俺、葉山一輝、24歳。新卒2年目の銀行員。 都内の三階建てシェアハウスに住み始めて、まだ一ヶ月も経っていない。
引っ越しの決め手は家賃と立地。それと、内見のとき案内してくれた管理人さんがやけに優しかったこと。……まあ、最後のはあとから自覚した理由だ。
入居して三日目の夜、俺はやらかした。 生まれて初めてカレーを一から作ろうとして、煮込んでいる間にスマホをいじり始めたのが運の尽き。 気づいたら共用キッチンが煙だらけだった。
ピーーーッ、ピーーーッ。
火災報知器が甲高く鳴り響く。 俺は鍋を持ったまま固まった。鍋底は真っ黒。中身は炭。
(終わった。入居三日でボヤ騒ぎとか、追い出されるやつだ)
廊下を駆けてくる足音。共用キッチンのドアが勢いよく開いた。
「葉山くん、大丈夫っ?」
小野寺琴音さん、28歳。このシェアハウスの住み込み管理人。 パジャマの上にカーディガンを羽織って、髪も少し乱れている。それでも息を呑むほど綺麗だった。
琴音さんは状況を一瞬で把握すると、換気扇を全開にして、窓を開けて、報知器の警報を止めた。 手際が良すぎて、俺は突っ立っているだけだった。
「……はい、深呼吸して。火は出てないから大丈夫」
「すみません……本当にすみません……」
「謝らなくていいよ。怪我は?」
「ないです」
「ならよかった」
琴音さんが、ふっと笑った。低めの、落ち着いた声。 怒られると思っていたのに、その笑い方があまりにも柔らかくて、俺は逆に泣きそうになった。
「でもこの鍋は、もう成仏かな」
「……はい」
「葉山くん、料理は?」
「ゼロです。今日が人生初の自炊で、この有様で」
「なるほどね」
琴音さんは炭になった鍋を覗き込んで、それから俺をまっすぐ見た。
「じゃあ決めた。葉山くん、しばらく私が預かる」
「……預かる?」
「日曜の朝に料理教室やってるの。希望者だけだけど。あなたは強制参加ね」
「教室……」
「火を出されたら私の管理責任だから。包丁の握り方から叩き込みます」
有無を言わさぬ口調だった。 でも目は笑っていた。子供を叱るときの、お姉さんの目。
「……よろしくお願いします」
「はい、よろしい」
こうして俺は、人生で一番美人な先生のもとで、料理を習うことになった。
最初の日曜の朝、共用キッチンには俺を含めて五人いた。 俺、それから二階の大学院生、三階のフリーランス、一階の看護師さん、そしてもう一人。 みんな琴音さんの料理教室の常連らしかった。
「はい、おはよう。今日は基本の和食ね。だしの取り方から」
エプロン姿の琴音さんが、こんぶと鰹節を並べる。 髪をひとつにまとめて、袖をまくって。 それだけのことなのに、絵になりすぎていて目が離せなかった。
(いや、料理に集中しろ)
俺は自分に言い聞かせて、おそるおそる包丁を握った。人参の千切り。簡単そうに見えて、全然できない。
「葉山くん、力入りすぎ。包丁は引いて切るの」
「引いて……?」
「そう。押すんじゃなくて、手前に引く。リズムで」
トントントン、と琴音さんが見本を見せる。人参が均一な細さに。俺のは太かったり細かったり、まるで別の野菜だった。
「葉山くん、めっちゃ不器用だね」
一階の看護師さんが笑う。
「自覚あります……」
「最初はみんなそう。私だってカフェ入りたての頃は指切ってばっかりだったよ」
「えっ、琴音さんでも?」
「そりゃそうでしょ。誰だって最初は下手なの」
その一言で、少しだけ肩の力が抜けた。 琴音さんはそういう人だった。できないことを責めずに、隣で待ってくれる。
その日の和食は正直ぐちゃぐちゃだったけど、自分で作っただし巻き卵は、形は崩れていてもちゃんと甘くて美味しかった。
「ほら、できるじゃん。火を出さなきゃ何でもできる」
「火のくだりは一生言われるんですね」
「当然。私の中の伝説だから」
くすくす笑う琴音さんを見て、俺は来週もここに来たいと思った。 それは料理のためだったか、それとも——その時はまだ、よくわからなかった。
週が経つごとに、参加者は減っていった。 院生は修論、フリーランスは地方案件、看護師さんは夜勤シフトの変更。 六月の半ば、共用キッチンに残っていたのは——俺一人だった。
「……俺だけになっちゃいましたね」
「みんな忙しいからね。葉山くんは続いてて偉い」
「先生がいいからです」
