俺、二宮健、26歳。メーカーの経理部。 仕事は固定の日勤。判子と電卓とExcelの毎日だ。 去年の暮れ、家賃を抑えるために2LDKのルームシェアを選んだ。一人暮らしより、広い部屋を二人で割るほうが断然安い。堅実派の俺らしい選択だった。
不動産会社のルームシェアマッチングで、相手はすぐに決まった。 白石七海さん、27歳。大学病院のICUで働く看護師。
初日、契約書を交わしたあと、二人でリビングのテーブルに座ってルールを決めた。
「私、夜勤が多いの。生活時間、たぶん健さんと真逆になる」
「了解です。じゃあ音とか、気をつけたほうがいいですね」 「うん。あと家事は折半。冷蔵庫は左が私、右が健さんね」 「細かい」 「無理はしない主義なの。最初にルール決めとくほうが、お互い楽でしょ」
七海さんは黒髪を後ろでひとつに結んでいた。 化粧っ気はないのに、きりっとした目元と通った鼻筋が妙に整っている。テーブルに広げたメモは項目ごとに箇条書きで、字までまっすぐだった。
(なんか、すごい人と住むことになったな)
それが、白石七海という同居人に対する俺の第一印象だった。 最後に、七海さんが付箋の束をテーブルにぽんと置いた。
「連絡はこれで。生活時間ずれるから、LINEより冷蔵庫に貼るほうが確実」
「アナログですね」 「夜勤明けの私にスマホ見ろって言われても無理。冷蔵庫なら絶対見るから」 「……なるほど」
そうして、俺たちの堅実なルームシェアが始まった。
最初の1ヶ月は、本当に顔を合わせなかった。 七海さんが夜勤に出るのは俺が帰る前。夜勤明けで帰るのは俺が出社したあと。たまの日勤も、すれ違いざまに「おはようございます」「お疲れさまです」と言うくらい。
会話の代わりは、冷蔵庫の付箋だった。
『鶏ハム作りすぎたので右側にも置いときます。食べて。──七海』 『いただきました。めっちゃ美味かったです。お礼に味噌汁の素を補充しときました。──健』 『健さんの味噌汁の素、減ってたから足しといた。おあいこ。──七海』
冷蔵庫の扉が、だんだん付箋で埋まっていった。顔は見ないのに、相手の生活がなんとなくわかる。 作り置きの交換も習慣になった。七海さんの料理は無駄がなくて、栄養バランスがやたら整っている。さすが医療職、と思った。俺は休日に多めに作ったカレーやひじきの煮物を右側に置いた。
(顔を見ないルームメイトって、こんなに気楽なんだな)
そう思っていた。1月の半ばまでは。
その日、俺は朝から体がだるかった。 午後になって悪寒が止まらなくなり、定時で早退した。玄関で靴を脱ぐのもやっとで、体温計を脇に挟んだら39度を超えていた。
(これ、インフルだ……)
会社のフロアで何人か倒れていた。完全にもらった。 布団に潜り込んだものの、関節が痛くて眠れない。喉はからから。水を取りにキッチンへ行こうとして、廊下で膝から崩れた。
そのとき、玄関のドアが開いた。 夜勤明けの七海さんだった。
「健さん!? ちょっと、どうしたの」
俺が廊下にうずくまっているのを見て、七海さんはバッグを放り出して駆け寄ってきた。 冷たい手のひらが俺の額に当てられる。
「すごい熱。何度あった?」
「……39度、ちょっと」 「インフル流行ってるからね。検査キット持ってる。あと、立てる? 肩貸すから」
