで。言わないだけで、きついでしょ」

「そんなことないですよ」

「嘘つき」

バレてた。

「…まあ、ちょっとだけ」

「ちょっとじゃないでしょ」

「…はい」

みなみさんの肩に頭を預けたまま、目を閉じた。このまま寝ちゃいたかった。でもみなみさんが動いて、気づいたら俺の正面に座ってた。

「ねえ」

「はい」

「あの日言ったこと、忘れてくれた?」

忘れるわけないだろ。毎日思い出してるわ。

「…覚えてます」

「私も覚えてる。あれ、本気だったから」

暗い部屋で、みなみさんの目が光ってた。泣いてたのか、覚悟を決めた目なのか、よくわからなかった。

「あなたがダメだって言うなら、引っ越す。これ以上迷惑かけたくないし」

「いや、引っ越すとか…」

「でも私、このままここにいたら我慢できなくなる」

「…」

「だから、はっきりしてほしい。どっちでもいいから」

どっちでもよくないだろ、と思った。どっちを選んでも、何かが壊れる。

でも、ここで「出ていってください」って言える人間だったら、最初から泊めてないんだよ。

「…出ていかないでください」

「それは、どっちの意味で」

「…俺も、好きです。みなみさんのこと」

言っちまった。言ったらもう戻れないのわかってて、言った。

みなみさんが息を吸い込む音が聞こえた。

「…ばか」

「知ってます」

みなみさんが俺の首に腕を回してきた。キスされた。ストロングゼロの味じゃなくて、歯磨き粉のミントの味がした。しらふだった。お互い。

最初のキスは、正直ぎこちなかった。唇を合わせただけ、みたいな。でもすぐに2回目、3回目って重なっていって、気づいたら舌が絡んでた。

みなみさんの舌が柔らかくて、ちょっとぎこちない動きが逆にリアルだった。映画みたいなキスじゃなくて、鼻がぶつかったり、よだれが垂れそうになったり。でもそれが良かった。本当のことをしてる感じがした。

「みなみさん…」

「さん、いらない。みなみでいい」

「…みなみ」

「ん」

名前を呼んだら、みなみがまたキスしてきた。今度はさっきより深くて、腰に手が回されて、俺はもう完全にダメだった。理性とかそういうの、全部どっか行った。

スーツのジャケットを脱いだ。みなみがネクタイを緩めてくれた。そのまま床に倒れ込みそうになって、「ベッド…」ってみなみが言った。

シングルベッドの上で、みなみのTシャツをめくった。白いブラが見えて、手が震えた。情けないけど震えた。

「…笑わないでね」

「笑わないよ」

ブラを外したら、想像してたよりずっと大きかった。形が綺麗で、柔らかくて、手で包んだら指の間から溢れた。

「…すごい」

「すごいって何(笑)」

「いや、綺麗だなって」

「…ありがと」

みなみが恥ずかしそうに目を逸らした。28歳の、結婚経験のある女の人が、こんな初々しい反応するんだって思った。たぶん兄貴に大事にされてなかったんだろうな。そう考えたら余計に丁寧にしたくなった。

