規格住宅の図面に潰されかけた僕が、有休を取って一人で申し込んだ木曽・奈良井宿の町並み散策ツアーで、千本格子の宿場を案内してくれた同い年の移住ガイドに半日連れ歩かれ、夕立あがりの旅籠の二階で結ばれた話

六月の、梅雨の晴れ間の火曜日。俺は、木曽谷を縫う中央西線の各駅停車に揺られて、山の奥へ奥へと運ばれていた。

俺、立花透(たちばな とおる)、二十九歳。都内の大手ハウスメーカーで、注文住宅の設計をしている。

注文住宅、とは言っても、実際にはほとんど決まったパーツの組み合わせだ。同じ規格の窓、同じ規格の階段、同じ規格の外壁。施主の顔も見ないまま、間取りのパターンを少しいじって、量産される家の図面を一日に何枚も引く。新人の頃に夢見ていた「人の暮らしを設計する仕事」とは、だいぶ違う場所に俺はいた。

立花透(……俺、最後に、いいなって思える家を描いたの、いつだっけ)

きっかけは、休憩室で同僚が見ていた一枚の写真だった。木造の二階家がびっしりと軒を連ねる、細長い宿場町。出格子の細い桟が、夕日を受けて、金色の縞を描いていた。

「中山道の奈良井宿だってさ。日本一長い宿場町」。同僚は何気なく言って、スマホをしまった。でも、俺はその縞模様の格子戸が、しばらく頭から離れなかった。あんなに緻密で、あんなに静かな木の仕事を、人間の手は本当にやっていたのか。

気づけば、観光協会のサイトで「奈良井宿 町並み散策ガイドツアー」をぽちっと押していた。平日開催、一人参加可、所要およそ半日。残った有休を、俺はためらわず一日ぶつけることにした。

特急を乗り継いで、最後は二両きりの各駅停車。窓を細く開けると、雨上がりの檜の匂いと、川の匂いが、どっと流れ込んできた。

奈良井の駅に降りると、空気がひんやりと澄んでいた。標高はもう千メートルを超えているらしい。改札を出てすぐ、宿場の入り口に、その町並みは始まっていた。

思わず、足が止まった。

通りの両側に、黒く煤けた木造の家が、見渡すかぎり軒を連ねている。二階がせり出した出梁(だしばり)造り。一階には、細い桟を隙間なく並べた千本格子。瓦ではなく、石を載せた板葺きの屋根。電柱が一本もなくて、視界のどこにも、現代が映り込まない。

立花透(……すごい。これ、全部、人が手で組んだのか)

図面でしか家を見てこなかった目に、その質感は、ほとんど暴力的だった。木の家がこんなに美しいなんて、俺は、ずっと忘れていた。

集合場所の案内所の前に、すでに何人かが立っていた。年配の夫婦と、写真を撮りに来たらしい若い男。みんな、思い思いに格子戸を眺めている。

そこへ、案内所の引き戸が、からりと開いた。

七尾凛「おはようございます。本日のガイドを担当します、七尾です」

よく通る、けれど穏やかな声だった。

紺色の作務衣のような上着に、動きやすそうな細身のパンツ。日に焼けた肌に、化粧っ気はほとんどない。後ろで無造作にまとめた黒髪から、ほつれた毛が一筋、頬にかかっている。歳は、たぶん俺と同じくらい。観光地のガイドにありがちな、貼りつけた笑顔がない。その代わり、町を見る目に、静かな熱があった。

立花透(……綺麗な人だ)

不意打ちみたいに、そう思った。

七尾凛「奈良井宿は、中山道のちょうど真ん中、六十九ある宿場の三十四番目です。木曽の山の中なのに、これだけの町が残ったのには、ちゃんと理由があります。……歩きながら、お話ししますね」

そう言って、七尾さんは、すっと先に立って歩き出した。

ツアーは、宿場の南の端から、ゆっくり北へ抜けていく道のりだった。

七尾さんの説明は、ガイドブックの棒読みとはまるで違った。

七尾凛「この格子、千本格子っていうんですけど。桟の太さも、隙間の幅も、家ごとに少しずつ違うんです。商家は外から中が見えにくいように細かく、職人の家は手元に光がほしいから広め、とか」