「お、言うようになったね」
琴音さんが、からかうように俺の脇腹を肘でつついた。 触れた瞬間、心臓が大きく跳ねた。
その日のメニューは、肉じゃがだった。 じゃがいもの面取りを教わっている時、琴音さんが俺の後ろに立った。
「葉山くん、猫の手。猫の手、できてないよ?」
「ね、猫の手?」
「指、丸めて。こう」
琴音さんが後ろから俺の左手に自分の手を重ねた。 背中に、彼女の体温がぴったりと触れる。 肩越しに、シャンプーの甘い匂いが鼻先をくすぐった。
(——近い。近すぎる)
「指の第一関節を立てて、爪を引っ込めるの。そうすれば包丁が当たっても切れない」
「は、はい……」
「で、右手はこう。引いて切る。覚えてる?」
琴音さんの右手が俺の右手に重なって、一緒に包丁を動かす。 トン、トン、と。 じゃがいもが切れていく。でも俺の頭はじゃがいもどころじゃなかった。
心臓の音が、彼女に聞こえているんじゃないかと思った。 それくらい、ばくばくと鳴っていた。
「ね、できるでしょ?」
「……はい」
「葉山くん、顔赤くない?」
「き、キッチン暑いんで」
「ふふ、そういうことにしといてあげる」
琴音さんがすっと離れた。背中に残った温もりだけが、しばらく消えなかった。
肉じゃがが煮えるのを待つ間、琴音さんがコーヒーを淹れてくれた。 教室のあと、二人でカウンターに並んでまかないの一杯を飲むのが、いつの間にか習慣になっていた。
「私ね、いつか自分の店を持つのが夢なの」
「お店?」
「うん。小さなカフェ。ランチもやって、夜は一杯飲めるみたいな」
琴音さんはマグカップを両手で包んで、少し遠い目をした。
「元々カフェで働いてたんだけど、お店が閉まっちゃって。それで、いつか自分でって」
「いいですね。琴音さんの料理、めちゃくちゃ美味しいし」
「……ほんと?」
そこで、彼女の声のトーンが変わった。落ち着いたお姉さんじゃなくて、急に年下みたいに不安げに。
「夢の話、人にすると馬鹿にされそうで、あんまり言わないんだけどね」
「馬鹿になんかしませんよ」
「……うん。ありがと」
肉じゃがが、いい匂いを漂わせ始めた。 この人の夢を応援したい、料理だけじゃなくてもっと役に立ちたい——それで、つい余計な一言を口にした。
「あの、俺、銀行員なんで。開業資金とか、融資のこと、相談乗れますよ」
「えっ、ほんとに?」
「ほんとです。事業計画書とか、作るの手伝えます」
「葉山くん……」
琴音さんの目が、さっきの不安げな顔が嘘みたいに、ぱっと輝いた。
「すごく嬉しい。お願いしてもいい?」
「もちろんです」
その夜から、俺たちの関係に新しい時間が加わった。深夜のキッチンで、二人で事業計画書を作る日々だ。 平日の夜、仕事から帰ると共用キッチンの灯りがついている。 琴音さんが新メニューの試作をしながら、俺を待っているのだ。
「おかえり、葉山くん。お疲れ様」
「ただいま帰りました。今日も試作?」
「うん。あと、この前の数字、見てくれる?」
ノートパソコンを広げて、二人で数字とにらめっこする。 初期投資、月の家賃、原価率、損益分岐点。 琴音さんは料理の天才だけど、数字の話になると途端に苦手そうな顔をした。
「げんかりつ……って、なんだっけ」
「材料費を売値で割ったやつです。カフェなら三割が目安ですね」
「葉山くん、ほんと頼りになる」
「これくらいなら朝飯前です」
「朝飯は私が作ってあげる」
「……それは役得ですね」
深夜のキッチンは、二人だけの秘密基地みたいだった。 試作のスープを味見して、感想を言って、計画書の数字を埋めていく。その時間が、どんどん特別になっていった。
ある日曜の朝、料理を教わっていると、修論が一段落した二階の大学院生が久しぶりに顔を出した。
「あれ、管理人さん、なんか今日のメニュー気合い入ってない?」
「そう?いつも通りだけど」
「いや、明らかに。葉山くんの曜日だけ気合い入ってるよね、最近」
「……っ」
琴音さんが、わかりやすく固まった。 そして耳まで赤くなった。
「あ、図星だ」
「ち、違うから。葉山くんは火を出した前科があるから、特別指導なだけ」
「その設定まだ生きてるんですか」
「生きてます」
大学院生がにやにやと去って、キッチンに二人きりになった。
(気合い入ってる、俺の曜日だけ……?)
