東京の編集室で他人の幸せばかり繋ぎ続けて擦り切れた僕が、祖父の空き家を片付けに帰った港町で、今月末に閉館する古い名画座の最後の灯を守っていたのが、七年前に『映画館なんて時代遅れだ』と言って僕が手放した元カノだった話

1. 他人の幸せを繋ぐ仕事

僕、須賀涼介(すがりょうすけ)、二十九歳。都内の映像制作会社で、動画の編集をしている。

担当しているのは、主に、結婚式のエンドロールや、企業のPR、亡くなった人を偲ぶメモリアルムービー。要するに、他人の幸せや思い出を、つなぎ目が見えないように、なめらかに繋ぐ仕事だ。

その秋、僕は、少し擦り切れていた。

納期に追われて、暗い編集室に何日も籠もって、他人の笑顔ばかりを、コンマ秒単位で並べ替える。新郎新婦が交わすキスも、子どもの初めての一歩も、棺に入る前の最後の写真も、全部、僕の手の中ではただの素材になる。

須賀涼介(……俺、最後に、自分のために映画を観たの、いつだっけ)

モニターの青白い光を浴びながら、ふと、そんなことを思った。思い出せなかった。

そんな時に、田舎の伯母から、連絡が来た。去年亡くなった祖父の家を、そろそろ片付けて引き渡さなければならない、と。

須賀涼介(……ちょうどいい。少し、東京から離れよう)

僕は、編集途中のデータをサーバーに預けて、何年ぶりかに、長い休みを取った。

2. 閉館の貼り紙

祖父の家があるのは、東北の、小さな港町だった。

新幹線と、ローカル線と、一日に数本しかないバスを乗り継いで、たどり着く。十一月の終わり、潮の匂いを含んだ風は、もう刺すように冷たかった。

子どもの頃、夏になると、よくこの町の祖父の家に預けられた。けれど、大人になってからは、ほとんど来ていなかった。商店街は記憶よりずっとシャッターが増えて、人通りも、まばらだった。

その、寂れた商店街のはずれに、その建物はあった。

古い、二階建ての映画館。剥げかけたモルタルの壁。手描きの看板。〈名画座 みなと座〉と、丸ゴシックの文字が、色あせて掲げられている。

僕は、立ち止まった。

子どもの頃、祖父に一度だけ、ここで映画を観せてもらった記憶がある。何の映画だったかは、もう思い出せない。ただ、暗がりの中で見上げた、あの大きなスクリーンの光だけは、不思議と覚えていた。

その入り口のガラス戸に、一枚の貼り紙があった。

──〈長らくのご愛顧、誠にありがとうございました。当館は、今月末をもちまして、閉館いたします〉。

須賀涼介(……ここも、か)

そして、その下に、手書きのチラシ。〈さよなら特集・名作上映〉。今夜の演目は、古いモノクロの恋愛映画だった。

なんとなく、僕は、その色あせた料金表の前で、足を止めていた。

3. 切符売り場の小窓

入り口を入ると、すぐ右手に、古い切符売り場があった。

赤いビロードが擦り切れた、小さなブース。曇りガラスの小窓は、半分閉じられていて、中は薄暗い。映画館特有の、古い絨毯と、かすかなフィルムの埃の匂いがした。

須賀涼介「あの……すみません。今夜の、観られますか」

小窓の奥で、何かを書いていた人影が、顔を上げた。

篠原詩織「はい、もちろん。次の回まで、まだ時間が……」

そう言いかけて、その声が、ふっと、途切れた。

曇りガラスの向こうから、こちらを覗き込むようにして、その人が、身を乗り出してくる。栗色の、ゆるく結んだ髪。少し垂れた、けれど芯のある目。七年前より、ほんの少しだけ大人びた、その顔。

僕の心臓が、どくん、と、嫌な音を立てて跳ねた。

須賀涼介(……嘘だろ)