立花透「……え、家ごとに、意味が違うんですか」

七尾凛「はい。理由のないデザインって、昔の家には、ほとんどないんですよ」

理由のないデザインは、ほとんどない。

その一言が、規格のパーツを並べるだけの毎日に、ちくりと刺さった。俺は思わず、格子に顔を近づけた。

立花透「……ほんとだ。この家、桟がこっち側だけ細い。光、入れたかったのかな」

七尾凛「お客さん、いいところ見ますね」

七尾さんが、初めてこっちをまっすぐ見た。

七尾凛「もしかして、建築のお仕事ですか」

立花透「あ……はい。一応、設計を。ただ、こんな立派なもんじゃなくて。同じような家の図面を、毎日量産してるだけで」

七尾凛「ふふ。じゃあ、今日は、いい目の保養になるかもしれませんね」

その「いい目の保養」が、想像以上だった。

軒の出の深さ。二階のせり出しを支える腕木の角度。水路を流れる山の水。道の真ん中に置かれた、丸太をくり抜いた水飲み場。一つひとつに、七尾さんは理由と歴史を添えていく。俺は、いつのまにか、他の参加者より一歩前に出て、彼女の言葉を聞き逃すまいとしていた。

ツアーの途中、七尾さんは、一軒の漆器店に俺たちを案内した。

七尾凛「木曽は、漆の産地でもあるんです。せっかくなので、本物の仕事を見ていただこうと思って」

薄暗い土間の奥で、白髪の老人が、椀に漆を塗っていた。刷毛の一掃きが、ぞくっとするほど淀みない。

庄治さん「おう、凛ちゃん。今日はお客さん連れか」

七尾凛「庄治さん、すみません、お邪魔します。こちら、設計のお仕事をされてるそうで」

庄治さん「ほう。じゃあ、これ、わかるか。なんで木曽の漆は、こんなに丈夫だと思う」

立花透「……湿気、ですか。漆って、乾くのに湿度がいるって聞いたことが」

庄治さん「お、若いのにわかってるな。この谷の、じめっとした空気がいいんだわ。乾かそう乾かそうとすると、漆はかえって死ぬ。ゆっくり、じめじめ、待ってやる。それで強くなる」

待ってやると、強くなる。

庄治さんは、刷毛を止めずに、ふっと笑った。

庄治さん「凛ちゃんも、そうやって、この町に馴染んだクチだしな」

七尾凛「……庄治さん、その話はいいですから」

七尾さんが、めずらしく、少し慌てた顔をした。その横顔が、さっきまでの凛とした案内人とは違って見えて、俺は、もっとこの人のことを知りたくなった。

ツアーは、宿場の北のはずれで、いったん解散になった。年配の夫婦も、写真の青年も、満足げに駅の方へ戻っていく。

俺だけが、なんとなく、その場に残っていた。

七尾凛「……立花さん、でしたよね。帰りの電車、まだ時間あります?」

立花透「あ、はい。夕方まで、特に何も」

七尾凛「よかったら、ツアーじゃ通らない裏道、ご案内しましょうか。設計の人なら、たぶん、好きだと思う場所があって」

立花透「……ぜひ。お願いします」

我ながら、即答だった。

七尾さんは、ふっと口元をゆるめて、宿場の裏手の、細い石段を上り始めた。

裏道は、表通りの賑わいが嘘みたいに静かだった。

苔むした石段。傾いた板塀。誰も住まなくなった空き家の、外れかけた格子戸。七尾さんは、その一軒一軒を、まるで古い友人を紹介するみたいに語った。

七尾凛「私、三年前まで、東京で内装の仕事してたんです。商業施設の、流行りのデザインを、半年ごとに作っては壊して」

立花透「……あ、なんか、わかります。その、作っては壊す感じ」

七尾凛「ですよね。ある日、出張でこの町に来て。百年も二百年も、人がただ手をかけて、直して、住み継いできた家を見たら……なんか、自分の作ってたものが、急にむなしくなっちゃって」