そこからの七海さんは、別人のようだった。 いや、別人じゃない。これが本職の白石七海なんだ。 俺をベッドまで運んで、手際よく寝かせる。経口補水液を枕元に並べ、解熱剤を飲ませ、額に冷却シートを貼る。すべての動作に迷いがなかった。
「水分はこまめにね。少しずつでいいから飲んで。あと、これ口に咥えて」
言われるがまま咥えると、七海さんは俺の脈を取りながらじっと時計を見ていた。
(手、すげえ慣れてる)
朦朧とする頭で、それだけ思った。
「38度8分。さっきよりちょっと下がった。今夜が山だと思う」
「……七海さん、夜勤明けですよね。寝ないと」 「いいの。私、こういうの慣れてるから。無理はしない主義だけど、これは無理のうちに入らない」
七海さんは結んだ髪をほどいて、ゴムを手首にかけた。ほどけた黒髪が肩に落ちて、いつものきりっとした印象が少しだけ柔らかくなる。
その夜、俺が目を覚ますたびに、七海さんはそばにいた。 汗で濡れたタオルを替え、新しい補水液を開け、おかゆをスプーンで運んでくれた。
「……すみません、こんな」
「謝らないの。具合悪いときは甘えるのが正解。患者さんにもいつも言ってる」 「患者扱いだ」 「ふふ。今は患者さんでしょ」
熱で潤んだ視界の中で、七海さんが笑った。 普段のサバサバした顔とは違う、ふっと力の抜けた笑い方だった。
(この人、こんなふうに笑うんだ)
熱のせいか、その笑顔が妙に胸に残った。
二日後、熱は引いた。目が覚めると、枕元に付箋が貼ってあった。
『日勤行ってきます。おかゆ冷蔵庫の右側。レンジで温めて。水分忘れずに。──七海』
顔を見ないルームメイト、なんて思っていた相手に、命綱みたいに看病された二日間。胸の奥が、じんわり温かかった。
完全に回復した週末、俺は七海さんを食事に誘った。
「この前のお礼、させてください。どこか食べに行きませんか」
「お礼なんていいのに」 「俺の気が済まないんで。経理なんで、貸し借りはきっちりするタイプです」 「……ふっ。経理らしい理由」
七海さんは少し考えて、頷いた。
「了解。じゃあ、お言葉に甘えて」
土曜の夜、二人で家を出た。予約したのは、家から二駅離れた小さなビストロ。 七海さんは、家で見るスウェット姿とは違って、紺のワンピースを着ていた。髪も下ろしている。改めて見ると、本当に綺麗な人だった。
(こうして向かい合うと、同居人っていうより……)
その先は、自分でも言葉にできなかった。
ワインで乾杯して、料理を待つ間、初めてちゃんと話した。 七海さんがICUで働いていること。命の最前線の話。淡々と語るのに、一つひとつが重かった。
「私、五人姉弟の長女でね。昔から誰かの世話を焼くのが普通だったの。だから看護師、向いてたんだと思う」
「だからあんなに手際よかったんだ」 「健さんの看病? あれくらい普通。むしろ、楽しかったかも」 「楽しい?」 「……うん。家に帰ってきて、看る相手がいるっていうの。ちょっと、ほっとした」
七海さんが、ワイングラスを見つめながら言った。サバサバした口調の中に、ふっと素の何かが混ざった気がした。
「俺、七海さんのこと、ただの几帳面な人だと思ってました」
「失礼ね」 「でも、違った。すごく優しい人だ」 「……からかってる?」 「本気です。経理は嘘の数字書かないんで」
七海さんが、ぷっと吹き出した。
「なにそれ。健さん、意外と口うまいんだ」
「初めて言われました」
その夜の七海さんは、家で見るより、ずっとよく笑った。 俺はその笑顔をもっと見ていたいと、はっきり思い始めていた。