ちらりと琴音さんを見ると、向こうも俺を見ていて、二人して目を逸らした。 意識し始めると、もう止まらなかった。 後ろから手を直されるたび、コーヒーを淹れてもらうたび、俺の心臓は限界で。 たぶん琴音さんの方も、同じだったんだと思う。
七月に入った、ある深夜。 俺がキッチンに行くと、琴音さんが鍋の前で真剣な顔をしていた。
「葉山くん、ちょうどよかった。新メニュー、試食係に任命します」
「光栄です。何ですか?」
「店の看板にしたいスープ。一週間ずっと試作してて、やっと納得いくのができたかもしれない」
小皿に、とろみのあるスープがよそわれた。 湯気が立っている。優しい色をしていた。
俺は一口、口に運んだ。
——美味しかった。 ただ美味しいんじゃなくて、心がほどけるような味だった。 彼女がどれだけこのスープに時間をかけたか、味から伝わってくるみたいだった。
「……美味しい。すごく、美味しいです」
その瞬間、琴音さんの目に、みるみる涙が盛り上がった。
「……ほんと?」
「ほんとです。これ、絶対看板になりますよ」
「よかった……」
ぽろっと、一粒こぼれた。 いつも余裕のあるお姉さんが、子供みたいに泣いていた。
「ごめん、なんか……葉山くんが美味しいって言ってくれると、すごく安心しちゃって」
「琴音さん」
「ずっと不安だったの。私の料理で、ほんとに店なんてやっていけるのかなって」
「やっていけます。俺が保証します」
俺は思わず、彼女の頬を伝う涙を指で拭った。 触れた瞬間、琴音さんがびくっとして、でも逃げなかった。
至近距離で、見つめ合う。 深夜のキッチン。換気扇の低い音だけが響いている。 彼女の濡れた瞳が、揺れていた。
「……葉山くん」
「はい」
「年下だからって、ずっと遠慮してたんだけどな」
「……え?」
次の言葉を待つ前に、琴音さんが背伸びをして、俺の唇に自分の唇を重ねた。
ちゅ。
不意打ちだった。 柔らかくて、少しだけスープの甘い味がした。
琴音さんが顔を離して、自分でも驚いたみたいに口を押さえた。
「……ごめん。私、なにを」
「琴音さん」
「年上が年下に手を出すとか、よくないよね。忘れて——」
「忘れません」
今度は俺から、彼女の頬に手を添えてキスをした。
ちゅっ……んっ……
さっきより深く。 琴音さんの身体から、ふっと力が抜けた。 俺のシャツの胸元を、きゅっと掴んでくる。
ちゅ……ちゅぷ……
舌で唇をなぞると、彼女の口がそっと開いた。 れろ……ちゅるっ……
「んっ……♡」
おずおずと、琴音さんの舌が絡んでくる。 いつもお姉さんな彼女が、俺の腕の中で、小さく震えていた。
「琴音さん、好きです。ずっと前から」
「……私も。葉山くんのこと、ずっと」
ちゅるるっ……ちゅぷっ……
深夜のキッチンで、何度も唇を重ねた。 コーヒーの匂いと、スープの匂いと、彼女の匂い。
「……ここじゃ、誰か来ちゃうかも」
「……」
「私の部屋、来る?」
俺は黙って頷いた。 琴音さんが俺の手を取って、管理人室へと歩き出す。 その手が、少しだけ震えていた。
管理人室は、共用部とは別の奥まった一室だった。入るのは初めてだ。 小さな本棚に料理本がぎっしり並んで、窓辺にハーブの鉢。彼女らしい、温かい部屋だった。