石段の途中で、七尾さんは足を止めて、谷を見下ろした。

七尾凛「気づいたら、移住してました。今は、空き家になってた古い旅籠を一軒借りて、自分で少しずつ直しながら、小さな宿をやってます。ガイドは、その合間に」

立花透「……一人で、家を直してるんですか。あの規模の木造を」

七尾凛「無謀ですよね。庄治さんたちに、しょっちゅう怒られてます」

笑う横顔が、谷の光を受けて、やわらかかった。俺は、自分の話を、いつのまにかしていた。

立花透「……俺、たぶん、七尾さんが捨ててきた側の人間です。規格の家を、毎日、何枚も。施主の顔も見ないで」

七尾凛「……」

立花透「今日、ここの格子を見て、ちょっと、苦しくなって。俺、こういう仕事がしたかったはずなのにって」

七尾さんは、しばらく黙って、それから、静かに言った。

七尾凛「捨ててきた、なんて、思わなくていいと思いますよ。……立花さん、さっき、格子の桟の細さに、ちゃんと気づいたでしょう。理由を、読もうとしてた。あれ、誰にでもできることじゃないです」

胸の奥が、ことりと音を立てた気がした。

ちょうどその時、山の天気が、ふいに崩れた。

ぽつ、ぽつ、と大粒の雨が落ちてきたかと思うと、すぐに、ざあっと音を立てて夕立になった。木曽の谷の、激しいにわか雨だ。

七尾凛「わっ、来ちゃった。立花さん、こっち!」

七尾さんが、俺の腕を引いて、近くの軒下に駆け込んだ。深い出梁の軒が、ちょうど傘みたいに、雨をはじいてくれる。

立花透「……すごい降りだ」

七尾凛「木曽の夕立は、毎日のことなんです。でも、すぐ上がりますよ。……ほら、この軒の深さ。こういう日のために、昔の人は、軒を深く出したんです」

軒下は、二人並ぶと、肩が触れそうなくらい狭かった。

雨の匂い。濡れた檜と、漆と、土の匂い。七尾さんの髪から、ほつれた一筋が、まだ頬に張りついている。雨に濡れた肌が、ほんのり上気して見えた。

立花透(……近い)