見間違えるはずが、なかった。七年経って、髪が少し伸びて、雰囲気が柔らかくなっていたけれど──間違えるはずが、なかった。

向こうも、手にしていたペンを取り落として、小窓のふちを、ぎゅっと握りしめたまま、固まっていた。

篠原詩織「……涼介、くん?」

少しかすれた、それでいて澄んだその声を、僕は、知っていた。

須賀涼介「……詩織」

篠原詩織(しのはらしおり)。僕と同い年の、二十九歳。

大学の映画サークルで出会って、卒業まで二年付き合って──そして七年前、この町の実家の映画館を継ぐと言った彼女に、僕が、決定的な一言を投げつけて、別れた、元カノだった。

4. 七年前の一言

篠原詩織「……うそ。なんで、涼介くんが、こんなところに」

詩織は、切符売り場から出てきて、信じられないという顔で、僕を見上げていた。動揺すると、指先で髪の毛先をくるくる弄ってしまうのは、昔と、変わっていなかった。

須賀涼介「祖父の家が……この町にあって。去年、亡くなって。その、片付けに……」

篠原詩織「そう、だったの。……ごめんなさい、おじいさまのこと、知らなくて」

ぎこちない沈黙が、古い絨毯の上に落ちた。

ロビーの壁には、過去の上映作品のポスターが、所狭しと貼られている。色あせたものから、比較的新しいものまで。その一枚一枚を、誰かが、ずっと、大切に貼り替えてきたのだと、分かった。

須賀涼介「……ここ、継いだのか。お父さんの、映画館」

詩織の指が、一瞬、止まった。

篠原詩織「うん。……四年前に、父が体を壊して。それから、わたしが」

須賀涼介「……そうか」

それ以上、言葉が、続かなかった。

七年前。大学を卒業するとき、詩織は、この実家の映画館を継ぐかどうか、ずっと迷っていた。父親一人では、もう手が回らない。けれど、客は減る一方で、フィルムの時代も、終わろうとしていた。

そんな彼女に、東京の制作会社への就職が決まっていた僕は、言ったのだ。

須賀涼介「映画館なんて、時代遅れだ。これから、どんどん潰れる。そんなものに人生賭けるより、俺と東京に来いよ」

良かれと思って、言った。彼女の将来を、心配して。

でも、それは、彼女が一番大切にしていたものを、真っ向から否定する言葉だった。詩織は、何も言い返さなかった。ただ、静かに笑って、「涼介くんは、東京、頑張ってね」と言って、この町へ、帰っていった。

