これ書くかどうかマジで迷ったんだけど、もう時効だと思うから書く。
俺、当時26歳。東京の板橋区で一人暮らししてた。志村坂上の駅から徒歩8分、家賃6万2千円の1LDK。IT系の中小企業でSEやってて、まあ普通のサラリーマンだった。顔面偏差値は48くらい。よく言えば「雰囲気イケメン」、悪く言えば「髪型で誤魔化してるだけ」。身長172。彼女なし歴2年。
で、3つ上の兄貴がいるんだけど、こいつが昔からダメな奴でさ。
高校中退して、飲食やったりバイト転々としたりして、25のときに4つ上の千夏さん――まあ義姉になる人と結婚した。千夏さんは川口の信用金庫で窓口やってた真面目な人で、なんで兄貴みたいなのと結婚したのか正直わけわからなかった。
ある日の夜、仕事から帰ってコンビニ飯食べながらYouTube見てたら、知らない番号から電話がきた。
出たら千夏さんだった。
「……ごめんね、夜遅くに。大輔くん……ちょっと、話があるんだけど」
声が震えてた。
聞けば、兄貴が消えたらしい。
3日前から連絡がつかない。会社にも行ってない。で、調べたら消費者金融3社から合計280万の借金があった。しかも兄貴、千夏さんの実印を勝手に使って、千夏さん名義でも50万借りてたと。
「……は?」
「アパートの家賃も3ヶ月滞納してて……来月までに出なきゃいけなくなったの」
「千夏さんの実家は?」
「……お父さんに話したら、"だから言っただろう"って。泊めてはくれるけど……毎日あの人の結婚についての説教が続くと思うと……」
(そりゃキツいわ……)
気づいたら言ってた。
「うち来ます?」
5秒くらい沈黙があって。
「……いいの?」
いや、よくないだろ普通に考えたら。兄貴の嫁を自分の部屋に住まわせるとか。でもあの時の千夏さんの声聞いたら、断れなかった。
翌週の土曜日、千夏さんがスーツケース一つで来た。
玄関で靴脱いだ千夏さんを見て、不謹慎だけど最初に思ったのが「やっぱ綺麗だな」だった。
千夏さん、当時29歳。顔は石原さとみ系の華やかな感じで、背は162くらい。銀行員だからいつもきっちりした格好してて、その日もグレーのニットにタイトスカートで来た。痩せてるんだけど胸はしっかりあって、たぶんEカップくらい。兄貴の結婚式で見たドレス姿、親戚のおっちゃんたちが全員二度見してたのを覚えてる。
「本当にごめんね……迷惑かけて」
「いいですよ。寝室そっち使ってください、俺はリビングで寝るんで」
「え、そんな悪いよ……」
「いいから。布団あるし」
最初の一週間はマジで気まずかった。
千夏さんは朝6時に起きてて、俺が7時半に起きるともう朝飯ができてた。味噌汁と焼き鮭と卵焼き。一人暮らし5年目にして初めてまともな朝飯を食べた。
「え、めっちゃ美味いんですけど」
「ふふ、よかった。居候代だと思って」
千夏さんは2週間で川口の信金を辞めて、板橋区内のドラッグストアでパートを始めた。「借金は私が返す」って言って、毎月の返済計画をExcelで作ってた。そういうとこ、マジで真面目な人。
生活は徐々にリズムができていった。
朝は千夏さんが先に起きて朝飯作って、俺が出社して、夕方にはどっちか先に帰った方が夕飯を作る。千夏さんが作ると和食、俺が作るとパスタかカレー。土日は一緒にスーパー行って、安売りの肉を買い込む。
完全に、夫婦みたいな生活だった。
一ヶ月目くらいから、千夏さんが風呂上がりにTシャツとショートパンツでリビングに来るようになった。最初は「ちゃんと着替えてから出てきてください」って言おうとしたけど、よく考えたら自分の家で何着ようが自由だよな、と思って黙ってた。
でも、困る。
千夏さんの脚、白くて細くて、しかもTシャツが薄いからブラ透けるし。ソファでテレビ見てるとき隣に座られると、シャンプーの匂いがして集中できない。
(お前は兄貴の嫁だろ……何考えてんだ俺……)
自分に言い聞かせてた。毎晩。