心臓が、勝手に速くなる。七尾さんも、それに気づいたのか、ふと口数が少なくなった。雨音だけが、軒の下に満ちていた。

七尾凛「……立花さん」

立花透「はい」

七尾凛「私のガイド、楽しかったですか」

立花透「……今日、来て、よかったです。たぶん、何年ぶりってくらい」

七尾さんが、こっちを見上げた。雨の照り返しで、その瞳が、潤んで揺れているように見えた。

七尾凛「……私も。お客さんに、こんなふうに思うの、初めてです」

雨が、すうっと小降りになっていく。けれど、俺たちは、軒下から動けなかった。

夕立が上がると、宿場は、洗い立てみたいに濡れて光っていた。

石畳の水たまりに、暮れかけた空が映っている。観光客はもうほとんどいなくて、町は、本来の静けさを取り戻していた。

七尾凛「……立花さん。終電まで、まだ少しありますけど」

立花透「はい」

七尾凛「私の宿、寄っていきませんか。直しかけの旅籠、設計の人に、見てほしくて」

その誘いが、ただの建物見学でないことは、たぶん、お互いにわかっていた。俺は、こくりと頷いた。

七尾さんの宿は、表通りから一本入った、出梁造りの古い旅籠だった。重い格子戸を引くと、磨き込まれた土間と、黒光りする太い梁が迎えてくれた。

立花透「……うわ。すごい。この梁、栗ですか」

七尾凛「正解です。築百四十年。私がここに来た時は、埃だらけで、傾いてたんですよ」

立花透「これを、一人で……」

急な階段を上がると、二階は、客間に改装された和室だった。窓は、もちろん千本格子。外の常夜灯の灯りが、桟の隙間から、縞になって畳に落ちている。

七尾凛「ここが、いちばん好きな部屋なんです。この格子の影が、夜になると、こうやって……」

七尾さんが、畳に落ちた金色の縞を、指でそっとなぞった。その横顔を見ていたら、もう、止められなかった。

立花透「……七尾さん」

七尾凛「……凛で、いいです」

立花透「凛さん」

名前を呼ぶと、彼女が、ゆっくりとこっちを向いた。格子の影が、その頬を縞に染めている。

俺は、そっと手を伸ばして、頬にかかったほつれ毛を、耳にかけてやった。指先が、火照った肌に触れる。凛さんが、小さく息を呑んだ。

七尾凛「……立花さん、心臓、すごい音」

立花透「凛さんもでしょ」

七尾凛「……ばれてますね」

くすっと笑った唇に、俺は、ゆっくり自分の唇を重ねた。

ちゅ……。

雨上がりの、ひんやりした唇。けれど、すぐに、奥から熱がにじんできた。

七尾凛「ん……♡」

一度離して、もう一度。今度は少し深く。凛さんが、俺の作業着の袖を、きゅっと握った。

七尾凛「……ずっと、お客さんなのに、って、思ってたのに」

立花透「俺も。ガイドさんに、こんなこと、しちゃ駄目だって」

七尾凛「……もう、駄目じゃないです♡」

舌先で、そっと唇をなぞると、凛さんの口が、わずかに開いた。

れろ……ちゅ……ちゅるっ……♡

七尾凛「んむ……♡」

格子戸の縞の中で、しばらく抱き合っていた。やがて、凛さんが、潤んだ目で俺を見上げた。

七尾凛「……灯り、点けなくて、いいですか。この、格子の影だけで」

立花透「……うん。十分、綺麗だ」

作務衣の上着の、紐をほどく。前が、はらりと開いた。

下に着けた白い肌着の上から、胸のふくらみが、控えめに上下している。肩を抜かせると、想像していたより、ずっと華奢な体だった。日に焼けた腕と首筋に対して、肌着に隠れていた胸元は、驚くほど白い。