帰り道、駅前を歩きながら、なんとなく流れで話が決まった。
「私の夜勤明けって、朝の8時とか9時なんだけど。お腹空いてても、家に帰って一人で食べる気しなくて」
「じゃあ、たまに俺が合わせますよ。喫茶店のモーニングとか」 「健さん、仕事は?」 「夜勤明けの朝なら、俺の出社前に間に合う。早起きは得意です」
それが習慣になるまで、時間はかからなかった。
七海さんの夜勤明けに合わせて、俺は少し早く起きる。家の近くの、昔ながらの喫茶店。厚切りトーストにゆで卵、サラダ、濃いコーヒー。
「ここのトースト、バターの染み方が完璧なのよね」
「七海さん、評価が看護記録みたいに具体的」 「職業病。ふふ」
夜勤明けの七海さんは、いつもより少し疲れていて、少しだけ口数が多かった。 昨夜の病棟の話。難しい患者さんのこと。仮眠も取れなかった夜のこと。俺はただ聞いていた。経理の俺には何もできないけれど、聞くことはできた。
「健さんに話すと、なんか、肩の荷が下りる」
「役に立ててるなら良かった」 「うん。すごく」
トーストをかじる七海さんの横顔を、俺はこっそり見ていた。朝日が、ほどいた黒髪を透かしていた。 このモーニングの時間が、いつのまにか俺の一週間で一番好きな時間になっていた。
そして、2月の終わり。 ある朝、いつもより早く目が覚めた俺は、リビングの異変に気づいた。
明かりはついていない。カーテンの隙間から、薄い朝の光だけが入っている。 ソファに、七海さんが座っていた。夜勤明けの制服のまま、髪も結んだまま、膝を抱えて、肩を震わせていた。
「七海さん……?」
声をかけると、七海さんがびくっと顔を上げた。目が真っ赤で、頬に涙の跡が光っていた。
「……ごめん。起こした?」
「いや。それより、どうしたんですか」
七海さんは唇を噛んで、しばらく黙っていた。それから、ぽつりと言った。
「……受け持ちの患者さん、亡くなったの。今夜」
声が震えていた。いつものサバサバした七海さんじゃなかった。
「三ヶ月、ずっと看てた人で。家族みたいな気持ちになってて。最期まで、ちゃんと、看たんだけど……」
そこで言葉が途切れた。 七海さんが、両手で顔を覆った。
「だめだね。看護師なのに。慣れなきゃいけないのに。全然、慣れない……」
俺は、何も言えなかった。 気の利いた言葉なんて、経理の俺の引き出しには入っていない。
だから、ただ、ソファに座って、七海さんを抱きしめた。
七海さんの体が、一瞬こわばった。 でも、すぐに、力が抜けて、俺の胸に顔を埋めてきた。
「……っ、う……」
声を殺して、泣いていた。 俺は背中をさすりながら、ずっとそばにいた。
しばらくして、泣き止んだ七海さんが、俺の胸に顔を埋めたまま、小さな声で言った。
「ねえ、健くん」
初めて、さん付けじゃなく呼ばれた。
「健くんがいる家に帰ってくると、息ができるの」
胸が、ぎゅっとなった。
「ずっと、一人で抱えてきたの。病棟のことも、命のことも。誰にも言えなくて。でも、健くんとモーニング食べてると、ちょっと、息ができる。生きてるって思える」
堰を切ったように、本音がこぼれ出した。 普段は何でも一人で抱え込む、強い人。 その強さの裏側を、初めて見た気がした。
「七海さん」
「……うん」 「もう、一人で抱えなくていいです。俺がいるから」
七海さんが、顔を上げた。 涙でぐしゃぐしゃの顔。それでも、綺麗だった。