二ヶ月目に入ると、千夏さんが時々泣くようになった。
きっかけは兄貴から連絡があったこと。LINEで一言「ごめん」って来たらしい。それだけ。既読つけた瞬間にブロックされたと。
「……私、何がいけなかったのかな」
リビングのソファで膝を抱えて、声を殺して泣いてる千夏さんを見て、胸が痛かった。
「千夏さんは何も悪くないですよ。兄貴がクソなだけです」
「……大輔くんがそう言ってくれると、ちょっとだけ楽になる」
その夜、俺はリビングの布団の中で天井見ながら考えてた。
この人を好きになっちゃダメだ。これは同情だ。状況がそうさせてるだけだ。千夏さんは兄貴の嫁で、俺は一時的に屋根を貸してるだけで――
でも、毎朝「おはよう」って笑う千夏さんの顔が、もう脳裏から離れなくなってた。
(やべえな……これ、やべえやつだ……)
三ヶ月目のある金曜日。
俺が会社の飲み会で終電逃して、タクシーで帰ったのが夜中の2時。鍵を開けて入ったら、リビングの電気がついてた。
千夏さんがダイニングテーブルに座って、缶ビール飲んでた。目が赤い。
「……千夏さん?まだ起きてたんですか」
「おかえり。……ちょっと寝れなくて」
テーブルの上にスマホが置いてあって、画面に弁護士事務所のサイトが開いてた。離婚についてのページ。
「ね、大輔くん。……私、離婚届出そうと思うんだけど」
「……そうですか」
「そうですか、って……もうちょっと何か言ってよ」
「いや、俺が何か言う立場じゃ……」
「立場とか関係ないよ。……大輔くんは、私がここにいていいと思う?」
俺は黙った。
(答えたらアウトだろ。「いてほしい」なんて言ったら、それはもう……)
「……いてほしいですよ。普通に」
千夏さんが、少し笑った。泣きながら。
「"普通に"って何……」
「いや、だから……」
「大輔くんってさ、いつもそうだよね。肝心なとこではぐらかす」
「はぐらかしてるんじゃなくて、言っちゃいけないことがあるでしょ」
「……言っちゃいけないこと?」
千夏さんが椅子から立って、俺の方に来た。距離が近い。酒の匂いと、いつものシャンプーの匂いが混ざってる。
「それ……どういう意味か、聞いてもいい?」
「……聞かないでください」
「嫌」
千夏さんが俺のTシャツの袖を掴んだ。
「ずっと……気づいてたよ。大輔くんが目そらすの。私がソファに座ると少し離れるの」
(バレてたのかよ……)
「それが……嫌じゃなかった。私も……」
「千夏さん、酔ってるでしょ」
「酔ってないよ。ビール2本で酔わないでしょ」
確かに千夏さん酒強いんだよな。正月の集まりで日本酒4合飲んでケロッとしてたし。
「ねえ、大輔くん」
「……はい」
「キスしていい?」
心臓が止まるかと思った。
頭の中で「ダメだ」と「してほしい」がぐるぐる回って、答えが出ないまま突っ立ってたら、千夏さんが背伸びして唇に触れた。
柔らかかった。
3秒くらいで離れて、千夏さんが俺の顔を見上げてた。
「……ごめん、嫌だった?」
「嫌じゃ、ない……けど」
「けど?」
「これ、やったらもう戻れないですよ」
「……戻りたくない」
その一言で、俺の中の何かが切れた。
千夏さんの腰を引き寄せて、今度は俺からキスした。さっきの控えめなやつじゃなくて、舌を絡めるやつ。千夏さんの体がびくっとして、でもすぐに俺の首に腕を回してきた。
「んっ……」
息が荒くなる。千夏さんの体温が高い。いつもサラッとしてる人なのに、今は全身が熱くて、心臓の音が伝わってくる。
「大輔くん……」
「……部屋、行きますか」
「うん……」
寝室に入って、ベッドに座った千夏さんの前に膝をついた。千夏さんが着てた白いTシャツの裾に手をかけると、千夏さんが自分から腕を上げた。
Tシャツを脱がすと、ベージュのブラから零れそうな胸が出てきた。やっぱりでかい。想像してたよりでかい。
「……すごい」
「やめてよ、恥ずかしい……」
ブラを外すと、形のいい胸がぷるんと揺れた。色白の肌に薄いピンクの先端。