立花透「……綺麗だ。凛さん」

七尾凛「……あんまり、見ないでください。こういうの、久しぶりで……♡」

肌着の裾から手を入れて、背中のホックを探す。カチッ、と外すと、緊張がほどけて、形のいい胸がこぼれ出た。常夜灯の縞模様が、その白い肌の上を、ゆっくり横切っている。

右手で、そっと包むように触れた。

ふにっ。

七尾凛「あっ……♡」

手のひらに吸いつくような、やわらかさ。指を沈めると、むにっと形を変える。淡い色の先端が、もう少し、硬くなっていた。

七尾凛「ん……っ♡ そんなに、優しくされると……♡」

親指で、先端をくりっと転がす。

七尾凛「ひゃっ♡♡」

びくん、と凛さんの肩が跳ねた。畳に手をついて、堪えるように、息を詰める。

唇を、その先端に落とした。ちゅっ。

七尾凛「ひぅっ♡♡♡」

舌先で転がしながら、もう片方を手のひらで包む。

ちゅるっ……れろ……ちゅう……♡♡

七尾凛「あっ♡ 声、出ちゃう……♡ 壁、薄いのに……♡♡」

立花透「我慢、しなくていい。今夜、客は俺だけなんでしょ」

七尾凛「……意地悪♡」

交互に舌を這わせると、凛さんの肌が、うっすら汗ばんで、檜と漆の匂いに、甘い匂いが混ざった。

立花透「凛さん、下も、いい?」

七尾凛「……うん♡」

細身のパンツのボタンを外して、下着ごと、ゆっくり引き下ろす。膝を立てて閉じようとする太ももを、そっと開かせた。

立花透「……もう、こんなに」

七尾凛「やっ♡ 言わないで……キスの時から、ずっとなんです♡♡」

淡い花弁が、透明な蜜で、とろりと濡れていた。指先で、そっとなぞる。

くちゅ……。

七尾凛「ひゃあっ♡♡ あっ♡♡」

びくん、と腰が跳ねた。小さな突起を見つけて、指の腹で、くるくると円を描く。

くり……くり……♡

七尾凛「あぁっ♡♡♡ そこ、だめっ……♡♡♡」

立花透「だめじゃないだろ。気持ちいいんだろ」

七尾凛「だってっ♡ 立花さんの指、優しすぎるからっ♡♡」

蜜をかき混ぜながら、中指を、入り口にあてがった。

立花透「指、入れるよ」

七尾凛「……うんっ♡♡ 来て……♡♡」

ずぷ……♡

七尾凛「あああっ♡♡♡」

ゆっくり、指が沈んでいく。熱い。きゅうきゅうと、締めつけてくる。中をかき回しながら、もう一本。

ずぷっ♡

七尾凛「ひぃっ♡♡♡ 二本、おっきい……♡♡」

二本の指を出し入れしながら、親指で、突起を同時に刺激する。

ぐちゅっ……ぐちゅっ……ぐちゅっ……♡♡♡

七尾凛「あっあっあっ♡♡♡ すごいっ♡ 気持ちいいっ♡♡♡」

指を曲げて、上側の壁を、ぐっと押す。

七尾凛「ひぅっ♡♡♡♡ そこ、やばいっ♡♡♡」

凛さんの体が、びくびくと跳ね始めた。

七尾凛「やっ♡ 来る……来ちゃうっ♡♡♡」

指の動きを、速める。

ぐちゅぐちゅぐちゅぐちゅっ♡♡♡♡

七尾凛「あああっ♡♡♡ イっ……イくぅっ♡♡♡♡」

びくんっ、びくんっ、びくんっ♡♡♡

凛さんの背中が、弓なりに反った。中が、ぎゅうっと指を締めつけて、蜜が溢れ出す。やがて、力が抜けたように、畳に沈み込んだ。

七尾凛「はぁっ……♡♡ はぁっ……♡♡ ……指だけで、こんなの、初めて……♡♡」

潤んだ瞳で、凛さんが、ゆっくり身を起こした。まだ余韻に震えながら、いたずらっぽく、俺の作業着のベルトに手を伸ばす。

七尾凛「……今度は、私の番です。お客さんを、満足させないと♡」

立花透「それ、ツアーに含まれてないでしょ」

七尾凛「ふふっ♡ ……特別な、裏コースです♡」

ベルトを外して、下着ごと引き下ろすと――ばちんっ、と限界まで張り詰めたものが跳ね上がった。凛さんが、息を呑む。

七尾凛「……すごい♡♡ こんなになって……♡」

膝をついて、顔を近づけてくる。

ぺろ……。

先端を、舌先で、ちろっと舐めた。

七尾凛「ん……♡」

ちゅっ、と先端にキスをして、それから、ぱくりと口に含んだ。

ずぷ……。温かく濡れた口の中。舌が、裏筋をなぞる。

七尾凛「ん……じゅるっ♡♡ れろれろ……♡♡」

ゆっくり頭を上下させる凛さん。ほつれた髪が揺れて、上目遣いの瞳が、潤んでこっちを見ている。

立花透「凛さん……やば、気持ちよすぎ」

七尾凛「んふ♡ もっと、してあげます♡♡」

ちゅぱっ……じゅるるっ……♡♡

頬をすぼめて、吸い上げる。深く咥えるたびに、全身に電流が走った。

ずぷっ……ずぷっ……♡♡

立花透「待って、それ以上は……イっちゃう」

ぷはっ、と口を離す凛さん。唇が、唾液で、てらてらと光っていた。