それきり、僕たちは、連絡を取らなくなった。

5. 映写室の灯

篠原詩織「……せっかく来てくれたんだもの。観ていって。今夜の」

詩織は、少しだけ無理をしたみたいに笑って、僕を、館内へ通してくれた。

客席は、百席ほどの、こぢんまりとした空間だった。赤い座席は、ところどころ布が破れて、スプリングが軋む。けれど、掃除は、隅々まで行き届いていた。

上映までまだ時間があると言って、詩織は、僕を、二階の映写室へ案内してくれた。

狭い、機械油とフィルムの匂いのする部屋。中央に、年代物の、大きな映写機が二台、鎮座している。その前で、作業帽をかぶった、小柄な老人が、フィルムを巻き取っていた。

篠原詩織「駒井さん。お客さん……じゃなくて、その、大学のときの、知り合いで」

駒井さん「ほう」

駒井さんと呼ばれた老人は、皺だらけの目を細めて、僕を、じろりと見た。

駒井さん「先代の頃から、ここの映写を任されてる、駒井ってもんだ。……兄ちゃん、東京から来たのかい」

須賀涼介「はい。……すごい機械ですね、これ」

駒井さん「カーボンアーク式の、骨董品だ。今どき、これを回せる人間も、もう、そういない。……詩織ちゃんは、覚えてくれたがな。先代が倒れてから、必死に」

駒井さんは、フィルムを愛おしそうに撫でながら、ぽつりと言った。

駒井さん「この娘は、えらいよ。潰れるって分かってる映画館を、四年も、一人で背負ってきた。……まあ、それも、今月で、おしまいだがな」

その声には、寂しさと、誇りが、半分ずつ滲んでいた。詩織は、何も言わず、ただ、フィルムのリールに、そっと指を添えていた。

6. 暗がりのスクリーン

その夜の客は、僕を入れて、たった五人だった。

年配の夫婦と、一人で来た老人と、僕と──そして、いちばん後ろの席に、上映を見守る詩織。

ブザーが鳴って、場内が、ゆっくりと暗くなる。

映写室の小窓から、一筋の光が伸びて、スクリーンに、白黒の世界が浮かび上がった。カタカタ、というフィルムの回る音。少し雨が降ったようなノイズの混じる、古い映像。

それは、戦後すぐの、すれ違う男女を描いた、恋愛映画だった。

駅のホームで別れる二人。言いたいことを言えないまま、汽車が走り出してしまう。スクリーンの中の男が、走る汽車を、ただ見送っている。

その背中が、七年前の自分と、重なった。

僕は、後ろを振り返った。いちばん後ろの席で、詩織が、膝の上で手を組んで、じっとスクリーンを見上げていた。スクリーンの光が、彼女の頬を、白く照らしている。

その横顔が、あまりにも真剣で、あまりにも、何かを愛おしんでいて──僕は、胸を、強く締めつけられた。

須賀涼介(……俺は、この光を、「時代遅れ」って、切り捨てたんだ)

暗がりの中で、僕は、そっと、いちばん後ろの席へ移って、詩織の隣に、腰を下ろした。

詩織は、驚いたように、一瞬だけこちらを見て──それから、何も言わずに、また、スクリーンへ視線を戻した。

二人の腕が、肘掛けの上で、触れそうで、触れない距離にあった。

7. 堤防の風

上映が終わって、客がはけて、駒井さんが「お疲れさん」と帰っていったあと。

僕たちは、なんとなく、映画館を出て、すぐ近くの、海沿いの堤防まで歩いた。

夜の港は、しんと静まり返っていた。係留された漁船が、波に揺られて、ぎいぎいと軋む。月明かりが、黒い海の上に、細く長く伸びていた。冷たい潮風が、二人の間を、吹き抜けていく。

篠原詩織「……びっくりした。まさか、涼介くんが、来るなんて」

須賀涼介「俺も、びっくりした。……まさか、お前が、まだ、あそこにいるなんて」

篠原詩織「まだ、って」

詩織が、少しだけ、拗ねたように笑った。

篠原詩織「ひどいなあ。七年前、『どうせ潰れる』って言ったの、涼介くんでしょ。……当たってたよ。ほら、ちゃんと、潰れる」

その言葉が、ぐさりと、刺さった。

須賀涼介「……っ。ごめん」

篠原詩織「ううん。謝らないで。……ほんとのこと、だもん」

詩織は、堤防のへりに腰かけて、暗い海を見つめた。

篠原詩織「お客さん、減って。フィルムの貸し出しも、もう、ほとんどなくて。設備の修理代も、出せなくて。……分かってたの。続けられないって。それでも、父が遺したものだから、せめて、最後の灯が消えるまでは、わたしが守りたくて」

潮風が、彼女の髪を、さらった。

篠原詩織「……あのとき、涼介くんの言うとおり、東京について行ってたら。わたし、もっと、違う人生だったのかな」

8. 七年越しの謝罪

僕は、彼女の隣に腰を下ろして、しばらく、言葉を探した。

須賀涼介「……詩織。俺、ずっと、後悔してた」

篠原詩織「え?」

須賀涼介「あのとき、お前に言った言葉。『映画館なんて時代遅れだ』って。……あれ、お前の将来を心配してるつもりで、本当は、ただ、お前を、自分の手元に置きたかっただけなんだ。お前が一番大事にしてるものを、踏みつけにしてまで」

詩織が、こちらを見た。

須賀涼介「東京で、映像の仕事してる。……でもな、俺がやってるのは、他人の幸せを、なめらかに繋ぐだけの仕事だ。結婚式とか、思い出のムービーとか。毎日、他人の人生の、いちばんいいところばっかり、編集してる」