ドアを閉めた瞬間、俺は琴音さんを抱き寄せた。
「あっ……♡」
もう一度キスをして、ゆっくりベッドに座らせる。 間接照明に照らされた琴音さんは、いつもより無防備で、色っぽかった。
「琴音さん、めちゃくちゃ綺麗です」
「……年上をからかわないの」
「本気ですよ」
「……ばか♡」
エプロンを外して、ルームウェアのボタンに手をかける。 一つ、二つと外していくと、白い肌と、レースの下着が覗いた。
「あんまり……見ないで♡ 恥ずかしい」
「無理です。綺麗すぎて」
ルームウェアを脱がせると、彼女の身体が露わになった。 柔らかそうな胸、くびれた腰。 いつもエプロンの下に隠れていた身体が、こんなに女性らしいなんて。
ブラのホックを外す。ぷつん。 形のいい胸がこぼれ落ちた。先端が、すでにつんと尖っている。
「やっ……見つめないでってば♡」
「綺麗だから無理です」
「もう……♡」
そっと両手で胸を包む。 ふにっ……
「んっ……♡」
手のひらに、柔らかい弾力が伝わる。 ゆっくり揉みながら、先端を指でつまんだ。 こりっ……こりこりっ……
「ひゃっ……♡♡ そこっ……♡」
びくんと、琴音さんの身体が跳ねた。 左の乳首を指で転がしながら、右に口を寄せる。 ちゅっ……れろ……ちゅぱっ……
「んあっ♡♡ だめっ……♡ 声、出ちゃう……♡♡」
琴音さんが手の甲で口を押さえた。 いつもの低い落ち着いた声が、甘く裏返っていく。
左右交互に吸いながら、空いた手でもう片方を揉みしだく。 じゅるっ……ちゅぱっ……
「はぁっ♡ あっ♡ 葉山くんっ……♡♡」
「一輝、でいいです」
「……一輝くん♡」
名前を呼ばれただけで、全身に電気が走った。 俺の手が、彼女のショーツの腰のラインに触れる。
「下も、いいですか」
「……うん♡」
ショーツに指をかけて、ゆっくり引き下ろす。 内ももが、すでにじっとりと濡れていた。
「もう濡れてますね」
「言わないでよ……♡ 恥ずかしいんだから……♡」
膝をそっと開かせる。 薄い茂みの下で、花弁が蜜にてらてらと光っていた。
「あんまり……見ないで♡」
「綺麗ですよ、すごく」
花弁にそっと指を這わせる。くちゅ……
「ひあっ♡♡」
すじに沿って上下になぞると、蜜があふれてくる。 くちゅ……くちゅ……
「あっ♡ んっ♡ そこ……♡♡」
小さな突起を探り当てて、指先で転がした。 くりっ……くりくりっ……
「んんっ♡♡♡ それっ……♡♡ だめっ……♡」
腰がびくびくと跳ねる。 クリを刺激しながら、中指をゆっくり沈めていく。 ずぷっ……
「んああっ♡♡♡」
中は熱くて、ぬるぬるで、きゅうっと指を締め付けてきた。 ぐちゅ……ぐちゅぐちゅ……
「あっ♡ 指っ♡ 入ってる……♡♡」
指を曲げて、上の壁のざらついた場所をこする。 ぐりぐりっ……
「ひぃっ♡♡♡ そこっ♡♡ すごいっ……♡♡♡」
Gスポットをこすりながら、親指でクリも同時に弄る。
「あっ♡♡ 両方はっ♡♡♡ おかしくなるっ……♡♡」
琴音さんの身体が、がくがくと震え始めた。 お腹がぴくぴくと痙攣する。
「いくっ♡♡♡ 一輝くんっ♡♡♡ いっちゃうっ……♡♡♡♡」
びくんっ♡♡♡♡