七尾凛「……だめ♡ まだ、イっちゃ、だめですよ♡」

いたずらっぽく笑う凛さんを、そっと畳に横たえた。財布から、コンドームを取り出す。

七尾凛「……ちゃんと、持ってたんですね」

立花透「いや、これは、その……一応」

七尾凛「ふふ♡ 責めてないです♡ ……つけて♡」

手早く装着して、凛さんの脚の間に、体を滑り込ませる。常夜灯の縞が、白い肌の上を、ゆっくり横切っている。先端を、入り口にあてがった。

ぬちゅ……♡

立花透「入れるよ、凛さん」

七尾凛「うん♡ 来て……ほしい♡♡」

ゆっくり、腰を進める。

ずぷ……ずぷぷ……♡♡

七尾凛「あぁっ♡♡♡ 入って、くるぅ♡♡♡」

きゅうきゅうと締めつけながら、奥へと引き込んでくる。

七尾凛「おっきい♡♡ おなかの中、いっぱいに……♡♡♡」

ずぷん♡♡

根元まで、収まった。下腹が、ぴたりと密着する。

七尾凛「はぁっ♡♡ 全部、入った……♡♡ 奥まで、来てる……♡♡♡」

立花透「動くよ」

ゆっくり腰を引いて、また押し込む。

ずるっ……ずぷんっ♡♡

パンっ♡

七尾凛「ああっ♡♡♡」

パンッ……パンッ……♡♡

リズミカルに、打ちつけ始める。

七尾凛「あっあっあっ♡♡♡ 立花さんっ♡♡ 気持ちいいっ♡♡♡」

立花透「透で、いい」

七尾凛「……透さんっ♡♡♡」

名前を呼ぶと、凛さんが、俺の背中に、しがみついてきた。古い旅籠の畳が、軋む。肌と肌がぶつかる音が、格子の部屋に、静かに響いた。

パンパンパンッ♡♡♡

七尾凛「奥っ♡♡♡ 奥に、当たってるっ♡♡♡♡」

凛さんの脚が、俺の腰に絡みついてくる。もっと奥を、と求めるように。

立花透「凛さん、昼間は、あんなに凛としてたのに」

七尾凛「ふふっ♡ ……夜は、透さんに、ぜんぶ、案内されちゃう♡♡」

笑い合いながら、また腰を打ちつける。角度を変えて、突き上げると、結合部から、卑猥な水音が溢れた。

パンパンパンパンッ♡♡♡♡

ぐちゅぐちゅぐちゅ♡♡♡

七尾凛「やばっ♡♡ また、来るっ♡♡ イっちゃうっ♡♡♡♡」

立花透「俺も、もう……っ」

七尾凛「一緒に……♡♡♡ 一緒に、イきたいっ♡♡♡♡」

凛さんが、両腕を背中に回して、しがみつく。脚も、がっちり腰に絡む。奥に押しつけるように――最後の一突き。

七尾凛「あぁぁっ♡♡♡♡♡!!」

立花透「イく……っ!」

どくんっ、どくっ、どくっ……!

七尾凛「イっ……イくぅっ♡♡♡♡♡♡」

凛さんの全身が震えて、中が、痙攣するように搾り取っていく。

びくんっ、びくんっ、びくんっ♡♡♡

七尾凛「はぁっ♡♡ はぁっ♡♡ ……すごかった……♡♡♡」

抱き合ったまま、荒い呼吸を繰り返した。ちゅ、と軽くキスをする。窓の格子からは、相変わらず、金色の縞が、二人の体の上に落ちていた。

繋がったまま、しばらく、お互いの心臓の音を聞いていた。やがて、凛さんが、くすっと笑う。

七尾凛「……透さん。さっき、まだ、元気でしたよね♡」

繋がった場所で、また硬くなり始めているのが、彼女にも伝わったらしい。

立花透「……凛さんが、よすぎて」

七尾凛「もう♡ ……今度は、私が、動きます♡」

新しいゴムに替えて、凛さんが、俺の上にまたがった。常夜灯の縞が、その華奢な体に、はらりとかかる。角度を調整して――

ずぷん♡♡

七尾凛「あっ♡♡♡ この格好、奥まで……入るっ♡♡♡」

ゆっくり、腰を上下させ始める。

ずぷ……ずちゅ……ずぷっ♡♡

七尾凛「ん♡♡ 自分で動くの、恥ずかしいのに……止まらないっ♡♡♡」

目の前で、白い胸が、格子の影を縞に纏って揺れる。両手を伸ばして、掴んだ。

むにゅっ♡♡

七尾凛「ひゃんっ♡♡♡ 揉んだら、動けなくなるっ♡♡♡」

立花透「いいから。動いて、凛さん」

ぱんっ♡ ぱんっ♡ ぱんっ♡♡

七尾凛「あっあっあっ♡♡♡ 奥っ……いい場所に、当たるっ♡♡♡♡」

凛さんが、腰を回すように動き始めた。ぐりんぐりんと、中をかき回される。

下から、突き上げる。

ずぷんっ♡♡♡

七尾凛「ひぁっ♡♡♡♡ 下から、だめっ♡♡♡」

凛さんの動きと、俺の突き上げが、いちばん奥で、ぶつかる。

パンパンパンパンッ♡♡♡♡

ぐちゅぐちゅぐちゅ♡♡♡♡

七尾凛「だめっ♡♡♡ イくイくイくっ♡♡♡♡♡」

立花透「俺も、もう出る……っ!」

七尾凛「一緒にっ♡♡♡♡ また、一緒にっ♡♡♡♡♡」

ずぷんっ♡♡♡♡

最後の一突きを、奥に叩き込む。

七尾凛「イくぅぅっ♡♡♡♡♡♡」

どくんっ、どくっ、どくっ、どくっ……!