「……健くん、ずるい。そういうこと言われたら……」
俺たちは、見つめ合った。 朝の薄い光の中。エアコンの微かな音だけが響くリビング。 七海さんの潤んだ瞳が、俺をまっすぐ見ていた。
「七海さん。俺、あなたのこと、ルームメイトとして見れなくなってます」
「……知ってる。私も、とっくに」
どちらからともなく、顔が近づいた。
唇が、触れた。
ちゅ……
涙の塩気と、柔らかい感触。 触れるだけの、確かめるようなキスだった。
七海さんが、少し顔を離して、俺を見た。 頬がうっすら染まっている。
「……もう一回」
今度は、俺から。頬に手を添えて、唇を重ねる。 ちゅっ……んっ…… さっきより深い。
舌で唇をなぞると、七海さんの口がそっと開いた。 ちゅる……れろ……ちゅぷ…… 「ん……っ♡」
七海さんの舌が、おずおずと絡んでくる。 普段の凛とした七海さんからは想像できない、甘えた絡め方だった。
ちゅぷ……ちゅるるっ…… 「はぁ……♡ 健くん……♡」
俺は七海さんの腰に手を回した。びくっと震えたけれど、拒まない。 むしろ、しがみつくように、俺の胸に体を寄せてくる。
「……俺の部屋、行きませんか」
「……うん♡」
七海さんの手を引いて、自分の部屋へ。 ベッドに腰掛けて、もう一度キスをした。 ほどいた黒髪が、俺の手のひらをさらさらと流れていく。
「……私、こういうの、すごく久しぶり」
「俺もです」 「健くんになら……いいかなって、思った」
俺は、七海さんの結んだ髪のゴムに手をかけた。 するりとほどくと、黒髪が肩に広がる。 いつものきりっとした白石七海が、ふわっと別の表情に変わった。
「髪、下ろしたほうが綺麗だ」
「……そういうの、ずるいって」 「経理は嘘つかないんで」 「もう、それ何回目♡」
笑いながら、また唇を重ねる。 七海さんの制服のボタンに、指をかけた。
「脱がせていい?」
「……うん♡」
ボタンを一つずつ外していく。 白い肌が、少しずつ露わになる。 首筋、鎖骨、そして淡い水色のブラ。
「あんまり、見ないで……♡」
「無理です。綺麗すぎて」 「……ばか♡」
ブラ越しに、そっと胸を包む。 ふにっ…… 「あっ……♡」
手のひらに収まる、形のいい胸。 ブラのホックを外すと、ふるんとこぼれた。 薄い桜色の先端が、もう少し尖っている。
「見ないでって言われても、見ちゃうな」
「……っ♡ もう♡」
先端を、指の腹でくりっと転がす。こりっ……こりこりっ…… 「ひっ……♡♡」 七海さんの背中が、びくんと跳ねた。
左を指で弄びながら、右の先端に口を近づける。 ちゅっ……れろ……ちゅぱっ…… 「んあっ♡♡ だめ……っ♡ 声、出ちゃう……♡♡」
七海さんが、口元を手で押さえた。 普段の落ち着いた声からは想像もつかない、甘い声だった。
(この声、やばい)
左右交互に吸いながら、空いた手でもう片方を揉む。 ふにふに……こりっ…… 「あっ♡ んっ♡ はぁっ♡♡ 健くぅん……♡♡」
七海さんの息が、どんどん荒くなる。 さん付けが、くん付けに崩れて、最後は甘えた語尾に溶けていく。
俺の手が、七海さんのスカートの中へ滑り込んだ。 内ももに触れると、びくんと脚が閉じかけた。
「だめ?」
「……だめじゃ、ない♡ 恥ずかしいだけ……♡」
ストッキングを脱がせる。 現れた下着は、ブラと揃いの淡い水色。 クロッチの部分が、もう、しっとりと湿っていた。
「もう濡れてる」