僕は、自嘲するように、笑った。

須賀涼介「それで、いつのまにか、すり減ってた。自分のために映画を観たのが、いつだったかも、思い出せないくらいに。……今日、お前の映画館で、久しぶりに、ちゃんと、映画を観た。スクリーンの光、見上げて。……七年前に俺が『時代遅れ』って切り捨てたものが、こんなに、人の心を動かすってこと、忘れてたんだ」

詩織の目が、月明かりの中で、わずかに、潤んでいくのが分かった。

須賀涼介「七年越しに、言わせてくれ。……あのとき、ごめん。お前が守ってきたもの、本当は、ずっと、すごいと思ってた」

詩織は、唇を、きゅっと結んで、しばらく、海を見つめていた。

そして、震える声で、言った。

篠原詩織「……ずるいよ、そういうの。閉館する直前に、来て。今さら、そんなこと、言うの」

須賀涼介「ずるくても、言いたかった」

篠原詩織「……わたしね。ほんとは、ずっと、待ってたの。違うの。待ってたわけじゃ、ないんだけど」

詩織の頬を、涙が一筋、こぼれ落ちた。

篠原詩織「フィルムを回すたびに、思い出してた。大学のとき、二人で、夜通し映画の話してたこと。あの頃の涼介くんは、わたしと同じくらい、映画が、好きだったのに、って」

9. フィルムの回る音

須賀涼介「……今でも、好きだよ。お前のことも。映画のことも」

その言葉に、詩織の肩が、小さく震えた。

篠原詩織「……っ。もう。ほんとに、ずるい」

冷たい潮風が、また、二人の間を吹き抜ける。詩織が、寒そうに、肩をすくめた。

須賀涼介「……冷えてきた。中、戻ろうか」

僕たちは、誰もいなくなった映画館へ、戻った。

詩織が、暖房を点けに行くと言って、僕は、なんとなく、二階の映写室まで、ついていった。フィルムと機械油の匂いのする、二人きりの、狭い部屋。

詩織が、点けっぱなしだった作業灯の、オレンジ色の光の中で、こちらを振り返った。涙の跡が、まだ、頬に光っている。

篠原詩織「……涼介くん」

須賀涼介「ん」

篠原詩織「もう一回だけ、聞いていい? ……今の言葉、本気?」

僕は、答える代わりに、一歩、詩織に近づいた。

彼女の頬に、そっと、手を伸ばす。涙で湿った、柔らかな頬。詩織は、逃げなかった。むしろ、僕の手のひらに、自分から、ことん、と頬を預けてきた。

須賀涼介「……詩織。キス、していいか」

篠原詩織「……聞かないでよ、そういうの。……ばか」

それが、答えだった。

僕は、ゆっくりと顔を寄せて、七年ぶりに、詩織の唇に触れた。

ちゅ……。

塩の味のする、柔らかな唇だった。

篠原詩織「ん……っ」

詩織の体が、びくっと震えて、それから、七年分の渇きを満たすみたいに、自分から、強く、唇を押し付けてきた。

ちゅ……ちゅぷ……。

唇の隙間から舌を差し入れると、詩織も、おずおずと、それに応える。最初は遠慮がちに、それから、夢中になって、互いの舌を絡め合った。

れろ……ちゅる……ちゅぷっ……。

篠原詩織「ん……っ♡ 涼介くん……っ♡」

キスをほどくと、唾液の糸が、オレンジ色の灯りの中で、つうっと光って引いた。詩織の頬は上気して、目は、とろんと潤んでいる。

10. 七年分の渇き

須賀涼介「……ここで、いいのか」

篠原詩織「……うん。ここが、いい。わたしの、いちばん、大事な場所だから」

詩織は、そう言って、映写機の隣の、古いソファに、僕の手を引いた。フィルムの缶が積まれた、機械油の匂いのする、狭い空間。けれど、彼女にとっては、この世でいちばん、特別な場所なのだ。