きゅうぅぅっと指を締め付け、蜜がじゅわっと溢れて俺の手を濡らした。 琴音さんが、力が抜けたようにベッドに沈み込む。
「はぁ……♡ はぁ……♡♡」
「気持ちよかったですか」
「……うん♡♡ すごかった……♡」
息を整えた琴音さんが、ゆっくり身体を起こした。 そして、潤んだ瞳で俺を見上げる。
「一輝くんも……気持ちよくなって♡」
彼女の細い指が、俺のベルトに伸びた。 パンツを下ろすと、限界まで張り詰めたものが飛び出した。
「わっ……♡♡ 大きい……♡」
細い指が、根元からそっと握る。きゅっ。
「すごく硬い……♡」
「琴音さんがエロすぎるんで」
「もう……♡」
ゆっくり上下に手を動かす。しゅっ……しゅっ…… 琴音さんが顔を近づけて、先端にちゅっとキスを落とした。
「ぴくって動いた♡ 可愛い」
舌を出して、ぺろぺろと舐め始める。 れろ……ちゅるっ…… カリの部分を重点的に、裏筋を下から上へ。
「……やばい、気持ちいいです」
口を大きく開けて、ぱくっと咥え込んだ。 ずぷっ……ちゅぱっ……じゅるっ……
「んっ♡ んむっ♡ んぷっ……♡」
頭をゆっくり上下に動かす。 まとめていた髪がほどけて、さらさらと揺れた。 いつも料理を教えてくれる口が、俺のものを夢中で咥えている。 その光景だけで、頭が焼き切れそうだった。
「琴音さん、待って。このままだと出ちゃう」
口を離した琴音さんが、唾液の糸を引いて、上目遣いで見上げる。
「……一輝くんが欲しい♡」
「俺もです」
琴音さんをベッドに横たえて、脚の間に身を置いた。 先端が、入り口にぬるりと触れる。 たっぷりの蜜で、もうぬるぬるだった。
「ゴム、持ってきます?」
「……今日は大丈夫な日だから♡ このまま……来て♡」
(年下に、こんなに乱れちゃうなんて)
俺はゆっくり、腰を進めた。
ずぷっ……
「ぁあああっ♡♡♡♡」
熱い。 きゅうぅっと、彼女の中が締め付けてくる。
「琴音さん、中、すごい……」
「おっきい……♡♡ 奥まで来てる……♡♡♡」
ずず……ずずずっ…… ゆっくり、最奥まで押し込んでいく。
「んんっ♡♡♡ いっぱい……♡♡♡ 届いてる……♡♡」
隙間なく、彼女に包み込まれた。 しばらくそのまま、二人で呼吸を整える。
「動きますね」
「うん……♡ ゆっくり……♡」
ずちゅっ♡ ずちゅっ♡♡
「あっ♡♡ あっ♡♡ んっ♡♡♡」
ぱんっ♡ ぱんっ♡ ぱんぱんっ♡♡ リズムを作って、腰を打ちつける。
「一輝くんっ♡♡ 気持ちいいっ……♡♡♡」
「琴音さんの中も、めちゃくちゃ気持ちいいです」
ぱんぱんぱんっ♡♡♡ だんだん速くなっていく。 ぐちゅっ♡ ぬちゅっ♡ ぱんっ♡♡
「あんっ♡♡ 奥っ♡♡ 奥に当たるっ……♡♡♡」
普段お姉さんな琴音さんが、年上の余裕をどんどん失っていく。 眉を寄せて、口を半開きにして、俺にしがみついてくる。
「やだっ……♡♡ 私、こんな……♡♡♡」
「可愛いです、琴音さん」
「言わないでっ♡♡♡ 恥ずかしいのに止まんないっ……♡♡♡♡」
琴音さんの脚が、俺の腰に巻きついた。 もっと奥へ、と求めるように。
「もっとっ♡♡ もっと強くしてっ……♡♡♡」
ぱんっぱんっぱんっぱんっ♡♡♡♡ ベッドがぎしぎしと軋む。 深夜の管理人室に、肌のぶつかる音と彼女の甘い声が満ちていく。