七尾凛「あぁぁぁっ♡♡♡♡♡ すごっ……♡♡♡ いっぱい……♡♡♡♡」

びくんっ、びくんっ、びくんっ♡♡♡♡

凛さんが、力を失って、俺の胸に倒れ込んできた。汗ばんだ体を、ぎゅっと抱きとめる。

七尾凛「はぁっ♡♡ はぁっ♡♡ ……最高、でした……♡♡♡♡」

立花透「俺も。凛さん」

ちゅ、と汗ばんだ額にキスをした。窓の外、雨上がりの宿場は、しんと静まり返って、常夜灯だけが、ぽつぽつと灯っていた。

――朝。

格子戸の隙間から差し込む光で、目が覚めた。隣で、凛さんが、まだ俺の腕の中で眠っている。ほつれた髪が頬にかかって、寝顔が、とんでもなく無防備だった。

すぅ……すぅ……。

立花透(……夢じゃ、なかった)

そっと身を起こして、格子窓の外を見た。朝靄の中、奈良井の宿場が、洗い立てみたいに濡れて、檜の屋根から、白い湯気みたいなものが立ち上っていた。昨日、この町を、二人で歩いたのだ。

七尾凛「ん……♡ 透さん……?」

凛さんが、目を覚ました。寝起きの、少しかすれた声。

立花透「おはよ。凛さん、見て。町、朝靄で、すごい綺麗だ」

凛さんが、格子窓に身を寄せて、目を細めた。

七尾凛「……朝のこの町、いちばん好きなんです。観光客が来る前の、しんとした時間」

立花透「……綺麗だ」

七尾凛「町でしょう?」

立花透「……いや。凛さんが」

凛さんの頬が、ぽっと赤くなった。

七尾凛「……朝から、それ、反則です♡」

そう言いながら、俺の腕に、そっと自分の腕を絡めてきた。並んで格子窓の前に立って、朝の宿場を眺める。しばらくして、凛さんが、ぽつりと言った。

七尾凛「ねえ、透さん。東京、遠いですよね」

立花透「……まあ、木曽の山ん中だしな」

七尾凛「……でも、私、待つの、得意なんです。家を直すのも、漆が乾くのも、ぜんぶ、待つ仕事だから」

凛さんが、こっちを見上げて、にっこり笑った。

七尾凛「庄治さんが言ってたでしょう。待ってやると、強くなるって。……だから、透さんが、また来てくれるのも、待てます。……来て、くれますか」

俺は、その問いの意味を、ちゃんと理解した。これは、ただの一晩じゃない。続きの始まりだ。だったら、待たせるだけじゃなくて、こっちも、ちゃんと言葉にしないと。

立花透「凛さん。待たせるの、なんか、悔しいから言うけど」

七尾凛「……はい?」

立花透「俺、来月もまた来る。その次も。……凛さんに会いに。恋人として、ちゃんと通いたい」

凛さんの目が、まんまるになった。それから、じわっと潤んで、ぽろっと一粒こぼれた。

七尾凛「……ずるい。朝から、泣かせる気ですか」

立花透「泣くなって。返事は?」

七尾凛「……はい。私も、透さんのことが、好きです♡ ……今日から、恋人ですね♡」

そう言って、凛さんが背伸びして、俺の唇に、ちゅっと軽くキスをした。

七尾凛「ふふ♡ 決まり♡ ……あ、でもね、透さん」

立花透「ん?」

七尾凛「恋人になっても、私のガイドは、手を抜きませんから。次は、漆塗りの体験も、ちゃんと案内します♡」

立花透「……はい、ガイドさん」

七尾凛「ふふっ、いい返事♡」

格子窓の外、朝靄が晴れていく宿場を、中山道が、どこまでもまっすぐに貫いていた。

代わり映えのしない図面に潰されかけて、衝動で押した、一件の予約。千本格子の縞に呼ばれるように、俺は、この谷まで来た。

その町を、誰よりも愛おしそうに語っていた人が――今、俺の隣で、朝靄みたいに澄んだ目をして、笑っている。

これは、たまたまの一日なんかじゃない。きっと、何度でもこの町を一緒に歩く、その始まりの日だ。

― 終 ―


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