作業灯の、薄暗いオレンジの光の中で、僕は、詩織を、そっと抱き寄せた。

カーディガンのボタンを外していくと、詩織が、こくんと、小さく頷いた。一つ、また一つと外していくと、白いブラウスと、その下の、薄い素肌の気配が、灯りの中に現れる。

須賀涼介「……きれいだ」

篠原詩織「やだ……灯り、暗くして……恥ずかしい……♡」

ブラウスの裾から手を差し入れると、しっとりと汗ばんだ、なめらかな肌に触れた。背中のホックを外すと、思っていたよりずっと豊かな胸が、下着の中で、ふるんと揺れる。

ホックを外すと、白い乳房が、ぷるんと零れ出た。作業灯の光に照らされて、その肌は、淡く色づいている。

須賀涼介「……白いな」

篠原詩織「あんまり、見ないで……っ♡」

僕は、その柔らかな膨らみに、そっと手を伸ばした。

むにゅっ……。

篠原詩織「あっ……♡」

手のひらに、しっとりとした重みが、沈み込む。指の間から溢れるほどの量が、ふにふにと、形を変えた。

須賀涼介「柔らかい……」

篠原詩織「んっ……♡ あんまり、揉まないで……っ♡」

ゆっくりと、両手で包み込むように揉みながら、つんと立ち始めた先端を、指の腹で掠める。詩織の腰が、ぴくっと跳ねた。

篠原詩織「ひゃっ♡ そこ……っ♡」

片方の先端を口に含んで、舌先で、れろれろと舐め転がす。

ちゅっ♡ れろっ♡ ちゅうぅっ♡。

篠原詩織「あっあっ♡ やぁっ♡ 涼介くんっ♡ それ、だめぇ……っ♡」

口では拒みながら、詩織の手は、僕の背中に、ぎゅっとしがみついてくる。

胸を吸いながら、片手を、スカートの中へと滑らせていく。内ももは、しっとりと汗ばんで、僕の手を受け入れるように、わずかに開いた。

指が、その奥に触れた瞬間──くちゅっ、と、濡れた音がした。

篠原詩織「ひぁっ♡♡」

須賀涼介「もう、こんなに……」

篠原詩織「だって……さっきの、キスから、ずっと……っ♡」

下着の中は、すでに、とろとろに濡れていた。小さな突起を見つけて、指の腹で、くるくると円を描く。

くちゅくちゅ……くりくり……。

篠原詩織「あっ♡あっ♡♡ そこっ……♡ 弱いの、覚えてるくせにっ……♡♡」

須賀涼介「……覚えてるよ。お前の弱いとこ、全部」

中指を、ゆっくりと、奥へ滑り込ませる。

ずぷっ……。

篠原詩織「あぁぁっ♡♡♡」

熱い内壁が、きゅうっと、指を締めつけてくる。七年経っても、覚えている。前壁のざらついた場所を、指の腹で、こりこりと擦り上げると、詩織が、大きく体を跳ねさせた。

篠原詩織「そこっ♡♡ やっ……そこ、だめぇっ♡♡♡」

二本目を追加して、中をかき回しながら、親指で、同時に突起を攻める。

ぐちゅっ♡ ぐちゅっ♡ くりくりっ♡。

篠原詩織「あっ♡あっ♡あっ♡♡ だめっ♡ いっぺんにっ……♡♡ イっちゃうっ♡♡♡」

須賀涼介「イっていいよ」

篠原詩織「やっ♡♡ 恥ずかしいっ♡♡ 見ないでっ……っ♡♡」

親指で突起を潰しながら、中の弱い場所を、激しく擦り上げる。

ぐちゅぐちゅぐちゅっ♡♡。

篠原詩織「あっ♡あっ♡あっ♡♡──っっ♡♡♡」

びくびくびくっ♡♡♡。

詩織の体が、弓なりに反り返って、じゅわっと、温かいものが僕の指に溢れ出した。

11. もう一度、繋がる

息を切らせて、詩織が、潤んだ目で、僕を見上げてくる。

篠原詩織「……ねえ、涼介くん。……指、じゃなくて」

須賀涼介「……いいのか」

篠原詩織「ちゃんと、して。……七年分、わたしの中で、確かめて」