(兄貴、お前マジでバカだよ……こんな人置いて逃げるとか……)
千夏さんの胸に顔を埋めた。柔らかくて、温かくて、石鹸の匂いがした。
「んっ……」
乳首を舌先で転がすと、千夏さんの手が俺の髪を掴んだ。
「あ……そこ、弱い……」
「ここ?」
「ん……うん……」
千夏さんのショートパンツに手を入れると、下着の上からでもわかるくらい濡れてた。
「千夏さん……けっこう……」
「言わないで……自分でもわかってるから……っ」
下着をずらして直接触ると、千夏さんが声を漏らした。
「あっ……ん……」
クリを親指で円を描くように触りながら、中指を入れていく。
「は……っ、大輔、くん……」
「感じてる……?」
「……当たり前でしょ……っ」
ちょっと怒ったみたいに言うのが千夏さんらしくて、思わず笑った。
指を動かすたびに千夏さんの腰が反応する。中が締まったり緩んだりして、指にまとわりつく。
「やっ……そこ……だめ……っ」
奥の方を押すと、千夏さんが俺の肩にしがみついた。
「あ、あっ……だめ、イっちゃ……っ」
「イっていいですよ」
「んんっ……!」
千夏さんの体がびくびくっと震えて、太ももが閉じた。指がぎゅっと締められる。
「はぁ……はぁ……」
肩で息をしてる千夏さんの顔が、泣いてるみたいに赤くて。
「大丈夫ですか」
「……久しぶりすぎて……」
「久しぶり」って言葉で、兄貴の存在が一瞬よぎった。でも千夏さんが俺の頬に手を当てて、まっすぐ目を見てきた。
「大輔くん……して。お願い」
俺はジーンズとボクサーを脱いだ。もうとっくに限界だった。
千夏さんが仰向けになって、自分からショートパンツと下着を脱いだ。白い太ももの間が、濡れて光ってた。
「ゴム……持ってきます」
「……うん」
洗面台の引き出しからコンドームを取ってきて、震える手で装着した。サイズはMだけど、ぱんぱんだった。
先端を当てると、千夏さんが小さく息を吸った。
「入れますよ……」
「うん……」
ゆっくり腰を進めた。中があったかくて、きつくて、頭がぼーっとした。
「あぁ……っ」
「痛く、ない……?」
「ううん……気持ちいい……」
奥まで入った瞬間、千夏さんが俺の背中に爪を立てた。
(これ、夢じゃないよな……兄貴の嫁と……俺、何やってんだ……)
頭ではそう思ってるのに、体は止まらなかった。
ゆっくり腰を動かし始めると、千夏さんが目を閉じて唇を噛んだ。
「んっ……んっ……」
声を我慢してるのがわかった。
「声、出していいですよ」
「だって……隣の部屋に……」
「隣は空き部屋ですよ。壁も厚いし」
志村坂上のあのアパート、古いけど壁だけは無駄に厚かったから、マジで隣には聞こえない。
「あっ……あぁん……っ」
許可が出たみたいに千夏さんの声が大きくなった。腰を掴んでペースを上げると、ベッドが軋む音と千夏さんの声がリビングまで響いてる気がした。
「大輔くん……もっと……」
「千夏さん……っ」
名前を呼ぶと、中がきゅっと締まる。
「名前呼ばれると……だめ……っ」
「千夏さん、千夏さん……」
「やっ……意地悪……っ」
千夏さんの手が俺の腕を掴んで、爪が食い込む。痛いけど、それが逆に興奮した。
「俺も、やばい……」
「うん……いいよ……」
最後に深く突いて、中で達した。ゴム越しだったけど、今まで経験したことないくらいの快感が全身を突き抜けた。
「……っ」
「あ……熱い……わかる、中で出てるの……」
しばらく動けなかった。
千夏さんの上に崩れ落ちて、耳元で荒い息をしてたら、千夏さんが俺の髪を撫でた。
「……重い」
「あ、すんません」
体を起こして横に転がった。
天井を見ながら、二人とも黙ってた。何を言えばいいかわからなかった。
「後悔してますか」って聞こうとして、やめた。怖かったから。
そしたら千夏さんの方から言った。
「大輔くん」
「はい」
「後悔してない」
(心読まれてる……?)