「……言わないで♡ 恥ずかしいって、言ったでしょ……♡」
下着の上から、すじに沿って指を上下になぞる。 くちゅ……くちゅ…… 「んっ♡ あっ♡ んぅっ……♡♡」
下着を引き下ろすと、薄い茂みの奥で、花弁がしっとり光っていた。 蜜が、てらてらと糸を引いている。
花弁を、そっと開く。ぷちゅ…… 「ひあっ♡♡」
中は、熱くて、ぬるぬるだった。 小さな突起を探り当てて、くりっ。 「んんっ♡♡♡」 七海さんの腰が、びくんと浮いた。
突起をくりくりと刺激しながら、中指をゆっくり沈める。ずぷっ…… 「んああっ♡♡♡」
きゅうっと、締め付けてくる。 ぐちゅ……ぐちゅぐちゅ…… 「あっ♡ 指っ♡ 入って……る……♡♡」
指を曲げて、上の壁をこする。ざらざらした場所——ぐりっ。 「ひぃっ♡♡♡ そこ……っ♡♡ なんで、わかるの……♡♡♡」 「経理は数字に強いんで」 「もう……っ♡♡ こんなときに……♡♡♡」
そこを重点的にこすりながら、親指で突起も同時に刺激する。 「あっ♡♡ 両方は……っ♡♡♡」
七海さんの体が、ぶるぶると震え始めた。 お腹が、ぴくぴくと痙攣する。
「だめ……っ♡♡♡ もう、いっちゃ……♡♡♡♡」
「いっていいよ」 「いくっ♡♡♡ いくいくっ♡♡♡♡」
びくんっ♡♡♡♡ きゅうぅぅっと指を締め付けて、じゅわぁっと蜜が溢れ、俺の手を濡らした。
「はぁ……♡ はぁ……♡♡」
七海さんが、力が抜けたようにベッドに沈む。指をゆっくり抜く。ぬぷっ……
「……すごかった♡」
「七海さん、いつものクールさ、どこ行ったんですか」 「……健くんのせい♡ 責任、取って♡」
七海さんが、上体を起こして、俺のベルトに手をかけた。 ジーンズを下ろし、下着の上から、そっと触れる。
「……大きい♡」
下着を下ろすと、ぶるんっと飛び出した。
「わ……っ♡♡ すごい……♡♡」
細い指で、根元から握る。きゅっ。 「気持ちいい?」 「……めちゃくちゃ」 「ふふ。素直♡」
ゆっくりと上下に動かす。しゅっ……しゅっ…… 七海さんが顔を近づけて、先端にちゅっ♡ 「びくって、した♡ 可愛い♡」
舌を出して、ぺろぺろと舐め始める。 れろ……ちゅる……カリの部分を丁寧に。裏筋を下から上へ。 「やば……七海さん、上手……」 「……看護師は、手先が器用なの♡」
そう言って、七海さんが口を大きく開けて、咥えた。ずぷっ…… ちゅぱっ……じゅるっ……ちゅぷちゅぷ…… 「んっ♡ んむっ♡」 下ろした黒髪が、さらさらと揺れながら、頭が上下する。
温かくて、ぬるぬるした口の中。 舌が、裏側に絡みついてくる。
「七海さん、待って。俺ばっかりずるい」
俺は七海さんの肩を抱いて、ベッドに横たえた。 潤んだ瞳、紅潮した頬、濡れた唇。 さっきまで泣いていた人とは思えない、とろけた表情。
「入れていい?」
「……うん♡ 来て♡」
七海さんの脚を開かせて、間に体を入れる。 先端が、入り口に触れる。ぬるっ。 たっぷりの蜜で、ぬるぬるだ。
「ゴム……」
「ピル、飲んでるから。大丈夫……♡ そのまま、来て……♡♡」
(こんなに誰かを欲しいって思うの、初めて♡)
ゆっくりと、押し込む。ずぷっ…… 「ぁああっ♡♡♡♡」
熱い。きゅうぅっと、締め付けてくる。 「七海さん、中、すごい……」 「おっきい……♡♡ 健くんの、入ってくる……♡♡♡」
奥まで、ゆっくり進める。ずず……ずずずっ…… 「んんっ♡♡♡ 奥まで……♡♡♡ 届いてる……♡♡♡♡」