詩織が、自分から、古いソファの上に体を預けて、わずかに、膝を開いた。さっき達したばかりのそこは、薄明かりの中で、とろりと光っている。

財布から避妊具を取り出す僕を、詩織が、潤んだ目で見ていた。準備を終えて、僕は、詩織の脚の間に体を入れて、先端を、入り口に当てる。

とろっとした熱が、ぴたりと、吸い付いてきた。

須賀涼介「……いくぞ」

篠原詩織「うん……♡ 優しく、して……七年ぶり、だから……♡」

ずぷっ……♡。

篠原詩織「んあぁっ♡♡♡」

先端が入った瞬間、詩織が、甲高い声を上げた。きつい。なのに、とろとろに濡れているから、吸い込まれるように、奥へ進んでいく。

ずず……ずぷぷっ……♡。

篠原詩織「あぁっ……♡ おっきい……♡ 奥まで、来てる……っ♡」

須賀涼介「くっ……詩織の中、めちゃくちゃ熱い……」

根元まで、入りきった。詩織の中が、七年分の隙間を埋めるみたいに、ぎゅうぎゅうと、僕を締めつけてくる。

篠原詩織「……繋がってる……♡ わたしたち、また、繋がってるよ……っ♡」

須賀涼介「ああ」

篠原詩織「夢、みたい……♡ 目が覚めたら、また、七年前に、戻ってたりしないよね……?」

須賀涼介「戻らない。……もう、間違えない」

ゆっくりと、腰を動かし始める。

ずちゅっ♡ ぱんっ♡。

篠原詩織「ひぁっ♡」

ずちゅっ♡ ずちゅっ♡ ぱんっ♡ ぱんっ♡。

篠原詩織「あっ♡ あっ♡ あっ♡ 涼介くんっ♡」

引くときに、きゅっと締まって、入れるときに、とろっと受け入れてくれる。その繰り返しが、信じられないくらい、気持ちいい。

ぱんっ♡ ぱんっ♡ ぱんっ♡。

篠原詩織「あぁっ♡ やっ♡ そこっ♡ そこ、当たるのっ♡♡」

須賀涼介「ここか」

ぐちゅっ♡♡。

篠原詩織「ひあぁっ♡♡♡ そこぉっ♡♡」

奥のほうを突くと、詩織が、大きく体を跳ねさせた。

篠原詩織「そこっ♡♡ 昔より……感じるっ♡♡♡」

突くたびに、白い胸が、ぶるんぶるんと揺れる。映写室のオレンジ色の灯りに照らされたその光景が、あまりにエロくて、腰の動きが、どんどん速くなる。

ぱんぱんぱんっ♡♡♡。

篠原詩織「ああっ♡♡ 涼介くんっ♡ きもちいいっ♡♡ すごいのっ♡♡」

僕は、詩織の体を抱き起こして、背中を抱き寄せた。対面の形で、二人の体が、ぴったりと密着する。汗ばんだ胸が、僕の胸板に押し付けられて、ぷにゅっと潰れた。

篠原詩織「あっ♡♡ 密着してるっ♡ 涼介くんの、心臓の音……♡」

須賀涼介「詩織」

篠原詩織「ん……っ♡」

須賀涼介「好きだ。あのときも、今も、ずっと、好きだった」

詩織が、目を見開いて、それから、潤んだ瞳から、ぽろっと、涙をこぼした。

篠原詩織「……っ♡♡ わたしもっ♡♡ ずっと、ずっと、好きだったよっ♡♡♡」

ずちゅっ♡ ぱんっ♡ ぐちゅっ♡。

篠原詩織「あっ♡あっ♡あっ♡♡ イクっ♡ 涼介くんっ♡ 一緒に、イこっ♡♡」

須賀涼介「ああ……俺も、もう……っ!」

ぱんぱんぱんぱんっ♡♡♡♡。

篠原詩織「あぁぁぁぁっ♡♡♡♡ イクっ♡ イクイクイクっ♡♡♡♡」

須賀涼介「っ……!! 詩織っ……!!」

いちばん奥で、びくびくっと、弾けた。詩織の全身が、痙攣して、ぎゅうっと、僕にしがみついてくる。

篠原詩織「はぁっ♡♡ はぁっ♡♡ ……すごかった……♡♡」

須賀涼介「はぁ……はぁ……ああ……最高だった……」

抱き合ったまま、しばらく、動けなかった。古い映写機のそばで、二人の荒い息だけが、フィルムの匂いのする部屋に、静かに溶けていった。

12. 最後の灯がともる頃