「顔に書いてあるよ、"やっちゃった"って」
「……してました?」
「うん。でも安心して。私も同じ顔してるから」
千夏さんが横を向いて、俺の腕に頬をつけた。
「ねえ……もう一回、していい……?」
正直、一回で賢者タイムに入ってた。兄貴の嫁と何してんだ俺は、って。
でも千夏さんの手が俺の腹を撫でて、下に降りてきて、直接握られた瞬間にそんな理性は吹っ飛んだ。
「千夏、さん……っ」
「もう"さん"はいいよ。……千夏でいい」
(いや、それ言われると余計にやばいんだけど……)
今度は千夏さんが上に跨った。
さっきと違って、千夏さんの方から腰を動かしてくる。上から見下ろす千夏さんの目が潤んでて、揺れる胸から目が離せなかった。
「ん……あっ……」
自分のペースで動いてるからか、さっきより声が甘い。
「千夏……」
「っ……呼び捨て……いい……」
腰を掴んで下から突き上げると、千夏さんが前に倒れ込んできた。顔が目の前にある。
「キス……して……」
唇を重ねながら、奥まで突く。千夏さんの声が口の中で震える。
一回目よりもずっと切実で、お互いにしがみつくみたいだった。さっきまでの罪悪感が嘘みたいに、今はただこの人を離したくないって思ってた。
「だめ……もう……っ」
「俺も……」
「一緒に……」
千夏さんの中がぎゅうっと締まって、俺も同時に達した。二回目なのに、さっきより強かった。
「んんっ……!」
千夏さんが俺の胸に顔を埋めて、小さく震えてた。
腕を回して、きつく抱きしめた。
しばらくそのまま動かなかった。
窓の外がうっすら明るくなり始めてた。
「……4時半だ」
「ん……」
「千夏」
「なに……」
「兄貴のこと……離婚届、出しなよ。俺が証人欄書くから」
千夏さんが顔を上げて、俺を見た。
「……それって」
「千夏が望むなら、ここにいていい。兄貴の嫁としてじゃなくて」
我ながらキザなこと言ったなと思ったけど、本心だった。
千夏さんが、また泣いた。
でも今度は、さっきまでの泣き方と全然違った。
「……ずるい。そういうこと、こんなタイミングで言うの」
「このタイミングじゃないと一生言えないんで」
千夏さんが笑った。泣きながら。
「じゃあ……お願いしてもいい? 証人欄」
「もちろん」
その朝、千夏さんが作った朝飯は、いつもの味噌汁と焼き鮭だった。
でも、向かい合って座る位置が、ダイニングテーブルの対角から、隣同士に変わってた。
それだけのことなのに、味噌汁がいつもの3倍美味かった。
ちなみにあの後、千夏さんは3ヶ月かけて協議離婚を成立させた。兄貴とは弁護士経由でしか連絡が取れなかったけど、向こうもさすがに観念したのか離婚届に判を押した。
今、千夏さんは旧姓に戻って、あの1LDKで一緒に住んでる。
家賃は折半。朝飯は千夏さん担当。夕飯は交代制。
……報告するようなことじゃないのかもしれないけど、来月、一緒に役所に行く予定です。
兄貴、本当にごめん。でも、ごめんって言いながら後悔はしてない。
これが俺の話です。