最奥まで、隙間なく繋がった。
「動くよ」
ずちゅっ♡ ずちゅっ♡♡ 「あっ♡♡ あっ♡♡ んっ♡♡♡」
ぱんっ♡ ぱんっ♡ ぱんぱんっ♡♡ リズムを作って、腰を動かす。
「健くんっ♡♡ 気持ちいい♡♡♡」
「俺も……七海さんの中、やばい」 「あっ♡♡ 名前……♡ 名前、呼んで……♡♡」 「七海」 「……っ♡♡♡ うれしい……♡♡♡」
呼び捨てにした瞬間、中がきゅうっと締まった。
ぱんぱんぱんっ♡♡♡ だんだん速くなる。 ぐちゅっ♡ ぬちゅっ♡ ぱんっ♡♡ 「あんっ♡♡ 奥っ♡♡ 奥、当たるっ♡♡♡」
七海さんの脚が、俺の腰に巻きついてくる。 もっと奥へ、と求めるように。 「もっと……っ♡♡ もっと、強く……っ♡♡♡」
「いつもクールな七海さんが、こんな顔するんだ」
「……っ♡♡ 言わないで……っ♡♡♡ 恥ずかしい……っ♡♡♡」 「すげぇ可愛い」 「もう……っ♡♡♡ ずるいって……♡♡♡♡」
ぱんっぱんっぱんっぱんっ♡♡♡♡ ベッドがぎしぎし軋む。 朝の静かな部屋に、肌がぶつかる音と、七海さんの甘い声が響く。
「声、出ちゃうっ……♡♡♡ 止まらないっ……♡♡♡♡」
「いいよ、聞かせて」 「やだっ♡♡♡ でも、止められないっ♡♡♡♡」
ぱんぱんぱんぱんっ♡♡♡♡♡
「いくっ♡♡♡♡ また、いっちゃうっ♡♡♡♡♡」
「俺も……七海、中、いい?」 「いいっ♡♡♡♡ 中に……っ♡♡♡♡ ちょうだいっ♡♡♡♡♡」
ずんっずんっずんっ♡♡♡ 「いくっ♡♡♡♡♡」 「出すよ……っ!」
びゅるっ♡♡ びゅるるっ♡♡♡ どくどくっ♡♡♡♡ 「んんんっ♡♡♡♡♡♡」
七海さんの一番奥に、熱いものが、どくどくと注がれる。 体がびくびくと痙攣しながら、きゅうぅぅっと締め付けてくる。
「はぁ……♡♡ あったかい……♡♡♡♡」
七海さんが、虚ろな目で、幸せそうに微笑んだ。
ちゅっ♡ 「七海……最高だった」 「私も……♡♡ こんなの、初めて……♡♡♡」
繋がったまま、しばらくキスを交わす。 七海さんの体温が、いつもより高い気がした。
俺の中の熱は、まだ収まっていなかった。 七海さんの中で、また硬さを取り戻していく。
「……え♡ まだ、元気なの……♡」
「七海さんが可愛すぎるから」 「……っ♡♡♡」
「じゃあ……今度は、私が」
七海さんが、俺を押し返して、馬乗りになった。 繋がったまま、体勢が入れ替わる。
ずるっ……ずぷっ♡♡ 「んっ♡♡♡ この体勢……奥に、当たる……♡♡♡♡」
七海さんが、背筋を伸ばして、俺を見下ろす。 下ろした黒髪が、背中に流れる。 朝の光がカーテンを透かして、シルエットを際立たせる。
(さっきまで泣いてた人と、同じ人とは思えない)
七海さんが、腰をゆっくり上下に動かし始めた。 ずちゅっ♡♡ ずちゅっ♡♡ 「あっ♡♡ 自分で動くの……すごい、気持ちいい……♡♡♡♡」
胸が、動きに合わせて、たゆんたゆんと揺れる。 俺は手を伸ばして、揺れる胸を下から掴んだ。もにゅっ♡♡ 「ひゃっ♡♡♡ 胸、揉みながら……っ♡♡♡ ずるい♡♡♡♡」
七海さんの腰が、だんだん激しくなる。 自分の気持ちいい場所を探すように、腰をぐりぐりと回す。
「あっ♡♡♡♡ ここっ♡♡♡♡ ここ、当たるっ♡♡♡♡♡」
見つけたらしい。 そこを擦りつけるように、前後に動く。 ずちゅっずちゅっずちゅっ♡♡♡♡ 「気持ちいいっ♡♡♡♡ 健くんのっ♡♡♡♡ 最高……っ♡♡♡♡♡」