どれくらい、そうしていただろう。

詩織が、僕の腕の中で、くるりとこちらを向いた。汗で額に張り付いた前髪。とろんとした目。上気した頬。

篠原詩織「……ねえ、涼介くん」

須賀涼介「ん」

篠原詩織「みなと座は、今月で、閉まっちゃうよ。……それでも、また、わたしに会いに、来てくれる?」

その声は、冗談めかしていたけれど、わずかに、震えていた。

僕は、七年前に言えなかった言葉を、今度こそ、ちゃんと、口にした。

須賀涼介「来るよ。何度でも。……っていうか、俺、考えてたんだ」

篠原詩織「考えてた?」

須賀涼介「映写機も、フィルムも、ポスターも。この映画館が積み上げてきたもの、全部、このまま消すには、惜しすぎる。……俺、映像の仕事してる。記録に残すこと、得意なんだ」

詩織が、目を、ぱちくりさせた。

須賀涼介「最後の上映も、駒井さんがフィルムを回すところも、この町の人たちの記憶も。全部、撮らせてくれ。……他人の幸せを繋ぐんじゃなくて、今度は、お前が守ってきたものを、俺が、ちゃんと、残す」

篠原詩織「……涼介くん」

須賀涼介「それに……東京の仕事、別に、東京じゃなきゃできないわけじゃない。編集なんて、パソコン一台あれば、どこでもできる。……この町に、いてもいい」

詩織の目が、みるみる、潤んでいく。

須賀涼介「七年前、俺は、お前の大事なものを『時代遅れ』って切り捨てて、お前を、行かせた。……今度は、間違えない。俺から、お前のところへ来る。お前が守ってきたものごと、引き受けたい」

篠原詩織「……ほんとに? また、調子のいいこと、言ってるんじゃないの?」

須賀涼介「言ってない。……付き合おう、詩織。今度こそ、ちゃんと。七年分、取り返させてくれ」

詩織が、くしゃっと、顔を歪めて、それから、僕の胸に、ぐりぐりと顔を埋めた。

篠原詩織「……うん♡ うん……っ♡」

その肩が、小さく震えていた。

月末の最後の上映の日、みなと座は、満員だった。

閉館を聞きつけた町の人たちが、何十年ぶりかに、戻ってきたのだ。駒井さんが、最後のフィルムを、震える手で、けれど誇らしげに、回した。僕は、客席のいちばん後ろから、その光景を、カメラに収めていた。

スクリーンの光に照らされた、たくさんの顔。笑って、泣いて、見入っている顔。その中に、切符売り場から出てきて、立ったまま、スクリーンを見上げる、詩織の横顔があった。

駒井さん「兄ちゃん」

最後の上映が終わったあと、機材を片付けていた僕に、駒井さんが、声をかけてきた。

駒井さん「あの娘を、頼むよ。……映画館は、閉まる。けど、あの娘の人生は、これからも、続くんだからな」

須賀涼介「……はい。任せてください」

駒井さんは、しわくちゃの顔で、にっと笑った。お見通し、というやつだった。

がらんとした客席で、詩織が、僕を待っていた。すべての灯りが落ちて、非常口の緑のランプだけが、ぽつんと点っている。

篠原詩織「……終わっちゃった」

須賀涼介「ああ。……でも、始まったよ。俺たちのことは」

僕は、詩織の手を取って、誰もいなくなったスクリーンの前で、もう一度、キスをした。

潮の匂いのする、港町の夜。止まっていた七年分の時間が、最後の上映の灯から、もう一度、ゆっくりと、回り始めていた。

スクリーンは暗くなったけれど、僕の隣で、詩織が、笑っていた。それが、世界でいちばん、観ていたい光景だった。

― 終 ―


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