胸に顔を埋めて、舌で転がすように先端を舐めたら、みなみの体がびくって跳ねた。

「んっ…」

「感じる?」

「…久しぶりすぎて、よくわかんない」

よくわかんない、って言いながら腰が動いてるのはわかった。

ショートパンツを脱がせて、下着越しに触ったら、もう濡れてた。

「…やだ、恥ずかしい」

「恥ずかしくない」

「恥ずかしいの。だって弟に触られてるんだよ、私」

その言葉がやけに生々しくて、背徳感と興奮がごちゃ混ぜになった。ダメだってわかってる。わかってるのに止まれない。

下着をずらして、直接触った。指を入れたら、みなみが俺の肩を掴んだ。

「あ…っ」

「痛い?」

「ううん…気持ちいい…」

ゆっくり動かした。みなみの息が荒くなって、腰が揺れて、爪が肩に食い込んだ。

「ねえ…もう、入れて…」

「ゴム…」

「あるの?」

あった。洗面台の下の引き出しに、2年前から残ってた箱。期限は確認した。ギリギリセーフだった。

装着する手が震えてた。みなみは仰向けで、両腕を広げて待ってた。

「…入れるよ」

「うん…」

先端を当てて、ゆっくり押し込んだ。みなみが息を止めた。

「ん…っ」

久しぶりだって言ってたから、なるべく丁寧に。少し入れては止めて、みなみの表情を見て、また少し。

全部入った瞬間、みなみが「あ…」って小さく声を出した。

「…久しぶりすぎて、感覚忘れてた」

「大丈夫?」

「大丈夫。動いて…ゆっくり」

腰を動かし始めた。ギシギシとベッドが軋む音が、この安アパートの壁の薄さを思い出させた。でもそんなこと気にしてる余裕はなかった。

みなみの中はきつくて、熱くて、動くたびに締め付けられる感覚がすごかった。

「あっ…ん…っ」

「みなみ…」

「もうちょっと…速くしても、いい…」

ペースを上げた。みなみの声が大きくなって、慌てて自分の手で口を塞いだ。

「んんっ…!」

「声、隣に聞こえるから…」

「わかってる…でも、無理…っ」

俺がみなみの手を取って、指を絡めた。そしたらみなみが俺を引き寄せて、キスした。声を殺すように、口を塞ぐように。

キスしながら腰を動かした。みなみの脚が俺の腰に絡んできて、密着度が増して、もう何が何だかわからなくなった。

「やばい…もう…」

「いいよ…出して…」

「いく…っ」

みなみの中で、全部出した。ゴム越しだったけど、今まで感じたことないくらい気持ちよかった。(これが、好きな人とするってことか)って、変な感想が浮かんだ。

「…はぁ」

「…ごめん、早くて」

「ううん。嬉しかった。ちゃんと、してくれて」

みなみが笑った。泣いてるのか笑ってるのかわからない顔で。でも綺麗だった。

抜いた後、しばらく二人で天井を見てた。シングルベッドの上で、肩がくっついたまま。

「…ねえ」

「ん」

「もう一回、したい」

2回目は、みなみが上だった。

跨がって、自分で入れて、ゆっくり腰を動かし始めた。1回目より余裕があって、みなみの表情がよく見えた。目を細めて、唇を噛んで、時々ふっと笑う。

「ん…こっちの方が、自分で動けるから…いい」

「…えろ」

「ばか(笑)」

笑いながら腰を振ってるみなみを見て、(ああ、俺はもう戻れないんだな)って思った。兄貴の嫁に手を出した、最低の弟。でもそんなことより、目の前のこの人が愛おしくてたまらなかった。

みなみが前に倒れ込んできて、胸が俺の顔に押し付けられた。揺れるたびに柔らかいのが頬に当たる。

「あ…やば…っ、いきそう…」

みなみの動きが速くなった。爪が俺の胸に食い込む。

「いく…っ、いくっ…!」

みなみの体がガクガク震えて、中がぎゅうって締まった。その締め付けで俺も。

「俺も…っ」

2回目の射精は、1回目より長く続いた気がした。みなみが俺の上に崩れ落ちて、そのまましばらく動けなかった。

「…重い?」

「全然」

「嘘。私50キロあるから」

「50キロなんて羽みたいなもんです」

「上手いこと言おうとしてスベってるよ」

二人で笑った。

それが、最初の夜。

あの夜から、俺たちの関係は完全に変わった。同居人から、恋人みたいな何かになった。みたいな、と書いたのは、正式に付き合ってるとも言えない関係だったから。みなみは法律上まだ兄貴の妻だし、俺は兄貴の弟だし。

でも毎晩同じベッドで寝て、キスして、時々抱き合って。平日は普通に仕事行って、帰ったらご飯食べて、映画見て、風呂入って。まるで新婚みたいだった。新婚の味を知らないけど。

3ヶ月後、兄貴から母親に連絡があった。九州にいるらしい。詳しいことは書かないけど、結局兄貴は離婚届を郵送してきた。みなみは泣きながらサインしてた。「悲しいんじゃなくて、やっと終わった」って言ってた。

その日の夜、みなみが言った。

「私、来月には出ていくね」

「え?」

「派遣先で社員登用の話もらったの。お金も少し貯まったし、そろそろ自立しないと」

「…出ていかないでほしいんだけど」

「え?」

「1Kは狭いんで、二人で住める部屋探しませんか」

みなみが目を見開いて、それから、泣き笑いみたいな顔になった。

「…プロポーズ?」

「いやまだそこまでは…ってか敬語に戻ってるな俺」

「ほんとだ(笑)」

「でも、マジで一緒にいたい。みなみと」

「…うん」

翌月、二人で清澄白河の1LDKに引っ越した。今度はちゃんと、ダブルベッドを買った。

家族には半年後に報告した。母親は「知ってた」って言った。父親は何も言わなかった。兄貴には言ってない。たぶん一生言わない。

これが正しかったのかは今でもわからない。でも、あの10月の夜にみなみの手を取らなかったら、俺はきっとずっと後悔してた。

以上、兄貴の元嫁と付き合ってる弟の話でした。


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