俺の胸に両手をついて、激しく腰を打ちつけてくる。 ぱんっぱんっぱんっぱんっ♡♡♡♡♡ 「また、来るっ♡♡♡♡ いっちゃうっ♡♡♡♡♡」 「俺も、もう……っ!」 「一緒に……っ♡♡♡♡♡ 健くんと、一緒に……っ♡♡♡♡♡♡」
ぱんぱんぱんぱんぱんっ♡♡♡♡♡♡ 「いくっ♡♡♡♡♡♡ いくいくいくっ♡♡♡♡♡♡♡」 「七海……っ! 中に、出すっ……!」
俺は七海さんの腰をがっしり掴んで、下から深く突き上げた。 ずんっ♡♡♡♡
びゅるるっ♡♡♡♡ どくどくどくっ♡♡♡♡♡♡ 「んんんんっ♡♡♡♡♡♡♡♡」
二回目を、さっきより更に奥へ、どくどくと注ぎ込む。 七海さんが、ぶるぶると震えて、がくんと俺の上に倒れ込んだ。
「はぁ……♡♡♡ すごかった……♡♡♡♡♡」
七海さんが、俺の胸に顔を埋める。 汗ばんだ肌、伝わる心臓の鼓動。
「健くん……♡」
「ん?」 「……幸せ♡♡」
七海さんが、ぎゅっと抱きついてきた。 俺も、抱きしめ返した。 しばらく、二人とも動けなかった。
気がつくと、カーテンの隙間から、すっかり朝の光が差し込んでいた。時計を見ると、まだ7時前。
(あれ。俺、今日……平日だ)
経理の脳が、急に現実を取り戻した。
「七海さん。俺、今日……仕事です」
「……あ」
二人で、顔を見合わせた。そして、急に気まずくなった。 さっきまで散々抱き合っていたのに、朝の光で正気に戻ると、現実が押し寄せてくる。俺たちは、契約書を交わして家賃を折半している、ルームメイトだ。それが、こうなってしまった。
「……ねえ、健くん」
七海さんが、シーツを体に巻きつけて、少し俯いた。 さっきまでの甘さが消えて、いつものサバサバした、でもどこか不安そうな声に戻っている。
「私たち……ルームシェア、解消したほうがいいのかな」
その言葉に、胸がひやっとした。
「だって、こうなっちゃったら……気まずいでしょ。もし、うまくいかなかったら、引っ越すの大変だし。私、そういう現実的なこと、考えちゃうから」
七海さんらしい言い分だった。無理はしない主義。リスクを先に潰しておく主義。いつも最悪を想定して動いてきた、看護師の防衛本能みたいなものだ。 俺も、リスクを計算するのは得意だ。でも、この件に関しては、答えはとっくに出ていた。
「七海さん」
「……うん」 「解消は、しません」
七海さんが、顔を上げた。
「解消じゃなくて——寝室を、一つにしませんか」
七海さんの目が、大きく見開かれた。
「ルームメイトとして二部屋使うんじゃなくて。恋人として、一つの部屋で寝る。空いた部屋は、二人の書斎にでも、荷物部屋にでもすればいい。ルームシェアは、解消しない。ただ、中身を変えるんです」
「……それって」
「俺と、付き合ってください。同居人じゃなくて、恋人として、このまま一緒に住みたい」
七海さんの目が、じわじわと潤んでいく。
「……健くん、本気で言ってる?」
「経理は、嘘の数字は書きません。これは、本気です」 「……っ、また、それ……♡」
七海さんの目から、ぽろっと涙がこぼれた。 でも、さっきの涙とは違う。とびきりの笑顔と一緒の涙だった。
「……私で、いいの? 一人で抱え込む、面倒な女だよ。夜勤も多いし、生活時間も合わないし」
「七海さんがいいんです。抱え込むなら、半分こっちに寄越してください。経理は、割り勘が得意なんで」 「……もう♡♡ なにそれ♡♡」