「声っ♡♡♡ 出ちゃうっ……♡♡ 外に聞こえちゃうっ……♡♡♡♡」
「我慢しなくていいです」
「やだっ♡♡♡ でも止まらないっ……♡♡♡♡」
ぱんぱんぱんぱんっ♡♡♡♡♡
「いくっ♡♡♡♡ もうっ♡♡♡♡ いっちゃうっ……♡♡♡♡♡」
「俺も……っ、琴音さん、中に出していいですか」
「出してっ♡♡♡♡ 中にっ♡♡♡♡ 全部っ……♡♡♡♡♡」
ずんっずんっずんっ♡♡♡
「イクッ♡♡♡♡♡」
「出ます……っ!」
びゅるっ♡♡ びゅるるっ♡♡♡ どくどくっ♡♡♡♡
「んんんっ♡♡♡♡♡♡」
彼女の最奥に、熱いものがどくどくと注ぎ込まれる。 琴音さんの身体がびくびくと痙攣して、きゅうぅぅっと締め付けてきた。
「はぁ……♡♡ あったかい……♡♡♡♡」
虚ろな目で、琴音さんが幸せそうに微笑む。 俺はそっと、その唇にキスを落とした。
ちゅっ♡
「琴音さん、最高でした」
「……私も♡♡ すごく、よかった……♡♡♡」
繋がったまま、しばらくキスを交わす。 だけど俺の熱は、まだ収まっていなかった。 彼女の中で、もう一度硬くなっていく。
「……え♡ まだ、元気なの?♡」
「琴音さんが可愛すぎるんで」
「……もう♡♡♡」
琴音さんが、いたずらっぽく笑った。 さっきまでの乱れた表情から、少しお姉さんの余裕が戻ってくる。
「じゃあ……今度は私が動いてあげる♡」
俺を押し返して、繋がったまま馬乗りになる。 ずるっ……ずぷっ♡♡
「んっ♡♡♡ この体勢……奥まで入る……♡♡♡♡」
背筋を伸ばして、琴音さんが俺を見下ろした。 ほどけた髪が背中に流れて、間接照明にシルエットが浮かび上がる。
(綺麗すぎる……)
腰を、ゆっくり上下に動かし始める。 ずちゅっ♡♡ ずちゅっ♡♡
「あっ♡♡ 自分で動くと……♡♡ すごいっ……♡♡♡」
動きに合わせて、胸がたゆんたゆんと揺れた。 俺は手を伸ばして、揺れる胸を下から掴む。 もにゅっ♡♡
「ひゃっ♡♡♡ 揉みながらっ♡♡♡ ずるいっ……♡♡♡♡」
琴音さんの腰の動きが、だんだん激しくなる。 気持ちいいポイントを探すように、ぐりぐりと腰を回した。
「あっ♡♡♡ ここっ♡♡♡ ここ当たるっ……♡♡♡♡」
見つけたらしい。 そこを擦りつけるように、前後に腰を振る。 ずちゅっずちゅっずちゅっ♡♡♡♡
「気持ちいいっ♡♡♡♡ 一輝くんのっ♡♡♡♡ 奥に届くのっ……♡♡♡♡♡」
俺の胸に両手をついて、激しく腰を打ちつける。 ぱんっぱんっぱんっぱんっ♡♡♡♡♡
「また来るっ♡♡♡♡ いっちゃうっ……♡♡♡♡♡」
「俺ももう……っ」
「一緒にっ♡♡♡♡♡ 一緒にいこっ……♡♡♡♡♡♡」
ぱんぱんぱんぱんぱんっ♡♡♡♡♡♡
「いくっ♡♡♡♡♡♡ いくいくいくっ……♡♡♡♡♡♡♡」
「琴音さん……っ、また中に出します……!」
俺は彼女の腰をがっしり掴んで、下から深く突き上げた。 ずんっ♡♡♡♡
びゅるるっ♡♡♡♡ どくどくどくっ♡♡♡♡♡♡
「んんんんっ♡♡♡♡♡♡♡♡」
二回目を、さっきよりもっと奥に注ぎ込む。 琴音さんがぶるぶる震えて、がくんと俺の上に倒れ込んできた。
「はぁ……♡♡♡ すごかった……♡♡♡♡♡」