七海さんが、笑いながら泣いて、俺の胸に飛び込んできた。
「……うん♡ 付き合う♡ 寝室、一つにしよう♡」
「決まりですね」 「うん♡♡」
俺は、七海さんを抱きしめて、キスをした。 朝の柔らかい光の中で、穏やかなキス。
「でも、俺、そろそろ準備しないと遅刻します」
「あ、ほんとだ。早く支度して。私、朝ごはん作るから」 「夜勤明けなのに?」 「いいの。健くんを送り出すくらい、無理のうちに入らない」
七海さんが、シーツを巻いたまま、ベッドから降りる。ほどけた黒髪、ふにゃっと崩れた表情。いつもの凛とした白石七海とは、全然違う。
「七海さん、その格好で料理は危ないですよ」
「あ、そっか。服、着なきゃ。……ねえ、健くん」 「ん?」 「私の服、健くんの部屋に脱ぎ散らかしたんだけど。これ、もう、寝室一つになった証拠だね♡」
(朝から、幸せすぎる♡)
几帳面な七海さんが、俺の部屋に服を脱ぎ散らかしている。それだけのことが、たまらなく嬉しかった。
キッチンに並んで、朝ごはんを作る。七海さんがトーストを焼いて、俺が卵を割る。 冷蔵庫には、まだ昨日までの付箋が貼ってある。左が七海さん、右が俺。あの線引きは、もう、いらない。
「この冷蔵庫の付箋、どうします?」
「……記念に、一枚だけ残そっか。一番最初の」 「鶏ハムのやつ」 「うん。あれが、始まりだったから♡」
七海さんが、最初の一枚だけ残して、あとを剥がしていく。 顔を見ないルームメイトだった頃の、唯一の接点。それが、こんな朝を連れてくるなんて、契約書を交わしたあの日には想像もしていなかった。
夜勤明けの七海さんと、出社前の俺。生活時間は、相変わらず真逆だ。 でも、もう、すれ違いじゃない。真逆だからこそ、こうして朝に会える。それが、俺たちの形なんだと思った。
「いってきます」
「いってらっしゃい。気をつけてね」
玄関で、七海さんが背伸びして、頬にちゅっとキスをした。
「健くん」
「ん?」 「帰ってきたら、私、たぶん寝てると思う。夜勤の前だから」 「うん」 「でもね……健くんが帰ってくる家で眠れるって、すごく、安心するの」
朝の光の中で、七海さんが笑った。 あの、力の抜けた、本当の笑顔で。
「ただいまって、ちゃんと言いますから。寝ててもいいんで」
「……うん♡ 待ってる♡」
ドアを閉めて、廊下を歩きながら、俺はにやけるのを止められなかった。
ルームシェアの相手が、夜勤明けの美人看護師だった。 顔も見ない、付箋だけのルームメイトだったはずの人が、今は、一つの寝室で眠る、世界で一番大切な人になった。
その夜、俺が「ただいま」と帰ると、七海さんはソファで眠っていた。 膝には毛布。さっきまで何かを書いていたらしいメモ帳。そこには、几帳面な字で、新しいルールが書いてあった。
『二人のルール。①無理は、半分こ。②おやすみとおはようは、必ず言う。③──』
三つ目は、まだ書きかけだった。 俺はペンを取って、その続きを書き足した。
『③ずっと、一緒にいる。』
書き終えたとき、七海さんがうっすら目を開けた。 俺と目が合って、寝ぼけたまま、ふにゃっと笑う。
「……おかえり♡」
「ただいま、七海」
俺は、毛布をかけ直して、七海さんの隣に座った。 夜勤明けと出社前の、真逆の二人。それでも、同じソファで、同じ夜を過ごせる。
冷蔵庫には、最初の付箋が一枚だけ。寝室は、もう、一つ。 最高の、ルームシェアだ。
― 終 ―