汗ばんだ肌が触れ合って、心臓の鼓動が伝わってくる。 琴音さんが、俺の胸に顔を埋めた。
「一輝くん……♡」
「はい」
「……幸せ♡♡」
ぎゅっと抱きついてくる琴音さんを、俺も強く抱きしめ返した。 しばらく、二人とも動けなかった。
気がつくと、窓の外がうっすら白み始めていた。 朝の五時。俺たちは毛布にくるまって、ずっと寄り添っていた。
「……寝ちゃってたね、私たち」
「みたいですね」
「ねえ、一輝くん。年下の人を好きになるとか、ないと思ってたんだけどな」
琴音さんが、照れくさそうに笑った。 昨夜の大胆さはどこへやら、耳が真っ赤になっている。
「迷惑でしたか」
「……まさか。すごく、嬉しい♡」
ちゅ、と軽く唇を重ねて、俺たちはもう一度笑い合った。
それから三週間後。琴音さんの開業物件の、契約日が来た。 俺が事業計画書を手伝った甲斐あって融資も通り、日当たりのいい角地のテナントが、彼女の理想の店になる。
契約を終えて、まだ何もないがらんとした店内に、二人で立つ。
「……ここに、私のお店ができるんだ」
「おめでとうございます、琴音さん」
「全部、一輝くんのおかげ」
「料理を作るのは琴音さんですよ。俺は数字の手伝いをしただけです」
「ううん。あなたがいなかったら、私、一歩も踏み出せなかった」
琴音さんが、まっすぐ俺を見た。 あの日の、不安げな顔じゃない。 夢を掴んだ、強い目だった。
「ねえ、一輝くん。お願いがあるんだけど」
「なんですか」
「店の常連第一号と、彼氏。両方やってくれる?♡」
一瞬、言葉の意味が遅れて飲み込めた。 そして、じわじわと胸に広がっていく。
「……それ、付き合おうってことですか」
「うん。年上からこんなこと言うの、勇気いるんだから。早く返事して♡」
「もちろんです。両方、喜んで」
琴音さんの目が、ぱっと輝いて、それから潤んだ。
「……っ♡♡ やった♡♡」
がらんとした店内で、彼女が俺に飛びついてきた。 俺はしっかり受け止めて、抱きしめる。
「ここ、オープンしたらね、葉山くんの席、いつも空けておくから♡」
「じゃあ毎日通います」
「毎日?彼氏割は……特別にキスで払ってもらおうかな♡」
「破格ですね」
「年上の彼女は気前がいいの♡」
くすくすと笑う琴音さんが、可愛くて仕方なかった。
「そういえば、看板スープに名前つけたいんだけど」
琴音さんが、ふと思いついたように言った。
「あの、俺が泣きそうになったやつですね」
「あら、ちゃんと泣いてたって私の記憶では」
「捏造です」
「ふふ♡ 名前は、二人で考えよっか♡」
火災報知器を鳴らしかけた、あの夜。炭になった鍋を覗き込んだ琴音さんの、優しい笑顔。 包丁の握り方も知らなかった俺が、気づけば、世界で一番美味しい料理を作る人の彼氏になっていた。
「ねえ、一輝くん。今夜、お祝いに何か作るね。リクエストある?♡」
「じゃあ……カレー、教えてください」
「カレー?」
「あの日、焦がしたやつのリベンジです。今度はちゃんと、火、見てるんで」
「ふふっ♡ いいよ。二人で作ろう♡」
夕暮れの店内で、俺たちは並んで未来の話をした。 日曜の料理教室は、これからも続く。 ただし、生徒は俺一人で、先生はもう——俺の彼女だ。
― 終 ―